説明

粒子作製方法、粒子作製装置および粒子作製用基材

【課題】小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる粒子作製方法を提供する。
【解決手段】樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、粒子を基材の表面から剥離する剥離工程と、を含み、高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上である粒子作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子作製方法、粒子作製装置および粒子作製用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電、露光工程により像保持体上に静電潜像を形成し(潜像形成工程)、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と呼ぶ場合がある。)を含む静電荷像現像用現像剤(以下、単に「現像剤」と呼ぶ場合がある。)で静電潜像を現像し(現像工程)、転写工程、定着工程を経て可視化される。ここで用いられる現像剤には、トナーとキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とがある。そのトナーの製法は、通常、熱可塑性樹脂などの結着樹脂を顔料などの着色剤、帯電制御剤、ワックスなどの離型剤等とともに溶融混練し、冷却後、粉砕し、さらに分級する混練粉砕法が使用されている。
【0003】
近年、トナーの形状および表面構造などの制御を意図的に行うことが可能な手段として、乳化重合凝集法などの湿式製法によるトナーの製造方法が提案されている。特に高画質化を狙うためにトナーの粒径をできるだけ揃える方法として、例えば、懸濁重合法、乳化重合凝集法等がある。乳化重合凝集法は、一般に乳化重合などにより樹脂粒子分散液を作製し、一方、溶媒に着色剤を分散した着色剤分散液、溶媒に離型剤を分散した離型剤分散液等を作製した後、これらを混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、加熱することによって融合・合一させてトナーとする製造方法である。湿式製法によるトナーの製造方法としては、その他にも各種提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
これらの湿式製法では、混練粉砕法に比べて小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーが得られる。しかし、より小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーの作製方法が求められている。また、トナーの分野に限らず、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子の作製方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−122525号公報
【特許文献2】特開2008−180924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる粒子作製方法およびそのような粒子を作製するための粒子作製装置および粒子作製用基材である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の前記高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、前記液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、前記粒子を前記基材の表面から剥離する剥離工程と、を含み、前記高親和性領域の前記樹脂に対する接触角が30度以上である粒子作製方法である。
【0008】
請求項2に係る発明は、基材の表面に、前記高親和性領域と前記低親和性領域とを形成する基材作製工程を含む、請求項1に記載の粒子作製方法である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記高親和性領域の表面層が、窒化チタン、窒化クロム、炭化チタンおよび炭化珪素から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の粒子作製方法である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記粒子が静電荷像現像用トナーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子作製方法である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記基材がドラム状またはベルト状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子作製方法である。
【0012】
請求項6に係る発明は、樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の前記高親和性領域の上に形成する液滴形成手段と、前記液滴を固化して粒子を形成する粒子形成手段と、前記粒子を前記基材の表面から剥離する剥離手段と、を有し、前記高親和性領域の前記樹脂に対する接触角が30度以上である粒子作製装置である。
【0013】
請求項7に係る発明は、樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とを表面に有し、前記高親和性領域の前記樹脂に対する接触角が30度以上である粒子作製用基材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によると、基材の高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上ではない場合に比べて、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる。
【0015】
本発明の請求項2によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる。
【0016】
本発明の請求項3によると、基材の高親和性領域の表面層が、窒化チタン、窒化クロム、炭化チタンおよび炭化珪素から選択される少なくとも1つを含まない場合に比較して、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる。
【0017】
本発明の請求項4によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーが容易に得られる。
【0018】
本発明の請求項5によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーが容易に得られ、生産性が向上する。
【0019】
本発明の請求項6によると、基材の高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上ではない場合に比べて、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる。
【0020】
