説明

粒状物収納容器

【課題】粒状物を1つずつ取り出すことができて携帯性に優れた粒状物収納容器を提供する。
【解決手段】本発明は、外観形状を形作る外装体1の対向する部位にそれぞれ、変形及び復元の可能な弾性膜3,4を設け、その内側に複数の粒状物Cの収納空間Rを形成すると共に、一方の弾性膜4に、他方の弾性膜3を収納空間Rに押し込むことで寄せられた粒状物Cを取り出し可能なスリットSを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の粒状物を収納して、その取り出しが可能な粒状物収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒状物収納容器としては、例えば、収納容器を柔軟性のある合成樹脂で成形し、蓋体に形成された取出口を、容器本体に設けられた係止部材で閉じることで、その内側に、複数の粒状物の収納空間を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−16012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の粒状物収納容器は、収納容器全体を変形させることで、容器本体に設けた係止部材を蓋体に形成した取出口から離間させるものであるため、複数の粒状物が一度に取り出されることがある。このため、粒状物を1つずつ取り出そうとする場合、その作業が煩雑であった。
【0005】
また、従来の粒状物収納容器は、収納容器そのものが変形するため、携帯を想定した場合に、取り出しのための柔軟性に加え、携帯に耐え得る剛性が要求されることから、材料の選択などに制約があった。
【0006】
本発明の目的とするところは、粒状物を1つずつ取り出すことができて携帯性に優れた粒状物収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粒状物収納容器は、外観形状を形作る外装体の対向する部位にそれぞれ、変形及び復元の可能な弾性膜を設け、その内側に複数の粒状物の収納空間を形成すると共に、
当該弾性膜の一方に、他方の弾性膜を収納空間に押し込むことで寄せられた粒状物を取り出し可能なスリットを形成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明は、他方の弾性膜の内面であって、一方の弾性膜に形成されたスリットと対向する部位に、粒状物との接地領域を取り囲むように配置されて、当該粒状物の脱落を防止する区画壁を設けることが好ましい。
【0009】
本発明において、弾性膜は、いわゆるインサート成形等の手段により、外装体と一体に成形とすることができる。また、本発明において、弾性膜と外装体とはそれぞれ、互いに引っ掛かって係止される係止部を有し、外装体に対して別体に組み付けられるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、弾性膜の一方に、他方の弾性膜を収納空間に押し込むことで寄せられた粒状物を取り出し可能なスリットを形成したことから、粒状物を1つずつ取り出すことができる。また、外装体の対向する部位にそれぞれ、変形及び復元の可能な弾性膜を設けたことで、外装体の材質として弾性膜よりも剛性の高い材質を選択することができることから携帯性に優れる。
【0011】
従って、本発明によれば、粒状物を1つずつ取り出すことができて携帯性に優れた粒状物収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明である、粒状物収納容器の一形態である、タブレット容器を示す側面図であり、(b)は、同タブレット容器を上方から示す斜視図である。
【図2】(a)は、同タブレット容器から粒状物を取り出す前の状態を、その側面から一部断面で示す要部断面図であり、(b)は、同タブレット容器から粒状物を取り出した状態を、その側面から一部断面で示す要部断面図である。
【図3】(a)は、同タブレット容器を上向きにして粒状物を取り出した状態を示す側面図であり、(b)は、同タブレット容器を下向きにして粒状物を取り出した状態を示す斜視図である。
【図4】同タブレット容器に弾性膜を固定する手段の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明である、粒状物収納容器の一形態である、タブレット容器を詳細に説明する。
