説明

粒状ゲルの製造装置、及び多彩模様塗料の製造方法

【課題】粒状ゲルの製造装置、及び多彩模様塗料の製造方法を提供する。
【解決手段】粒状ゲルの製造装置は、水性樹脂(a)、着色剤(b)、及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を収容する、複数の第1タンク2と、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を収容する第2タンクと、圧縮空気を供給する空気供給手段と、前記各第1タンクの水溶性組成物を吐出する第1の吐出口、前記第2タンクの水性媒体を吐出する第2の吐出口、及び前記空気供給手段からの圧縮空気を吐出する第3吐出口を有する、複数のノズル部6と、を備え、前記各第1タンクは、前記各ノズル部にそれぞれ水溶性組成物を供給するように構成され、各ノズル部において、第1及び第2の吐出口は近接し、第3の吐出口から供給される圧縮空気は、第1の吐出口から吐出される水性組成物及び第2の吐出口から吐出される水性媒体に、噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子(粒状ゲル)を効率良く連続して製造できる粒状ゲルの製造装置、及び多彩模様塗料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子多糖類を、塩化カルシウム水溶液等の金属イオン含有水溶液と接触させることにより、液状粒子をゲル化膜でカプセル化する方法は公知であり、食品、化学、バイオ等の分野で広く利用されている。
【0003】
このようなカプセル化手法として、例えば、特許文献1には、次のような酵素又は微生物菌体を固定化する粒状成形物の製造方法が開示されている。
【0004】
(1)親水性光硬化性樹脂、光重合開始剤、水溶性高分子多糖類及び無機質粉粒体を含む水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下し、この組成物を粒状にゲル化させる。
(2)得られた粒状ゲルに活性光線を照射し、その粒状ゲル中の光硬化性樹脂を硬化させる。
また、水溶性高分子多糖類の金属イオンによるゲル化の応用例として例えば多彩模様塗料がある。
【0005】
多彩模様塗料は、一回の塗装で2色以上の多彩な模様をもつ塗膜を形成することができる塗料である。例えば、分散媒体中に複数の着色粒状ゲルを安定に分散させる塗料が挙げられ、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0006】
多彩模様塗料として、例えば特許文献2には、エマルジョン樹脂や着色剤等の塗膜形成成分を、水溶性高分子化合物のゲル化膜でカプセル化した液状着色粒子を含有する着色塗料組成物が開示されている。また、製造方法としては、次の方法が開示されている。つまり、水性液状組成物をアルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体などのゲル化液中に滴下し、この組成物をゲル化膜で被覆することによって着色粒子を製造することが記載されている。また、特許文献3には、水性媒体中に分散した着色骨材として鱗片状ゲル着色粒子及び有色又は着色された球状微細粒子の組み合わせを使用した水性多彩被覆組成物が記載されている。また、製造方法としては、次のような方法が開示されている。まず、樹脂成分、着色骨材及び水溶性高分子を含む水性液状組成物を、平滑な面に粒子ガンを用いて粒子状に吹付ける。その後、乾燥しないうちに、これをゲル化液に浸漬し、この組成物粒子をゲル化膜で被覆することによって着色粒子を製造する。
【特許文献1】特開平10−152511号公報
【特許文献2】特開平1−16879号公報
【特許文献3】特開平07−247450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2や特許文献3に開示の方法では、ゲル化膜で覆われた着色粒子の製造のために、非常に煩雑な工程を必要とする問題がある。また、小粒径の着色粒子になるほど濾別に時間を要し、濾別後のゲル化液が廃液として大量に発生するという問題があった。また、上記方法ではバッチのゲル化液に滴下や浸漬する必要があるため、連続製造が困難であった。
【0008】
本発明の目的は、多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子を、簡易な方法で効率良く連続して製造でき、しかも廃液の処理を軽減できる粒状ゲルの製造装置、及び多彩模様塗料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る粒状ゲルの製造装置は、上記問題を解決するためになされたものであり、水性樹脂(a)、着色剤(b)、及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を収容する、複数の第1タンクと、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を収容する第2タンクと、圧縮空気を供給する空気供給手段と、前記各第1タンクの水溶性組成物を吐出する第1の吐出口、前記第2タンクの水性媒体を吐出する第2の吐出口、及び前記空気供給手段からの圧縮空気を吐出する第3吐出口を有する、複数のノズル部と、を備え、前記各第1タンクは、前記各ノズル部にそれぞれ水溶性組成物を供給するように構成され、前記各ノズル部において、前記第1及び第2の吐出口は近接し、前記第3の吐出口から供給される圧縮空気は、前記第1の吐出口から吐出される水性組成物及び前記第2の吐出口から吐出される水性媒体に、噴射される。
【0010】
上記各ノズル部は、種々の態様にすることができるが、例えば、第1吐出口、第2吐出口、及び第3吐出口を、同心円状に配置することができる。
【0011】
上記装置において、各ノズル部は、移動可能に構成することができる。
【0012】
