説明

粒子の除去方法

【課題】粒子を扱う装置を繰り返し使用するための、装置内壁に付着している粒子の除去方法であって、除去方式そのものを簡便なものにするとともに、装置の内壁に付着している粒子の除去に有効な除去方法を提供する。
【解決手段】装置内壁に付着する粒子の除去方法であって、前記粒子が有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む粒子であり、前記除去を炭素数3〜5のケトン、炭素数1〜7のアルコール、炭素数2〜4のエーテル、およびメチル基を1または2個有する芳香族炭化水素から選択された1種または2種以上の化合物を含有する除去液を用いて行なう粒子の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内壁に付着する粒子を効率的に除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂や樹脂組成物中に粒子を含有させ、該樹脂や樹脂組成物の物性あるいは有用性等を向上させる試みがある。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマデイスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、透過型スクリーンおよびタッチパネル等の部材として用いられる光学用樹脂フィルム(シート、板)には、有機質無機質複合粒子が原料として用いられている。
【0003】
上記原料粒子には、粒子径の分布の制御が求められる場合がある。この求めに応じるためには、制御すべき平均粒子径が異なる他の粒子(以下、「異種粒子」という)が、前記原料粒子に混入することを回避しなければならない。しかるにこのような粒子の製造においては、原料粒子、異種粒子ともに同一の装置を使用して製造されることがあり、異種粒子製造後の装置を用いて原料粒子を製造する場合、原料粒子への異種粒子の混入を回避するため、原料粒子製造前の段階で異種粒子が付着する装置内壁から当該付着している異種粒子を除去し、前記装置外に排出することが必須となる。
【0004】
装置内壁に付着した異種粒子除去のため、水を装置内壁に噴射してみても、噴射圧が高くなければ装置壁面からの粒子の除去が困難であった。一方、噴射圧が十分に高い場合は、装置内壁からの粒子の除去は起こるものの、除去された粒子は装置床面に滞留してしまい、これを装置外へと排出させるためには、さらに床面に対し水を高圧で噴射しなければならないという問題が生じた。加えて、床面へのこの水噴射により生じた気流で異種粒子が舞い上がり、このことが異種粒子の装置外排出を不十分なものにさせる。
【0005】
また、装置内壁の付着物を溶解する方法(例えば、特許文献1を参照)を異種粒子の除去に適用することも考え得る。しかし、異種粒子の溶解には時間を要することになり、異種粒子除去における迅速性に欠け、粒子が有機質無機質複合粒子の場合には溶解そのものが起こらない。
【特許文献1】特開2003−126682号公報、特許請求の範囲など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、装置内壁に付着している有機質無機質複合粒子を、容易かつ効率的に除去できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の化合物を含有する除去液を用いる除去方法が上記課題解決のために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、装置内壁に付着する粒子の除去方法であって、前記粒子が有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子であり、前記除去を炭素数3〜5のケトン、炭素数1〜7のアルコール、炭素数2〜4のエーテル、およびメチル基を1または2個有する芳香族炭化水素から選択された1種または2種以上の化合物を含有する除去液を用いて行なうものである。
【0009】
本発明における「除去」とは、装置内壁と、当該装置内壁に付着している有機質無機質複合粒子との界面に、除去液を侵入させることで、有機質無機質複合粒子を前記界面から浮かせ、流し落とすことを意味する。
【0010】
前記除去液に含有される化合物は、アセトン、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、およびt−ブタノールの中から選ばれる1種または2種以上が好ましい。
【0011】
上記本発明に係る除去液を使用して有機質無機質複合粒子を除去した後に、装置内壁を水で洗い流しても良い。前述のごとく、たとえ高圧であっても水のみを用いることによっては有機質無機質複合粒子を装置内壁から除去することは全く期待できないが、前記除去液を用いた後に水で洗い流すことによって、装置内壁に残存する粒子の除去をより徹底して行えるとともに、粒子の除去に要する除去液の使用量を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水のみによる高圧洗浄に比して、装置内壁に付着する有機質無機質複合粒子を、容易かつ迅速に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、第一および第二の実施形態に基づき本発明を説明する。