【0014】
図1の符号1は、外観形状を形作る外装体である。外装体1は、粒状物Cを取り出すための操作部が設けられる操作側部材1aと、丸形の粒状物Cの取出口が設けられる取出し側部材1bからなる。外装体1は、例えば、ポリプロプレン(PP)等の材料からなり、外力に対して変形し難く、一定の保形性を有する。
【0015】
符号3は、変形及び復元の可能な弾性膜である。弾性膜3は、操作側部材1aに形成された開口部A1に嵌合する膨出部3aを有し、この膨出部3aを取り囲む環状部3bが操作側部材1aの裏面に沿って延在している。
【0016】
符号4も、変形及び復元の可能な弾性膜である。弾性膜4も、取出し側部材1bに形成された開口部A2に嵌合する膨出部4aを有し、この膨出部4aを取り囲む環状部4bが取出し側部材1bの裏面に沿って延在している。
【0017】
外装体1及び弾性膜3,4の内側には、複数の粒状物Cの収納空間Rが形成される。更に、弾性膜4には、その膨出部4aにスリットSが形成されている。スリットSは、図2(a)の状態から図2(b)の状態の如く、弾性膜3を収納空間Rに押し込むことで、弾性膜4の膨出部4aに寄せられた粒状物Cを取り出すことができる。スリットSは、十文字形状であるが、粒状物Cを取り出せる形状であれば、一文字形状等、スリットSの個数や形状は限定されない。
【0018】
本形態では、弾性膜4に、弾性膜3を収納空間Rに押し込むことで寄せられた粒状物Cを取り出し可能なスリットSを形成したことから、図3(a)に示すように、スリットSを上向きにした状態は勿論、図3(b)に示すように、スリットSを下向きにした状態、或いは、スリットSを横向きにした状態でも、粒状物Cを1つずつ取り出すことができる。また、外装体1の操作側部材1aと取出し側部材1bとの対向する部位にそれぞれ、変形及び復元の可能な2つの弾性膜3,4を設けたことで、外装体1の材質として弾性膜3,4よりも剛性の高い材質を選択することができることから携帯性に優れる。
【0019】
従って、本発明によれば、粒状物Cを1つずつ取り出すことができて携帯性に優れた粒状物収納容器を提供することができる。
【0020】
また、弾性膜3,4をそれぞれ、物性の異なる2つの材質とすることもできる。具体例としては、弾性率の異なる2種類のシリコーンを用いて、弾性膜3,4を構成する。これにより、弾性膜3では、操作性を考慮した物性のシリコーンを採用する一方、弾性膜4では、粒状体Cの取出し易さを考慮した物性のシリコーンを採用することができる。
【0021】
更に、本形態では、図2に示すように、弾性膜3の内面であって、弾性膜4の膨出部4aに形成されたスリットSと対向する部位に、粒状物Cとの接地領域を取り囲むように区画壁3cが一体に設けられている。区画壁3cは、図2に示すように、粒状物Cの脱落を防止する。これにより、弾性膜3を収納空間Rに押し込むことで、粒状物Cを容易にスリットSに寄せることができるから、粒状物Cの取り出しに有効である。
【0022】
なお、区画壁3cは、接地領域を取り囲む環状部として構成しても、間欠的に設けられた複数の凸部として構成してもよい。
【0023】
また、本発明に従えば、弾性膜3及び4はそれぞれ、操作側部材1a及び取出し側部材1bに対して一体に成形することができる。
【0024】
本形態では、弾性膜3及び操作側部材1aを一体に成形すると共に、弾性膜4及び取出し側部材1bを一体に成形する。一体に成形する方法としては、例えば、インサート成形が挙げられる。インサート成形によれば、予め成形した弾性膜3及び4をインサート品として用いることで、弾性膜3及び4に対して、操作側部材1a及び取出し側部材1bをそれぞれ、一体に成形することができる。また、予め成形した操作側部材1a及び取出し側部材1bをインサート品として用いることで、操作側部材1a及び取出し側部材1bに対して、弾性膜3及び4をそれぞれ、一体に成形することもできる。
【0025】
また、本発明に従えば、弾性膜3及び4はそれぞれ、図4に例示するように、操作側部材1a及び取出し側部材1bに対して別体として組み付けることができる。
【0026】