本発明に係る多彩模様塗料の製造方法は、上記問題を解決するためになされたものであり、近接して配置された第1及び第2吐出口と、第3吐出口とを有する、複数のノズル部を準備するステップと、多彩模様塗料のベースとなる塗料を収容した回収容器を準備するステップと、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有し、異なる色彩を有する複数の水性液状組成物(A)を、前記各ノズル部にそれぞれ供給するステップと、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を、前記各ノズル部に供給するステップと、圧縮空気を前記各ノズル部に供給するステップと、前記各第1吐出口から吐出される水性液状組成物、及び前記第2吐出口から吐出される水性媒体に向けて、前記第3吐出口から圧縮空気を噴射することで、前記水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を接触混合させ、生成された粒状ゲルを前記回収容器に向けて噴射するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る製造装置によれば、多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子(粒状ゲル)を簡易な方法で効率良く連続して製造できる。また、水性液状組成物(A)と水性媒体(B)とを効率よく接触させることができるので廃液の処理を軽減できる。特に、従来最も時間のかかった水性媒体(B)から着色粒子を濾別する工程を不要とすることができる。従って、本発明は、短納期で少量多品種の着色粒子の製造に非常に有用である。
【0014】
さらに、上記発明では、複数のノズル部を有しているため、複数の色の粒状ゲルを同時に製造することができる。
【0015】
また、本発明に係る多彩模様塗料の製造方法によれば、予めベース塗料が収容された回収容器に、複数の色の粒状ゲルを噴射するため、回収容器内でベース塗料と複数の粒状ゲルが攪拌される。したがって、各ノズル部から粒状ゲルを噴射する一工程のみで、効率よく多彩模様塗料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る粒状ゲル製造装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る装置の正面図、図2は図1の側面図である。
【0017】
図1に示すように、この装置は、内部に機材などを収納可能な基台1を備えている。基台1の上面には、水性液状組成物が収納された3つの第1タンク2、及び操作パネル3が配置されている。また、基台1の内部には、底面11に回収容器4と、第2タンク5が配置されている。回収容器4は、後述するように、製造された粒状ゲルを回収するものである。また、第2タンク5には、水性媒体が収納されている。さらに、基台1の天井12からは、3つのノズル部6が移動フレーム7を介してそれぞれつり下げられており、各ノズル部6の吐出口は、下方に向いている。このほか、図示を省略するコンプレッサー(空気供給手段)が基台1上に配置されている。
【0018】
各ノズル部6を支持する移動フレーム7は、上下方向に延びる棒状の垂直部71、図1の左右方向に延びる棒状の第1水平部72、及び図1の紙面方向(図2の左右方向)に延びる棒状の第2水平部73が連結されることで構成されている。より詳細には、次の通りである。垂直部71は、上端が基台1の天井部12に固定されており、下端は基台1の中間付近まで延びている。そして、この垂直部71に第1水平部72の端部が連結されており、垂直部71に沿って第1水平部72が上下動するようになっている。また、第1水平部72には、第2水平部73の端部が連結されており、第1水平部72に沿って第2水平部73が水平方向に移動可能となっている。これら、垂直部71及び水平部72,73は、互いにネジ止めなどで固定することができる。このように、移動フレーム7は、3方向に移動可能となっているため、各ノズル部6は、基台1の内部で所望の位置に手動で位置決めすることができる。
【0019】
続いて、各ノズル部の構造について図3を参照しつつ説明する。図3はノズル部の断面図、図4は正面図である。図3及び図4に示すように、ノズル部6は同心円状に配置された第1、第2,及び第3管61、62、63からなる3重管で構成されている。最内部の第1管61には、後端部の導入口611から水性液状組成物が供給される。第2管62の後方の側面には導入口621が形成されており、水性媒体が供給される。最外に配置された第3管63は側面に導入口631が形成されており、圧縮空気が供給される。そして、各ノズル部6の先端においては、第1管61が水性液状組成物を吐出する第1吐出口64、第1管61と第2管62との間の隙間が水性媒体を吐出する第2吐出口65、第2管62と第3管63との隙間が圧縮空気を噴射する第3吐出口66を構成している。このノズル部6では、第1吐出口64及び第2吐出口65を囲む第3吐出口66から圧縮空気が噴射されることで、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)が圧縮空気により接触混合する。
【0020】
なお、第3吐出口66が、第1吐出口64及び第2吐出口65の外側を囲むように配置されれば、吐出口64及び吐出口65が同心円状に限定されることない。つまり、図5(a)に示すように、並列に配置されるものであっても良く、また第2吐出口65から水性液状組成物(A)が吐出されると共に第1吐出口64から水性媒体(B)が吐出するように各液体の流路を設定することも可能である。さらに、第3吐出口66からの圧縮空気が、第1吐出口Aからの水性液状組成物及び第2吐出口Bからの水性媒体に噴射されるように構成されていれば、特には限定されない。したがって、図5(b)に示すように、第1及び第2吐出口64,65の周囲の一部を囲むように第3吐出口66を配置したり、或いは、平面的な配置にかかわらず、図5(c)に示すように、第1吐出口64からの水性液状組成物、及び第2吐出口65からの水性媒体に向けて、第3吐出口66からの圧縮空気が噴射されるように各吐出口が配置されていれば、特には限定されない。
