説明

粒子の検出のための装置および方法

本発明は、粒子を定性的および/または定量的に検出する装置および方法に関する。詳細には、本発明は粒子を検出する装置に関し、第1表面と第1表面に対向して配置された第2表面の間のチャンバ本体内に形成された反応チャンバと、1つ以上の転位器とを含み、第1表面と第2表面の間の距離が、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能である。本発明はまた、粒子検出に対応する方法に関し、検出すべき1種以上の粒子を含むと思われるサンプルを反応チャンバ中に配置すること、反応チャンバ内のサンプルの少なくとも一部を1つ以上の転位器によって転位すること、および1種以上の粒子の存在および/または数を示唆する値を検出/判定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、独国特許出願第102005052752号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに本出願は、独国特許出願第102005052713号および「Method and device for the detection of molecular interactions」の名称で2006年11月06日出願の国際特許出願(Maiwald参照番号C7794)に関し、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、粒子の検出のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトおよびヒト以外の体液などのサンプル中の細胞またはウイルスなどの1種以上の粒子の存在の検出および/または絶対レベルの計数は、人間および哺乳動物全体の健康状態を決定するのに非常に重要である。そのような用途の臨床的に重要な例は、HIV陽性被験者中のCD4+細胞、化学療法を受けている患者の顆粒球および小板、血液バッグ中の白血球の計数を含む。他方、非医学的用途は、下水の環境サンプルまたは食品中の(細菌性)汚染の検出を含む。
【0004】
そのような分析を行うための主要な分析プラットホームは、現在フローサイトメトリーに基づく分析システムである。フローサイトメトリーは、目標粒子をその中に有するサンプルを含む流体をフローサイトメトリーの検出領域に送達することを含む。粒子はシース流体内での水力学的な集束を用いてコア流に沿って単一列に配置される。次いで、粒子は個別に光ビームによって検査される。典型的に、検出領域の目標粒子は、目標粒子による発光現象を発生させるレーザーを用いて照射される。光学系および検出電子機器が、サンプル中の目標粒子の光の吸収、散乱、蛍光、および/または分光特性、または替わりに、目標粒子に添付した蛍光標識のそれぞれの特性を測定する。蛍光の場合、各目標粒子はそれが照明領域を通過する際に蛍光光子を放出する。さらに、照明または励起光からの蛍光の区別はフィルタまたはフィルタの組み合わせによって達成することができる。蛍光の検出は光電子増倍管またはフォトダイオードを用いて達成される。他の技術は目標粒子による照明ビーム中の光子の散乱によるものである。目標粒子は散乱の角度の関数として、すなわちそのサイズおよび形状ならびに散乱された光子の波長の関数として、その光散乱によって識別される。
【0005】
したがって、単一目標粒子の良好な検出および識別はいくつかの要因に依存する。第1に、レーザーエネルギーは目標粒子が照射領域をすばやく通過する間に十分大きな数の蛍光(または、替わりに散乱)光子を発生させるのに十分でなければならない。典型的に、粒子の検出は、目標粒子からの蛍光の放出が背景の光子の不規則な変動から確実に区別されるように、十分な数の光子が発生するとき行われる。第2に、サンプル中のキャリア液体または液体中の不純物によって放射される散乱または蛍光、ならびに流体が通過する毛管の壁など装置自体から発生するこれらの望ましくない背景光子を最小化することが重要である。
【0006】
フローサイトメトリーおよびそれらの異なる用途における使用方法は、例えば、Sharpiro,R.M.(2002)Practical Flow Cytometry,4th ed.,Wiley−Liss,New York,NY、ならびに、中でも、国際公開第90/13368号、第99/44037号、および第01/59429号に記載される。
【0007】
しかし、従来のフローサイトメトリーシステムは典型的に嵩高い機器のため通常の臨床使用には不便であり、これは「現場」測定(例えば、ベッド脇での試験)を困難にするばかりでなく、分析ごとに高い経費を生じる。したがって、好ましくは類似の性能特性を有する、簡単でより小型で安価なシステムが必要であるのは明らかである。
【0008】
したがって、より小さなサンプルおよび試薬容積しか必要としないサイトメトリーを開発するために、近年の微小流体技術が用いられた(例えば、Altendorf,E.ら、(1997)、Sens.Actuat.1,531−534、Huh,D.ら(2005)Physiol.Meas.26,R73−R98、Dittrich,P.S、およびManz,A.(2005)Anal.Bioanal.Chem.382,1771−1782を参照されたい)。これらの努力に基づく分析機器は従来の装置よりも小さく、より携帯性がある。
【0009】
そのような小型化されたフローサイトメトリーの例は、国際公開第02/10713号に記載される。この装置はそれぞれサンプル流体受容器および流体を支持する貯蔵器に結合された不正確な流体駆動器を用いる、閉ループフィードバック経路によって制御され、したがって、より小型の機器設定が可能である。
【0010】
また、フローサイトメトリーを使用する替わりに、対象の粒子に特定の分子マーカー(すなわち標識)を用いることによって、所与のサンプル中の粒子の存在および/または数を間接的に求めることが可能であり、そのサンプル中のコピー数が粒子の数に相関する。現在、そのような分析を行うには、例えば、ELISAに基づく分析(例えば、Kannangal,R.ら、(2001)Clin.Diagn.Lab.Immunol.8,1286−1288参照)、ならびに、被覆された常磁性ビーズ(例えば、Carella,A.Y.ら、(1995)Clin.Diagn.Lab.Immunol.2,623−625参照)または被覆されたラテックスビーズ(例えば、Balakrishnan,P.ら、(2004)J.Acquir.Immune Defic.Syndr.36,1006−1010参照)の使用を含む顕微鏡に基づく方法などの異なる手法が可能である。さらに、特に標識を付けた粒子を、顕微鏡光学系を用いてそれらを画像形成する前に膜上に捕捉することも可能である(Rodriguez,W.R.ら、(2005)PLOS Medicine 2,e182,663−672)。
【0011】
粒子を計数する他の種類の分析装置は、国際公開第2005/008226号に記載されている。装置は、染料で標識を付けた分析すべき粒子を含むサンプルチップの部分領域に光を投射する光源と、直前に撮影された領域に隣接するある領域が光の入射点に移動するように、チップの位置を所定時間間隔ごとにそれぞれ対物レンズおよび光源に対して所定の距離移動させるための移動器とを含む。したがって、サンプルチップ上の部分領域は連続的に撮影される。各部分領域中の粒子数が計数され、数学的に処理されてサンプル中の粒子の総数が計算される。
【0012】
さらに、米国特許出願第2006/0024756号は磁気的に標識を付けた目標粒子または細胞の検出のための小型画像形成サイトメトリー装置に関する。その目的のために、分析すべき生物サンプル中に存在するすべての細胞は蛍光で標識が付けられるが、強磁性ビーズに結合した単クローン抗体を用いて目標細胞だけが磁気的に標識が付けられる。標識を付けられたサンプルはチャンバまたはキュベット中で2つの楔形状の磁石の間に置いて、キュベットの観察表面上で磁気的に標識を付けた細胞を選択的に動かす。LEDが細胞を照明し、CCDカメラが目標細胞によって放射される蛍光の画像を捕捉する。デジタル画像分析は元のサンプルの目標細胞濃度に相関し得る表面上の細胞の計数を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これらの上述の全ての装置および方法は比較的複雑な検出技術を必要とし、これは初期コストおよび必要な分析機器の保守の両方とも高価になり、高度に訓練を受けた人を必要とする。これは従来のシステムを通常の医療、「ベッド脇」試験、または遠隔地での実施には不適切である。
【0014】
したがって、上述の制約を克服する、サンプル中の1つ以上の粒子を定性的および/または定量的に検出するための分析装置が必要である。詳細には、所与の粒子が少量(すなわち少数)であっても、高感度だけでなく実施が容易でコスト効率良く検出可能な装置が必要である。
【0015】
さらに、迅速に信頼性高く所与のサンプル中の1種以上の粒子の存在を検出し、および/または量を正確に測定するための、そのような分析装置を用いる対応方法が必要である。詳細には、「現場」で、すなわち、分析すべきサンプルの収集の間、または直後に実施することのできる方法が必要である。
【0016】
したがって、本発明の目的はそのような分析装置ならびにそれを用いる対応方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様において、本発明は粒子の定性的および/または定量的検出に関し、第1表面と第1表面に対向して配置された第2表面の間のチャンバ本体内に形成された反応チャンバと、1つ以上の転位器(displacer)とを含み、第1表面と第2表面の間の距離は、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能である。
【0018】
1つ以上の転位器は第1表面および/または第2表面に一体化された部分(「転位構造」)とすることができ、または第1表面および/または第2表面に対向して配置された内蔵式(self−contained)本体(「転位体」)とすることができる。1つ以上の転位器は弾性的に変形可能な材料から作ることができる。好ましい実施形態において、装置は2つの転位器を含み、同じ表面または異なる表面のいずれかに対向して配置することができる。
【0019】
第1表面および/または第2表面の少なくとも一部分は透明な材料から作られるのが好ましい。さらに、第1表面および/または第2表面の少なくとも1つ以上の部分は弾性的に変形可能であるのが好ましい。少なくとも1つ以上の弾性的に変形可能な部分が1つ以上の転位器に対向して配置されるのが特に好ましい。少なくとも1つ以上の弾性的に変形可能部分は、検出が行われる表面領域とは異なることができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は反応チャンバが弾性的に変形されたとき、反応チャンバの容積を本質的に一定に保つことを可能にする1つ以上の手段をさらに含む。1つ以上の手段は反応チャンバの側面境界を定める弾性側壁を含むのが好ましい。
【0021】
さらに他の態様において、本発明は少なくとも2つの部分を含むシステムに関し、少なくとも2つの部分の各々が第1表面と第1表面に対向して位置する第2表面の間のチャンバ本体内に形成された反応チャンバと、1つ以上の転位器とを含み、第1表面と第2表面の間の距離は第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能であり、少なくとも2つの部分の反応チャンバは互いに連通する。
【0022】
反応チャンバ、第1表面、第2表面および/またはシステムの一部分である少なくとも1つの転位器は、本発明の装置で述べたようにして形成することができる。
【0023】
一実施形態において、システムは、反応チャンバが弾性的に変形されたとき反応チャンバの容積を本質的に一定に保つことを可能にする1つ以上の手段をさらに含む。1つ以上の手段は反応チャンバの側面境界を定める弾性側壁を含むのが好ましい。
【0024】
他の実施形態において、システムは検出システムをさらに含む。
【0025】
システムは少なくとも2つの装置の反応チャンバの各々に連通するサンプル導入通路と、場合によって、2つ以上の反応チャンバ間に過渡的な流体連通を可能にする1つ以上の手段を含むのが特に好ましい。
【0026】
さらに他の態様において、本発明は粒子の定性的および/または定量的検出方法に関し、検出される1種以上の粒子を含むと思われるサンプルを反応チャンバ中に配置すること、反応チャンバ内のサンプルの少なくとも一部を1つ以上の転位器によって転位すること、1種以上の粒子の存在および/または数を示す値を検出/判定することを含む。
【0027】
分析すべきサンプルは生物サンプルであり、検出すべき1種以上の粒子は、原核生物細胞、真核生物細胞、およびウイルス粒子からなる群より選択されるのが好ましい。
【0028】
好ましい実施形態において、サンプルを反応チャンバ内に配置することはこのサンプルを本発明による装置の反応チャンバ中に導入することを含む。
【0029】
サンプルの少なくとも一部は、第1表面および/または第2表面の表面領域の1つ以上の部分で第1表面および/または第2表面へ1つ以上の転位器の少なくとも1つで圧力を加えることによって、好ましくは第1表面と第2表面の間の距離を変化させ、特に好ましくは縮小させることによって、転位することが好ましい。
【0030】
本発明の方法の好ましい実施形態において、サンプルの少なくとも一部を転位した後に、縮小した距離は続いて再び拡大される。この距離の縮小および続く再拡大は繰り返し行うことができる。検出は第1表面と第2表面間の距離が縮小された後に行われるのが好ましい。
【0031】
一実施形態において、本発明の方法は、複数の粒子を含むサンプルを反応チャンバ中に配置することと、反応チャンバ内のこの複数の粒子の部分集合を1つ以上の転位器によって転位することと、反応チャンバ内に転位された粒子の部分集合の数を示す1つ以上の値を求めることと、場合によって、検出の間に得た1つ以上の値から反応チャンバ中の複数の粒子の総数を計算することとを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、方法は、検出を行う前に、各々1つ以上の検出可能な部分を含む1つ以上の薬剤を反応チャンバ中に配置/導入することをさらに含む。1つ以上の薬剤は核酸、ペプチド、プロテインドメイン、プロテイン、炭水化物、低分子量化学化合物、およびその類似品および/または混合物からなる群より選択され、検出すべき1つ以上の粒子に結合親和性を有する。
【0033】
さらに他の態様において、本発明は、サンプルの複数の粒子を検出チャンバ内に配置することと、複数の粒子の適切な部分集合だけが残るように、複数の粒子のいくつかを検出チャンバから転位することと、複数の粒子の部分集合の粒子を光学的に検出することと、検出された粒子に基づいて、粒子の部分集合の粒子数を示す値を求めることとを含む方法に関する。
