説明

粉粒状製品用容器

【課題】粉粒状の内容物を収納するための容器において、蓋が容器本体から浮いた閉め切らない状態で放置された場合であっても、内容物の劣化を防止する。
【解決手段】粉粒状の内容物を収納し、内容物を出し入れ可能な開口を有する容器本体と、容器本体の開口を開閉可能に閉じる蓋4とを備えた粉粒状製品用容器において、容器本体と蓋4とをヒンジ構造により結合し、蓋4の開口側の面に、蓋4が閉じられた状態で容器本体の開口の内周面に当接するインナーリング12を突出して設け、インナーリング12の高さがヒンジ構造側から該ヒンジ構造と対向する側に向けて高くなるように傾斜をつける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒状製品用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒状の内容物を計量して使用する衣料用洗濯洗剤や自動食洗機用洗剤等を収納する代表的な粉粒状製品用容器としては、容器本体と、容器本体とヒンジにより結合し、容器本体の開口を開閉可能とする蓋とからなる身蓋容器が挙げられる。このような容器では、内容物である粉粒状製品の吸湿等による劣化を防ぐため、密閉性を高める工夫として蓋の容器本体側の面に容器本体内側に向けて突出するインナーリングを設け、蓋を閉じた状態でインナーリングを容器本体の開口の内周面に密着させることが一般的である。
【0003】
インナーリングに類する構造としては、特許文献1に、液体を注出する容器に蓋がヒンジによって結合され、蓋に容器の注出口に嵌り込む壁部が設けられるものが開示されている。この特許文献1に係る構造では、蓋に設けられた壁部がヒンジ側から先端側に向って高さが高くなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−42709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インナーリングを備える粉粒状製品用容器の欠点としては、蓋を閉める際に蓋と容器本体とを結合するヒンジ側のインナーリングが先ず容器本体の内面と接するために、蓋を閉め切るための力が必要となる点があり、また、実際に使用される場面においては、蓋が容器本体から浮いた閉め切らない状態で放置されることがあり、その結果、粉粒状製品が吸湿により固化したり、香気が揮散したりしてしまう等の品質劣化につながることがある。
【0006】
ここで、上記特許文献1に係る構造では、蓋に設けられた壁部がヒンジ側から先端側に向って高さが高くなるように形成されており、傾斜した注出口の密閉性を高める工夫がされているが、この壁部は、注出口が傾斜しているためにそれに合せて傾斜させたにすぎず、注出口あるいは取り出し口に傾斜がない容器における閉め切らない状態での密閉性を考慮したものではない。
【0007】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、粉粒状の内容物を収納するための容器において、蓋が容器本体から浮いた閉め切らない状態で放置された場合であっても、内容物の劣化を防止することが可能であるとともに、蓋をスムーズに閉じることが可能な粉粒状製品用容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決手段として本発明は、粉粒状の内容物を収納し、該内容物を出し入れ可能な開口を有する容器本体と、該容器本体の前記開口を開閉可能に閉じる蓋とを備えた粉粒状製品用容器において、前記容器本体と前記蓋とがヒンジ構造により結合され、前記蓋の前記開口側の面には、前記蓋が閉じられた状態で前記開口の内周面に当接するインナーリングが突出して設けられ、前記インナーリングは、その高さが前記ヒンジ構造側から該ヒンジ構造と対向する側に向けて高くなるように傾斜がつけられていることを特徴とする。
【0009】
上記粉粒状製品用容器においては、前記インナーリングは、前記ヒンジ構造側の部位が、前記蓋が完全に閉め切られる以前の前記開口の内周面に当接した時点で、前記ヒンジ構造側の部位と対向する側の部位が、前記開口の内周面内側に位置するように形成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記粉粒状製品用容器においては、前記インナーリングの外周側における前記蓋の前記開口側の面には、前記蓋が閉じられた状態で前記容器本体の外周面を覆う外枠部が突出して設けられていることが好ましい。
【0011】
また、上記粉粒状製品用容器においては、前記容器本体の開口及び前記インナーリングは互いに相似する略矩形状に形成され、前記インナーリングは、前記ヒンジ構造側に位置する部位に連なって屈曲又は湾曲して延出する部位から、次第に高さが高くなるように形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋によって容器本体の開口を閉じる際、ヒンジ構造側のインナーリングが、蓋が完全に閉め切られる以前の容器本体の開口内側面と当接した時点で、インナーリングによって容器本体の開口全周を覆うようにすることができ、蓋を閉め切らない状態でも密閉性を確保でき、製品の劣化を防止することができる。また、蓋を閉じる際に、ヒンジ構造側のインナーリングが開口の内周側にスムーズに入り込むようにすることができ、蓋をスムーズに閉じることができる。