本発明の請求項7によると、高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上ではない場合に比べて、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における原料分散液の調製方法の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における基材の作製方法の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材の一例を示す概略上面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における基材の作製方法の他の例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における基材の作製方法の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態に係る粒子作製方法の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における粒子の剥離方法の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における基材の作製方法の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における基材の作製方法の他の例を示す概略図である。
【図10】本発明の実施形態に係る粒子作製方法の他の例を示す概略図である。
【図11】本発明の実施形態に係る粒子作製方法の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施形態に係る粒子作製方法は、粒子形成用の樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、粒子を基材の表面から剥離する剥離工程と、を含み、高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上である。粒子形成用の樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させて溶液または分散液を調製する溶液調製工程(分散液調製工程)、基材の表面に、高親和性領域と低親和性領域とを形成する基材作製工程等を含んでもよい。
【0024】
<溶液調製工程または分散液調製工程>
溶液調製工程(分散液調製工程)では、粒子形成用の樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させて、原料の溶液または分散液を調製する。
【0025】
粒子形成用の原料としては、目的の粒子を形成するための樹脂の他に、着色剤、その他添加剤等が挙げられ、目的の粒子に応じて適宜選択すればよい。
【0026】
溶媒としては、粒子形成用の原料を溶解または分散させるものであればよく、特に制限はない。溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール類等の有機溶媒が挙げられる。
【0027】
溶解または分散は、公知の撹拌装置、分散装置等を用いて行えばよい。
【0028】
原料の溶液または分散液の固形分濃度は、例えば、5質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上20質量%以下とすればよい。5質量%未満では、生産効率が低い場合があり、50質量%を超えると、原料の分散性が悪く均一性に劣る場合がある。
【0029】
図1は、原料分散液の調製方法の一例を示す概略図である。溶媒18に樹脂20の粒子が分散された樹脂粒子分散液10と、溶媒18に着色剤22の粒子が分散された着色剤分散液12と、溶媒18に添加剤24の粒子が分散された添加剤分散液14とをそれぞれ調製する。それらを混合して、溶媒18に樹脂20と着色剤22と添加剤24とが分散された分散液16を調製する。なお、樹脂粒子分散液10、着色剤分散液12、添加剤分散液14のそれぞれに用いられる溶媒18は、同じものが好ましいが、互いに相溶性があれば(例えば水とアルコール)、異なるものでもよい。
【0030】
<基材作製工程>
基材作製工程では、例えば、基材作製手段として露光装置等を含むフォトリソグラフ装置を用いたフォトリソグラフィ法等を利用して、基材の表面に、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とを形成する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材1の作製方法の一例を示す概略図である。図2(a)に示すように、平面状等の基材30を準備する。基材30の表面は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的には低親和性となる。基材30の表面に原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的に高親和性となる膜32を形成する。膜32に対して、プラズマ処理等によって原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が高くなるように高親和化処理を行ってもよい。
【0032】
基材30としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、シリコンウエハ等が挙げられる。ガラス基材は、大面積でも比較的安価であり、例えば、液晶ディスプレイ等に用いられる大面積のガラス基板を用いてもよい。
【0033】
基材30の形状としては、正方形状、矩形状、円形状、多角形状等が挙げられ、通常は、矩形状または円形状である。
【0034】
膜32を構成する材料としては、ポリイミド、ポリアミド等の熱硬化性樹脂等の樹脂、アモルファスシリコン、多結晶シリコン等の無機薄膜、二酸化ケイ素等の酸化膜等が挙げられる。例えば、ガラス基材の表面にアモルファスシリコン、シリコンウエハの表面に熱酸化膜を形成すればよい。
【0035】
膜32の厚みは、膜が安定であればよく、特に制限はないが、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.5μm以上5μm以下である。膜32の厚みを大きく(例えば、1μm以上)すれば、後段の液滴形成工程において、液滴が形成されやすくなる。
【0036】
膜32は、スパッタ法、プラズマCVD法、塗布法、イオンプレーティング法等により形成すればよい。また、基材30の表面を酸化処理、窒化処理等により変性して、酸化膜、窒化膜等の膜32を形成してもよい。例えば、シリコンウエハの表面を熱酸化することにより、酸化膜が形成される。
【0037】
高親和化処理としては、プラズマ処理、熱アニール処理等が挙げられる。膜32を構成する材料がポリイミドの場合、例えば、酸素ガスプラズマ処理等が挙げられる。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、高親和性である膜32の表面に予め定めた形状でフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてレジスト膜34を形成する。
【0039】
レジスト膜34を形成する材料としては、通常のリソグラフィ法において用いられる光や電子線等によって溶解性等の物性が変化する光硬化性樹脂、光重合開始剤、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。
【0040】
レジスト膜34のパターン形状は、目的とする粒子の形状に応じて選択すればよく、特に制限はないが、例えば、円状、楕円状や、三角状、四角状等の角状、多角形状等である。粒子の形状は通常、球状であるので、レジスト膜34のパターン形状は円状にすればよい。例えば、粒子の形状を楕円にしたい場合はパターンの形状を楕円状にすればよく、さらに小径の粒子を得たい場合はパターンを小さくすればよい。
【0041】
レジスト膜34のパターン形状の最大幅d1は、形成する粒子の大きさに応じて選択すればよく、特に制限はないが、例えば、1μm以上100μm以下、好ましくは3μm以上10μm以下である。レジスト膜34のパターンのピッチd2は、リソグラフィの解像度等に応じて選択すればよく、特に制限はないが、例えば、1μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0042】
