説明

粒子を含有する液体を体外処理するための再生可能なフィルター及びその使用

本発明は、膜濾過の特徴と、粒子により支持される吸着の特徴とが閉鎖されたケーシング中で統合された、濾過又は吸着の再生可能なシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を含有する液体を体外処理するための再生可能なフィルター及びその適用に関する。本発明の使用分野は医学、特に直接血液処理である。
【背景技術】
【0002】
疾患の治療を支援する影響の他に、今世紀以来、薬理作用物質が投与されている。治療的影響の他の方法は、血液から有害物質を体外血液処理により除去することである。この開発の出発点は古典的な瀉血であり、この瀉血は2000年以上の間、所定の疾患に対する標準的治療であった。新規材料及び新規技術、並びに血液型研究の知識は、50年以上前に血液透析を臨床的な適用に導入することを可能にし、血液交換療法が生じ、この療法は後に血漿交換療法に置き換えられた。僅かな特異性、高いコスト及び感染の危険性が、この血漿交換療法を制限している。
【0003】
血液濾過、血液透析濾過、二重濾過及び血漿吸着は、体外治療法(又は治療的アフェレーシス)の適用において画期的な事件であった。血漿吸着を用いて、初めて血液からアルブミンよりも大きな物質を除去することができた。流動する血液又は血漿中の高分子量の物質を結合するために、非特異的又は特異的因子が利用される。
【0004】
マトリックスと血液成分との間の静電気的又は疎水性の相互作用により、今日では日常的に、LDL、ベータ2−ミクログロブリン、エンドトキシン、免疫グロブリン及び循環性免疫複合体が血液から除去される。
【0005】
タンパク質AのIgGのFcレセプターへの特異的親和性は、免疫吸着剤の開発を可能にし、これは例えば重症の関節リュウマチの治療(Prosorba(登録商標))のためにIgGの濃度低下のために使用される。
【0006】
特異的な識別シーケンス(抗体、ペプチド)は、血液から一義的に定義された特異性を有する目的構造物の除去を可能にする。これの特異的な識別シーケンスは、特にLDL(Therasorb(登録商標), LDL Lipopak(登録商標))、Lp(a)(Lp(a) Lipopak(登録商標))、アセチルコリン−レセプター抗体(MedisorbaMG(登録商標))、アンチ−β1−アドレナリン性抗体(Corafin(登録商標))又は炎症媒介物質(欧州特許第1163004号明細書)の除去のために使用される。
【0007】
患者自身の解離された免疫複合体成分を患者特異的な免疫吸着剤のためのリガンドとして使用すること(欧州特許第19538641号明細書)は、常に適切でかつパーソナライズされた治療方法の特別な形態である。
【0008】
全ての連続的なアフェレーシス法の場合に、体外循環路で血液を末梢静脈から又は中枢静脈のカテーテルから血液ポンプを用いて、少なくとも60〜120ml/minの血液流で連続的に取り出し、病原体を除去した後に他の末梢静脈を介して再注入する。この断続的に利用可能な体外血液循環路の準備は、体外血液透析と同様の条件にある。
【0009】
たいていのアフェレーシス法の場合には、血漿と血液細胞との一次分離は本来の血漿処理の前に必要とされる。この一次分離は、血漿遠心分離並びに血漿濾過分離により行うことができる。両方の方法の場合に、利点も欠点も考慮しなければならない。主に、血漿濾過分離は取り扱いにおいて複雑ではなくかつ血小板を含まない血漿が得られる。この欠点は、血漿フィルター中での二次膜の形成であり、これは濾過選択性を時間的に制限する。それに対して、血漿遠心分離を用いた場合に、ほとんど無制限の量の血漿を絶え間なく得ることができる。二次分離に関して血漿の僅かな血小板混入が生じることがあるのが欠点である。
【0010】
濾液流は、一次分離の際に一般に血液流の約30%であり(血漿流約20〜30ml/min)、適応症に応じて、たいていは患者の血漿体積の1倍〜2倍が処理される。患者の血漿体積の1倍又は2倍を処理(再分配、合成又は異化なしでの一成分モデルと仮定)する場合に、処理ごとに理論的に病原体の最大減少率は出発値の37%又は14%に達することができる。この値は、もちろん実際にはたいていは実現されない。
【0011】
非選択的血漿アフェレーシス(血漿交換)
