説明

粒子サイズ制御結晶化による鏡像異性体混合物からの鏡像異性体成分の単離方法

本発明は、粒子サイズ制御結晶化による鏡像異性体の混合物からの鏡像異性体成分の単離方法であって、(a)いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、溶媒中で鏡像異性体(R)と(S)の混合物の溶液を形成する工程;(b)工程(a)の溶液に鏡像異性体(R)の種結晶および鏡像異性体(S)の種結晶を同時にまたは連続して接種する工程(ここで、鏡像異性体(R)の種結晶は、鏡像異性体(S)の種結晶とはサイズおよび/または量が異なっていて、鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から分離することを可能にする);(c)鏡像異性体(R)と鏡像異性体(S)の同時結晶化を誘導する工程;そして(d)結晶のサイズ分離により、好ましくは篩い分け、融解または沈降により、特に篩い分けにより、鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を単離する工程;を含む方法を開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子サイズ制御結晶化による鏡像異性体混合物からの鏡像異性体成分の単離方法に関する。
【0002】
従来技術
鏡像異性体は、一般に、同一の化学的特性および物理的特性、例えば融点および沸点または分離のために典型的に使用される他のそのような特性を有しているので、鏡像異性体の混合物からの鏡像異性体の単離は、概して困難である。また、それらは、優先結晶化(随伴による分割とも称される)により分離される純粋な鏡像異性体結晶の混合物からなる集塊としてよりもむしろラセミ結晶として結晶化する傾向がある。したがって、鏡像異性体を得るための現在一般的な方法は、個々の鏡像異性体を混合物から単離することによるのではなく、むしろ鏡像異性体の不斉合成によるものである。このような合成の効率は、鏡像異性体の化学構造に強く依存し、選択性のなさに悩まされる可能性がある。
【0003】
現在使用されている鏡像異性体の単離手法は、種々の態様のクロマトグラフィー、例えば、擬似移動床クロマトグラフィー(SMB)等である。しかしながら、クロマトグラフィーをベースとする方法は、これまでのところ、鏡像異性体を単離しえないか、および/または商業的な量で経済的にいくつかの鏡像異性体を単離することができない。
【0004】
優先結晶化、共結晶化およびエマルション−結晶化を含む種々の結晶化方法が、鏡像異性体を混合物から単離するために提案されている。関連のある従来技術文献は以下のとおりである:
【0005】
DE2135717には、冷却剤中での結晶化による芳香族炭化水素と不純物から選択される液体混合物の成分の精製方法および結晶化装置が記載されている。本方法は、鏡像異性体の分離に関わるものではなく、乳化物の製造を含むものである。
【0006】
GB796343には、分別結晶化による硫酸の精製方法が開示されている。本方法は、鏡像異性体の分離に関わるものではなく、分散体/乳化物の製造を含むものである。
【0007】
GB865311は、ラセミアミノ酸、すなわち、D−およびL−グルタミン酸の連続分割方法に関するものである。最初に、一方の鏡像異性体が、母液から結晶化され、分離される。次いで、他方の異性体が、溶液から結晶化され、取り出される。
【0008】
GB1455710は、選択的接種および結晶化による、光学活性異性体の分割に関するものである。この場合も、最初に、一方の鏡像異性体が、母液から結晶化され、分離される。次いで、他方の異性体が、溶液から結晶化され、取り出される。
【0009】
EP0548028には、三相系を用いる結晶化による、集合体混合物からの有機化合物の精製が記載されている。本方法は、分散体/乳化物の製造を含むものである。
【0010】
EP0838448には、少なくとも1種の分割剤を用いる、鏡像異性体の混合物の分離方法が開示されている。本方法は、少なくとも1種の分割剤の存在を必要とする。
【0011】
WO96/06080は、二環ラクタムの鏡像異性体の分離方法に関する。最初に、一方の鏡像異性体が、母液から結晶化され、分離される。次いで、他方の異性体が、溶液から結晶化され、取り出される。
【0012】
WO97/32644は、集合体混合物からの所望物質の分離方法に関するものであり、その方法では、三相分散系が形成される。本方法は、分散体/乳化物の製造を含むものである。
【0013】
WO99/12623には、乳化物中の集合体混合物から所望物質を分離する分離方法が記載されている。この乳化物は、さらに、1種以上の表面活性剤、例えば可溶化剤、界面活性剤および/または分散剤を含む。本方法は、分散体/乳化物の製造を含むものである。
【0014】
WO00/53283には、特定のキラルなまたはキラルではない共結晶化剤を用いる、共結晶化による鏡像異性体の混合物からの鏡像異性体成分の単離方法が開示されている。本方法は、共結晶化剤の存在を必要とし、鏡像異性体が集塊として結晶化することを必要とする。
