説明

粒子線治療ネットワークシステム

【課題】機能の特化と分散により効率よく採算性のよい粒子線治療装置の導入を可能にする粒子線治療ネットワークシステムを得る。
【解決手段】粒子線治療装置本体24を有する粒子線治療センター5と、この粒子線治療センター5と提携する窓口病院1a、1b、1cに、それぞれ粒子線治療装置本体24の線源データ及びジオメトリデータを有する放射線治療計画装置16、21を設置し、窓口病院1a、1b、1cの放射線治療計画装置16にて治療計画を立案し、この立案した治療計画を粒子線治療センター5に送り、粒子線治療センター5では、放射線治療計画装置21にて、送られた治療計画を確認し、確認された治療計画に基づき、粒子線治療を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線治療装置が大規模でかつ、高度で多様な技術を必要とする放射線治療装置であるため、医療機関が、粒子線治療装置の導入を計画する際に問題となる工期、資金調達、立地、運用、収益性、運転・保守において生ずる障害を軽減する粒子線治療ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の粒子線治療施設は、放射線関係の診断及び治療に特化された病院の一施設として病院に併設されるか、放射線治療の診断の窓口となる病院と提携して粒子線治療に特化した病院に併設されるか、国の支援と自治体の大規模予算によって総合病院の放射線治療部門の1施設として病院に併設されてきた。
また、従来の粒子線治療を受ける患者は、狭い範囲に限定され、患者数も比較的少数に限定されてきた。しかし、最近、治療を受ける患者は増加の傾向にあり、かつ全国的に広がって来つつあり、また、粒子線治療装置及び付帯設備は、ますます高度化、複雑化し、装置の導入には巨額の資金と高度の技術が必要になってきている。
特許文献1には、複数の放射線治療装置のデータをデータベースにし、1台の放射線治療計画装置が、複数の放射線治療装置による治療のための治療計画を立てられるようにしたものが示されている。
また、特許文献2には、放射線治療施設で撮影された患部の画像データを専門医の居る施設に設置された放射線治療計画装置にネットワークを介して送信して、専門医により治療計画を立てるようにしたものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−242722号公報(第5〜9頁、図1)
【特許文献2】特開2002−272863号公報(第7〜9頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放射線治療施設は、診断部門、検査部門、内科、外科、放射線科、等々を有する総合病院の中で、治療部門の1施設として位置づけられてきた。しかるに、粒子線治療施設は、従来の放射線治療施設と比較して、装置の規模が大きく、運転には高度で幅広い技術が必要であり、従来の放射線治療機器として位置づけることは困難になってきた。
以下に粒子線治療装置導入の際の主要な課題を示す。
【0005】
粒子線治療装置を1病院で導入(病院併設型の粒子線治療設備の導入)を図ろうとすると、装置のみの建設工期が約3年と長く、治検に必要な臨床試験などを含めるとさらに1年程度を要し、実際の営業治療を始めるまで資金回収が出来ず、資金融資を受ける障害となっている。
また、粒子線治療装置は、機器の小型化の開発が進められているが、通常の医療機器と比べると、格段に広い設置面積が必要であり、立地条件に制約がある。また、人口密集地では、放射線利用に対する特別な配慮が必要である。
【0006】
粒子線治療設備は、巨大な資金が必要である。設備運営面では、治療設備としての採算を確保していく上で、年間400〜800人の患者を確保し、治療する必要がある。1地域、1病院では、このような患者の確保は困難である。
また、粒子線治療に関連した診断に必要な検査機器、診断機器及び人材を確保し、運営する必要がある。1地域、1病院では、これらの機材及び人材の確保は困難であり、かつ非効率的である。
【0007】
粒子線治療設備運用には、高度な放射線治療の知識と技術とが必要である。現状では、粒子線治療の知識・技術を習得した要員(医師、医学物理士、放射線技師)の確保が非常に困難な状況にあり、またそれらの人材育成にもかなりの期間を要する。一方、装置運転、施設運用に関しても、粒子線治療装置に精通した技術者が必要である。それらの人材の確保、あるいは育成もかなり困難な状況にある。
【0008】