まず、第一実施形態に基づいて本発明を説明する。第一実施形態に係る方法は、装置の内壁に付着している特定の粒子の除去を、特定の除去液を用いて行なうものである。
【0014】
特定の除去液とは、炭素数3〜5のケトン、炭素数1〜7のアルコール、炭素数2〜4のエーテル、およびメチル基を1または2個有する芳香族炭化水素から選択された1種または2種以上の化合物を含有する、前記粒子の除去に用いる液のことである。
【0015】
前記化合物のより具体的な例としては、アセトン、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、およびt−ブタノールの中から選ばれる1種または2種以上を挙げることができる。
【0016】
また、本実施形態において、特定の粒子とは、一つの粒子が有機質と無機質の両方の構成要素を有する有機質無機質複合粒子のことをいう。
【0017】
本実施形態に係る有機質無機質複合粒子(以下、「粒子」という)としては、たとえば、(A)シリカ、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の無機質粒子が、有機樹脂中に分散含有されてなる粒子や、(B)(オルガノ)ポリシロキサン、ポリチタノキサンなどのメタロキサン鎖(「金属−酸素−金属」結合を含む分子鎖)と有機分子が分子レベルで複合してなる粒子や、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシランの加水分解、縮合反応の進行によって得られるポリメチルシルセスキオキサンなどのシリコーン系粒子や、(C)加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物を原料とするポリシロキサンと重合性基(例えばビニル基、(メタ)アクリロイル基など)を有する重合性単量体などと反応させて得られる有機ポリマー骨格と、ポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合材料から構成される粒子が挙げられ、それらの中でも特に(C)から構成される粒子が好ましい。
【0018】
これらの粒子の重合方法に特に限定はなく、乳化重合、懸濁重合、シード重合、ゾルゲル重合などの公知の重合方法が適用できる。
【0019】
ここで、上記(C)から構成された粒子の、その構造および製造方法について説明する。
上述のように、(C)から構成された粒子は、有機質部分としての有機ポリマー骨格と、無機質部分としてのポリシロキサン骨格とを含んでなる粒子である。該粒子は、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子に、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している形態が好ましい。具体的な形態としては、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子と有機ポリマー骨格中の炭素原子とが結合していることにより、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とが3次元的なネットワーク構造を構成している形態が好ましい。
【0020】
上記有機ポリマー骨格は、側鎖を有するもの、分岐構造を有するもの、さらには架橋構造を有するものであってもよい。該骨格を形成する有機ポリマーの分子量、組成、構造および官能基の有無などは、特に限定はされない。上記有機ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレンおよびポリオレフィン等のビニルポリマー、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリカーボネート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ならびに、尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0021】
有機ポリマー骨格の形態としては、粒子の硬度を適度に制御できるという理由から、下記式(1):
【0022】
【化1】

【0023】
で表される繰り返し単位により構成される主鎖を有するポリマー(いわゆるビニル系ポリマー)であることが好ましい。
【0024】
ポリシロキサン骨格は、下記式(2):
【0025】
【化2】

【0026】
で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、網目構造のネットワークを構成した化合物と定義される。
【0027】
上記粒子におけるポリシロキサン骨格は、加水分解性基を有するシリコーン化合物の加水分解縮合反応により得られるものでもよい。
【0028】
加水分解性を有するシリコーン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、下記一般式(3)で表されるシラン化合物およびその誘導体などが挙げられる。
R’mSiX4‐m (3)
(ここで、R’は置換基を有していてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基および不飽和脂肪族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基およびアシロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0から3までの整数である。)
