説明

粒径の大きな二水石膏の製造方法

【課題】半水化工程の熱量消費を低減するとともに二水化工程の生産性が高い、粒径の大きな二水石膏の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程、
(b)前記(A)で得られた半水石膏と熱水を混合するか、または該半水石膏と水を混合および加熱して、70〜100℃の半水石膏懸濁液を得る懸濁工程、並びに
(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(b)で得られた半水石膏懸濁液を注入し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程
を含むことを特徴とする粒径の大きな二水石膏の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二水石膏を含む石膏廃材から粒径の大きな二水石膏を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボード等の石膏製品は、わが国で長年の間、主に安価な建材として多用されてきた。しかし、石膏製品工場や建築現場において排出される石膏製品の端材や、建築物の解体現場において排出される解体石膏等の石膏廃材は莫大な量になるため、その処理方法が社会的問題になっている。多くの場合、廃棄物処理場に搬送され埋め立てられているが、近年、該処分場が逼迫してきており、埋め立て以外の処理方法が望まれている。
【0003】
例えば、石膏ボード廃材から二水石膏を物理的に分離して回収する方法や、湿式加熱処理して半水石膏を回収する方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、石膏ボード廃材から二水石膏又は半水石膏を回収する際、石膏ボード用原紙等の石膏以外の異物を完全に分離除去することは難しく、純度の高い二水石膏や半水石膏が得られないため一部の使用に限られ、多量に有効利用することは困難であった。
【0004】
そこで、本出願人は、無水石膏が固化材用途に多用されている点に着目して、特定の焼成炉を用いることにより硫黄酸化物の発生を抑えつつ低燃費で石膏廃材から高純度の無水石膏を製造する方法を提案した(特許文献2)。しかして、固化材と水を混合してスラリーの態様で用いる場合には優れた流動性が要求されるが、無水石膏の粒径が小さいと、スラリーの流動性が低下し、ポンプ等による圧送時に不具合が起きやすい。上記製造方法ににおいて原料として用いる石膏の形態は、石膏廃材が再結晶化したできた微粒の二水石膏であるため、得られた無水石膏は、粒径が比較的小さくなる傾向にあり、粒径の大きな無水石膏を得る方法が望まれていた。そのためには、原料の石膏廃材に含まれる二水石膏の粒径を大きくする必要があった。
【0005】
二水石膏の粒径を大きくする技術としては、解体廃石膏ボードの改質技術が提案されている(非特許文献1)。該技術は、解体廃石膏ボードに含まれる二水石膏を熱水中に分散させて加熱・脱水和(半水化工程)して半水石膏を得た後、これを再度、水和・晶析(二水化工程)させて大型の二水石膏を製造する方法である。しかし、この方法では、半水化工程で多くの時間を要するため、余計な熱量を消費することになり、また、晶析工程をバッチ式(非特許文献1、p.80頁、図4−40参照)で行うために生産性が低く、その結果、最終製品である二水石膏がコスト高になる傾向があった。また、この方法においても、石膏ボード用原紙に含まれる繊維質成分が混入するため、その全量を石膏代替として使用することは難しい。
【特許文献1】特開2004−307321号公報
【特許文献2】特開2005−15263号公報
【非特許文献1】NEDO成果報告書データベース バーコード010016992 解体廃石膏ボードの再資源化技術開発成果報告書 第4章 解体廃石膏ボードの改質技術の開発
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半水化工程の熱量消費を低減するとともに二水化工程の生産性が高い、粒径の大きな二水石膏の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情に鑑みて、本発明者らは鋭意研究を行った結果、二水石膏の製造方法において、半水化工程を、水を媒体とせず乾式で行い、かつ二水化工程をバッチ処理から連続処理とすることにより、半水化工程の熱量消費が低減するとともに二水化工程の生産性が高まり、粒径の大きな二水石膏が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程、並びに
(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(A)で得られた半水石膏を添加し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程
を含むことを特徴とする粒径の大きな二水石膏の製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程、
(b)前記(A)で得られた半水石膏と熱水を混合するか、または該半水石膏と水を混合および加熱して、70〜100℃の半水石膏懸濁液を得る懸濁工程、並びに
(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(b)で得られた半水石膏懸濁液を注入し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程