粒子線治療装置の故障による長期間の治療の中断は、治療効果の喪失等で治療そのものに影響すると同時に治療出来る患者数の減少にもなり、収益面でも問題が生じる。また、粒子線治療設備のような大規模設備では、定期点検が必要であり、定期点検時の装置運転停止による治療中断も治療出来る患者数の減少となり、収益面の悪化を招くなどの問題がある。
また、従来の治療連携を想定したシステムでは、セキュリティ機能が完全に確保されておらず、データの暗号化にとどまっている。遠隔地からのデータが正しいデータか、遠隔診断医本人が診断したデータであるか、治療計画医本人が計画したデータであるかを保証することができないなどの問題がある。
【0009】
特許文献1のものでは、遠隔地の各施設間で機能的に連携を取り、治療計画や粒子線治療を柔軟に実施するようにしたものではなかった。
また、特許文献2のものでは、専門医の居る施設に設置された放射線治療計画装置で治療計画を立てるだけのものであり、計算機によって患部とランドマークとの位置関係を有する参照画像を治療施設に送信するものであって、遠隔地の各施設間で機能的に連携を取り、治療計画や粒子線治療を柔軟に実施するものであるとは言えなかった。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、機能の特化と分散により効率よく採算性のよい粒子線治療装置の導入を可能にする粒子線治療ネットワークシステムを得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係わる粒子線治療ネットワークシステムにおいては、第1の治療計画装置を有し、第1の治療計画装置によって計画された治療計画に基づいて治療を施す粒子線治療装置を持たない、粒子線治療患者の受け入れ窓口としての窓口病院、第2の治療計画装置及び治療計画に基づいて治療を施す粒子線治療装置を持った粒子線治療施設、及びこの粒子線治療施設と窓口病院とを接続する外部ネットワークからなる粒子線治療ネットワークシステムであって、窓口病院は、粒子線治療施設の線源データ及びジオメトリデータを保有しており、線源データ及びジオメトリデータを用いて第1の治療計画装置により治療計画を行い、粒子線治療施設は、窓口病院の第1の治療計画装置が計画した治療計画を外部ネットワークを介して第2の治療計画装置に取得し、第2の治療計画装置により取得した治療計画を確認又は再計画した後に粒子線治療装置で粒子線治療患者の治療を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上説明したように、第1の治療計画装置を有し、第1の治療計画装置によって計画された治療計画に基づいて治療を施す粒子線治療装置を持たない、粒子線治療患者の受け入れ窓口としての窓口病院、第2の治療計画装置及び治療計画に基づいて治療を施す粒子線治療装置を持った粒子線治療施設、及びこの粒子線治療施設と窓口病院とを接続する外部ネットワークからなる粒子線治療ネットワークシステムであって、窓口病院は、粒子線治療施設の線源データ及びジオメトリデータを保有しており、線源データ及びジオメトリデータを用いて第1の治療計画装置により治療計画を行い、粒子線治療施設は、窓口病院の第1の治療計画装置が計画した治療計画を外部ネットワークを介して第2の治療計画装置に取得し、第2の治療計画装置により取得した治療計画を確認又は再計画した後に粒子線治療装置で粒子線治療患者の治療を行うので、高価な粒子線治療施設を窓口病院で共同利用することができ、窓口病院では、患者の治療計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの機能間の関連を示す関連図である。
【図2】この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの各関係機関が保有する設備を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムのネットワークを示す系統図である。
【図4】この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示すフロー図である。
【図5】この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの治療計画装置ソフトウェア構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1〜実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの粒子線治療施設を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示すフロー図である。
