説明

粒チョコ及びベーカリー

【課題】センターチョコを被覆剤で、簡易かつ短時間で被覆でき、低コストの粒チョコ、及びそれをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーを提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するために、センターチョコと、前記センターチョコを被覆する被覆剤からなる粒チョコであって、粒チョコの少なくとも何れか一面に凹凸を設けたことを特徴とする粒チョコの構成、及びそれらをベーカリー生地に添加、混合し、焼成したことを特徴とするベーカリーの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆剤で被覆された粒チョコに関し、特に、ベーカリー生地に添加され、焼成される粒チョコ、及びその粒チョコをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーに関する。
【0002】
ここで、「ベーカリー」とは、小麦粉などの麦類、米など穀物の粉体を主原料に、糖類、澱粉、油脂類、牛乳、バター、チーズなどの乳成分、卵成分、その他、カカオ製品、野菜、根菜、穀物、フルーツなどの呈味原料、着色、香料、保存料などを混合し、焼成したクッキー、ケーキ、カステラ、饅頭なども含む加熱して得られる和洋菓子類、油揚げドーナツ、蒸しパンなども含む加熱して得られるパン類のことである。
【背景技術】
【0003】
従来からチョコレートに艶出し剤を被覆した菓子が知られている。チョコレートなどにシェラックなどの艶出し剤で被覆するのは、チョコレート菓子に光沢を付与し、外観を良くするためである。さらに、他の目的として、被覆されていないチョコレートを手で持つと、チョコレートが体温で溶け出し、手指を汚すため、それを防止することが挙げられる。
【特許文献1】特開平10−14497号公報
【0004】
さらに、被覆したチョコレートをメロンパンのビス生地などに練り込み、焼成したメロンパンが昨今市販されている。ベーカリーにバリエーション、チョコレートの食感、風味を付与している。
【0005】
パン生地に添加される前記被覆チョコレートは、何れも球形をしている。被覆剤をチョコレートに被覆する場合、レボルパンなどの回転装置にセンターチョコを投入し、液状の被覆剤を噴霧などし、乾燥させて、均一にチョコレート表面をコーティングするためである。
【0006】
さらに、略球形であると、被覆工程中に、各々チョコレートが、被覆剤を介して結合することが少ない。一方、粒チョコが、被覆剤を介して結合(双子ともいう。)すると、商品価値がなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、球形のチョコレートを成型するのは、技術、時間を要する。従って、製造コストが高いものになってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、センターチョコを被覆剤で、簡易かつ短時間で被覆でき、低コストの粒チョコ、及びそれをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、センターチョコと、前記センターチョコを被覆する被覆剤からなる粒チョコであって、粒チョコの少なくとも何れか一面に凹凸を設けたことを特徴とする粒チョコの構成、前記粒チョコが、略円錐形であることを特徴とする粒チョコの構成、前記凹凸が、センターチョコの少なくとも何れか一面に複数の溝又は突起を形成し、被覆剤を被覆して成型されることを特徴とする前記何れかに記載の粒チョコの構成とした。
【0010】
また、センターチョコの成型が、複数のドット状の突起を有すベルトコンベアーのベルト上、又は縦、横方向に線状に複数隆起した突起が交差したベルトコンベアーのベルト上、或いは複数の溝が形成されたベルトコンベアーのベルト上に、センターチョコ原料を滴状に連続的に絞り出し、冷却、固化させて形成したことを特徴とする前記何れかに記載の粒チョコの構成とした。
【0011】
加えて、前記被覆剤が、シェラックであることを特徴とする前記何れかに記載の粒チョコの構成、前記被覆剤が、センターチョコ100部に対して、0.1重量部〜1.5重量部の割合の範囲で、センターチョコを被覆したことを特徴とする前記何れかに記載の粒チョコの構成とした。
