粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法
【課題】計画した線量分布と実際の線量分布とを一致させ、患部内に均一な線量分布を得ることができる粒子線ビーム照射装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る粒子線ビーム照射装置は、粒子線ビームを生成するビーム生成部と、粒子線ビームの出射を制御するビーム出射制御部と、照射対象の患部を粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って粒子線ビームが走査されるよう、粒子線ビームの位置を2次元で順次指示するビーム走査指示部と、ビーム走査指示部からの指示信号に基づいて粒子線ビームを2次元で走査するビーム走査部と、を備え、ビーム走査指示部は、軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記走査位置を指示する、ことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る粒子線ビーム照射装置は、粒子線ビームを生成するビーム生成部と、粒子線ビームの出射を制御するビーム出射制御部と、照射対象の患部を粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って粒子線ビームが走査されるよう、粒子線ビームの位置を2次元で順次指示するビーム走査指示部と、ビーム走査指示部からの指示信号に基づいて粒子線ビームを2次元で走査するビーム走査部と、を備え、ビーム走査指示部は、軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記走査位置を指示する、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法に係り、特に、炭素等の重粒子線ビームや陽子ビーム等を患部に照射し、がん治療を行う粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、がんは日本国における死因の第1位であり、毎年30万人以上の国民ががんによって死亡している。このような状況の中、治療効果が高い、副作用が少ない、身体的負担が小さい等の優れた特徴を持つことから、炭素等の重粒子ビームや陽子ビーム等を用いた粒子線治療方法が注目されている。この治療方法によれば、加速器から出射された粒子線ビームをがん細胞に照射することで、正常細胞に与える影響を小さくしながら、がん細胞を死滅させることができる。
【0003】
この治療方法において、現在使用されている粒子線照射方法は、拡大ビーム法と呼ばれる方法である。この拡大ビーム法では、粒子線ビームをワブラ法あるいは二重散乱体法と呼ばれる方法によりビーム径を患部サイズ以上に拡大する。その後、形状コリメータと呼ばれる真ちゅう製コリメータにより照射領域を制限することにより、ビーム形状を実質的に患部形状に合致させる。また、ビーム進行方向(ビーム軸方向)にはリッジフィルタと呼ばれるビーム飛程拡大装置によりビームを拡大し、ボーラスと呼ばれるポリエチレン製のビーム飛程整形装置によってビーム停止位置を深い位置での患部形状(外郭)に合致させて照射する。
【0004】
しかしながら、上記の拡大ビーム法は厳密には3次元的に患部形状に合致させることができないため、患部周りの正常細胞への影響を小さくするには限界がある。また、形状コリメータやボーラスは患部(さらには患部に対する照射方向)毎に製作されるので、治療照射後にはこれらが放射線廃棄物として残ってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、粒子線治療のさらに進んだ照射法として、体内患部を3次元的に照射することにより、より高精度にがん細胞の狙い撃ちを行う、3次元照射法の開発が進められている(特許文献1等参照)。
【0006】
3次元照射法の一つがスキャニング照射法と呼ばれる方法である。この方法は、治療部位を仮想的に3次元格子点に切り分け各格子点に対して照射を行う。このような3次元照射方法では、形状コリメータやボーラスを用いることなく、ビーム軸方向についても精度よく患部に合わせることが可能になり、従来の2次元的照射方法と比較して正常細胞への被爆を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、スキャニング照射法においては次のような課題がある。例えばスポットスキャニング照射法と呼ばれる3次元照射法においては、次のように各格子点の照射を行っていく。
【0008】
ある格子点に対して治療計画により決められた線量を照射すると、線量モニタから満了信号が出力され、ビーム出射制御装置はビーム停止命令を出力する。同時に、ビームを走査するためのスキャニング電磁石の電源は、次の照射点に対応した励磁電流値を設定する。電磁石電源の設定が完了したタイミングで、ビーム出射制御装置はビーム開始命令を出力し、次の格子点に対する照射が開始される。これを順次繰り返して、治療部位全域にわたる照射を行う。
【0009】
しかしながら、ビーム出射制御装置がビーム停止命令を出力しても、直ちには完全にビーム出射は停止されないため、漏れ線量が電磁石の励磁電流変更時、すなわち、照射位置の移動中に患部に照射されることになる。各格子点に対する照射線量(設定線量)が小さいときは、漏れ線量の比率(漏れ線量/設定線量)が相対的に大きくなるため、問題になる。
【0010】
ある照射線量(設定線量)を得る場合、ビーム強度を大きくすると、すなわち線量率(単位時間当たりの線量)を高くすると、照射時間は短くてすむ。従って、ビーム強度を大きくすると治療時間を短くすることができる。しかしながら、漏れ電流はビーム強度に比例するため漏れ線量の絶対量が多くなり、結果的に漏れ線量の比率は高くなる。つまり、ビーム強度を大きくした照射、即ち高線量率の照射は、線量精度の低下や線量分布(患部の照射面方向の分布)の均一性の低下をもたらすこととなり、スポットスキャニング照射には適さない。
【0011】
結局、漏れ線量の影響が出ない程度にビーム強度を小さくせざるを得なくなり、この結果各格子点に対する照射時間が長くなり、治療時間も長くなる。
【0012】
この問題を解決するため、非特許文献1では、漏れ線量の存在を前提として各放射格子点の線量を最適化する方法が提案されている。具体的には、各照射点の中間点に仮想照射点を仮定し、この仮想照射点に漏れ線量が照射されると仮定し、治療計画、すなわち各照射格子点に対する照射線量の最適化を行う。この方法では漏れ線量による影響が組み込まれた状態で各照射格子点に対する照射線量の最適化がされているため、漏れ線量の影響が出ないことを前提とした従来の方法に比べるとビーム強度を高くすることができる。非特許文献1には、従来の方法に比べて約10倍程度ビーム強度を高くでき、結果的に約10倍程度高速なスキャニング照射を実現できることが示されている。
【特許文献1】特開2001−212253号公報
【非特許文献1】古川卓司、外8名、「3次元スキャニング照射装置の設計検討」、放射線医学総合研究所HIMACレポート:HIMAC−124、独立行政法人放射線医学総合研究所発行、2007年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、この最適化法は厳密には正しくない。なぜなら、スポットスキャニング法では各格子点間の移動中はビーム出射を停止させるが、漏れ線量はビーム出射停止の直後に集中する。従って、漏れ線量の重心は照射格子点の中間点ではなく、移動前の照射格子点に近い位置にある。このため、治療計画時に仮定した漏れ線量の発生位置(中間点)と実際の漏れ線量の発生位置(移動前の照射格子点に近い位置)とが異なることになり、計画した照射線量分布と実際の照射線量分布とは一致しないことになる。
【0014】
一方、3次元スキャニング法のその他の方法として、ラスタースキャニング法と呼ばれる方法がある。これはスポットスキャニング法と異なって、照射格子点間を移動するときもビーム出射を停止させない照射方法である。ラスタースキャニング法においても、停止点(移動前の格子点)と次の停止点(移動後の格子点)の間の中間点に仮想の照射点を設定し、ビーム位置の移動中に照射される照射線量がこの中間点に照射されたとして治療計画、すなわち各停止点(格子点)における照射線量の最適化を行う。ところが、スキャニング電磁石は、通常、水平方向(X)、垂直方向(Y)の走査をほぼ同じ一定速度で独立に行うため、移動前後の2つの格子点の水平方向の距離と垂直方向の距離が異なる場合には、2つの格子点の中間点を通らない軌跡で移動することになる。このため、スポットスキャニング法と同様に、計画した照射線量分布と実際の照射線量分布とは一致しないことになる。
