説明

粉粒体積荷装置及び粉粒体荷揚げ装置

【課題】船体の前後左右のバランスを確保しながら粉粒体の積荷、荷揚げができ、しかも粉粒体のコストアップがない粉粒体積荷装置及び粉粒体荷揚げ装置を提供する。
【解決手段】岸壁近傍に設置された粉粒体の貯留設備から、岸壁に接岸された船体11の船体11内部に区画形成された複数の船倉12に粉粒体を積み込みするための粉粒体積荷装置10において、船体11の積荷重量の計測を行うための吃水計13、13a、13b、13cを船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、吃水計13、13a、13b、13cからの信号によって船体11の全体バランスを計りながら船倉12のそれぞれへの粉粒体積込み量の調整を行うための流量制御弁16を船倉12上部に備える搬送路15入口に設ける粉粒体積載手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体内の船倉にセメント等の粉粒体を積載するための粉粒体積荷装置、及び船倉に積載されているセメント等の粉粒体を陸上に設けられている粉粒体の貯留設備に荷揚げするための粉粒体荷揚げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からセメントや、石炭灰等の粉粒体を運搬するための貨物船には、粉粒体を岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備から、船体内に区画形成された複数の船倉に粉粒体を積載するための粉粒体積荷装置が設けられている。この粉粒体積荷装置は、粉粒体を陸上の貯留設備から受け入れる中央分配室よりそれぞれの船倉天井部まで延設されているエアースライダー等の搬送路を有している。外部積み込み装置から供給された粉粒体は、それぞれの船倉天井部までの搬送路で分配されてそれぞれの船倉の天井部から落とし込んで積み込んでいる。この粉粒体の船倉への積載に際しては、船倉が複数室に分かれているので、船体は、前後左右のバランスにアンバランスが発生する場合がある。そこで、船体の各所には、常時複数のオペレーターが別れて監視してそれぞれのオペレーターが手動で搬送路の調整ゲートの開閉度合を調整して船体のアンバランスの発生を防止している。あるいは、複数のオペレーターが監視状況を無線機や、手動信号で中央分配室を制御しているオペレーターに逐次報告することで、それぞれの搬送路の調整ゲートの開閉度合を集中制御で調整して船体のアンバランスの発生を防止している。
【0003】
また、セメントや、石炭灰等の粉粒体を運搬するための貨物船には、船体内に区画形成された複数の船倉に積載されている粉粒体を岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備に荷揚げするための粉粒体荷揚げ装置が設けられている。この粉粒体荷揚げ装置は、船倉内の粉粒体を船体底部中心線を縦断して設けられたチェンコンベア又はエアースライダーに送り込むための船倉底部に魚の骨状に配設されたエアースライダーを有している。そして、粉粒体荷揚げ装置は、更に、チェンコンベア又はエアースライダーで船首側又は船尾側に横移動して送られた粉粒体を船上に持ち上げるための立設して設けられた筒体とスクリューからなる竪型スクリューコンベアを有している。そして、船上に持ち上げられた粉粒体は、岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備に荷揚げされている。この粉粒体の船倉からの荷揚げに際しては、船倉が複数室に分かれているので、それぞれの船倉から荷揚げ量が異なると、船体は、前後左右のバランスにアンバランスが発生する場合がある。そこで、船体の各所には、常時複数のオペレーターが別れて監視してそれぞれのオペレーターが手動で船倉底部に配設されたエアースライダーのシャッターの開閉度合を調整して船体のアンバランスの発生を防止している。あるいは、複数のオペレーターが監視状況を無線機や、手動信号で集中制御を行うオペレーターに逐次報告することで、それぞれのエアースライダーのシャッターの開閉度合を集中制御で調整して船体のアンバランスの発生を防止している。
【0004】
従来の粉粒体積荷装置には、粉粒体積荷装置セメント運搬船の積荷を各船倉に自動的にほぼ均等にするために、船上に傾斜計を配設し、傾斜計からの信号により、それぞれの船倉まで延設している搬送路への調整ゲートの開度を調節するための調節器を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−246379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したような従来の粉粒体積荷装置及び粉粒体荷揚げ装置は、次のような問題がある。
(1)複数のオペレーターによる監視では、波の高さや、風の強さで船体の状況把握が難しく、各船倉への積載量や、荷揚げ量の判断に誤りが発生し、船体のアンバランスが発生し、船体のバランス修正に困難を要している。また、粉粒体の積荷、荷揚げ時に船体状況を把握するための多くの人手を要し、人件費の高騰によって、粉粒体のコストアップとなっている。
(2)船上に傾斜計を取り付け、これからの信号により、各船倉への積載量を調整するのは、船体の左右のバランスのみの調整となり、船体の前後のバランスを計ることができない。また、粉粒体の全体の積載量の判断には、複数のオペレーターの監視が必要となり、粉粒体のコストアップとなっている。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、船体の前後左右の正確なバランスを確保しながら粉粒体の各船倉への積荷、各船倉からの荷揚げを容易に行うことができ、しかも粉粒体のコストアップに影響を与えない粉粒体積荷装置及び粉粒体荷揚げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る粉粒体積荷装置は、岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備から、岸壁に接岸された船体の船体内部に区画形成された複数の船倉に粉粒体を積み込みするための粉粒体積荷装置において、船体の積荷重量の計測を行うための吃水計を船体の船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、吃水計からの信号によって船体の全体バランスを計りながら複数の船倉のそれぞれへの粉粒体積込み量の調整を行うための流量制御弁を船倉上部に備える搬送路の入口に設ける粉粒体積載手段を有する。
