粒子を集束するためのシステムおよび方法
粒子を集束させる方法が提供される。第1の懸濁媒質中の当該粒子の懸濁液を準備する工程と、流れる懸濁液が100μmより小さい少なくとも1つの断面寸法を有する特定の体積を占めるように、チャネルに沿ってこの懸濁液を流す工程とを含む。この懸濁媒質は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が上記特定の体積で囲まれた集束領域に向かって当該粒子の少なくともいくらかを導くような粘弾性特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2008年6月7日出願の米国仮特許出願60/924,998号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、より具体的には蛍光標識細胞分取(FACS)(これに限られない)に関する。
【背景技術】
【0003】
フローサイトメトリーは、単一の細胞の物理的および/または化学的特徴の同時多様性解析のための手法である。フローサイトメトリーによって細胞(または他の微視的粒子)を数えること、調べること、および選別することが可能になり、単一の粒子の物理的および/または化学的特徴の多様性解析が提供される。分析される細胞は検査地点に向かって流れ、そしてこの流動は、その粒子が一列縦隊で検査地点に到達し、そうして各粒子が個々に分析されるように設計される。
【0004】
1つの特定のフローサイトメトリー手法は、蛍光標識細胞分取(FACS)と呼ばれる。FACSは、生物細胞または他の粒子の不均一な混合物を、各細胞の特定の光散乱および蛍光特性に基づいて、一度に1細胞ずつ2以上の容器に選別することをもたらす。それは有用な科学機器である。なぜなら、それは個々の細胞からの蛍光シグナルの迅速な、客観的かつ定量的な記録、および特に興味を持つ細胞の物理的分離をもたらすからである。
【0005】
この技術は、分子生物学、病理学、免疫学、植物生物学および海洋生物学を含めた多くの分野で応用されている。
【0006】
例えば、細胞生物学および免疫学の分野では、この技術は、特異的標的細胞に結合し血球計算器中の抗原の定量分析を可能にする蛍光タグ化抗体とともに使用される。この方法は、タンパク質発現および局在化、細胞表面の抗原の定量(様々な臨床病理学、例えば、白血病内の血液細胞上のCDマーカー)、細胞内抗原および核抗原(制御性T細胞内のFoxP3などの転写因子の活性化)、細胞の生存(アネキシン/PI染色によってアポトーシスを起こした細胞の定量)などの研究のために広く使用される。
【0007】
フローサイトメトリーおよびFACSはまた、医学、特に移植、血液学、腫瘍免疫学および化学療法、遺伝学およびIVF(体外受精)における精子選別においても幅広く応用されている。
【0008】
一般に、フローサイトメーター内では、粒子が流体の中で一つずつ整列している、その流体のストリームに光線が向けられる。多くの検出器は、このストリームがこの光線を通過する地点に向けられる。この光線を通過する各々の懸濁した粒子は何らかの方法でこの光と相互作用し(例えば、その光を散乱させる)、その粒子からの光が検出器によって感知される。検出された光は分析され、各々の個々の粒子の物理的および化学的構造についての様々な種類の情報がもたらされる。
【0009】
典型的には、フローサイトメーターは5つの主要構成要素を有する:
フローセル(ここで、検知のためその細胞が一列縦隊でその光線を通過するように、液体のストリームが細胞を運搬および整列させる);
光源;
検出器;
増幅システム;および
増幅された検出されたシグナルの分析のためのコンピュータ。
【0010】
フローセル内で粒子を整列させることは、その粒子に外力を加えることによって成し遂げられる。市販のフローサイトメーターで使用される外力を加える1つの方法は、当該技術分野で「シース流(sheath flow)」と呼ばれている。他の方法としては、粒子に光および超音波を当てることが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、より具体的には蛍光標識細胞分取(FACS)(これに限られない)に関する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、粒子が一列縦隊で、例えば、フローサイトメーターの光線を通過するように、それら粒子を整列させることに関する。
【0013】
従って、本発明のいくつかの実施形態の一態様は、粒子を集束させる方法であって、
第1の懸濁媒質中の当該粒子の懸濁液を準備する工程と、
100μmより小さい少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルに沿ってこの懸濁液を流す工程と
を含み、
この第1の懸濁媒質は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が当該チャネル内部の集束領域での粒子の濃度を増加させるような粘弾性特性を有する、方法に関する。
【0014】
例示的な実施形態では、この集束領域は、当該チャネルの半分の高さにある。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記集束領域は、チャネルの長さに垂直な断面を有し、この断面は、同じ場所でのチャネルの断面と同形状を有するがそれよりも小さい。
【0016】
任意に、この集束領域はそのチャネルと同軸である。
【0017】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、上記懸濁液は種々のサイズの粒子を含み、上記粘弾性特性は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が、より大きい粒子を優先的にその集束領域に向かって誘導するような粘弾性特性である。
【0018】
任意に、懸濁液を準備する工程は、
第2の懸濁媒質中の当該粒子の懸濁液を得る工程と、
当該第2の懸濁媒質を上記第1の懸濁媒質と交換する工程と
を含む。
【0019】
任意に、懸濁液を準備する工程は、
種々の粘弾性特性を有する複数の懸濁媒質を準備する工程と、
当該媒質の粘弾性特性に応答して上記複数の懸濁媒質から上記第1の懸濁媒質を選択する工程と、
当該粒子をこの選択された懸濁媒質に懸濁させる工程と
を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、選択する工程は、当該粒子のサイズに応答して選択する工程を含む。
【0021】
例示的な実施形態では、懸濁液を準備する工程は、
当該粒子を試用懸濁媒質に懸濁させる工程と、
流れる懸濁液が100μmより小さい少なくとも1つの寸法を有するように、マイクロチャネルに沿ってこの懸濁液を流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、上記試用懸濁媒質の粘弾性特性を変更する工程と
を含む。
【0022】
任意に、上記方法は、
特定の流量で懸濁液を流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、前記流量を増大させる工程と
を含む。
【0023】
任意に、前記試用懸濁媒質の粘弾性特性を増大させる工程は、当該懸濁液に高分子量ポリマーを加える工程を含む。
【0024】
任意に、上記チャネル深さは100μm未満である。
【0025】
任意に、上記チャネルの幅は100μm未満である。
【0026】
任意に、上記チャネルは、各々100μmより小さい深さ、および幅を有する。
【0027】
いくつかの例示的な実施形態では、当該粒子は細胞である。
【0028】
いくつかの例示的な実施形態では、第2の懸濁媒質は血清を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の別の態様によれば、流れる粒子を集束するためのシステムであって、
壁およびその壁間の底部を有するチャネルと、
試料流体を含む流体源と、
上記流体源から注入口を経由して当該チャネルへと当該試料流体を誘導するように構成された流体誘導システムと
を含み、上記試料流体は液体に懸濁された粒子を含み、上記液体は、集束領域で当該粒子を集束させるために外部力場を加える必要性を緩和する粘弾性特性を有するシステム、もまた提供される。
【0030】
例示的な実施形態では、この集束領域は、チャネルの半分の高さにある。
【0031】
いくつかの例示的な実施形態によれば、このシステムは、
上記集束領域と感知伝達している尋問光線(interrogating ligh beam)を、上記注入口から下流の検査ゾーンに提供する光源と、
その尋問光線を使用してその検査ゾーンで当該粒子を検出するように構成された検出器と
を含む。
【0032】
任意に、当該粒子は細胞を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記チャネルは5〜100μmの少なくとも1つの断面寸法を有する。
【0034】
任意に、この少なくとも1つの断面寸法は、上記チャネルの底部に垂直な断面の寸法を含む。
【0035】
任意に、上記チャネルは底部および壁を有し、その壁間の距離は100μmよりも大きい。
【0036】
任意に、上記システムは各々異なる粘弾性特性を有する複数の流体と、異なるサイズの粒子を集束させるために各流体を使用するようにする使用説明とを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
サイズ範囲の表示を保有するパッケージ中に各々が別々に包装された複数の流体と、
この表示されたサイズ範囲の粒子を集束させるためにこの複数の流体の各々を使用するための使用説明と
を含むものが提供される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、液体の弾性を評価する方法であって、
単分散性の粒度分布を有する粒子を媒質に加えて懸濁液を得る工程と、
100μm以下の少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルの中でこの懸濁液を流す工程と、
その粒子が所定の距離に沿ってこのチャネルを流れた後にその粒子の空間分布を得る工程と、
この空間分布を分析してこの媒質の弾性を得る工程と
を含む方法に関する。
【0039】
任意に、分析する工程は、上記媒質の粘度に応答して分析する工程を含み、当該方法はこの媒質の粘度を得る工程を含む。
【0040】
任意に、媒質の粘度を得る工程は、媒質の粘度を測定する工程を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、得られた懸濁液中の粒子の体積分率は0.001%〜1%である。
【0042】
任意に、得られた懸濁液の体積分率は0.1%である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、粒子と結合剤との間の相互作用を評価する方法であって、
チャネルの底部の上の層で当該粒子を集束させる工程と、
この集束された粒子を、この底部に固定された結合剤の上に流す工程と
を含む方法もまた提供される。
【0044】
任意に、この粒子の少なくとも90%の中心が上記チャネルの半分の高さ未満の厚さを有する層にあるように、当該粒子は集束される。
【0045】
いくつかの実施形態では、当該粒子を集束させる工程は、本発明の実施形態に係る方法で集束させる工程を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、粒子と結合剤との間の相互作用を評価する工程は、上記の方法を複数回、各回で異なる深さのチャネルを用いて実施する。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、粒子と結合剤との相互作用を評価するための装置であって、
各々本発明の実施形態に係る複数のシステムを含み、かつこのシステムのうちの少なくとも1つが、当該結合剤が上記チャネルの底部の少なくとも一部分に固定されているチャネルを有する装置
に関する。
【0048】
任意に、上記複数のシステムは共通の流体源を有する。
【0049】
任意に、上記複数のシステムは共通の流体誘導システムを有する。
【0050】
任意に、上記装置は、他のシステムから独立してそのシステムの各々の中のチャネルへの流体の流量を制御するためのコントローラを有する。
【0051】
任意に、すべてのチャネルが同じ深さを有しているわけではない。
【0052】
任意に、このチャネルの各々は、他のすべてのものとは異なる深さを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、当該装置は、すべてのチャネルで同じ集束の品質で粒子を集束させるように構成されている。
【0054】
別段の定義がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施形態を実施または試験する際に、本願明細書に記載されるものと類似または等価な方法および材料を使用することができるが、例示的な方法および/または材料が以下に記載される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本願明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は例示のためのみのものであり、必ずしも限定することを意図してはいない。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態は、例としてのみのものであるが、添付の図面を参照して本願明細書に記載される。本願明細書で図面を詳細に具体的に参照するにあたり、特に示されるものは例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な考察の目的のためのものであることを強調しておく。この点で、図面をもとに解釈される説明によって、どのように本発明の実施形態を実施してよいかが当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の例示的な実施形態に係る粒子を集束させる方法でとられる操作のフローチャートである。
【図2A】本発明の例示的な実施形態に係る、流れる粒子を集束するためのシステムの略図である。
【図2B】本発明の実施形態に係るチャネルの略図である。
【図3】本発明の実施形態に係るキットの説明図である。
【図4A】本発明の実施形態に係るFACS機器の略図である。
【図4B】本発明の例示的な実施形態に係る媒質のレオロジー特性を測定する方法で採られる操作のフローチャートである。
【図4C】本発明の例示的な実施形態に係る粒子−結合剤相互作用を研究するための装置の略図である。
【図5A】グリセロール溶液中の直径8μmのポリスチレンミクロスフェアのPDF(粒子分布関数) 対 垂直方向の中心を外れた距離の実験値を示すグラフである。白抜き記号は実験結果である。
【図5B】ポリビニルピロリドン(PVP)溶液を用いた以外は図5Aに記載した実験と類似の実験で得られた実験結果を示すグラフである。白抜き記号は実験結果である。実線は実験結果へのガウシアン・フィッティング(Gaussian fit)である。
【図6】log−logプロットで、ポリマー溶液PVP(上向き三角)およびPAA(下向き三角)の剛性率、G’対 発振周波数ωを示すグラフである。挿入図は、ポリマー溶液のせん断粘度、η(正方形)、および複素粘度、|η*|(△、▽)、(上記のとおりの三角形)対それぞれ
【数1】
およびωを示す。
【図7】実験結果(白抜き記号)と理論的予測値(実線の曲線)との間の比較を示すグラフである:8μm粒子、PVP溶液(△);8μm粒子、PAA溶液( );5μm粒子、PAA溶液(◇)。PAA溶液に対応する理論曲線は調整可能なパラメータを有しない。
【図8A】PAA溶液に懸濁したPSミクロスフェアのPDF 対 垂直方向の中心を外れた位置を示すグラフである。この図は直径8μmの粒子についての結果である。白抜き記号は実験結果である。実線は、見やすさのためのものである。
【図8B】PAA溶液に懸濁したPSミクロスフェアのPDF 対 垂直方向の中心を外れた位置を示すグラフである。直径5μmの粒子についての結果を示す。白抜き記号は実験結果である。実線は、見やすさのためのものである。
【図9A】本発明の実施形態に係る所定のフローシステムにおいて所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する方法900で採られるべき操作のフローチャートである。
【図9B】本発明の実施形態に係る所定のフローシステムにおいて所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する簡素化された方法900’で採られるべき操作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(概説)
本発明は、そのいくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、より具体的には蛍光標識細胞分取(FACS)(これに限られない)に関する。
【0058】
いくつかの実施形態は、微小流体のフローを使用する粒子集束のための方法または装置を提供する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、微小流体とは一般に考えられないチャネルを用いて実施されてもよい。以下の式がその値を維持する限り、任意の所定の寸法のチャネルを用いて注入口から距離x/dのところで同じ集束の品質を得ることができる。
【数2】
式中、aは粒子の半径であり、dは当該チャネルの最小寸法の半分であり、
【数3】
は流量であり、βおよびnは懸濁媒質の粘弾性特性を特徴付ける。上記のものが与えられると、スケールアップの可能性についてのさらなる詳細は、「理論的誘導」の見出しのところで提示される理論的分析から明らかである。
【0060】
例示的な実施形態では、集束は、当該粒子を集束させるために当該粒子に外部場を加える必要性を緩和するような粘弾性特性を有する懸濁媒質中で粒子を流す工程を含む。
【0061】
いくつかの例示的な実施形態では、この粒子は細胞、例えば、血液細胞、細菌、および/または癌性細胞を含む。任意に、この粒子は、高分子、小胞、リガンド、遮蔽された(shaded)受容体、抗原および抗体などの可溶性因子に特異的な抗体で覆われたマイクロビーズを含む。そうは言うものの、「粒子」という用語は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
【0062】
いくつかの例示的な実施形態では、当該粒子は懸濁媒質の中でチャネル内部を流れ、そのチャネルの特定の部分(本願明細書において「集束領域」と呼ばれる)に集中する。任意に、この集束領域は、そのチャネルの中心にあり、例えば、チャネルの底部の中心で、その底部から垂直に延在する体積の中にある。
【0063】
用語「チャネル」は、本願明細書においては、100μmより小さい少なくとも1つの寸法および100μmよりはるかに長い長さ、例えば1mm、10mm、50mm、100mm、1000mm、または任意の中間の長さまたはより長い長さを有する任意の構造を表すために使用されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、チャネルは、固形物の上面にある溝である。いくつかの実施形態では、チャネルはチューブである。チャネルの長さに垂直なチャネルの断面は、任意に長方形、正方形、丸い形、または球状である。
【0064】