【0012】
また、前記粒チョコが、ベーカリー用であることを特徴とする前記何れかに記載の粒チョコの構成とし、さらに、前記何れかに記載の粒チョコをベーカリー生地に添加、混合し、焼成したことを特徴とするベーカリーの構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成であるから以下の効果がある。第1に、センターチョコの少なくとも何れか一面に凹凸を設けることで、被覆剤の被覆工程において、センターチョコがそれぞれ被覆剤を介して結合した双子の双子発生率が低下し、歩留まりが向上する。
【0014】
第2に、粒チョコを球形でなく、特に、略円錐形とすることにより、センターチョコも略円錐形でよいため、粒チョコを容易に製造することができる。従って、生産性が極めてよい。また、円錐形であれば、成型後に、球形のように転がらないので、梱包、生地添加において作業性もよい。
【0015】
また、球形でなくとも、被覆剤の被覆工程において、センターチョコがそれぞれ被覆剤を介して結合した双子を形成しづらいため、歩留まりもより。一方、単なる平坦形状の粒チョコに被覆剤を回転させながらコーティングした場合は、粒チョコが数個集まって、固まってしまうため、全く商品価値がない。
【0016】
加えて、略円錐形の粒チョコであれば、球形の粒チョコに比べ、生地への混入、分散性がよい。粒チョコをベーカリー生地に添加後、生地中に均一に分散させるため、さらに練り作業を行う。しかし、球形であると、生地に引っ掛かる箇所がないため、混入しづらい。滑って生地外に飛び出てしまうことがある。
【0017】
さらに、球形の粒チョコでは、ベーカリー生地成型後、生地表面に球形の粒チョコが突出してしまう傾向にある。生地表面近くに分散した球形の粒チョコは、その弧形状により、粒チョコと接触するベーカリー生地がグルテンの収縮作用により生地本体に引き込まれ、球形の粒チョコ表面の生地が薄くなってしまうためである。
【0018】
そのままベーカリー生地を成型し、焼成すると、生地表面に突出した粒チョコは、オーブンの熱で簡単に溶解し、外観よく、仕上がらない。
【0019】
一方、略円錐形であると粒チョコ分散時のベーカリー生地の練り作業中にも、略円錐形の角とベーカリー生地とが絡み、生地表面に集まることがなく、生地中により均一に分散する。このことは、発明において新たに見出された。
【0020】
粒チョコ一面の凹凸成型には、センターチョコ成型を、複数のドット状の突起を有すベルトコンベアーのベルト上、又は縦、横方向に線上に隆起した突起が交差したベルトコンベアーのベルト上に、或いは複数の溝が形成されたベルトコンベアーのベルト上に、センターチョコ原料を滴状に連続的に絞り出し、冷却、固化させ、センターチョコに溝或いは突起を形成すればよい。それにより、連続生産が可能で、ベルトからの剥離も容易になり、簡易に粒チョコ少なくとも何れか一面(底面)に凹凸を成型することができる。
【0021】
第3に、センターチョコ表面をシェラックなどの親水性被覆剤により被覆することで、粒チョコの表面が油性から親水性になるためベーカリー生地に混合したとき、一層生ベーカリー生地への分散・馴染みが良くなり、生地から粒チョコがはじき出されにくくなる。
【0022】
また、チョコレートの生地へ溶け出しが抑えられ、生地が着色しにくくなる。耐熱性も向上し、融点が低いチョコレートでも焼成時に溶けにくくなり、より口溶けのよいチョコレートをベーカリー生地に添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、センターチョコを被覆剤で、簡易かつ短時間で被覆でき、低コストの粒チョコ、及びそれをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーを提供する目的を、略円錐形で、その底面に複数の溝又は突起を形成したセンターチョコに、シェラック等の被覆剤を好ましくはセンターチョコ100部に対して、0.1重量部〜1.5重量部の割合の範囲で被覆した粒チョコであって、粒チョコの少なくとも何れか一面に凹凸を設けたことを特徴とする粒チョコの構成とした。また、その粒チョコをベーカリー生地に添加、混合し、焼成したことを特徴とするベーカリーの構成とすることで実現した。