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る粉粒体荷揚げ装置は、岸壁に接岸された船体の船体内に区画形成された複数の船倉内に積み込まれた粉粒体を岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備に荷揚げするための粉粒体荷揚げ装置において、船体の積荷重量の計測を行うための吃水計を船体の船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、吃水計からの信号によって船体の全体バランスを計りながら複数の船倉のそれぞれからの粉粒体揚げ荷量の調整を行うためのシャッターを船倉底部に備えるエアースライダーの出口に設ける粉粒体揚げ荷手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の粉粒体積荷装置は、船体の積荷重量の計測を行うための吃水計を船体の船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、吃水計からの信号によって船体の全体バランスを計りながら複数の船倉のそれぞれへの粉粒体積込み量の調整を行うための流量制御弁を船倉上部に備える搬送路の入口に設ける粉粒体積載手段を有するので、波や風等の外部要因に左右されることなく船体全体の正確なバランスを取りながら、船倉内に所望の積荷重量の粉粒体を積載することができる。また、積載するのに人手を要さないので、粉粒体のコストアップを防止することができる。
【0010】
請求項2記載の粉粒体荷揚げ装置は、船体の積荷重量の計測を行うための吃水計を船体の船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、吃水計からの信号によって船体の全体バランスを計りながら複数の船倉のそれぞれからの粉粒体揚げ荷量の調整を行うためのシャッターを船倉底部に備えるエアースライダーの出口に設ける粉粒体揚げ荷手段を有するので、波や風等の外部要因に左右されることなく船体全体の正確なバランスを取りながら、船倉内から所望の積荷重量の粉粒体を荷揚げすることができる。また、荷揚げするのに人手を要さないので、粉粒体のコストアップを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した場合の最良の形態について説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る粉粒体積荷装置の説明図、図2(A)〜(C)はそれぞれは本発明の一実施の形態に係る粉粒体荷揚げ装置の説明図である。
【0012】
図1(A)、(B)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る粉粒体積荷装置を説明する。ここで、図1(A)は本発明の一実施の形態に係る粉粒体積荷装置を説明するための船体の縦断面図、図1(B)は同粉粒体積荷装置を説明するための船体上部の平面図である。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る粉粒体積荷装置10は、岸壁に接岸された貨物船等の船体11内部に区画形成された複数の船倉12に、岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備からセメントや、石炭灰等の粉粒体を積み込みするための船体11に設けられる積荷重量計測手段、及び粉粒体積載手段を有している。
この粉粒体積荷装置10の積荷重量計測手段は、船体11の4箇所のそれぞれである船首部に第1の吃水計13、船尾部に第2の吃水計13a、左舷中央部に第3の吃水計13b、及び右舷中央部に第4の吃水計13cを有し、この4箇所のそれぞれの位置で船体11の最下面から水面までの垂直距離を計測している。この場合の船体11の積荷重量は、数1に示すようにして求めることができる。
【0013】
【数1】

【0014】
ここで、船体11は、船が進行する上において、船首部を船尾部より高くする必要があり、船首部の第1の吃水計13の値と、船尾部の第2の吃水計13aの値の比率が予め決められているので、この比率を遵守することで、船体11の前後のバランスを計ることができる。更に、船体11の船倉12に積み込む粉粒体の積載量は、積載重量の算出によって、自ずとして算出することができると共に、所望量の粉粒体を船体11に積載することができる。
【0015】
粉粒体積荷装置10の粉粒体積載手段は、集中管理室のオペレーターが前記の第1〜第4の吃水計13、13a、13b、13cからの信号を受け、船体11の前後左右全体のバランスを計りながら複数の船倉12のそれぞれに粉粒体の積み込み量を調整するために設けられている。この粉粒体を船倉12に積み込むためには、粉粒体を陸上の貯留設備から受け入れる中央分配室14よりそれぞれの船倉12の天井部まで延設されているエアースライダー等の搬送路15を用いている。そして、外部積み込み装置から供給された粉粒体は、それぞれの船倉12の天井部までの搬送路15で分配されてそれぞれの船倉12の天井部から落とし込んで積み込んでいる。この粉粒体の積み込み量を調整のために、それぞれの搬送路15には、搬送路15の入口に搬送路15の内径の開度が調整できる流量制御弁16が設けられている。この流量制御弁16の開閉によって、搬送路15を介して各船倉12に送られる粉粒体は、コントロールがなされ、それぞれの船倉12の粉粒体の積み込み量が調整されて船体11の全体のバランスが保たれる。