【0015】
このように、従来の3次元スキャニング照射法では、スポットスキャニング法においては漏れ線量の重心位置が、またラスタースキャニング法においては移動中の照射線量の重心位置が、格子点間の中間点位置と不一致となる。この結果、計画上の平坦な照射線量分布と実際の照射線量分布とが一致せず、特にビーム強度が大きい照射において必要な照射線量分布の平坦度を得られなくなる。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、漏れ線量の重心位置や移動中の照射線量の重心位置を治療計画で使用する中間点に一致させ、必要な放射線量分布の平坦度を得ることができる粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る粒子線ビーム照射装置は、請求項1に記載したように、粒子線ビームを生成するビーム生成部と、前記粒子線ビームの出射を制御するビーム出射制御部と、照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示するビーム走査指示部と、前記ビーム走査指示部からの指示信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査するビーム走査部と、を備え、前記ビーム走査指示部は、前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記走査位置を指示する、ことを特徴とする。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る粒子線ビーム照射方法は、請求項6に記載したように、(a)粒子線ビームを生成し、(b)前記粒子線ビームの出射を制御し、(c)照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示し、(d)指示された信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査する、ステップを備え、ステップ(c)では、前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記粒子線ビームの位置を指示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法によれば、漏れ線量の重心位置や移動中の照射線量の重心位置を治療計画で使用する中間点に一致させ、必要な放射線量分布の平坦度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
(1)構成
図1は、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1の構成例を示す図である。粒子線ビーム照射装置1は、ビーム生成部10、ビーム出射制御部20、ビーム走査部30、ビーム走査指示部40、線量モニタ部50、位置モニタ部51、リッジフィルタ60、レンジシフタ70、制御部80等を備えて構成されている。
【0022】
粒子線ビーム照射装置1は、炭素等の粒子や陽子等を高速に加速して得られる粒子線ビームをがん患者100の患部200に向けて照射し、がん治療を行う装置である。本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、患部200を3次元の格子点に離散化し、各格子点に対して細い径の粒子線ビームを順次走査する3次元スキャニング照射法を実施することが可能である。具体的には、患部200を粒子線ビームの軸方向(図1右上に示す座標系におけるZ軸方向)にスライスと呼ばれる平板状の単位で分割し、分割した各スライス(201a、201b、201c等)の2次元格子点(図1右上に示す座標系におけるX軸及びY軸方向の格子点)を順次走査することによって3次元スキャニングを行っている。
【0023】
ビーム生成部10は、炭素イオンや陽子等の粒子を生成すると共に、シンクロトロン等の加速器によってこれらの粒子を患部200の奥深くまで到達できるエネルギーまで加速して粒子線ビーム90を生成している。
【0024】
ビーム出射制御部20では、制御部80から出力される制御信号に基づいて、生成された粒子線ビーム90の出射のオン、オフ制御を行っている。
【0025】
ビーム走査部30は、粒子線ビーム90をX方向及びY方向に偏向させ、スライス面上を2次元で走査するものであり、X方向に走査するX用電磁石30aとY方向に走査するY用電磁石30bを備えている。X用電磁石30aおよびY用電磁石30bに対しては、走査位置を指示する指示信号として、各電磁石の駆動電流がビーム走査指示部40から印加される。
【0026】
レンジシフタ70は、患部200のZ軸方向の位置を制御する。レンジシフタ70は、例えば複数の厚さのアクリル板から構成されており、これらのアクリル板を組み合わせることによってレンジシフタ70を通過する粒子線ビームのエネルギー、即ち体内飛程を患部200スライスのZ軸方向の位置に応じて段階的に変化させることができる。レンジシフタ70による体内飛程の大きさは通常等間隔で変化するように制御され、この間隔がZ軸方向の格子点の間隔に相当する。なお、体内飛程の切り替え方法としては、レンジシフタ70のように粒子線ビームの径路上に減衰用の物体を挿入する方法のほか、上流機器の制御によって粒子線ビームのエネルギー自体を変更する方法でもよい。
【0027】
リッジフィルタ60は、ブラッグピークと呼ばれる体内深さ方向における線量のシャープなピークを拡散させるために設けられている。ここで、リッジフィルタ60によるブラッグピークの拡散幅は、スライスの厚み、即ちZ軸方向の格子点の間隔と等しくなるように設定される。3次元スキャニング照射用のリッジフィルタ60は、断面が略2等辺三角形のアルミニウム棒状部材を複数並べて構成している。粒子線ビームが2等辺三角形を通過する際に生じる径路長の差異によってブラッグピークのピークを拡散させることが可能であり、2等辺三角形の形状によって拡散幅を所望の値に設定することができる。
【0028】
線量モニタ部50は、照射する線量をモニタするためのものであり、その筐体内に、粒子線の電離作用によって生じた電荷を平行電極で収集する電離箱や、筐体内に配置された二次電子放出膜から放出される二次電子を計測するSEM(Secondary Electron Monitor)装置等によって構成されている。
【0029】
位置モニタ部51は、ビーム走査部30によって走査された粒子線ビームが正しい位置にあるかどうかを識別するためのものであり、線量モニタ部50と類似した構成を有し、電荷収集用の電極が例えば短冊状に分割されたものや、複数のワイヤからなる電極が用いられている。
【0030】
制御部80は、粒子線ビーム照射装置1全体の制御をおこなうためのものであり、ビーム出射制御部20に対するビーム出射のオン、オフ制御、ビーム走査指示部40に対するビーム走査に関する指示、レンジシフタ70に対するスライス変更に伴うレンジシフト量の制御等を行っている。
【0031】
ビーム走査指示部40では、制御部80からの指示に基づいてスライス毎のX方向、Y方向の走査位置や走査タイミングを決定し、X用電磁石30aやY用電磁石30bに対する駆動電流をビーム走査部30に出力している。
【0032】
図1に示した構成自体は従来の装置と基本的には同様のものであるが、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1は、主にビーム走査指示部40における粒子線ビームの操作方法に特徴がある。以下、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1の動作との比較のため、まず従来の動作とその問題点について説明する。
【0033】
(2)従来動作
図2は、従来の装置における3次元スキャニング照射の処理例を示すフローチャートである。
【0034】
まず、患部をビーム軸に対して複数のスライスに仮想的に分割し、分割されたスライスの1つが選択される。最初は例えば患部の最も深い位置にあるスライスが選択される。また選択されたスライスの位置に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ70におけるアクリル板の組み合わせが選択、設定される(ステップST1)。
【0035】