【0024】
粒チョコとは、最長部の長さが2〜20mm程度の大きさの粒状のチョコレートであって、略球形、略多面体、略円錐形、略円柱、略多角柱、着三角錘、略立方体、略直方体、略コイン状、略円盤状、滴状、不定形など種々の形状がある。
【0025】
センターチョコとは、一般的なチョコレートであり、混入されるベーカリー生地、形状、加熱状況により、種々の組成、形状を選択することができる。その形状は、粒チョコ同様である。なお、センターチョコを他の菓子類、素材などに替え、被覆剤で被覆し、ベーカリー生地に混合、焼成してもよい。
【0026】
被覆剤とは、センターチョコを被覆するもので、例えば、糖液、澱粉、増粘多糖類、ワックス、その他光沢剤、それら混合物などが例示できる。特に、素材間の隔離作用、耐熱性、風味の点からシェラックが好適である。
【0027】
シェラックとは、ラックカイガラムシから分泌される食品添加物として認められている樹脂状物質のことである。シェラックは、アルコール系溶剤にのみ可溶で、アルコール溶液を蒸発させることで、透明被膜を形成することができる。
【0028】
シェラック溶液は、油脂層(チョコレート)との親和性が低いため、糖液などの親和性の高い溶液を噴霧し、乾燥することで糖衣層を形成し、その後シェラック溶液を噴霧・乾燥することもできる。
【0029】
本発明においては、シェラックを例えばエタノール等の溶媒に溶解させてシェラック液として、センターチョコ2に噴霧、乾燥して、シェラック被膜を形成し、センターチョコをシェラックで被覆する。他の素材、例えは、糖、α化澱粉、増粘多糖類などの溶液を使用してもよい。但し、乾燥後において、シェラックが、センターチョコ100重量部に対して、0.1〜1.5重量部になるように、センターチョコに添加することが望ましい。さらに、好ましくは、センターチョコ100重量部に対して、シェラックが0.3〜0.9重量部である。被覆剤が、0.1未満では生地への着色、耐熱性が低下し、1.5より多くでは、被覆剤の苦みが強く感じられ、コストも高いものになってしまう。
【0030】
被覆とは、センターチョコを完全に覆うこと、また一部センターチョコを露出した状態で覆うことも含む概念である。ベーカリー生地への着色度合い、粒チョコに求められる耐熱性により、完全被覆することを要しない。
【0031】
凹凸とは、粒チョコの少なくとも1面に、窪みと突起、或いは平坦部と窪み、又は平坦部と突起がある状態で、窪み、突起の形状は、略円錐形、略円柱、略多角柱、着三角錘、略立方体、略直方体などの他不定形があり、平坦でないことを意味する。
【実施例1】
【0032】
以下、添付図面に基づいて、本発明である粒チョコについて、詳細に説明する。図1は本発明である粒チョコの側面図、図2は底面図、図3は図2の一点鎖線矢印A位置での縦断面模式図である。
【0033】
本発明の一例である粒チョコ1は、略円錐形のセンターチョコ2の表面が被覆剤3で被覆され、全体として略円錐形をしている。底面には、凹部1a、凸部1bが複数形成され、底面全体として凹凸形状になっている。なお、図2の点線で示した溝2a、平坦部2bは、センターチョコ2の底面の形状である。
【0034】
センターチョコ2は、チョコレートであれば、原料組成、製法など特に限定されず、用途に応じ適宜選択することができる。融点、糖度、カカオ成分、油脂の種類・組成量、乳化剤、香料など一般にチョコレートとして、製造、販売されている規格で問題ない。
【0035】
被覆剤3は、チョコレートの被覆剤として、一般に使用されているものが使用でき、 ここでは、日本シェラック工業(株)製、ラックグレース30E(シェラック30重量%、エタノール70重量%)のシェラック液を使用した。
【0036】
センターチョコ2は、所定の粘度で、加温されたチョコレート原料を、デポジッターで、ベルトコンベアーのベルト上に上方から滴状に定量を絞り出し、冷却、温調によるテンパリング工程を取り、略円錐形に成型した。
【0037】