【図8】この発明の実施の形態2による粒子線治療ネットワークシステムの治療計画装置ソフトウェア構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの機能間の関連を示す関連図である。
【図10】この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示すフロー図である。
【図11】この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示す別のフロー図である。
【図12】この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの治療計画装置ソフトウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
実施の形態1の考え方をまず、説明する。
粒子線によるがん治療を提供する治療専用の共同利用施設“粒子線医療センター”を設立し、その施設に粒子線治療装置、粒子線治療計画装置及び付帯設備などの粒子線治療に必要な装置を導入する。立地には制限を設けない。
自治体内ないしは、近隣自治体を含め分散された各地域の特定の複数の病院と提携し、それらの窓口病院が粒子線治療患者受け入れの窓口として、粒子線治療に先行する患者診断の管理などの業務を担当する。これらの窓口病院には、PET等の画像診断装置を備え、高度な画像診断結果を必須として、患者に対する粒子線治療の適用可否の判断は、窓口病院で実施する。窓口病院で扱う患者は、窓口病院以外の病院からの紹介患者も含める。
各窓口病院には、既設営業中の粒子線治療施設と提携し、その粒子線治療施設とネットワーク接続可能な共通の治療計画装置を導入し、共同利用施設“粒子線医療センター”とも接続可能としておく。各窓口病院は、このネットワークを用い“粒子線医療センター”の稼働前の治療計画の訓練を行い、稼働後の治療計画に備える。
【0015】
共同利用施設“粒子線医療センター”では、その稼働までに、上記の提携先粒子線治療施設で、粒子線治療装置の運用に必要な人材(医師、医学物理士、放射線技師)の育成をすると同時に、窓口病院から患者を派遣してもらい粒子線治療の経験を積む。
共同利用施設“粒子線医療センター”の稼働後は、提携先の粒子線治療施設と提携し、粒子線治療に必要な人材及び装置の運転に必要な人材の融通や、装置の故障時及び点検時の患者の融通を相互に実施する。
共同利用施設“粒子線医療センター”は、提携先粒子線治療施設と高速ネットワークを介した接続により、治療情報、装置の運転、保守(障害、予備部品)情報の共有化をはかり、治療並びに経過観察、装置の運転・保守を実施する。
各窓口病院、粒子線治療施設の治療計画システムには、データ暗号化ソフトウェアと指紋照合装置または顔識別装置などのバイオメトリクス認証(生体認証)を備え、診断データ作成時、治療計画データ作成時、治療計画承認時、治療計画データ送信時に本人確認・認証を実施する。
【0016】
以下に、この発明の実施の形態1を図に基づいて具体的なシステムについて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの機能間の関連を示す関連図である。
図1において、病院1a、1b、1cは、粒子線治療センター5と提携し、患者の窓口となり、粒子線治療する必要のある患者の受付、検査及び診断を受け持つ。患者2a、2cは、病院1a、1b、1cから粒子線治療センター5に送り込まれる。患者情報3a、3cは、粒子線治療センター5に送り込まれる患者2a、2cに関する情報である。粒子線治療センター5は、地方自治体4によって設立管理され、患者2a、2cに対して粒子線治療装置による粒子線治療を行う。また、粒子線治療センター5は、同様の設備を有する粒子線治療施設6と提携している。地方自治体4と粒子線治療センター5との間では、管理情報8が交換され、粒子線治療センター5と提携粒子線治療施設6の間では、粒子線治療技術情報及び運転情報7が交換される。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの各関係機関が保有する設備を示すブロック図である。