【0029】
上記一般式(3)で表されるシラン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、m=0のものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン;m=1のものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性シラン;m=2のものとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルシランジオール等の2官能性シラン;m=3のものとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノール等の1官能性シラン等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、上記一般式(3)中、mが1の構造を有し、Xがメトキシ基またはエトキシ基であり、屈折率が1.30〜1.60であるシラン化合物は、光学用途に好適な屈折率の粒子を得ることができる。具体的には、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(3)で表されるシラン化合物の誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、Xの一部がカルボキシル基、β−ジカルボニル基等のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物や、上記シラン化合物を部分的に加水分解して得られる低縮合物等が挙げられる。
【0032】
加水分解性を有するシリコーン化合物は、1種のみ用いても2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。上記一般式(3)において、m=3であるシラン化合物およびその誘導体のみを原料として使用する場合は、粒子は得られない。
【0033】
上記粒子が、ポリシロキサン骨格が、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接結合した有機ケイ素原子を分子内に有する形態の場合は、上記加水分解性を有するシリコーン化合物としては、有機ポリマー骨格を形成し得る重合性反応基を含有する有機基を有するものを用いる必要があり、該反応基としては、例えば、ラジカル重合性基、エポキシ基、水酸基およびアミノ基などが挙げられる。
【0034】
上記ラジカル重合性基を含有する有機基としては、例えば、下記一般式(4)、(5)および(6)で表されるラジカル重合性基などを挙げることができる。
CH2=C(−Ra)−COORb− (4)
(ここで、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
CH2=C(−Rc)− (5)
(ここで、Rcは水素原子またはメチル基を表す。)
CH2=C(−Rd)−Re− (6)
(ここで、Rdは水素原子またはメチル基を表し、Reは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【0035】
上記一般式(4)のラジカル重合性基含有有機基としては、例えば、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(3)のシリコーン化合物としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記一般式(5)のラジカル重合性基含有有機基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(3)のシリコーン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記一般式(6)のラジカル重合性基含有有機基としては、例えば、1−アルケニル基もしくはビニルフェニル基、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(3)のシリコーン化合物としては、例えば、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン、1−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1−ヘキセニルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
エポキシ基を含有する有機基を有するシリコーン化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。水酸基を含有する有機基を有するシリコーン化合物としては、例えば、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