このときのベルトは、表面に縦、横方向に線上に隆起した突起が交差した格子状の隆起を設けものを使用した。絞り出し、固化成型時にセンターチョコ2底面に溝2aと、平坦部2bが形成される。このセンターチョコ2に、回転機であるレボルパン(後藤製作所)内で、回転させながら上記シェラック液を噴霧し、風を当て乾燥させることで、粒チョコ1に被覆剤3層を形成しつつその底面に凹凸を形成した。
【0038】
自動絞り機は、加温されたチョコレート原料をタンクに貯め、ピストンポンプ、ギア回転により定量絞り出す機械(デポジッターなど)である。回転機は、レボルパン(後藤製作所)など、製菓材料を釜内に入れ、釜を回転させ、糖衣を形成する装置が使用できる。
【0039】
図4は、センターチョコの底面の凹凸を形成するベルトコンベアーの平面図である。図5は、センターチョコの底面の凹凸を形成するベルトコンベアーのベルトの断面図であり、図4の一点鎖線部の矢印B位置の断面である。
【0040】
ベルトコンベアー4に用いられるベルト4aの表面に、突起4cを設け、ベルト4a上に滴状に絞られたセンターチョコ2(図2点線)の略円錐形の底面に、ベルト4aの平坦面4bに対応する平坦部2b、突起4cに対応する溝2aを形成する。これによりなるセンターチョコ2に回転させながら、液状の被覆剤を噴霧し、乾燥させることで、センターチョコ2の表面をほぼ均一に被覆することができる。
【0041】
ここでの突起4cは、ベルト4aに平坦面4bを残し、縦、横方向に断面三角形状に連続して隆起させ、それぞれ交差して格子状の模様を形成する。突起4cの高さは、平坦面4bから0.1〜0.5mm程度あれば、被覆しても粒チョコ1に凹凸を十分形成することができる。また、三角形状の突起の底辺は、1〜3mm程度あることが望ましい。溝2aの幅が狭すぎると、被覆剤が溝2aに十分浸透しなくなるからである。
【0042】
また、突起4cは、断面三角形状でなくとも、断面四角形、円形に連続させてもよい。さらには、半円形、四角形の突起を所定の間隔を開け、点在させてもよい。あるいは、半円、四角形、三角形などに、ベルト表面に陥没させてもよい。
【0043】
図6は、シェラック被覆後の双子率の結果である。センターチョコ形状、底面形状、被覆量を変え被覆し、乾燥したときの粒チョコの双子率を求めた。
【0044】
シェラックは、エタノールに30重量部のシェラックが可溶した上述のシェラック液を使用した。各粒チョコをレボルパン(後藤製作所製)の釜に50kg投入し、回転させながら、シェラック液
約167g(シェラック被覆量0.1重量部/実施例A)、
500g(シェラック被覆量0.3重量部/比較例a、b、実施例B)、
1.5kg(シェラック被覆量0.9重量部/実施例C)、
3.0kg(シェラック被覆量1.8重量部/比較例d)
それぞれ噴霧し、風を当て乾燥させた。なお比較例cは、被覆剤による被覆を行わない。
【0045】
(比較例a)
球形の粒チョコは、約4mmの被覆されていない市販のチョコレートをセンターチョコとして使用した。
【0046】
(比較例c、実施例A〜C、比較例d)
略円錐形で、底面に凹凸状に成型した粒チョコは、センターチョコを前述の突起4cを有するベルトコンベアーと、デポジッターで、滴状に約0.1g絞り成型した。チョコレート原料は、カカオ10重量部、ココア25重量部、砂糖40重量部、油脂25重量部、融点約36℃であった。なお、絞り重量は、概ね0.02g〜2gの範囲で、使用されるベーカリーの形態に応じて、適宜選択することができる。
【0047】
(比較例b)
また、略円錐形の底面が平坦の粒チョコは、ベルトに突起、窪みがない平坦なベルトコンベアーと、デポジッターにより滴状に同量絞り成型した。
【0048】
双子率(%)は、被覆された粒チョコの内、結合した全ての粒チョコの重量/投入した粒チョコの全量である50kg×100で求めた。
【0049】
球形については、計算はしなかったが、殆ど粒チョコ同士の結合はみられなかった。
【0050】
略円錐形状の粒チョコにおいて、底面が平坦な比較例bでは、底面が凹凸状のものに比べ高かった(30.0%)。しかし、結果は示さないが、キューブ状の粒チョコでも同様に高かった。
【0051】
一方、略円錐形状の粒チョコの底面を凹凸形状(実施例A〜C、比較例d)とすることで、双子率(%)は極めて低く抑えられた。これは、略円錐形状粒チョコ同士の接触面積が、側面が孤城、底面に凹凸とすることで、平坦状の粒チョコに比べ、極めて少なく、撹拌時に粒チョコ同士が貼り付きづらいことに起因すると思われる。
