説明

粒状組成物、固形医薬製剤及び粒状組成物の製造方法

【課題】口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、薬効成分の不快味がマスキングされ、また薬効成分の放出制御が可能な粒状組成物、該組成物を含有する経口投与用の固形医薬製剤、及び前記粒状組成物の製造方法の提供。
【解決手段】下記工程(A1)及び(A2)を含む方法により得られる粒状組成物。
(A1)(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得る工程
(A2)前記混合物を用いて造粒する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒状組成物、該組成物を含有する経口投与用の固形医薬製剤、及び粒状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬製剤においては、薬効成分の不快味のマスキングや薬効成分の放出制御(特許文献1)を課題とした技術が注目され、これら服薬コンプライアンスの更なる向上が求められており、斯かる観点から、易服用性経口投与製剤(経口投与用の固形医薬製剤、ドライシロップ剤等)等の易服用性製剤が開発されている。
そして、上記の経口投与用の固形医薬製剤としては、粒状組成物(造粒物)や、該粒状組成物を打錠等することにより得られる口腔内崩壊錠等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−354550号公報
【特許文献2】特開2007−63263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記経口投与用の固形医薬製剤が口腔内で崩壊したときの服用感への影響(ザラツキや異物感等)を抑えるためには、上記粒状組成物の平均粒子径が、ある程度小さいことが必要であり、その一方で、平均粒子径が小さすぎると、薬効成分の不快味のマスキングや薬効成分の放出制御が困難になり易いという問題があった(特許文献2)。
そして、前述の服用感への影響の抑制と、前述のマスキング及び放出制御とを両立した粒状組成物や該粒状組成物を含有する固形医薬製剤は、未だ少なく、服薬コンプライアンスの更なる向上が叫ばれる昨今においては、斯かる粒状組成物及び該粒状組成物を含有する固形医薬製剤の開発が望まれていた。
【0005】
したがって、本発明の課題は、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、薬効成分の不快味がマスキングされ、且つ薬効成分の放出制御が可能な粒状組成物、該組成物を含有する経口投与用の固形医薬製剤、及び前記粒状組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得、次いで、前記混合物を用いて造粒することにより得られる粒状組成物が、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が少なく、薬効成分の不快味がマスキングされ、且つ容易に薬効成分の放出制御できることを見出した。
【0007】
すなわち、(i)本発明は、下記工程(A1)及び(A2)を含む方法により得られる粒状組成物を提供するものである。
(A1)(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得る工程
(A2)前記混合物を用いて造粒する工程
【0008】
また、(ii)本発明は、上記(i)の組成物を含有する経口投与用の固形医薬製剤を提供するものである。
【0009】
さらに、(iii)本発明は、下記工程(A1)及び(A2)を含む粒状組成物の製造方法を提供するものである。
(A1)(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得る工程
(A2)前記混合物を用いて造粒する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒状組成物は、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、薬効成分の不快味がマスキングされ、また薬効成分の放出制御が可能である。したがって、本発明によれば、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、薬効成分の不快味がマスキングされ、また薬効成分の放出制御が可能な経口投与用の固形医薬製剤を提供できる。
また、本発明の製造方法によれば、簡便且つ容易に上記粒状組成物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粒状組成物は、前記工程(A1)及び(A2)を含む方法により得られる。まず、斯かる工程(A1)について、詳細に説明する。