【0021】
次に、各ノズルへの流体の流れについて図6を参照しつつ説明する。図6は、流体の流れを示す概略構成図である。同図に示すように、各ノズル部6には、各第1タンク2から延びる第1流路21が接続されており、各第1流路21は、各ノズル部6の第1管61に接続されている。また、各ノズル部6の第2管62は、第2流路51を介して第2タンク5と接続されている。すなわち、第2タンク5からは、3つの第2流路51が延びており、各第2流路51が各ノズル部6に接続されている。さらに、各ノズル部6の第3管63には、第3流路81が接続されており、3つの第3流路81が1つのコンプレッサーに接続されている。なお、上記各流路21,51,81の途中には、公知のバルブ、圧力計、流量計などが取り付けられている。そして、第1及び第2タンク2,5内の各液体は、タンク内での加圧、または図示を省略するポンプによってノズル部6へ送られる。各液体の供給量、供給速度などは、上述した制御パネル3で管理することができる。
【0022】
また、この方法では、形成される粒状ゲルの大きさ(長径)や形状は、用途などに応じて適宜変えることができ、通常、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)の吐出量や、圧縮空気の噴射量、ノズル寸法などによって制御される。そのような例としては、水性液状組成物に関して、例えば、吐出量 1〜500cc/min、噴射量 1〜50NL/min、ノズル径1〜10mmとすることができる。また、第1吐出口と第2吐出口との距離は、例えば、0.01〜10mmとすることができる。
【0023】
続いて、本発明で用いられる水性液状組成物、及び水性媒体を構成する材料について説明する。ここで用いられる水性液状組成物(A)は、水性樹脂(a)、着色剤(b)、及び水溶性多糖類(c)を含有している。一方、水性媒体(B)は、金属化合物(d)を含有している。
【0024】
まず、水性液状組成物から説明する。ここで用いられる水性樹脂(a)は、形成される粒状ゲルの耐久性に貢献するものであり、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0025】
上記水性樹脂(a)は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、水性樹脂(a)は、粒状ゲルの製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、特にカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、アンモニア等のアミン類などを例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
水性樹脂(a)は、粒状ゲルの耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0026】
このようなアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを必須モノマー成分とし、該モノマーを適宜他の重合性不飽和モノマーと(共)重合させることにより得られるものが挙げられ、該(共)重合に供し得るモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状炭化水素基含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
水性樹脂(a)としてのアクリル系樹脂は、粒状ゲルの製造安定性などの観点から、カルボキシル基含有アクリル系樹脂であることが望ましく、そのようなカルボキシル基含有樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することにより製造することができる。かかるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、(共)重合に供される全重合性不飽和モノマーの重量を基準にして、通常0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3〜4重量%の範囲内であることが粒状ゲルの製造安定性と貯蔵安定性の点から適している。
【0028】
また、上記水性樹脂(a)は、粒状ゲル中における着色剤(b)との親和性などの観点から、カルボニル基含有アクリル系樹脂であることができ、このカルボニル基含有アクリル系樹脂はさらにカルボキシル基を含有することが望ましい。そのようなカルボニル基含有アクリル系樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部としてカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを使用し、その他の重合性不飽和モノマーと(共)重合することにより製造することができる。かかるカルボニル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、(共)重合に供される全重合性不飽和モノマーの重量を基準にして、通常1〜30重量%、好ましくは1.5〜25重量%の範囲内であることができる。
【0029】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0030】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の界面活性剤を使用することができ、適用可能な界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0031】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルベダイン類、ジメチルアルキルラウリルベダイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0034】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計重量を基準にして通常0.5〜6重量%、好ましくは1〜4重量%の範囲内であることができる。