長方形または正方形の断面を有するチャネルは、任意に、リソグラフィー、例えば、ソフトリソグラフィーまたはフォトリソグラフィーを使用して得られる。この種の製造方法によって、マイクロチャネルを有する物体、例えば、ラボチップ(lab−on−chip)の容易かつ正確な大量生産が可能になる。
【0065】
チャネルが同様に長くかつ粒子が同様により大きい場合には、集束の品質は、任意に、より大きい最小寸法のチャネルを用いて得られる。チャネルが100μmより大きい最小寸法を有し、かつ粒子が約1〜10μmである場合、集束の品質は低下する。
【0066】
チャネルの中心での集束は、チャネルの他の領域での集束よりも、いくつかの点で有利である場合がある。例えば、チャネルの中心では、中心を外れたところよりも流速は大きい。それゆえ、チャネルの中心に集束される粒子はより速く流れ、より高い処理量で扱われ得る。別の例では、処理された粒子が小さいブラウン粒子、例えば、1μmより小さいブラウン粒子である場合、それらは、流れの方向に垂直に拡散する傾向があり、せん断によって横の拡散性が高められる(テイラー拡散(Taylor dispersion)として当該技術分野で公知の効果)。この傾向は、せん断速度が最小であるチャネルの中心で最小であり、それゆえ、横のせん断で増大された拡散に起因する試料幅の広がりを最小にして流れの方向に沿った粒子のより速い動きが実現できる。別の例では、粒子がチャネルの壁に吸着する傾向を有する場合、当該粒子を中心で集束させることでそれらと壁との相互作用が最小にされ、吸着/付着現象が減少される。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、この集束は水平方向であり、つまり、当該粒子は、チャネルの深さの半分に近い限られた深さの水平領域で集束される。例えば、粒子が、チャネルの上に配置された光学的装置を用いて光学的に分析されるべきである場合には、水平方向の集束は有利である場合がある。かかる場合には、水平方向の集束は、すべての粒子がその光学的分析器の焦点の範囲内にあるようにしてもよく、これにより、粒子が垂直方向に集束される場合に可能である分析よりも速い粒子分析が可能になる。本発明のいくつかの実施形態は、実際的には重力とは無関係である。そうは言うものの、いくつかの実施形態では粒子は光線を使用して分析されるため、用語「水平方向の」および「垂直方向の」は光線との整列を表すと解釈することが好都合である場合があり、例えば、光線は垂直方向に沿って到達すると定義される。
【0068】
水平方向の集束は、チャネルの垂直方向の寸法(つまり、そのチャネルの高さ)が100μm以下である場合に、任意に得られる。
【0069】
いくつかの実施形態では、この集束は垂直方向のものである、つまり、当該粒子はチャネルの幅の約半分のところでチャネルの底部に垂直な集束領域に集中する。垂直方向の集束は、チャネルの水平方向の寸法(つまり、チャネルの幅)が約100μm以下である場合に、任意に得られる。
【0070】
いくつかの実施形態では、粒子がチャネルの底部および上壁から、およびまたチャネルの壁から離れて流れ、チャネルの壁のいずれかに接触するほどには延在しない体積に集中するという意味で、三次元的な(3−D)集束が起こる。二次元的な集束は、高さおよび幅がともに約100μm以下であるチャネルを用いて任意に得られる。
【0071】
任意に、三次元的な集束は、寸法のうちの1つが100μm以下であるチャネルを用いて得られ、他の寸法では、それ自体は必ずしも本発明の実施形態に係るものではない他の方法、例えば、水力学の集束として公知のシース流集束によって、集束は得られる。
【0072】
任意に、シース流(sheath flow)集束または他の公知の集束方法は、粘弾性集束と組み合わせて使用される。
【0073】
いくつかの実施形態では、集束される粒子は、その粒子の実質的な部分の中心がその粒子の典型的な半径とほぼ同じ半径を有する円柱の内にあるように、任意に1つずつ並べられる。いくつかの実施形態では、かかる集束は粒子の長手方向の分散を大きく減少させ、より高いスループットをもたらす。向上したスループットは、圧力で駆動される流れの速度が最大であると予想される中心に当該粒子が集束するためである可能性が高い。
【0074】
任意に、この実質的な部分は当該粒子の90%以上、任意に95%より多く、任意に99%より多くである。
【0075】
任意に、上記円柱の半径は当該粒子の典型的な半径の120%未満である。
【0076】
非球形の粒子の場合には、当該粒子の典型的なサイズは当該粒子の最小の寸法に対応する。例えば、直径1μmおよび高さ10μmを有する基本構造(base)をもつ円柱状の粒子は、1μm直径の球状の粒子と同様に集束する。
【0077】
本発明の例示的な実施形態では、当該粒子を集束させる方法は、100μmより小さい少なくとも1つの寸法を有する長いチャネルの中で粒子の懸濁液を流す工程を含む。
【0078】
任意に、実質的な集束は、比較的短い距離に沿って当該粒子を流した後に発生する。例えば、当該粒子の半径よりも20%大きい半径を有する円柱内に当該粒子の90%を集束させることを、10cm以下にだけ沿って当該粒子を流した後に、例えば5cm、2cm、または1cm後に発生させることができる。
【0079】
例示的な実施形態では、当該懸濁液は、当該粒子および懸濁媒質を含み、この懸濁媒質は、所望の集束をもたらし、かつ、集束を得るために、流れている懸濁液に外部場を加える必要性を軽減する粘弾性特性を有するように選択および/または操作される。
【0080】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、この懸濁媒質は、チャネル内部のどこでも同じ密度を有する。任意に、集束のために密度勾配は必要とはされない。
【0081】
この懸濁媒質の粘弾性特性を操作することは、任意に、懸濁液の粘弾性特性を改変する改変剤をこの懸濁媒質に加えることを含む。任意に、この改変剤は、高分子量ポリマー、例えば、約50〜約1000キロダルトンの分子量を有するポリマーである。好ましくは、この改変剤は、分散媒質に可溶である量で加えられる。任意に、この改変剤は生体適合性である。この選択肢は、粒子が生体細胞またはマイクロビーズなどの生物材料を含む場合に有利である場合がある。
【0082】
種々の実施形態でいくつかの改変剤の例としては、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリスクロース(Ficoll(商標))、ポリグルコース(デキストラン)、メチルセルロース、およびキサンタンガムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
集束に影響を及ぼし得るいくつかの粘弾性特性としては、粘度、弾性、およびこの懸濁媒質がニュートン挙動を示さない場合には、媒質のせん断減粘(shear thinning)が挙げられる。
【0084】
粘度は、任意にパスカル−秒またはポアズ単位で測定される。一般に、より高粘度は効率的がより悪い集束をもたらす。
【0085】
弾性は、任意に、通常N1と表される第一法線応力差によって規定される。N1は、貯蔵弾性率(storage or elasticity modulus)、G’に関連し、この貯蔵弾性率G’は市販のレオメーターを使用して実験的に測定することができる。一般に、より高い弾性は、より効率的な集束をもたらす。
【0086】
せん断減粘(sheer thinning)は、せん断速度の変化に応答した粘度の変化である。一般に、より高いせん断減粘(sheer thinning)はより効率的な集束をもたらす。
【0087】
集束を得るために外部の力場を使用する必要性を軽減するかかる粘弾性特性を有する懸濁媒質を用いた粒子集束は、本願明細書において「粘弾性集束」と呼ばれる。
【0088】
いくつかの実施形態では、この集束はチューブ内部の懸濁液の流量によって影響される。一般に、より高い流量はより効率的な集束をもたらす。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、この集束は流量にはほとんど影響されない。後者の場合、流量を正確に制御する必要性は軽減され、流量非依存的な集束を利用するシステムが、流量依存的な集束を使用する実施形態よりも、より簡便かつより堅牢になり得る。例えば流量は、流量非依存的な実施形態でははるかに不正確であってもよい。流量非依存的な集束を得るための条件は、図9Aに関しておよび下記の見出し「理論的誘導」で論じられている。
【0089】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、以下の説明で示されかつ/または図面および/もしくは実施例に例証される構成要素の構成および配置ならびに/または方法の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるし、または種々の方法で実行または実施することができる。
【0090】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明の例示的な実施形態に係る粒子を集束する方法(2)でとられる操作のフローチャートである。
【0091】
操作4は、懸濁媒質の中の当該粒子の懸濁液を準備する工程を含む。この懸濁媒質は、懸濁液が適切な寸法のチャネルの中を流れるとき、その粒子のうちの少なくともいくつかは、そのチャネル内の集束領域に向かうような粘弾性特性を有する。
【0092】
いくつかの実施形態では、このチャネルの長さに垂直な集束領域の断面は、そのチャネルの幅に実質的に等しい幅、およびそのチャネルの深さよりもはるかに小さい長さを有する。これらの場合、本願明細書では、集束は「水平方向の」と呼ばれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、そのチャネルの長さに垂直な集束領域の断面は、そのチャネルの深さに実質的に等しい深さ、およびそのチャネルの幅よりもはるかに小さい幅を有する。これらの場合、本願明細書では、集束は「垂直方向の」と呼ばれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、そのチャネルの長さに垂直な集束領域の断面は、チャネルの深さよりも実質的に小さい高さ、およびそのチャネルの幅よりもはるかに小さい幅を有する。これらの場合、本願明細書では、集束は3−Dと呼ばれる。
【0095】
本発明の例示的な実施形態では、チャネルの深さは100μmより小さく、より浅いチャネルは(他の点では同様の条件下で)より早い集束を可能にする。このチャネルの深さを限定する2つの要因は、あまりに小さいチャネルは詰まりやすいという傾向、および小さいチャネルに流体を流すためにより高い注入口圧力が必要とされることである。
【0096】
任意に、チャネルは100μmより小さい幅をも有し(この場合、2−D集束が得られる)、この粒子はチャネルの底部および上面壁から離れて、およびチャネルの垂直方向の壁から離れて集束する。3−D集束では、集束領域は、任意にチャネルの断面に類似しているがそれより小さい断面を有する。任意に、3−D集束領域はそのチャネルと同軸である。
【0097】
操作6は、チャネルに沿って当該懸濁液を流す工程を含む。
【0098】
いくつかの例示的な実施形態では、方法2は、粒子を1つずつ並べることをもたらし、これによってフローサイトメーターの中でそれらを検査することが可能になる。
【0099】
いくつかの実施形態では、この懸濁液は種々のサイズの粒子を含み、懸濁液体の粘弾性特性は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が所定のサイズの粒子をその集束領域に向かって選択的に導くような粘弾性特性である。例えば、下記の図5Aおよび図5Bに関連して論じられるいくつかの実施形態では、直径8μmの粒子の95〜99%は集束領域に導かれ、他方、直径5μmの粒子の35〜40%だけが同じ集束領域に導かれる。
【0100】
(例示的な懸濁媒質の準備方法)
いくつかの実施形態では、粒子は乾燥しており、媒質粘弾性特性に従って選択される懸濁媒質に懸濁される。
【0101】
いくつかの実施形態では、粒子は、不適切な媒質に懸濁されて、準備される。
【0102】
任意に、準備された懸濁媒質の不適切な粘弾性特性の効果を制御または排除するために、適切な懸濁媒質が過剰に加えられる。
【0103】
あるいはまたは加えて、この懸濁媒質は、適切な粘弾性特性を有する別の懸濁媒質と交換される。
【0104】
例えば、多くの実施形態では、血液が処理され、分取しようとする粒子は血清に懸濁されて提供される血液細胞である。
【0105】
いくつかの実施形態では、生理食塩水がこの血液に加えられる。任意に、加えられた血清の量は血液の量の約15倍、20倍、または25倍である。
【0106】
いくつかの実施形態では、この血清は生理食塩水と交換される。任意に、かかる交換は、その血液試料を遠心分離する工程と、血漿を抽出する工程と、抽出された血漿を生理食塩水に懸濁させる工程とを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、この血清を置き換えるために使用される生理食塩水および/またはその血清に加えられる生理食塩水は上記のとおりの改変剤を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、複数の任意の懸濁媒質が準備され、そのうちの1つは、懸濁媒質の粘弾性特性および集束または分取されるべき粒子の特性、例えば、その粒子のサイズに従って選択される。
【0109】
任意に、この懸濁媒質は、粒子のサイズおよび変形能に応じて選択される。任意に、変形能は有効半径を定義するために使用され、この懸濁媒質は定義された有効半径に応じて選択される。
【0110】
任意に、異なる懸濁媒質が、異なるサイズおよび変形能をもつ粒子のために準備される。
【0111】
いくつかの実施形態では、試用懸濁媒質がまず使用され、その粒子はその試用懸濁媒質の中で流路に沿ってマイクロチャネルを流され、集束の品質が評価される。集束の品質は、所定の距離を所定の流量でチャネルを流れた後に所定の寸法の集束領域に集束する粒子の割合(%)として任意に定義される。
【0112】
この集束が不十分である場合、当該懸濁媒質は任意に手直しされる。任意に、この懸濁媒質は、懸濁媒質の粘弾性特性を改変する改変剤を懸濁媒質に加えることによって手直しされる。任意に、この改変剤はポリアクリルアミド(PAA)などの高分子量ポリマーを含む。このポリアクリルアミド(PAA)は、それが溶解している液体の弾性を高めることが知られている。任意にまたは加えて、この改変剤は、高分子量ポリマー、例えばグリセロールを含む。このグリセロールはそれが溶解している液体の粘度を変化させることが知られている。任意に、1つのポリマーは粘度および弾性の両方を改変する。任意に、弾性を改変するために1以上のポリマーが使用され、粘度を改変するために1以上のポリマーが使用される。
【0113】
本発明の例示的な実施形態では、集束の品質は、集束される粒子の95%の中心が位置する最も薄い層の幅に基づいて評価される。任意に、その層が薄いほど、集束は良好である。任意に、集束の品質は、集束される粒子の画分に基づいて評価され、その中心は所定の厚さの層内に存在する。
【0114】
加えてまたはあるいは、集束の品質は、ある程度まで集束するために粒子がそのチャネルの中を移動した流路の長さに基づき評価される。例えば、1つの実施形態では、当該粒子の95%が注入口から20mmのところで2μmの厚みの層に集中する場合は、当該粒子の95%が注入口から50mmのところで2μmの厚みの層に集中する場合よりも、集束は良好であると考えられる。
【0115】
(例示的なシステム)
図2Aは、本発明の例示的な実施形態に係る、流れる粒子を集束するためのシステム100の略図である。この図は、流体誘導システム145を介して流体源125と流体連通しているチャネル(105)を示す。流体誘導システム145は、検査ゾーン128に向かって流体源125から入力部127を通ってチャネル105へと試料流体を導くために備えられる。任意に、流体誘導システム145は、シリンジポンプを備え、そのピストンは一定かつ制御された速度で押される。市販の適切な流体誘導システムの例は、ケーディー・サイエンティフィック社(KD Scientific Inc.)(米国)のKDS 210 Scientificである。
【0116】
図2Bはチャネル105の略図である。この図は、チャネル105が壁110および115、底部120および上面壁122を有するとして示す。
【0117】
試料流体130は懸濁媒質に懸濁された粒子135を含む。この懸濁媒質は、チャネル105の部分140での粒子130の集束を容易にし、この集束を得るために外部場を加える必要性を軽減する粘弾性特性を有する。そうは言うものの、いくつかの実施形態では、任意に集束を強めるため、あるいはまたは加えて、さらなる方向に沿って当該粒子を収束するために、当該技術分野で公知のとおり外部場が加えられる。
【0118】
動作中は、流体130は流体誘導システム145によってチャネル105の中へと誘導され、粒子135はチャネル105の中に囲まれた集束領域140に導かれる。
【0119】
チャネル105は、底部120に垂直な高さh、および壁110と115との間の幅wを有するマイクロチャネルである。高さhおよび幅wのうちの少なくとも1つは100μmより小さく、任意に約5μm〜約100μm、例えば10、20、50、80、または100μmである。任意に、壁110と115との間の距離wもまた100μmより小さい。任意に、hまたはwのうちの1つは100μmより大きい。1つの例示的な実施形態では、wは1mmであり、hは50μmである。
【0120】
任意に、システム100はまた図3に図示されるキット200を含む。キット200は複数のパッケージ205(図示された実施形態では瓶である)を含み、各パッケージは、所定のサイズの粒子を集束させるために適した粘弾性特性を有する懸濁媒質210を含む。各瓶205は、システム100を用いて集束するためのその瓶の中に懸濁されるべき粒子のサイズを示すラベル215を有する。任意に、このラベルは異なる流量に対して異なる粒径を示す。任意に、このラベルは異なる寸法のシステムに対する異なる粒径を示す。
【0121】
任意に、キット200(および/またはシステム100)はまた、どの懸濁媒質を用いてどの粒子が集束されるべきであるのかに関する使用説明を含む。任意に、その表示は粒径について触れる。加えてまたはあるいは、その表示は、特定のタイプの細胞、例えば赤血球細胞、白血球、癌性細胞、および/または細菌について触れる。
【0122】
(例示的な懸濁媒質)
本発明のいくつかの実施形態では、この懸濁媒質は試行錯誤法で選択されまたは選ばれる。
【0123】
例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の粘弾性特性は、それに360キロダルトンのPVPを加えることによって改変されてもよい。任意に、PVPは、約2%、5%、8%の分散媒質、または任意の中間の濃度を形成するために加えられる。別の例では、PBSの粘弾性特性は、同様の量の70キロダルトンを超える分子量を有するデキストランを加えることによって改変される。加えてまたはあるいは5〜100ppmのPAA、および/またはメチルセルロースが生理食塩水に加えられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、試行錯誤法を導くために理論解析が使用される。例えば、特定のサイズの粒子を所定のチャネルの中で集束させるために必要とされる粘弾性特性が算出され、類似の粘弾性特性を有する媒質が試用懸濁媒質として使用され、必要に応じて上で説明されたように改変される。