次に、最深スライスにおける患部形状に応じて粒子線ビームを照射する格子点の数nと格子点の位置(Xi、Yi)[i=1〜n]、即ち照射対象のスポットが選択され、ビーム走査部30によりスライス上の格子点位置(Xi、Yi)に粒子線ビームの向きが設定される(ステップST2)。その後、粒子線ビームの出射が開始される(ステップST3)。ビーム走査部30から出力された粒子線ビームは、リッジフィルタ60によって、体内飛程分布幅がスライス幅に対応するようエネルギー分布がZ軸方向に拡大される。
【0036】
格子点(Xi、Yi)に対する照射線量は線量モニタ部50により監視され、対象格子点に対する照射線量が計画した線量に達すると線量満了信号が制御部80に出力され、制御部80はこの信号を受信する(ステップST4)。
【0037】
3次元スキャニング照射法はスポットスキャニング法とラスタースキャニング法に大別される。スポットスキャニング法は、粒子線ビームの位置をある格子点から次の格子点に移動させている間はビーム出射を停止させ、移動完了後にビーム出射を再開させる方法である。従って、同一スライスを走査する間はビーム出射が断続することになる。
【0038】
これに対して、ラスタースキャニング法は、粒子線ビームの位置をある格子点から次の格子点に移動させている間もビーム出射は停止することなく継続される。つまり、同一スライスを走査する間は、ビーム出射は途切れることなく連続する。
【0039】
なお、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの方法であっても、粒子線ビームの位置は各格子点においてで計画された線量に達するまで停止し、計画線量に達した後次の格子点に移動する。
【0040】
そこで、ステップST5では、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの方法であるかを判定し、スポットスキャニング法の場合には、一旦ビーム出射を停止し(ステップST6)、次のスポットへビーム位置を移動させる。この処理を対象とするスライスの最終スポットまで繰り返す(ステップST7)。
【0041】
一方、スポットスキャニング法ではない場合、即ちラスタースキャニング法の場合にはビーム出射を停止することなく最終スポットまでビーム出射を継続する。
【0042】
1つのスライスに対する照射が終了すると(ステップST7のYES)、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの場合も一旦ビーム出射を停止し、ステップST1に戻って次のスライスを選択すると共にレンジシフタ70の設定を変更する。以上の処理を最終スライスに達するまで繰り返す(ステップST9)。
【0043】
上記の照射手順に必要となる各諸元は、例えば照射パターンファイルと呼ばれるデータファイルに記述され、治療照射の開始前に制御部80に転送される。照射パターンファイルには、格子点毎に、スライス位置を与えるレンジシフタ厚、格子点(X、Y)に対応するビーム位置を与えるX用電磁石30aやY用電磁石30bの駆動電流値、各格子点に対する照射線量等が照射順に記述されている。
【0044】
図3は、従来から行われているスライス上の走査パターンの一例を示す図である。開始格子点Aから最終格子点Bに到る軌跡パターンが治療計画で予め定められ、この軌跡パターンにそって一方向に順次粒子線ビームが走査されていく。
【0045】
ところで、前述したように、従来の3次元スキャニング照射法では、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの方法においても以下に示すような課題がある。まず、スポットスキャニング法の課題について説明する。
【0046】
図4は、従来のスポットスキャニング法のビーム走査とビーム出射のタイミング関係を示す図である。図4(a)及び図4(b)は、粒子線ビームをX方向及びY方向に走査するための電磁石駆動電流を夫々示している。図4に示した例では、粒子線ビームの位置がスポット(格子点)i、スポットi+1、スポットi+2の順に走査されており、各スポットでは粒子線ビームの位置は停止している。
【0047】
図4(c)は、ビーム出射のタイミングを示しており、スポットスキャニング法ではスポット間の移動中はビーム出射が停止するように制御される。例えば、スポットiにおける線量は図4(d)に示したように時間の経過に伴って増加し、各スポットに対して予め計画された線量に達すると線量満了信号(図4(e))が出力される。この線量満了信号によってビーム出射を停止すると同時に次のスポットi+1への移動が開始される。
【0048】
しかしながら、前述したようにビーム出射の停止を指示したとしても直ちにビーム出射は停止せず、図4(c)中にハッチングで例示したように移動期間中も漏れ線量が発生する。
【0049】
図5は、各スポットに対する通常照射線量と漏れ線量との関係を模式的に示した図である。図5に示したように、漏れ線量の重心は、スポット間の仮想中間点からずれた位置となる。一方、漏れ線量を考慮した治療計画では、仮想中間点に漏れ線量の総てが照射されると仮定して各スポットにおける線量の最適化が行われる。
【0050】
しかしながら、実際には漏れ線量は仮想中間点には発生せず、移動前のスポット位置に近いところに発生する。このため、治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは異なった分布となり、均一な線量分布を狙ったにもかかわらず不均一な線量分布となってしまう。
【0051】
次に、ラスタースキャニング法の課題について説明する。図6は、従来のスポットスキャニング法のビーム走査とビーム出射のタイミング関係を示す図であり、図7は、スポット位置とビームの移動の様子を示す図である。
【0052】
図6に示したように、ラスタースキャニング法ではスポット間を移動中にもビーム出射は停止することなく連続的に行われる。一方、ビームの移動はX用電磁石30aとY用電磁石30bに所定の駆動電流を印加することによって行われ、通常X方向の移動速度とY方向の移動速度はほぼ同程度である。このため、例えば、Y方向よりもX方向の方が移動量が大きい場合(図7のスポットi+1からスポットi+2に移動するような場合)は、先にY方向が設定値に到達し、遅れてX方向が設定値に到達することになる。したがって、このときのビーム照射位置の軌跡は、図7に太い実線で示した軌跡を辿る。しかしながら、治療計画上は、スポットi+1とスポットi+2を結んだ直線の中間を仮想中間点としており、この仮想中間点に移動期間中の全線量Dが照射されるものと仮定して各スポットにおける線量の最適化が行われる。
【0053】
しかしながら、実際の粒子線ビームは仮想中間点を通らず、太い実線で示した軌跡を辿り、移動中の線量の重心と仮想中間点とは一致しない。このため、ラスタースキャニング法においてもスポットスキャニング法と同様に、ビーム治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは異なった分布となり、均一な線量分布を狙ったにもかかわらず不均一な線量分布となってしまう。
【0054】
(3)本発明の実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の動作
本発明の実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1は上記課題を解決するものであり、以下に粒子線ビーム照射装置1の動作について説明する。
【0055】
図8は、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1のビーム走査及びビーム出射処理の例を示すフローチャートである。図8中、ステップST10からステップST16までが順方向(往路)の走査を示す処理であり、ステップST17からステップST22までが逆方向(復路)の走査を示す処理である。
【0056】
図9は、粒子線ビーム照射装置1の照射順序を示す図である。従来の方法では、軌跡パターンを一方向にのみ辿って走査していたのに対して、本実施形態ではスライス全域を軌跡パターンに沿って順方向に走査した後、折り返して同じ経路を逆方向に走査するようにしている。
【0057】
この往復照射方法は、従来方法で用いていた照射パターンファイルの終わりに、逆順で並び替えた照射パターンを追加することで実現可能である。そのときのシステム制御のタイミングチャートは、照射パターンファイルの記述にしたがい、設定される。
【0058】