【0035】
本発明に係る方法において使用される着色剤(b)は、粒状ゲルの比重を調整するのに役立つ。また、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜に意匠性、鮮映性、隠蔽性などを付与するために使用されるものであり、それ自体既知のものを制限なく使用することができる。
【0036】
着色剤(b)としては顔料及び染料を使用することができ、特に顔料が好適である。顔料の具体例としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等の黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料;バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料;などを挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0038】
他方、染料としては、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾ−ルアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
着色剤(b)の使用量は、粒状ゲルによる着色性、比重、耐久性、耐水性等の観点から、水性樹脂(a)の重量(固形分)を基準にして、通常0.01〜500重量%、好ましくは0.05〜400重量%の範囲内であることが好適である。
【0040】
本発明の方法において使用される水溶性多糖類(c)は、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)に由来する金属イオンと接触して、水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含む水性液状組成物を内包する水に不溶性または難溶性の金属塩ゲルを形成せしめるために使用されるものである。
【0041】
水溶性多糖類(c)としては、一般に10,000〜約2,000,000の範囲内の重量平均分子量を有し且つ約5.0g/L(25℃)以上の溶解度(水に対する)を示す多糖類が好適に使用できる。具体的には、例えば、アルギン酸もしくはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
水溶性多糖類(c)は、水性液状組成物(A)の固形分中0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜9重量%、さらに好ましくは1.0〜7.0重量%の範囲内で使用すると、粒状ゲルの貯蔵安定性と、粒状ゲルを含む塗料を用いて形成される塗膜の鮮映性を良好なものとすることができる。また、塗膜の凹凸感(ざらつき感)を少なくすることができ、好ましい。
また、上記水性液状組成物(A)は、粒状ゲル中の着色剤(b)の均一分布を容易にするなどの点から増粘剤をさらに含むことが適している。
【0043】
この増粘剤としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。該増粘剤の使用量は、水性樹脂(a)の固形分重量を基準にして、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%の範囲内であることができる。
【0044】
上記水性液状組成物(A)は、さらに、必要に応じて、バルーン等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0045】
本発明において使用される水性媒体(B)は、金属化合物(d)を含有し、上記の水性液状組成物(A)と接触した際に、水性液状組成物(A)中の水溶性多糖類(c)が水性媒体(B)中の金属化合物(d)に由来する金属イオンと水に不溶性または難溶性の塩を形成し、水性液状組成物(A)を粒状ゲル化させるものである。
【0046】
本発明方法において上記金属化合物(d)は、その成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含むことができる。
【0047】
金属化合物(d)の一部として有機酸金属塩(d1)を使用することによって貯蔵安定性に優れた粒状ゲルを容易に形成でき、また、粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の耐水性などの塗膜物性が良好とすることができ、しかも粒状ゲルの製造において生成する廃液や粒状ゲル懸濁液が製造装置や環境に与える負荷を少なくさせることが可能である。
【0048】
かかる有機酸金属塩(d1)における金属種としては、形成される粒状ゲルの強度などの観点から、多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
【0049】
上記有機酸金属塩(d1)における有機酸としては、上記例示したごとき金属と塩を形成しうる化合物であれば従来公知のものを制限なく使用でき、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルコン酸等を例示することができる。
【0050】
本発明においては、有機酸金属塩(d1)として上記した中でも酢酸カルシウムが粒状ゲルの製造安定性の点から適している。
【0051】
また、上記金属化合物(d)は、その成分の一部として金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる金属化合物(d2)を含むことができる。
【0052】
上記金属化合物(d2)における金属種としては、有機酸金属塩(d1)における金属種として列記のものから適宜選択して使用することができる。
【0053】