を含むことを特徴とする粒径の大きな二水石膏の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半水化工程の熱量消費が低減されるとともに二水化工程の生産性が高く、粒径の大きな二水石膏を得ることができる。また、この粒径の大きな二水石膏を用いれば、粒径が大きく純度の高い無水石膏を低燃費で得ることができる。
なお、本発明において粒径の大きな石膏とは、平均粒径が10μm以上の石膏をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の二水石膏の製造方法は、(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程と、(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(A)で得られた半水石膏を添加し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程を含むものである。
【0012】
また、(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程と、(b)前記(A)で得られた半水石膏と熱水を混合するか、または該半水石膏と水を混合および加熱して、70〜100℃の半水石膏懸濁液を得る懸濁工程と、(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(b)で得られた半水石膏懸濁液を注入し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程を含むものである。
【0013】
(A)半水化工程:
本発明で用いる二水石膏を含む石膏廃材としては、石膏製品工場や建築現場において排出される石膏製品の端材や、建築物の解体現場において排出される解体石膏、陶磁器等の成形に用いられた石膏型の使用済み廃材等の石膏廃材などが挙げられる。
石膏廃材のうち、石膏ボード廃材において、ボードの強度を補強するための紙が付着している場合には、取り扱いの容易性等の点から、半水化工程前に紙を除去するのが好ましい。また、石膏廃材が塊状の場合は半水化工程前に粉砕等して粉粒体の形態で用いるのが、紙を分離しやすくし、熱が均質に行き渡り、半水化が促進されるため好ましい。
【0014】
石膏廃材中の石膏の多くは二水石膏の形態で存在しており、本発明の半水化工程では、石膏廃材に含まれる二水石膏を半水石膏に脱水和させるため、乾式で100〜250℃、好ましくは110〜150℃に加熱する。加熱温度が100℃未満では脱水和が十分に進まず、250℃を超えると粒径の小さな無水石膏が生成して好ましくない。
【0015】
本発明の半水化工程は乾式で行う。本発明の半水化処理は100℃以上で行うため、水媒体を使用する場合(湿式)は、オートクレーブ等の特別な装置が必要となり、また、二水石膏を加熱する熱量およびこれを半水石膏にするための熱量に加えて、水を加熱する時間が長くかかるために熱量が余計に必要となる。これに比べ乾式の場合は、半水石膏を得るための熱量の消費が少なくて済み、かつ短時間で処理できるため、乾式により行なわれる。
【0016】
乾式で半水化処理するための加熱装置は特に制限されないが、二水石膏を均質に加熱するため、例えば撹拌機付きの加熱装置が好ましい。
また、加熱時間は、1〜120分が好ましく、懸濁工程においてより安定したスラリーにするためには、特に10〜60分が好ましい。
【0017】
本発明においては、(A)半水化工程で得られた半水石膏は、そのまま、あるいは(b)懸濁工程により懸濁液を調製して、(B)二水化工程に付し、二水石膏を製造することができる。
【0018】
(b)懸濁工程:
本発明の懸濁工程においては、前記半水化工程で得られた半水石膏と熱水を混合するか、または該半水石膏と水を混合および加熱して、70〜100℃の半水石膏懸濁液を調製する。半水石膏と水の混合割合は、質量比で1:1〜1:10、特に1:2〜1:5であるのが、混合が十分に行われ、また、熱量が余計に消費されないので好ましい。
【0019】
懸濁液の温度は70〜100℃、好ましくは80〜95℃である。次工程である二水化工程において半水石膏を水和させるため、この懸濁工程において水和が進むのは好ましくない。懸濁工程において、半水石膏から二水石膏への水和を抑制するためには、懸濁液の温度が70〜100℃の範囲であれば良い。また、二水石膏が一部残存している場合でも、かかる温度範囲であれば、水の存在下でも二水石膏を半水石膏にすることができ、好ましい。
【0020】
(B)二水化工程:
本発明の二水化工程においては、晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、前記(A)で得られた半水石膏、または前記(b)で得られた半水石膏の懸濁液を注入して、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる。二水石膏の種結晶の含有量は20〜45質量%であるのが、懸濁液の撹拌が容易であるとともに、晶析した半水石膏の粒径が大きくなり易いので好ましい。
【0021】
また、二水石膏が撹拌翼に衝突して破壊されるのを防ぎつつ結晶を大きく成長させるために、撹拌はゆっくりと行うのが好ましい。この撹拌速度は、晶析槽の大きさおよび撹拌翼の長さや面積により異なるが、例えば晶析槽の内径が.8m、高さが7.5mの場合であって、撹拌翼の全長が3mで、面積が2.2m2の場合には、5〜20回転/分が好ましい。
【0022】