【0125】
(例示的な応用例)
(例示的なFACS機器)
図4Aは本発明の実施形態に係るシステムを利用するFACS機器400の略図である。機器400は、任意に上記の種類のものであって図2Aおよび図2Bに示されている粒子集束システム100を含む。流体源の中の流体は、適切な粘弾性特性の懸濁媒質の中に懸濁された粒子を含む。システム100は、粒子がチャネル105を通って検査ゾーン405(図1Aの中の128)へと流れた後に、流体源からその粒子を出力する。
【0126】
機器400はまた、システム100から検査ゾーンへと到達した粒子を照射するために検査ゾーン405上に光線を向ける光源410も含む。任意に、システム100によってもたらされる集束は、当該粒子が1つずつ検査ゾーンに到達するという集束である。各粒子は、光源410から到達する光と、任意にその光を散乱することによって、相互作用する。加えてまたはあるいは、その粒子の一部は蛍光をも発する。
【0127】
任意に、光源410はチャネル105の上から粒子を照射する。焦点ゾーンがチャネルの高さの中間までまたは中間において水平方向(すなわち底部120に平行)である実施形態では、この光源は、当該粒子が集束する層に焦点を合わせるように微調整され、チャネル105の幅全体にわたって分散しかつそのチャネルの中間の高さに集められた粒子からの散乱光および/または蛍光を受け取ることに関与している。チャネル105の上側。散乱されたおよび/または発せられた光は検出器(415)によって検出され、コンピュータ420によって分析される。
【0128】
任意に、コンピュータ420は、各粒子を、分析結果に応じて複数の行き先430のうちの1つへと導くスイッチ425を制御する。例えば、より強い蛍光を有する粒子は、ある1つの行き先へと導かれ、より弱い蛍光の粒子を別の行き先へと導かれる。
【0129】
(例示的なレオロジー測定)
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、任意に前例のない精度まで、媒質のレオロジー特性を測定することに関する。この方法は、媒質の弾性とその媒質を用いて実現可能な集束の程度との間の関係に基づく。
【0130】
図4Bは、本発明の例示的な実施形態に係る媒質のレオロジー特性を測定する方法500でとられる操作のフローチャートである。
【0131】
502で、既知のサイズおよびシャープな粒度分布の粒子が媒質に懸濁される。任意に、粒子の量は、得られる懸濁液の体積濃度(すなわち、粒子で占められる当該懸濁液の体積分率)が約0.01%〜1%、例えば、0.1%であるような量である。
【0132】
504で、502で得られた懸濁液はマイクロチャネルに流される。
【0133】
506で、例えば、「理論的誘導」の見出しの節で後述されるようにして、注入口からいくらかの距離でのその粒子の空間分布が測定される。
【0134】
508で、懸濁媒質のレオロジー特性が、「理論的誘導」の見出しの節で提供される方程式を使用して測定された空間分布から導き出される。
【0135】
任意に、この分析は媒質の粘度に関するデータを使用する。任意に、当該方法はかかるデータを測定する工程を含む。
【0136】
任意に、方法500は、±10パスカルの精度を提供する市販のレオメーターと比べて、±0.01〜±0.001パスカルのオーダーの精度での媒質の弾性の測定を可能にする。
【0137】
(例示的な結合アッセイ)
多くの種類の粒子、例えば、細胞および高分子は、表面に付着しようとする傾向を示す。この傾向は、時折、粒子のアッセイを解析するために使用されることがある。例えば、例示的な実施形態では、モノクローナル抗体が固定された抗原に結合しようとする傾向、または受容体がチャネルの内表面に固定されたリガンドに結合しようとする傾向が研究される。別の例示的な実施形態では、白血球が固定されたリガンドに結合しようとする傾向(インビトロローリングアッセイ(in−vitro rolling assay)として当該技術分野で公知)が研究される。
【0138】
例示的な実施形態では、粒子は、懸濁媒質中で、当該チャネルの底部の上方の所定の高さで薄層に集束され、この集束される粒子がこの底部に固定された結合剤に結合する能力が研究される。
【0139】
後者の場合、集束は、自由に懸濁した粒子とチャネル底部に固定された結合剤との間の有効相互作用範囲の微調整のための特に役立つツールとしての役割を果たしてもよい。かかる微調整は、そのアッセイの空間的分解能を改善する上で有用であり得る。
【0140】
任意に、このチャネルは、注入口近くの、底部に結合剤が固定されていない第1の部分、および第1の部分の下流の、固定された結合剤を有する第2の部分を有する。
【0141】
任意に、第1の部分は、その粒子の大部分、例えば95%がその中心を、チャネルの高さよりはるかに薄い、例えばその高さの5%である層に存在させることができるのに十分長い。
【0142】
任意に、第2の部分は第1の部分と同じ高さであり、固定された結合剤に引き付けられない粒子は、それが第1の部分において動くのと実質的に同じように第2の部分において動く。任意に、第2の部分は、当該結合剤に結合し得るすべての粒子の大部分、例えば95%を結合するのに十分長く、結合しない粒子のみが第2の部分から出る。
【0143】
任意に、複数のチャネルが使用され、各チャネルは異なる高さを有し、そのため、底部に固定された結合剤と半分の高さにある薄層で集束された粒子との間の相互作用距離は、結合剤への粒子の付着が第1の閾値未満である最小のチャネル高さ、および結合剤への粒子の付着が第2の閾値より高い最大のチャネル高さに基づく。例えば、この相互作用距離は、当該粒子の5%未満が吸着する最小の高さと、その粒子の少なくとも95%が吸着する最大高さとの間の中点として定義されてもよい。
【0144】
任意に、結合剤と粒子との間の相互作用距離は、第2の部分の最初から特定の距離のところでの結合に基づき評価される。
【0145】
任意に、すべてのチャネルが同じ長さの第1の部分を有する。任意に、異なるチャネルは、すべてのチャネルにおいて同じ程度まで粒子を集束させるように設計された第1の部分を有する。任意に、これは、より長い第1の部分がより深いチャネルに関連する異なる長さの第1の部分を用いて成し遂げられる。任意にまたは加えて、すべて同じ集束力の第1の部分を有することは、流体を異なるチャネルへと誘導して、より高い流れの流体をより深いチャネルに誘導する流れ誘導システムを微調整することによって成し遂げられる。
【0146】
図4Cは、本発明の例示的な実施形態に係る粒子−結合剤相互作用を研究するための装置の略図である。
【0147】
装置600は、各々がタンク610から試料流体を受ける複数のチャネル605を備える。任意に、各チャネル105は、それ自身の流れ誘導システム645を有し、この流れ誘導システム645は、流体が他のチャネルのいずれかへと誘導される流量からは独立した流量で、試料流体をそれと関連するチャネルへと導くために任意に制御可能である。
【0148】
図示された実施形態では、各チャネル605は第1の部分620を有する。任意に、各流れ誘導システムは、第1の部分の終点で、その粒子の約90%の中心がチャネルの高さの中央の薄層を占めるように作動される。
【0149】
結合剤がチャネルの底部に固定された第2の部分625もまた図示された実施形態に示されている。各チャネルより上で、第2の部分の始点後いくらかの距離で、この地点に到達する粒子の数を評価するために、カメラの下のチャネル中の粒子を撮像するカメラ630が示されている。
【0150】
任意に、結合量は、第2の部分に入る粒子の数と第2の部分を離れる粒子の数との間の比に基づいて、評価される。
【0151】
(理論的誘導)
以下では、所定のサイズの粒子を集束させるのに適した懸濁媒質を選択する際に当業者を手助けするための理論が提示され、その理論および本発明のいくつかの実施形態の実行可能性を支持するために実験結果が報告される。
【0152】
本発明の一態様は、流れ抜ける(flow−through)構造における希薄な懸濁液の中の粒子または細胞の受動的かつ調整可能な集束のための方法論に関する。この方法論は、粒子を壁から離してチャネルの中央面に向かって制御可能な様式で駆動するために、希薄なポリマー溶液の圧力駆動による流れにおいて生じる固有の非線形の弾力がどのように活用され得るかを実証する微小流体の実験の結果によって支持される。本発明者らは、基礎となる移動機構を記述するための分析モデルの結果を提示し、横方向の粒子分布の微調整のための方法を提案する。最後に、理論的予測値を立証するために設計された実験の結果が提供され、十分に考察される。
【0153】
本発明者らの実験では、参照により本願明細書に援用したものとするA.Branskyら、Biosens.Bioelectron.22、165(2006);Microvasc.Res.73、7(2007)、(以降、Branskyら2007)に記載されるフォトリソグラフィーを使用して顕微鏡用カバーガラスに製作した断面h×w=45×103μm2の浅い微小流体用チャネルを使用した。シリンジポンプ(KDS 210、ケーディー・サイエンティフィック)を使用して、種々の一定流量で(0.1〜1cm/sの典型的な速度で)マイクロチャネル注入口を通してポリスチレン(PS)ミクロスフェア(デューク・サイエンティフィック(Duke Scientific))の希薄に(0.1体積%未満)分散した懸濁液を注入した。高速CCDカメラ(CPL MS100O カナディアン・フォトニック・ラボ(Canadian Photonic Labs))を正立顕微鏡(ニコン(Nikon) 80i)に取り付けた。種々の深さで、注入口から20mm下流で、マイクロチャネルの中央を(側壁から距離w/2のところを)流れるミクロスフェアの膜を、Barnskyら、2007によって記載されている特注設計の画像処理ソフトウェアによるさらなる解析のために直接PCに記録した。このアルゴリズムは、粒子を数えて、深さ約1μmの垂直方向の薄層におけるそれら粒子の速度を算出することができる。
【0154】
本発明者らは、特定深さの焦点に含まれる粒子の割合を、その流れ方向の速度で除算して1に正規化したものとして、粒子分布関数(PDF)を定義する。この定義によれば、粒子が周囲の流れの流線に追従するのであれば、PDFは一定かつ流量非依存的でなければならない。本発明者らは、まず、脱イオン水の中に84体積%のグリセロールを含む粘性の高いニュートン挙動を示す液体に懸濁した直径8μmのPSミクロスフェアを用いて参照実験を行った。溶液のせん断粘度を歪み制御されたレオメーター(ARES、レオメトリック・サイエンティフィック(Rheometric Scientific))を使用して測定したところ、25℃で0.063Pa・sであることが判明した。図5aは、流量を変えた際の実験によるPDF 対 中心を外れた垂直方向の距離を表す。各点は、数百もの個々の測定値に基づく平均値に対応する。粒子分布は流量とともには変化せず、ほとんど一定であることが容易に分かる。本発明者らは、8重量% ポリビニルピロリドン(PVP、MW 約3.6×105;シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))水溶液中に懸濁したPSミクロスフェアを用いてこの実験を繰り返し、得られたPDFを図5bにプロットした。集束は流量の増加とともに高まりながら、この粒子は壁から離れて移動して中央平面に集中する傾向があることが容易に分かる。外部場がない場合の粒子集束(変形により誘導される移動、慣性効果、およびせん断によって誘導される移動)に対するこれまでに示唆された説明は、図5aおよび図5bに示される結果を説明するためには、すべて不十分であるように思われる。明らかに、変形により誘導される移動は剛性の高いミクロスフェアには当てはまらず、慣性効果は両方の溶液で同様の結果をもたらすはずであり、他方、せん断によって誘導される移動は濃厚な懸濁液においてのみ観察される。それゆえ、新規な説明が提示されるべきである。
【0155】
本発明者らは、次に、横方向の粒子の移動が、圧縮による非線形的な弾性力の不均衡によって駆動されることを実証することにする。せん断が加わった流れにおけるこれらの力は、第一法線応力差および第二法線応力差、それぞれ
【数4】
および
【数5】
によって記述される(式中、σiiは当該応力テンソルの対角成分を表し、xは流れの方向を表し、yは速度勾配の方向を表し、zは速度方向である)。二次粘弾性流体の解析的に扱い易い事例に対する平面ポアズイユ流における横方向の粒子の移動の厳密な解析から、N1>0、N2<0の両方とも、粒子をチャネルの中心に向かって駆動するように作用することが示された(B.P.HoおよびL.G.Leal、J.Fluid Mech.76、783(1976)を参照)。この解析をできるだけ一般的に維持するために、本発明者らはスケーリング議論に基づく簡単な理論を構築する。本発明者らはN2の寄与を無視し、当該粒子にもたらされる横の弾性力がその粒子のサイズにわたるN1の変分に比例し、Fe〜a3(∂N1/∂y)かつストークス抵抗、Fη=6πηaVによって相殺されると仮定した。ここで、Vは横方向の移動の速度であり、aはその粒子の半径であり、−d≦y≦d、dはチャネルの深さの半分であり、ηは、一般には局所的なせん断速度
【数6】
の関数である動粘性係数である。FeおよびFηを等しくすることで、横方向の移動速度についての式
【数7】
を得る。
【数8】
のアスペクト比ついては、本発明者らは、この流れを平面ポアズイユプロファイルによって近似する。ベキ乗則流体については、
【数9】
解は
【数10】
によって与えられる。式中、
【数11】
は平均速度である。ベキ乗則挙動、
【数12】
は高分子量ポリマーの希薄溶液について予想される[16]。従って、N1および
【数13】
を(1)代入し、
【数14】
に到る。式中、
【数15】
は[L/T]n−βの次元を有し、λ=1+β−nであり、ζ=y/dはスケール化された横方向の座標(scaled transverse coordinate)であり、Cはこのモデルを実験データにフィットさせることによって後に決定されるべき定数である。
【0156】
あるいは、(2)における深さ平均による横方向の速度は、容易に
【数16】
であると見出すことができる。式中、Wi=N1/τは平均のワイゼンベルグ数であり、弾性応力、N1、と粘性応力、
【数17】
との比に等しく、両方とも平均せん断速度、
【数18】
で決定され、定数
【数19】
である。
【0157】
本発明者らはさらにブラウン揺動力、粒子間および壁間の水力学的相互作用を無視し、かつ当該粒子の流れ方向の速度Uはその中心では無かく乱流の速度、uにおよそ等しい[18]と仮定する。それゆえ、当該粒子の軌跡は以下の方程式の解である。
【数20】
式中、ξ=x/dは、スケール化された軸方向の座標(scaled axial coordinate)である。方程式(3)は容易に積分することができ、陰解法が得られる。
【数21】
当該チャネル断面にわたる粒子分布は最初は均一であると仮定すると、「粘弾性集束」に起因する入口からのその距離での当該粒子の95%を含む中心コアの半値幅、y95を見積もることができる。そのコアの包絡線は軌跡であるため、図1(b)にある実験結果と(3)の解に基づく理論的モデルとを比較することができる。ARESレオメーターを用いて25℃でPVP溶液のせん断粘度を測定し、それが約0.064Pa・sに等しいことが判明した。粘度は0.1〜250s−1のせん断速度の範囲にわたって3%未満だけしか減少しないため(図6の挿入図を参照)観察されたせん断減粘はわずかであり、それゆえ、本発明者らはPVP溶液についてはn=1を使用する。
【0158】
このPVP溶液についてのN1の大きさは小さすぎて、定常せん断試験で信頼性高く測定することはできない。その代わり、本発明者らは、振動数、ωの関数としての動的剛性(「貯蔵弾性率」)、G、の小振幅の振動せん断測定を実施した(図6を参照)。低い値の
【数22】
およびωにおいてG’とN1との間で成立する粘度測定の関係
【数23】
を使用して、
【数24】
の値を見積もることができる。図6の挿入図で確認されるように、類似のCox−Merzの関係が、せん断粘度、
【数25】
と複素粘度の絶対値
【数26】
との間に成立する。
【0159】
レオロジー特性およびチャネルの寸法が与えられると、αを直接算出することができ、そのあと(3)の解を実験データにフィットさせることによって増倍定数Cが見出され得る。y95(μm)に対応する値を、種々の流量について図5bに示したデータから算出し、白抜き三角形として図7に提示する。図7の真ん中の曲線は実験データへの理論的モデルの最良のフィットに対応し、これら2つのものの間には優れた一致がある。最適のフィットから増倍定数
【数27】
が得られる。
【0160】
定常状態でのブラウン揺動力に起因するスケール化されたPDFの幅、2ζBは、条件、Pe=aV/D0=1から見積もることができる。式中、Vは(2)によって与えられ、D0は単一の粒子のストークス−アインシュタインの拡散率であり、Peはペクレ数である。α=0.5μmおよび
【数28】
の典型的な平均速度について、
【数29】
が得られ、このため、μmサイズの粒子についてはブラウン輸送はほぼ無視することができる。
【0161】
式(2)から
【数30】
が得られる。ここで、集束の強さはα〜Aa2/ηによって制御される。せん断減粘(すなわちn<1)は集束を強化し得る。せん断減粘およびニュートン液体(同じ弾性およびゼロせん断速度粘度を有する)の深さ方向に平均化された移動速度の比は、
【数31】
と簡単になり、
【数32】
に対しては、この式はn<1については1より大きい。従って、粒径を変えかつ懸濁媒質の弾性および/または粘度を変更することによって、下流の特定の距離での粒子分布の幅を制御することができる。例えば、N1指数、λ〜lの場合、その粒子分布は流量に敏感でないと予想される。この理論的予測値の妥当性を検証するために、本発明者らは、45ppm PAA(Separan AP30;ダウケミカル社(Dow Chemical Co.))とともに76重量% グリセロールの溶媒を使用して調製した高分子量ポリアクリルアミド(PAA)の希薄溶液に基づく粘弾性液体を使用して、実験を繰り返した。せん断粘度は、せん断速度0.1〜450s−1の範囲にわたって0.052〜0.036Pa・sと変わり、これは
【数33】
(図6の挿入図を参照)によって最良に近似される。動的剛性(G’)測定から
【数34】
が得られる(図6を参照)。PAAの希薄溶液の動的剛性の周波数依存性は、G’〜ω2であると予想され、予想値の2からの指数のずれは、試験した最低の周波数においてさえも(図6を参照)、実験で使用したポリマーの高い多分散性に起因するのかも知れない。
【0162】
従って、
【数35】
であり、流量に対するPDFのかなり弱い依存性が予測される。他方で、前指数因子(pre−exponential factor)Aは上記PVP溶液について測定されるものよりも約一桁高く、それゆえより強い集束効果が上記PAA溶液において予想される。
【0163】