【0034】
一実施形態において、方法は、適切な部分集合の粒子数を示す値に基づいてサンプル中の粒子の数または存在量の数を示す値を求めることをさらに含む。場合によって、この測定はさらに検出チャンバの検出容積のサイズに基づく。
【0035】
好ましい実施形態において、方法はさらに、サンプルの複数の粒子を検出チャンバ内に配置して複数の粒子のいくつかを検出チャンバから転位するステップを繰り返すステップをNR回繰り返すことを含み、いずれの場合にも、複数の粒子の適切な部分集合だけが残るようにされ、NR≧2の場合、NR繰り返し数のNDについては、複数粒子の部分集合の粒子を光学的に検出すること、および検出された粒子に基づいて、粒子の適切な部分集合の粒子数を示す値を求めることを含み、ND≧NRである。
【0036】
本発明の方法のさらに他の好ましい実施形態において、配置と転位のステップをNR回繰り返すことは、NR回の繰り返しごとに、転位された複数粒子の少なくともいくつかを検出チャンバに再導入することを含む。
【0037】
本発明の他の好ましい実施形態において、複数粒子のいくつかを転位することは、検出チャンバ容積の減少、すなわち、チャンバの第1壁と第2壁間の距離の縮小を含むことができる。
【0038】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、サンプルの複数粒子を検出チャンバ内に配置すること、複数粒子の適切な部分集合だけが残るように複数粒子のいくつかを検出チャンバから転位すること、複数粒子の部分集合の粒子を光学的に検出すること、および粒子の部分集合中の目標粒子の存在を求めることを含む。
【0039】
他の実施形態において、本発明の方法は、サンプルの第1の複数の粒子を検出チャンバ内に配置すること、検出チャンバの容積を減少させること、検出チャンバ内の粒子を光学的に検出すること、および検出された粒子に基づいて、検出チャンバ内に存在する粒子の数を示す値を求めること、検出チャンバの容積を増加させること、サンプルの第2の複数の粒子を検出チャンバ内に配置すること、検出チャンバの容積を減少させること、および検出された粒子に基づいて、検出チャンバ内に存在する粒子の数を示す値を求めることを含む。
【0040】
さらに他の態様において、本発明は、複数の粒子を含むサンプルを受容するように構成された検出チャンバと、複数粒子の適切な部分集合だけが残るように検出チャンバから複数粒子のいくつかを転位するように構成されたアクチュエータと、粒子の部分集合の粒子を検出するように構成された検出器と、検出された粒子に基づいて、粒子の適切な部分集合の粒子数を示す値を求めるように構成されたプロセッサとを含む装置に関する。
【0041】
装置は、アクチュエータを操作して、転位された複数粒子の少なくともいくつかを検出チャンバに再導入し、続いて、複数粒子の第2の適切な部分集合だけが残るように複数粒子のいくつかを検出チャンバから転位するように構成され、プロセッサは検出器を操作して第2の適切な部分集合の粒子を検出し、検出された粒子に基づいて粒子の第2の適切な部分集合の粒子の数を示す値を求めるように構成されるのが好ましい。
【0042】
装置は、検出チャンバから転位された粒子を受容することのできる貯蔵器をさらに含み、その粒子から検出チャンバへ再導入することができる。
【0043】
一実施形態において、プロセッサは検出された粒子に基づいて、粒子の部分集合の粒子中に目標粒子の存在を測定するように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
第1の態様において、本発明は粒子の定性的および/または定量的検出のための装置に関し、
(a)第1表面と第2表面の間のチャンバ本体内に形成され、第2表面が第1表面に対向して配置された反応チャンバと、
(b)1つ以上の転位器と、を含み、
第1表面と第2表面の間の距離は、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能である。
【0045】
本発明の範囲内において、「反応チャンバ」(本明細書において「反応空間」または「検出チャンバ」、または「チャンバ」とも呼ばれる)は第1表面と第2表面の間のチャンバ本体内に形成される空間を指す。反応チャンバは任意の基本的形状、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形とすることができる。本発明の好ましい反応チャンバは、立方形または円筒形の三次元形状を有する。特に好ましい反応チャンバは(毛管)チャンネルとして構成される。場合によって、反応チャンバは、テーパーの付いた部分を含むことができる。例えば、反応チャンバは中央領域から一方または両方の終端領域へテーパーを付けることができる。反応チャンバは側壁によって側面境界が定められる。第2表面は第1表面に対向して、または実質的に対向して配置される。第1および第2表面は互いに平行または実質的に平行に配置される。
【0046】
第1表面と第2表面間の距離は、反応チャンバに面する装置の第1表面の側と反応チャンバに面する第2表面の側の間の距離で画定され、反応チャンバの厚さとも呼ばれる。本発明によれば、反応チャンバの厚さは通常最大1cm、好ましくは最大5mm、特に好ましくは最大3mm、最も好ましくは最大1mmである。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、反応チャンバは毛管間隙として設計され、これは第1表面と第2表面の間に働く毛管力によって充填することができる。通常、毛管間隙は最大1mm、好ましくは最大750μm、特に好ましくは最大500μmの厚さを有する。本発明の好ましい実施形態において、毛管間隙は300μmの厚さを有し、厚さ200μmがさらに好ましく、厚さ150μmが特に好ましい。
【0048】
本発明による分析装置において、第1表面と第2表面の間の距離は可変である。好ましい実施形態において、距離は0mm〜1mmの範囲で可変である。第1表面と第2表面の間の距離のさらに好ましい下限は、50μm〜200μmの範囲である。さらに好ましい上限は0.3mm〜0.5mmの範囲である。
【0049】
本明細書に用いられる用語「転位器」または「アクチュエータ」は、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で第1表面と第2表面の間の距離が変化する際に、本発明の装置の反応チャンバ内、または反応チャンバの少なくとも1つ以上の部分内の溶液を転位するのに適した手段を指す。言い換えれば、本発明の転位器は、第1表面および/または第2表面、または互いに対してその少なくとも1つ以上の部分の縦の動きを可能にする手段であると定義することもできる。本明細書に用いられる用語「表面領域の少なくとも1つ以上の部分」は、転位器による第1表面と第2表面の間の距離の変化が必ずしも第1表面および/または第2表面の表面領域全体に起きる(すなわち、この表面の一方または両方の全体が互いに対して縦に動く)必要はなく、この表面の一方または両方の表面領域の少なくとも一部に局部的に制限され得る(すなわち、それぞれの表面の表面領域のこれらの1つ以上の部分だけが互いに対して縦に動き、それぞれの表面の表面領域の1つ以上の残りの部分の距離は実質的に一定に保たれる)と理解すべきである。本発明の好ましい実施形態において、特に好ましくはこの表面の一方または両方の少なくとも一部に圧力を加えることによって、第1表面および/または第2表面の間の距離は縮小される。
【0050】
本発明による転位器は第1表面または第2表面の一体化された部分を構成することができ(本明細書において、「転位構造」とも呼ばれる)、または反応チャンバの外側に配置された独立の、すなわち内蔵式の本体(本明細書において「転位体」とも呼ばれる)を有することができる。転位器が転位構造、すなわち、第1表面または第2表面の一体化された部分として提供される場合、反応チャンバの内側に延在する凸状体として設計することができる。そのような凸状体は、本発明の方法を実施するとき反応チャンバ内の溶液の転位を起こさせるのに適した任意の形状を有することができる。そのような凸形状は、特に、窪み、隆起、バックル、およびふくらみを含み、ふくらみが好ましい。第1表面または第2表面の一体化された部分としての性質により、そのような転位構造はそれぞれの表面の残りまたは少なくともその一部と同じ材料から作ることができる。
【0051】
本発明の他の実施形態において、転位器は第1表面または第2表面に一体化されないが、この表面のいずれか一方に対向して配置された独立の転位体を構成し、転位器は反応チャンバから離れて面するそれぞれの表面の側に配置される。いくつかの実施形態において、転位器は反応チャンバのそれぞれの表面に直角に配置される。そのような転位体は、本発明中で用いられるとき、反応チャンバ内の溶液の転位を起こさせるのに適した任意の形状を有することができる。そのような転位体の例は、特に、ヒトの指、棒、ピン、プランジャー、スパイク、サオ、タペット、およびステンシルを含み、最後の2つが特に好ましい。
【0052】
本発明の範囲内で、装置は1つ以上の転位器を含むことができ、その全ては第1表面および/または第2表面の一体化された部分とすることができ、または転位体とすることができる。しかし、本発明の装置は少なくとも1つの転位体およびこの表面の1つに一体化された少なくとも1つの転位構造とすることも可能である。本発明の好ましい実施形態において、装置は2つの転位器を含む。他の実施形態において、装置は少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも8つの、または少なくとも12の転位器を含む。
【0053】
本発明の装置の転位器の全ては、第1表面または第2表面のいずれかに一体化されおよび/または対向して配置することができる。替わりに、装置は、この表面の両方に一体化されおよび/または配置された少なくとも2つの転位器を含むことも可能である。本発明の好ましい実施形態において、装置は第1表面および/または第2表面に対向して配置された単独の転位体型である少なくとも2つの転位器を含む。特に好ましい実施形態において、装置は2つの転位器を含み、両方の転位器は第1表面および/または第2表面のいずれかに対向して配置される。他の特に好ましい実施形態において、装置は同様に2つの転位器を含むが、1つの転位器は第1表面に対向して配置され、他の転位器は第2表面に対向して配置される。第3の好ましい実施形態において、異なる表面に対向して配置された2つの転位器は互いに対向して配置される。
【0054】
転位器は、好ましくは第1表面および/または第2表面に、この表面間の距離に変化(すなわち、縮小)を起こさせる圧力を加えることによって、反応チャンバ内の溶液に少なくとも部分的な転位を起こさせるのに適した任意の材料から作ることができる。典型的に、転位器は非晶質材料から作られる。本明細書に用いられる用語「非晶質材料」は、原子の長い範囲で位置の規則性のない固体、すなわち、非結晶質材料を指す。そのような非晶質材料は中でも、酸化アルミニウムセラミックなどのセラミック材料、ボロフロートガラスなどのガラス、シリコーン、およびポリスチレンまたはポリテトラフロオロエチレン(Teflon(登録商標))などの合成ポリマーを含む。場合によって、非晶質材料は光学的に透明、すなわち、光透過性とすることができる。適切な透明材料の例は、中でも、ガラスまたは窓ガラス、ボロフロートガラス、石英ガラス、トパーズガラス、サファイアガラスなどのガラス状材料、ならびにポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、またはアクリルなどの合成ポリマーを含む。本発明の装置が1つ以上の転位器を含む場合、それらの全ては同じ材料から作ることができ、またはそれらの少なくとも1つは異なる材料から作ることができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、1つ以上の転位器の少なくとも1つは弾性的に変形可能な材料、すなわち、変形された後に、さらに外部操作を行うことなく独立に少なくとも実質的にその元の形状に復元する材料からつくることができる。場合によって、本発明によるそのような弾性的に変形可能な材料は、生物学的/化学的に不活性であり(すなわち、化学試薬および/または生物学的試薬に対して反応性がないか非常に低い)、光学的に透明および/または非自己蛍光であることがさらに好ましい。そのような材料の例は、中でも、シリコーンエラストマー、ポリウレタン、リン酸トリエチル、アクリル樹脂、およびアクリル酸塩、を含み、シリコーンエラストマーが特に好ましい。シリコンエラストマーは主として架橋したシリコーンポリマーから構成される。これらのポリマーは化学式[RSiO]のSi−O−主鎖を有し、式中、Rはメチル、エチル、フェニルなどの有機側基を表し、2つ以上のポリマーを架橋するのに使用することができる。Si−O−主鎖の長さ、側基、架橋を変化させることによって、シリコーンは広範囲の特性および組成物で合成することができる。それらは液体からゲル、ゴム、硬質プラスチックへ矛盾なく変化することができる。最も一般的な種類は線状ポリジメチルシロキサンである。シリコーン材料の他の群はシリコーン樹脂に基づき、これは分岐およびカゴ状オリゴシロキサンによって形成される。特に好ましい実施形態において、弾性的に変形可能な材料は、シリコーンゴムおよびシリコーン油からなる群より選択される。さらに適切な材料は、パラゴム樹(Hevea brasiliensis)から抽出される天然ゴム、ならびに例えば、イソプレン、(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2−クロロ−1,3−ブタジエン、および架橋のための少量パーセントのイソプレンを備えるメチル−プロペンを含み、さまざまなモノマーの重合によって作ることのできるさらに他の合成ゴム(通常合成ゴムと呼ばれる)を含む。適切な合成ゴムの例は、中でも、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ポリエステルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、およびフォスファゼンゴムを含む。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、第1表面および/または第2表面は検出が行われる表面領域、すなわち検出領域(本明細書において「検出ゾーン」と呼ばれる)を含む。すなわち、分析すべき1種以上の粒子の定性的および/または定量的検出は、この表面の一方または両方のいずれかの個別の表面領域に限定され、例えば、粒子の検出および/または計数は、多分に、用いられる検出システムの空間的制約のため、第1表面および/または第2表面の中央部分だけで行うことが可能である。第1表面および/または第2表面の検出領域によって制限される反応チャンバの区画の容積は、定量的分析を可能にするために知られていることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、第1表面と第2表面間の「検出領域」は、反応チャンバの中央に配置されるのが好ましい毛管間隙として設計され、この領域の表面間の距離は、場合によって反応チャンバの残りの部分の距離よりも短くすることができる。