【0012】
工程(A1)は、(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得る工程である。
上記(B1)薬効成分としては、特に限定されないが、グリメピリド、ピオグリタゾン塩酸塩、ミグリトール、アカルボース、ナテグリニド、エパルレスタット等の糖尿病治療剤;リマプロストアルファデクス、シロスタゾール、クロピドグレル硫酸塩、サルポグレラート塩酸塩、チクロピジン塩酸塩等の抗血小板凝集剤;ピルジカイニド塩酸塩水和物;ニコランジル;硝酸イソソルビド;ドキサゾシンメシル酸塩;フロセミド;ニセルゴリン;シルデナフィルクエン酸塩;ボセンタン水和物、ベラプロストナトリウム等の肺動脈性肺高血圧症治療用薬;カルベジロール、アテノロール、ビソプロロールフマル酸塩等のβ遮断薬;アムロジピンベシル酸塩、ニフェジピン、ベニジピン塩酸塩、シルニジピン、アゼルニジピン、ジルチアゼム塩酸塩、ニカルジピン塩酸塩等のカルシウム拮抗薬;カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、オルメサルタンメドキソミル、テルミサルタン、ロサルタンカリウム等のアンジオテンシンII受容体拮抗薬;
【0013】
イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、テモカプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、カプトプリル、リシノプリル、ベナゼプリル塩酸塩等のアンジオテンシン変換酵素阻害剤;アトルバスタチンカルシウム、プラバスタチンナトリウム、ロスバスタチンカルシウム、ピタバスタチンカルシウム、シンバスタチン、フルバスタチンナトリウム等のスタチン系化合物やエゼチミブ、ベザフィブラート等の脂質異常症治療剤(高脂血症剤);ラロキシフェン塩酸塩、メナテトレノン、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アルファカルシドール、カルシトリオール等の骨粗しょう症治療剤;
【0014】
ロキソプロフェンナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウム、セレコキシブ、メロキシカム等の非ステロイド性消炎鎮痛剤;メトトレキサート等の抗リウマチ剤;アロプリノール等の痛風治療剤;ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール等のプロトンポンプ阻害薬;ファモチジン、ラニチジン塩酸塩、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩、ニザチジン等のヒスタミンH2受容体拮抗薬;レバミピド、テプレノン等の防禦因子増強系抗潰瘍剤;モサプリドクエン酸塩水和物、チキジウム臭化物等の消化管運動賦活剤;グラニセトロン塩酸塩、ドンペリドン等の制吐剤;ロペラミド塩酸塩等の止寫薬;ウルソデオキシコール酸等の肝・胆・消化機能改善剤;カモスタットメシル酸塩等の蛋白分解酵素阻害剤;バルプロ酸ナトリウム等の抗てんかん、躁病・躁状態治療剤;プラミペキソール塩酸塩水和物、ロピニロール塩酸塩等のパーキンソン病治療剤;
【0015】
オランザピン、リスペリドン等の抗精神病薬;クエチアピンフマル酸塩、アリピプラゾール等の統合失調症治療剤(抗精神病薬);ブロチゾラム等の催眠鎮静剤;エチゾラム等の抗不安薬;パロキセチン塩酸塩水和物、セルトラリン塩酸塩、フルボキサミンマレイン酸塩等の抗うつ剤及び気分安定剤;ドネペジル塩酸塩等の抗アルツハイマー剤;タルチレリン水和物等の脊髄小脳変性症治療剤;プロピベリン塩酸塩、フラボキサート塩酸塩等の尿路器官用剤;タムスロシン塩酸塩、シロドシン、ナフトピジル等の前立腺肥大症治療剤;コハク酸ソリフェナシン等の過活動膀胱治療剤;フルスルチアミン、メコバラミン等のビタミン剤;ツロブテロール塩酸塩、モンテルカストナトリウム、プランルカスト水和物、ペミロラストカリウム等の気管支拡張剤;L−カルボシステイン、アンブロキソール塩酸塩等の去痰薬;
【0016】
フェキソフェナジン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、セチリジン塩酸塩、ベポタスチンベシル酸塩、エバスチン、アゼラスチン、エメダスチンフマル酸塩等の抗ヒスタミン剤(ヒスタミンH1受容体拮抗薬);セフカペンピボキシル塩酸塩水和物、セフジトレンピボキシル、セフジニル、クラリスロマイシン、レボフロキサシン水和物、イトラコナゾール等の抗生物質・抗菌剤;オセルタミビルリン酸塩、エンテカビル水和物等の抗ウイルス剤;テガフール、ホリナートカルシウム、イマチニブメシル酸塩、ビカルタミド、アナストロゾール等の抗癌剤;フィナステリド等の男性型脱毛症治療剤;タクロリムス水和物、シクロスポリン、ミゾリビン等の免疫抑制剤;エペリゾン塩酸塩等の筋弛緩剤等が挙げられる。これらを単独で、又は2種以上用いてもよい。なお、これら成分(B1)が不快味を有する場合、成分(B1)は、薬効成分の不快味のマスキング等の点から、後記成分(B2)に不溶乃至難溶性のものが好ましい。ここで、成分(B2)に不溶乃至難溶性とは、成分(B2)の溶融液又は溶液に対する溶解度が低いことを意味する。