【0015】
WO00/54865は、乳化物を再使用(回収)しながらの、エマルション結晶化による物質の精製方法に関するものである。本方法は、鏡像異性体の分離に関わるものではなく、分散体/乳化物の製造を含むものである。
【0016】
WO04/089917は、対応するラセミ混合物からのジヒドロ−1,3,5−トリアジン由来アミンの分割方法に関する。本方法は、超臨界相でのキラルHPLCおよびキラル試薬、例えばキラル酸を使用する。
【0017】
本出願中のいずれの参照文献についての引用も、その参照文献が本出願の従来技術であることを自認するものではない。
【0018】
発明の説明
本発明は、分散体もしくは乳化物の製造を含まず、ならびに/または分割剤、表面活性剤(界面活性剤)および/もしくは共結晶化剤の存在を必要としない、鏡像異性体混合物、好ましくはラセミ化合物から鏡像異性体成分を単離する新規な方法を提供する目的を有する。
【0019】
本発明の目的は、驚くことに、一つの態様において、粒子サイズ制御結晶化による鏡像異性体の混合物からの鏡像異性体成分の単離方法であって、
(a)いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、溶媒中で鏡像異性体(R)と(S)の混合物の溶液を形成する工程;
(b)工程(a)の溶液に鏡像異性体(R)の種結晶および鏡像異性体(S)の種結晶を同時にまたは連続して接種する工程(ここで、鏡像異性体(R)の種結晶は、鏡像異性体(S)の種結晶とはサイズおよび/または量が異なっていて、鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から分離することを可能にする);
(c)鏡像異性体(R)と鏡像異性体(S)の同時結晶化を誘導する工程;そして
(d)結晶のサイズ分離により、好ましくは篩い分け、融解または沈降により、特に篩い分けにより、鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を単離する工程;
を含む方法を提供することにより解決された。
【0020】
本発明の意味における用語「粒子サイズ制御結晶化」および「結晶のサイズ分離により、鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を単離すること」は、最終的に分離される鏡像異性体結晶の粒子サイズを同時に制御することを伴う、鏡像異性体の結晶化をベースとする分離をいう。この目標を達成するために、鏡像異性体(R)の(種)結晶は、鏡像異性体(S)の(種)結晶とサイズにおいて異なることが必要であり、これにより、単純なサイズ分離方法、例えば、濃縮された一方の鏡像異性体の混合物の細かい結晶を通過させ、濃縮された他方の鏡像異性体の混合物のより大きな結晶を抑止する、定められた孔径を持つ篩を用いた篩い分けによる分離が可能となる。それぞれの種結晶の粒径を選択することにより、両方の鏡像異性体間の必要で十分なサイズの違いを調節することができる。
【0021】
本発明の意味における用語「溶媒」は、純溶媒または溶媒混合物、例えば、水、有機溶媒、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、アルコール、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エステル、ケトン、アセトン、またはメチルエチルケトンあるいはこれらの混合物をいう。好ましい溶媒は、エタノールである。溶媒の選択は、この溶媒中での分離すべき鏡像異性体の相対的な溶解度に依存する。
【0022】
本発明の意味における、「溶媒」に関連する用語「いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に」は、分離すべき鏡像異性体ではない1種以上の追加の物質を含まない、本明細書中で定義されている溶媒または溶媒混合物をいう。このような含有されない追加の物質は、例えば、WO99/12623およびWO97/32644に開示されている溶媒添加物、可溶化剤、界面活性剤および分散剤ならびにEP0838448に開示されている分割剤である。
【0023】
鏡像異性体(R)と鏡像異性体(S)の(同時)結晶化の誘導は、この技術分野で公知の標準的な手法、例えば、過剰量の鏡像異性体(R)と鏡像異性体(S)が超音波を用いてまたは加温温度を使用して溶解している、過飽和により達成することができる。あるいは、過飽和は、両方の鏡像異性体を含有する溶液を冷却することにより達成される。過飽和溶液は、鏡像異性体(R)の種結晶および鏡像異性体(S)の種結晶で、同時にまたは連続的に接種され、ここで、鏡像異性体(R)の種結晶は、鏡像異性体(S)の種結晶とはサイズおよび/または量が異なっている。以下の結晶化工程による制御された冷却条件を使用すると、主に種結晶の結晶成長が可能となり、自発的な核生成は避けられる。結晶化プロセスの最終温度に到達すると、懸濁液は、簡単に、フィルター上でろ過される(「ヌッチェ」または遠心分離機)。単離された結晶は、乾燥され、最終的には、一方の鏡像異性体が濃縮された混合物よりなる細かい結晶を他方の鏡像異性体が濃縮された混合物よりなるより大きい結晶から分離するために篩い分けられる。