【0057】
本発明の他の実施形態において、第1表面および/または第2表面の少なくとも1つ以上の部分は弾性的に変形可能である。すなわち、それぞれの表面の1つ以上の部分は弾性的に変形可能な材料、例えば、1つ以上の転位器に関して上述した弾性膜から作られる。本発明による特に好ましい弾性膜はシリコーンゴムから作られる。したがって、一実施形態において、第1表面および/または第2表面の表面領域全体が弾性的に変形可能な材料から作ることができる。本発明の一実施形態において、反応チャンバ全体、すなわち、第1表面、第2表面、および側壁は弾性的に変形可能である。第1表面および/または第2表面の少なくとも1つ以上の弾性的に変化可能な部分は1つ以上の転位器に対向して配置されることが好ましい。したがって、転位器に対向して配置された本発明の装置の表面領域全体は弾性的に変形可能とすることができる。しかし、転位器に対向して配置されたそのような表面領域の少なくとも1つが弾性的に変形可能ではないことも可能である。本発明の好ましい実施形態において、第1表面および/または第2表面の少なくとも1つ以上の弾性的に変形可能な部分は検出が行われるそれぞれの表面領域とは異なる。
【0058】
本発明によれば、第1表面および第2表面は同じ材料または異なる材料から作ることができる。さらに、第1表面および/または第2表面は、それぞれの表面領域の残りとは異なる材料から作られた表面領域を含むことも可能である。例えば、第1表面および/または第2表面の中央、場合によって矩形(rectangular)の表面領域などの1つの表面領域(すなわち、「窓」)が、透明材料から作られ、それぞれの表面領域(すなわち、「境界」)の残りが不透明材料から作られる。そのような透明な材料の「窓」は検出が行われる表面領域内に配置されることが好ましい。
【0059】
本発明による装置の第1表面および/または第2表面の少なくとも一部は非晶質材料から作ることができる。本明細書に用いられる用語「非晶質材料」は、原子の長い範囲で位置の規則性のない固体、すなわち、非結晶質材料を指す。そのような非晶質材料の例は、中でも、酸化アルミニウムセラミックなどのセラミック材料、ボロフロートガラスなどのガラス、シリコーン、およびポリスチレンまたはポリテトラフロオロエチレン(Teflon(登録商標))などの合成ポリマーを含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、第1表面および/または第2表面の少なくとも一部は透明材料、すなわち、光透過性材料から作られる。適切な透明材料の例は、中でも、ガラスまたは窓ガラス、ボロフロートガラス、石英ガラス、トパーズガラス、サファイアガラスなどのガラス状材料、ならびにポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、またはアクリルなどの合成ポリマーを含む。
【0061】
本発明による装置は、反応チャンバの第1表面および/または第2表面上に配設されたマイクロアレイ(本明細書において「アレイ」または「アレイ素子」とも呼ばれる)をさらに含むことができる。本明細書に用いられる「マイクロアレイ」は、支持体(「サブストレート」とも呼ばれる)上の捕捉分子(例えば、1種以上のプローブ分子または物質ライブラリー)が画定された空間的配置(レイアウト)を指し、マイクロアレイ内の各分子の位置は個別に求められる。マイクロアレイは特定のパターンに配置することのできる画定された部位または所定の領域、すなわち、いわゆるアレイ素子またはアレイ点を含むことが好ましく、各アレイ素子は1種の捕捉分子だけを含むことが好ましい。支持体上の捕捉分子の配置は共有反応または非共有反応によって生成することができる。マイクロアレイのための適切なサブストレートは、中でも顕微鏡スライド、ウェハ、またはセラミック材料を含む。しかし、捕捉分子は第1表面および/または第2表面上に直接不動化することもできる。
【0062】
本発明による装置は、第1表面と第2表面の間の距離が縮小されるとき、反応チャンバの容積を本質的に一定に保つことの可能な1つ以上の手段をさらに含むことができる。すなわち、補償ゾーン(または「貯蔵器」)が提供され、この表面間の距離が縮小されるとき、第1表面と第2表面の間の反応チャンバ中に存在する任意の液体材料を転位することができる。本明細書に用いられる用語「本質的に一定」は、第1表面と第2表面の間の距離が縮小される際に、「圧縮された」状態の反応チャンバの容積が「圧縮されない」状態の元の容積と正確に同じではないことを理解すべきである。「圧縮された」状態の反応チャンバの容積は、「圧縮されない」状態の少なくとも90%であることが好ましく、少なくとも95%であることが特に好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、検出可能な部位(すなわち、標識)または緩衝剤を含む薬剤など、本発明の方法を実施するために必要な任意の試薬は、好ましくは乾燥した形(例えば、粉体、顆粒またはペレットなど凍結乾燥された形)で補償ゾーンまたは貯蔵器に提供される。
【0063】
これは弾性材料から作られた側壁によって側面境界が定められた反応チャンバを提供することによって達成されることが好ましい。本発明によれば、1つ以上の側面側壁は弾性材料から作ることができる。特に好ましい弾性材料はシリコーンゴムである。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、チャンバ本体をさらに含む。本明細書に用いられる用語「チャンバ本体」は、反応チャンバを取り囲む固体本体を指すものと理解すべきであり、第1表面、第2表面、および側面側壁によって形成される。
【0065】
第1表面、第2表面、および1つ以上の側面側壁はチャンバ本体の一体化された部分とすることができる。すなわち、チャンバ本体の一体化された部分であるそれぞれの表面はチャンバ本体と同じ材料から作ることができる。替わりに、1つ以上の第1表面、第2表面、および/または1つ以上の側面側壁は、それぞれ、チャンバ本体とは他の材料から作ることができる。したがって、本発明の範囲内で、反応チャンバを画定する4つの表面全てを同じ材料から作ること、2つまたは3つの表面は同じ材料から作られるが、残りの表面は異なる材料から作られ、または各表面が異なる材料から作ることが可能である。
【0066】
反応チャンバの境界を定める第1表面および/または第2表面および/または1つ以上の側面側壁は、1つ以上の開口部をさらに含むことができ、これらは閉止可能および/または封止可能であり、分析すべきサンプル、ならびに、場合によって、本発明の方法の実施に必要とされる任意の追加の試薬、検出薬剤などを直接導入するために用いることができる。替わりに、そのような開口部は、中でも、充填ユニット、処理ユニット、温度制御ユニット、特定の(すなわち、複雑な)検出ユニット、および廃棄物容器など、チャンバ本体の一体化された部分として設計されなかった、装置の任意の追加(補足)のモジュールを取り付けるために用いることもできる。反応チャンバと1つ以上のそのような追加のモジュールの間の接続は、中でも、剛性または可撓性チューブ、ノズル、カニューレ、針などの1つ以上を用いることによって達成することができ、これらは、反応チャンバおよび追加のモジュールに、それぞれ、中でも、圧入(「ルアーシステム」とも呼ばれる)またはツイストオン固定(「ルアーロックシステム」とも呼ばれる)によって取り付けることができ、ツイストオン固定が好ましい。両方のシステムは当分野で十分に確立されており、市場で入手可能である。
【0067】
チャンバ本体は少なくとも部分的に非晶質材料、特に透明材料から作られることが好ましい。適切な材料は、中でもガラス、Macrolon(商標)、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、Teflon(登録商標)などの合成材料、および高級鋼、アルミニウム、ブラスなどの金属を含む。いくつかの実施形態において、チャンバ本体は導電性材料から作られ、5〜30%の炭素繊維を有するポリアミド、5〜30%の炭素繊維を有するポリカーボネート、2〜20%のステンレス鋼繊維を有するポリアミド、および5〜40%の炭素繊維を有するポリフェニレンスルフィドからなる群より選択されることが好ましい。
【0068】
本発明による装置は典型的に単独(すなわち、個別の)本体として操作される。しかし、1つのサンプルを並行して複数の分析を行うために、2つ以上のそのような装置を分離した反応チャンバを含む複式(multipart)システムに組み立てることも可能であり、上述の装置は複式システムの一部またはユニットまたは本体に相当する。したがって、さらに他の態様において、本発明は、少なくとも2つの部分を含み、この少なくとも2つの部分の各々が第1表面と第1表面に対向して配置された第2表面の間のチャンバ本体内に形成された反応チャンバと、1つ以上の転位器とを含むステムに関し、第1表面と第2表面の間の距離は、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能である。システムの少なくとも2つの部分の反応チャンバは互いに連通することができる。
【0069】
本明細書に用いられる用語「互いに連通する」は、共通のサンプル導入通路などの追加の手段による、個別の反応チャンバ、充填ユニット、処理ユニットなどの間の直接または間接的なあらゆる相互接続を指す。しかし、本明細書に用いられる用語は、サンプルを導入した後、反応チャンバが互いに恒久的に流体連通していることを必ずしも意味しない。
【0070】
好ましい実施形態において、システムは、少なくとも2つの装置の反応チャンバの各々と連通するサンプル導入通路をさらに含む。サンプル導入通路(本明細書において、「サンプル充填ゾーン」または「サンプル領域」とも呼ばれる)は、上述のように、分析すべきサンプルを導入するための1つ以上の閉止可能(lockable)なおよび/または封止可能な開口部を含むことができる。サンプル導入通路は、それぞれの反応チャンバがそこから分岐するチャンバとして構成することができる。サンプル導入通路と反応チャンバを接続する開口部は、同様に閉止可能および/または封止可能とすることができる。特に、サンプルをそのような複式システムの分離した反応チャンバに導入した後、さまざまな試薬(捕捉分子、標識など)を含む異なる反応チャンバからのサンプル溶液の混合を招き、したがって並行して実施すべき複数の個別の分析物の適切な検出を妨げる反応チャンバから共通のサンプル導入通路への液体の逆流を防止することが好ましい。
【0071】
したがって、本発明のさらに他の好ましい実施形態において、システムは少なくとも2つの反応チャンバ間の過渡的な流体連通を可能にする1つ以上の手段をさらに含む。サンプル導入通路から分離した反応チャンバへ逆方向ではなく一方向流体連通だけが可能であることが特に好ましい。これはサンプル導入通路と反応チャンバ間の接続に、反応チャンバからのサンプルの逆流を防止する一方向弁を提供することによって達成されることが好ましい。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、装置は反応チャンバに接続された検出システムをさらに含む。検出システムは、第1表面および/または第2表面に対向して配置されるのが好ましく、場合によって検出が行われる特定の表面領域に配置される。
【0073】
適切な検出システムの選択は、場合によって検出に用いられる追加の薬剤(例えば、染料または標識)の存在または検出すべき粒子の種類など、いくつかのパラメーターによる。さまざまな光学的および非光学的検出システムは当分野では十分確立されている。本発明で用いることのできる検出システムの一般的な説明は、例えば、Lottspeich,F.、およびZorbas H.(1998)、Bioanalytik,Spektrum Akademischer Verlag,Heidelberg/Berlin,Germany、特に23.3章および23.4章に見ることができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態において、検出システムは光学的検出システムである。一般に、本発明による方法の実施は、複雑な設備の使用を必要とせず、好ましくは蛍光、光学吸収、共鳴伝導などのパラメーターの測定に基づく簡単な検出システムを含む。
【0075】
本発明による特に好ましい実施形態は、濁度計、比濁計(概観するには、例えば、Tiffany,O.(1986)Fluorometry,nephelometry,and turbidimetry,in Tietz,N.O.(ed.)Textbook of Clinical Chemistry.WB Saunders Co.,Philadelphia,PA,pp.78−97参照)などの吸収測定に基づき、これは当分野において確立された光度計装置で達成することができる。両方の方法は、それぞれ光の透過または散乱の際のこの濁度効果の測定に基づいて溶液中の「曇り」または濁度の測定を可能にする。液体の濁度はその中に懸濁する粒子の存在によって起きる。光のビームが濁ったサンプルを通過すると、その強度が低下する。濁度計は非散乱光、すなわち、粒子の濁った溶液を透過する光の測定を指し、標準的な光度計を用いて行うことができる。他方、比濁計は、(側面)散乱光の測定である。この技術は、検出器が入射光ビームに対して所定角度で設定される特別な装置が必要である。
【0076】
また、フルオロフォアで標識を付けたスペクトル的に励起された粒子の蛍光強度の比較に基づく検出システムは、本発明で好ましく用いられる。蛍光は、特定の波長の光で励起されたとき、特性的な吸収および放射挙動を起こすそれら自体の光を放射する特定分子の能力である。特に、蛍光信号の定量的検出は、蛍光顕微鏡の改良された方法によって行われる(概観するには、Lichtman,J.W.,and Conchello,J.A.(2005)Nature Methods 2,910−919;Zimmermann,T.(2005)Adv.Biochem.Eng.Biotechnol.95,245−265を参照されたい)。それによって、それぞれ光吸収および光放射から得られる信号は1つ以上のフィルタおよび/または二色性結晶(dichroites)によって分離され、適切な検出器上に画像が形成される。データ解析はデジタル画像処理によって行われる。