これらの中でも、成分(B1)としては、糖尿病治療剤が好ましく、グリメピリドが特に好ましい。
【0017】
上記成分(B1)の使用量としては、粒状組成物全量中に、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜30質量%がより好ましく、0.1〜15質量%がさらに好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
【0018】
次に、前記成分(B2)について説明する。
成分(B2)は、融点が40〜150℃である2種以上の化合物であり、好ましくは融点が50〜80℃のものである。斯かる化合物としては、常温でワックス状のものが好ましく、成分(B1)の不快味のマスキング等の点から、成分(B1)の融点よりも低いものがより好ましい。
【0019】
上記成分(B2)の好適な具体例としては、非イオン性界面活性剤(以下、成分(b1)ともいう);高級アルコール類(以下、成分(b2)ともいう)、マクロゴール類等のアルコール類;ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸類;牛脂硬化油、硬化油、硬化ナタネ油、硬化ヒマシ油、水素添加植物油、ダイズ硬化油、カルナウバロウ、サラシミツロウ、ミツロウ、モクロウ等の油脂類;パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類が挙げられる。
これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アルコール類が好ましく、非イオン性界面活性剤、高級アルコール類が好ましく、非イオン性界面活性剤と高級アルコール類との組み合わせが特に好ましい。
【0020】
上記(b1)非イオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリン;グリセリン脂肪酸エステル;アセチルグリセリン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ステアリン酸モノグリセリン、グリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、ステアリン酸モノグリセリンが特に好ましい。
【0021】
上記(b2)高級アルコール類としては、炭素数14〜20のアルコールが好ましく、ステアリルアルコール、セタノールが特に好ましい。
【0022】
また、成分(B2)の2種類以上の化合物の組み合わせとしては、粒状組成物からの薬効成分の放出制御の点から、斯かる化合物の融点が同じものではなく、相互に異なる融点を有する化合物の組み合わせが好ましく、融点の差が0.5〜10℃程度の化合物の組み合わせがより好ましく、融点の差が0.5〜8℃程度の化合物の組み合わせが特に好ましい。
【0023】
上記成分(B2)の使用量としては、粒状組成物全量中に、50〜95質量%が好ましく、口腔内で崩壊したときの服用感への影響及び粒状組成物の平均粒子径等の点から、55.5〜80質量%がより好ましく、57〜75質量%が特に好ましい。
また、成分(B1)と成分(B2)との含有比は、成分(B1)の投薬量や粒状組成物における所望の粒子径サイズに応じて、適宜検討して設定すればよいが、例えば、成分(B1)1質量部に対して、成分(B2)が2〜40質量部であるのが好ましく、2〜30質量部であるのがより好ましく、2〜20質量部であるのが特に好ましい。
【0024】
また、成分(b1)の使用量の上限としては、粒状組成物全量中に、90質量%が好ましく、75質量%がより好ましい。一方、下限としては、45質量%が好ましい。
また、成分(b2)の使用量としては、粒状組成物全量中に、1〜15質量%が好ましく、5.5〜9質量%がより好ましい。
また、前記成分(b1)と成分(b2)とを組み合わせて用いる場合、成分(b1)と成分(b2)との含有比は、成分(b2)1質量部に対して、成分(b1)が、1〜15質量部であるのが好ましく、3〜12質量部であるのがより好ましく、5〜10質量部であるのが特に好ましい。
【0025】
また、本発明の粒状組成物としては、粒状組成物の製造過程におけるハンドリング性及び粒状組成物の平均粒子径等の点から、工程(A1)において、前記成分(B1)及び(B2)に加えて、さらに、(B3)流動化剤及び/又は(B4)水溶性高分子を混合することにより得られるものが好ましい。