8μmおよび5μmのミクロスフェアの得られるPDFはそれぞれ図8aおよび図8bに与えられる。予想されるとおり、PDFはほとんど流量に依存しないことが容易に理解できる。粒径効果は明らかである:PDF分布はより大きい粒子ほどより狭い。対応するy95の値は図8のPDFから算出することができ、それらは、5μm粒子(白抜きひし形)および8μm粒子(白抜き正方形)について、図7に流量に対して図示される。PAA溶液におけるy95の理論的予測値[図7の一番上および一番下の曲線]は、C=0.301とした方程式(3)の解に基づいており、調整可能なパラメータはまったく含んでいない。予想されるとおり、8μmの粒子についての集束効果は、このPVP溶液においてよりもこのPAA溶液において強く、粒径の効果は大きい。(調整可能なパラメータなしの)理論的予測値とこの実験データとの比較から優れた一致が示され、上記粘弾性集束の仮説が検証される。8μm粒子についての実験的分解能は不十分であるので、理論的予測値と図7におけるPAA溶液中での8μm粒子についての実験との間の一致は、5μm粒子についての場合ほどには正確ではない。これらの粒子は4μm未満の非常に薄い層の中に集束される。図8(a)参照。
【0164】
(集束予測方法)
図9Aは、本発明の実施形態に係る所定のフローシステムで所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する方法900でとられるべき操作のフローチャートである。
【0165】
操作902で、このシステムの物理的寸法が提供される。これらの寸法には、任意に、この微小流体用チャネルの構造(その幅w、深さh(すなわち、このチャネルの半分の深さを表すd=h/2)、および注入口と検査ゾーンとの間の長さを含む);および集束されるべき粒子の見積もられるサイズが含まれる。
【0166】
903で、実験での設定で使用されることになる流量Q、が選択され、平均の流れ方向の速度
【数36】
は、方程式
【数37】
から見積もられる。ここでA=h×wである。
【0167】
904で、この所定の懸濁媒質のレオロジー特性が見積もられる。見積もられるレオロジー特性には、任意に、せん断速度
【数38】
の関数としての動的粘度、η(Pa・s)、および発振周波数、ωの関数としての弾性率G’(Pa)が含まれる。任意に、これらの見積りは、文献で利用できるデータに基づく。任意に、これらのデータは、例えば市販のレオメーターを用いて実験的に集められる。
【0168】
906で、方程式
【数39】
における定数Aおよびβが見積もられる。
【0169】
任意に、この見積もりは、粘度測定での等式
【数40】
を用いて904で得られた測定値に基づく。
【0170】
N1が市販のレオメーターによって直接測定されるのに十分大きい(典型的には、数十Paのオーダーにある)場合、N1は任意に直接測定される。
【0171】
908で、方程式
【数41】
中のパラメータmおよびnが見積もられる。この見積もりは、任意に文献で利用可能なデータに基づく。あるいは、この見積もりは、測定されたレオロジー特性を上記の方程式にフィットさせる工程を含む。
【0172】
910で、集束の品質は、操作902および903でもたらされるデータならびに操作904〜908で得られた見積もり値を使用して上記の方程式4を解くことによって評価される。任意に、集束の品質は、試験粒子の無次元の位置ζ=y/dによって評価される。例えば、流れ方向に注入口から20mmの距離で、d=40μmの半分の深さを有するマイクロチャネルの中の深さ4μmの中心層内に粒子の何%が垂直方向に集束されるであろうかを知りたい場合は、ζ=4/40=0.1およびξ=2000/40=50を用いてζ0について式(4)を解くべきである。例えば、得られたζ0=0.75という値は、その粒子のおよそ75%は、注入口から下流の20mmの距離で深さ4μmの中央のコア内に集束されるであろうということを意味する。
【0173】
単分散の直鎖状ポリマーの多くの希釈溶液は、特定の明確なレオロジー挙動を示す(Boger液体として当該技術分野で公知):これによると、
【数42】
である。
【0174】
用語「単分散性ポリマー」は、この文脈では、狭い分子量の分布を有するポリマーを表すために使用される。希薄溶液でBoger液体挙動をもたらす直鎖状ポリマーの例としては、単分散性ポリアクリルアミドおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0175】
Boger液体の場合、n=1およびβ=2であり、集束の品質の評価はかなり単純になる。かかる単純化された方法(900’)のフローチャートが図9bに提示される。
【0176】
図9Bは、本発明の実施形態に係る所定のフローシステムで所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する方法900でとられるべき操作のフローチャートである。
【0177】
図9bの中の操作902および903は、図9aの中の同じ操作とまったく同様である。
【0178】
904’で、平均せん断速度およびせん断速度の平均勾配が、操作902および903で提供される値から、式:
【数43】
から算出される。
【0179】
906’で、粘性応力τおよび法線応力N1の値が測定され、Wi=N1/τが算出される。τおよびN1の測定は、任意に、市販のレオメーターを用いて実施される。これらの値は、任意に、904’で算出された
【数44】
に等しい1つのせん断速度でのみ測定される。
【0180】
正確な法線応力測定は、通常は市販のレオメーターによっては利用できず、それゆえ法線応力は、1つの周波数
【数45】
で市販のレオメーターを使用して、および関係
【数46】
を使用して、振動せん断測定で測定される弾性率G’から任意に見積もられ、その測定されたデータから法線応力が得られる。
【0181】
908’で、ワイセンベルグ数Wi=N1/τは906’で得られたデータを使用して算出される。
【0182】
908’で、その粒子の平均横方向速度
【数47】
が、904〜908で算出された量および方程式(2a)およびBoger液体については
【数48】
であるという入力に基づき算出される。
【0183】
910’で、粒子がチャネルの中心の水平方向面に完全に集束される流れ方向の距離は、
【数49】
と見積もられる。
【0184】
(全般的な注釈)
本願から成立する特許の存続期間の間に多くの関連する懸濁媒質、フローサイトメーター、およびFACS機器が開発されるであろうということが予想され、当該用語に対応する用語の範囲は、すべてのかかる新しい技術を最初から包含することが意図されている。
【0185】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する」およびそれらの同根語は、「〜を含むが、これらに限定されない」ことを意味する。
【0186】
用語「例示的な」は、「例、実例または図解としての役割を果たす」ことを意味する。
【0187】
本願明細書で数値範囲が示される場合はいつでも、それは、示された範囲内のあらゆる引用された数字(分数または整数)を含むことが意図されている。第1の示された数と第2の示された数「との間の範囲の(ranging)/範囲にある(ranges)」および第1の示された数「から」第2の示された数「までの範囲の(ranging)/範囲にある(ranges)」との語句は、本願明細書においては互換的に使用され、第1および第2の示された数ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことが意図されている。
【0188】
分かりやすさのために別々の実施形態に関連して記載されている本発明の特定の特徴は、1つの実施形態で組み合わせて提供されてもよいことが予想される。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載されている本発明の種々の特徴は、別々に、またはあらゆる適切なサブコンビネーションとして、または本発明のいずれかの他の記載された実施形態において適切であるとして、提供されてもよい。種々の実施形態に関連して記載された特定の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が機能しない場合でない限り、それらの実施形態の必須の特徴とは考えられないものとする。
【0189】
本発明はその具体的な実施形態に関連して説明されてきたが、多くの変更態様、修正態様およびバリエーションが当業者に明らかになることは明白である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および幅広い範囲のうちに含まれるすべてのかかる変更態様、修正態様およびバリエーションを包含することが意図されている。
【0190】
本願明細書で言及されたすべての刊行物、特許および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許および特許出願が具体的におよび個々に参照により本願明細書に援用したものとすると示された場合と同じ程度まで、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。加えて、本願におけるあらゆる参考文献の引用または特定は、かかる参考文献が本発明にとっての先行技術として利用できるということを認めるものとは解釈されないものとする。節の見出しが使用されるところでは、それらは必ずしも限定するものとは解釈されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2008年6月7日出願の米国仮特許出願60/924,998号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、より具体的には蛍光標識細胞分取(FACS)(これに限られない)に関する。
【背景技術】
【0003】
フローサイトメトリーは、単一の細胞の物理的および/または化学的特徴の同時多様性解析のための手法である。フローサイトメトリーによって細胞(または他の微視的粒子)を数えること、調べること、および選別することが可能になり、単一の粒子の物理的および/または化学的特徴の多様性解析が提供される。分析される細胞は検査地点に向かって流れ、そしてこの流動は、その粒子が一列縦隊で検査地点に到達し、そうして各粒子が個々に分析されるように設計される。
【0004】
1つの特定のフローサイトメトリー手法は、蛍光標識細胞分取(FACS)と呼ばれる。FACSは、生物細胞または他の粒子の不均一な混合物を、各細胞の特定の光散乱および蛍光特性に基づいて、一度に1細胞ずつ2以上の容器に選別することをもたらす。それは有用な科学機器である。なぜなら、それは個々の細胞からの蛍光シグナルの迅速な、客観的かつ定量的な記録、および特に興味を持つ細胞の物理的分離をもたらすからである。
【0005】
この技術は、分子生物学、病理学、免疫学、植物生物学および海洋生物学を含めた多くの分野で応用されている。
【0006】
例えば、細胞生物学および免疫学の分野では、この技術は、特異的標的細胞に結合し血球計算器中の抗原の定量分析を可能にする蛍光タグ化抗体とともに使用される。この方法は、タンパク質発現および局在化、細胞表面の抗原の定量(様々な臨床病理学、例えば、白血病内の血液細胞上のCDマーカー)、細胞内抗原および核抗原(制御性T細胞内のFoxP3などの転写因子の活性化)、細胞の生存(アネキシン/PI染色によってアポトーシスを起こした細胞の定量)などの研究のために広く使用される。
【0007】
フローサイトメトリーおよびFACSはまた、医学、特に移植、血液学、腫瘍免疫学および化学療法、遺伝学およびIVF(体外受精)における精子選別においても幅広く応用されている。
【0008】
一般に、フローサイトメーター内では、粒子が流体の中で一つずつ整列している、その流体のストリームに光線が向けられる。多くの検出器は、このストリームがこの光線を通過する地点に向けられる。この光線を通過する各々の懸濁した粒子は何らかの方法でこの光と相互作用し(例えば、その光を散乱させる)、その粒子からの光が検出器によって感知される。検出された光は分析され、各々の個々の粒子の物理的および化学的構造についての様々な種類の情報がもたらされる。
【0009】
典型的には、フローサイトメーターは5つの主要構成要素を有する:
フローセル(ここで、検知のためその細胞が一列縦隊でその光線を通過するように、液体のストリームが細胞を運搬および整列させる);
光源;
検出器;
増幅システム;および
増幅された検出されたシグナルの分析のためのコンピュータ。
【0010】
フローセル内で粒子を整列させることは、その粒子に外力を加えることによって成し遂げられる。市販のフローサイトメーターで使用される外力を加える1つの方法は、当該技術分野で「シース流(sheath flow)」と呼ばれている。他の方法としては、粒子に光および超音波を当てることが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、より具体的には蛍光標識細胞分取(FACS)(これに限られない)に関する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、粒子が一列縦隊で、例えば、フローサイトメーターの光線を通過するように、それら粒子を整列させることに関する。
【0013】
従って、本発明のいくつかの実施形態の一態様は、粒子を集束させる方法であって、
第1の懸濁媒質中の当該粒子の懸濁液を準備する工程と、
100μmより小さい少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルに沿ってこの懸濁液を流す工程と
を含み、
この第1の懸濁媒質は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が当該チャネル内部の集束領域での粒子の濃度を増加させるような粘弾性特性を有する、方法に関する。
【0014】
例示的な実施形態では、この集束領域は、当該チャネルの半分の高さにある。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記集束領域は、チャネルの長さに垂直な断面を有し、この断面は、同じ場所でのチャネルの断面と同形状を有するがそれよりも小さい。
【0016】
任意に、この集束領域はそのチャネルと同軸である。
【0017】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、上記懸濁液は種々のサイズの粒子を含み、上記粘弾性特性は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が、より大きい粒子を優先的にその集束領域に向かって誘導するような粘弾性特性である。
【0018】
任意に、懸濁液を準備する工程は、
第2の懸濁媒質中の当該粒子の懸濁液を得る工程と、
当該第2の懸濁媒質を上記第1の懸濁媒質と交換する工程と
を含む。
【0019】
任意に、懸濁液を準備する工程は、
種々の粘弾性特性を有する複数の懸濁媒質を準備する工程と、
当該媒質の粘弾性特性に応答して上記複数の懸濁媒質から上記第1の懸濁媒質を選択する工程と、
当該粒子をこの選択された懸濁媒質に懸濁させる工程と
を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、選択する工程は、当該粒子のサイズに応答して選択する工程を含む。
【0021】
例示的な実施形態では、懸濁液を準備する工程は、
当該粒子を試用懸濁媒質に懸濁させる工程と、
流れる懸濁液が100μmより小さい少なくとも1つの寸法を有するように、マイクロチャネルに沿ってこの懸濁液を流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、上記試用懸濁媒質の粘弾性特性を変更する工程と
を含む。
【0022】
任意に、上記方法は、
特定の流量で懸濁液を流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、前記流量を増大させる工程と
を含む。
【0023】
任意に、前記試用懸濁媒質の粘弾性特性を増大させる工程は、当該懸濁液に高分子量ポリマーを加える工程を含む。
【0024】
任意に、上記チャネル深さは100μm未満である。
【0025】
任意に、上記チャネルの幅は100μm未満である。
【0026】
任意に、上記チャネルは、各々100μmより小さい深さ、および幅を有する。
【0027】
いくつかの例示的な実施形態では、当該粒子は細胞である。
【0028】
いくつかの例示的な実施形態では、第2の懸濁媒質は血清を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の別の態様によれば、流れる粒子を集束するためのシステムであって、
壁およびその壁間の底部を有するチャネルと、
試料流体を含む流体源と、
上記流体源から注入口を経由して当該チャネルへと当該試料流体を誘導するように構成された流体誘導システムと
を含み、上記試料流体は液体に懸濁された粒子を含み、上記液体は、集束領域で当該粒子を集束させるために外部力場を加える必要性を緩和する粘弾性特性を有するシステム、もまた提供される。
【0030】
例示的な実施形態では、この集束領域は、チャネルの半分の高さにある。
【0031】
いくつかの例示的な実施形態によれば、このシステムは、
上記集束領域と感知伝達している尋問光線(interrogating ligh beam)を、上記注入口から下流の検査ゾーンに提供する光源と、
その尋問光線を使用してその検査ゾーンで当該粒子を検出するように構成された検出器と
を含む。
【0032】
任意に、当該粒子は細胞を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記チャネルは5〜100μmの少なくとも1つの断面寸法を有する。
【0034】
任意に、この少なくとも1つの断面寸法は、上記チャネルの底部に垂直な断面の寸法を含む。
【0035】
任意に、上記チャネルは底部および壁を有し、その壁間の距離は100μmよりも大きい。
【0036】
任意に、上記システムは各々異なる粘弾性特性を有する複数の流体と、異なるサイズの粒子を集束させるために各流体を使用するようにする使用説明とを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
サイズ範囲の表示を保有するパッケージ中に各々が別々に包装された複数の流体と、
この表示されたサイズ範囲の粒子を集束させるためにこの複数の流体の各々を使用するための使用説明と
を含むものが提供される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、液体の弾性を評価する方法であって、
単分散性の粒度分布を有する粒子を媒質に加えて懸濁液を得る工程と、
100μm以下の少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルの中でこの懸濁液を流す工程と、
その粒子が所定の距離に沿ってこのチャネルを流れた後にその粒子の空間分布を得る工程と、
この空間分布を分析してこの媒質の弾性を得る工程と
を含む方法に関する。
【0039】
任意に、分析する工程は、上記媒質の粘度に応答して分析する工程を含み、当該方法はこの媒質の粘度を得る工程を含む。
【0040】
任意に、媒質の粘度を得る工程は、媒質の粘度を測定する工程を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、得られた懸濁液中の粒子の体積分率は0.001%〜1%である。
【0042】
任意に、得られた懸濁液の体積分率は0.1%である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、粒子と結合剤との間の相互作用を評価する方法であって、
チャネルの底部の上の層で当該粒子を集束させる工程と、
この集束された粒子を、この底部に固定された結合剤の上に流す工程と
を含む方法もまた提供される。