【0024】
他の態様において、本発明の目的は、驚くことに、さらに、
(e)いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる単離された結晶を溶媒に溶解し、またそれとは別に、いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる単離された結晶を溶媒に溶解する工程;
(f)鏡像異性体(R)が濃縮された溶液に鏡像異性体(R)の種結晶を接種し、またそれとは別に、鏡像異性体(S)が濃縮された溶液に鏡像異性体(S)の種結晶を接種する工程;
(g)鏡像異性体(R)の結晶化を誘導し、またそれとは別に、鏡像異性体(S)の結晶化を誘導する工程;
(h)鏡像異性体(R)がさらに濃縮された混合物よりなる結晶を単離し、またそれとは別に、鏡像異性体(S)がさらに濃縮された混合物よりなる結晶を単離する工程;
を含む上記の方法を提供することにより解決された。
【0025】
好ましい実施態様において、鏡像異性体(R)と(S)の混合物が、鏡像異性体(R)と(S)のラセミ化合物であり、好ましくは集塊を形成するものである、本明細書に開示された方法が提供される。
【0026】
他の好ましい実施態様において、工程(d)および/または工程(h)後に残る「母液」溶液が、工程(a)における溶液としてリサイクルされるか、および/または工程(a)における溶液が、工程(b)の前に補充され、そして全体のプロセスが繰り返される、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様が提供される。このリサイクルは、収率の有意な改善をもたらす。
【0027】
さらに好ましい実施態様において、工程(a)および/または工程(e)における溶媒が、水、有機溶媒、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、アルコール、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エステル、ケトン、アセトンまたはメチルエチルケトンあるいはこれらの混合物からなる群から選択されるものである、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様が提供される。好ましいものは、エタノールである。
【0028】
さらに他の好ましい実施態様において、鏡像異性体(R)と(S)の混合物が、((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(1)と((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(2)の混合物、好ましくは((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(1)と((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(2)のラセミ化合物である、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様が提供される。
【0029】
【化1】

【0030】
また他の好ましい実施態様において、((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミンおよび((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミンが塩酸塩として存在する、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様が提供される。
【0031】
上記の2種の鏡像異性体は、下記のそれらの異なるメソ体と共存する。これらのメソ体は、本発明の範囲に含まれるものである。
【0032】
【化2】

【0033】
他の態様において、本発明の目的は、驚くことに、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様により得られる((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩を提供することにより解決された。
【0034】
トリアジン誘導体化合物は、AutoNom2000ソフトウエア(ISIS(商標)/Draw2.5;MDL)を用いて命名した。
【0035】
また他の好ましい実施態様において、鏡像異性体(R)と(S)の混合物が、(R,R)−ヒドロベンゾイン(3)と通称される(1R,2R)−1,2−ジフェニル−エタン−1,2−ジオールと(S,S)−ヒドロベンゾイン(4)と通称される(1S,2S)−1,2−ジフェニル−エタン−1,2−ジオールの混合物、好ましくは(3)と(4)のラセミ化合物である、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様が提供される。