図10は、往復照射方法をスポットスキャニング照射法に適用した場合の、通常照射線量と漏れ線量との関係を模式的に示した図である。往路の漏れ線量の重心は移動前のスポット(図10ではスポットi)に近い位置にある。一方、復路の漏れ線量の重心は移動前のスポット(図10ではスポットi+1)に近い位置にある。往路と復路の夫々の漏れ線量の重心は仮想中間点からずれた位置にあるものの、仮想中間点に対して対称な位置にある。つまり、往路と復路の和としての漏れ線量の重心は、治療計画上の仮想中間点と一致する。
【0059】
この結果、治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは一致し、計画通りの均一な線量分布が実際にも得られることになる。
【0060】
図11は、往復照射法をラスタースキャニング法に適用した場合のスポット位置とビームの移動の様子を示す図である。往路でスポットi+1からスポットi+2に移動する場合は従来方法と同様に太い実線の経路を辿る。一方、復路でスポットi+2からスポットi+1に移動する場合は、太い破線の経路を辿る。スポットi+1とスポットi+2の間の往路と復路は仮想中間点に対して対照の関係となる。このため、スポットi+1とスポットi+2の移動期間中の線量を往路と復路の和でみると、その重心は仮想中間点に一致する。この結果、スポットスキャニング法と同様に、治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは一致し、計画通りの均一な線量分布が実際にも得られることになる。
【0061】
(4)その他の実施形態
上述の説明では、1スライス中の全領域にわたり照射を行ったのち、折り返し照射を行う例を示した。このほか、1スライス中の全領域をいくつかにグループ分けし、各々のグループに対して往復照射を行うようにしてもよい。この方法は、例えば図12に例示したように、1スライス中に領域Aと領域Bの2つの領域に患部が分かれているような場合、あるいは、複雑な形状をもつために前後の照射点で距離が離れてしまうような場合に特に有効である。このような場合、例えば、領域Aに対して往路と復路の照射を連続して行った後、領域Bに対して往路と復路の照射を連続して行ってもよいし、領域Aと領域Bに対して往路の照射を連続して行い、その後領域Bと領域Aに対して復路の照射を連続して行ってもよい。つまり、1つのグループに対して往路と復路の照射が連続して行われず、時間的に分断されて行ったとしても同様の効果が得られる。
【0062】
以上説明してきたように、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1及び粒子線ビーム照射方法によれば、計画した線量分布と実際の線量分布とを一致させ、患部内に均一な線量分布を得ることができる。
【0063】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の構成例を示す図。
【図2】従来のビーム走査及びビーム出射の処理例を示すフローチャート。
【図3】従来のビーム走査の概念を説明する図。
【図4】スポットスキャニング法における従来の課題を説明する第1の図。
【図5】スポットスキャニング法における従来の課題を説明する第2の図。
【図6】ラスタースキャニング法における従来の課題を説明する第1の図。
【図7】ラスタースキャニング法における従来の課題を説明する第2の図。
【図8】本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置のビーム走査及びビーム出射の処理例を示すフローチャート。
【図9】本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置のビーム走査方法(往復照射方法)を説明する図。
【図10】本実施形態に係る往復照射方法の効果を説明する図(スポットスキャニング法)。
【図11】本実施形態に係る往復照射方法の効果を説明する図(ラスタースキャニング法)。
【図12】スライスの照射領域をグループ分けした往復照射方法の説明図。
【符号の説明】
【0065】
1 粒子線ビーム照射装置
10 ビーム生成部
20 ビーム出射制御部
30 ビーム走査部
40 ビーム走査指示部
50 線量モニタ部
51 位置モニタ部
60 リッジフィルタ
70 レンジシフタ
80 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法に係り、特に、炭素等の重粒子線ビームや陽子ビーム等を患部に照射し、がん治療を行う粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、がんは日本国における死因の第1位であり、毎年30万人以上の国民ががんによって死亡している。このような状況の中、治療効果が高い、副作用が少ない、身体的負担が小さい等の優れた特徴を持つことから、炭素等の重粒子ビームや陽子ビーム等を用いた粒子線治療方法が注目されている。この治療方法によれば、加速器から出射された粒子線ビームをがん細胞に照射することで、正常細胞に与える影響を小さくしながら、がん細胞を死滅させることができる。
【0003】
この治療方法において、現在使用されている粒子線照射方法は、拡大ビーム法と呼ばれる方法である。この拡大ビーム法では、粒子線ビームをワブラ法あるいは二重散乱体法と呼ばれる方法によりビーム径を患部サイズ以上に拡大する。その後、形状コリメータと呼ばれる真ちゅう製コリメータにより照射領域を制限することにより、ビーム形状を実質的に患部形状に合致させる。また、ビーム進行方向(ビーム軸方向)にはリッジフィルタと呼ばれるビーム飛程拡大装置によりビームを拡大し、ボーラスと呼ばれるポリエチレン製のビーム飛程整形装置によってビーム停止位置を深い位置での患部形状(外郭)に合致させて照射する。
【0004】
しかしながら、上記の拡大ビーム法は厳密には3次元的に患部形状に合致させることができないため、患部周りの正常細胞への影響を小さくするには限界がある。また、形状コリメータやボーラスは患部(さらには患部に対する照射方向)毎に製作されるので、治療照射後にはこれらが放射線廃棄物として残ってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、粒子線治療のさらに進んだ照射法として、体内患部を3次元的に照射することにより、より高精度にがん細胞の狙い撃ちを行う、3次元照射法の開発が進められている(特許文献1等参照)。
【0006】
3次元照射法の一つがスキャニング照射法と呼ばれる方法である。この方法は、治療部位を仮想的に3次元格子点に切り分け各格子点に対して照射を行う。このような3次元照射方法では、形状コリメータやボーラスを用いることなく、ビーム軸方向についても精度よく患部に合わせることが可能になり、従来の2次元的照射方法と比較して正常細胞への被爆を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、スキャニング照射法においては次のような課題がある。例えばスポットスキャニング照射法と呼ばれる3次元照射法においては、次のように各格子点の照射を行っていく。
【0008】
ある格子点に対して治療計画により決められた線量を照射すると、線量モニタから満了信号が出力され、ビーム出射制御装置はビーム停止命令を出力する。同時に、ビームを走査するためのスキャニング電磁石の電源は、次の照射点に対応した励磁電流値を設定する。電磁石電源の設定が完了したタイミングで、ビーム出射制御装置はビーム開始命令を出力し、次の格子点に対する照射が開始される。これを順次繰り返して、治療部位全域にわたる照射を行う。
【0009】
しかしながら、ビーム出射制御装置がビーム停止命令を出力しても、直ちには完全にビーム出射は停止されないため、漏れ線量が電磁石の励磁電流変更時、すなわち、照射位置の移動中に患部に照射されることになる。各格子点に対する照射線量(設定線量)が小さいときは、漏れ線量の比率(漏れ線量/設定線量)が相対的に大きくなるため、問題になる。
【0010】
ある照射線量(設定線量)を得る場合、ビーム強度を大きくすると、すなわち線量率(単位時間当たりの線量)を高くすると、照射時間は短くてすむ。従って、ビーム強度を大きくすると治療時間を短くすることができる。しかしながら、漏れ電流はビーム強度に比例するため漏れ線量の絶対量が多くなり、結果的に漏れ線量の比率は高くなる。つまり、ビーム強度を大きくした照射、即ち高線量率の照射は、線量精度の低下や線量分布(患部の照射面方向の分布)の均一性の低下をもたらすこととなり、スポットスキャニング照射には適さない。