【0052】
次に、略円錐形の粒チョコをベーカリー生地に、添加、混合し、焼成したベーカリーについて説明する。
【0053】
ベーカリーの生地としては、メロンパン本体生地、メロン皮(ビス)生地などの菓子パン、食パン、ドーナツ生地など一般的な製パン生地、クッキー、ビスケットなどの一般的な菓子生地が使用できる。生地に一定の粘度があることにより、生地の成型後焼成まで粒チョコが沈降することなく、焼成後、粒チョコがベーカリー内に粒チョコを点在させることができる。
【0054】
図7は、メロンパンビス生地に粒チョコを混合し、焼成したときの結果である。使用した粒チョコは、比較例a〜d、実施例A〜Cで、センターチョコ形状、底面形状、シェラック被覆量は、図6と同じである。
【0055】
メロンパンビス生地の組成(何れも重量部)は、小麦粉(強力)100、ショ糖50、ショートニング20、全卵20、水8、ベーキングパウダー1、粒チョコ20とした。
【0056】
パン生地の作成は、一般的な配合、製法でよい。ここではストレート法によって、メロンパン生地を作成した。生地を60gに分割してから丸め、ベンチタイムを20分とった後、伸ばしたビス生地を乗せ、湿度60%、温度38度にて60分間二次発酵させてメロンパン生地とした。続いて、オーブン190℃にて、約13分焼成した。なお、粒チョコは、20重量部に限定されるものではなく、適時増減できる。
【0057】
室温にて冷却後、熟練したパネラーが図7に示す官能検査を行った。「生地の着色」は、目視で確認しチョコレートの生地への溶出が多いものを×、少ないものを○とした。なお、ここでは、白い生地の仕上がりが目的であるので、着色が多いものを×としたが、生地自体が、ココア、コーヒーなどで着色される場合は、チョコレートの色が生地に転写されても問題ない。
【0058】
「生地なじみ」は、混合時の生地への混入具合などの作業性、成型後のメロン生地表面へ突出している粒チョコの量、焼成後の生地を裂いたときの粒チョコの生地中での点在具合などの外観を総合して判断した。
【0059】
その結果、球形の粒チョコ(比較例a)は、作業性、生地表面へ突出、焼成後の外観の何れの項目でも、略円錐形の粒チョコより劣っていた。一方、略円錐形状の粒チョコ(シェラック被覆なし/比較例c)では、生地の着色は濃いものの、球形の粒チョコに比べ生地なじみはよかった(△)。
【0060】
なお、比較例bにおいては、略円錐形状のため、生地なじみはよいものの、生地への粒チョコ混入時に、撹拌機の容器壁面に粒チョコ底面が貼り付き、作業性がよくなかった。従って、評価は、(△)とした。
【0061】
一方、略円錐形で、底面に凹凸形状を有し、シェラック被覆した粒チョコ(実施例A〜C、比較例d)は、作業性、生地表面への突出具合、焼成後の外観ともに最も優れていた(○)。これは、シェラック被覆により、粒チョコ表面が浸水性になったこと、粒チョコ全体形状が略円錐形であること、底面の凹凸に起因すると思われる。シェラック被覆した球形の粒チョコより、シェラック被覆なしの略円錐形の粒チョコの方が、生地なじみが良かったことから、生地なじみにおいては、シェラク被覆であることより、粒チョコ全体形状が略円錐形であること、及び底面が凹凸であることがより重要であることが分かった。
【0062】
「食味」は、粒チョコが、チョコレートとして、違和感ないか検査した結果である。比較例d以外は、何ら違和感がなかった。しかし、比較例dは、シェラク被覆量が、センターチョコ100重量部に対して、1.8重量部あり、シェラック特有の苦みが、顕著に感じられ、チョコレートとの風味として好ましくなかった。
【0063】
なお、シェラック被覆量が、0.1重量部を下回ると、パン生地への着色が濃くなり、焼成中に粒チョコが溶け出す傾向が強かった。0.1重量部未満では、センターチョコ表面を必要量被覆できないためであると考えられる。
【実施例2】
【0064】
第2の実施形態の粒チョコの縦断面模式図である。本発明の一例である粒チョコ5は、センターチョコ6と、被覆剤3からなり、全体として略円錐形である。粒チョコ5の底面には、凹部5aと複数の凸部5bが複数形成されている。凸部5bは全体として略円錐形である。
【0065】