【0077】
画像処理は当分野によく知られているいくつかのソフトウェアパッケージ(Mathematica Digital Image Processing,EIKONA、またはImage−PROなど)で達成することができる。本発明は、反応チャンバからいかなる溶液の除去および/または転位(replacement)もしないで実施する(すなわち、検出は任意の拘束されない標識の存在中で実施され、不特定の信号バックグラウンドを発生させる)ことを意図するので、バックグラウンドノイズの補正を効率的かつ正確に可能にする画像処理ソフトウェアを使用することが好ましい。特定の信号の検出は信号の強度の相違を測定することによるだけではなく、やはり検出すべき粒子の形状によって決定される検出すべき信号の「形状」などの追加のパラメーターを同時に考慮することによって達成されることが特に好ましい。例えば、蛍光抗体で標識を付けた円形状の細胞などの円形粒子は、光学的検出中に記録された画像中の「円形信号」をもたらす。そのような目的に適した好ましいソフトウェアはIconoclustソフトウェア(Clondiag Chip Technologies GmbH,Jena,Germany)である。
【0078】
本発明に用いることのできる他の光学検出システムは、共焦点蛍光顕微鏡とすることができ、対象物は点光源によってレンズの焦点面で照明される。点光源、対象物、および点光検出器は光学的な共役面に配置されることが重要である。そのような共焦点システムの例は、例えば、Diaspro,A.(2002)Confocal and 2−photon−microscopy:Foundations,Applications and Advances,Wiley−Liss,Hobroken,NJに詳細が記載されている。本発明の蛍光光学システムは、自動焦点ではなく、例えば固定焦点の蛍光顕微鏡であるのが特に好ましい。
【0079】
本発明による代替の装置において、分析物の電気化学的検出を行う手段は、例えば、第1表面および/または第2表面に接続された電極による酸化還元電位の変化の測定(例えば、Zhu,X.ら(2004)Lab Chip.4,581−587参照)またはサイクリックボルトメトリー(例えば、Liu,J.ら(2005)Anal.Chem.77、2756−2761;およびWang,J.(2003)Anal.Chem.75,3941−3945参照)によって提供される。さらに、電気的検出を行う手段は、例えば、インピーダンス測定によって提供することも可能である(例えば、Radke,S.M.ら(2005)Biosens.Bioelectron.20,1662−1667参照)。
【0080】
典型的に、本発明による装置およびシステムは内蔵式である。すなわち、分析の実施中に必ずしもサンプルおよび/または反応チャンバ中のいかなる他の試薬の取り出しおよび/または転位を必要としない。したがって、本発明による装置およびシステムの好ましい実施形態はサンプル入口を含むが出口を含まない。
【0081】
さらに他の態様において、本発明は、
(a)検出すべき1種以上の粒子を含むと思われるサンプルを反応チャンバ中に配置することと、
(b)反応チャンバ内のサンプルの少なくとも一部を1つ以上の転位器によって転位することと、
(c)1種以上の粒子の存在および/または数を示す値を検出/判定することとを含む、粒子の定性的および/または定量的検出の方法を提供する。
【0082】
本発明の好ましい実施形態において、「サンプルを反応チャンバに配置する」は、このサンプルを上述の本発明の装置またはシステムの反応チャンバ中に導入することを含む。
【0083】
本発明のさらに他の特に好ましい実施形態において、方法は、
(a)複数の粒子を含むサンプルを反応チャンバ中に配置することと、
(b)反応チャンバ内のこの複数の粒子の部分集合を1つ以上の転位器によって転位することと、
(c)ステップ(b)で転位された粒子の部分集合の数を示す1つ以上の値を測定することとを含む。
場合によって、方法は、
(d)ステップ(c)で得られた1つ以上の値から、反応チャンバ中の複数の粒子の総数を計算することをさらに含む。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態において、ステップ(c)の定量的検出/判定は、サンプル中の1種以上の粒子の計数、例えば、生物学的サンプルの細胞の計数を含む。
【0085】
本明細書に用いられる用語「サンプル」は、本発明による装置を用いて分析され、検出すべき1種以上の粒子を含むと思われる液体を指す。分析すべきサンプルは生物学的サンプルであることが好ましい。本発明を用いて分析することのできる液体サンプルの例は、中でも、有機および無機化学溶液、飲料水、下水、全血液、血漿、血清、尿、唾液、サルビアまたは髄液などのヒトまたはヒト以外の体液、動物からの細胞抽出物、植物または組織培養物、原核生物細胞および真核生物細胞懸濁物、ファージ製剤などを含む。サンプルは、希釈剤、溶剤、または場合によって反応チャンバ中へ導入(配置)する前にサンプルの精製および/または処理から得ることのできる緩衝剤などの1つ以上の追加の薬剤をさらに含むことができる。
【0086】
分析すべきサンプルは本発明を実施するとき、検出すべき1種以上の粒子を含むことができる。本明細書に用いられる用語「粒子」は、本発明の方法を実施することによってその検出が可能な、特定の結合挙動および/または特有の反応性を有する任意のものを指す。したがって、用語「粒子」は、文字通り細胞またはウイルスなどの「真の」粒子であると解釈されるだけでなく、検出すべき分子、特に、核酸、タンパク質、脂質、および炭水化物などの(生物学的)巨大分子、ならびに分析すべきサンプルに存在しまたは加えられたあらゆる(合成)粒子に対して結合親和性を有する類似物および/またはその混合物を含むものと理解すべきである。
【0087】
用語「粒子」に伴って本明細書に用いられる用語「種」は、特定の種類の粒子、すなわち、例えば特定の種類の細胞または特定のファージを指す。したがって、用語「1種以上の」は1つ以上の異なる種類の細胞など、1つ以上の異なる種類の粒子を指す。
【0088】
本発明による「真の」粒子は、天然ならびに合成粒子を含む。そのような天然粒子の例は、中でも、原核生物細胞(例えば、大腸菌または枯草層などのバクテリア細胞)、真核生物細胞(例えば、サッカロマイセスセレヴィシエなどのイースト細胞、Sf9またはHigh5細胞などの昆虫細胞、HeLaまたはCos細胞などの不動化細胞ライン、および哺乳動物血液細胞などの一次細胞)またはウイルス(例えば、M13またはT7ファージなどのファージ粒子)を含む。合成粒子の例は、中でも、場合によって本発明によって検出すべき1種以上の分子でコーティングされた(常磁性)ポリスチレンビーズおよびラテックスビーズ、特に核酸、タンパク質、脂質、または炭水化物など1種以上の(生物学的)巨大分子を含む。
【0089】
分析すべきサンプルは、第1表面、第2表面および/または1つ以上の側面側壁に存在する閉止可能および/または封止可能な1つ以上の開口部を経由して、反応チャンバ中に直接導入することができる。サンプルは、場合によって追加の試薬と一緒に、適切な圧力発生手段、例えば、ピペット、注射器、または例えば、処理装置の機能ユニットとすることのできる自動化ユニットを用いて反応チャンバ中に移動することができる。替わりに、例えば、反応チャンバを画定する任意の表面に存在する開口部の1つにサンプルを隣接させて配置することによって、外部操作なしで毛管力によってサンプルを反応チャンバ中に導入することもできる。
【0090】
本発明の方法の特定の実施形態において、サンプルは1つ以上の転位器を操作することによって発生した負の圧力によって反応チャンバ中に導入される。この実施形態において、最初に、すなわち、サンプルを加える前に、反応チャンバの少なくとも1つ以上の部分の第1表面と第2表面間の距離、または言い換えれば、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分の距離は、1つ以上の転位器によって第1および/または第2表面に向かって圧力を加えることによって縮小する。距離はゼロまたはほとんどゼロの値に向かって縮小することが好ましい。次いで、この縮小した距離は、転位器を再設定することによって(すなわち、それを後方向に動かすことによって)好ましくは初期の値まで再び拡大され、したがって反応チャンバ内に負の圧力が発生し、したがって、サンプルは反応チャンバ中に導入される。
【0091】
本発明の方法は、方法を実施する間、反応チャンバ中のサンプルおよび/または他のいかなる試薬の除去および/または転位を必要とせずに行うことが意図される。特に、例えば、用いられる検出方法の信号対ノイズ比を向上させるために、そのような除去/転位に必要な水洗または洗浄ステップを必要としないことは本発明の方法の利点である。しかし、いくつかの用途は、対象粒子のさらに他の検出を可能にするために、反応チャンバ中への追加の試薬、例えば任意の標識を含む1つ以上の薬剤の導入を必要とする。そのような追加の溶液も、上述のように、サンプルの導入前、またはサンプルと同時に、またはサンプルが反応チャンバ中に導入された後に直接反応チャンバ中に導入することができる。好ましい実施形態において、追加の試薬は特に粉、顆粒、またはペレットなどの凍結乾燥/乾燥形状でサンプルを加える前に装置内(例えば、補償ゾーン中)に提供される。
【0092】
替わりに、分析すべきサンプル、および場合によってさらに他の試薬の導入は1つ以上の充填ユニットによって間接的に可能である。
【0093】
本発明の範囲内で、「充填ユニット」は、本発明の装置の一体化された部分、または充填するための反応チャンバにそれを取り付けて、使用後に取り外すことのできる分離した部分として設計することのできる反応チャンバの充填手段を意味する。本発明で分析すべき液体サンプルを保持することができ、反応チャンバに(可逆的に)接続することのできる任意の容器を充填ユニットとして用いることができる。反応チャンバと充填ユニット間の接続は、中でも、管、ノズル、カニューレ、針など、既に上述した手段によって達成することができる。所与のサンプルは、反応チャンバへの直接導入について上述したように同様に充填ユニットの1つ以上の閉止可能および/または封止可能な開口部中に導入することができる。
【0094】
特定の実施形態において、装置の反応チャンバに充填ユニットを接続するために1つ以上のカニューレが用いられる。用いられるカニューレは反応チャンバに含まれる1つ以上の開口部の閉止および/または封止を貫通する。本発明に用いられる好ましいカニューレは、高級鋼または合成ポリマーから作られ、通常0.05mm〜2mmの直径を有する。好ましくは、2つのカニューレが配置され、1つがサンプルを反応チャンバ中に導入するために用いられ、他の1つは過剰のガス状材料および/または余剰の液体を反応チャンバから取り出すために用いられる(詳細の説明は、その関連内容が本明細書に完全に参照されている国際公開第01/02094号を参照されたい)。
【0095】
充填ユニットは一体化された、または取り外し可能な分離した廃棄物容器を含むことができ、反応チャンバからの余剰媒体を取り出す働きをする。場合によって、廃棄物容器は、さらに可逆的または非可逆的に余剰物質と結合するガス状、液体、中でも、セルロース、フィルタ材料、およびシリカゲルなどの固体充填媒体を含む。さらに、廃棄物容器は1つ以上の空気孔を含むことができ、または、廃棄物容器への余剰材料の移動を向上するためにその内部に真空を与えることができる。
【0096】
充填ユニットは、充填ユニットが反応チャンバのそれぞれの取り付け部位に正確に嵌合する、すなわち、充填ユニットが反応チャンバに対して正確に配置され、閉止可能および/または封止可能な開口部などの好ましい部位で、1つ以上のカニューレ、ノズルなどによって充填ユニットを反応チャンバに接続することを可能にする機械的手段をさらに含むことができる。そのような機械的手段は、中でも、特別に設計されたスナップ固定具またはスプリング固定具を含む。機械的手段は、サンプル、および場合によって任意の試薬を反応チャンバ中へ導入した後、充填ユニットの取り外しが可能であることが好ましい。
【0097】
本発明の一つの利点は、10μl未満の容積のサンプルを分析できることである。典型的に、サンプル容積は1〜1,000μl、好ましくは1〜100μl、さらに好ましくは1〜25μl、最も好ましくは1〜5μlの範囲である。
【0098】
本発明の装置および方法は、水洗および洗浄ステップの実施を必要とせずに所与のサンプル中の任意の粒子の定性的および/または定量的検出が可能なように特別に設計されるので、分析すべきサンプルは他に精製を必要とせずに反応チャンバに導入することができる。しかし、場合によって、例えばさらに他の検出を妨害する可能性のあるあらゆる原料汚染物を除去するために、少なくとも部分的にサンプルを精製することが好ましい。そのようなサンプルの(部分的な)精製は異なる方法によって、例えば、それを反応チャンバへ導入する前にサンプルを濾過することによって達成することができる。
【0099】
さらに、本発明の装置の反応チャンバ全体へのサンプルの拡散を妨げる比較的高い粘度のため、分析すべきサンプルの希釈が必要であり得る。サンプルの拡散はサンプルに希釈剤を加えることによって容易に達成することができる。適切な希釈剤の例は、中でも、水、有機および無機溶媒、リン酸緩衝食塩水などを含む。希釈剤はサンプルを装置へ導入する前に加えることができ、または上述のように、充填ユニットおよび/または反応チャンバに直接加えることができる。
【0100】
サンプルおよび場合によって任意の追加の試薬を反応チャンバに導入した後、または1つ以上の充填ユニットから反応チャンバ中に移動した後、場合によってサンプルは反応チャンバ中で所与の時間インキュベートして反応空間全体に適切に拡散させることができる。典型的に、インキュベーション期間は1秒〜30分間、好ましくは10秒〜15分間、特に好ましくは30秒〜10分間の範囲である。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明による方法は、ステップ(b)を行う前に、各々1つ以上の検出可能な部分を含む1つ以上の薬剤を装置の反応チャンバ中へ導入することをさらに含む。すなわち、1つ以上の検出可能な部分を含む薬剤はサンプルを導入する前、または上述のように、サンプルが直接または充填ユニットを経由して導入された後に、サンプルと同時に反応チャンバ中に導入することができる。
【0102】
本明細書に用いられる用語「1つ以上の検出可能な部分を含む薬剤」は、化学的、物理的または酵母反応中に、直接または間接的に検出可能な化合物または信号を発生する1つ以上の適切な化学物質または酵素(すなわち、1つ以上の「部分」)を含む任意の化合物を指す。したがって、そのような薬剤は、この粒子との相互作用の形成可能性によって、1種以上の対象粒子の検出に必要であり、または検出を容易にする。