レジスト膜34の厚みは、膜が安定であればよく、特に制限はないが、例えば、0.5μm以上5μm以下、好ましくは1μm以上2μm以下である。
【0043】
次に、図2(c)に示すように、エッチング処理等によってレジスト膜34によって覆われていない部分の膜32を除去する。
【0044】
最後に、図2(d)に示すように、レジスト膜34を剥離する。これにより、レジスト膜34のパターンで覆われていた領域は高親和性領域36、覆われていなかった領域は低親和性領域38となり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる領域が複数集積化される。
【0045】
高親和性領域36をフォトリソグラフィ法により形成することにより、高親和性領域36は円状、角状等を含む任意の形状とされる。高親和性領域36の形状は、形成するレジスト膜34のパターン形状により、制御される。高親和性領域36の形状が円形状であれば、高親和性領域36は最密充填で形成される。なお、図2に示す基材の作製方法において、高親和性領域36と低親和性領域38との形成順序が逆になるように作製してもよい。すなわち、低親和性領域38の形状を、形成するレジスト膜34のパターン形状により、制御してもよい。
【0046】
高親和性領域36の形状の最大幅D1は、例えば、1μm以上100μm以下、好ましくは2μm以上20μm以下、より好ましくは3μm以上10μm以下であり、高親和性領域36のピッチD2は、例えば、1μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下である。高親和性領域36が例えば円状である場合、直径0.1μm以上100μm以下、精度(3σ)15%以下で形成され、高精度の領域が形成される。
【0047】
ここで、原料の溶液または分散液に含まれる樹脂に対する高親和性領域36、すなわち膜36の表面の接触角は、30度以上であり、45度以上であることが好ましく、60度以上であることがより好ましい。樹脂に対する高親和性領域36の接触角が30度以上であることにより、後述する剥離工程において、離型性が向上し、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が容易に得られる。樹脂に対する高親和性領域36の接触角が45度以上であると、溶媒の乾燥時に粒子が盛り上がり、離型性がより向上する。樹脂に対する高親和性領域36の接触角が60度以上であると、ほぼ100%の離型性が得られる。
【0048】
図3は、高親和性領域36および低親和性領域38が形成された粒子作製用基材1の一例を示す概略上面図である。図3において高親和性領域36は円形状であり、高親和性領域36を円形状とすることにより最密充填で集積化されて形成される。たとえば図3のような最密充填配置にすると、基材の利用効率が高い。D1=5μmのとき六角形の一辺をたとえば10μmにすると、6インチのウェハ上には5μmのパターンは約2億個となる。
【0049】
なお、「高親和性領域」および「低親和性領域」とは原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なるものであり、原料の溶液または分散液の溶媒に対して相対的に親和性が異なることを意味し、親和性がより高い方を「高親和性領域」、親和性がより低い方を「低親和性領域」と呼ぶ。溶媒が水を含む場合は、水に対する親和性がより高い方を「親水性領域」、親和性がより低い方を「疎水性領域」と呼ぶこともある。ここで、溶媒に対する親和性は、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角で表される。すなわち、高親和性領域36と低親和性領域38とは原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が異なればよい。高親和性領域36と低親和性領域38とは原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角の差が30度以上異なることが好ましく、60度以上異なることがより好ましい。高親和性領域36と低親和性領域38との原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角の差が30度未満であると、後述する後工程の液滴形成工程において、液滴が基材の表面の高親和性領域に選択的に形成されにくくなる。
【0050】
原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が高い高親和性領域36は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が30度以下であり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が低い低親和性領域38は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が45度以上である。
【0051】
原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角は、接触角計(協和界面科学社製、FACE接触角計CA−D型)を用いて、測定する。
【0052】
図4は、本実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材の作製方法の他の例を示す概略図である。図4(a)に示すように、平面状等の基材30を準備する。基材30の表面は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的には高親和性である。基材30の表面に原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的に低親和性となる膜32を形成する。膜32に対して、プラズマ処理等によって原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が低くなるように低親和化処理を行ってもよい。
【0053】
低親和化処理としては、プラズマ処理、熱アニール処理等が挙げられる。膜32を構成する材料がポリイミドの場合、例えば、フッ素原子を含むガス(例えば、CF、CHF等)によるプラズマ処理等が挙げられる。
【0054】
次に、図4(b)に示すように、低親和性である膜32の表面に予め定めた形状でフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてレジスト膜34を形成する。
【0055】
次に、図4(c)に示すように、エッチング処理等によってレジスト膜34によって覆われていない部分の膜32を除去する。
【0056】
最後に、図4(d)に示すように、レジスト膜34を剥離する。これにより、レジスト膜34のパターンで覆われていた領域は低親和性領域38、覆われていなかった領域は高親和性領域36となり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる領域が複数形成される。
【0057】
ここで、原料の溶液または分散液に含まれる樹脂に対する高親和性領域36、すなわち基材30の表面の接触角は、30度以上であり、45度以上であることが好ましく、60度以上であることがより好ましい。
【0058】
図5は、本実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材の作製方法の他の例を示す概略図である。図5(a)に示すように、平面状等の基材30を準備する。基材30の表面は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的には低親和性である。基材30の表面に膜32を形成し、さらに膜32の表面に接触角制御膜46を形成する。接触角制御膜46の表面は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的に高親和性となる。