【0036】
【化3】

【0037】
他の態様において、本発明の目的は、驚くことに、本明細書に開示された方法および好ましい実施態様により別々に得られる(R,R)−ヒドロベンゾインおよび/または(S,S)−ヒドロベンゾインを提供することにより解決された。
【0038】
すべての引用された参照文献の内容は、本明細書にその全体が参照により組み入れられる。以下の実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0039】
実施例
【0040】
実施例1:(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩の鏡像異性体の単離
第一工程−粒子サイズ制御結晶化:
((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩/((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩ラセミ化合物1.1kgを、エタノール5.5kgに溶解し、得られた溶液を金属プロペラ(角度〜45°,150rpm)で注意深く撹拌し、接種のために55℃まで冷却した。((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩結晶(篩サイズ>300μm)70gを加え、次いで、等温で30分間撹拌し、その後、((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩結晶(篩サイズ<59μm)15gを接種し、さらに55℃で30分間撹拌した。
【0041】
混合物を、最終的に、ゆっくりのプログラムされた勾配で、注意深く冷却した:
45℃まで−0.07K/分、50℃まで迅速に加熱、そして50℃で30分撹拌
30℃まで−0.07K/分、35℃まで迅速に加熱、そして35℃で30分撹拌
10℃まで−0.07K/分、15℃まで迅速に加熱、そして15℃で30分撹拌
−15℃まで−0.07K/分
【0042】
−15℃の最終温度に到達したらできるだけ早く、完成した懸濁液を吸引フィルター上でろ過し、得られたフィルターケーキを冷(5〜7℃)エタノール550gで洗浄し、最後に、デシケーター中、室温で真空下に(〜200mbar)2日間乾燥した。
【0043】
乾燥結晶1011.6gを単離し、これは92%の収率に相当した(種結晶は考慮せず)。
乾燥結晶は、続いて、篩い分けした(表1)。
【0044】
【表1】

【0045】
第二工程−((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩が濃縮された画分の熱力学的に制御された結晶化:
画分07EW075.3および07EW075.4(表1)を混合して、以下の組成(((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩 85.2%、((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩 14.8%)を持つ結晶312.4gを得た。これらの結晶を、撹拌下に(200rpm)、55℃でエタノール3755gに溶解した。得られた溶液を、48℃まで冷却し、((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩結晶13.7gで接種した。
【0046】
混合物を、まず、46℃で1時間撹拌し、次いで、−0.2K/分の制御された勾配で、0℃まで冷却した。得られた懸濁液を、吸引フィルター上で、0℃で直接ろ過し、ケーキを冷エタノール(5〜7℃)150gで洗浄し、最後に、デシケーター中、室温で真空下に乾燥した。
【0047】
これにより、ee=93.8%の((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩結晶(組成:((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩 96.6%、((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩 3.1%)206.4gが得られた。
【0048】
第二工程の収率は、66.1%であった(種結晶は考慮せず)。
【0049】
プロセス収率を増大させるために、同じ方法を、((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩が濃縮された画分について同様のやり方で行った。
【0050】
実施例2:ヒドロキシベンゾインの鏡像異性体の単離
第一工程−粒子サイズ制御結晶化:
(R,R)−ヒドロベンゾイン/(S,S)−ヒドロベンゾインラセミ化合物20gを、エタノール80gに溶解し、得られた溶液をテフロンプロペラ(角度〜45°,180rpm)で注意深く撹拌し、接種のために34.4℃まで冷却した。(S,S)−ヒドロベンゾイン結晶(篩サイズ>500μm)1gを加え、次いで、混合物を等温で1時間撹拌し、その後、(R,R)−ヒドロベンゾイン結晶(篩サイズ<59μm)0.2gを接種し、さらに34℃で1時間撹拌した。
【0051】
混合物を、最終的に、ゆっくりのプログラムされた勾配で、注意深く冷却した:
25.5℃まで−0.05K/分、27.4℃まで迅速に加熱、そして27.4℃で30分撹拌
15.3℃まで−0.05K/分、17.7℃まで迅速に加熱、そして17.7℃で30分撹拌
5.7℃まで−0.05K/分、7.8℃まで迅速に加熱、そして7.8℃で30分撹拌
−13.6℃まで−0.05K/分
【0052】
−13.6℃の最終温度に到達したらできるだけ早く、完成した懸濁液を吸引フィルター上でろ過し、得られたフィルターケーキを冷(−12℃)エタノール5gで洗浄し、最後に、デシケーター中、室温で真空下に(〜200mbar)24時間乾燥した。
【0053】
乾燥結晶16.9gを単離し、これは84.5%の収率に相当した(種結晶は考慮せず)。
乾燥結晶は、続いて、篩い分けした(表2)。
【0054】
【表2】

【0055】
第二工程−(S,S)−ヒドロベンゾインが濃縮された画分の熱力学的に制御された結晶化:
以下の組成((S,S)−ヒドロベンゾイン 91.2%、(R,R)−ヒドロベンゾイン 8.8%)を持つ結晶6.6gからなる画分09EW047.1(表2)を、撹拌下に(220rpm)、63℃でエタノール26.4gに溶解した。得られた溶液を、52℃まで冷却し、(S,S)−ヒドロベンゾイン結晶0.05gで接種した。混合物を、まず、52℃で1時間撹拌し、次いで、−0.2K/分の制御された勾配で、0℃まで冷却した。得られた懸濁液を、吸引フィルター上で、0℃で直接ろ過し、ケーキを冷エタノール(0℃)5gで洗浄し、最後に、デシケーター中、室温で真空下に20時間乾燥した。これにより、ee=99.8%の(S,S)−ヒドロベンゾイン結晶(組成:(S,S)−ヒドロベンゾイン 99.9%、(R,R)−ヒドロベンゾイン 0.1%)4.7gが得られ、二工程プロセスを通して(S,S)−ヒドロベンゾインについて47%の全収率に相当した(種結晶は考慮せず)。種結晶を考慮すると、本方法は、(S,S)−ヒドロベンゾイン(ee=99.8%)について、42.5%の全収率を与えた。
【0056】
第三工程−(R,R)−ヒドロベンゾインが濃縮された画分の熱力学的に制御された結晶化:
画分09EW047.3、09EW047.4および09EW047.5(表2)を混合して、以下の組成((S,S)−ヒドロベンゾイン 18.4%、(R,R)−ヒドロベンゾイン 81.6%)を持つ結晶4.65gを得た。これらの結晶を、撹拌下に(220rpm)、64℃でエタノール18.6gに溶解した。得られた溶液を、54.5℃まで冷却し、(R,R)−ヒドロベンゾイン結晶0.05gで接種した。混合物を、まず、54℃で1時間撹拌し、次いで、−0.2K/分の制御された勾配で、−1℃まで冷却した。得られた懸濁液を、吸引フィルター上で、−1℃で直接ろ過し、ケーキを冷エタノール(0℃)5gで洗浄し、最後に、デシケーター中、室温で真空下に20時間乾燥した。
【0057】
これにより、ee=97.4%の(R,R)−ヒドロベンゾイン結晶(組成:(S,S)−ヒドロベンゾイン 1.3%、(R,R)−ヒドロベンゾイン 98.7%)3.0gが得られ、二工程プロセスを通して(R,R)−ヒドロベンゾインについて30%の全収率に相当した(種結晶は考慮せず)。種結晶を考慮すると、本方法は、(R,R)−ヒドロベンゾイン(ee=97.4%)について、29.3%の全収率を与えた。
【0058】
備考:損失を減らし、結果としてプロセス収率を増大させるために、すべての三工程の母液および第一工程のラセミの篩い分け画分09EW047.2ほとんどをリサイクルし、新たな粒子サイズ制御結晶化サイクルにおいて、新鮮なラセミ化合物と一緒に再使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子サイズ制御結晶化による鏡像異性体の混合物からの鏡像異性体成分の単離方法であって、
(a)いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、溶媒中で鏡像異性体(R)と(S)の混合物の溶液を形成する工程;
(b)工程(a)の溶液に鏡像異性体(R)の種結晶および鏡像異性体(S)の種結晶を同時にまたは連続して接種する工程(ここで、鏡像異性体(R)の種結晶は、鏡像異性体(S)の種結晶とはサイズおよび/または量が異なっていて、鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から分離することを可能にする);
(c)鏡像異性体(R)と鏡像異性体(S)の同時結晶化を誘導する工程;そして