【0103】
本明細書に用いられる用語は、検出可能なマーカー(「標識」とも呼ばれる)ならびに1つ以上のそのような検出可能なマーカーに結合した任意の化合物などの両方を含むものと理解すべきである。
【0104】
好ましい実施形態において、1つ以上の薬剤は、核酸、ペプチド、プロテインドメイン、プロテイン、炭水化物、低分子量化学化合物、およびその類似品および/または混合物からなる群より選択される。
【0105】
本発明で用いることのできる核酸の例は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの天然核酸、ならびに、中でも、ペプチド核酸(PNA)または固定核酸(LNA)などの核酸類似物を含む。天然核酸の特定な例は、ゲノムDNAまたはcDNA分子などのDNA配列、ならびにhnRNAまたはmRNA分子などのRNA配列、またはその逆補完核酸配列を含む。そのような核酸は任意の長さとすることができ、単一ストランドまたは二重ストランド分子のいずれかとすることができ、単一ストランド分子が好ましい。典型的に、本発明に用いられるそのような核酸は長さ10〜1000ベース、好ましくは15〜500ベース、さらに好ましくは20〜100ベース、特に好ましくは20〜40ベースである。
【0106】
本発明による薬剤として用いることのできるペプチド、プロテインドメイン、またはプロテインは、天然、ならびに例えば、組み換えDNA技術によってまたは化学合成によって人工的に設計された分子を含む。そのようなプロテイン系分子の設計および調製の方法は、当分野に十分確立されている(例えば、Sambrook,J.ら(1989)Molecular,Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい)。典型的に、本発明のペプチド薬剤は長さ2〜200アミノ酸、好ましくは2〜100アミノ酸、さらに好ましくは5〜50アミノ酸、特に好ましくは10〜25アミノ酸である。
【0107】
本明細書に用いられる用語「プロテインドメイン」は、リガンド結合または触媒活性などを示す特定の機能に関して定義されるポリペプチド配列の一部を指す。そのようなプロテインドメインの好ましい例は、中でも、抗体のファブフラグメント、G−プロテイン結合受容体、受容体チロシンキナーゼまたは核受容体などの細胞受容体のリガンド結合ドメイン、およびレクチンの炭水化物結合ドメインである。
【0108】
本発明の薬剤として使用できる炭水化物の例は、グルコースまたはフルクトースなどの単糖、ラクトースまたはスクロースなどの二糖、ならびに少糖およびデンプンなどの多糖を含み、単糖が好ましい。
【0109】
本明細書に用いられる用語「低分子量化学化合物」は、少なくとも2つの炭素原子であるが好ましくは7つ以下の回転可能な炭素結合を含み、分子量が100〜2,000ダルトンの範囲、好ましくは100〜1,000ダルトンの範囲であり、場合によって1つまたは2つの金属原子を有する、好ましくは有機分子の分子を指す。そのような分子の例は、中でも、イミダゾール、インドール、イソキサゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、およびチアゾールを含む。
【0110】
本発明により使用することのできる検出可能なマーカーまたは標識は、化学的、物理的または酵母反応中に、直接または間接的に検出可能な化合物または信号を発生する任意の化合物を含む。標識は、中でも、酵母標識、着色標識、蛍光標識、発色標識、ルミネセント標識、放射能標識、ハプテン、ビオチン、金属錯体、金属、およびコロイド状金から選択し得ることが好ましく、蛍光標識が特に好ましい。これらの全ての種類の標識は当分野に十分確立されている。そのような標識によって媒介される物理反応の好ましい例は、放射能標識を用いるとき、X線の照射または励起または放射の際の蛍光または燐光放射である。アルカリ性リン酸塩、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびβ−ラクタマーゼは酵母標識の例であり、発色反応生成物の形成を触媒反応させ、本発明に用いることができる。好ましい酵母標識は、特に3−アミノ−9−エチルカルバゾール、4−クロロ−1−ナフトール、3,3’−ジアミノベンジジン、および3,3’,5,5’−テトラメチル−ベンジジンからなる群より選択される物質と共にセイヨウワサビペルオキシダーゼであり、3,3’,5,5’−テトラメチル−ベンジジンは特に好ましい。
【0111】
本発明の好ましい実施形態において、1つ以上の検出可能な部分を含む1つ以上の薬剤は1種以上の検出すべき粒子に直接結合し、本発明において、そのような結合は典型的に「全体として」の粒子ではなく、この粒子の表面上の1種以上の特定分子、好ましくは核酸またはプロテインなどの巨大分子に起きることに留意されたい。そのような「表面分子」は、細胞の表面に天然に生成する分子(例えば、G−プロテイン結合受容体または特別の炭水化物部分などの細胞表面受容体)とすることができ、または例えば、ビオチン/アビジン結合によって常磁性ビーズに結合した核酸分子(「捕捉分子」または「分子プローブ」とも呼ばれる)を粒子の表面に人工的に被覆することができる。標識反応、すなわち、1つ以上の検出可能な部分を本発明の薬剤に付着させることは、本発明の装置の外側で、すなわち、サンプルを導入する前に行うことができ、または装置の中で直接行うことができ、場合によって既に上で述べた充填ユニット中で行うことができる。標識付与は当分野でよく知られている方法によって達成することができる(例えば、上述のSambrook,J.ら、およびLottspeich,F.、および上述のZorbas H.参照)。
【0112】
各々1つ以上の検出可能な部分を含む1つ以上の薬剤は、それらが結合する特定な「表面分子」(またはそれらの粒子)に結合親和性を有することが好ましい。そのような薬剤の例は、中でも、抗体ならびにそのフラグメント(例えば、ファブフラグメント)、抗体状分子(例えば、アンチカリン)およびDNA−またはRNA−結合プロテインならびにそのフラグメントを含む。本発明に用いるべき適切な抗体または抗体フラグメントは、検出すべき特定の分析物に対して発生する一次抗体、および一次抗体が発生した動物種の免疫グロブリンGに対して発生する二次抗体の両方を含む。標識付与は薬剤を上述の1つ以上の検出可能なマーカーに結合させることによって達成される。
【0113】
他の好ましい実子形態において、各々1つ以上の検出可能な部分を含む1つ以上の薬剤、および検出すべき粒子上の「表面分子」(またはそれらの粒子)は、反応チャンバ中に存在する間に互いに分子相互作用を行うことが可能である。最終的に、これらの分子相互作用は適切な検出方法を用いて検出される。
【0114】
場合によって任意の追加の試薬と一緒に、反応チャンバ中へサンプルを導入した後、サンプルの少なくとも一部は1つ以上の転位器によって反応チャンバ内に転位される。本明細書に用いられる用語「転位される」は、第1表面と第2表面の間の距離を、第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で、好ましくは、この表面の1つまたは両方のいずれかまたはその少なくとも1つ以上の部分に圧力を加えることによって1つ以上の転位器によって変化させること、好ましくは縮小させることによって、サンプルが反応チャンバ内を動かされると理解すべきである。したがって、この表面の表面領域全体を通して第1表面と第2表面間の距離を変化させること、または反応チャンバの一終端部など表面領域の一部だけの距離を変化させること、または、反応チャンバの両終端部などの表面領域の少なくとも2つの個別部分で第1表面と第2表面の間の距離を変化させること、はいずれも本発明の範囲内である。
【0115】
第1表面と第2表面間の距離の変化、好ましくは縮小は、第1表面および/または第2表面を1つ以上の転位器によって互いに対して縦に動かすことによって達成される。本明細書に用いられる用語「縦の動き」は、装置の表面の1つまたは両表面のそれらのそれぞれの表面領域に垂直または実質的に垂直の動きを指し、したがって、それらの間の距離の変化をもたらす。第1表面と第2表面間の距離の変化は、2つの表面のいずれか1つをいずれかの方向に縦に動かすこと、または両方の表面を同時に反対方向に動かすことによって達成することができる。したがって、装置の第1表面と第2表面間の距離の縮小は、第1表面またはその少なくとも1つ以上の部分を第2表面に向かって動かすこと、第2表面またはその少なくとも1つ以上の部分を第1表面に向かって動かすこと、または両方の表面またはそれぞれその少なくとも1つ以上の部分を互いに向かって動かすことによって達成することができる。逆に、装置の第1表面と第2表面間の距離の拡大は、第1表面を第2表面から離すように動かすこと、第2表面を第1表面から離すように動かすこと、または両方の表面を互いに離すように動かすことのいずれかによって達成することができる。この1つ以上の転位器によって、圧力および/または吸引を1つの表面または両方の表面に加えることによって第1表面と第2表面間の距離を変化させることが特に好ましい。本発明の範囲内で、所与の装置中に存在するすべての転位器によって、またはその少なくとも1つだけを使用して他の少なくとも1つの転位器は使用せずに、圧力および/または吸引を同時に加えることが可能である。したがって、例えば、2つの転位器を含む本発明の装置において、反応チャンバ内のサンプルを転位するために、両方の転位器によって、またはその1つだけで第1表面および/または第2表面の少なくとも一部に圧力および/または吸引を同時に加えることが可能である。
【0116】
したがって、上で定義した異なる種類の転位器の観点から、第1表面と第2表面(以降において、用語「第1表面」および/または「第2表面」はそれぞれの表面領域の少なくとも一部も指すことを理解すべきである)の間の距離の変化、好ましくは縮小に関する異なるモードが考えられ、最終的に反応チャンバ内のサンプルの少なくとも一部の転位がもたらされる。
【0117】
第1に、転位器がこの表面間の距離を縮小するための第1表面または第2表面の一体化された部分(例えば、反応チャンバの内部に延在する凸状体として設計された転位構造)を構成する場合、転位構造を含むそれぞれの表面を対向側の表面に向かって縦に動かすこと、対向表面を転位構造を含む表面に向かって縦に動かすこと、または両方の表面を互いに対して縦に動かすことが可能である。場合によって、「一体化された」転位構造に対向する表面もそれぞれの(すなわち、反対側の)位置に転位器を含み、同様に表面に一体化することも、または以下に説明するように操作される、転位体とすることができる。それぞれの表面の縦の動きは、転位体型の1つ以上の転位器またはこの表面の縦の動きを可能にする1つ以上の追加の手段によって達成することができる。そのような手段は装置の第1表面および/または第2表面に一体化または取り付けることができ、または独立の本体を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の手段は人間の指、棒、ピン、タペット、およびネジからなる群より選択される。装置が自動化処理システムに一体化されるならば、反応チャンバに接続されたスタンプまたはプランジャーなどの1つ以上の手段を用いて第1表面および/または第2表面に圧力を加えることができる。表面に圧力を加えるための他の手段は、単に人間の手でそれらを互いに押し圧することである。
【0118】
第2に、転位器がこの表面の間の距離を縮小させるための転位体の形で存在する場合、この転位器を表面に向かって動かすことによって、それに対向して転位器が配置されたそれぞれの表面に圧力を加えることができ、表面領域の少なくともこの部分は場合によって弾性的に変形可能な材料から作ることができる。転位器によるそれぞれの表面の(弾性的な)変形、すなわち、表面の縦方向の「動き」は、第1表面と第2表面間の距離の縮小をもたらす。場合によって、第2転位器は反応チャンバの他の「側」の上述の転位体に対向して配置することができる。この第2転位器はそれぞれの表面に一体化された転位構造、またはそれに対向して配置された他の転位体のいずれかとすることができる。第2転位器の縦の動きは第1転位器とは逆方向に起きる。
【0119】
反応チャンバの第1表面と第2表面間の距離を表面領域の少なくとも1つ以上の部分で縮小させることは、距離が縮小したそれぞれの部位で同時に(空間的に制限された)反応空間が減少する。したがって、分析すべきサンプルは少なくとも部分的にこれらの部位から連続的に転位され、反応チャンバ内を、好ましくは補償ゾーンへ「動かされ」、反応チャンバの容積を本質的に一定に保つ。
【0120】
第1表面と第2表面間の少なくとも1つ以上の部分で距離が縮小された後、以下に説明するように、直ちに検出を行うことが可能である。
【0121】
本明細書に用いられる用語「1種以上の粒子の存在および/または数を示す値を検出/判定する」は、サンプル中の所与の粒子の定性的および/または定量的測定を可能にする導電性、酸化還元電位、蛍光強度または生物発光などのパラメーターの測定を指す。本発明の範囲内で、これらのパラメーターの1つだけを測定することができるが、1つ以上のパラメーター(例えば、導電性および適切な標識によって発生した蛍光信号の強度)を同時にまたは連続的に測定することも可能である。
【0122】
検出は上述のように、第1表面および/または第2表面の検出領域間に配置された反応チャンバの部分で行われるのが好ましい。反応チャンバのこの部分は「検出ゾーン」とも呼ばれる。定量的測定、すなわち、粒子の計数については、それぞれ容積の知られた反応チャンバおよび検出ゾーンを含む装置を用いることが好ましい。
【0123】
しかし、本方法のこの段階で、反応チャンバの第1表面と第2表面の少なくとも1つ以上の部分間の距離を再拡大させることが好ましい。反応チャンバの第1表面と第2表面の間の元の距離、すなわち、縮小前の距離を再現することが特に好ましい。これは、少なくとも1つの転位構造の縦の動き、および場合によってこの表面の逆方向の縦の動きを可能にする上述の手段の縦の動きによって、すなわち、それぞれの表面または表面領域への圧力印加を停止することによって、達成することができる。場合によって、第1転位器による圧力を加えることによって所与の表面領域で縮小された第1表面と第2表面の間の距離の再拡大は、第2転位器による圧力を加えて他の表面領域の距離を縮小させることによって改善することができる。両方の転位器は、同じ表面に対向して、すなわち、第1表面または第2表面のいずれか、または異なる表面に対向して配置することのできる転位体であることが好ましい。第1表面および/または第2表面の少なくとも1つ以上の表面領域で2つの表面間の距離を再拡大することは、同時に2つの表面間の(場合によって空間的に制限された)反応空間の増加をもたらす。さらに、好ましくは与えられた補償ゾーン中の反応空間内の転位されたサンプルは、逆方向に拡散して戻る。したがって、上述のように、第1表面および/または第2表面の表面領域の異なる部位に配置された、反対方向に操作される少なくとも2つの転位器を用いることによって、反応チャンバ内のサンプルの連続的な転位、したがって混合を達成することができる。