【0059】
次に、図5(b)に示すように、接触角制御膜46の表面に予め定めた形状でフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてレジスト膜34を形成する。
【0060】
次に、図5(c)に示すように、エッチング処理等によってレジスト膜34によって覆われていない部分の接触角制御膜46および膜32を除去する。
【0061】
最後に、図5(d)に示すように、レジスト膜34を剥離する。これにより、レジスト膜34のパターンで覆われていた領域は高親和性領域36、覆われていなかった領域は低親和性領域38となり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる領域が複数形成される。
【0062】
ここで、原料の溶液または分散液に含まれる樹脂に対する高親和性領域36、すなわち接触角制御膜46の表面の接触角は、30度以上であり、45度以上であることが好ましく、60度以上であることがより好ましい。
【0063】
高親和性領域の表面層である接触角制御膜46は、窒化チタン、窒化クロム、炭化チタンおよび炭化珪素から選択される少なくとも1つを含んで構成されることが好ましい。これらの材料を接触角制御膜46として用いることにより、固化後の粒子の形状が球形に近づく。その理由は、これらの薄膜の溶融樹脂に対する接触角が酸化膜等の膜32よりも大きいからで、加熱して溶融状態にすると表面張力により球形に近づくことになると考えられる。
【0064】
<液滴形成工程、粒子形成工程>
液滴形成工程では、原料の溶液または分散液の複数の液滴を、基材の表面に形成し、粒子形成工程では、液滴形成工程で形成した液滴を固化して粒子を形成する。
【0065】
例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材を用いて、原料の溶液または分散液を基材の表面の高親和性領域に配分、秤量して液滴を形成する。
【0066】
図6は、本実施形態に係る粒子作製方法の一例を示す概略図である。例えば、図6(a)に示すように、液滴形成手段として浸漬槽等を用いて、高親和性領域36と低親和性領域38とが形成された粒子作製用基材1を分散液16に浸漬する。分散液16に浸漬する前に粒子作製用基材1をバッファードフッ酸(BHF)処理してもよい。液滴形成手段として浸漬法によるもの以外にも、噴霧法、スピンコート法によるもの等を用いればよい。
【0067】
図6(b)に示すように、粒子作製用基材1を分散液16から取り出し、例えば、粒子作製用基材1を僅かに傾けながら振動させると、基材30上の高親和性領域36に選択的に分散液16の液滴40が担持される。ここで、フォトリソグラフィ法等により高精度に形成された複数の高親和性領域36上に原料が溶解または分散された分散液16が担持されるので、原料がほぼ均等に配分、秤量された液滴40が形成される。また、液滴40の粒径や形状は、高親和性領域36の大きさ、形状、分散液16の固形分濃度等を変えることにより制御される。
【0068】
液滴40の溶媒を自然乾燥等により乾燥させると、図6(c)に示すように、原料粒子同士を引き付け合うように表面張力が原料粒子に働き、高親和性領域36上に原料が集積化されて固化され、粒子42が形成される。なお、粒子形成手段として加熱装置等を用いて、粒子作製用基材1を加熱して溶媒を乾燥させて固化してもよい。例えば、樹脂のガラス転移温度未満の温度で加熱して、溶媒を乾燥させて固化すればよい。また、粒子形成手段として減圧装置等を用いて、粒子作製用基材1を減圧処理して、固化してもよい。また、原料が分離しなければ必ずしも加熱や減圧をしなくてもよい。
【0069】
最後に、図6(d)に示すように、粒子作製用基材1を樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱する。これにより、他の原料が樹脂により融合される。ここで、樹脂に対する高親和性領域36の表面の接触角が30度以上であるため、離型性が向上し、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子42が容易に得られる。
【0070】
<剥離工程>
剥離工程では、粒子を粒子作製用基材の表面から剥離する。図7は、粒子の剥離方法の一例を示す概略図である。まず、図7(a)に示すように、剥離手段であるゴム製等のブレード44を粒子作製用基材1の表面に接触させる。図7(b)に示すように、例えば、粒子作製用基材1を矢印方向に移動させて、ブレード44により粒子作製用基材1の表面から粒子42を剥ぎ取る。なお、粒子作製用基材1でなく、ブレード44を移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。また、剥離手段として超音波発生装置を用いて、粒子作製用基材1に超音波等の振動を印加して振動させて、粒子42を粒子作製用基材1から剥離してもよい。剥離手段として気体吹きつけ装置等を用いて、粒子作製用基材1に圧縮空気等の気体を吹きつけて、粒子42を粒子作製用基材1から剥離してもよい。粒子42を剥離した後の粒子作製用基材1は、必要に応じて洗浄処理等を施した後、再利用できる。
【0071】
このようにして作製した粒子の体積平均粒径は、例えば、1μm以上10μm以下の範囲であり、3μm以上6μm以下の範囲である。また、個数平均粒径は、例えば、1μm以上10μm以下の範囲であり、3μm以上6μm以下の範囲である。
【0072】
前記体積平均粒径および個数平均粒径の測定は、コールターマルチサイザII型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャ径で測定することにより行われる。この時、測定は粒子を電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、撹拌により30秒分散させた後に行う。
【0073】
また、このようにして作製した粒子の体積平均粒度分布指標GSDvは、例えば、1.2以下であり、1.1程度である。
【0074】
なお、体積平均粒径D50vおよび体積平均粒度分布指標GSDvは、以下のようにして求める。前述のコールターマルチサイザII型(ベックマン−コールター社製)で測定される粒子の粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84pと定義する。この際、D50vは体積平均粒径を表し、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として求められる。なお、(D84p/D16p)1/2は数平均粒度分布指標(GSDp)を表す。
【0075】
図7(b)で粒子作製用基材から剥離した粒子をそのまま所望の目的に利用してもよいし、このように作製した粒子を溶媒に分散させた粒子分散液を調製し(粒子分散液調製工程)、その粒子分散液に、上記原料と同じまたは異なる粒子形成用の原料を混合して粒子に上記原料と同じまたは異なる粒子形成用の原料を付着させて粒子を成長させてもよい(成長工程)。また、粒子を、上記原料と同じまたは異なる粒子形成用の原料の溶液または分散液に混合して、粒子の周囲に原料を付着させて粒子を成長させてもよい。このように成長させた粒子を加熱および減圧のうち少なくとも1つによりさらに融合してもよい(融合工程)。
【0076】
本発明の実施形態に係る粒子作製装置は、粒子形成用の樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の高親和性領域の上に形成する液滴形成手段と、液滴を固化して粒子を形成する粒子形成手段と、粒子を前記基材の表面から剥離する剥離手段と、を有し、高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上であるものである。また、フォトリソグラフィ法を利用して、基材の表面に、溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とを形成する基材作製手段を有していてもよい。