アミノ基を含有する有機基を有するシリコーン化合物としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、上記粒子に含まれる有機ポリマー骨格は、例えば、1)上記シリコーン化合物が、加水分解性基とともに、ラジカル重合性基やエポキシ基等の有機ポリマー骨格を形成し得る重合性反応基を含有する有機基を有する場合には、1−1)シリコーン化合物の加水分解縮合反応後に重合する方法や、1−2)シリコーン化合物の加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン骨格を有する粒子に、ラジカル重合性モノマー、エポキシ基を有するモノマー、水酸基を有するモノマーおよびアミノ基を有するモノマー等の重合性反応基を有する重合性モノマーを吸収させた後、重合させる方法によっても得られる。また、2)上記シリコーン化合物が、ラジカル重合性基、エポキシ基、水酸基、アミノ基等の有機ポリマー骨格を形成し得る重合性反応基を含有する有機基を有しない場合には、シリコーン化合物の加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン骨格を有する粒子に、ラジカル重合性モノマー、エポキシ基を有するモノマー、水酸基を有するモノマーおよびアミノ基を有するモノマー等の重合性反応基を有する重合性モノマーを吸収させた後、重合反応させることでも得られる。
【0041】
前述のごとく、粒子は、a)ポリシロキサン骨格が有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している形態であってもよいし、b)このような有機ケイ素原子を分子内に有していない形態であってもよく、特に限定はされないが、例えば、上記1−1)のようにしてポリシロキサン骨格とともに有機ポリマー骨格を得た場合は、a)の形態を有する粒子を得られ、上記2)のようにした場合は、b)の形態を有する粒子が得られる。また、上記1−2)のようにしてポリシロキサン骨格とともに有機ポリマー骨格を得た場合は、上記a)とb)の形態を併せ持った形態を有する粒子が得られる。
【0042】
上記1−2)や2)の方法において、ポリシロキサン骨格を有する粒子に吸収させることのできるラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性ビニルモノマーを必須とするモノマー成分であることが好ましい。上記ラジカル重合性ビニルモノマーとしては、例えば、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であればその種類等は特に限定されず、所望する複合体粒子の物性に応じて適宜選択することができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
例えば、疎水性のラジカル重合性ビニルモノマーは、ポリシロキサン骨格を有する粒子に上記モノマー成分を吸収させる際に、上記モノマー成分を乳化分散させた安定なエマルションを生成させ得るので好ましい。また、ラジカル重合性ビニルモノマーとして、架橋性モノマーを用いてもよく、架橋性モノマーを使用すれば、得られる複合体粒子の機械的特性の調節が容易にでき、また、複合体微粒子の耐溶剤性を向上させることもできる。具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0044】
上記粒子を製造する方法としては、加水分解、縮合工程、および重合工程を含む製造方法が好ましく挙げられる。さらに必要に応じて、加水分解、縮合工程後、重合工程前に、重合性モノマーを吸収させる吸収工程を含めてもよい(上記1−2)および2)の場合)。なお、加水分解、縮合工程に用いるシリコーン化合物が、ポリシロキサン骨格構造を構成し得る要素とともに有機ポリマー骨格を構成する要素を併せ持ったものでない場合は(上記2)の場合)、上記吸収工程を必須とし、この吸収工程に続く重合工程において有機ポリマー骨格が形成される。
【0045】
上記加水分解、縮合工程は、前述したシリコーン化合物を、水を含む溶媒中で加水分解して縮重合させる反応を行う工程である。該工程により、ポリシロキサン骨格を有する粒子(ポリシロキサン粒子)を得ることができる。加水分解と縮重合は、一括、分割、連続など、任意の方法を採用できる。加水分解し、縮重合させるにあたっては、触媒としてアンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の塩基性触媒を好ましく用いることができる。
【0046】
上記水を含む溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
加水分解、縮合工程ではまた、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤を併用することもできる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
加水分解および縮合は、原料となる上記シリコーン化合物と、触媒や水および有機溶剤を含む溶媒を混合した後、温度0〜100℃、好ましくは0〜70℃で、30分〜100時間撹拌することにより行うことができる。また、所望の程度まで加水分解、縮合反応を行って粒子を製造した後、これを種粒子として、反応系にさらにシリコーン化合物を添加して該種粒子を成長させてもよい。
【0049】