【0011】
結局、漏れ線量の影響が出ない程度にビーム強度を小さくせざるを得なくなり、この結果各格子点に対する照射時間が長くなり、治療時間も長くなる。
【0012】
この問題を解決するため、非特許文献1では、漏れ線量の存在を前提として各放射格子点の線量を最適化する方法が提案されている。具体的には、各照射点の中間点に仮想照射点を仮定し、この仮想照射点に漏れ線量が照射されると仮定し、治療計画、すなわち各照射格子点に対する照射線量の最適化を行う。この方法では漏れ線量による影響が組み込まれた状態で各照射格子点に対する照射線量の最適化がされているため、漏れ線量の影響が出ないことを前提とした従来の方法に比べるとビーム強度を高くすることができる。非特許文献1には、従来の方法に比べて約10倍程度ビーム強度を高くでき、結果的に約10倍程度高速なスキャニング照射を実現できることが示されている。
【特許文献1】特開2001−212253号公報
【非特許文献1】古川卓司、外8名、「3次元スキャニング照射装置の設計検討」、放射線医学総合研究所HIMACレポート:HIMAC−124、独立行政法人放射線医学総合研究所発行、2007年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、この最適化法は厳密には正しくない。なぜなら、スポットスキャニング法では各格子点間の移動中はビーム出射を停止させるが、漏れ線量はビーム出射停止の直後に集中する。従って、漏れ線量の重心は照射格子点の中間点ではなく、移動前の照射格子点に近い位置にある。このため、治療計画時に仮定した漏れ線量の発生位置(中間点)と実際の漏れ線量の発生位置(移動前の照射格子点に近い位置)とが異なることになり、計画した照射線量分布と実際の照射線量分布とは一致しないことになる。
【0014】
一方、3次元スキャニング法のその他の方法として、ラスタースキャニング法と呼ばれる方法がある。これはスポットスキャニング法と異なって、照射格子点間を移動するときもビーム出射を停止させない照射方法である。ラスタースキャニング法においても、停止点(移動前の格子点)と次の停止点(移動後の格子点)の間の中間点に仮想の照射点を設定し、ビーム位置の移動中に照射される照射線量がこの中間点に照射されたとして治療計画、すなわち各停止点(格子点)における照射線量の最適化を行う。ところが、スキャニング電磁石は、通常、水平方向(X)、垂直方向(Y)の走査をほぼ同じ一定速度で独立に行うため、移動前後の2つの格子点の水平方向の距離と垂直方向の距離が異なる場合には、2つの格子点の中間点を通らない軌跡で移動することになる。このため、スポットスキャニング法と同様に、計画した照射線量分布と実際の照射線量分布とは一致しないことになる。
【0015】
このように、従来の3次元スキャニング照射法では、スポットスキャニング法においては漏れ線量の重心位置が、またラスタースキャニング法においては移動中の照射線量の重心位置が、格子点間の中間点位置と不一致となる。この結果、計画上の平坦な照射線量分布と実際の照射線量分布とが一致せず、特にビーム強度が大きい照射において必要な照射線量分布の平坦度を得られなくなる。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、漏れ線量の重心位置や移動中の照射線量の重心位置を治療計画で使用する中間点に一致させ、必要な放射線量分布の平坦度を得ることができる粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る粒子線ビーム照射装置は、請求項1に記載したように、粒子線ビームを生成するビーム生成部と、前記粒子線ビームの出射を制御するビーム出射制御部と、照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示するビーム走査指示部と、前記ビーム走査指示部からの指示信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査するビーム走査部と、を備え、前記ビーム走査指示部は、前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記走査位置を指示する、ことを特徴とする。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る粒子線ビーム照射方法は、請求項6に記載したように、(a)粒子線ビームを生成し、(b)前記粒子線ビームの出射を制御し、(c)照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示し、(d)指示された信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査する、ステップを備え、ステップ(c)では、前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記粒子線ビームの位置を指示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法によれば、漏れ線量の重心位置や移動中の照射線量の重心位置を治療計画で使用する中間点に一致させ、必要な放射線量分布の平坦度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る粒子線ビーム照射装置および粒子線ビーム照射方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
(1)構成
図1は、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1の構成例を示す図である。粒子線ビーム照射装置1は、ビーム生成部10、ビーム出射制御部20、ビーム走査部30、ビーム走査指示部40、線量モニタ部50、位置モニタ部51、リッジフィルタ60、レンジシフタ70、制御部80等を備えて構成されている。
【0022】
粒子線ビーム照射装置1は、炭素等の粒子や陽子等を高速に加速して得られる粒子線ビームをがん患者100の患部200に向けて照射し、がん治療を行う装置である。本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、患部200を3次元の格子点に離散化し、各格子点に対して細い径の粒子線ビームを順次走査する3次元スキャニング照射法を実施することが可能である。具体的には、患部200を粒子線ビームの軸方向(図1右上に示す座標系におけるZ軸方向)にスライスと呼ばれる平板状の単位で分割し、分割した各スライス(201a、201b、201c等)の2次元格子点(図1右上に示す座標系におけるX軸及びY軸方向の格子点)を順次走査することによって3次元スキャニングを行っている。
【0023】
ビーム生成部10は、炭素イオンや陽子等の粒子を生成すると共に、シンクロトロン等の加速器によってこれらの粒子を患部200の奥深くまで到達できるエネルギーまで加速して粒子線ビーム90を生成している。
【0024】
ビーム出射制御部20では、制御部80から出力される制御信号に基づいて、生成された粒子線ビーム90の出射のオン、オフ制御を行っている。
【0025】
ビーム走査部30は、粒子線ビーム90をX方向及びY方向に偏向させ、スライス面上を2次元で走査するものであり、X方向に走査するX用電磁石30aとY方向に走査するY用電磁石30bを備えている。X用電磁石30aおよびY用電磁石30bに対しては、走査位置を指示する指示信号として、各電磁石の駆動電流がビーム走査指示部40から印加される。
【0026】
レンジシフタ70は、患部200のZ軸方向の位置を制御する。レンジシフタ70は、例えば複数の厚さのアクリル板から構成されており、これらのアクリル板を組み合わせることによってレンジシフタ70を通過する粒子線ビームのエネルギー、即ち体内飛程を患部200スライスのZ軸方向の位置に応じて段階的に変化させることができる。レンジシフタ70による体内飛程の大きさは通常等間隔で変化するように制御され、この間隔がZ軸方向の格子点の間隔に相当する。なお、体内飛程の切り替え方法としては、レンジシフタ70のように粒子線ビームの径路上に減衰用の物体を挿入する方法のほか、上流機器の制御によって粒子線ビームのエネルギー自体を変更する方法でもよい。
【0027】