【0077】
液滴形成手段としては、上記の通り、浸漬法、噴霧法、スピンコート法によるもの等が挙げられる。粒子形成手段としては、上記の通り、加熱装置、減圧装置等が挙げられる。剥離手段としては、上記の通り、ブレード、超音波発生装置、気体吹きつけ装置等が挙げられる。基材作製手段としては、上記の通り、露光装置等を含むフォトリソグラフ装置等が挙げられる。
【0078】
本発明の実施形態に係る粒子作製用基材は、粒子形成用の樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とを表面に有し、高親和性領域の樹脂に対する接触角が30度以上であるものである。
【0079】
本実施形態に係る粒子作製方法、粒子作製装置および粒子作製用基材は、例えば、樹脂、着色剤、離型剤等を含む静電荷像現像用トナーの製造に用いられる。また、インク、液晶ディスプレイ用スペーサ粒子、化粧品等の製造にも用いられる。
【0080】
本実施形態に係る粒子作製方法において、例えば、直径D1=5μm、ピッチD2=10μmの最密充填で高親和性領域を配置した12インチのウェハを用いて、固形分50質量%の樹脂粒子分散液を高親和性領域に坦持させ、その後乾燥固化すると、直径3.1μmの球形の粒子が1基板当たり約63mg得られ、1バッチ25枚、1時間タクトで生産すると、1日当たり38gの粒子が得られると考えられる。また、ガラス基板(2.4m×2.8m)を用いると、同様に1基板当たり1.5gの粒子が得られ、1バッチ25枚、1時間タクトで生産すると、1日当たり0.9kgの粒子が得られると考えられる。
【0081】
基材30の形状としては、ドラム形状、または、無端ベルト形状等のベルト形状であってもよい。基材30の形状をドラム形状、または、無端ベルト形状等のベルト形状とすることにより、連続処理が可能となり、生産性が向上する。
【0082】
図8は、本実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材1の作製方法の他の例を示す概略図である。図8(a)に示すように、平面状等の基材47を準備する。基材47の表面に原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的に高親和性となる膜48を形成する。膜48に対して、プラズマ処理等によって原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が高くなるように高親和化処理を行ってもよい。
【0083】
基材47としては、例えば、ガラス等であり、基材47の形状としては、矩形状等である。
【0084】
膜48を構成する材料としては、ポリイミド、ポリアミド等の熱硬化性樹脂等の樹脂等が挙げられる。例えば、スピン塗布法、ロール塗布法、浸漬法等の塗布法により、ガラス基材の表面にポリイミド前駆体の膜を形成し、例えば200℃以上300℃以下で加熱してポリイミド膜を形成すればよい。
【0085】
膜48の厚みは、膜が安定であればよく、特に制限はないが、例えば、5μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上30μm以下である。
【0086】
次に、図8(b)に示すように、高親和性である膜48の表面に予め定めた形状でフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてレジスト膜49を形成する。
【0087】
次に、図8(c)に示すように、フッ素プラズマ処理等によってレジスト膜49によって覆われていない部分の膜48を低親和化処理する。
【0088】
次に、図8(d)に示すように、アセトン等の有機溶剤等を用いてレジスト膜49を剥離する。これにより、レジスト膜49のパターンで覆われていた領域は高親和性領域36、覆われていなかった領域は低親和性領域38となり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる領域が複数集積化される。例えば、高親和性領域36は、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が10度以上30度以下であり、低親和性領域38は、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が80度以上90度以下となる。
【0089】
最後に、基材47から膜48を剥離して、ドラム状等の基材に巻きつける。
【0090】
低親和化処理としては、プラズマ処理、熱アニール処理等が挙げられる。膜48を構成する材料がポリイミドの場合、例えば、フッ素原子を含むガス(例えば、CF、CHF等)によるプラズマ処理等が挙げられる。
【0091】
図9は、本実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材の作製方法の他の例を示す概略図である。図9(a)に示すように、平面状等の基材47を準備する。基材47の表面に原料の溶液または分散液の溶媒に対して最終的に低親和性となる膜48を形成する。膜48に対して、プラズマ処理等によって原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が低くなるように低親和化処理を行ってもよい。
【0092】
基材47としては、例えば、ガラス等であり、基材47の形状としては、矩形状等である。
【0093】
膜48を構成する材料としては、フッ化ポリイミド等の熱硬化性樹脂等の樹脂等が挙げられる。例えば、スピン塗布法、ロール塗布法、浸漬法等の塗布法により、ガラス基材の表面にフッ化ポリイミド前駆体の膜を形成し、例えば200℃以上300℃以下で加熱してフッ化ポリイミド膜を形成すればよい。
【0094】
膜48の厚みは、膜が安定であればよく、特に制限はないが、例えば、5μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上30μm以下である。
【0095】
次に、図9(b)に示すように、低親和性である膜48の表面に予め定めた形状でフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてレジスト膜49を形成する。
【0096】
次に、図9(c)に示すように、酸素ガスプラズマ処理等によってレジスト膜49によって覆われていない部分の膜48を高親和化処理する。
【0097】
次に、図9(d)に示すように、アセトン等の有機溶剤等を用いてレジスト膜49を剥離する。これにより、レジスト膜49のパターンで覆われていた領域は低親和性領域38、覆われていなかった領域は高親和性領域36となり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる領域が複数集積化される。例えば、高親和性領域36は、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が10度以上30度以下であり、低親和性領域38は、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が80度以上90度以下となる。
【0098】
最後に、基材47から膜48を剥離して、ドラム状等の基材に巻きつける。
【0099】
高親和化処理としては、プラズマ処理、熱アニール処理等が挙げられる。膜48を構成する材料がフッ化ポリイミドの場合、例えば、酸素ガスプラズマ処理等が挙げられる。
【0100】