【0013】
また、蓋が閉じられた状態で容器本体の外周面を覆う外枠部を設けた場合には、外枠部とインナーリングとによって開口周囲を覆うことで、密閉性を向上できる。
【0014】
また、インナーリングの容器本体の開口に干渉しやすい角部分から次第にインナーリングの高さが高くなるように形成した場合には、インナーリングがスムーズに開口の内周側に入り込み、スムーズに蓋を閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粉粒状製品用容器の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る粉粒状製品用容器の蓋の下面図である。
【図3】第1の実施形態に係る粉粒状製品用容器の蓋の斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る粉粒状製品用容器の縦断面図であり、蓋を閉める際の様子を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る粉粒状製品用容器の蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1に示す本発明の第1の実施形態に係る粉粒状製品用容器1は、上方に開放する開口2を有する容器本体3と、容器本体3の開口2を開閉可能に閉じる蓋4とを備えている。容器本体3は、樹脂材料から成形され、平面視略矩形状の底壁部5と、底壁部5の周縁に立設された側壁部6とにより箱形状を呈している。側壁部6の上部には、この側壁部6の上端周縁よりも一回り大きい上枠部7が一体に結合され、開口2は上枠部7の上端を周縁とし、その輪郭形状が底壁部5の形状に対応する四隅が丸みを帯びた略矩形状とされている。容器本体3は、上方に向って次第に側壁部6が拡開する形状に形成されている。
【0018】
容器本体3において上枠部の一側の長辺部3Aには、外側に突出する一対の支持片8,8が一体に形成され、支持片8,8にはそれぞれ軸部9,9が形成されており、軸部9,9は互いに向き合っている。蓋4には、軸部9,9に係合する係合部10が形成され、蓋4は、係合部10を軸部9,9に枢支され、開口2に対して開閉可能に取付けられている。本実施形態において、ヒンジ構造は、支持片8,8、軸部9,9及び係合部10で構成されている。
【0019】
蓋4は、樹脂材料から成形され、図2にも示すように、開口2の輪郭形状と相似する四隅が丸みを帯びた略矩形状に形成され、蓋4の開口2側の面(下面)の外周縁には、蓋4が閉じられた状態で上枠部7の外周面を覆う壁状の外枠部11が突出して形成されている。また、蓋4の下面において外枠部11の内周側には、開口2の輪郭形状と相似する形状に形成され、蓋4が閉じられた状態で開口2の内周面(上枠部7の内周面)に当接する壁状のインナーリング12が突出するように一体に形成されている。
【0020】
インナーリング12は、ヒンジ構造(係合部10)側に位置し一定高さに設定されたヒンジ側長辺部13と、ヒンジ側長辺部13の両端に連なって湾曲して延出する短辺部14,15と、短辺部14,15の端部を相互に結合する反ヒンジ側長辺部16とを一連に結合して形成されている。図3、図4に示すように、インナーリング12は、その高さがヒンジ構造側から該ヒンジ構造と対向する側に向けて高くなるように傾斜がつけられ、短辺部14,15はそれぞれ、ヒンジ側長辺部13との結合位置(図中、h1参照)から次第に高さが高くなり(図中、h2参照)、その後、一定高さで反ヒンジ側長辺部16まで延出するように形成されている(図中、h3参照)。本実施形態では、短辺部14,15は延在方向の中間位置よりも手前で一定高さとなる。
【0021】
反ヒンジ側長辺部16は、一定高さになった短辺部14,15と同一高さに形成され、これら短辺部14,15を連結させている。
【0022】
図4を参照し、蓋4を閉める際の様子を説明する。同図に示すように、粉粒状製品用容器1では、容器本体3に対して蓋4を閉める際、蓋4が完全に閉め切られる以前のヒンジ側長辺部13が開口2の内周面に浅く当接した時点で、反ヒンジ側長辺部16が開口2の内周面内側に位置して該内周面に当接するとともに、短辺部14,15も開口2の内周面内側に位置して該内周面に当接し、開口2の全周がインナーリング12によって覆われる。蓋4を閉め切った際には、インナーリング12と外枠部11とが開口2を挟み込むようにして覆い、密閉性の万全が期される。
【0023】
以上に記載したように本実施形態に係る粉粒状製品用容器1は、粉粒状の内容物を収納し、内容物を出し入れ可能な開口2を有する容器本体3と、容器本体3の開口2を開閉可能に閉じる蓋4とを備え、容器本体3と蓋4とがヒンジ構造(8,9,10)により結合され、蓋4の開口2側の面に、蓋4が閉じられた状態で開口2の内周面に当接するインナーリング12が突出して設けられ、インナーリング12は、その高さがヒンジ構造側から該ヒンジ構造と対向する側に向けて高くなるように傾斜がつけられている。そして、ヒンジ構造側のヒンジ側長辺部13が、蓋4が完全に閉め切られる以前の開口2の内周面に当接した時点で、反ヒンジ側長辺部16が開口2の内周面内側に位置するように形成されている。