【0124】
本発明の特に好ましい実施形態において、後続の第1表面と第2表面の少なくとも1つ以上の部分間の距離の縮小と再拡大は、少なくとも2回繰り返される。第1表面と第2表面の少なくとも1つ以上の部分間の距離が2つ以上の連続的な「圧縮/弛緩サイクル」の間に縮小される大きさは、同じであることが好ましい。すなわち、装置の圧縮された状態の2つの表面間の距離は一定に保たれる。しかし、第1表面と第2表面の少なくとも1つ以上の部分間の距離が2つ以上の連続的な「圧縮/弛緩サイクル」の間に縮小される大きさは、例えば、サイクル数を増加させて大きさを拡大させることによって変化させることも可能である。続いてこの距離の縮小と再拡大は、サンプルが反応チャンバ内に均一に配分されるまで、すなわち、平衡状態が確立されるまで繰り返され、これはサンプル中の粒子の計数など定量的分析の信頼性にとって重要である。したがって、反応チャンバの特定の「検出ゾーン」内で検出を行うとき、(反応チャンバ全体ならびに「検出ゾーン」の容積が知られているならば)この領域内で繰り返された検出ステップの平均値を求めることによって反応チャンバ全体内の粒子の実際の数の正確な測定値が得られる。実施することのできる縮小と再拡大のサイクル数は実施者の考えによる。典型的に、サイクル数は2〜2000の範囲、好ましくは10〜1500の範囲、さらに好ましくは50〜1000の範囲、特に好ましくは100〜500の範囲である。
【0125】
本発明によれば、1種以上の粒子の存在および/または数を示す値の検出/判定は反応チャンバの第1表面と第2表面間の距離の縮小と再拡大の各サイクルの後に行うことができるが、検出はこの距離が縮小された後に行うことが好ましい。しかし、検出を数回繰り返し、例えば、2回目または5回目の縮小/再拡大サイクルごとの後に繰り返すことも可能である。さらに、最後の縮小/再拡大サイクルの完了の後に1度だけ検出を実施することも可能である。好ましい実施形態において、検出は各縮小/再拡大サイクルの後に行われる。本発明の他の好ましい実施形態において、検出は、定量的分析がサンプル中に存在している1種以上の粒子の総数を示すことのできる測定値としてそれまでに行われた検出ステップで得られた結果の平均値を求めることをさらに含む。例えば、2回目の縮小/再拡大サイクルの後、それぞれ1回目および2回目の縮小/拡大サイクルの後に得られた結果の平均値が計算され、3回目の縮小/再拡大サイクルの後、それぞれ1回目、2回目、3回目の縮小/拡大サイクルの後に得られた結果の平均値が計算され、以降繰り返される。検出の1つ以上のサイクルで得られたデータは、当業者には知られている適切なコンピュータソフトウェアを用いて解析し、数学的に処理されて粒子の存在の測定および/または数の計算を行うことができる。
【0126】
検出すべき特定の種類ならびに用いられる検出可能なマーカーの性質に応じて検出は様々な方法によって行うことができ、それらの全ては当分野に確立されている(例えば、上述のAusubel,F.M.ら、Coligan、J.E.ら(2000)Current Protocols in Protein Sciences,Wiley&Sons,Hoboken,N.J;および上述のLottspeich,F.,および上述のZorbas.H.参照)。
【0127】
したがって、本発明による方法の実施は、一般に複雑なまたは嵩高の装置を必要とせず、好ましくは蛍光、光学吸収、共鳴伝導などのパラメーターの測定に基づく簡単な検出システムを含む。本発明による特に好ましい検出システムは、既に上で述べたように、濁度計、比濁計などの吸収測定に基づき、これは当分野に確立された光度計装置で達成することができる。それらの簡単さにかかわらず、これらの方法はサンプル中の1種以上の所与の粒子の存在だけでなく、その数の正確な判定を可能にする(概観するには、例えば、Tietz,N.O.(ed).Textbook of Clinical Chemistry.WB Saunders Co.,Philadelphia,PA,pp.78−97参照)。
【0128】
さらに特に好ましい検出システムは、落射蛍光または暗視野蛍光顕微鏡などの蛍光信号を測定する「古典的な」方法に基づく(例えば、Lakowicz,J.R.(1999)Principles of Fluorescence Spectroscopy,2nd ed.,Plenum Publishing Corp.,NYに概説される)。
【0129】
本発明に用いることのできるさらに他の蛍光検出方法は、中でも、全内部蛍光顕微鏡(例えば、Axelrod,D.(1999)Surface fluorescence microscopy with evanescent illumination,in:Lacey,A.(ed)Light Microscopy in Biology,Oxford University Press,New York,399−423参照)、蛍光寿命画像形成顕微鏡(例えば、Dowling,K.ら(1999)J.Mod.Optics 46,199−209参照)、蛍光共鳴エネルギー移動(例えば、Periasamy,A.(2001)J.Biomed.Optics 6,287−291)、生物蛍光共鳴エネルギー移動(例えば、Wilson,T.,and Hastings,J.W.(1998)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.14,197−230参照)、蛍光相関分光(例えば、Hess,S.T.ら(2002)Biochemistry 41,697−705参照)を含む。
【0130】
上述の検出システムの代替は、例えば、国際公開第00/12759号、第00/25113号、第96/27025号に記載されている白色光設定、例えば、米国特許第5,324,633号、米国特許第6,027,880号、米国特許第5,585,639号、および国際公開第00/12759号に記載されている共焦システム、例えば、米国特許第5,760,950号に記載されているNipkowディスクに基づく共焦励起システム、例えば、国際公開第99/27140号に記載されている微小光学系を用いる大規模集積蛍光検出システム、例えば、国際公開第00/12759号に記載されているレーザー走査システムを含む。そのような従来の検出システムを用いる検出方法の全体的な説明は例えば、米国特許第5,324,633号に見ることができる。
【0131】
さらに、上で既に説明したように、例えば、第1表面および/または第2表面に接続された電極による酸化還元電位変化を測定することによって(例えば、Zhu,X.ら(2004)Lab.Chip.4,581−587参照)、またはサイクリックボルトメトリーによって(例えば、Liu,J.ら(2005)Anal.Chem.77,2756−2761およびWang,J.(2003)Anal.Chem.75,3941−3945参照)、電気化学的検出方法を用いることができる。さらに、電気的検出方法は、例えば、インピーダンス測定によって用いることができる(例えば、Radke,S.M.ら(2005)Biosens.Bioelectron.20,1662−1667参照)。また、検出は、例えば、Z.Guttenbergら(2005)Lab.Chip.5,308−317に記載された音響表面波の検出手段によって達成することができる。
【0132】
本発明の特定の実施形態において、検出はFRETまたはBRETを用いて行われ、これは、目標分子が多孔質マトリックス上に不動化された捕捉分子に結合した際に蛍光信号だけが発生するように、それぞれ蛍光または生物発光停止対が形成されることに基づく。また、FRETの使用も例えば、Liu,B.ら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102、589−593、およびSzollosi,J.ら(2002)J.Biotechnol.82,251−266に記載されている。BRETの使用は、例えば、Prinz,A.ら(2006)Chembiochem.7,1007−1012、およびXu,Y.ら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA96,151−156に詳細が説明されている。
【0133】
本発明は、単に本発明の特定の実施形態を例示するためであり本発明の範囲を制限するものとは解釈されない以下の図面および実施例によってさらに説明される。
【0134】
図1は、本発明による分析装置の概略の断面図を示す。装置の反応チャンバは第1表面、第2表面、ならびに側面側壁によって画定され、第2表面の少なくとも中央領域は弾性的に変形可能な材料から作られる。装置は、第2表面に対向して配置された転位体の形の転位器をさらに含む。第1表面と第2表面の間の距離は、転位器によって第2表面に圧力を加えることによって変化可能である。反応チャンバは、チャンバ本体内に配置されて封止される。光学検出システムは反応チャンバの第1表面に対向して配置される。
【0135】
図2は転位体の形の2つの転位器を含む装置を用いる本発明の分析の概略図である。これらの転位器の1つは、第1表面に対向して配置され、他の1つは装置の第2表面に対向して配置される。さらに、転位器は、それらが互いに対向して位置するように配置される。第1表面および第2表面は、少なくとも転位器に対向して配置されたそれぞれの表面領域が弾性的に変形可能な材料から作られる。複数の粒子を含むサンプルは、特定種の粒子に対して結合親和性のある標識と一緒に反応チャンバ内に配置されている。2つの転位器で第1表面および第2表面に圧力を加えることによって、この表面間の距離は反応チャンバの中央部で縮小され、したがって、反応チャンバ内(好ましくは、補償ゾーン(図示せず))のサンプルは少なくとも部分的な転位が行われる。さらに、2つの表面間の距離を縮小することによって「間隔」が形成され、それらの存在および/または数を示す値を記録することによって特別に標識を付けられた粒子の検出が行われる。その後、2つの転位器をその元の位置に再設定することによって(すなわち、表面への圧力印加を停止することによって)、表面間の距離を再拡大することが好ましい。したがって、転位されたサンプルは「戻され」、再び距離を縮小する前に反応チャンバ全体に再分配される。「検出ゾーン」内で行われた繰り返し検出ステップ中に得られた結果の平均値を求めることによって、(反応チャンバならびに「検出ゾーン」の容積が知られているならば)反応チャンバ全体内の検出すべき標識を付けた粒子の正確な総数の測定値が得られる。
【0136】
図3は、装置の2つの終端領域において同じ表面(下の「第1表面」とも呼ばれる)に対向して配置された転位体の形の2つの転位器を含む装置を用いる本発明の代替の分析の概略図である。反応チャンバの中央部分は所定の容積を有する毛管間隙として構成される。2つの転位器に対向して配置された第1表面のそれぞれの表面領域は、弾性的に変形可能な材料から作られる。複数の粒子を含むサンプルは、特定種の粒子に結合親和性のある標識と一緒に反応チャンバ内に配置されている。第1転位器によって反応チャンバの1つの終端領域で第1表面に圧力を加えることによって、第1表面と第2表面の間の距離は反応チャンバのこの部分で縮小され、他の終端領域に向かって反応チャンバ内のサンプルの転位が起きる。続いて、他の終端領域に配置されたそれぞれの第2転位器は転位された液体によってその元の位置に押し戻され、反応チャンバのこの部分で第1表面と第2表面の間の距離の拡大がもたらされる。サンプルの転位は、検出が行われる毛管間隙内の反応チャンバに存在する標識を付けた粒子の個別部分集合の配置をもたらす。続いて、第2転位器によって第1表面に圧力を加えることによって、サンプルは「戻り方向に」反応チャンバ内に転位され、毛管間隙内の標識を付けた粒子の他の個別部分集合の配置をもたらす。したがって、反対方向に操作される2つの転位器を用いることによって、反応チャンバ内のサンプルの連続的な転位、したがって混合も達成される。「検出ゾーン」内で行われた繰り返し検出ステップ中に得られた結果の平均値を求めることによって、(反応チャンバの容積が知られているならば)反応チャンバ全体内の検出すべき標識を付けた粒子の正確な総数を計算することができる。
【0137】
図4は、本発明の装置とシステムならびにその対応する動作モードの特定の実施形態を示す。図4A(頂部図)は第1表面と第2表面によって画定されたチャンネルとして構成され、補償ゾーンまたは貯蔵器の一端部へ達する単一装置または部分を概略的に示す。貯蔵器の少なくとも一部は弾性的に変形可能な材料から作られる。この貯蔵器領域内に、好ましくは乾燥した形で試薬(緩衝剤または標識)を提供することができる。転位器は貯蔵器(図示せず)の1つの表面に対向して配置される。装置の対向端部にサンプル導入通路(すなわち、サンプル充填ゾーン)が提供される。チャンネルは特定の検出領域(すなわち、検出ゾーン)を含む。そのような装置または部分の少なくとも2つは、分離した反応チャンバを含む複数部分のシステムに組み立てて、1つのサンプルに複数の並行分析を行うことができる。それぞれの反応チャンバは共通のサンプル導入通路によって互いに連通する。図4A(中間および底部図)は、それぞれ2つおよび3つの装置を含むそのような複数部分システムの2つの例示的実施形態を示す。図4Bは、ユニットが(単一装置または複数システムの部分のいずれかとして)どのように操作されるかを概略的に図示する。上部図はその初期状態の装置の断面図である。特定の検出領域を包含するチャンネルは、剛性の第1表面(ハッチング部)と弾性的に変形可能な材料(「皮膜」)から作られた第2表面によって境界が定められる。転位器(「ステンシル」)は貯蔵器の第2表面に向かって押し圧され、第1表面と第2表面の間のこの表面領域の距離は、好ましくはゼロまたはゼロに近い値に縮小される。1滴の液体サンプルがサンプル導入通路に置かれ、転位器の解放(すなわち、逆方向の動きによって)から得られる負の圧力によって反応チャンバ中に導入され、したがって、貯蔵器の弛緩がもたらされる(図4B、中間図)。最終的に転位器は再び貯蔵器の第2表面に向かって押し圧される。このようにして、2つの表面間のこの表面領域の距離がもう1回縮小することによって、サンプルは反応チャンバ内に少なくとも部分的に配置される。したがって、貯蔵器の連続的な圧縮と弛緩の繰り返しによって1種以上の粒子の検出が行われる前にサンプルの攪拌/混合を達成することができる(図4B、下部図)。
【0138】