【0044】
任意に、この粒子の少なくとも90%の中心が上記チャネルの半分の高さ未満の厚さを有する層にあるように、当該粒子は集束される。
【0045】
いくつかの実施形態では、当該粒子を集束させる工程は、本発明の実施形態に係る方法で集束させる工程を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、粒子と結合剤との間の相互作用を評価する工程は、上記の方法を複数回、各回で異なる深さのチャネルを用いて実施する。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、粒子と結合剤との相互作用を評価するための装置であって、
各々本発明の実施形態に係る複数のシステムを含み、かつこのシステムのうちの少なくとも1つが、当該結合剤が上記チャネルの底部の少なくとも一部分に固定されているチャネルを有する装置
に関する。
【0048】
任意に、上記複数のシステムは共通の流体源を有する。
【0049】
任意に、上記複数のシステムは共通の流体誘導システムを有する。
【0050】
任意に、上記装置は、他のシステムから独立してそのシステムの各々の中のチャネルへの流体の流量を制御するためのコントローラを有する。
【0051】
任意に、すべてのチャネルが同じ深さを有しているわけではない。
【0052】
任意に、このチャネルの各々は、他のすべてのものとは異なる深さを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、当該装置は、すべてのチャネルで同じ集束の品質で粒子を集束させるように構成されている。
【0054】
別段の定義がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施形態を実施または試験する際に、本願明細書に記載されるものと類似または等価な方法および材料を使用することができるが、例示的な方法および/または材料が以下に記載される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本願明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は例示のためのみのものであり、必ずしも限定することを意図してはいない。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態は、例としてのみのものであるが、添付の図面を参照して本願明細書に記載される。本願明細書で図面を詳細に具体的に参照するにあたり、特に示されるものは例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な考察の目的のためのものであることを強調しておく。この点で、図面をもとに解釈される説明によって、どのように本発明の実施形態を実施してよいかが当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の例示的な実施形態に係る粒子を集束させる方法でとられる操作のフローチャートである。
【図2A】本発明の例示的な実施形態に係る、流れる粒子を集束するためのシステムの略図である。
【図2B】本発明の実施形態に係るチャネルの略図である。
【図3】本発明の実施形態に係るキットの説明図である。
【図4A】本発明の実施形態に係るFACS機器の略図である。
【図4B】本発明の例示的な実施形態に係る媒質のレオロジー特性を測定する方法で採られる操作のフローチャートである。
【図4C】本発明の例示的な実施形態に係る粒子−結合剤相互作用を研究するための装置の略図である。
【図5A】グリセロール溶液中の直径8μmのポリスチレンミクロスフェアのPDF(粒子分布関数) 対 垂直方向の中心を外れた距離の実験値を示すグラフである。白抜き記号は実験結果である。
【図5B】ポリビニルピロリドン(PVP)溶液を用いた以外は図5Aに記載した実験と類似の実験で得られた実験結果を示すグラフである。白抜き記号は実験結果である。実線は実験結果へのガウシアン・フィッティング(Gaussian fit)である。
【図6】log−logプロットで、ポリマー溶液PVP(上向き三角)およびPAA(下向き三角)の剛性率、G’対 発振周波数ωを示すグラフである。挿入図は、ポリマー溶液のせん断粘度、η(正方形)、および複素粘度、|η*|(△、▽)、(上記のとおりの三角形)対それぞれ
【数1】
およびωを示す。
【図7】実験結果(白抜き記号)と理論的予測値(実線の曲線)との間の比較を示すグラフである:8μm粒子、PVP溶液(△);8μm粒子、PAA溶液( );5μm粒子、PAA溶液(◇)。PAA溶液に対応する理論曲線は調整可能なパラメータを有しない。
【図8A】PAA溶液に懸濁したPSミクロスフェアのPDF 対 垂直方向の中心を外れた位置を示すグラフである。この図は直径8μmの粒子についての結果である。白抜き記号は実験結果である。実線は、見やすさのためのものである。
【図8B】PAA溶液に懸濁したPSミクロスフェアのPDF 対 垂直方向の中心を外れた位置を示すグラフである。直径5μmの粒子についての結果を示す。白抜き記号は実験結果である。実線は、見やすさのためのものである。
【図9A】本発明の実施形態に係る所定のフローシステムにおいて所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する方法900で採られるべき操作のフローチャートである。
【図9B】本発明の実施形態に係る所定のフローシステムにおいて所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する簡素化された方法900’で採られるべき操作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(概説)
本発明は、そのいくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、より具体的には蛍光標識細胞分取(FACS)(これに限られない)に関する。
【0058】
いくつかの実施形態は、微小流体のフローを使用する粒子集束のための方法または装置を提供する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、微小流体とは一般に考えられないチャネルを用いて実施されてもよい。以下の式がその値を維持する限り、任意の所定の寸法のチャネルを用いて注入口から距離x/dのところで同じ集束の品質を得ることができる。
【数2】
式中、aは粒子の半径であり、dは当該チャネルの最小寸法の半分であり、
【数3】
は流量であり、βおよびnは懸濁媒質の粘弾性特性を特徴付ける。上記のものが与えられると、スケールアップの可能性についてのさらなる詳細は、「理論的誘導」の見出しのところで提示される理論的分析から明らかである。
【0060】
例示的な実施形態では、集束は、当該粒子を集束させるために当該粒子に外部場を加える必要性を緩和するような粘弾性特性を有する懸濁媒質中で粒子を流す工程を含む。
【0061】
いくつかの例示的な実施形態では、この粒子は細胞、例えば、血液細胞、細菌、および/または癌性細胞を含む。任意に、この粒子は、高分子、小胞、リガンド、遮蔽された(shaded)受容体、抗原および抗体などの可溶性因子に特異的な抗体で覆われたマイクロビーズを含む。そうは言うものの、「粒子」という用語は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
【0062】
いくつかの例示的な実施形態では、当該粒子は懸濁媒質の中でチャネル内部を流れ、そのチャネルの特定の部分(本願明細書において「集束領域」と呼ばれる)に集中する。任意に、この集束領域は、そのチャネルの中心にあり、例えば、チャネルの底部の中心で、その底部から垂直に延在する体積の中にある。
【0063】
用語「チャネル」は、本願明細書においては、100μmより小さい少なくとも1つの寸法および100μmよりはるかに長い長さ、例えば1mm、10mm、50mm、100mm、1000mm、または任意の中間の長さまたはより長い長さを有する任意の構造を表すために使用されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、チャネルは、固形物の上面にある溝である。いくつかの実施形態では、チャネルはチューブである。チャネルの長さに垂直なチャネルの断面は、任意に長方形、正方形、丸い形、または球状である。
【0064】
長方形または正方形の断面を有するチャネルは、任意に、リソグラフィー、例えば、ソフトリソグラフィーまたはフォトリソグラフィーを使用して得られる。この種の製造方法によって、マイクロチャネルを有する物体、例えば、ラボチップ(lab−on−chip)の容易かつ正確な大量生産が可能になる。
【0065】
チャネルが同様に長くかつ粒子が同様により大きい場合には、集束の品質は、任意に、より大きい最小寸法のチャネルを用いて得られる。チャネルが100μmより大きい最小寸法を有し、かつ粒子が約1〜10μmである場合、集束の品質は低下する。
【0066】
チャネルの中心での集束は、チャネルの他の領域での集束よりも、いくつかの点で有利である場合がある。例えば、チャネルの中心では、中心を外れたところよりも流速は大きい。それゆえ、チャネルの中心に集束される粒子はより速く流れ、より高い処理量で扱われ得る。別の例では、処理された粒子が小さいブラウン粒子、例えば、1μmより小さいブラウン粒子である場合、それらは、流れの方向に垂直に拡散する傾向があり、せん断によって横の拡散性が高められる(テイラー拡散(Taylor dispersion)として当該技術分野で公知の効果)。この傾向は、せん断速度が最小であるチャネルの中心で最小であり、それゆえ、横のせん断で増大された拡散に起因する試料幅の広がりを最小にして流れの方向に沿った粒子のより速い動きが実現できる。別の例では、粒子がチャネルの壁に吸着する傾向を有する場合、当該粒子を中心で集束させることでそれらと壁との相互作用が最小にされ、吸着/付着現象が減少される。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、この集束は水平方向であり、つまり、当該粒子は、チャネルの深さの半分に近い限られた深さの水平領域で集束される。例えば、粒子が、チャネルの上に配置された光学的装置を用いて光学的に分析されるべきである場合には、水平方向の集束は有利である場合がある。かかる場合には、水平方向の集束は、すべての粒子がその光学的分析器の焦点の範囲内にあるようにしてもよく、これにより、粒子が垂直方向に集束される場合に可能である分析よりも速い粒子分析が可能になる。本発明のいくつかの実施形態は、実際的には重力とは無関係である。そうは言うものの、いくつかの実施形態では粒子は光線を使用して分析されるため、用語「水平方向の」および「垂直方向の」は光線との整列を表すと解釈することが好都合である場合があり、例えば、光線は垂直方向に沿って到達すると定義される。
【0068】
水平方向の集束は、チャネルの垂直方向の寸法(つまり、そのチャネルの高さ)が100μm以下である場合に、任意に得られる。
【0069】
いくつかの実施形態では、この集束は垂直方向のものである、つまり、当該粒子はチャネルの幅の約半分のところでチャネルの底部に垂直な集束領域に集中する。垂直方向の集束は、チャネルの水平方向の寸法(つまり、チャネルの幅)が約100μm以下である場合に、任意に得られる。
【0070】
いくつかの実施形態では、粒子がチャネルの底部および上壁から、およびまたチャネルの壁から離れて流れ、チャネルの壁のいずれかに接触するほどには延在しない体積に集中するという意味で、三次元的な(3−D)集束が起こる。二次元的な集束は、高さおよび幅がともに約100μm以下であるチャネルを用いて任意に得られる。
【0071】
任意に、三次元的な集束は、寸法のうちの1つが100μm以下であるチャネルを用いて得られ、他の寸法では、それ自体は必ずしも本発明の実施形態に係るものではない他の方法、例えば、水力学の集束として公知のシース流集束によって、集束は得られる。
【0072】
任意に、シース流(sheath flow)集束または他の公知の集束方法は、粘弾性集束と組み合わせて使用される。
【0073】
いくつかの実施形態では、集束される粒子は、その粒子の実質的な部分の中心がその粒子の典型的な半径とほぼ同じ半径を有する円柱の内にあるように、任意に1つずつ並べられる。いくつかの実施形態では、かかる集束は粒子の長手方向の分散を大きく減少させ、より高いスループットをもたらす。向上したスループットは、圧力で駆動される流れの速度が最大であると予想される中心に当該粒子が集束するためである可能性が高い。
【0074】
任意に、この実質的な部分は当該粒子の90%以上、任意に95%より多く、任意に99%より多くである。
【0075】
任意に、上記円柱の半径は当該粒子の典型的な半径の120%未満である。
【0076】
非球形の粒子の場合には、当該粒子の典型的なサイズは当該粒子の最小の寸法に対応する。例えば、直径1μmおよび高さ10μmを有する基本構造(base)をもつ円柱状の粒子は、1μm直径の球状の粒子と同様に集束する。
【0077】
本発明の例示的な実施形態では、当該粒子を集束させる方法は、100μmより小さい少なくとも1つの寸法を有する長いチャネルの中で粒子の懸濁液を流す工程を含む。
【0078】
任意に、実質的な集束は、比較的短い距離に沿って当該粒子を流した後に発生する。例えば、当該粒子の半径よりも20%大きい半径を有する円柱内に当該粒子の90%を集束させることを、10cm以下にだけ沿って当該粒子を流した後に、例えば5cm、2cm、または1cm後に発生させることができる。
【0079】
例示的な実施形態では、当該懸濁液は、当該粒子および懸濁媒質を含み、この懸濁媒質は、所望の集束をもたらし、かつ、集束を得るために、流れている懸濁液に外部場を加える必要性を軽減する粘弾性特性を有するように選択および/または操作される。
【0080】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、この懸濁媒質は、チャネル内部のどこでも同じ密度を有する。任意に、集束のために密度勾配は必要とはされない。
【0081】
この懸濁媒質の粘弾性特性を操作することは、任意に、懸濁液の粘弾性特性を改変する改変剤をこの懸濁媒質に加えることを含む。任意に、この改変剤は、高分子量ポリマー、例えば、約50〜約1000キロダルトンの分子量を有するポリマーである。好ましくは、この改変剤は、分散媒質に可溶である量で加えられる。任意に、この改変剤は生体適合性である。この選択肢は、粒子が生体細胞またはマイクロビーズなどの生物材料を含む場合に有利である場合がある。
【0082】
種々の実施形態でいくつかの改変剤の例としては、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリスクロース(Ficoll(商標))、ポリグルコース(デキストラン)、メチルセルロース、およびキサンタンガムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
集束に影響を及ぼし得るいくつかの粘弾性特性としては、粘度、弾性、およびこの懸濁媒質がニュートン挙動を示さない場合には、媒質のせん断減粘(shear thinning)が挙げられる。
【0084】
粘度は、任意にパスカル−秒またはポアズ単位で測定される。一般に、より高粘度は効率的がより悪い集束をもたらす。
【0085】
弾性は、任意に、通常N1と表される第一法線応力差によって規定される。N1は、貯蔵弾性率(storage or elasticity modulus)、G’に関連し、この貯蔵弾性率G’は市販のレオメーターを使用して実験的に測定することができる。一般に、より高い弾性は、より効率的な集束をもたらす。
【0086】
せん断減粘(sheer thinning)は、せん断速度の変化に応答した粘度の変化である。一般に、より高いせん断減粘(sheer thinning)はより効率的な集束をもたらす。
【0087】
集束を得るために外部の力場を使用する必要性を軽減するかかる粘弾性特性を有する懸濁媒質を用いた粒子集束は、本願明細書において「粘弾性集束」と呼ばれる。
【0088】
いくつかの実施形態では、この集束はチューブ内部の懸濁液の流量によって影響される。一般に、より高い流量はより効率的な集束をもたらす。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、この集束は流量にはほとんど影響されない。後者の場合、流量を正確に制御する必要性は軽減され、流量非依存的な集束を利用するシステムが、流量依存的な集束を使用する実施形態よりも、より簡便かつより堅牢になり得る。例えば流量は、流量非依存的な実施形態でははるかに不正確であってもよい。流量非依存的な集束を得るための条件は、図9Aに関しておよび下記の見出し「理論的誘導」で論じられている。
【0089】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、以下の説明で示されかつ/または図面および/もしくは実施例に例証される構成要素の構成および配置ならびに/または方法の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるし、または種々の方法で実行または実施することができる。
【0090】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明の例示的な実施形態に係る粒子を集束する方法(2)でとられる操作のフローチャートである。
【0091】
操作4は、懸濁媒質の中の当該粒子の懸濁液を準備する工程を含む。この懸濁媒質は、懸濁液が適切な寸法のチャネルの中を流れるとき、その粒子のうちの少なくともいくつかは、そのチャネル内の集束領域に向かうような粘弾性特性を有する。
【0092】
いくつかの実施形態では、このチャネルの長さに垂直な集束領域の断面は、そのチャネルの幅に実質的に等しい幅、およびそのチャネルの深さよりもはるかに小さい長さを有する。これらの場合、本願明細書では、集束は「水平方向の」と呼ばれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、そのチャネルの長さに垂直な集束領域の断面は、そのチャネルの深さに実質的に等しい深さ、およびそのチャネルの幅よりもはるかに小さい幅を有する。これらの場合、本願明細書では、集束は「垂直方向の」と呼ばれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、そのチャネルの長さに垂直な集束領域の断面は、チャネルの深さよりも実質的に小さい高さ、およびそのチャネルの幅よりもはるかに小さい幅を有する。これらの場合、本願明細書では、集束は3−Dと呼ばれる。
【0095】
本発明の例示的な実施形態では、チャネルの深さは100μmより小さく、より浅いチャネルは(他の点では同様の条件下で)より早い集束を可能にする。このチャネルの深さを限定する2つの要因は、あまりに小さいチャネルは詰まりやすいという傾向、および小さいチャネルに流体を流すためにより高い注入口圧力が必要とされることである。
【0096】
任意に、チャネルは100μmより小さい幅をも有し(この場合、2−D集束が得られる)、この粒子はチャネルの底部および上面壁から離れて、およびチャネルの垂直方向の壁から離れて集束する。3−D集束では、集束領域は、任意にチャネルの断面に類似しているがそれより小さい断面を有する。任意に、3−D集束領域はそのチャネルと同軸である。
【0097】