【0024】
この粉粒状製品用容器1では、蓋4によって容器本体3の開口2を閉じる際、ヒンジ構造側のインナーリング12が、蓋4が完全に閉め切られる以前の容器本体3の開口2内側面と当接した時点で、インナーリング12によって開口2全周を覆うことができるため、蓋4を閉め切らない状態でも密閉性を確保でき、製品の劣化を防止することができる。また、蓋4を閉じる際に、ヒンジ構造側のインナーリング12が開口2の内周側にスムーズに入り込むようにすることができ、蓋4をスムーズに閉じることができる。
【0025】
また、インナーリング12の外周側における蓋4の開口2側の面には、蓋4が閉じられた状態で容器本体3の外周面を覆う外枠部11が突出して設けられており、外枠部11とインナーリング12とによって開口2周囲を覆うことで、密閉性を向上できる。
【0026】
また、本実施形態では、容器本体3の開口2及びインナーリング12が互いに相似する略矩形状に形成され、インナーリング12が、ヒンジ構造側に位置する部位(ヒンジ側長辺部13)に連なって湾曲して延出する部位(短辺部14,15)から、次第に高さが高くなるように形成されている。このようにインナーリング12の開口2に干渉しやすい角部分から次第に高さが高くなるように形成した場合には、インナーリング12がスムーズに開口2の内周側に入り込み、スムーズに蓋4を閉じることができる。
【0027】
<第2の実施形態>
次に、図5を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号で示し、説明を省略する。図5は第2の実施形態に係る粉粒状製品用容器20の蓋のみを示している。
【0028】
本実施形態に係る粉粒状製品用容器20は、インナーリングの形状が第1の実施形態と異なる。本実施形態に係るインナーリング21は、ヒンジ側長辺部13の両端に連なって湾曲して反ヒンジ側長辺部16へ延出する短辺部14,15の高さが、ヒンジ側長辺部13から反ヒンジ側長辺部16にかけて次第に高くなるように形成されている(図中、h1及びh2’参照)。
【0029】
このような第2の実施形態に係る粉粒状製品用容器20においても、上記第1の実施形態と同様に、蓋4を閉め切らない状態でも密閉性を確保でき、製品の劣化を防止することができる。また、蓋4を閉じる際に、ヒンジ構造側のインナーリング21が開口2の内周側にスムーズに入り込むようにすることができ、蓋4をスムーズに閉じることができる。
【0030】
以上で本発明の第1及び第2の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では、容器本体3が平面視で矩形状の例を挙げたが、本発明は平面視で円形や楕円形状の容器においても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1,20 粉粒状製品用容器
2 開口
3 容器本体
4 蓋
8 支持片(ヒンジ構造)
9 軸部(ヒンジ構造)
10 係合部(ヒンジ構造)
12,21 インナーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒状の内容物を収納し、該内容物を出し入れ可能な開口を有する容器本体と、該容器本体の前記開口を開閉可能に閉じる蓋とを備えた粉粒状製品用容器において、
前記容器本体と前記蓋とがヒンジ構造により結合され、
前記蓋の前記開口側の面には、前記蓋が閉じられた状態で前記開口の内周面に当接するインナーリングが突出して設けられ、
前記インナーリングは、その高さが前記ヒンジ構造側から該ヒンジ構造と対向する側に向けて高くなるように傾斜がつけられていることを特徴とする粉粒状製品用容器。
【請求項2】
前記インナーリングは、前記ヒンジ構造側の部位が、前記蓋が完全に閉め切られる以前の前記開口の内周面に当接した時点で、前記ヒンジ構造側の部位と対向する側の部位が、前記開口の内周面内側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉粒状製品用容器。
【請求項3】
前記インナーリングの外周側における前記蓋の前記開口側の面には、前記蓋が閉じられた状態で前記容器本体の外周面を覆う外枠部が突出して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒状製品用容器。
【請求項4】
前記容器本体の開口及び前記インナーリングは互いに相似する略矩形状に形成され、
前記インナーリングは、前記ヒンジ構造側に位置する部位に連なって屈曲又は湾曲して延出する部位から、次第に高さが高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉粒状製品用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144289(P2012−144289A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5723(P2011−5723)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】