図2において、1a、1b、1c、5、6は図1におけるものと同一のものである。病院機器9a、9b、9cは、粒子線治療センター5と提携した病院1a、1b、1cが、粒子線治療を受ける患者2a、2cの検査及び診断を行うために保有する主要な機器で、コンピュータ断層撮影装置CT、磁気共鳴画像撮影装置MR、ポジトロン断層撮影装置PET、放射線治療計画装置RTP、計算機及び高速通信装置が含まれる。
粒子線治療センター機器10は、粒子線治療センター5が、窓口となる病院1a、1b、1cから送り込まれた患者2a、2cを治療するために必要な粒子線治療センター5の機器または設備であり、粒子線がん治療装置PTS、放射線治療計画装置RTP、計算機及び高速通信装置が含まれる。粒子線治療施設機器11は、粒子線治療センター5と提携する粒子線治療施設6が保有すべき機器または設備であり、粒子線がん治療装置PTS、放射線治療計画装置RTPが含まれる。
【0018】
図3は、この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムのネットワークを示す系統図である。
図3において、1a、1b、1c、5、6は図1におけるものと同一のものである。
病院1a、1b、1cは、コンピュータ断層撮影装置12、磁気共鳴画像撮影装置13、ポジトロン断層撮影装置14、院内ネットワーク15、放射線治療計画装置16、高速通信装置17を有し、外部ネットワーク18を介して、粒子線治療センター5及び粒子線治療施設6と接続されている。
粒子線治療センター5は、高速通信装置19(粒子線治療センター5施設内)、粒子線治療センター5施設内のネットワーク20、同施設内の放射線治療計画装置21、同施設内の粒子線治療装置計算機22、粒子線治療装置制御器23、粒子線治療装置本体24を有している。
粒子線治療施設6は、粒子線治療センター5と提携される粒子線治療施設であり、高速通信装置25、院内ネットワーク26、放射線治療計画装置27、粒子線治療装置計算機28、粒子線治療装置制御器29、粒子線治療装置本体30を有している。
【0019】
図4は、この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示すフロー図である。
【0020】
図5は、この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの治療計画装置ソフトウェア構成を示す図である。
図5において、治療計画装置は窓口病院に配置されている。線源データ71a、71bは、それぞれ粒子線治療施設A及び粒子線治療施設Bの粒子線治療装置の線源に関するデータである。ジオメトリデータ72a、72bは、それぞれ粒子線治療施設A及び粒子線治療施設Bの粒子線治療装置の装置内部の構成部品の座標を示すデータであり、記憶装置に保存されている。
このように異なる施設の線源データおよびジオメトリデータを予め保有することにより、患者データ66を有する患者は、異なる粒子線治療施設のパラメータによる治療計画が立てられる。予め登録された診断医・治療計画医が、治療計画を立てたり、治療計画を承認したりする治療計画承認機能601の実施、または患者データ66のデータを保守するデータ保守機能602の実施、さらに線量計算コード67及び患者に対してどの角度でどの位置に粒子線を当てるかを決めた位置決め情報603の取り扱いを行う場合に、認証手段により、バイオメトリクス認証を実施し、認証された者が、データへのアクセス権限をもち、ソフトウェアを利用することができる。
なお、図5は、治療計画装置は、窓口病院に設置されたが、粒子線治療施設の治療計画装置も同じように構成されている。
【0021】
図6は、この発明の実施の形態1による粒子線治療ネットワークシステムの粒子線治療施設を示す構成図であり、図6(a)は、オンラインでの接続例、図6(b)は、メディア経由でのデータ授受に関する図である。
図6(a)において、各粒子線治療施設A、Bは、それぞれ、治療計画装置を構成する治療計画端末102及び治療情報管理サーバ103を有し、ルータ105とF/W(ファイアウォール)104によって他の粒子線治療施設と接続されている。
図6(b)において、各粒子線治療施設A、Bは、それぞれ、治療計画装置を構成する治療計画端末102及び治療情報管理サーバ103を有し、メディアを経由して、保守ネットワーク107を介して互いに接続された保守端末106により、データ授受が行われる。
図6の構成により、図4のデータの送り出し53、データ受け取り54が行われる。互いの粒子線治療施設を連携するためにオンラインで接続するほかに、セキュリティを保つために必要データをメディア経由で、保守ネットワーク107を介して授受することもできる。また、メディア保存、オンライン転送時には、データ暗号化することができる。