リッジフィルタ60は、ブラッグピークと呼ばれる体内深さ方向における線量のシャープなピークを拡散させるために設けられている。ここで、リッジフィルタ60によるブラッグピークの拡散幅は、スライスの厚み、即ちZ軸方向の格子点の間隔と等しくなるように設定される。3次元スキャニング照射用のリッジフィルタ60は、断面が略2等辺三角形のアルミニウム棒状部材を複数並べて構成している。粒子線ビームが2等辺三角形を通過する際に生じる径路長の差異によってブラッグピークのピークを拡散させることが可能であり、2等辺三角形の形状によって拡散幅を所望の値に設定することができる。
【0028】
線量モニタ部50は、照射する線量をモニタするためのものであり、その筐体内に、粒子線の電離作用によって生じた電荷を平行電極で収集する電離箱や、筐体内に配置された二次電子放出膜から放出される二次電子を計測するSEM(Secondary Electron Monitor)装置等によって構成されている。
【0029】
位置モニタ部51は、ビーム走査部30によって走査された粒子線ビームが正しい位置にあるかどうかを識別するためのものであり、線量モニタ部50と類似した構成を有し、電荷収集用の電極が例えば短冊状に分割されたものや、複数のワイヤからなる電極が用いられている。
【0030】
制御部80は、粒子線ビーム照射装置1全体の制御をおこなうためのものであり、ビーム出射制御部20に対するビーム出射のオン、オフ制御、ビーム走査指示部40に対するビーム走査に関する指示、レンジシフタ70に対するスライス変更に伴うレンジシフト量の制御等を行っている。
【0031】
ビーム走査指示部40では、制御部80からの指示に基づいてスライス毎のX方向、Y方向の走査位置や走査タイミングを決定し、X用電磁石30aやY用電磁石30bに対する駆動電流をビーム走査部30に出力している。
【0032】
図1に示した構成自体は従来の装置と基本的には同様のものであるが、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1は、主にビーム走査指示部40における粒子線ビームの操作方法に特徴がある。以下、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1の動作との比較のため、まず従来の動作とその問題点について説明する。
【0033】
(2)従来動作
図2は、従来の装置における3次元スキャニング照射の処理例を示すフローチャートである。
【0034】
まず、患部をビーム軸に対して複数のスライスに仮想的に分割し、分割されたスライスの1つが選択される。最初は例えば患部の最も深い位置にあるスライスが選択される。また選択されたスライスの位置に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ70におけるアクリル板の組み合わせが選択、設定される(ステップST1)。
【0035】
次に、最深スライスにおける患部形状に応じて粒子線ビームを照射する格子点の数nと格子点の位置(Xi、Yi)[i=1〜n]、即ち照射対象のスポットが選択され、ビーム走査部30によりスライス上の格子点位置(Xi、Yi)に粒子線ビームの向きが設定される(ステップST2)。その後、粒子線ビームの出射が開始される(ステップST3)。ビーム走査部30から出力された粒子線ビームは、リッジフィルタ60によって、体内飛程分布幅がスライス幅に対応するようエネルギー分布がZ軸方向に拡大される。
【0036】
格子点(Xi、Yi)に対する照射線量は線量モニタ部50により監視され、対象格子点に対する照射線量が計画した線量に達すると線量満了信号が制御部80に出力され、制御部80はこの信号を受信する(ステップST4)。
【0037】
3次元スキャニング照射法はスポットスキャニング法とラスタースキャニング法に大別される。スポットスキャニング法は、粒子線ビームの位置をある格子点から次の格子点に移動させている間はビーム出射を停止させ、移動完了後にビーム出射を再開させる方法である。従って、同一スライスを走査する間はビーム出射が断続することになる。
【0038】
これに対して、ラスタースキャニング法は、粒子線ビームの位置をある格子点から次の格子点に移動させている間もビーム出射は停止することなく継続される。つまり、同一スライスを走査する間は、ビーム出射は途切れることなく連続する。
【0039】
なお、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの方法であっても、粒子線ビームの位置は各格子点においてで計画された線量に達するまで停止し、計画線量に達した後次の格子点に移動する。
【0040】
そこで、ステップST5では、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの方法であるかを判定し、スポットスキャニング法の場合には、一旦ビーム出射を停止し(ステップST6)、次のスポットへビーム位置を移動させる。この処理を対象とするスライスの最終スポットまで繰り返す(ステップST7)。
【0041】
一方、スポットスキャニング法ではない場合、即ちラスタースキャニング法の場合にはビーム出射を停止することなく最終スポットまでビーム出射を継続する。
【0042】
1つのスライスに対する照射が終了すると(ステップST7のYES)、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの場合も一旦ビーム出射を停止し、ステップST1に戻って次のスライスを選択すると共にレンジシフタ70の設定を変更する。以上の処理を最終スライスに達するまで繰り返す(ステップST9)。
【0043】
上記の照射手順に必要となる各諸元は、例えば照射パターンファイルと呼ばれるデータファイルに記述され、治療照射の開始前に制御部80に転送される。照射パターンファイルには、格子点毎に、スライス位置を与えるレンジシフタ厚、格子点(X、Y)に対応するビーム位置を与えるX用電磁石30aやY用電磁石30bの駆動電流値、各格子点に対する照射線量等が照射順に記述されている。
【0044】
図3は、従来から行われているスライス上の走査パターンの一例を示す図である。開始格子点Aから最終格子点Bに到る軌跡パターンが治療計画で予め定められ、この軌跡パターンにそって一方向に順次粒子線ビームが走査されていく。
【0045】
ところで、前述したように、従来の3次元スキャニング照射法では、スポットスキャニング法及びラスタースキャニング法のいずれの方法においても以下に示すような課題がある。まず、スポットスキャニング法の課題について説明する。
【0046】
図4は、従来のスポットスキャニング法のビーム走査とビーム出射のタイミング関係を示す図である。図4(a)及び図4(b)は、粒子線ビームをX方向及びY方向に走査するための電磁石駆動電流を夫々示している。図4に示した例では、粒子線ビームの位置がスポット(格子点)i、スポットi+1、スポットi+2の順に走査されており、各スポットでは粒子線ビームの位置は停止している。
【0047】
図4(c)は、ビーム出射のタイミングを示しており、スポットスキャニング法ではスポット間の移動中はビーム出射が停止するように制御される。例えば、スポットiにおける線量は図4(d)に示したように時間の経過に伴って増加し、各スポットに対して予め計画された線量に達すると線量満了信号(図4(e))が出力される。この線量満了信号によってビーム出射を停止すると同時に次のスポットi+1への移動が開始される。
【0048】
しかしながら、前述したようにビーム出射の停止を指示したとしても直ちにビーム出射は停止せず、図4(c)中にハッチングで例示したように移動期間中も漏れ線量が発生する。
【0049】
図5は、各スポットに対する通常照射線量と漏れ線量との関係を模式的に示した図である。図5に示したように、漏れ線量の重心は、スポット間の仮想中間点からずれた位置となる。一方、漏れ線量を考慮した治療計画では、仮想中間点に漏れ線量の総てが照射されると仮定して各スポットにおける線量の最適化が行われる。
【0050】
しかしながら、実際には漏れ線量は仮想中間点には発生せず、移動前のスポット位置に近いところに発生する。このため、治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは異なった分布となり、均一な線量分布を狙ったにもかかわらず不均一な線量分布となってしまう。
【0051】
次に、ラスタースキャニング法の課題について説明する。図6は、従来のスポットスキャニング法のビーム走査とビーム出射のタイミング関係を示す図であり、図7は、スポット位置とビームの移動の様子を示す図である。
【0052】