被覆剤3は、実施例1における被覆剤3と同じである。センターチョコ6は、その底面には、平坦部6aから突出した突起6bが複数形成されている。突起6bは略円錐形である。
【0066】
センターチョコ6の底面は、実施例1に記載のチョコレート組成をデポジッターで、複数の溝を有するベルトコンベアーのベルト上に所定量絞り出し、冷却固化して形成した。その後の被覆工程は、実施例1と同じであり、被覆剤がシェラックであれば、センターチョコ100重量部に対して、0.1重量部〜1.5重量部の範囲で被覆すればよい。
【0067】
このようにしてなる粒チョコ5も、双子率発生、生地への着色、生地へのなじみ、食味において、実施例1に記載の実施例A〜C同様の結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明である粒チョコの側面図である。
【図2】本発明である粒チョコの底面図である。
【図3】本発明である粒チョコの縦断面模式図である。
【図4】センターチョコの底面の凹凸を形成するベルトコンベアーの平面図である。
【図5】センターチョコの底面の凹凸を形成するベルトコンベアーのベルトの断面図である。
【図6】シェラック被覆後の双子率の結果である。
【図7】メロンパン生地に粒チョコを混合し、焼成したときの結果である。
【図8】第2の実施形態の粒チョコの縦断面模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 粒チョコ
1a 凹部
1b 凸部
2 センターチョコ
2a 溝
2b 平坦部
3 被覆剤
4 ベルトコンベアー
4a ベルト
4b 平坦面
4c 突起
5 粒チョコ
5a 凹部
5b 凸部
6 センターチョコ
6a 平坦部
6b 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターチョコと、前記センターチョコを被覆する被覆剤からなる粒チョコであって、粒チョコの少なくとも何れか一面に凹凸を設けたことを特徴とする粒チョコ。
【請求項2】
前記粒チョコが、略円錐形であることを特徴とする請求項1に記載の粒チョコ。
【請求項3】
前記凹凸が、センターチョコの少なくとも何れか一面に複数の溝又は突起を形成し、被覆剤を被覆して成型されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粒チョコ。
【請求項4】
センターチョコの成型が、複数のドット状の突起を有すベルトコンベアーのベルト上、又は縦、横方向に線状に複数隆起した突起が交差したベルトコンベアーのベルト上、或いは複数の溝が形成されたベルトコンベアーのベルト上に、センターチョコ原料を滴状に連続的に絞り出し、冷却、固化させて形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の粒チョコ。
【請求項5】
前記被覆剤が、シェラックであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の粒チョコ。
【請求項6】
前記被覆剤が、センターチョコ100部に対して、0.1重量部〜1.5重量部の割合の範囲で、センターチョコを被覆したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の粒チョコ。
【請求項7】
前記粒チョコが、ベーカリー用であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の粒チョコ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の粒チョコをベーカリー生地に添加、混合し、焼成したことを特徴とするベーカリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−291142(P2009−291142A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149462(P2008−149462)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(391005569)東京フード株式会社 (6)
【Fターム(参考)】