【0022】
次に、動作について説明する。
図3に示すように、コンピュータ断層撮影装置12、磁気共鳴画像撮影装置13、ポジトロン断層撮影装置14、院内ネットワーク15、放射線治療計画装置16及び高速通信装置17は、粒子線治療センター5と提携する病院1a、1b、1cに設置され、外部ネットワーク18を介して、粒子線治療センター5と接続され、粒子線治療に必要な情報を互いに交換する。
提携する病院1a、1b、1c(窓口病院)に設置される必要機器のうち、放射線治療計画装置16(第1の治療計画装置)は、粒子線治療センター5(粒子線治療施設)の放射線治療計画装置21(第2の治療計画装置)とデータ共有可能なものとし、ポジトロン断層撮影装置を提携先の病院1a、1b、1cに設置し、がんの検診、粒子線治療の適否の判断、治療計画の一元化をはかる。
放射線治療計画装置16(第1の治療計画装置)は、粒子線治療装置の線源データ及びジオメトリデータを第一の記憶装置に保存し、第一の計算機(図6の治療計画端末102及び治療情報管理サーバ103)により、粒子線治療計画を行う。
放射線治療計画装置21(第2の治療計画装置)は、粒子線治療装置の線源データ及びジオメトリデータを第二の記憶装置に保存し、第二の計算機(図6の治療計画端末102及び治療情報管理サーバ103)により、粒子線治療計画を行う。
また、提携先の粒子線治療施設6に設置されている放射線治療計画装置27は、粒子線治療センター5の放射線治療計画装置21とデータ共有可能な放射線治療計画装置である。
【0023】
次に、図4にしたがって、粒子線治療ネットワークシステムの運用手順について説明する。
窓口病院1では、患者の登録50を行う。このとき診断に用いられたCT、MRデータの登録も行う。次に、治療計画51で、放射線治療計画装置での治療計画を実施し、患者データ取り出し52で、データ保守による患者データの取り出しを行って、データ送り出し53により、粒子線治療施設(粒子線治療センター)へ取り出した患者データを送り出す。
粒子線治療施設では、データ受け取り54にて患者データを受信し、患者データリストア55で患者データを復元し、放射線治療計画装置により治療計画データ確認/再計画56にて、患者データを確認した後に治療57を行う。治療後は、窓口病院1において、経過観察患者フォローアップ58を行う。
【0024】
治療計画51は、図5に示すソフトウェアにより実施される。
図5で、線源データ71aは、粒子線治療施設Aの線源データであり、線源データ71bは、粒子線治療施設Bの線源データである。同様にジオメトリデータ72aは、粒子線治療施設Aのジオメトリデータであり、ジオメトリデータ72bは、粒子線治療施設Bのジオメトリデータである。このように異なる施設の線源データおよびジオメトリデータを予め記憶装置に保有することにより、患者データ66を有する患者は、異なる施設のパラメータで治療計画を行うことができる。これらのデータは、バイオメトリクス認証73によって、予め登録された診断医・治療計画医のみが利用可能であり、他者からのアクセスは、制限されている。診断医・治療計画医が、治療計画承認機能601や線量計算コード67の取り扱いを実施する場合に認証を実施し、アクセス権限がある者がソフトウェアを利用することができ、データ機密性・データ完全性を確保する。
【0025】
実施の形態1によれば、粒子線治療センターは、以上のような形態で設置されるので、既設の大規模病院と提携し、機能分担し、相互間をネットワークで接続したうえで、情報の交換をし、がんの検診、粒子線治療の適否の判断、治療計画の一元化ができ、粒子線による治療に特化した施設を、窓口病院とは地理的に離れた場所に設置した遠隔治療が可能となり、粒子線治療センターに対する立地制約が減る。窓口病院を都会の中に置くことも容易にできるようになる。
診断及び治療に必要な高価な設備・機器も分担されるので、初期投資額が少なく、必要な設備を整えられ、かつ必要な人材と技術と知識を活用できる。
また、粒子線治療施設を共同利用するので、窓口病院を自治体内の各地に分散して設置することにより、患者を効率的に集めることができる。
一方、窓口病院は、高度な粒子線治療に直結する診断を提供できるので、検診患者数の増加も見込める。患者側の立場から見ると、従来の診断医がそのまま粒子線治療についても計画段階で担当となり、安心して診断を受けることができる。
【0026】
実施の形態2.