また、懸濁液の温度は10〜60℃、好ましくは30〜60℃である。懸濁液の温度が10℃未満では、晶析槽中の二水石膏の表面が安定化してしまい、この上に二水石膏が新たに生成しても結晶が成長し難く、懸濁液の滞留時間を長くしないと結晶の粒径が大きくならない傾向にある。また、懸濁液の温度が60℃を超えると、上述したように半水石膏から二水石膏への水和が抑制される傾向にある。
【0023】
また、晶析装置内の晶析部における石膏の滞留時間は30分〜3時間が好ましい。滞留時間が30分未満では結晶が十分に成長せず、滞留時間が3時間を越えると生産性が低下する傾向にある。石膏の滞留時間の調整は、晶析装置の容量に応じて半水石膏の懸濁液の注入速度を調整することにより行うことができる。
【0024】
本発明で用いる晶析装置の最良の形態としては、例えば図1に示すように、少なくとも、(イ)半水石膏または半水石膏懸濁液の注入部、(ロ)撹拌翼を備えた晶析部、(ハ)粒径の大きな二水石膏を含む懸濁液を排出する排出部、および(ニ)半水石膏または半水石膏懸濁液の注入によりオーバーフローした懸濁液または上澄み液を排出する排出部を含むものが好ましく、さらに(ホ)前記(二)のオーバーフローした懸濁液を前記(ロ)の晶析部に戻す循環部を含むものが、より好ましい。このような装置を用いれば、二水化処理が連続的に行えるので、バッチ式処理に比べて生産性が飛躍的に向上する。また、粒径の大きな二水石膏は下部から容易に排出・回収できるとともに、粒径の小さな石膏を含む懸濁液がオーバーフローして排出された場合には、当該懸濁液を再度、晶析部に戻して熟成させることにより結晶成長を更に進めることができる。
【0025】
このようにして得られた二水石膏を用い、例えば、以下の方法により粒径の大きな無水石膏を製造することができる。
無水石膏の製造方法は、下部に開口部を備えた内筒と、該内筒を取り囲み下部が逆円錐状に形成された本体とを備えた炉を2段設置し、後段の炉の内筒の内部で燃料を燃焼させて該内筒の下部の開口部から燃焼ガスを噴出させ、該後段の炉の本体に前段の炉で仮焼された石膏を供給し、該石膏を330〜840℃で焼成して無水石膏を得るとともに、前記後段の炉の排気を、除塵機を経て前記前段の炉の内筒に供給し、該前段の炉の内筒の下部の開口部から該排気を噴出させ、該前段の炉の本体に、前記方法で得られた粒径の大きな二水石膏を供給し、該二水石膏を該本体の内部で100〜250℃で仮焼するものである。
【0026】
以下に、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の無水石膏の製造方法の一実施の形態を示すフローチャートである。この無水石膏焼成システムは、仮焼炉(前段の炉)1と、焼成炉(後段の炉)2と、仮焼炉1に、前記方法で得られた粒径の大きな二水石膏Mを供給するためのホッパ4、スクリューフィーダ5及びスクリューコンベア6と、仮焼炉1で仮焼された石膏廃材CGを焼成炉2に搬送するためのルーツブロワ3と、仮焼炉1から排出されたガスが導入され、このガスに含まれるダストを除塵する除塵機としてのサイクロン7と、焼成炉2の本体23に圧縮空気CAを供給するコンプレッサ14と、焼成炉2の本体23に燃焼用空気Aを供給するためのルーツブロワ13と、焼成炉2から排出された燃焼ガスが導入され、この燃焼ガスに含まれるダストを除塵する除塵機、特に高含塵濃度に対応することのできる除塵機としてのサイクロン12と、サイクロン7から排出されたガスに含まれるダストを集塵するバグフィルタ9と、集塵後のガスを大気に放出するファン8と、バグフィルタ9で集塵したダストを仮焼炉1又は焼成炉2に戻すためのスクリューコンベア10、11等で構成される。
【0027】
焼成炉2は、図3乃至図5に示すように、下部にスリット(開口部)25を備えた内筒22と、この内筒22を囲繞するように、下部23aが逆円錐状に形成された本体23とで構成される。
【0028】
内筒22は、本体23の中央部に設置され、上部に燃焼用空気管29を備え、内筒22の中心軸に沿って、燃料としての都市ガスを供給するための燃料供給管21が設置される。また、内筒22の下端部には、複数のスリット25が開設され、このスリット25から燃焼ガスが本体23内に噴出する。なお、内筒22の内部は、燃焼熱によって1200℃程度の高温に曝されるため、内筒22の内壁を冷却することが好ましい。
【0029】
燃料用空気管29には、内筒22における燃料の燃焼用の空気を導入するために設けられ、図2に示したルーツブロワ13から空気が供給される。
【0030】
燃料供給管21は、上方から内筒22の天板22aを貫通するように配置され、燃料供給管21の下端部には、分割炎を得るための多孔板32が設けられる。この燃料供給管21は、上端部の一部を除き、燃料供給管21へ内側から空気を導くための管30によって囲繞されている。
【0031】
本体23は、上述のように、下部23aが逆円錐状に、上部23bが円筒状に形成され、この本体23の内部に供給された石膏CGが燃焼ガスとの熱交換により無水石膏となる。本体23の天板23cを貫通するように、原料供給管26,飛散ダスト戻し管27が配置され、天板23cには、さらに排気管28が接続される。また、下部23aの内壁に沿って、圧縮空気を導入するためのエアーランス24が配置される。下部23aと上部23bとの境界付近が開口され、この開口部23dに連通する製品排出管33が設けられる。なお、本体23の内部の温度を高く維持する場合には、本体23の内壁に耐火物を配設する。
【0032】
原料供給管26は、石膏CGを本体23の内部に供給するために備えられ、原料供給用に、さらに飛散ダスト戻し管27も備えられる。