非選択的血漿交換(plasma exchange)の場合に、この血漿は体外循環路中で血漿膜分離器又は遠心分離器を用いて血液細胞から分離され、この全ての血漿は廃棄され、同体積の電解液+ヒトアルブミン又は新たな血漿に置き換えられる。この置換溶液は、分離された血液細胞と一緒にされ、患者に再注入される。非選択的血漿交換の利点は、体外循環路の簡単な構造、このアフェレーシスを行える全ての病原体に対するこの方法の一般的な適用性、正確に知られていない病原構造(例えばアセチルコリンレセプター抗体−ネガティブな重症性筋無力症)の場合の有効性及び比較的僅かな体外容積にある。欠点は、免疫グロブリン及び凝固因子の消耗、置換された外来タンパク質が非許容性である危険性及び高張性置換並びに置換溶液による病原体の伝達時の潜在的な感染の危険性である。
【0012】
最後に挙げた理由から、非選択的血漿交換は今日では、選択的方法が提供されない場合にだけ使用されている(例えば、TIT、カイロミクロン血症、抗体ネガティブな重症筋無力症)。
【0013】
膜血漿分離装置は、合成膜(例えばポリエチレン又はポリスルホン)を備えた中空繊維モジュールからなる。この表面積は0.2〜0.5mであり、孔径は0.2〜0.5μmである。体外循環路を監視するためにこのため特別に開発された装置が使用されるか;それとは別に血液潅流又は血液濾過のための装置を使用することも可能である。
【0014】
選択的血漿アフェレーシス
選択的血漿アフェレーシスの場合には、血漿フィルターを介して分離された血漿(一次分離)から、二次循環路で更に濾過プロセス(二次分離)によるか又は吸着(免疫学的又は物理化学的)によるか又は沈殿により病原体を除去し、精製された血漿を再び患者に供給する。この選択的血漿アフェレーシスは特別な装置を必要とし、この装置は体外血液循環路並びに二次循環路を監視する。
【0015】
二重濾過(カスケード濾過、膜差分濾過)
この方法は、血漿の分離の後に二次循環路中で小さな孔径(カットオフ25〜40nm)の第2のフィルターを使用する。目的は、アルブミンをできるだけ定量的に回収し、それに対して高分子量の病原性タンパク質を二次フィルター中に留め、これをいわゆる「デッドエンド」モジュールの形で運転する(中空繊維の末端の出口の閉鎖)。この方法は、分子量サイズ(分子量及び空間的分子コンフォメーション)により分離されるため、高い分子量の病原体、例えばIgM、LDL、フィブリノーゲン又はα−2−マクログロブリンを分離するためだけに適している。従って、適応症は、例えば過粘稠度症候群、ワイデンシュトロームマクログロブリン血症(M. Waidenstroem)、クリオグロブリン血症及び高コレステロール血症である。微小循環障害の治療のための二重濾過血漿アフェレーシスの使用は、レオフェレーシス(Rheopherese)と言われる。
【0016】
非選択的血漿交換と比べたこの方法の利点は、置換溶液が必要なくかつ止血作用を損なうことなしに特に血流学的に活性のタンパク質の選択的除去が可能であることにある。欠点は、極めて高い出発値で中空繊維の場合による閉鎖による二次フィルターの限定的な容量並びに方法に応じて異なる免疫グロブリンの場合による損失である。
【0017】
免疫吸着
免疫吸着とは、臨床的に免疫学的に活性の分子を、例えば固定化されたアミノ酸、ペプチド又はタンパク質に結合させることであると解釈される。この吸着に基づくこの方法は、所定の種類のタンパク質又は病原性抗体を特異的に除去する。方法技術的に、反対に、抗タンパク質B抗体へのLDL結合はLDL免疫吸着とも言われる。
【0018】
リポタンパク質の除去
このLiposorber(登録商標)システム(Kaneka社、Osaka;Hospal社、Planegg)は、血漿からデキストラン硫酸/セルロース(DSC)へのLDL及びLp(a)の吸着に基づく。このメカニズムは、デキストラン硫酸の負電荷の硫酸基と上記の2つのリポタンパク質の正電荷のApo Bとの静電気的相互作用に基づく。HDL、免疫グロブリン及びアルブミンは僅かに吸着する程度である。
【0019】
HELP(登録商標)アフェレーシス(ヘパリン誘導化された体外LDL調製物、使い捨て製品、Braun社、Melsungen)の場合に、LDL、Lp(a)及びフィブリノーゲンは、5.12の酸性pHで、ヘパリンにより体外循環路で血漿から沈殿され、濾別される。
【0020】
免疫グロブリンの除去
Immunosorba(登録商標)システム(Fresenius HemoCare社、St. Wendel)は、担体としてセファロースを用いてリガンドとしてブドウ球菌−タンパク質Aが使用される。
【0021】
Prosorba(登録商標)システム(Fresenius HemoCare社、St. Wendel)は、担体としてシリカ−マトリックスを用いてリガンドとしてブドウ球菌−タンパク質Aが使用される。
【0022】