図5は、ヒトの血液中のCD4+細胞の数を判定するための本発明による分析結果を示す。ヒトの血液中のCD4+細胞サンプルは、CD3CD4キットを用い、製造者(GE Healthcare Life Sciences,Heidelberg,Germany)の使用説明書に従って抗CD4+フィコエリスリン共役モノクローナル抗体で標識を付けた。血液サンプルは500細胞/μl未満の濃度に希釈し、ポリジメチルシロキサンから作られた毛管チャンネルとして構成された反応チャンバ中で分析した。反応チャンバは約2μlの総容積を有した。サンプルを毛管力によって反応チャンバ中に導入した後、反応チャンバの1つの表面にタペットによって圧力を加えることによって攪拌し、サンプルを部分的に転位した。このようにしてサンプルの転位を10回繰り返した。標識を付けた細胞を、10倍対物レンズ(画像視野1727×1385μm)とFl−FITCフィルタ(Zeiss(登録商標) #09)を備える顕微鏡(Akioskop;Carl Zeiss GmbH,Jena,Germany)を用いる光学検出によって分析した。露出時間は2500msであった。検出は5〜7回繰り返した。代表的な顕微鏡画像を示す。サンプル中のCD4+細胞の数は適切なコンピュータソフトウェアパッケージ(NIH Image推奨の公開ドメインJava(登録商標)画像処理プログラム、イメージ J ソフトウェア バージョン1.71)を用いて、個々の測定で得られた細胞数の平均値を計算することによって求めた。画像視野、したがって「検出ゾーン」の容積ならびに反応チャンバの容積は知られており、CD4+細胞/サンプルμlの濃度を計算することができた。
【0139】
図6は、フローサイトメトリーによって得られたヒトの血液中のCD4+細胞数と本発明による分析の比較をそれぞれ示す。ヒトの血液サンプルのCD4+細胞は、図5に説明したように標識を付けた。サンプルはGuava(登録商標) PCAフローサイトメーター(Guava Technologies,Inc.,Hayward,CA,USA;励起波長532nm、放射波長:580〜583nm)を用いて、製造者の使用説明書に従い、ならびに図5に説明した本発明の分析によって分析した。結果は5〜7測定の平均値±SEMであり、1μl血液中のCD4+細胞の数として表わされる。
【0140】
(実施例1)
ヒトの血液中のCD4+細胞の存在の判定
ヒトの血液サンプルのCD4+細胞は、CD3CD4キットを用い、製造者(GE Healthcare Life Sciences,Heidelberg,Germany)の使用説明書に従って抗CD4+フィコエリスリン共役モノクローナル抗体(CD4−PE)で標識を付けた。簡単に、10μlの血液を2μlのCD4−PE(1:25に希釈した原溶液)と2μl 20mMのEDTAに混合した。次いで、混合物を暗所で15分間インキュベートした。
【0141】
血液サンプルは500細胞/μlの濃度に希釈し(高濃度は装置の適切な取り扱いを妨げる)、ポリジメチルシロキサン、すなわち、弾性的に変形可能な材料から作られた、毛管チャンネルとして構成された反応チャンバ中で分析した。反応チャンバは2.048mm×0.04mm×24mmのサイズであり、したがって、約2μlの総容積を有する。
【0142】
サンプルを導入するために、2.5μlの希釈した血液サンプルをチャンネルの開口部に隣接させて置き、他に外部から操作することなく、毛管力によって導入した。その後、タペット(またはピンセット)で反応チャンバの1つの表面に圧力を加えることによって反応チャンバを攪拌し、サンプルの部分的な転位を起こさせた。このようなサンプルの転位を10回繰り返した。
【0143】
次いで、標識を付けた細胞を、10倍対物レンズ(画像視野1727×1385μm)とFl−FITCフィルタ(Zeiss(登録商標) #09)を備える顕微鏡(Akioskop;Carl Zeiss GmbH,Jena,Germany)を用いる光学検出によって分析した。露出時間は2500msであった。検出は、5〜7回繰り返された。代表的な顕微鏡画像を図5に示す。
【0144】
サンプル中のCD4+細胞の数は、適切なコンピュータソフトウェアパッケージ(NIH Image推奨の公開ドメインJava(登録商標)画像処理プログラム、イメージ J ソフトウェア バージョン1.71)を用いて、個々の測定で得られた細胞数の平均値を計算することによって求めた。画像視野、したがって「検出ゾーン」の容積ならびに反応チャンバの容積は知られており、CD4+細胞/μlサンプルの濃度を計算することができた。
【0145】
(実施例2)
ヒトの血液中のCD4+細胞の数を測定するためのフローサイトメトリーと本発明の分析の比較
本発明の分析が定量的分析に適しているかどうかを試験するため、ヒトの血液中のCD4+細胞数の測定について従来のフローサイトメトリーと比較した。ヒトの血液サンプル中のCD4+細胞を実施例1で説明したようにして標識を付けた。サンプルはGuava(登録商標) PCAフローサイトメーター(Guava Technologies,Inc.,Hayward,CA,USA;励起波長532nm、放射波長:580〜583nm)を用いて、製造者の使用説明書に従い、ならびに実施例1に説明した本発明の分析によって分析した。結果は図6に示され、5〜7測定の平均値±SEMで表わされる。結果は、1μl血液中のCD4+細胞の数として表わされる。
【0146】
2つの方法について得られた平均値ならびにそれぞれのパーセントの差を以下の表にまとめる。
【表1】

【0147】
見ることができるように、実施した9つの独立分析中の5つの中で2つの方法の間の変化は5%未満であり、3つの場合10%未満である。分析No.6だけはより高い約30%の変化が得られたが、この場合2つの分析が並行して、すなわち同一の血液サンプルで実施されなかったことによるものである。しかし、他の結果は本発明の方法が生物サンプル中の粒子の定量的検出に適していることを明らかに示している。
【0148】
本明細書に図示した本発明は、本明細書で特別に説明されなかった要素または複数の要素、制限または複数の制限なしに適切に実施することができる。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「包含する(containing)」等は拡張して制限なく解釈すべきである。さらに、本明細書に用いられた用語および表現は説明用語として非制限的に用いられ、そのような用語および表現を用いる上で、示され説明された特徴のいかなる等価またはその部分を排除する意図は存在せず、特許請求された本発明の範囲内でさまざまな修正を加えることが可能であるものと理解される。したがって、本発明は好ましい実施形態および任意選択的な特徴によって特別に開示されたが、本明細書に開示されそこで実施される本発明の修正および変更は当業者であれば容易に到達することができ、そのような修正および変更は本発明の範囲内であると考えられるものと理解すべきである。
【0149】
本明細書において本発明は広く一般的に説明した。一般的な開示範囲内のより狭い種群および亜群の各々も本発明の部分を形成する。これは、削除された材料が特に本明細書に記載されているかどうかにかかわらず、いかなる主題も種から取り除かないという条件で、または制限なしで、本発明の一般的な説明を含む。
【0150】
他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特徴または態様はマーカッシュグループに関して説明され、当業者であれば、本発明は、説明されるマーカッシュグループの個別メンバーまたは部分メンバーに関してもそれによって説明されることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】光学検出システムを含む本発明の分析装置の概略断面図である。
【図2】装置の異なる側に互いに対向して配置された2つの転位器を含む装置を用いる本発明の分析の概略図である。
【図3】装置の同じ側の異なる位置に配置された2つの転位器を含む装置を用いる本発明の分析の概略図である。
【図4A】本発明の分析装置または本発明の分析システムの特定の実施形態を示す図である。
【図4B】本発明の分析装置または本発明の分析システムの操作モードの特定の実施形態を示す図である。
【図5】ヒトの血液中のCD4+細胞の数を求めるための本発明による分析の結果を示す図である。
【図6】フローサイトメトリーによって得られたヒトの血液中のCD4+細胞数の比較および本発明による分析を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の定性的および/または定量的検出のための装置であって、
(a)第1表面と第2表面の間のチャンバ本体内に形成され、第2表面が第1表面に対向して配置された反応チャンバと、
(b)1つ以上の転位器とを含み、
第1表面と第2表面の間の距離が第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能である、装置。
【請求項2】
1つ以上の転位器が第1表面および/または第2表面に対向して配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2つの転位器を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
両方の転位器が第1表面または第2表面のいずれかに対向して配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
1つの転位器が第1表面に対向して配置され、他の転位器が第2表面に対向して配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
2つの転位器が互いに対向して配置される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
1つ以上の転位器が弾性的に変形可能な材料から作られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
弾性的に変形可能な材料がシリコーンゴムおよびシリコーン油からなる群より選択される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第1表面および/または第2表面が、検出を行う表面領域を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
第1表面および/または第2表面の少なくとも1つ以上の部分が弾性的に変形可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つ以上の弾性的に変形可能な部分が1つ以上の転位器に対向して配置される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つ以上の弾性的に変形可能な部分が、検出を行う表面領域と異なる、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
第1表面および/または第2表面の少なくとも1つの部分が非晶質材料から作られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
非晶質材料が透明材料である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第1表面と第2表面間の距離が0mm〜1mmの範囲で可変である、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
反応チャンバが弾性的に変形可能であるとき、反応チャンバの容積を本質的に一定に保つことを可能にする1つ以上の手段をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
1つ以上の手段が反応チャンバの側面境界を定める弾性側壁である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
検出システムをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
検出システムが光学システムである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも2つの部分を含むシステムであって、少なくとも2つの部分の各々が、
(a)第1表面と第2表面の間のチャンバ本体内に形成され、第2表面が第1表面に対向して配置された反応チャンバと、
(b)1つ以上の転位器とを含み、
第1表面と第2表面の間の距離が第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で1つ以上の転位器によって変化可能であり、少なくとも2つの部分の反応チャンバが互いに連通する、システム。
【請求項21】
少なくとも2つの装置の反応チャンバの各々に連通するサンプル導入通路をさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも2つの反応チャンバ間の過渡的な流体連通を可能にする1つ以上の手段をさらに含む、請求項20または21に記載のシステム。
【請求項23】
(a)検出すべき1種以上の粒子を含むと思われるサンプルを反応チャンバ中に配置することと、
(b)反応チャンバ内のサンプルの少なくとも一部を1つ以上の転位器によって転位することと、
(c)1種以上の粒子の存在および/または数を示す値を検出/判定することとを含む、粒子の定性的および/または定量的検出方法。
【請求項24】
サンプルを配置することが、前記サンプルを請求項1から19のいずれか一項に記載の装置の反応チャンバ、または請求項20から22のいずれか一項に記載のシステムの1つ以上の反応チャンバ中に導入することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
サンプルを導入することが、
(a)サンプルを加える前に、1つ以上の転位器によって第1表面と第2表面の間の距離を反応チャンバの少なくとも1つ以上の部分で縮小させることと、
(b)前記縮小された距離を再拡大して、負の圧力によって反応チャンバ中へサンプルを導入させることとを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1表面と第2表面の間の距離を第1表面および/または第2表面の表面領域の少なくとも1つ以上の部分で変化させることによって、サンプルの少なくとも部分が転位される、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第1表面と第2表面の間の距離が縮小される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1つ以上の転位器の少なくとも1つによって第1表面および/または第2表面に圧力を加えることによって距離が縮小される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