【0033】
排気管28は、本体23の内部と連通し、内筒22で発生した燃焼ガスを本体23の内部を介して系外に排出する。
【0034】
エアーランス24は、本体23の下部23aの最下部に圧縮空気を導入するために備えられ、この圧縮空気によって製品としての無水石膏Pが排出される。
【0035】
製品排出管33は、開口部23dから排出された製品としての無水石膏Pを系外に排出するために設けられる。
【0036】
図2に示した仮焼炉1は、上記焼成炉2の本体23と内筒22と略々同様の本体43及び内筒42を有する。ただし、仮焼炉1の内筒42には、燃料が供給されずに、焼成炉2の燃焼ガスがサイクロン12を介して導入されるため、焼成炉2の内筒22に設けられている燃料供給管21、燃焼用空気管29、空気を導くための管31及び多孔板32は、仮焼炉1の内筒42には備えられていない。
【0037】
次に上記構成を有する無水石膏焼成システムの運転要領について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
まず、仮焼炉1による石膏廃材の仮焼について説明する。
【0038】
焼成炉2の排気をサイクロン12を経由して仮焼炉1の内筒42に導入するとともに、ホッパ4、スクリューフィーダ5、スクリューコンベア6を介して仮焼炉1の本体43の内部に粒径の大きな二水石膏Mを供給し、この石膏Mを仮焼する。本体43内で石膏Mと高温ガスとが完全混合状態となり、本体43の内部及び仮焼炉1の排ガス温度は、仮焼する石膏又は製品の種類に応じて、100〜250℃の範囲に制御される。
【0039】
本体43の内部の粉粒体層の所定の2箇所の差圧を測定し、本体43内の粉粒体レベルが一定となるように仮焼炉1へ石膏Mの供給量を制御する。なお、仮焼炉1の排ガス温度を制御するため、仮焼炉1の本体43に散水Wを行うこともできる。散水Wは、ノズルを介して行うが、本体43の内部の石膏Mは流動化し、常に移動しているので、散水ノズルが閉塞することもなく、安定して均一に散水を行うことができる。
【0040】
仮焼炉1で仮焼された石膏CGは、ルーツブロワ3によって焼成炉2まで搬送される。一方、仮焼炉1の排気は、サイクロン7に導入され、サイクロン7で集塵されたダストD1が仮焼炉1に戻される。また、サイクロン7から排出されたガスは、バグフィルタ9で集塵され、集塵後のガスは、ファン8によって大気に放出される。バグフィルタ9で集塵されたダストD3は、スクリューコンベア10、11を介して仮焼炉1又は焼成炉2に戻すことができるが、このダストD3には、仮焼が不十分な石膏粒子が多く含まれているため、仮焼炉1にダストD3全量を戻すことが好ましい。
【0041】
次に、仮焼炉1によって仮焼された石膏CGの焼成炉2による焼成について説明する。
【0042】
焼成炉2の内筒22の内部に燃焼用空気管29を介して、ルーツブロワ13から燃料用空気Aを、燃料供給管21を介して燃料としての都市ガスGを供給する。都市ガスGが内筒22の内部で燃焼し、内筒22の内部は、約1200℃に維持される。一方、ルーツブロワ3によって、仮焼炉1で仮焼された石膏CGが焼成炉2の本体23の内部に供給される。本体23内で石膏CGと高温ガスとが完全混合状態となり、本体23の内部及び焼成炉2の排ガス温度は、石膏CG又は製品の種類に応じて、330〜840℃、好ましくは450〜600℃の範囲に制御される。また、本体23内部の粉粒体層の所定の2箇所の差圧を測定し、本体23内の粉粒体レベルが一定となるように焼成炉2への石膏CGの供給量を制御する。
【0043】
内筒22の内部で都市ガスGが燃焼して発生した燃焼ガスは、スリット25から本体23の最下部に噴出する。この噴出した燃焼ガスにより石膏CGが本体23の下部23aにおいて流動化し、燃焼ガスと熱交換する。熱交換が完了すると、石膏CGは、製品としての無水石膏Pに変化し、エアーランス24を介して導入されたコンプレッサ14からの圧縮空気CAにより流動化され、開口部23dから製品排出管33を介して系外に排出される。
【0044】
一方、本体23から排出された燃焼ガスは、サイクロン12に導入され、サイクロン12で除塵されたダストD2が焼成炉2に戻される。ここで、仮焼炉1から焼成炉2に供給された石膏CGは仮焼済みであるため、分散性が良く、燃焼ガスとともに仮焼炉1に飛散しやすいため、サイクロン12で除塵し、大量の粉体状の石膏廃材CGが仮焼炉1と焼成炉2の間で循環することを防止している。サイクロン12から排出されたガスは、仮焼炉1の本体43に導入され、仮焼炉1における石膏廃材Mの仮焼に用いられる。
なお、二水石膏の製造過程で得られた二水石膏の粒径が大きくなり過ぎた場合には、仮焼工程を経て焼成工程においてできる無水石膏の粒径も大きくなるため、かかる無水石膏を粉砕・分級等を行って粒度を調整してもよい。
【実施例】
【0045】
実施例1
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率90%)を得た。これを80℃に保たれた温水32.5kg/hrに導入し、反応槽(内容量16.9kg)で20分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを、温度55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度38質量%の晶析槽(内容量93kg)に投入し、スラリーを56分間滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。(ここで言う滞留時間とはスラリー中の水の部分が滞留する時間であり、石膏の滞留時間とは異なる。石膏の滞留時間は約120分間である。)