Globaffin(登録商標)(Fresenius HemoCare社、St. Wendel)の場合には、合成ペプチド−GAM(登録商標)がリガンドとしてセファロースCL4Bに固定される。この結合特性は、タンパク質Aの結合特性に一致する。
【0023】
Coraffin(登録商標)(Fresenius HemoCare社、St. Wendel)は、心筋のβ1アドレナリン性レセプターに対する特異的な自己抗体を除去する。従ってこれは適応症に特異的な方法である。
【0024】
lg-Therasorb(登録商標)法(Miltenyi Biotec社、Teterow)の場合には、ポリクローナル抗ヒト−免疫グロブリンのヒツジ抗体がセファロースCL4Bに固定される。
【0025】
このシステムのImmusorba(登録商標)(ASAHI/Diamed社、Koeln)は、ポリビニルエタノール−ゲルマトリックスに結合されているトリプトファン(TR-350L)又はフェニルアラニン−リガンド(PH-350L)をベースとする繰り返し使用できない吸着剤を用いて作業される。
【0026】
クライオフィルトレーション
クライオフィルトレーション(Asahi Medical社、Tokyo;Diamed社、Koeln)の場合には、膜差分濾過において、分離された血漿をクリオグロブリンの沈殿のために4℃に冷却し、クライオフィルターを用いた沈殿物の分離の後に、再び体温に暖めた後に再注入する。
【0027】
全血アフェレーシス
全血アフェレーシスの場合には、顆粒状の形態で吸着剤カートリッジ中に存在する吸着性の物質(活性炭、交換体樹脂)を用いて、有害物質を体外循環路で直接血液から程度に差はあるが選択的に除去する。これは、集中医学において一連の中毒の場合に使用される活性炭血液潅流に似ている。吸着剤カートリッジのサイズは吸着剤の十分な交換面積及び接触時間を保証しなければならない。
【0028】
全血からのLDL及びLp(a)の直接吸着は、DALI(登録商標)-システム(Fresenius HemoCare社、St. Wendelのリポタンパク質の直接吸着)を可能にする。この一回使用可能な吸着カートリッジは、ポリアクリルアミド上に固定されかつ静電気的にアテローム生成するリポタンパク質を結合する負電荷のポリアクリラートリガンドからなる。
【0029】
方法、濾過及び吸着は多様に組み合わせることができる。Matson, et al.(米国特許第6,287,516号明細書)は、後方に配置された吸着剤を備えた血液フィルターからなる血液濾過システムを記載している。フィルターからの限外濾過液(除外分子量#50000ダルトン)を、チューブシステムを介して吸着剤ユニットに圧送し、そこで敗血症メディエータが結合される。こうして処理された限外濾過液を、他のポンプ−チューブ−バルブ−システムを通して一次濾過された血液と統合し、患者に再注入することができる。
【0030】
この特異的吸着の利点は、「治癒する」血漿成分の非特異的吸着により基準調節に不利な影響を及ぼすことなしに、(病原性)目的物質だけを除去することは明確である。全ての特異的吸着法の欠点は、使用されるリガンド、たいていは特異的抗体が製品のコストを引き上げていることである。これは、特に数日又は数週間治療しなければならない病院での全体の処理コストを高める。欧州特許(EP)第0139949号明細書には、血液浄化のための装置が記載されていて、この装置はケーシング中に血漿濾過する中空糸並びに血漿室中に吸着マトリックスを有する。極めて類似の装置をShettigar(国際公開93/02777号パンフレット)は記載している。両方とも、吸着性マトリックスは再生できないことが共通している。再生の方法は、米国特許(US−B1)第6497675号明細書に明確に提案されている。ここでも、血漿フィルターに組み込まれた吸着剤ユニットは再生できるが、ケーシングから取り出さなければならないことは欠点である。この操作は前記方法を複雑化し、取り違えの危険性及び疾病の感染の危険性を高めてしまう。再生された吸着剤ユニットは、更なる作業工程で新規の血漿フィルターケーシング内へ螺挿される。
【0031】
本発明による解決策
1つのケーシング中での膜の利点(粒子を排出しない、孔径を自由に選択可能、低コスト)と粒子の利点(物質の種類、サイズ、表面積、活性化及びリガンドのカップリングに関して多様に変更可能であること)との組み合わせが望ましく、前記ケーシングは高価な官能化された粒子の再生を可能にし、同時に血漿フィルター膜の内側から、通常の膜の利用可能性を制限するバイオフィルムを除去する。
【0032】