図10は、本実施形態に係る粒子作製方法の他の例を示す概略図である。図10に示すのは、ドラム状の基材を用いた例である。例えば、図10に示すように、液滴形成手段として浸漬槽等を用いて、高親和性領域と低親和性領域とが形成されたドラム状基材50をドラムの軸を中心に回転させながら一部を分散液16に浸漬する。分散液16から引き上げられた部分の高親和性領域に選択的に分散液16の液滴が担持される。高親和性領域が膜厚分だけ凸になっていると、「きれ」がよく、再現性良く液滴が高親和性領域上に残る。ドラム状基材50をドラムの周囲に配置されたヒータ54等の加熱手段により加熱し、溶媒を乾燥させると、分散液中の樹脂粒子同士の距離が次第に接近し、やがて互いに接触するようになる。さらに加熱を継続し、樹脂のガラス転移温度(Tg)を超えると樹脂同士が合一し、全体が1つの一体化された樹脂粒子となる。固化した粒子42をゴム製等のブレード52等の剥離手段で掻き取ることにより、ドラム状基材50から離型させて樹脂の粒子42を回収する。回収後のドラム状基材50は再び分散液16に浸漬され、粒子作製が繰り返される。
【0101】
ドラム状基材50の直径は、例えば、3cm以上50cm以下、幅は20cm以上50cm以下とすればよい。ドラム状基材50の表面には上記のような高親和性領域と低親和性領域とが形成され、アレイ状に配置されている。
【0102】
ドラム状基材50において、例えば、図3に示すような最密充填配置にすると基材の利用効率が高くなる。D=5μmの場合、六角形の一辺を例えば10μmにすると、直径20cm、幅30cmのドラム上には、5μmのパターンが約21.8億個配置されることになる。
【0103】
ドラム状基材50を構成する材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂、アルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0104】
加熱手段としては、ハロゲンランプ、シースヒータ等のヒータが挙げられる。
【0105】
剥離手段としては、シリコーンゴム、バイトンゴム等のブレード等が挙げられる。
【0106】
図11は、本実施形態に係る粒子作製方法の他の例を示す概略図である。図11に示すのは、無端ベルト状の基材を用いた例である。例えば、図11に示すように、液滴形成手段として浸漬槽等を用いて、高親和性領域と低親和性領域とが形成された無端ベルト状基材56を支持ロール58等で支えて回転させながら一部を分散液16に浸漬する。分散液16から引き上げられた部分の高親和性領域に選択的に分散液16の液滴が担持される。高親和性領域が膜厚分だけ凸になっていると、「きれ」がよく、再現性良く液滴が高親和性領域上に残る。無端ベルト状基材56をベルトの周囲に配置されたヒータ54等の加熱手段により加熱し、溶媒を乾燥させると、分散液中の樹脂粒子同士の距離が次第に接近し、やがて互いに接触するようになる。さらに加熱を継続し、樹脂のガラス転移温度(Tg)を超えると樹脂同士が合一し、全体が1つの一体化された樹脂粒子となる。固化した粒子42をゴム製等のブレード52等の剥離手段で掻き取ることにより、無端ベルト状基材56から離型させて樹脂の粒子42を回収する。ブレード52の位置を、曲率の大きな支持ロール58に対向させた位置にすることにより、粒子42の剥離効率が高くなる。回収後のドラム状基材50は、クリーニングロール60等の清掃手段で清掃された後、再び分散液16に浸漬され、粒子作製が繰り返される。
【0107】
無端ベルト状基材56の長さは、例えば、30cm以上3m以下、幅は20cm以上50cm以下とすればよい。無端ベルト状基材56の表面には上記のような高親和性領域と低親和性領域とが形成され、アレイ状に配置されている。
【0108】
無端ベルト状基材56において、例えば、図3に示すような最密充填配置にすると基材の利用効率が高くなる。D=5μmの場合、六角形の一辺を例えば10μmにすると、長さ100cm、幅50cmの無端ベルト上には、5μmのパターンが約115億個配置されることになる。
【0109】
無端ベルト状基材56を構成する材料としては、例えば、ポリイミド等の樹脂等が挙げられる。
【0110】
清掃手段としては、スチレンゴム、ブタジエンゴム等のロール等が挙げられる。
【0111】
このように、基材の形状をドラム形状、または、無端ベルト形状等のベルト形状とすることにより、連続処理が可能となり、生産性が向上する。また、剥離工程においてドラムまたはベルトの曲面部分で粒子を剥離することにより、固化後の粒子の剥離効率が向上する。
【0112】
<静電荷像現像用トナー用の原料の分散液の調製>
静電荷像現像用トナーの製造の場合の原料の溶液または分散液の調製について、以下説明する。樹脂粒子を生成するには、通常、重合性単量体と界面活性剤とを水に加え、撹拌してエマルションとする。重合性単量体エマルションが生成したら、該エマルションの好ましくは25質量%以下(すなわち、少量のエマルション)と、遊離基開始剤とを、水相に加えて混合し、所望の反応温度で種重合を開始する。種粒子の生成後、この種粒子含有組成物にさらに残りのエマルションを追加し、所定の温度で、所定の時間、重合を続けて重合を完了し、樹脂粒子(樹脂粒子分散液)を生成させる。
【0113】
前記重合性単量体の種類としては、遊離基開始剤と反応しうるものであれば特に制限はない。重合性単量体の具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類等が挙げられ、これらの重合性単量体は重合されて、単独重合体あるいは共重合体とされる。
【0114】
また、ポリエステル類、ポリウレタン類のような樹脂を界面活性剤とともに水系媒体中でせん断し、分散させてもよい。また、樹脂粒子として、アンモニア成分を含むものも用いられる。
【0115】
樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤を使用すればよく、一般的にはアニオン系界面活性剤が、分散力が強く、樹脂粒子の分散に優れているため、好ましく用いられる。非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0116】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;などが挙げられる。
【0117】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
【0118】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類;などが挙げられる。
【0119】
遊離基開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0120】
本実施形態において、樹脂粒子の大きさは、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上1μm以下程度である。
【0121】
(着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程)
着色剤分散液は、着色剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。同様にして、離型剤分散液は、離型剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。
【0122】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレートなどの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などが挙げられる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0123】
また、着色剤分散液中の着色剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0124】