【0016】
次いで、図2(A)〜(C)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る粉粒体荷揚げ装置を説明する。ここで、図2(A)は本発明の一実施の形態に係る粉粒体荷揚げ装置を説明するための船体底部の平面図、図2(B)は図2(A)におけるA−A’線拡大縦断面図、図2(C)は図2(A)におけるB−B’線拡大縦断面図である。
図2(A)〜(C)に示すように、本発明の一実施の形態に係る粉粒体荷揚げ装置20は、岸壁に接岸された貨物船等の船体11内部に区画形成された複数の船倉12内に積み込まれたセメントや、石炭灰等の粉粒体を、岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備に荷揚げするための船体11に設けられる積荷重量計測手段、及び粉粒体揚げ荷手段を有している。なお、この粉粒体荷揚げ装置20が有する積荷重量計測手段は、前述の粉粒体積荷装置10が有した積荷重量計測手段と同じものである。そこで、詳細な説明は、省略するが、粉粒体荷揚げ装置20が有する積荷重量計測手段によって、船体11の船倉12から積み出される粉粒体の揚げ荷量は、積載重量の算出によって、自ずとして算出することができると共に、所望量の粉粒体を船体11から揚げ荷することができる。
【0017】
粉粒体荷揚げ装置20の粉粒体揚げ荷手段は、集中管理室のオペレーターが積荷重量計測手段の第1〜第4の吃水計13、13a、13b、13cからの信号を受け、船体11の前後左右全体のバランスを計りながら複数の船倉12のそれぞれからの粉粒体の揚げ荷量を調整するために設けられている。この粉粒体を船倉12から揚げ荷するためには、船倉12底部に、船倉12内の粉粒体を船体11底部中心線を縦断して設けられたチェンコンベアや、エアースライダー等の輸送体21に送り込むための魚の骨状に配設されたエアースライダー22を有している。そして、更に、粉粒体を揚げ荷するためには、輸送体21で船首側又は船尾側に横移動して送られた粉粒体を、船上に持ち上げるために、船体11底部から立設して設けられる筒体23とスクリュー24からなる竪型スクリューコンベア25を有している。こうして船上に持ち上げられた粉粒体は、岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備に荷揚げされている。この粉粒体の揚げ荷量を調整のために、それぞれの船倉12の側部に設けられている複数のエアースライダー22のそれぞれには、エアースライダー22の出口に開口広さが調整できるシャッター26が設けられている。このシャッター26の開閉によって、エアースライダー22から輸送体21に搭載される粉粒体は、コントロールがなされて、それぞれの船倉12の粉粒体の残量が調整され、船体11の全体のバランスが保たれることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の粉粒体積荷装置及び粉粒体荷揚げ装置は、岸壁に設けられたセメントや、石炭灰等の粉粒体の貯留設備等から岸壁に接岸された船体に前後左右の傾きを発生させることなく安全に粉粒体を船体の船倉に積載したり、船倉から粉粒体を荷揚げするための装置として貨物船等に用いることができる。また、人手を少なくできる節約型の装置としても最適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る粉粒体積荷装置の説明図である。
【図2】(A)〜(C)はそれぞれは本発明の一実施の形態に係る粉粒体荷揚げ装置の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
10:粉粒体積荷装置、11:船体、12:船倉、13:第1の吃水計、13a:第2の吃水計、13b:第3の吃水計、13c:第4の吃水計、14:中央分配室、15:搬送路、16:流量制御弁、20:粉粒体荷揚げ装置、21:輸送体、22:エアースライダー、23:筒体、24:スクリュー、25:縦型スクリューコンベア、26:シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁近傍の陸上に設置された粉粒体の貯留設備から、前記岸壁に接岸された船体の該船体内部に区画形成された複数の船倉に前記粉粒体を積み込みするための粉粒体積荷装置において、
前記船体の積荷重量の計測を行うための吃水計を前記船体の船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、
前記吃水計からの信号によって前記船体の全体バランスを計りながら複数の前記船倉のそれぞれへの前記粉粒体積込み量の調整を行うための流量制御弁を前記船倉上部に備える搬送路の入口に設ける粉粒体積載手段を有することを特徴とする粉粒体積荷装置。
【請求項2】
岸壁に接岸された船体の該船体内に区画形成された複数の船倉内に積み込まれた粉粒体を前記岸壁近傍の陸上に設置された前記粉粒体の貯留設備に荷揚げするための粉粒体荷揚げ装置において、
前記船体の積荷重量の計測を行うための吃水計を前記船体の船首部、船尾部、左舷中央部、及び右舷中央部の前後左右の4箇所に設ける積荷重量計測手段と、
前記吃水計からの信号によって前記船体の全体バランスを計りながら複数の前記船倉のそれぞれからの前記粉粒体揚げ荷量の調整を行うためのシャッターを前記船倉底部に備えるエアースライダーの出口に設ける粉粒体揚げ荷手段を有することを特徴とする粉粒体荷揚げ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−44343(P2006−44343A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225150(P2004−225150)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(504275052)
【出願人】(301029805)宇部興産海運株式会社 (2)
【出願人】(598156310)