本発明の目的は、ポンプ及び付加的なチューブ結合を省略し、かつ膜と粒子との利点を統合する単純なシステム構成を特徴とする全血処理ユニットである。本発明による全血処理ユニットは、より高い血液流(160ml/minまで)を可能にし、処理時間を短縮し、特に再生可能であるのが好ましい。
【0033】
前記目標は、生体適合性の材料からなる閉鎖されたケーシング中に通常の孔径0.2〜0.5μmを有する通常の血漿フィルター(膜−中空糸)が導入されている(図1及び図1a参照)ことにより達成される。膜材料として、セルロース誘導体又は合成材料、例えばポリスルホン又はポリアミドを使用することができる。このケーシングは、同時に官能化された粒子のための収容容器として機能する。前記粒子のための材料として、例えばポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリラート、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリカーボネート及びセルロース誘導体を使用することができる。流動する血液に導入し、血漿が圧力差及び孔径に応じて膜を通過する。膜の外側で前記血漿は、膜の孔径を超える直径を有する非特異的又は特異的に官能化されたマイクロ粒子からなる吸着剤ゲル中を流通する。所定の生物活性の物質で特異的に精製された血漿は、ケーシング中で膜管内の血漿フィルター血流と統合され、精製された全血として患者に再注入される。フィルターのシステムは、微小粒子が血流中に達することを抑制する。
【0034】
フィルターシステム中に三方弁が配置され、粒子室中への液体の圧送及び入口開口部からの排出が可能であることが本発明の基本である(図2及び図2a参照)。この三方弁の利用により、吸着能力の消耗後にケーシングの出口での血液/血漿流は停止される。この再生は粒子容器を介して通常の緩衝液を用いて行われる。この再生緩衝液は、血漿フィルターの孔を通過してフィルター膜の膜管内側中へ達し、その表面からバイオフィルムを除去して、それぞれの洗浄プログラムの経過後に前記フィルターは次の処理サイクルに提供される。本発明の場合には、この処理システムは2以上のフィルターからなるため、1つの吸着ユニットの再生の間に他の吸着剤ユニットを用いた処理が続けられ、このように連続的な血液処理を行うことができる。三方弁の本発明による配置は、吸着剤ユニットをケーシングから取り出す必要なしに、官能化された粒子の再生を初めて可能にする。
【0035】
こうしてこの再生工程は急速にかつ技術的に僅かなコストで実施することができる。これは、特に異なる患者の吸着ユニットを取り違えることが排除されるという点では極めて重要である。この利点は、特に病院内でのルーチンワークの際に大きな意義がある。更に、本発明による装置を使用する場合に、交換の間の吸着ユニット内への不純物の侵入の危険が生じない。
【0036】
全体として、本発明による装置を使用することにより、数日間にわたる体外処理を必要とする使い捨て製品と比較して、治療コストは明らかに低くすることができる。
【0037】
本発明を、次に、実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
材料及び方法
− ウシ由来のシトラート血液3Lに組み換えヒトIL6 1.5μgを添加し、図1に示した装置を用いて閉じた循環路で圧送した(パラメータは下記参照)。
− 全血から抗原を除去するために実験的に利用される装置は、中空糸血漿セパレーター(A)を有し、この下側のケーシング部は嵌め込まれたシリンダー(B)により置き換えられ、前記シリンダー中で吸着剤ゲルが前記中空糸を取り囲む。膜間圧により放出された血漿は前記吸着剤を通過しなければならず、この場合に目標物質が除去される。
− この血漿分離モジュールは0.4mの中空糸フィルター(A)からなる。
− この吸着剤容器はセファロース60mlを有し、前記セファロースに、セファロース1mlあたりIgY(IL6で接種されたニワトリの卵からなる卵黄抗体)5mgが共有結合している。
− 前記吸着剤の結合能力はIL6 72μgであった。
− 血液の流速は約120ml/minに調節された。
− この場合、20〜25ml/minの血漿流を実現することができた。
− 全体で1.5Lの血漿処理量の後に吸着を完了し、血液中のIL6濃度を測定した(ヒト−IL6−ELISA、Milenia Biotec)。
【0039】
結果:
− 前記モジュールは問題なく運転することができた。
− 処理された血漿量は1.5Lであった。
− 溶血現象は観察されなかった。
− 500pg/mlのIL6開始濃度は、60分間の吸着時間の間に200pg/mlに低下した。これは、図1に示した装置(図1aも参照)に相応する吸着剤に全血漿容量を1回通過させた場合の60%の濃度低下に相当する。