(d)結晶のサイズ分離により、好ましくは篩い分け、融解または沈降により、特に篩い分けにより、鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる結晶から鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる結晶を単離する工程;
を含む方法。
【請求項2】
さらに、
(e)いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、鏡像異性体(R)が濃縮された混合物よりなる単離された結晶を溶媒に溶解し、またそれとは別に、いかなる追加的な添加剤または試剤の不存在下に、鏡像異性体(S)が濃縮された混合物よりなる単離された結晶を溶媒に溶解する工程;
(f)鏡像異性体(R)の溶液に鏡像異性体(R)の種結晶を接種し、またそれとは別に、鏡像異性体(S)の溶液に鏡像異性体(S)の種結晶を接種する工程;
(g)鏡像異性体(R)の結晶化を誘導し、またそれとは別に、鏡像異性体(S)の結晶化を誘導する工程;
(h)鏡像異性体(R)がさらに濃縮された混合物よりなる結晶を単離し、またそれとは別に、鏡像異性体(S)がさらに濃縮された混合物よりなる結晶を単離する工程;
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
鏡像異性体(R)と(S)の混合物が、鏡像異性体(R)と(S)のラセミ化合物であり、好ましくは集塊を形成するものである、請求項1〜2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
工程(d)および/または工程(h)後に残る「母液」溶液が、工程(a)における溶液としてリサイクルされるか、および/または工程(a)における溶液が、工程(b)の前に補充され、そして全体のプロセスが繰り返される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)および/または工程(e)における溶媒が、水、有機溶媒、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、アルコール、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エステル、ケトン、アセトンまたはメチルエチルケトンあるいはこれらの混合物からなる群から選択されるものであり、好ましくはエタノールである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
鏡像異性体(R)と(S)の混合物が:
【化4】


のような、((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(1)と((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(2)の混合物、好ましくは((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(1)と((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン(2)のラセミ化合物である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミンおよび((S)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミンが塩酸塩として存在する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の方法により得られる((R)−(4−イミノ−6−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−ジメチルアミン塩酸塩。
【請求項9】
鏡像異性体(R)と(S)の混合物が、
【化5】


のような、(R,R)−ヒドロベンゾイン(3)と(S,S)−ヒドロベンゾイン(4)の混合物、好ましくは(3)と(4)のラセミ化合物である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜5および9のいずれか一項記載の方法により得られる(R,R)−ヒドロベンゾイン。
【請求項11】
請求項1〜5および9のいずれか一項記載の方法により得られる(S,S)−ヒドロベンゾイン。

【公表番号】特表2011−529469(P2011−529469A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520493(P2011−520493)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059769
【国際公開番号】WO2010/012746
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510210335)
【氏名又は名称原語表記】POXEL SAS
【Fターム(参考)】