操作6は、チャネルに沿って当該懸濁液を流す工程を含む。
【0098】
いくつかの例示的な実施形態では、方法2は、粒子を1つずつ並べることをもたらし、これによってフローサイトメーターの中でそれらを検査することが可能になる。
【0099】
いくつかの実施形態では、この懸濁液は種々のサイズの粒子を含み、懸濁液体の粘弾性特性は、そのチャネル中で当該懸濁液を流す工程が所定のサイズの粒子をその集束領域に向かって選択的に導くような粘弾性特性である。例えば、下記の図5Aおよび図5Bに関連して論じられるいくつかの実施形態では、直径8μmの粒子の95〜99%は集束領域に導かれ、他方、直径5μmの粒子の35〜40%だけが同じ集束領域に導かれる。
【0100】
(例示的な懸濁媒質の準備方法)
いくつかの実施形態では、粒子は乾燥しており、媒質粘弾性特性に従って選択される懸濁媒質に懸濁される。
【0101】
いくつかの実施形態では、粒子は、不適切な媒質に懸濁されて、準備される。
【0102】
任意に、準備された懸濁媒質の不適切な粘弾性特性の効果を制御または排除するために、適切な懸濁媒質が過剰に加えられる。
【0103】
あるいはまたは加えて、この懸濁媒質は、適切な粘弾性特性を有する別の懸濁媒質と交換される。
【0104】
例えば、多くの実施形態では、血液が処理され、分取しようとする粒子は血清に懸濁されて提供される血液細胞である。
【0105】
いくつかの実施形態では、生理食塩水がこの血液に加えられる。任意に、加えられた血清の量は血液の量の約15倍、20倍、または25倍である。
【0106】
いくつかの実施形態では、この血清は生理食塩水と交換される。任意に、かかる交換は、その血液試料を遠心分離する工程と、血漿を抽出する工程と、抽出された血漿を生理食塩水に懸濁させる工程とを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、この血清を置き換えるために使用される生理食塩水および/またはその血清に加えられる生理食塩水は上記のとおりの改変剤を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、複数の任意の懸濁媒質が準備され、そのうちの1つは、懸濁媒質の粘弾性特性および集束または分取されるべき粒子の特性、例えば、その粒子のサイズに従って選択される。
【0109】
任意に、この懸濁媒質は、粒子のサイズおよび変形能に応じて選択される。任意に、変形能は有効半径を定義するために使用され、この懸濁媒質は定義された有効半径に応じて選択される。
【0110】
任意に、異なる懸濁媒質が、異なるサイズおよび変形能をもつ粒子のために準備される。
【0111】
いくつかの実施形態では、試用懸濁媒質がまず使用され、その粒子はその試用懸濁媒質の中で流路に沿ってマイクロチャネルを流され、集束の品質が評価される。集束の品質は、所定の距離を所定の流量でチャネルを流れた後に所定の寸法の集束領域に集束する粒子の割合(%)として任意に定義される。
【0112】
この集束が不十分である場合、当該懸濁媒質は任意に手直しされる。任意に、この懸濁媒質は、懸濁媒質の粘弾性特性を改変する改変剤を懸濁媒質に加えることによって手直しされる。任意に、この改変剤はポリアクリルアミド(PAA)などの高分子量ポリマーを含む。このポリアクリルアミド(PAA)は、それが溶解している液体の弾性を高めることが知られている。任意にまたは加えて、この改変剤は、高分子量ポリマー、例えばグリセロールを含む。このグリセロールはそれが溶解している液体の粘度を変化させることが知られている。任意に、1つのポリマーは粘度および弾性の両方を改変する。任意に、弾性を改変するために1以上のポリマーが使用され、粘度を改変するために1以上のポリマーが使用される。
【0113】
本発明の例示的な実施形態では、集束の品質は、集束される粒子の95%の中心が位置する最も薄い層の幅に基づいて評価される。任意に、その層が薄いほど、集束は良好である。任意に、集束の品質は、集束される粒子の画分に基づいて評価され、その中心は所定の厚さの層内に存在する。
【0114】
加えてまたはあるいは、集束の品質は、ある程度まで集束するために粒子がそのチャネルの中を移動した流路の長さに基づき評価される。例えば、1つの実施形態では、当該粒子の95%が注入口から20mmのところで2μmの厚みの層に集中する場合は、当該粒子の95%が注入口から50mmのところで2μmの厚みの層に集中する場合よりも、集束は良好であると考えられる。
【0115】
(例示的なシステム)
図2Aは、本発明の例示的な実施形態に係る、流れる粒子を集束するためのシステム100の略図である。この図は、流体誘導システム145を介して流体源125と流体連通しているチャネル(105)を示す。流体誘導システム145は、検査ゾーン128に向かって流体源125から入力部127を通ってチャネル105へと試料流体を導くために備えられる。任意に、流体誘導システム145は、シリンジポンプを備え、そのピストンは一定かつ制御された速度で押される。市販の適切な流体誘導システムの例は、ケーディー・サイエンティフィック社(KD Scientific Inc.)(米国)のKDS 210 Scientificである。
【0116】
図2Bはチャネル105の略図である。この図は、チャネル105が壁110および115、底部120および上面壁122を有するとして示す。
【0117】
試料流体130は懸濁媒質に懸濁された粒子135を含む。この懸濁媒質は、チャネル105の部分140での粒子130の集束を容易にし、この集束を得るために外部場を加える必要性を軽減する粘弾性特性を有する。そうは言うものの、いくつかの実施形態では、任意に集束を強めるため、あるいはまたは加えて、さらなる方向に沿って当該粒子を収束するために、当該技術分野で公知のとおり外部場が加えられる。
【0118】
動作中は、流体130は流体誘導システム145によってチャネル105の中へと誘導され、粒子135はチャネル105の中に囲まれた集束領域140に導かれる。
【0119】
チャネル105は、底部120に垂直な高さh、および壁110と115との間の幅wを有するマイクロチャネルである。高さhおよび幅wのうちの少なくとも1つは100μmより小さく、任意に約5μm〜約100μm、例えば10、20、50、80、または100μmである。任意に、壁110と115との間の距離wもまた100μmより小さい。任意に、hまたはwのうちの1つは100μmより大きい。1つの例示的な実施形態では、wは1mmであり、hは50μmである。
【0120】
任意に、システム100はまた図3に図示されるキット200を含む。キット200は複数のパッケージ205(図示された実施形態では瓶である)を含み、各パッケージは、所定のサイズの粒子を集束させるために適した粘弾性特性を有する懸濁媒質210を含む。各瓶205は、システム100を用いて集束するためのその瓶の中に懸濁されるべき粒子のサイズを示すラベル215を有する。任意に、このラベルは異なる流量に対して異なる粒径を示す。任意に、このラベルは異なる寸法のシステムに対する異なる粒径を示す。
【0121】
任意に、キット200(および/またはシステム100)はまた、どの懸濁媒質を用いてどの粒子が集束されるべきであるのかに関する使用説明を含む。任意に、その表示は粒径について触れる。加えてまたはあるいは、その表示は、特定のタイプの細胞、例えば赤血球細胞、白血球、癌性細胞、および/または細菌について触れる。
【0122】
(例示的な懸濁媒質)
本発明のいくつかの実施形態では、この懸濁媒質は試行錯誤法で選択されまたは選ばれる。
【0123】
例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の粘弾性特性は、それに360キロダルトンのPVPを加えることによって改変されてもよい。任意に、PVPは、約2%、5%、8%の分散媒質、または任意の中間の濃度を形成するために加えられる。別の例では、PBSの粘弾性特性は、同様の量の70キロダルトンを超える分子量を有するデキストランを加えることによって改変される。加えてまたはあるいは5〜100ppmのPAA、および/またはメチルセルロースが生理食塩水に加えられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、試行錯誤法を導くために理論解析が使用される。例えば、特定のサイズの粒子を所定のチャネルの中で集束させるために必要とされる粘弾性特性が算出され、類似の粘弾性特性を有する媒質が試用懸濁媒質として使用され、必要に応じて上で説明されたように改変される。
【0125】
(例示的な応用例)
(例示的なFACS機器)
図4Aは本発明の実施形態に係るシステムを利用するFACS機器400の略図である。機器400は、任意に上記の種類のものであって図2Aおよび図2Bに示されている粒子集束システム100を含む。流体源の中の流体は、適切な粘弾性特性の懸濁媒質の中に懸濁された粒子を含む。システム100は、粒子がチャネル105を通って検査ゾーン405(図1Aの中の128)へと流れた後に、流体源からその粒子を出力する。
【0126】
機器400はまた、システム100から検査ゾーンへと到達した粒子を照射するために検査ゾーン405上に光線を向ける光源410も含む。任意に、システム100によってもたらされる集束は、当該粒子が1つずつ検査ゾーンに到達するという集束である。各粒子は、光源410から到達する光と、任意にその光を散乱することによって、相互作用する。加えてまたはあるいは、その粒子の一部は蛍光をも発する。
【0127】
任意に、光源410はチャネル105の上から粒子を照射する。焦点ゾーンがチャネルの高さの中間までまたは中間において水平方向(すなわち底部120に平行)である実施形態では、この光源は、当該粒子が集束する層に焦点を合わせるように微調整され、チャネル105の幅全体にわたって分散しかつそのチャネルの中間の高さに集められた粒子からの散乱光および/または蛍光を受け取ることに関与している。チャネル105の上側。散乱されたおよび/または発せられた光は検出器(415)によって検出され、コンピュータ420によって分析される。
【0128】
任意に、コンピュータ420は、各粒子を、分析結果に応じて複数の行き先430のうちの1つへと導くスイッチ425を制御する。例えば、より強い蛍光を有する粒子は、ある1つの行き先へと導かれ、より弱い蛍光の粒子を別の行き先へと導かれる。
【0129】
(例示的なレオロジー測定)
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、任意に前例のない精度まで、媒質のレオロジー特性を測定することに関する。この方法は、媒質の弾性とその媒質を用いて実現可能な集束の程度との間の関係に基づく。
【0130】
図4Bは、本発明の例示的な実施形態に係る媒質のレオロジー特性を測定する方法500でとられる操作のフローチャートである。
【0131】
502で、既知のサイズおよびシャープな粒度分布の粒子が媒質に懸濁される。任意に、粒子の量は、得られる懸濁液の体積濃度(すなわち、粒子で占められる当該懸濁液の体積分率)が約0.01%〜1%、例えば、0.1%であるような量である。
【0132】
504で、502で得られた懸濁液はマイクロチャネルに流される。
【0133】
506で、例えば、「理論的誘導」の見出しの節で後述されるようにして、注入口からいくらかの距離でのその粒子の空間分布が測定される。
【0134】
508で、懸濁媒質のレオロジー特性が、「理論的誘導」の見出しの節で提供される方程式を使用して測定された空間分布から導き出される。
【0135】
任意に、この分析は媒質の粘度に関するデータを使用する。任意に、当該方法はかかるデータを測定する工程を含む。
【0136】
任意に、方法500は、±10パスカルの精度を提供する市販のレオメーターと比べて、±0.01〜±0.001パスカルのオーダーの精度での媒質の弾性の測定を可能にする。
【0137】
(例示的な結合アッセイ)
多くの種類の粒子、例えば、細胞および高分子は、表面に付着しようとする傾向を示す。この傾向は、時折、粒子のアッセイを解析するために使用されることがある。例えば、例示的な実施形態では、モノクローナル抗体が固定された抗原に結合しようとする傾向、または受容体がチャネルの内表面に固定されたリガンドに結合しようとする傾向が研究される。別の例示的な実施形態では、白血球が固定されたリガンドに結合しようとする傾向(インビトロローリングアッセイ(in−vitro rolling assay)として当該技術分野で公知)が研究される。
【0138】
例示的な実施形態では、粒子は、懸濁媒質中で、当該チャネルの底部の上方の所定の高さで薄層に集束され、この集束される粒子がこの底部に固定された結合剤に結合する能力が研究される。
【0139】
後者の場合、集束は、自由に懸濁した粒子とチャネル底部に固定された結合剤との間の有効相互作用範囲の微調整のための特に役立つツールとしての役割を果たしてもよい。かかる微調整は、そのアッセイの空間的分解能を改善する上で有用であり得る。
【0140】
任意に、このチャネルは、注入口近くの、底部に結合剤が固定されていない第1の部分、および第1の部分の下流の、固定された結合剤を有する第2の部分を有する。
【0141】
任意に、第1の部分は、その粒子の大部分、例えば95%がその中心を、チャネルの高さよりはるかに薄い、例えばその高さの5%である層に存在させることができるのに十分長い。
【0142】
任意に、第2の部分は第1の部分と同じ高さであり、固定された結合剤に引き付けられない粒子は、それが第1の部分において動くのと実質的に同じように第2の部分において動く。任意に、第2の部分は、当該結合剤に結合し得るすべての粒子の大部分、例えば95%を結合するのに十分長く、結合しない粒子のみが第2の部分から出る。
【0143】
任意に、複数のチャネルが使用され、各チャネルは異なる高さを有し、そのため、底部に固定された結合剤と半分の高さにある薄層で集束された粒子との間の相互作用距離は、結合剤への粒子の付着が第1の閾値未満である最小のチャネル高さ、および結合剤への粒子の付着が第2の閾値より高い最大のチャネル高さに基づく。例えば、この相互作用距離は、当該粒子の5%未満が吸着する最小の高さと、その粒子の少なくとも95%が吸着する最大高さとの間の中点として定義されてもよい。
【0144】
任意に、結合剤と粒子との間の相互作用距離は、第2の部分の最初から特定の距離のところでの結合に基づき評価される。
【0145】
任意に、すべてのチャネルが同じ長さの第1の部分を有する。任意に、異なるチャネルは、すべてのチャネルにおいて同じ程度まで粒子を集束させるように設計された第1の部分を有する。任意に、これは、より長い第1の部分がより深いチャネルに関連する異なる長さの第1の部分を用いて成し遂げられる。任意にまたは加えて、すべて同じ集束力の第1の部分を有することは、流体を異なるチャネルへと誘導して、より高い流れの流体をより深いチャネルに誘導する流れ誘導システムを微調整することによって成し遂げられる。
【0146】
図4Cは、本発明の例示的な実施形態に係る粒子−結合剤相互作用を研究するための装置の略図である。
【0147】
装置600は、各々がタンク610から試料流体を受ける複数のチャネル605を備える。任意に、各チャネル105は、それ自身の流れ誘導システム645を有し、この流れ誘導システム645は、流体が他のチャネルのいずれかへと誘導される流量からは独立した流量で、試料流体をそれと関連するチャネルへと導くために任意に制御可能である。
【0148】
図示された実施形態では、各チャネル605は第1の部分620を有する。任意に、各流れ誘導システムは、第1の部分の終点で、その粒子の約90%の中心がチャネルの高さの中央の薄層を占めるように作動される。
【0149】
結合剤がチャネルの底部に固定された第2の部分625もまた図示された実施形態に示されている。各チャネルより上で、第2の部分の始点後いくらかの距離で、この地点に到達する粒子の数を評価するために、カメラの下のチャネル中の粒子を撮像するカメラ630が示されている。
【0150】
任意に、結合量は、第2の部分に入る粒子の数と第2の部分を離れる粒子の数との間の比に基づいて、評価される。
【0151】
(理論的誘導)
以下では、所定のサイズの粒子を集束させるのに適した懸濁媒質を選択する際に当業者を手助けするための理論が提示され、その理論および本発明のいくつかの実施形態の実行可能性を支持するために実験結果が報告される。
【0152】
本発明の一態様は、流れ抜ける(flow−through)構造における希薄な懸濁液の中の粒子または細胞の受動的かつ調整可能な集束のための方法論に関する。この方法論は、粒子を壁から離してチャネルの中央面に向かって制御可能な様式で駆動するために、希薄なポリマー溶液の圧力駆動による流れにおいて生じる固有の非線形の弾力がどのように活用され得るかを実証する微小流体の実験の結果によって支持される。本発明者らは、基礎となる移動機構を記述するための分析モデルの結果を提示し、横方向の粒子分布の微調整のための方法を提案する。最後に、理論的予測値を立証するために設計された実験の結果が提供され、十分に考察される。
【0153】
本発明者らの実験では、参照により本願明細書に援用したものとするA.Branskyら、Biosens.Bioelectron.22、165(2006);Microvasc.Res.73、7(2007)、(以降、Branskyら2007)に記載されるフォトリソグラフィーを使用して顕微鏡用カバーガラスに製作した断面h×w=45×103μm2の浅い微小流体用チャネルを使用した。シリンジポンプ(KDS 210、ケーディー・サイエンティフィック)を使用して、種々の一定流量で(0.1〜1cm/sの典型的な速度で)マイクロチャネル注入口を通してポリスチレン(PS)ミクロスフェア(デューク・サイエンティフィック(Duke Scientific))の希薄に(0.1体積%未満)分散した懸濁液を注入した。高速CCDカメラ(CPL MS100O カナディアン・フォトニック・ラボ(Canadian Photonic Labs))を正立顕微鏡(ニコン(Nikon) 80i)に取り付けた。種々の深さで、注入口から20mm下流で、マイクロチャネルの中央を(側壁から距離w/2のところを)流れるミクロスフェアの膜を、Barnskyら、2007によって記載されている特注設計の画像処理ソフトウェアによるさらなる解析のために直接PCに記録した。このアルゴリズムは、粒子を数えて、深さ約1μmの垂直方向の薄層におけるそれら粒子の速度を算出することができる。
【0154】
本発明者らは、特定深さの焦点に含まれる粒子の割合を、その流れ方向の速度で除算して1に正規化したものとして、粒子分布関数(PDF)を定義する。この定義によれば、粒子が周囲の流れの流線に追従するのであれば、PDFは一定かつ流量非依存的でなければならない。本発明者らは、まず、脱イオン水の中に84体積%のグリセロールを含む粘性の高いニュートン挙動を示す液体に懸濁した直径8μmのPSミクロスフェアを用いて参照実験を行った。溶液のせん断粘度を歪み制御されたレオメーター(ARES、レオメトリック・サイエンティフィック(Rheometric Scientific))を使用して測定したところ、25℃で0.063Pa・sであることが判明した。図5aは、流量を変えた際の実験によるPDF 対 中心を外れた垂直方向の距離を表す。各点は、数百もの個々の測定値に基づく平均値に対応する。粒子分布は流量とともには変化せず、ほとんど一定であることが容易に分かる。本発明者らは、8重量% ポリビニルピロリドン(PVP、MW 約3.6×105;シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))水溶液中に懸濁したPSミクロスフェアを用いてこの実験を繰り返し、得られたPDFを図5bにプロットした。集束は流量の増加とともに高まりながら、この粒子は壁から離れて移動して中央平面に集中する傾向があることが容易に分かる。外部場がない場合の粒子集束(変形により誘導される移動、慣性効果、およびせん断によって誘導される移動)に対するこれまでに示唆された説明は、図5aおよび図5bに示される結果を説明するためには、すべて不十分であるように思われる。明らかに、変形により誘導される移動は剛性の高いミクロスフェアには当てはまらず、慣性効果は両方の溶液で同様の結果をもたらすはずであり、他方、せん断によって誘導される移動は濃厚な懸濁液においてのみ観察される。それゆえ、新規な説明が提示されるべきである。