吸収工程は、前述したように、用いるシリコーン化合物に応じて必須工程にすべき場合と、任意工程にしてもよい場合とがある。上記吸収工程は、ポリシロキサン粒子の存在下に、重合性モノマーを存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。したがって、ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に重合性モノマーを加えてもよいし、重合性モノマーを含む溶媒中にポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、重合性モノマーを加えるのが好ましく、さらには、加水分解、縮合工程で得られたポリシロキサン粒子を反応液(ポリシロキサン粒子分散液)から取り出すことなく、該反応液に重合性モノマーを加える方法は、工程が複雑にならず、生産性に優れるため好ましい。
【0050】
なお、吸収工程においては、上記ポリシロキサン粒子の構造中に上記重合性モノマーを吸収させるが、重合性モノマーの吸収が速やかに進行するように、ポリシロキサン粒子および重合性モノマーそれぞれの濃度や、上記ポリシロキサンと重合性モノマーの混合比、混合の処理方法、手段、混合時の温度や時間、混合後の処理方法、手段などを設定し、その条件のもとで行うのが好ましい。
【0051】
これら条件は、用いるポリシロキサン粒子や重合性モノマーの種類などによって、適宜その必要性を考慮すればよい。また、これら条件は1種のみ適用しても2種以上を合わせて適用してもよい。
【0052】
上記吸収工程における、重合性モノマーの添加量は、ポリシロキサン粒子の原料として使用したシリコーン化合物の質量に対して、質量で0.01倍〜100倍とするのが好ましい。より好ましくは0.5〜30倍であり、さらに好ましくは1〜15倍である。添加量が上記範囲に満たない場合は、ポリシロキサン粒子の重合性モノマーの吸収量が少なくなり、生成する粒子の機械的特性が得られ難くなることがあり、上記範囲を超える場合は、添加した重合性モノマーをポリシロキサン粒子に完全に吸収させることが困難となる傾向があり、未吸収の重合性モノマーが残存するため後の重合段階において粒子間の凝集が発生しやすくなるおそれがある。
【0053】
上記吸収工程において、重合性モノマーの添加のタイミングは特に限定されず、該重合性モノマーを一括で加えておいてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、重合性モノマーを加えるにあたっては、重合性モノマーのみで添加しても、重合性モノマーの溶液を添加してもよいが、重合性モノマーを予め乳化剤で乳化分散させた状態でポリシロキサン粒子に加えておくことが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
【0054】
上記吸収工程は、0〜60℃の温度範囲で、5分〜720分間、攪拌しながら行うのが好ましい。これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や重合性モノマーの種類などによって、適宜設定すればよく、これらの条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。
【0055】
吸収工程において、モノマー成分がポリシロキサン粒子に吸収されたかどうかの判断については、例えば、モノマー成分を加える前および吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、モノマー成分の吸収により粒子径が大きくなっていることを確認することで容易に判断できる。
【0056】
重合工程は、重合性反応基を重合反応させて、有機ポリマー骨格を有する粒子を得る工程である。具体的には、シリコーン化合物として重合性反応基含有有機基を有するものを用いた場合は、該有機基の重合性反応基を重合させて有機ポリマー骨格を形成する工程であり、吸収工程を経た場合は、吸収させた重合性反応基を有する重合性モノマーを重合させて有機ポリマー骨格を形成する工程であるが、両方に該当する場合はどちらの反応によっても有機ポリマー骨格を形成する工程となり得る。
【0057】
重合反応は、加水分解縮合工程や吸収工程の途中で行ってもよいし、いずれか又は両方の工程後に行ってもよく、特に限定はされないが、通常は、加水分解縮合工程後(吸収工程を行った場合は吸収工程後)に開始するようにする。
【0058】
重合反応は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法など、いずれも採用可能である。上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’ −アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’ −アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’ −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;などを好ましく挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、上記重合性モノマーの総質量に対して、0.001質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%である。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量%未満の場合は、重合性モノマーの重合度が上がらない場合がある。上記ラジカル重合開始剤の上記溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込む方法(ラジカル重合開始剤を重合性モノマーと共に乳化分散させておく態様、重合性モノマーが吸収された後にラジカル重合開始剤を仕込む態様);最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加する方法、または、断続的にパルス添加する方法、あるいは、これらを組み合わせた手法など、従来公知の手法はいずれも採用することができる。