【実施例2】
【0040】
セファロース4FFの活性化及び特異的抗IL6抗体の結合
材料及び方法:
溶液A:シアン化臭素(CNBr)10gをアセトン100mlに溶かす。
溶液B:トリエチルアミン(TEA)15.2gをアセトン100mlに溶かす。
溶液C:アセトン300ml及びHO 700mlを混合する。
溶液D:アセトン600ml及びHO 400mlを混合する。
緩衝液A:0.2Mのカーボネート緩衝液中でNaCl 0.5M、pH8.5
緩衝液B:0.1Mアセテート緩衝液中でNaCl 0.5M、pH4.5
緩衝液C:PBS、pH7.4
セファロース4FF(Amersham/GE)
卵黄抗体(IgY)50mg、ヒトIL−6に対して特異的、PBS中に溶解、pH8.5
【0041】
実施:
− シアノトランスファー法(Kohn J及びWilchek M著、The use ofcyanogen bromide and othernovel cyanylating agents for the activation of polysaccharide resins. AppI Biochem Biotechnol. 1984;9:285-305)によるセファロース4FFの活性化。20%エタノール中の前記セファロース15mlを、オリジナル容器に取り、フリット上で水で洗浄する(10×20ml)。
− その後で3:7アセトンで5回、更にその後で6:4アセトンで5回洗浄する。
− この吸引濾過したセファロースを適当な容器に移し、8mlのアセトン6:4中に懸濁させる。
− この懸濁液を−20℃で撹拌する(10min)。
− 次に、CNBr溶液2mlを添加し、均質化し、TEA溶液2mlに滴加する。
− このバッチをフリット上で吸引濾過し、氷水で洗浄する。
− 引き続き、前記セファロース上のシアン酸エステル基の濃度を測定することにより、(Kohn J, Wilchek M著. A colorimetric method for monitoring activation of Sepharose by cyanogen bromide. Biochem Biophys Res Commun. 1978;84(1):7-14)による活性化測定を行う。
− この乾燥され吸引された活性化されたセファロースゲルをIgY溶液中に撹拌混入し、室温で2h振盪させた。
− 引き続き、このバッチをフリット上で吸引濾過し、緩衝液A(HOで1:1に希釈)で2回洗浄した。この溶液を捕集し、280nmでのUV吸光の測定によりタンパク質含有量を決定した。
− 前記ゲルを、次いで緩衝液でA、C、Bの順序で複数回洗浄した。セファロースのIgYの負荷は、その後、変性されたマイクロBCA法で測定した。この検査は、洗浄液のUVタンパク質測定によって行った。
【0042】
結果:
− セファロースの活性化 湿ったセファロース9.8μM/g
− タンパク質負荷: 湿ったセファロース1g当たりIgY 9.5mg
【実施例3】
【0043】
全血処理ユニットの製造
1. 中空繊維からなる市販の血漿濾過膜(0.3m)及び抗IL−6で官能化された吸着剤粒子(セファロース4FF)20mlを収納するためのケーシングの製造。
2. 膜の束を使用し、両側の開口を前記ケーシングと気密に結合するために封止する。突出する中空繊維端部を切断する。
3. 両方の端部を、接続管を備えたキャップで密閉する。
4. 上側の接続管は、三方弁(V1)を有し、この三方弁は血液供給及び再生物排出のために用いられる。
5. 下側の側方の管は、三方弁(V2)を備え、前記三方弁は処理された血漿の排出又は再生溶液及び洗浄溶液の供給のために用いられる。
6. 下側の接続管は三方弁(V3)を有し、前記三方弁は処理された血漿を血球の血液成分と合流して処理された全血にするために用いられるか、又は前記三方弁の閉鎖により再生液が全血中へ侵入することを抑制する。
7. 官能化されたセファロースをカラム体の側方の充填管を介して充填する。第2の側方の接続管を介して排気を行う。
【実施例4】
【0044】
血液からIL6をインビトロでの濃度低下
材料及び方法:
− CNBr活性化後に卵黄抗体(IgY)と結合したセファロース4FF(Amersham/GE)、前記抗体は、ヒトIL6を接種したニワトリの卵黄から得られた。
− 結合密度:充填されたセファロース1ml当たりIgY 5mg
− 組み換えヒトIL6(R&D Systems GmbH)
− ヘパリン化された全血
− IL6−ELISA−キット(Milenia biotec)
【0045】
実施:
− 3種の異なるバッチ(Ansaetzen)で、健康な人の全血2mlをそれぞれ146ngの組み換えIL6でスパイク付けした。
− 前記血液試料に、それぞれIgYセファロース0.1ml、5mg/ml、ヒトIL6に対して特異的に添加した。
− この試料を、室温で振盪器中で振盪させた。
− 前記血液のIL6含有量を、ELISAによって時間に依存して測定した。
【0046】
結果:
IL6を用いたバッチ(Batch)試験(図3)の場合に、抗IL6−IgY(5mg/ml)で負荷されたセファロースが全血からIL6と結合することができたことを再現可能に検出することができた。この使用したIL6量は、例えば重い症状及び敗血症性ショックの重症の患者の血液中で生じる量とほぼ一致している。
【0047】
図面の簡単な説明:
図1:吸着
ポンプ(P1)により輸送された、粒子を含有する液体(F)は、位置┫にある三方弁(V1)を介して、装置AB内へ入り込む。中空繊維(a)を通過する際に生じる膜間差圧の結果、膜の細孔によって、粒子不含の液体成分が膜の外側にある空間内へ流れ出る。この液体(T)は、溶解した物質の特異的吸着が可能である粒子を含有する、装置ABの部分Bを通過する(詳細は図1aを参照)。位置┫にある三方弁(V2)及び位置┣にある三方弁(V3)を介して、精製された液体(T)と粒子濃縮物(K)とが合一される。このプロセスの結果として、当初の液体(F)から溶解した不所望な成分が除去される。この処理は、不連続的及び連続的に行うことができる。
【0048】
図1a:吸着−詳細
膜(a)の細孔は、そのサイズに基づき液体成分(F)だけを通過させる。この液体成分は、吸着剤粒子(B)により不所望な溶解性分が除去され、次いで吸着剤から離れる。前記プロセスに相応する、三方弁(V2)及び(V3)の切り替えによって、排出部で生じる粒子濃縮物(K)との合一を達成することができる。
【0049】
図2: 再生
このフィルターの再生は、適当な洗浄溶液をフィルターの運転方向とは反対に供給することにより行われる。
【0050】
ポンプ(P3)により促進された洗浄溶液(Reg)は、三方弁(V2)を介して吸着剤室B内へ到達する。そこで吸着剤粒子の再活性化が行われる。その後で、液体(Reg)が前記中空繊維(a)を分離方向とは反対方向に洗浄し、それにより当初の効果が回復する(詳細は図2a参照)。その後で、不純物を含む媒体(W)は位置┳にある三方弁(V1)を介して吸着剤から離れ、再生すべき液体と接触することはない。容器中での液体(F)の汚染は、前記弁(V3)の位置┳により抑制される。
【0051】
図2a:再生−詳細
この吸着剤モジュールは、繰り返し使用するために再生しなければならない。このために、適当な液体(Reg)は弁(V2)を介して通常の運転方向とは反対に吸着剤中に導入される。第1期において、吸着剤粒子の脱着による再活性化が行われる。その後で、膜(a)は反対方向に貫流され、その際、細孔中又は細孔上の堆積物が除去される。前記吸着剤モジュールの濾過効率及び吸着効率は回復される。このプロセスに応じた三方弁(V1〜3)の切り替えが、(Reg)もしくは(W)による液体容器の汚染を抑制する。
【0052】
図3: バッチ試験におけるIL6の吸着
n=3、(ゲル体積:0.1ml、結合密度:ゲル1ml当たりIgY 5mg、媒体:ヘパリン化されたヒト全血2ml、抗原スパイク:IL6 146ng、テスト:IL6−ELISA−キット。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】全血処理ユニットを示す。
【図1a】孔径0.2〜0.5μmを有する血漿フィルター(膜−中空糸)を示す。
【図2】フィルターシステム中に三方弁が配置され、粒子室中への液体の圧送及び入口開口部からの排出が可能である、全血処理ユニットを示す。
【図2a】三方弁の利用により、吸着能力の消耗後にケーシングの出口での血液/血漿流は停止される、血漿フィルターを示す。
【図3】IL6を用いたバッチ(Batch)試験の結果を示す。
【符号の説明】
【0054】
A 中空糸血漿セパレーター
B シリンダー
(a) 中空繊維(膜)
(B) 吸着剤粒子
(F) 当初の液体
(K) 排出部で生じる粒子濃縮物
(P1) ポンプ
(P2) ポンプ
(P3) ポンプ
(Reg) 液体
(T) 粒子を含有する液体
(V1) 三方弁
(V2) 三方弁
(V3) 三方弁
(W) 液体
(Z) 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子含有の液体を膜分離及び吸着により処理するためのフィルターシステムであって、