本発明では金属化合物(d)として、上記有機酸金属塩(d1)と金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる金属化合物(d2)を併用すると粒状ゲルの貯蔵安定性、製造安定性に加えて粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の凹凸感を少なくさせるとともに、鮮映性を良好なものとすることができ、適している。
【0054】
このような目的で使用される金属化合物(d2)の金属の具体例としては上述したものに加え、周期表1族元素に属するアルカリ金属類を挙げることができる。
【0055】
本発明において上記金属化合物(d2)としては、粒状ゲルの製造安定性の点から水酸化物を使用することが好適である。
【0056】
上記金属化合物(d)において、有機酸金属塩(d1)と金属化合物(d2)を併用する場合、その使用割合が、有機酸金属塩(d1)/金属化合物(d2)のモル比で99/1〜10/90、特に90/10〜15/85の範囲内にあることが、粒状ゲルの貯蔵安定性と粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の凹凸感を少なくさせるとともに鮮映性が良好であること、さらには粒状ゲルの製造において生成する廃液や粒状ゲル懸濁液が製造装置や環境に与える負荷を少なくさせることもでき、適している。
【0057】
上記金属化合物(d)は、水などの水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより金属イオンを含有する水性媒体(B)を調製することができる。その際、金属化合物(d)は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。
【0058】
上記水性媒体(B)は、粒状ゲルの貯蔵安定性および製造安定性の点から、pHを4.0〜13.7、好ましくは6.0〜13.5、さらに好ましくは7.0〜13.5の範囲内とすることが適している。
【0059】
本発明において、上記水性液状組成物(A)と水性媒体(B)は、水性液状組成物(A)に含まれる水溶性多糖類(c)が有するカルボキシル基に由来する基1molに対して、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)の量が0.2〜3mol、特に0.4〜2molの範囲内となるような割合で使用されることが、形成される粒状ゲルの貯蔵安定性と粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の凹凸感を少なくさせ、また、鮮映性、耐水性が良好であり、好ましい。
上記カルボキシル基に由来する基としては、カルボキシル基、カルボン酸金属塩基及びカルボン酸イオン性基(−COO)を挙げることができる。
【0060】
上記の如くして形成される粒状ゲルは、水性樹脂(a)、着色剤(b)、その他の添加剤成分を含んでなる水性液状組成物を多糖類(c)の金属塩ゲル中に内包してなる着色粒子であり、その大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0061】
上記の通り得られる粒状ゲルは、必要に応じて水等で洗浄することにより不純物等を取り除き、所望の模様を付与したい塗料やインク、成型材料等へ所望量配合することができる。
【0062】
次に、上記のように構成された装置による粒状ゲルの製造方法について説明する。本実施形態の装置では、形成される粒状ゲルの大きさ(長径)や形状は、用途などに応じて適宜変えることができ、通常、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)の吐出量や、圧縮空気の噴射量、ノズル寸法などによって制御され
【0063】
まず、3つの第1タンク2それぞれに異なる色の水性液状組成物を収容しておく。そして、装置の基台1には、3つの回収容器4それぞれを各ノズル部6の下方に配置する。次に、各タンク2,5からバルブ部6へ向けて水性液状組成物(A)、及び水性媒体(B)を供給するとともに、コンプレッサーを作動させて圧縮空気を各ノズル部6へ供給する。これにより、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)が圧縮空気により接触混合され、粒状ゲルとなって下方へ落下する。各ノズル部6から吐出される粒状ゲルは、各回収容器4に落下し、回収される。この方法では、3色の粒状ゲルが製造さ・BR>黷驕B
【0064】
次に、多彩模様塗料用の粒状ゲルの製造方法について説明する。この方法では、1つの回収容器4で3色の粒状ゲルを回収する。そのため、1つの回収容器4の上方に3つのノズル部6を配置する。このとき、上述した移動フレーム7を調節することで、ノズル部6の位置決めを行う。続いて、上述したのと同様に、各ノズル部6から色の異なる粒状ゲルを吐出し、回収容器4で回収する。これにより、3色が混合された粒状ゲルを得ることができる。上記のように、各色それぞれを回収した後、または3色を混合した粒状ゲルを回収した後、これらを多彩模様塗料のベースとなる公知のベース塗料に混合し、攪拌すれば、多彩模様塗料が完成する。
ベース塗料としては、公知のものを適宜用いることができ、それ自体成膜性を有する非架橋型又は架橋型の樹脂が包含され、例えば水性型、有機溶剤型等のいずれであってもよい。粒状ゲルとの親和性や貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂(e)を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
水性樹脂(e)としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを同様に使用することができ、例えば、水性樹脂(a)について前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0065】