以下に、この発明の実施の形態2を図に基づいて説明する。
実施の形態2は、治療計画を、地方中核病院、大規模病院、大学病院などで行う場合のものである。
図7は、この発明の実施の形態2による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示すフロー図である。
図7において、50〜58は図4におけるものと同じものであり、その説明を省略する。図7では、50、52、58を粒子線治療施設が実施するようになっている。
【0027】
図8は、この発明の実施の形態2による粒子線治療ネットワークシステムの治療計画装置ソフトウェア構成を示す図である。
図8において、66、67、71〜73、601〜603は図5におけるものと同一のものである。図8では、治療計画装置は、地方中核病院、大規模病院、大学病院などの遠隔治療計画病院に配置されている。
【0028】
図7で、地方中核病院、大規模病院、大学病院などの遠隔治療計画病院は、粒子線治療施設から、データ送り出し59によって送られたデータを、データ受け取り60で受け取る。このとき、受け取るデータは、CT画像、MR画像、PET画像などと患者疾患データである。遠隔治療計画病院は、図8のように粒子線治療施設の線源データ及びジオメトリデータを有しており、受け取ったデータにより、治療計画51を実施する。計画済みの治療計画データは、データ送り出し53で、粒子線治療施設へ送信される。粒子線治療施設では、受け取ったデータを確認して治療と経過観察を行う。
【0029】
実施の形態2によれば、粒子線治療施設は、以上のような形態で設置されるので、患者数が増えて、治療計画に要する時間がなく、また治療計画医師が不足した状態でも、地方中核病院などで治療計画を分担することができ、効率的に粒子線治療を行うことが可能となる。
【0030】
実施の形態3.
以下に、この発明の実施の形態3を図に基づいて説明する。
図9は、この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの機能間の関連を示す関連図であり、粒子線治療センター及びこれと提携する粒子線治療施設並びにこれらにサービス業務を行う粒子線治療施設サービスセンターのそれぞれの関連を示している。
図9において、1a、1b、1c、2a、2c、3a、3c、5〜8は図1におけるものと同一のものである。粒子線治療施設サービスセンター45は、粒子線治療センター5及びこれと提携する粒子線治療施設6の粒子線治療装置の運転及び保守点検を行う。サービス業務46は、粒子線治療施設サービスセンター45が粒子線治療センター5の運転及び保守などを行う業務である。サービス業務46aは、粒子線治療施設サービスセンター45が粒子線治療施設6の運転及び保守などを行う業務である。データ47は、粒子線治療施設サービスセンター45が行う粒子線治療センター5の運転及び保守に関するデータである。データ47aは、粒子線治療施設サービスセンター45が行う粒子線治療施設6の運転及び保守に関するデータである。地元企業48は、粒子線治療センター5にサービス49を提供する。
【0031】
図10は、この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示すフロー図である。
図10において、50、51、57、58は図4におけるものと同一のものであるから、その説明を省略する。図10では、50、51、57を粒子線治療施設Aと粒子線治療施設Bとに配置している。図10は、粒子線治療施設Aで治療が中断したときの動作を示している。
【0032】
図11は、この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの運用を示す別のフロー図である。
図11では、50〜58は図4におけるものと、61、64は図10におけるものとそれぞれ同一のものである。図11では、粒子線治療施設Aで治療中断61したとき、粒子線治療施設Aで、粒子線治療施設Bの線源データ、ジオメトリデータを用いて再治療計画65を行い、患者移動64したのち、粒子線治療施設Bで、再治療計画に基づき、治療57を行うようにしている。
【0033】
図12は、この発明の実施の形態3による粒子線治療ネットワークシステムの治療計画装置ソフトウェア構成を示す図である。
図12において、66、67、71〜73、601〜603は図5におけるものと同一のものである。図12では、治療計画装置は、粒子線治療施設に配置されている。
【0034】
次に、動作について説明する。
図9のように、粒子線治療施設サービスセンター45は、粒子線治療センター5及び粒子線治療施設6の運転及び保守点検等のサービスを行うと同時に、粒子線治療センター5及び提携する粒子線治療施設6の運転及び保守点検の関する運転及び保守点検のデータの管理及び保守に必要な部品の管理も行う。粒子線治療センター5、提携する粒子線治療施設6および粒子線治療施設サービスセンター45の間にはネットワークで、常に運転保守データ及び保守部品を共有すると同時に保守に関するあらゆる情報も共有する。地元企業48は、粒子線治療センター5の建家関連施設の保守点検サービスや治療に必要な一般部品の提供などを行う。