また離型剤として働くワックスの種類としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス類;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;などが挙げられる。
【0125】
また、離型剤分散液中の離型剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0126】
界面活性剤としては、上記樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0127】
上記調製法により得られた樹脂粒子と、着色剤分散液と、離型剤分散液と、必要に応じて凝集剤と、必要に応じて帯電制御剤と、および必要に応じて他の添加剤とを混合し、原料の溶液または分散液を調製する。得られた原料の溶液または分散液から上記粒子作製方法により、凝集体を生成し、粒子を得る。
【0128】
樹脂粒子は、通常トナーの結着樹脂として用いられ、トナーの固形分に対して75質量%以上98質量%以下程度トナー内に存在する。
【0129】
着色剤は、通常トナー中に、着色に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して1質量%以上15質量%以下程度、好ましくは3質量%以上10質量%以下程度存在する。
【0130】
離型剤として働くワックス類の好ましい量としては、トナーの固形分に対して、5質量%以上20質量%以下程度である。
【0131】
必要に応じて使用される凝集剤は、融合に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.01質量%以上10質量%以下程度を用いればよい。使用する凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のアニオン系界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等の塩類;等が挙げられるが、これらに限るものではない。好ましい凝集剤としては、硝酸等の窒素成分を有するものが挙げられる。
【0132】
また、凝集体の生成等において、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物(キレート化剤)が用いられることがある。
【0133】
帯電制御剤は、帯電させるのに効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.1質量%以上5質量%以下で使用してもよい。適当な帯電制御剤としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物類、重硫酸塩類、シリカ等の帯電制御剤類、アルミニウム錯体のような陰帯電制御剤等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0134】
その他必要に応じて添加剤として、無機粒子等を湿式添加してもよい。湿式添加する無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面の外添剤として使用される全てのものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基等で水に分散して、シリカ等の無機粒子分散液として湿式添加してもよい。
【実施例】
【0135】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0136】
<実施例1>
[樹脂分散液A(ポリエステル樹脂分散液)の作製]
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン72モル部と、エチレングリコール18モル部と、シクロヘキサンジオール10モル部と、テレフタル酸70モル部と、イソフタル酸30モル部とを原料に、触媒としてジブチル錫オキサイドを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち、昇温した後、150℃以上230℃以下で12時間共縮重合反応させ、その後、210℃以上250℃以下で徐々に減圧して、ポリエステル樹脂を合成した。このポリエステル樹脂200モル部と、酢酸エチル240モル部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.2モル部とを用意し、これらをセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモータ(新東科学(株))により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水300モル部を加え、転相乳化させ、その後脱溶剤することによりポリエステル樹脂分散液を得た。これを原料の分散液とした。なお、この樹脂のガラス転移温度は58℃であった。なお、この原料の分散液の固形分濃度は40質量%であった。
【0137】
[樹脂分散液B(スチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂分散液)の作製]
スチレン296モル部、メタクリル酸メチル104モル部を混合し溶解した混合物を、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2モル部をイオン交換水550モル部に溶解した溶液に加えて、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、過硫酸カリウム(和光純薬(株)製)6モル部を溶解したイオン交換水61モル部を投入し、窒素置換を0.1リットル/分で20分行った。その後、フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、固形分濃度が40質量%となるスチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂分散液を調製した。
【0138】
[樹脂分散液C(ポリスチレン樹脂分散液)の作製]
スチレンを400モル部にした以外はスチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂分散液の作製と同様の方法で乳化重合を行い、ポリスチレン樹脂分散液を作製した。固形分濃度は40質量%であった。
【0139】
[樹脂分散液D(スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合樹脂分散液)の作製]
スチレンを120モル部、メタクリル酸メチルを150モル部、アクリル酸を130モル部とした以外はスチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂分散液の作製と同様の方法で乳化重合を行い、樹脂分散液を作製した。固形分濃度は40質量%であった。
【0140】
[粒子の作製]
図2(a)に示すように、平面状の基材30としてシリコンウエハ(直径6インチ、8インチまたは12インチ)を準備し、シリコンウエハの表面を熱酸化して、膜32として熱酸化膜を形成した。接触角計により測定したところ、シリコンウエハおよび熱酸化膜の表面の水に対する接触角はそれぞれ約110度、約30度であった。なお、熱酸化膜の膜厚は500nmであった。
【0141】
図2(b)に示すように、フォトリソグラフィ法を用いてレジスト膜34をパターニングした。なお、レジストパターンは直径d1=5μmの円、ピッチd2は10μmとした。
【0142】
図2(c)に示すように、レジスト膜34をマスクとして、熱酸化膜をエッチングした。
【0143】