【0060】
上記ラジカル重合する際の反応温度は40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃がより好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず重合体粒子の機械的特性が得られ難くなる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。尚、上記ラジカル重合する際の反応時間は用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5〜600分が好ましく、10〜300分がより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
【0061】
本実施形態に係る粒子の形状は特に限定はされないが、例えば、真球状かほぼ真球に近い形状であって、その短粒子径に対する長粒子径の比率が1.0〜1.2の範囲にあってもよく、その平均粒子径は1〜50μmのものである。この平均粒子径は、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定する。また、本実施形態に係る粒子は、乾式分級して得られるものでもよい。
【0062】
乾式分級に供される粒子は、水分含量0.05〜2質量%である。含水量が多すぎる場合には、分級時に、かかる水分が結着剤として働いて粒子同士が凝集し、一方、含水量が少なすぎる場合には、静電気により粒子同士が凝集するため、いずれの場合にも分級精度が低くなり粗大粒子が増加する傾向がある。水分含量が上記範囲であれば、粒子が凝集し難いため、分級操作を円滑に進めることができる。
【0063】
上記「含水量」とは、カールフィッシャー水分計(例えば平沼産業株式会社製、水分測定装置)により測定される値である。
【0064】
本実施形態に係る装置内壁に付着した粒子の除去方法において、当該装置としてはいわゆる重合体粒子の合成から乾燥、分級、最終製品に至るまでのものを種々考えることができるが、粒子の表面と接触して当該粒子の付着が発生する装置内壁の材質に関する因子から、前記粒子の重合後の工程に関わる乾燥機、粉体移送機、粉砕機、集塵機(バグフィルター)、およびそれらを繋ぐ配管を特に対象とすることができる。
【0065】
すなわち、これら装置の内壁の材質がSUS(ステンレス)の場合は、本発明者らにとってなお理由は明らかではないが、前記有機質無機質複合粒子の有機ポリマー骨格が疎水性である結果、粒子が当該装置内壁に付着することとなり、水による高圧洗浄を行なってみても十分に除去することができない。
【0066】
本実施形態における除去とは、前記装置や配管の少なくとも内壁表面と、それに接触し付着している前記粒子を前記表面から浮かし、流し落とす工程のことを意味する。
【0067】
そして前記装置内壁から除去された粒子は、最終的に装置外へと排出される。
本実施形態においては、粒子を除去する際の作業性や必要とする除去液の量等の観点から、粒子を除去する方法としてかけ洗いを採用することが好ましい。ここで「かけ洗い」とは、たとえば装置内壁等の表面に存在する付着物に向けて、スプレーノズルなどの散布機を用いて除去液を放出する(かける)ことによって付着物を洗い流すことをいう。
【0068】
実際の粒子の除去に当たっては、その対象である装置を粒子の除去作業を行なうのに適するよう所定の部分に分解して行なっても良い。本実施形態においては除去液を用いた粒子の除去を行なうわけであるが、本実施形態においては前述のかけ洗いによって行なうことができる。
【0069】
また、前記複数の装置を同時に分解して粒子の除去を行なってももちろん良いが、当該複数の装置を適宜の組合わせごとに分け、その組合わせごとに当該組合わせに属するそれぞれの装置を所定の部分に分解して粒子の除去作業を行なっても良い。さらに粒子の除去作業に携わる人的資源の条件などに応じて、当該粒子の除去に係る作業を分けて行なうこともできる。
【0070】
すなわち、乾燥機と粉体移送機との組合わせ、粉砕機、集塵機(バグフィルター)、およびそれらを繋ぐ配管とを、それぞれ当該装置の組合わせや装置の単位ごとに分解して付着粒子の除去を行なっても良いし、装置同士を組み合わせることはせずに、各装置ごとに分解し粒子の除去作業を行なっても良い。
【0071】
第二実施形態に係る粒子の除去方法は、装置の内壁に付着している粒子を特定の化合物であるアセトン、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、およびt−ブタノールの中から選ばれる1種または2種以上を含有する除去液を用いて除去する工程(以下、「除去工程」という)、および当該除去工程後に、装置内壁に残存し付着している粒子を水で洗い流す工程、を有するものである。