図4では、弾性膜4と取出し側部材1bとはそれぞれ、係止部f1,f2を有する。係止部f1,f2は、互いに引っ掛かって係止される。同図においては、係止部f1は、環状部4bの裏面から一体に垂下する筒状部4dの外側に形成された環状の凹部4nであり、また、係止部f2は、取出し側部材1bの裏面から筒状部4dを取り囲むように一体に垂下する筒状部1cの内側に形成された環状の凸部1pである。凸部1pは、同図に示すように、凹部4nに嵌合する。これにより、弾性膜4及び取出し側部材1bは一体に固定することができる。
【0027】
係止部f1,f2は、図4に示すように、操作側部材1aと合さる端部1dに近いほうに設けることが好ましい。係止部f1,f2が弾性膜4の変形により外れ難くなるためである。更に、環状部4bを取出し側部材1bの輪郭に沿って長く確保することができるので、弾性膜4の変形及び復元をスムースに行うことができる。
【0028】
本発明に従えば、係止部f1,f2と併せて接着等の手段を併用することもできる。また、係止部f1,f2は、係止部f1を凸部とし、係止部f2を凹部とすることもできる。更に、本発明に従えば、操作側部材1aに対しても同様の構成を採用することができる。
【0029】
上述の各形態では、弾性膜3,4はそれぞれ、同一のシリコーンで構成されている。但し、本発明に従えば、弾性膜3,4をそれぞれ、物性の異なるシリコーンで構成することもできる。具体例としては、弾性膜3,4をそれぞれ、弾性率の異なる2種類のシリコーンで構成する。この場合、弾性膜3,4は、全体としての剛性が高まるので操作性がよく、組み付けも容易になる。
【0030】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、弾性膜3,4を構成する材料は、変形及び復元の可能な弾性を有するものであれば、シリコーンに限定されることなく、エラストマー等の弾性材料で構成することができる。また、弾性膜3,4と操作側部材1a及び取出し側部材1bはそれぞれ、上述のようなインサート成形や嵌合手段を用いた組み付けによるものに限定されることなく、例えば、接着等の手段によって固定することができる。更に、外装体1の形状は、円形のものに限定されるものではなく、様々な形状を採用することができる。また、粒状物Cの形状は、丸形形状に限定されるものではない。更に、各形態それぞれの構成中に採用される各要素は、適宜、転用等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば、粒状のガムやキャンディ等の嗜好品や、丸薬等の錠剤を収納容器に採用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 外装体
1a 操作側部材
1b 取出し側部材
3 弾性膜(操作側)
3a 膨出部
3b 環状部
4 弾性膜(操作側)
4a 膨出部
4b 環状部
C 粒状物
f 係止部
1 係止部(弾性膜側)
2 係止部(外装体側)
R 収納空間
S スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外観形状を形作る外装体の対向する部位にそれぞれ、変形及び復元の可能な弾性膜を設け、その内側に複数の粒状物の収納空間を形成すると共に、
当該弾性膜の一方に、他方の弾性膜を収納空間に押し込むことで寄せられた粒状物を取り出し可能なスリットを形成したことを特徴とする粒状物収納容器。
【請求項2】
請求項1において、他方の弾性膜の内面であって、一方の弾性膜に形成されたスリットと対向する部位に、粒状物との接地領域を取り囲むように配置されて、当該粒状物の脱落を防止する区画壁を設けたことを特徴とする粒状物収納容器。
【請求項3】
請求項1又は2において、弾性膜は、外装体と一体に成形されたものであることを特徴とする粒状物収納容器。
【請求項4】
請求項1又は2において、弾性膜と外装体とはそれぞれ、互いに引っ掛かって係止される係止部を有し、外装体に対して別体に組み付けられるものであることを特徴とする粒状物収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171686(P2012−171686A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38979(P2011−38979)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】