このほか、一度の作業で多彩模様塗料を製造することもできる。すなわち、予め回収容器4にベース塗料を収納しておく。そして、この回収容器4を3つのノズル部6の下方に配置する。これに続いて、各ノズル部6から色の異なる粒状ゲルを吐出すれば、回収容器4内に3色の粒状ゲルが混合される。このとき、各粒状ゲルは、高圧で回収容器4内に噴射されるため、回収容器4内では攪拌も同時に行われる。こうして、多彩模様塗料が完成する。
【0066】
上記の製造方法のほか、各第1タンク2に同じ色の水性液状組成物を収容しておくこともできる。これにより、同色の粒状ゲルを短時間で大量に製造することができる。このとき、1つの回収容器4で粒状ゲルを回収してもよいし、3つの回収容器4で回収することもできる。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、第1及び第2吐出口64,65の周囲から圧縮空気を噴射しているため、第1及び第2吐出口64,65からそれぞれ吐出される水性液状組成物及び水性媒体を混合接触することができる。これにより、粒状ゲルを連続して製造することができる。特に、本実施形態では、複数のノズル部6を有しているため、複数の色の粒状ゲルを同時に製造することができる。
【0068】
また、各ノズル部6が移動可能であるため、1つの回収容器4で複数の色の粒状ゲルを回収したり、或いは複数の回収容器4それぞれで粒状ゲルを回収することもできる。特に、1つの回収容器4にベース塗料を収容し、この容器4で異なる色の粒状ゲルを回収すれば、多彩模様塗料を1つの工程で製造することができる。したがって、多彩模様塗料を効率よく製造することができる。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、3つのノズル部6を用いたが、ノズル部6の数はこれに限定されず、複数あればよい。また、3つのノズル部6に1つの第2タンク5から水性媒体を供給しているが、第2タンク5を複数設け、各ノズル部6に1つの第2タンク5から水性媒体を供給することもできる。また、各ノズル部6の位置決めは、上記のような移動フレーム7を用いるほか、公知の方法、例えば、ボールネジなどを用い、電動で位置決めできるようにしてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
エマルションの製造
【0071】
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記の組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加した。添加20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 2部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
【0072】
滴下後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は170nm、pHは8.3であった。
(注1)「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%
白顔料ペーストの製造
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、白顔料ペースト(b1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「TITANIX JR−605」(注5) 500部
(注2)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤、
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤、
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤
(注5)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白 粒状ゲル用の水性液状組成物(A)の製造
多彩模様塗料とするため、以下の3種類の水性液状組成物を準備した。
(製造例1)
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、粒状ゲル用の水性液状組成物(A−1)を得た。
55%エマルション(a1) 250部
白顔料ペースト(b1) 154部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 4部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注7) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部

(注6)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、(注7)「アデカノールUH−438」:商品名、アデカ社製、ポリエーテルウレタン変性物、粘性調整剤
(製造例2)
上記製造例1において、成分組成を下記のものに変更する以外は製造例1と同様にして、水性液状組成物(A−2)を製造した。
55%エマルション(a1) 368部
「TEXANOL」(注6) 24部
「SNデフォーマー380」(注4) 5部
「アデカノールUH−438」(注7) 4部
赤顔料ペースト(注8) 4部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 230部
(注8)赤顔料ペースト:「ユニラント88赤」(商品名、横浜化成社製)を用い、白色顔料ペーストと同様にして調製した顔料含有量が約30%のカラーペースト。
(製造例3)
上記製造例1において、成分組成を下記のものに変更する以外は製造例1と同様にして、水性液状組成物(A−3)を製造した。
白顔料ペースト(b1) 154部
55%エマルション(a1) 250部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注7) 2部
緑顔料ペースト(注9) 12部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部