【0072】
すなわち、第二実施形態は第一実施形態に対し、除去工程を経た後も装置内壁に残存している粒子を水で洗い流す工程(以下、「水洗工程」という)を付加したものとなっている。
【0073】
この水洗工程についてさらに考察すると、前記第一実施形態により装置内壁に付着していた粒子は、前記除去工程により除去されるわけであるが、依然として装置内壁に残存している粒子が存在する。当該粒子はその表面を前記除去液に包まれたような状態にあると考えられ、さらに前記除去液が水溶性であるため、水で洗い流す際に前記粒子を包んでいる除去液と粒子とが一体となって、前記水によって洗い落とされる作用を受けるものと考えられる。その結果、前記第一実施形態における除去工程の後も、装置内壁に依然として残存し付着していた粒子を、水で流し落とすことができるものと思われる。
【0074】
前述のごとく、水を用いる除去方法によっては、たとえそれが高圧で行なうものであっても、有機質無機質複合粒子を装置内壁から十分に除去することはできない。しかしながら、前記第一実施形態により前記除去液を用いた粒子の除去を行なった後に、第二実施形態の、水で洗い流す水洗工程を行なうことによって、前記水を用いる除去方法からは予想できなかった効果、すなわち、前記第一実施形態の前記除去工程を行なってもなお装置内壁に残存していた粒子の除去をより確実に行えることが判明した。さらに、第二実施形態の水洗工程を行なうことによって、粒子の除去に要する除去液の使用量を全体として低減することも可能となることが判明した。
【0075】
また、第二実施形態を行なうことで、第一実施形態における、前記除去液の装置内壁の残存濃度を低下させることもできるので、必要に応じて乾燥機内に作業者が入り、検査等の人手を要する作業を行なうことも可能となる。
【0076】
この第二実施形態では、使用する水としてイオン交換水を用いることができる。
第二実施形態を行なうに当たり、この水洗工程においても作業性や必要とする水の使用量等の観点からかけ洗いを採用することができる。
【0077】
また、第二実施形態に対し、前記水洗工程後に装置内壁に残存している前記水を、前記水溶性の除去液でさらに洗い流す工程(以下、「洗い流し工程」という)を行なうことにより、装置内壁に付着した水の乾燥が促進されるため、同一装置を用いて行なう本実施形態の粒子に関する所定の工程を繰り返し行なうことが容易となる。
【0078】
洗い流し工程においても、作業性や必要とする除去液の使用量等の観点からかけ洗いを採用してもよい。
さらに、第二実施形態を行なった後に、装置壁面に付着した粒子の除去の程度を判断するため、洗い流し工程において、当該洗い流すために用いた除去液のサンプルを採取し、採取した液中に存在する粒子の含有濃度を測定、分析して当該判断に利用することができる。
【0079】
この粒子の含有濃度の測定は、ヘイズ値を測定することによって求めてもよい。この場合、ヘイズ値の測定には日本電色工業社製のNDH−1001DP(濁度計)を用いることができる。この測定においては、既知の粒子濃度とヘイズ値との関係から予め検量線を作成しておき、この検量線と測定したヘイズ値とから、除去後のサンプルの残存粒子濃度を決定することができる。
【0080】
この粒子の含有濃度が所定の基準以上である場合に、装置内壁に付着した粒子の除去が十分ではないと判断する場合、再度前記除去液で装置内壁を洗い流す洗い流し工程を施しても良い。前記同様に粒子の含有濃度を測定し、以下、この数値が所定の基準以下となるまで、この洗い流し工程を繰り返しても良い。
【0081】
本実施形態においては、前記含有粒子濃度の測定値が200ppm以上である場合は、除去状態がいまだ不十分と判断し再度洗い流し工程を行ない、最終的に残存粒子濃度の測定値が、200ppm以下となるまで、前記洗い流し工程を繰り返し行なうこととした。
【0082】
前記測定値が200ppm以上である場合、得られる有機質無機質複合粒子は、先述の液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマデイスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、透過型スクリーンおよびタッチパネル等の部材として用いられる光学用樹脂フィルム(シート、板)にはもはや使用できなくなる。
【0083】
残存粒子の除去性の評価については、目視により行う。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、以下、質量部を「部」、質量%を「%」と表す。
【0085】
冷却装置、温度計および滴下口を備えた反応釜(A)に、イオン交換水280部、25%アンモニア水5部およびメタノール120部の混合溶液を入れ、混合溶液の攪拌下、滴下口から、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40部を投入して、温度30℃で2時間、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、ポリシロキサン粒子の懸濁液を調製した。
【0086】