二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過し、脱水ケーキを130℃で乾燥(仮焼)した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は19.8μmであった。
【0046】
実施例2
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率70%)を得た。これを80℃に保たれた温水32.5kg/hrに導入し、反応槽(内容量14.8kg)で20分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを、温度55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度38質量%の晶析槽(内容量93kg)に投入し、スラリーを58分間(石膏の滞留時間は約120分間)滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過し、脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は15.6μmであった。
【0047】
実施例3
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率50%)を得た。これを90℃に保たれた10%濃度硫酸ナトリウム水溶液55.4kg/hrに導入し、反応槽(内容量52kg)で60分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを、温度55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度40質量%の晶析槽(内容量85kg)に投入し、スラリーを90分間(石膏の滞留時間は約120分間)滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過後、脱水ケーキを水で洗浄した。洗浄後の脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は、24.0μmであった。
【0048】
実施例4
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率50%)を得た。これを90℃に保たれた濃度10質量%硫酸ナトリウム水溶液55.4kg/hrに導入し、反応槽(内容量64kg)で60分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを、温度55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度40質量%の晶析槽(内容量139kg)に投入し、スラリーを123分間(石膏の滞留時間は約180分間)滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過後、脱水ケーキを水で洗浄した。洗浄後の脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は62.0μmであり、これを粉砕して21.2μmに調整した。
【0049】
実施例5
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率90%)を得た。これを80℃に保たれた温水32.5kg/hrに導入し、反応槽(内容量14.4kg)で20分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを、温度55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度38質量%の晶析槽(内容量137kg)に投入し、スラリーを148分間(石膏の滞留時間は約180分間)滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過し、脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は55.0μmであり、これを粉砕して19.5μmに調整した。
【0050】
実施例6
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率90%)を得た。これを90℃に保たれた温水32.5kg/hrに導入し、反応槽(内容量14.4kg)で20分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを、温度40℃に保持された二水石膏のスラリー濃度38質量%の晶析槽(内容量93kg)に投入し、スラリーを58分間(石膏の滞留時間は約120分間)滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過し、脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は17.0μmであった。
【0051】
実施例7
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率90%)を得た。この紛体と、温度55℃の温水22.2kg/hrを、55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度38質量%の晶析槽(内容量118kg)に別々に投入し、180分間滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過し、脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は49.2μmであり、これを粉砕して19.1μmに調整した。