図6に示したように、ラスタースキャニング法ではスポット間を移動中にもビーム出射は停止することなく連続的に行われる。一方、ビームの移動はX用電磁石30aとY用電磁石30bに所定の駆動電流を印加することによって行われ、通常X方向の移動速度とY方向の移動速度はほぼ同程度である。このため、例えば、Y方向よりもX方向の方が移動量が大きい場合(図7のスポットi+1からスポットi+2に移動するような場合)は、先にY方向が設定値に到達し、遅れてX方向が設定値に到達することになる。したがって、このときのビーム照射位置の軌跡は、図7に太い実線で示した軌跡を辿る。しかしながら、治療計画上は、スポットi+1とスポットi+2を結んだ直線の中間を仮想中間点としており、この仮想中間点に移動期間中の全線量Dが照射されるものと仮定して各スポットにおける線量の最適化が行われる。
【0053】
しかしながら、実際の粒子線ビームは仮想中間点を通らず、太い実線で示した軌跡を辿り、移動中の線量の重心と仮想中間点とは一致しない。このため、ラスタースキャニング法においてもスポットスキャニング法と同様に、ビーム治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは異なった分布となり、均一な線量分布を狙ったにもかかわらず不均一な線量分布となってしまう。
【0054】
(3)本発明の実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の動作
本発明の実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1は上記課題を解決するものであり、以下に粒子線ビーム照射装置1の動作について説明する。
【0055】
図8は、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1のビーム走査及びビーム出射処理の例を示すフローチャートである。図8中、ステップST10からステップST16までが順方向(往路)の走査を示す処理であり、ステップST17からステップST22までが逆方向(復路)の走査を示す処理である。
【0056】
図9は、粒子線ビーム照射装置1の照射順序を示す図である。従来の方法では、軌跡パターンを一方向にのみ辿って走査していたのに対して、本実施形態ではスライス全域を軌跡パターンに沿って順方向に走査した後、折り返して同じ経路を逆方向に走査するようにしている。
【0057】
この往復照射方法は、従来方法で用いていた照射パターンファイルの終わりに、逆順で並び替えた照射パターンを追加することで実現可能である。そのときのシステム制御のタイミングチャートは、照射パターンファイルの記述にしたがい、設定される。
【0058】
図10は、往復照射方法をスポットスキャニング照射法に適用した場合の、通常照射線量と漏れ線量との関係を模式的に示した図である。往路の漏れ線量の重心は移動前のスポット(図10ではスポットi)に近い位置にある。一方、復路の漏れ線量の重心は移動前のスポット(図10ではスポットi+1)に近い位置にある。往路と復路の夫々の漏れ線量の重心は仮想中間点からずれた位置にあるものの、仮想中間点に対して対称な位置にある。つまり、往路と復路の和としての漏れ線量の重心は、治療計画上の仮想中間点と一致する。
【0059】
この結果、治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは一致し、計画通りの均一な線量分布が実際にも得られることになる。
【0060】
図11は、往復照射法をラスタースキャニング法に適用した場合のスポット位置とビームの移動の様子を示す図である。往路でスポットi+1からスポットi+2に移動する場合は従来方法と同様に太い実線の経路を辿る。一方、復路でスポットi+2からスポットi+1に移動する場合は、太い破線の経路を辿る。スポットi+1とスポットi+2の間の往路と復路は仮想中間点に対して対照の関係となる。このため、スポットi+1とスポットi+2の移動期間中の線量を往路と復路の和でみると、その重心は仮想中間点に一致する。この結果、スポットスキャニング法と同様に、治療計画段階で狙った患部の照射線量分布と実際に得られる照射線量分布とは一致し、計画通りの均一な線量分布が実際にも得られることになる。
【0061】
(4)その他の実施形態
上述の説明では、1スライス中の全領域にわたり照射を行ったのち、折り返し照射を行う例を示した。このほか、1スライス中の全領域をいくつかにグループ分けし、各々のグループに対して往復照射を行うようにしてもよい。この方法は、例えば図12に例示したように、1スライス中に領域Aと領域Bの2つの領域に患部が分かれているような場合、あるいは、複雑な形状をもつために前後の照射点で距離が離れてしまうような場合に特に有効である。このような場合、例えば、領域Aに対して往路と復路の照射を連続して行った後、領域Bに対して往路と復路の照射を連続して行ってもよいし、領域Aと領域Bに対して往路の照射を連続して行い、その後領域Bと領域Aに対して復路の照射を連続して行ってもよい。つまり、1つのグループに対して往路と復路の照射が連続して行われず、時間的に分断されて行ったとしても同様の効果が得られる。
【0062】
以上説明してきたように、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1及び粒子線ビーム照射方法によれば、計画した線量分布と実際の線量分布とを一致させ、患部内に均一な線量分布を得ることができる。
【0063】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の構成例を示す図。
【図2】従来のビーム走査及びビーム出射の処理例を示すフローチャート。
【図3】従来のビーム走査の概念を説明する図。
【図4】スポットスキャニング法における従来の課題を説明する第1の図。
【図5】スポットスキャニング法における従来の課題を説明する第2の図。
【図6】ラスタースキャニング法における従来の課題を説明する第1の図。
【図7】ラスタースキャニング法における従来の課題を説明する第2の図。
【図8】本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置のビーム走査及びビーム出射の処理例を示すフローチャート。
【図9】本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置のビーム走査方法(往復照射方法)を説明する図。
【図10】本実施形態に係る往復照射方法の効果を説明する図(スポットスキャニング法)。
【図11】本実施形態に係る往復照射方法の効果を説明する図(ラスタースキャニング法)。
【図12】スライスの照射領域をグループ分けした往復照射方法の説明図。
【符号の説明】
【0065】
1 粒子線ビーム照射装置
10 ビーム生成部
20 ビーム出射制御部
30 ビーム走査部
40 ビーム走査指示部
50 線量モニタ部
51 位置モニタ部
60 リッジフィルタ
70 レンジシフタ
80 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線ビームを生成するビーム生成部と、
前記粒子線ビームの出射を制御するビーム出射制御部と、
照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示するビーム走査指示部と、
前記ビーム走査指示部からの指示信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査するビーム走査部と、
を備え、
前記ビーム走査指示部は、
前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記走査位置を指示する、
ことを特徴とする粒子線ビーム照射装置。
【請求項2】
前記スライスが2以上の領域に分割されている場合において、
前記ビーム走査指示部は、
各分割領域に対して与えられる軌跡パターンの夫々に対して順方向と逆方向の走査を行うよう前記粒子線ビームの位置を指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項3】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
前記ビーム走査指示部は、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
前記ビーム出射制御部は、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときは前記粒子線ビームの出射を停止する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項4】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