【0155】
本発明者らは、次に、横方向の粒子の移動が、圧縮による非線形的な弾性力の不均衡によって駆動されることを実証することにする。せん断が加わった流れにおけるこれらの力は、第一法線応力差および第二法線応力差、それぞれ
【数4】
および
【数5】
によって記述される(式中、σiiは当該応力テンソルの対角成分を表し、xは流れの方向を表し、yは速度勾配の方向を表し、zは速度方向である)。二次粘弾性流体の解析的に扱い易い事例に対する平面ポアズイユ流における横方向の粒子の移動の厳密な解析から、N1>0、N2<0の両方とも、粒子をチャネルの中心に向かって駆動するように作用することが示された(B.P.HoおよびL.G.Leal、J.Fluid Mech.76、783(1976)を参照)。この解析をできるだけ一般的に維持するために、本発明者らはスケーリング議論に基づく簡単な理論を構築する。本発明者らはN2の寄与を無視し、当該粒子にもたらされる横の弾性力がその粒子のサイズにわたるN1の変分に比例し、Fe〜a3(∂N1/∂y)かつストークス抵抗、Fη=6πηaVによって相殺されると仮定した。ここで、Vは横方向の移動の速度であり、aはその粒子の半径であり、−d≦y≦d、dはチャネルの深さの半分であり、ηは、一般には局所的なせん断速度
【数6】
の関数である動粘性係数である。FeおよびFηを等しくすることで、横方向の移動速度についての式
【数7】
を得る。
【数8】
のアスペクト比ついては、本発明者らは、この流れを平面ポアズイユプロファイルによって近似する。ベキ乗則流体については、
【数9】
解は
【数10】
によって与えられる。式中、
【数11】
は平均速度である。ベキ乗則挙動、
【数12】
は高分子量ポリマーの希薄溶液について予想される[16]。従って、N1および
【数13】
を(1)代入し、
【数14】
に到る。式中、
【数15】
は[L/T]n−βの次元を有し、λ=1+β−nであり、ζ=y/dはスケール化された横方向の座標(scaled transverse coordinate)であり、Cはこのモデルを実験データにフィットさせることによって後に決定されるべき定数である。
【0156】
あるいは、(2)における深さ平均による横方向の速度は、容易に
【数16】
であると見出すことができる。式中、Wi=N1/τは平均のワイゼンベルグ数であり、弾性応力、N1、と粘性応力、
【数17】
との比に等しく、両方とも平均せん断速度、
【数18】
で決定され、定数
【数19】
である。
【0157】
本発明者らはさらにブラウン揺動力、粒子間および壁間の水力学的相互作用を無視し、かつ当該粒子の流れ方向の速度Uはその中心では無かく乱流の速度、uにおよそ等しい[18]と仮定する。それゆえ、当該粒子の軌跡は以下の方程式の解である。
【数20】
式中、ξ=x/dは、スケール化された軸方向の座標(scaled axial coordinate)である。方程式(3)は容易に積分することができ、陰解法が得られる。
【数21】
当該チャネル断面にわたる粒子分布は最初は均一であると仮定すると、「粘弾性集束」に起因する入口からのその距離での当該粒子の95%を含む中心コアの半値幅、y95を見積もることができる。そのコアの包絡線は軌跡であるため、図1(b)にある実験結果と(3)の解に基づく理論的モデルとを比較することができる。ARESレオメーターを用いて25℃でPVP溶液のせん断粘度を測定し、それが約0.064Pa・sに等しいことが判明した。粘度は0.1〜250s−1のせん断速度の範囲にわたって3%未満だけしか減少しないため(図6の挿入図を参照)観察されたせん断減粘はわずかであり、それゆえ、本発明者らはPVP溶液についてはn=1を使用する。
【0158】
このPVP溶液についてのN1の大きさは小さすぎて、定常せん断試験で信頼性高く測定することはできない。その代わり、本発明者らは、振動数、ωの関数としての動的剛性(「貯蔵弾性率」)、G、の小振幅の振動せん断測定を実施した(図6を参照)。低い値の
【数22】
およびωにおいてG’とN1との間で成立する粘度測定の関係
【数23】
を使用して、
【数24】
の値を見積もることができる。図6の挿入図で確認されるように、類似のCox−Merzの関係が、せん断粘度、
【数25】
と複素粘度の絶対値
【数26】
との間に成立する。
【0159】
レオロジー特性およびチャネルの寸法が与えられると、αを直接算出することができ、そのあと(3)の解を実験データにフィットさせることによって増倍定数Cが見出され得る。y95(μm)に対応する値を、種々の流量について図5bに示したデータから算出し、白抜き三角形として図7に提示する。図7の真ん中の曲線は実験データへの理論的モデルの最良のフィットに対応し、これら2つのものの間には優れた一致がある。最適のフィットから増倍定数
【数27】
が得られる。
【0160】
定常状態でのブラウン揺動力に起因するスケール化されたPDFの幅、2ζBは、条件、Pe=aV/D0=1から見積もることができる。式中、Vは(2)によって与えられ、D0は単一の粒子のストークス−アインシュタインの拡散率であり、Peはペクレ数である。α=0.5μmおよび
【数28】
の典型的な平均速度について、
【数29】
が得られ、このため、μmサイズの粒子についてはブラウン輸送はほぼ無視することができる。
【0161】
式(2)から
【数30】
が得られる。ここで、集束の強さはα〜Aa2/ηによって制御される。せん断減粘(すなわちn<1)は集束を強化し得る。せん断減粘およびニュートン液体(同じ弾性およびゼロせん断速度粘度を有する)の深さ方向に平均化された移動速度の比は、
【数31】
と簡単になり、
【数32】
に対しては、この式はn<1については1より大きい。従って、粒径を変えかつ懸濁媒質の弾性および/または粘度を変更することによって、下流の特定の距離での粒子分布の幅を制御することができる。例えば、N1指数、λ〜lの場合、その粒子分布は流量に敏感でないと予想される。この理論的予測値の妥当性を検証するために、本発明者らは、45ppm PAA(Separan AP30;ダウケミカル社(Dow Chemical Co.))とともに76重量% グリセロールの溶媒を使用して調製した高分子量ポリアクリルアミド(PAA)の希薄溶液に基づく粘弾性液体を使用して、実験を繰り返した。せん断粘度は、せん断速度0.1〜450s−1の範囲にわたって0.052〜0.036Pa・sと変わり、これは
【数33】
(図6の挿入図を参照)によって最良に近似される。動的剛性(G’)測定から
【数34】
が得られる(図6を参照)。PAAの希薄溶液の動的剛性の周波数依存性は、G’〜ω2であると予想され、予想値の2からの指数のずれは、試験した最低の周波数においてさえも(図6を参照)、実験で使用したポリマーの高い多分散性に起因するのかも知れない。
【0162】
従って、
【数35】
であり、流量に対するPDFのかなり弱い依存性が予測される。他方で、前指数因子(pre−exponential factor)Aは上記PVP溶液について測定されるものよりも約一桁高く、それゆえより強い集束効果が上記PAA溶液において予想される。
【0163】
8μmおよび5μmのミクロスフェアの得られるPDFはそれぞれ図8aおよび図8bに与えられる。予想されるとおり、PDFはほとんど流量に依存しないことが容易に理解できる。粒径効果は明らかである:PDF分布はより大きい粒子ほどより狭い。対応するy95の値は図8のPDFから算出することができ、それらは、5μm粒子(白抜きひし形)および8μm粒子(白抜き正方形)について、図7に流量に対して図示される。PAA溶液におけるy95の理論的予測値[図7の一番上および一番下の曲線]は、C=0.301とした方程式(3)の解に基づいており、調整可能なパラメータはまったく含んでいない。予想されるとおり、8μmの粒子についての集束効果は、このPVP溶液においてよりもこのPAA溶液において強く、粒径の効果は大きい。(調整可能なパラメータなしの)理論的予測値とこの実験データとの比較から優れた一致が示され、上記粘弾性集束の仮説が検証される。8μm粒子についての実験的分解能は不十分であるので、理論的予測値と図7におけるPAA溶液中での8μm粒子についての実験との間の一致は、5μm粒子についての場合ほどには正確ではない。これらの粒子は4μm未満の非常に薄い層の中に集束される。図8(a)参照。
【0164】
(集束予測方法)
図9Aは、本発明の実施形態に係る所定のフローシステムで所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する方法900でとられるべき操作のフローチャートである。
【0165】
操作902で、このシステムの物理的寸法が提供される。これらの寸法には、任意に、この微小流体用チャネルの構造(その幅w、深さh(すなわち、このチャネルの半分の深さを表すd=h/2)、および注入口と検査ゾーンとの間の長さを含む);および集束されるべき粒子の見積もられるサイズが含まれる。
【0166】
903で、実験での設定で使用されることになる流量Q、が選択され、平均の流れ方向の速度
【数36】
は、方程式
【数37】
から見積もられる。ここでA=h×wである。
【0167】
904で、この所定の懸濁媒質のレオロジー特性が見積もられる。見積もられるレオロジー特性には、任意に、せん断速度
【数38】
の関数としての動的粘度、η(Pa・s)、および発振周波数、ωの関数としての弾性率G’(Pa)が含まれる。任意に、これらの見積りは、文献で利用できるデータに基づく。任意に、これらのデータは、例えば市販のレオメーターを用いて実験的に集められる。
【0168】
906で、方程式
【数39】
における定数Aおよびβが見積もられる。
【0169】
任意に、この見積もりは、粘度測定での等式
【数40】
を用いて904で得られた測定値に基づく。
【0170】
N1が市販のレオメーターによって直接測定されるのに十分大きい(典型的には、数十Paのオーダーにある)場合、N1は任意に直接測定される。
【0171】
908で、方程式
【数41】
中のパラメータmおよびnが見積もられる。この見積もりは、任意に文献で利用可能なデータに基づく。あるいは、この見積もりは、測定されたレオロジー特性を上記の方程式にフィットさせる工程を含む。
【0172】
910で、集束の品質は、操作902および903でもたらされるデータならびに操作904〜908で得られた見積もり値を使用して上記の方程式4を解くことによって評価される。任意に、集束の品質は、試験粒子の無次元の位置ζ=y/dによって評価される。例えば、流れ方向に注入口から20mmの距離で、d=40μmの半分の深さを有するマイクロチャネルの中の深さ4μmの中心層内に粒子の何%が垂直方向に集束されるであろうかを知りたい場合は、ζ=4/40=0.1およびξ=2000/40=50を用いてζ0について式(4)を解くべきである。例えば、得られたζ0=0.75という値は、その粒子のおよそ75%は、注入口から下流の20mmの距離で深さ4μmの中央のコア内に集束されるであろうということを意味する。
【0173】
単分散の直鎖状ポリマーの多くの希釈溶液は、特定の明確なレオロジー挙動を示す(Boger液体として当該技術分野で公知):これによると、
【数42】
である。
【0174】
用語「単分散性ポリマー」は、この文脈では、狭い分子量の分布を有するポリマーを表すために使用される。希薄溶液でBoger液体挙動をもたらす直鎖状ポリマーの例としては、単分散性ポリアクリルアミドおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0175】
Boger液体の場合、n=1およびβ=2であり、集束の品質の評価はかなり単純になる。かかる単純化された方法(900’)のフローチャートが図9bに提示される。
【0176】
図9Bは、本発明の実施形態に係る所定のフローシステムで所定の懸濁媒質の集束の品質を予測する方法900でとられるべき操作のフローチャートである。
【0177】
図9bの中の操作902および903は、図9aの中の同じ操作とまったく同様である。
【0178】
904’で、平均せん断速度およびせん断速度の平均勾配が、操作902および903で提供される値から、式:
【数43】
から算出される。
【0179】
906’で、粘性応力τおよび法線応力N1の値が測定され、Wi=N1/τが算出される。τおよびN1の測定は、任意に、市販のレオメーターを用いて実施される。これらの値は、任意に、904’で算出された
【数44】
に等しい1つのせん断速度でのみ測定される。
【0180】
正確な法線応力測定は、通常は市販のレオメーターによっては利用できず、それゆえ法線応力は、1つの周波数
【数45】
で市販のレオメーターを使用して、および関係
【数46】
を使用して、振動せん断測定で測定される弾性率G’から任意に見積もられ、その測定されたデータから法線応力が得られる。
【0181】
908’で、ワイセンベルグ数Wi=N1/τは906’で得られたデータを使用して算出される。
【0182】
908’で、その粒子の平均横方向速度
【数47】
が、904〜908で算出された量および方程式(2a)およびBoger液体については
【数48】
であるという入力に基づき算出される。
【0183】
910’で、粒子がチャネルの中心の水平方向面に完全に集束される流れ方向の距離は、
【数49】
と見積もられる。
【0184】
(全般的な注釈)
本願から成立する特許の存続期間の間に多くの関連する懸濁媒質、フローサイトメーター、およびFACS機器が開発されるであろうということが予想され、当該用語に対応する用語の範囲は、すべてのかかる新しい技術を最初から包含することが意図されている。
【0185】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する」およびそれらの同根語は、「〜を含むが、これらに限定されない」ことを意味する。
【0186】
用語「例示的な」は、「例、実例または図解としての役割を果たす」ことを意味する。
【0187】
本願明細書で数値範囲が示される場合はいつでも、それは、示された範囲内のあらゆる引用された数字(分数または整数)を含むことが意図されている。第1の示された数と第2の示された数「との間の範囲の(ranging)/範囲にある(ranges)」および第1の示された数「から」第2の示された数「までの範囲の(ranging)/範囲にある(ranges)」との語句は、本願明細書においては互換的に使用され、第1および第2の示された数ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことが意図されている。
【0188】
分かりやすさのために別々の実施形態に関連して記載されている本発明の特定の特徴は、1つの実施形態で組み合わせて提供されてもよいことが予想される。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載されている本発明の種々の特徴は、別々に、またはあらゆる適切なサブコンビネーションとして、または本発明のいずれかの他の記載された実施形態において適切であるとして、提供されてもよい。種々の実施形態に関連して記載された特定の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が機能しない場合でない限り、それらの実施形態の必須の特徴とは考えられないものとする。
【0189】
本発明はその具体的な実施形態に関連して説明されてきたが、多くの変更態様、修正態様およびバリエーションが当業者に明らかになることは明白である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および幅広い範囲のうちに含まれるすべてのかかる変更態様、修正態様およびバリエーションを包含することが意図されている。
【0190】
本願明細書で言及されたすべての刊行物、特許および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許および特許出願が具体的におよび個々に参照により本願明細書に援用したものとすると示された場合と同じ程度まで、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。加えて、本願におけるあらゆる参考文献の引用または特定は、かかる参考文献が本発明にとっての先行技術として利用できるということを認めるものとは解釈されないものとする。節の見出しが使用されるところでは、それらは必ずしも限定するものとは解釈されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を集束させる方法であって、
第1の懸濁媒質中の前記粒子の懸濁液を準備する工程と、
100μmより小さい少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルに沿って前記懸濁液を流す工程と
を含み、前記第1の懸濁媒質は、前記チャネル中で前記懸濁液を流す工程が前記チャネル内部の集束領域での前記粒子の濃度を増加させるような粘弾性特性を有する、方法。
【請求項2】
前記集束領域が前記チャネルの半分の高さにある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記集束領域が前記チャネルの長さに垂直な断面を有し、前記断面は、同じ場所での前記チャネルの断面と同形状を有するがそれよりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記集束領域が前記チャネルと同軸である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液が種々のサイズの粒子を含み、前記粘弾性特性が、前記チャネル中で前記懸濁液を流す工程が、より大きい粒子を優先的に前記集束領域に向かって誘導するような粘弾性特性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液を準備する工程が、
第2の懸濁媒質中の前記粒子の懸濁液を得る工程と、
前記第2の懸濁媒質を前記第1の懸濁媒質と交換する工程と
を含む、請求項1または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
懸濁液を準備する工程が、
種々の粘弾性特性を有する複数の懸濁媒質を準備する工程と、
前記媒質の粘弾性特性に応答して前記複数の懸濁媒質から前記第1の懸濁媒質を選択する工程と、
前記粒子を前記選択された懸濁媒質に懸濁させる工程と
を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
選択する工程が、前記粒子の前記サイズに応答して選択する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