サンプルの少なくとも部分を転位した後、縮小された距離が実質的に再拡大される、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
距離の縮小および後続の再拡大が少なくとも2回繰り返される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第1表面と第2表面の間の距離が縮小された後に、ステップ(c)が行われる、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(c)が、それまでに行われた検出ステップで得られた結果の平均値を求めることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
(a)複数の粒子を含むサンプルを反応チャンバ中に配置することと、
(b)反応チャンバ内の前記複数粒子の部分集合を1つ以上の転位器によって転位することと、
(c)ステップ(b)で転位された粒子の部分集合の数を示す1つ以上の値を求めることとを含む、請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
(d)ステップ(c)で得られた1つ以上の値から反応チャンバ中の複数の粒子の総数を計算することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(b)を行う前に、各々1つ以上の検出可能な部分を含む1つ以上の薬剤を反応チャンバ中に配置/導入することをさらに含む、請求項23から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
1つ以上の薬剤が、核酸、ペプチド、プロテインドメイン、プロテイン、炭水化物、低分子量化学化合物、およびその類似品および/または混合物からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
1つ以上の薬剤が検出すべき1つ以上の粒子に結合親和性を有する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
1つ以上の薬剤と検出すべき粒子に互いの分子相互作用を行わせ、ステップ(c)において前記分子相互作用が検出される、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
サンプルが生物サンプルである、請求項23から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
検出すべき1種以上の粒子が、原核生物細胞、真核生物細胞、およびウイルス粒子からなる群より選択される、請求項23から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
サンプルの複数の粒子を検出チャンバ内に配置することと、
複数の粒子の適切な部分集合だけが残るように、複数の粒子のいくつかを検出チャンバから転位することと、
複数の粒子の部分集合の粒子を光学的に検出することと、
検出された粒子に基づいて、粒子の部分集合の粒子数を示す値を求めることとを含む方法。
【請求項42】
適切な部分集合の粒子数を示す値に基づいて、サンプル中の粒子の数または存在量を示す値を求めることをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
サンプル中の粒子の数または存在量を示す値を求めることが、検出チャンバの検出容積のサイズにさらに基づき、部分集合の粒子数を示す値が光学的な検出ステップの際の検出容積に存在する粒子数を示す、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
サンプルの複数の粒子を検出チャンバ内に配置し、検出チャンバから複数の粒子のいくつかを転位するステップをNR回繰り返すことを含み、いずれの場合にも複数の粒子の適切な部分集合だけが残るようにされ、NR≧2である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
NR繰り返しの数NDについて、光学的に複数粒子の部分集合の粒子を検出すること、および検出された粒子に基づいて粒子の適切な部分集合の粒子数を示す値を求めることを含み、ND≧NRである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ND≧5である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ND≧10およびNR≧5である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
適切な部分集合の粒子数を示すNR値の数NVに基づいてサンプル中の粒子の数、または存在量を示す値を求めることをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
ND≧10およびNR≧NV≧5である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
配置と転位のステップをNR回繰り返すことが、NR回繰り返しごとに転位された複数粒子の少なくともいくつかを検出チャンバに再導入することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
検出チャンバに流体連通する貯蔵器内の検出チャンバから転位された粒子を受けとることをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
受けとることが貯蔵器の壁を拡張することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
再導入が、貯蔵器の壁を収縮されることを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
複数の粒子のいくつかを転位することが検出チャンバの容積を減少させることを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
検出チャンバの容積を減少させることが、チャンバの第1壁と第2壁間の距離を縮小させることを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
光学的な検出ステップが第1壁を通過した光を検出することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
転位の前に、検出チャンバが初期の容積を有し、転位の後にチャンバが転位された容積を有し、初期容積に対する転位された容積の比が0.25以下である、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
比が0.15以下である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
比が0.05以下である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
検出チャンバ内に存在するサンプルの初期の容積を転位する前に、サンプルが液体であり、転位ステップが、検出チャンバから少なくともいくらかの液体サンプルを転位することを含み、転位されたサンプルの容積に対する残るサンプルの容積の比が0.25以下である、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
比が0.15以下である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
比が0.05以下である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
再導入ステップが、転位されたサンプルの少なくとも50%を検出チャンバに再導入することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
転位されたサンプルの少なくとも70%を検出チャンバに再導入することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
転位されたサンプルの少なくとも80%を検出チャンバに再導入することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
転位されたサンプルの少なくとも90%を検出チャンバに再導入することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
複数粒子のいくつかを転位することが検出チャンバの容積を減少させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項68】
検出チャンバの容積を減少させることが、チャンバの第1壁と第2壁の間の距離を縮小させることを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
光学的な検出ステップが、第1表面を通過した光を検出することを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
転位の前に、検出チャンバが初期の容積を有し、転位の後にチャンバが転位された容積を有し、初期の容積に対する転位された容積の比が0.25以下である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
比が0.15以下である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
比が0.05以下である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
第2部分集合の粒子数を示す値を求めるステップが、部分集合の粒子数を示す値を求めるステップの後に行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項74】
粒子が細胞である、請求項41から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
サンプルが少なくともいくらかの血液材料を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
サンプルの複数の粒子を検出チャンバ内に配置することと、
複数の粒子の適切な部分集合だけが残るように、複数の粒子のいくつかを検出チャンバから転位することと、
複数粒子の部分集合の粒子を光学的に検出することと、
粒子の部分集合の中の目標粒子の存在を求めることとを含む方法。
【請求項77】
検出チャンバ内のサンプルの複数の粒子を配置し、検出チャンバから複数の粒子のいくつかを転位するステップをNR回繰り返すことを含み、いずれの場合にも複数の粒子の適切な部分集合だけが残るようにされ、NR≧2である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
NR繰り返しの数NDについて、複数粒子の部分集合の粒子を光学的に検出すること、および検出された粒子に基づいて、粒子の部分集合中の目標粒子の存在を求めることを含み、ND≧NRである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
ND≧5である、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
ND≧10およびNR≧5である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
サンプルの第1の複数粒子を検出チャンバ内に配置することと、
検出チャンバの容積を減少させることと、
検出チャンバ内の粒子を光学的に検出することと、
検出された粒子に基づいて検出チャンバ内に存在する粒子数を示す値を求めることと、
検出チャンバの容積を増加させることと、
サンプルの第2の複数粒子を検出チャンバ内に配置することと、
検出チャンバの容積を減少させることと、
検出された粒子に基づいて、検出チャンバ内に存在する粒子数を示す値を求めること、とを含む方法。
【請求項82】
複数粒子を含むサンプルを受けとるように構成された検出チャンバと、
複数粒子の適切な部分集合だけが残るように検出チャンバから複数粒子のいくつかを転位するように構成されたアクチュエータと、
粒子の部分集合の粒子を検出するように構成された検出器と、
検出された粒子に基づいて、適切な粒子の部分集合の粒子数を示す値を求めるように構成されたプロセッサとを含む装置。
【請求項83】
装置が、アクチュエータを操作して(a)転位された複数の粒子の少なくともいくつかを検出チャンバ中に再導入し、続いて(b)複数粒子の適切な第2部分集合だけが残るように検出チャンバから複数粒子のいくつかを転位するように構成され、プロセッサが、第2の適切な部分集合の粒子を検出するために検出器を操作し、検出された粒子に基づいて粒子の第2の適切な部分集合の粒子数を示す値を求めるように構成される、請求項82に記載の装置。
【請求項84】
検出チャンバから転位された粒子を受けとることができ、その粒子から検出チャンバへ再導入することのできる貯蔵器をさらに含む、請求項83に記載の装置。
【請求項85】
貯蔵器が膨張可能な壁を含む、請求項84に記載の装置。
【請求項86】
プロセッサが、適切な部分集合の粒子数を示す値に基づいてサンプル中の粒子数または存在量を示す値を求めるように構成される、請求項82に記載の装置。
【請求項87】
複数の粒子を含むサンプルを受けとるように構成された検出チャンバと、
複数粒子の適切な部分集合だけが残るように検出チャンバから複数粒子のいくつかを転位するように構成されたアクチュエータと、
粒子の部分集合の粒子を検出するように構成された検出器と、
検出された粒子に基づいて、粒子の部分集合の粒子中の目標粒子の存在を測定するように構成されたプロセッサとを含む装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−515155(P2009−515155A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538367(P2008−538367)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068153
【国際公開番号】WO2007/051861
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508135149)クロンデイアグ・ゲーエムベーハー (5)