前記ビーム走査指示部は、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
前記ビーム出射制御部は、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときも前記粒子線ビームの出射を継続する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項5】
前記ビーム走査部は前記粒子線ビームを独立な2方向に走査可能であり、それぞれの方向の移動速度は略一定である、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項6】
(a)粒子線ビームを生成し、
(b)前記粒子線ビームの出射を制御し、
(c)照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示し、
(d)指示された信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査する、
ステップを備え、
ステップ(c)では、
前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記粒子線ビームの位置を指示する、
ことを特徴とする粒子線ビーム照射方法。
【請求項7】
前記スライスが2以上の領域に分割されている場合において、
ステップ(c)では、
各分割領域に対して与えられる軌跡パターンの夫々に対して順方向と逆方向の走査を行うよう前記粒子線ビームの位置を指示する、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項8】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
ステップ(c)では、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
ステップ(b)では、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときは前記粒子線ビームの出射を停止する、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項9】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
ステップ(c)では、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
ステップ(b)では、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときも前記粒子線ビームの出射を継続する、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項10】
ステップ(d)では、前記粒子線ビームを独立な2方向に走査可能であり、それぞれの方向の移動速度は略一定である、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項1】
粒子線ビームを生成するビーム生成部と、
前記粒子線ビームの出射を制御するビーム出射制御部と、
照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示するビーム走査指示部と、
前記ビーム走査指示部からの指示信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査するビーム走査部と、
を備え、
前記ビーム走査指示部は、
前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記走査位置を指示する、
ことを特徴とする粒子線ビーム照射装置。
【請求項2】
前記スライスが2以上の領域に分割されている場合において、
前記ビーム走査指示部は、
各分割領域に対して与えられる軌跡パターンの夫々に対して順方向と逆方向の走査を行うよう前記粒子線ビームの位置を指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項3】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
前記ビーム走査指示部は、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
前記ビーム出射制御部は、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときは前記粒子線ビームの出射を停止する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項4】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
前記ビーム走査指示部は、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
前記ビーム出射制御部は、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときも前記粒子線ビームの出射を継続する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項5】
前記ビーム走査部は前記粒子線ビームを独立な2方向に走査可能であり、それぞれの方向の移動速度は略一定である、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項6】
(a)粒子線ビームを生成し、
(b)前記粒子線ビームの出射を制御し、
(c)照射対象の患部を前記粒子線ビームの軸方向に分割したスライスに対して、そのスライスに設定された所定の軌跡パターンに沿って前記粒子線ビームが走査されるよう、前記粒子線ビームの位置を2次元で順次指示し、
(d)指示された信号に基づいて前記粒子線ビームを2次元で走査する、
ステップを備え、
ステップ(c)では、
前記軌跡パターンを順方向に辿って走査した後、その軌跡パターンを逆方向に辿って走査するよう前記粒子線ビームの位置を指示する、
ことを特徴とする粒子線ビーム照射方法。
【請求項7】
前記スライスが2以上の領域に分割されている場合において、
ステップ(c)では、
各分割領域に対して与えられる軌跡パターンの夫々に対して順方向と逆方向の走査を行うよう前記粒子線ビームの位置を指示する、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項8】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
ステップ(c)では、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
ステップ(b)では、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときは前記粒子線ビームの出射を停止する、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項9】
前記軌跡パターンは、前記スライス全体の範囲をカバーするよう割り付けられた複数の格子点を結ぶ軌跡パターンであり、
ステップ(c)では、前記各格子点において所定の照射時間だけ停止しながら前記粒子線ビームを前記軌跡パターンに沿って移動させ、
ステップ(b)では、前記粒子線ビームが前記各格子点の間を移動しているときも前記粒子線ビームの出射を継続する、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【請求項10】
ステップ(d)では、前記粒子線ビームを独立な2方向に走査可能であり、それぞれの方向の移動速度は略一定である、
ことを特徴とする請求項6に記載の粒子線ビーム照射方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−66106(P2009−66106A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236398(P2007−236398)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]