別途、上述のものとは異なる反応釜(B)で、スチレン400部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)3部、アニオン性界面活性剤(LA−10、第一工業社製)1.5部およびイオン交換水400部をホモミキサーにより、室温下(25℃)で15分間乳化分散させ、エマルションを調整した(モノマー溶液)。
【0087】
前記ポリシロキサン粒子の懸濁液の調製開始から2時間後(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン添加から2時間後)、反応釜(A)の滴下口より上記エマルションを添加した。1時間攪拌を継続し、ポリシロキサン粒子がモノマー成分を吸収していることを確認した後、ここにイオン交換水3500部を添加し、窒素雰囲気下、反応溶液を65℃まで昇温させて、65±2℃で2時間保持し、ラジカル重合反応を行い、重合体粒子(粒子)分散液を得た。分散液中に分散する重合体粒子の平均粒子径は10.1μm、分散液のB型粘度(B型粘度計、株式会社東京計器製)は3.8mPa・s、固形分濃度は10質量%であった。
【0088】
上記で得られた重合体粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級した(湿式分級工程)。次いで、湿式分級後の重合体粒子分散液を自然沈降により固液分離した。得られたケーキをイオン交換水およびメタノールで除去した後、100℃で7時間、ホソカワミクロン製ナウタミキサ(乾燥機)を用いて減圧乾燥することにより、粒子が凝集してなる乾燥物を得た。この乾燥物をホソカワミクロン製ファイントロン(粉体移送機)を用いてホソカワミクロン製ACMパルペライザ(粉砕器)に移送し、粉砕することにより粉砕粒子を得、この粉砕粒子をホソカワミクロン製パルスジェットコレクタ(バグフィルター)を用いて回収した(回収率95%)。
【0089】
実施例1
本発明に係る除去方法にて前記乾燥機槽内の内壁に付着している粒子の除去を行なうに当たり、化合物としてアセトンを用いた。すなわち、前記乾燥機槽内の内壁に付着している粒子の除去について、まずアセトンで除去工程を行ない、次にイオン交換水で水洗工程を行ない、再びアセトンで洗い流し工程を行なう、という作業をこの順番で行なった。
【0090】
以上の工程を順番に行なうとともに、前記洗い流し工程で使用し流し落としたアセトンのサンプルを採取し、前記装置内壁残存粒子濃度の分析方法に基づき乾燥機槽内残存粒子濃度を測定したところ、30ppmであった。
アセトンとイオン交換水の使用量は、ともに8kgであった。
目視により乾燥機槽内の除去性を評価したが、良好であった。
【0091】
実施例2
前記乾燥機槽内内壁に付着している粒子の除去を行なうに当たり、化合物としてメタノールを用いた以外は全て実施例1と同様に行なった。
【0092】
同様に、乾燥機槽内残存粒子濃度を測定したところ、50ppmであった。
メタノールとイオン交換水の使用量は、ともに8kgであった。
目視により乾燥機槽内の除去性を評価したが、良好であった。
【0093】
実施例3
前記乾燥機槽内内壁に付着している粒子の除去を行なうに当たり、化合物としてメチルエチルケトンを用いた以外は全て実施例1と同様に行なった。
【0094】
同様に、乾燥機槽内残存粒子濃度を測定したところ、80ppmであった。
メチルエチルケトンとイオン交換水の使用量は、ともに8kgであった。
目視により乾燥機槽内の除去性を評価したが、良好であった。
【0095】
[比較例]
前記乾燥機槽内内壁に付着している粒子の除去を行なうに当たり、本発明に係る除去液の化合物の代わりにイオン交換水を用いてかけ洗いを行なったところ、乾燥機槽内内壁に付着していた粒子は、ごくわずかに槽底へと流れ落ちることが観察されただけであった。ゆえに、除去という目的からすれば、全くその目的を達するものではあり得なかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内壁に付着する粒子の除去方法であって、
前記粒子が有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子であり、
前記除去を炭素数3〜5のケトン、炭素数1〜7のアルコール、炭素数2〜4のエーテル、およびメチル基を1または2個有する芳香族炭化水素から選択された1種または2種以上の化合物を含有する除去液を用いて行なうことを特徴とする粒子の除去方法。
【請求項2】
前記除去液に含有される化合物としてアセトン、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、およびt−ブタノールの中から選ばれる1種または2種以上を用いる請求項1に記載の粒子の除去方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子の除去方法を使用して装置内壁に付着する粒子を除去する工程、および当該除去後に装置内壁を水で洗い流す工程、を有する粒子の除去方法。


【公開番号】特開2008−266422(P2008−266422A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109701(P2007−109701)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】