図2(d)に示すように、レジスト膜34を剥離した。これにより、レジストパターンで覆われていた領域は高親和性領域(親水領域)36、覆われていなかった領域は低親和性領域(疎水領域)38となり、濡れ性の異なる領域が形成された。これらの領域はフォトリソグラフィ法により形成されるので、直径D1=5.0μmの円であり、精度(3σ)10%以下であった。基材をバッファードフッ酸(BHF1200)に浸漬し、Si表面上の自然酸化膜を除去した。
【0144】
次に、樹脂分散液Aを粒子作製用基材に接触させて、原料粒子を基材の親水領域に集積化して粒子を作製した。図6(a)に示すように、高親和性領域(親水領域)36と低親和性領域(疎水領域)38とが形成された粒子作製用基材1を、分散液16に浸漬した。
【0145】
図6(b)に示すように、粒子作製用基材1を分散液16から取り出し、粒子作製用基材1を僅かに傾けながら振動させると、基材30上の高親和性領域(親水領域)36に選択的に原料分散液が載った。ここで、フォトリソグラフィ法により高精度に形成された高親和性領域(親水領域)36上に原料をほぼ均一に分散した分散液が載るので、原料がほぼ均等に配分されたと考えられる。また、高親和性領域(親水領域)36は膜厚(500nm)の分だけ凸状になっているので、「きれ」がよく、再現性良く液滴がアイランド上に残ったと考えられる。
【0146】
図6(c)に示すように、粒子作製用基材1をオーブンまたはホットプレートを用いて45℃で加熱して、水分をゆっくり蒸発させると溶液中の樹脂粒子同士の距離が次第に接近し、やがて互いに接触した。さらに加熱を継続し、樹脂のガラス転移温度(Tg)を超えると図6(d)に示すように樹脂同士が合一し、全体が1つの一体化された樹脂粒子となった。固化した粒子は概略半球状となり、その直径Rは、高親和性領域(親水領域)36の直径D1および固形分濃度(SC)によって概略数式1のようになる。例えばD1=5μm、SC=25%のとき、Rは2.5μmとなる。なお、このときの高親和性領域の樹脂に対する接触角は41度であった。
【0147】
【数1】

【0148】
図7(a)に示すように、ブレード(硬質ゴム)44を粒子作製用基材1に接触させ、図7(b)に示すように、粒子作製用基材1を矢印方向に移動させて、ブレード44により粒子作製用基材1から粒子を剥ぎ取った。
【0149】
このようにして作製した粒子の粒度分布をコールターマルチサイザで測定したところ、体積平均粒径2.5μm、数平均粒度分布指標(GSDp)は1.15となり、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られた。粒子を回収した後の基材は何度でも再利用可能であった。
【0150】
<実施例2>
図4に示すように、大面積でも比較的安価なガラス基板を用い、ガラス基板の表面にプラズマCVDまたはスパッタ法によりアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを500nm形成した。以下の工程は実施例1と同様にして実施した。このようにして作製した粒子の粒度分布をコールターマルチサイザで測定したところ、体積平均粒径3.0μm、数平均粒度分布指標(GSDp)は1.2となり、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られた。実施例2における高親和性領域の樹脂に対する接触角は30度であった。
【0151】
<実施例3−1〜3−4>
図5に示すように、熱酸化膜上に接触角制御膜としてスパッタ法により窒化チタン(3−1)、窒化クロム(3−2)、炭化チタン(3−3)、炭化珪素(3−4)の薄膜を100nmの膜厚で形成した。以下の工程は実施例1と同様にして実施した。結果を表1に示す。
【0152】
<実施例4−1〜4−4>
樹脂の種類を樹脂分散液Aから樹脂分散液Bに変更した以外は実施例3−1〜3−4と同様にして実施した。窒化チタン(4−1)、窒化クロム(4−2)、炭化チタン(4−3)、炭化珪素(4−4)である。結果を表1に示す。
【0153】
<実施例5−1〜5−4>
樹脂の種類を樹脂分散液Aから樹脂分散液Cに変更した以外は実施例3−1〜3−4と同様にして実施した。窒化チタン(5−1)、窒化クロム(5−2)、炭化チタン(5−3)、炭化珪素(5−4)である。結果を表1に示す。
【0154】
<比較例1−1〜1−4>
樹脂の種類を樹脂分散液Aから樹脂分散液Dに変更した以外は実施例3−1〜3−4と同様にして実施した。窒化チタン(1−1)、窒化クロム(1−2)、炭化チタン(1−3)、炭化珪素(1−4)である。結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
表1によれば以下のことが明らかである。樹脂に対する接触角をある程度以上にすることにより、粒度分布の狭い樹脂粒子を得ることができる。また、膜表面の材質と樹脂を適宜選択することにより接触角を調整し、粒子の粒度分布を変更することができる。なお、本願では狭い粒度分布の樹脂を得るためにはポリエステルが好ましい。
【符号の説明】
【0157】
1 粒子作製用基材、10 樹脂粒子分散液、12 着色剤分散液、14 添加剤分散液、16 分散液、18 溶媒、20 樹脂、22 着色剤、24 添加剤、30,47 基材、32,48 膜、34,49 レジスト膜、36 高親和性領域、38 低親和性領域、40 液滴、42 粒子、44,52 ブレード、46 接触角制御膜、50 ドラム状基材、54 ヒータ、56 無端ベルト状基材、58 支持ロール、60 クリーニングロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の前記高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、
前記液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、
前記粒子を前記基材の表面から剥離する剥離工程と、
を含み、
前記高親和性領域の前記樹脂に対する接触角が30度以上であることを特徴とする粒子作製方法。
【請求項2】
基材の表面に、前記高親和性領域と前記低親和性領域とを形成する基材作製工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒子作製方法。
【請求項3】
前記高親和性領域の表面層が、窒化チタン、窒化クロム、炭化チタンおよび炭化珪素から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子作製方法。
【請求項4】
前記粒子が静電荷像現像用トナーであることを特徴する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子作製方法。
【請求項5】
前記基材がドラム状またはベルト状であることを特徴する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子作製方法。
【請求項6】
樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の前記高親和性領域の上に形成する液滴形成手段と、
前記液滴を固化して粒子を形成する粒子形成手段と、
前記粒子を前記基材の表面から剥離する剥離手段と、
を有し、
前記高親和性領域の前記樹脂に対する接触角が30度以上であることを特徴とする粒子作製装置。
【請求項7】
樹脂を含む原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とを表面に有し、
前記高親和性領域の前記樹脂に対する接触角が30度以上であることを特徴とする粒子作製用基材。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−202142(P2011−202142A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246583(P2010−246583)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】