懸濁液を準備する工程が、
前記粒子を試用懸濁媒質に懸濁させる工程と、
流れる懸濁液が100μmより小さい少なくとも1つの寸法を有するように、マイクロチャネルに沿って前記懸濁液を流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、前記試用懸濁媒質の弾性を増大させる工程と
を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
特定の流量で流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、前記流量を増大させる工程と
を含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記試用懸濁媒質の前記弾性を増大させる工程は、前記懸濁液に高分子量ポリマーを加える工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記チャネルの深さが100μm未満である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記チャネルの幅が100μm未満である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記チャネルが、各々100μmより小さい深さ、および幅を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子が細胞である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の懸濁媒質が血清を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
流れる粒子を集束するためのシステムであって、
壁および前記壁間の底部を有するチャネルと、
試料流体を含む流体源と、
前記流体源から注入口を経由して前記チャネルへと前記試料流体を誘導するように構成された流体誘導システムと
を含み、前記試料流体は液体に懸濁された粒子を含み、前記液体は、集束領域で前記粒子を集束させるために外部力場を加える必要性を緩和する粘弾性特性を有するシステム。
【請求項18】
前記集束領域が、前記チャネルの半分の高さにある、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記集束領域と感知伝達している尋問光線を、前記注入口から下流の検査ゾーンに提供する光源と、
前記尋問光線を使用してその検査ゾーンで前記粒子を検出するように構成された検出器と
を含む、請求項17または請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記粒子が細胞を含む、請求項17から請求項19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記チャネルが5〜100μmの少なくとも1つの断面寸法を有する、請求項17から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの断面寸法が、前記チャネルの底部に垂直な断面の寸法を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記チャネルが底部および壁を有し、前記壁間の距離は100μmよりも大きい、請求項17から請求項22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
各々異なる粘弾性特性を有する複数の流体と、異なるサイズの粒子を集束させるために各流体を使用するようにする使用説明とを含む、請求項17から請求項23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
キットであって、
サイズ範囲の表示を保有するパッケージ中に各々が別々に包装された複数の流体と、
前記表示されたサイズ範囲の粒子を集束させるために前記複数の流体の各々を使用するための使用説明と
を含むキット。
【請求項26】
液体の弾性を評価する方法であって、
単分散性の粒度分布を有する粒子を媒質に加えて懸濁液を得る工程と、
100μm以下の少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルの中で前記懸濁液を流す工程と、
前記粒子が所定の距離に沿って前記チャネルを流れた後に前記粒子の空間分布を得る工程と、
前記空間分布を分析して前記媒質の弾性を得る工程と
を含む方法。
【請求項27】
分析する工程が、前記媒質の粘度に応答して分析する工程を含み、前記方法は前記媒質の粘度を得る工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記媒質の粘度を得る工程が、前記媒質の粘度を測定する工程を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前期得られた懸濁液中の前記粒子の体積分率が0.001%〜1%である、請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記得られた懸濁液の体積分率が0.1%である、請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
粒子と結合剤との間の相互作用を評価する方法であって、
チャネルの底部の上の層で前記粒子を集束させる工程と、
前記集束された粒子を、前記底部に固定された結合剤の上に流す工程と
を含む方法。
【請求項32】
前記粒子の少なくとも90%の中心が前記チャネルの半分の高さ未満の厚さを有する層にあるように、前記粒子が集束される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子を集束させる工程が、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法で集束させる工程を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記方法を複数回、各回で異なる高さのチャネルを用いて実施することを含む、請求項31から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
粒子と結合剤との相互作用を評価するための装置であって、
各々請求項17から請求項24のいずれか1項に記載の複数のシステム
を含み、かつ前記システムのうちの少なくとも1つが、前記結合剤が前記チャネルの底部の少なくとも一部分に固定されているチャネルを有する装置。
【請求項36】
前記複数のシステムが共通の流体源を有する、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記複数のシステムが共通の流体誘導システムを有する、請求項35または請求項36に記載の装置。
【請求項38】
他のシステムから独立して前記システムの各々の中の前記チャネルへの流体の流量を制御するためのコントローラを有する、請求項35から請求項37のいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
前記チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分に結合剤が固定されている、請求項35から請求項38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
すべての前記チャネルが同じ深さを有しているわけではない、請求項35から請求項39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
前記チャネルの各々は、他のすべてのチャネルとは異なる深さを有する、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
すべての前記チャネルで同じ集束の品質で前記粒子を集束させるように構成されている、請求項35から請求項41のいずれか1項に記載の装置。
【請求項1】
粒子を集束させる方法であって、
第1の懸濁媒質中の前記粒子の懸濁液を準備する工程と、
100μmより小さい少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルに沿って前記懸濁液を流す工程と
を含み、前記第1の懸濁媒質は、前記チャネル中で前記懸濁液を流す工程が前記チャネル内部の集束領域での前記粒子の濃度を増加させるような粘弾性特性を有する、方法。
【請求項2】
前記集束領域が前記チャネルの半分の高さにある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記集束領域が前記チャネルの長さに垂直な断面を有し、前記断面は、同じ場所での前記チャネルの断面と同形状を有するがそれよりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記集束領域が前記チャネルと同軸である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液が種々のサイズの粒子を含み、前記粘弾性特性が、前記チャネル中で前記懸濁液を流す工程が、より大きい粒子を優先的に前記集束領域に向かって誘導するような粘弾性特性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液を準備する工程が、
第2の懸濁媒質中の前記粒子の懸濁液を得る工程と、
前記第2の懸濁媒質を前記第1の懸濁媒質と交換する工程と
を含む、請求項1または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
懸濁液を準備する工程が、
種々の粘弾性特性を有する複数の懸濁媒質を準備する工程と、
前記媒質の粘弾性特性に応答して前記複数の懸濁媒質から前記第1の懸濁媒質を選択する工程と、
前記粒子を前記選択された懸濁媒質に懸濁させる工程と
を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
選択する工程が、前記粒子の前記サイズに応答して選択する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
懸濁液を準備する工程が、
前記粒子を試用懸濁媒質に懸濁させる工程と、
流れる懸濁液が100μmより小さい少なくとも1つの寸法を有するように、マイクロチャネルに沿って前記懸濁液を流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、前記試用懸濁媒質の弾性を増大させる工程と
を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
特定の流量で流す工程と、
集束の品質を評価する工程と、
集束の品質を改善するために、前記流量を増大させる工程と
を含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記試用懸濁媒質の前記弾性を増大させる工程は、前記懸濁液に高分子量ポリマーを加える工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記チャネルの深さが100μm未満である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記チャネルの幅が100μm未満である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記チャネルが、各々100μmより小さい深さ、および幅を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子が細胞である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の懸濁媒質が血清を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
流れる粒子を集束するためのシステムであって、
壁および前記壁間の底部を有するチャネルと、
試料流体を含む流体源と、
前記流体源から注入口を経由して前記チャネルへと前記試料流体を誘導するように構成された流体誘導システムと
を含み、前記試料流体は液体に懸濁された粒子を含み、前記液体は、集束領域で前記粒子を集束させるために外部力場を加える必要性を緩和する粘弾性特性を有するシステム。
【請求項18】
前記集束領域が、前記チャネルの半分の高さにある、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記集束領域と感知伝達している尋問光線を、前記注入口から下流の検査ゾーンに提供する光源と、
前記尋問光線を使用してその検査ゾーンで前記粒子を検出するように構成された検出器と
を含む、請求項17または請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記粒子が細胞を含む、請求項17から請求項19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記チャネルが5〜100μmの少なくとも1つの断面寸法を有する、請求項17から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの断面寸法が、前記チャネルの底部に垂直な断面の寸法を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記チャネルが底部および壁を有し、前記壁間の距離は100μmよりも大きい、請求項17から請求項22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
各々異なる粘弾性特性を有する複数の流体と、異なるサイズの粒子を集束させるために各流体を使用するようにする使用説明とを含む、請求項17から請求項23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
キットであって、
サイズ範囲の表示を保有するパッケージ中に各々が別々に包装された複数の流体と、
前記表示されたサイズ範囲の粒子を集束させるために前記複数の流体の各々を使用するための使用説明と
を含むキット。
【請求項26】
液体の弾性を評価する方法であって、
単分散性の粒度分布を有する粒子を媒質に加えて懸濁液を得る工程と、
100μm以下の少なくとも1つの断面寸法を有するチャネルの中で前記懸濁液を流す工程と、
前記粒子が所定の距離に沿って前記チャネルを流れた後に前記粒子の空間分布を得る工程と、
前記空間分布を分析して前記媒質の弾性を得る工程と
を含む方法。
【請求項27】
分析する工程が、前記媒質の粘度に応答して分析する工程を含み、前記方法は前記媒質の粘度を得る工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記媒質の粘度を得る工程が、前記媒質の粘度を測定する工程を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前期得られた懸濁液中の前記粒子の体積分率が0.001%〜1%である、請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記得られた懸濁液の体積分率が0.1%である、請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
粒子と結合剤との間の相互作用を評価する方法であって、
チャネルの底部の上の層で前記粒子を集束させる工程と、
前記集束された粒子を、前記底部に固定された結合剤の上に流す工程と
を含む方法。
【請求項32】
前記粒子の少なくとも90%の中心が前記チャネルの半分の高さ未満の厚さを有する層にあるように、前記粒子が集束される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子を集束させる工程が、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法で集束させる工程を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記方法を複数回、各回で異なる高さのチャネルを用いて実施することを含む、請求項31から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
粒子と結合剤との相互作用を評価するための装置であって、
各々請求項17から請求項24のいずれか1項に記載の複数のシステム
を含み、かつ前記システムのうちの少なくとも1つが、前記結合剤が前記チャネルの底部の少なくとも一部分に固定されているチャネルを有する装置。
【請求項36】
前記複数のシステムが共通の流体源を有する、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記複数のシステムが共通の流体誘導システムを有する、請求項35または請求項36に記載の装置。
【請求項38】
他のシステムから独立して前記システムの各々の中の前記チャネルへの流体の流量を制御するためのコントローラを有する、請求項35から請求項37のいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
前記チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分に結合剤が固定されている、請求項35から請求項38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
すべての前記チャネルが同じ深さを有しているわけではない、請求項35から請求項39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
前記チャネルの各々は、他のすべてのチャネルとは異なる深さを有する、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
すべての前記チャネルで同じ集束の品質で前記粒子を集束させるように構成されている、請求項35から請求項41のいずれか1項に記載の装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2010−529452(P2010−529452A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510958(P2010−510958)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000772
【国際公開番号】WO2008/149365
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(504127647)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド (20)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000772
【国際公開番号】WO2008/149365
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(504127647)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド (20)
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