(注9)緑顔料ペースト:「ユニラント88緑」(商品名、横浜化成社製)を用い、白色顔料ペーストと同様にして調製した顔料含有量が約20%のカラーペースト。
【0073】
粒状ゲル用水性媒体の製造
【0074】
4リットルステンレス容器に、酢酸カルシウム一水和物を7.0部、脱イオン水を2,000部仕込み、均一になるまで攪拌し、酢酸カルシウムを含有する粒状ゲル用水性媒体(B)を製造した。pHは7.4であった。
【0075】
粒状ゲルの製造
【0076】
図1に示すノズルを用いて表1に示す吐出量(g/min)で、上記の通り製造した粒状ゲル用水性液状組成物(A−1)を吐出口Aから、粒状ゲル用水性媒体(B)を吐出口Bから吐出した。また、同時に圧縮空気を表1に示す気体流量(NL/min)で噴射し、水性液状組成物(A−1)及び水性媒体(B)を接触混合させて、サンプル−1〜サンプル−4の各粒状ゲルを製造した。得られた粒状ゲルは表1に示す平均粒サイズ(長さ)を有するものであった。各サンプルの粒状ゲルの顕微鏡写真を図7に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
上記水性液状組成物(A−1)と同様に、水性液状組成物(A−2)、水性液状組成物(A−3)について夫々サンプル−3と同様の条件で回収容器に向かって噴射し粒状ゲルを製造した。また、多彩模様塗料用として水性液状組成物(A−1)は、サンプル−3のものを準備した。そして、これら粒状ゲルが(白色:A−1)145部、(赤色:A−2)15部、(緑色:A−3)15部となるように、回収容器中のベース塗料(注10)130部に順次仕込んだ後、さらに攪拌することにより、多彩模様塗料を作成した。
(注10)ベース塗料:1リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、ベースとなる水性クリヤー塗料を得た。
55%エマルション(a1) 750部
「TEXANOL」(注6) 50部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注7) 6部
上記のように製造された粒状ゲルによる多彩模様塗料の貯蔵安定性、良好であった。すなわち、40℃で7日間貯蔵後に塗料化・塗装しても形成塗膜は粒状ゲルがはっきりと識別でき、色の滲み出しや潰れもなく良好な仕上りが得られている。

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る粒状ゲルの製造装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1で用いられるノズル部の断面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】ノズル部の他の例を示す図である。
【図6】図1の装置における液体の流路の概略構成図である。
【図7】本発明に係る装置で得られる粒状ゲルの一例を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0080】
2 第1タンク
4 回収容器
5 第2タンク
6 ノズル部
64 第1吐出口
65 第2吐出口
66 第3吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂(a)、着色剤(b)、及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を収容する、複数の第1タンクと、
金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を収容する第2タンクと、
圧縮空気を供給する空気供給手段と、
前記各第1タンクの水溶性組成物を吐出する第1の吐出口、前記第2タンクの水性媒体を吐出する第2の吐出口、及び前記空気供給手段からの圧縮空気を吐出する第3吐出口を有する、複数のノズル部と、を備え、
前記各第1タンクは、前記各ノズル部にそれぞれ水溶性組成物を供給するように構成され、
前記各ノズル部において、前記第1及び第2の吐出口は近接し、
前記第3の吐出口から供給される圧縮空気は、前記第1の吐出口から吐出される水性組成物及び前記第2の吐出口から吐出される水性媒体に、噴射される、粒状ゲルの製造装置。
【請求項2】
前記各ノズル部は、前記第1の吐出口、第2の吐出口、及び第3吐出口が同心円状に配置される請求項1に記載の粒状ゲルの製造装置。
【請求項3】
前記各ノズル部は、移動可能に構成されている、請求項1または2に記載の粒状ゲルの製造装置。
【請求項4】
近接して配置された第1及び第2吐出口と、第3吐出口とを有する、複数のノズル部を準備するステップと、
多彩模様塗料のベースとなる塗料を収容した回収容器を準備するステップと、
水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有し、異なる色彩を有する複数の水性液状組成物(A)を、前記各ノズル部にそれぞれ供給するステップと、
金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を、前記各ノズル部に供給するステップと、
圧縮空気を前記各ノズル部に供給するステップと、
前記各第1吐出口から吐出される水性液状組成物、及び前記第2吐出口から吐出される水性媒体に向けて、前記第3吐出口から圧縮空気を噴射することで、前記水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を接触混合させ、生成された粒状ゲルを前記回収容器に向けて噴射するステップと、
を備えている、多彩模様塗料の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−286878(P2009−286878A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139852(P2008−139852)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】