【0035】
次に、図10により、実施の形態3の粒子線治療ネットワークシステムの動作について説明する。
図10では、粒子線治療施設Aで治療中断された場合の動作を示している。
粒子線治療施設A(例えば、粒子線治療センター5)が治療中断61した場合に、必要データ送り出し62によって必要データを提携先の粒子線治療施設B(例えば、粒子線治療施設6)へ送り出す。このとき、送り出すデータは、CT画像、MR画像、PET画像などと患者疾患データである。患者は、患者移動64を行う。粒子線治療施設Bは、データ受け取り63で、このデータを受け取り、受け取ったデータにより、患者登録50bを行った上で、自施設の治療計画装置(第三の治療計画装置)により、線源データ及びジオメトリデータを用いて、治療計画51を実施し、粒子線治療57を実施する。
治療後は、粒子線治療施設Aにおいて、経過観察患者フォローアップ58を行う。
【0036】
図11は、粒子線治療施設Aで治療中断61したとき、粒子線治療施設Aで再治療計画65を行い、患者移動64したのち、粒子線治療施設Bで、再治療計画に基づき、治療を行うようにしたものである。
粒子線治療施設Aが治療中断61した場合に、粒子線治療施設Aでは、図12に示す治療計画装置のソフトウェア構成を利用して、自施設の治療計画装置(第二の治療計画装置)により、粒子線治療施設Bの線源データ、ジオメトリデータで再治療計画65を行う。この治療計画データを提携先の粒子線治療施設Bへデータ送り出し53により送り出す。このとき、送り出すデータは、CT画像、MR画像、PET画像などと患者疾患データである。
提携先の粒子線治療施設Bは、データ受け取り54で、このデータを受け取り、受け取ったデータにより、自施設の治療計画装置(第三の治療計画装置)により、治療計画を確認した上で、粒子線治療57を行う。
治療後は、粒子線治療施設Aにおいて経過観察患者フォローアップ58を行う。
【0037】
実施の形態3によれば、以上のように、装置トラブルが発生した場合の治療中断を最小限に抑えて、粒子線治療を継続することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 病院、2 患者、3 患者データ、4 地方自治体、5 粒子線治療センター、
6 粒子線治療施設、12 コンピュータ断層撮影装置、
13 磁気共鳴画像撮影装置、14 ポジトロン断層撮影装置、
15 院内ネットワーク、16,21,37 放射線治療計画装置、
17 高速通信装置、
18 外部ネットワーク、19,25 高速通信装置、
20,26 施設内ネットワーク、
22,28 粒子線治療装置計算機、23,29 粒子線治療装置制御器、
24,30 粒子線治療装置本体、45 粒子線治療施設サービスセンター、
48 地元企業、66 患者データ、67 線量計算コード、
71 線源データ、72 ジオメトリデータ、73 バイオメトリクス認証、
102 治療計画端末、103 治療情報管理サーバ、
104 F/W、105 ルータ、106 保守端末、107 保守ネットワーク、
601 治療計画承認機能、602 データ保守機能、603 位置決め情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の治療計画装置を有し、該第1の治療計画装置によって計画された治療計画に基づいて治療を施す粒子線治療装置を持たない、粒子線治療患者の受け入れ窓口としての窓口病院、第2の治療計画装置及び治療計画に基づいて治療を施す粒子線治療装置を持った粒子線治療施設、及びこの粒子線治療施設と上記窓口病院とを接続する外部ネットワークからなる粒子線治療ネットワークシステムであって、
上記窓口病院は、上記粒子線治療施設の線源データ及びジオメトリデータを保有しており、該線源データ及びジオメトリデータを用いて上記第1の治療計画装置により治療計画を行い、
上記粒子線治療施設は、上記窓口病院の上記第1の治療計画装置が計画した治療計画を上記外部ネットワークを介して上記第2の治療計画装置に取得し、該第2の治療計画装置により取得した上記治療計画を確認又は再計画した後に上記粒子線治療装置で上記粒子線治療患者の治療を行うことを特徴とする粒子線治療ネットワークシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−92769(P2011−92769A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20587(P2011−20587)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2007−98491(P2007−98491)の分割
【原出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】