a. ケーシングを有し、前記ケーシング中に
b. 前記液体の入口開口部及び出口開口部とが反応容器の外側にあり、かつ前記中空糸膜と前記ケーシングの内壁との間の室がマイクロ粒子の充填のために定められているように中空糸が配置されていて、前記マイクロ粒子は中空糸膜の細孔直径よりも大きく、その際、前記出口開口部の前方には
c. 前記血漿室からマイクロ粒子を分離するスクリーンが配置されていて、かつ
d. 液体の粒子室への圧入及び入口開口部から排出が可能となるように三方弁が配置されている、粒子含有の液体を膜分離及び吸着により処理するためのフィルターシステム。
【請求項2】
吸着により処理されるべき粒子含有の液体を、前記粒子の直径よりも小さい細孔直径を有するフィルターを通して、粒子不含の膜管外の相と、粒子含有の膜管内の相とに分離する、請求項1記載のフィルターシステム。
【請求項3】
前記相分離を適当な中空糸膜により行う、請求項1又は2記載のフィルターシステム。
【請求項4】
中空糸膜は1つ又は複数のコンパートメントからなることができるケーシング中に埋め込まれている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項5】
ケーシングは同時に吸着剤材料の収納のために用いられる、請求項1〜4のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項6】
吸着剤材料は粒子から成り、その際、前記粒子の直径は膜の細孔直径よりも大きい、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
吸着剤粒子は非特異的又は特異的に官能化されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項8】
特異的官能価のために、目標物質と特異的に結合するタンパク質を使用する、請求項1〜7のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項9】
膜管外の相を吸着剤と直接接触させ、目標物質を非特異的又は特異的に吸着材料と結合させる、請求項1〜8のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項10】
目標物質の濃度が低下した膜管外の相を三方弁を介して膜管内の相と統合する、請求項1〜9のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項11】
三方弁を介して、液体の膜管外の吸着剤室内への圧送及びフィルター入口開口部からの排出を可能にする、請求項1〜10のいずれか1つに記載のフィルターシステム。
【請求項12】
粒子含有の(膜管内)の相が閉鎖系中で本発明により処理された液状の相の再供給後に、再び使用される、液状(膜管外)の相からの全ての種類の物質分離のための、請求項1〜11のいずれか1つに記載のフィルターシステムの使用。
【請求項13】
吸着された物質を適当な液体により吸着材料から分離し、再処理もしくは廃棄する全ての種類の物質分離のための、請求項1〜12のいずれか1つに記載のフィルターシステムの使用。
【請求項14】
再生後の吸着材料を繰り返し使用するために提供する物質分離のための、請求項1〜13のいずれか1つに記載のフィルターシステムの使用。
【請求項15】
血液を対外循環路で処理するための、請求項10〜14のいずれか1つに記載のフィルターシステムの使用。
【請求項16】
量的又は質的に疾患状態を引き起こすか又は維持する物質を低濃度化するための、請求項10〜15のいずれか1つに記載のフィルターシステムの使用。
【請求項17】
先天性及び/又は後天性の免疫システムの障害により生じるか又は維持される疾患の治療のための、請求項10〜16のいずれか1つに記載のフィルターシステムの使用。


【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−529386(P2009−529386A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558632(P2008−558632)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000476
【国際公開番号】WO2007/104298
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508277265)アデクスター・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】