【0052】
実施例8
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を130℃で加熱して、β型半水石膏(半水石膏含有率90%)を得た。この紛体と、温度40℃の温水22.2kg/hrを、40℃に保持された二水石膏のスラリー濃度38質量%の晶析槽(内容量118kg)に別々に投入し、180分間滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過し、脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成して、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は47.4μmであり、粉砕して18.6μmに調整した。
【0053】
比較例1
石膏ボードの廃材13.5kg/hrを破砕機により粉砕してから紙を分離し、分離した石膏を80℃に保たれた10質量%濃度の硫酸ナトリウム水55.4kg/hrに導入し、反応槽(内容量64kg)で60分間攪拌した。攪拌した後のスラリーを温度55℃に保持された二水石膏のスラリー濃度40質量%の晶析槽(内容量139kg)に投入し、スラリーを120分間滞留させ、晶析槽の下部から二水石膏のスラリーを取り出した。二水石膏のスラリーを遠心分離機でろ過後、ケーキを水で洗浄した。洗浄後の脱水ケーキを130℃で乾燥した後、550℃で焼成し、II型無水石膏を9.9kg/hr得た。得られた無水石膏の平均粒径は6.5μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の二水石膏の製造方法における二水化工程で用いる晶析装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の無水石膏焼成システムの一実施の形態を示すフローチャートである。
【図3】図2の無水石膏焼成システムの焼成炉を示す一部破断正面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である(ただし、焼成用空気管29及びエアーランス24近傍については、A−A線断面となっていない)。
【図5】図3の焼成炉の上面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 仮焼炉
2 焼成炉
3 ルーツブロワ
4 ホッパ
5 スクリューフィーダ
6 スクリューコンベア
7 サイクロン
8 ファン
9 バグフィルタ
10 スクリューコンベア
11 スクリューコンベア
12 サイクロン
13 ルーツブロワ
14 コンプレッサ
21 燃料供給管
22 (焼成炉の)内筒
22a 天板
23 (焼成炉の)本体
23a 下部
23b 上部
23c 天板
23d 開口部
24 エアーランス
25 スリット
26 原料供給管
27 飛散ダスト戻し管
28 排気管
29 燃料用空気管
30 燃料供給管へ内側から空気を導くための管
32 多孔板
33 製品排出管
42 (仮焼炉の)内筒
43 (仮焼炉の)本体
A 燃焼用空気
CA 圧縮空気
CG 仮焼された石膏
D1〜D3 ダスト
G 都市ガス
M 粒径の大きな二水石膏
P 無水石膏
W 水(散水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程、並びに
(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(A)で得られた半水石膏を添加し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程
を含むことを特徴とする粒径の大きな二水石膏の製造方法。
【請求項2】
(A)二水石膏を含む石膏廃材を、乾式で100〜250℃に加熱して半水石膏を得る半水化工程、
(b)前記(A)で得られた半水石膏と熱水を混合するか、または該半水石膏と水を混合および加熱して、70〜100℃の半水石膏懸濁液を得る懸濁工程、並びに
(B)晶析装置中、二水石膏の種結晶を含む懸濁液を撹拌しつつ、これに前記(b)で得られた半水石膏懸濁液を注入し、10〜60℃の水温下で半水石膏を水和させて二水石膏を生成、晶析および成長させる二水化工程
を含むことを特徴とする粒径の大きな二水石膏の製造方法。
【請求項3】
(B)の二水化工程において用いる晶析装置が、少なくとも、
(イ)半水石膏または半水石膏懸濁液の注入部、
(ロ)撹拌翼を備えた晶析部、
(ハ)粒径の大きな二水石膏を含む懸濁液を排出する排出部、および
(ニ)半水石膏または半水石膏懸濁液の注入によりオーバーフローした懸濁液又は上澄み液を排出する排出部
を含むものである請求項1又は2記載の粒径の大きな二水石膏の製造方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−81329(P2008−81329A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260331(P2006−260331)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(503230760)株式会社ナコード (3)
【Fターム(参考)】