【0026】
上記成分(B3)としては、例えば、ケイ酸カルシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の含ケイ酸化合物;タルク;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸塩;酸化チタン;無水リン酸水素カルシウム;フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上用いてもよい。これらの中でも、含ケイ酸化合物(以下、成分(b3)ともいう)、ステアリン酸塩(以下、成分(b4)ともいう)が好ましく、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。
【0027】
上記成分(B3)の使用量の上限としては、粒状組成物全量中に、30質量%が好ましく、18.5質量%がより好ましく、11.5質量%が特に好ましい。一方、下限としては、1質量%が好ましい。
また、上記成分(b3)の使用量の上限としては、粒状組成物全量中に、20質量%が好ましく、13質量%がより好ましく、12.5質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。一方、下限としては、1質量%が好ましい。
また、上記成分(b4)の使用量の上限としては、20質量%が好ましく、12.5質量%がより好ましく、製造過程におけるハンドリング性及び該粒状組成物の成形度合い等の点から、9.9質量%がさらに好ましく、7.5質量%が特に好ましい。一方、下限としては、1質量%が好ましい。
【0028】
次に、前述の成分(B4)水溶性高分子について、説明する。
斯かる成分(B4)としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、ヒプロメロースが好ましい。
成分(B4)の使用量は、特に限定されないが、例えば、1〜50質量%、好ましくは10〜30質量%程度である。
【0029】
工程(A1)における混合は、通常の造粒法で用いられるものであればよい。例えば、成分(B2)を加熱し溶融又は溶解させ、成分(B2)の溶融液又は溶液を得、次いで、該溶融液又は溶液に、成分(B1)、必要に応じて、成分(B3)及び/又は成分(B4)を分散又は溶解させ、混合物を得る方法が挙げられる。斯かる混合物としては、分散液が好ましい。
なお、工程(A1)における混合は、少なくとも成分(B2)の融点以上の温度であればよい。
【0030】
次に、前記工程(A2)について、説明する。
工程(A2)は、前記混合物を用いて造粒する工程であり、斯かる混合物を常温で造粒物とすることが可能であれば特に限定されない。ここで、「常温」とは、第十五改正日本薬局方の通則における「常温」(15〜25℃)と同義である。
本発明の粒状組成物は、工程(A2)において、上記混合物を用いて造粒することにより得られる。斯かる造粒法としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)、スプレーチリング(噴霧冷却)等の噴霧造粒;溶融造粒;上記混合物(好ましくは分散液)を冷却固化後粉砕する方法等が挙げられる。本発明においては、粒状組成物の平均粒子径等の点から、噴霧造粒が好ましく、スプレーチリングがより好ましい。
【0031】
上記工程(A1)及び(A2)を含む方法により得られる本発明の粒状組成物は、後記実施例に記載のとおり、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、薬効成分の不快味がマスキングされ、また薬効成分の放出制御が可能である。
斯かる粒状組成物の平均粒子径の上限としては、口腔内で崩壊したときの服用感への影響等の点から、400μmが好ましく、250μmがより好ましく、200μmがさらに好ましく、180μmがさらに好ましく、150μmが特に好ましい。一方、下限としては、薬効成分の不快味のマスキング及び薬効成分の放出制御等の点から、0.1μmが好ましく、45μmがより好ましく、50μmがさらに好ましく、55μmが特に好ましい。
ここで、本発明において「平均粒子径」とは、後記の実施例の条件に従い測定した結果、上述のような粒子径の範囲となるものを意味する。
【0032】
次に、本発明の経口投与用の固形医薬製剤について説明する。
斯かる固形医薬製剤は、前述の粒状組成物を含有するものである。したがって、本発明の経口投与用の固形医薬製剤は、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、薬効成分の不快味がマスキングされ、また薬効成分の放出制御が可能である。
【0033】
経口投与用の固形医薬製剤としては、前述の粒状組成物;該粒状組成物を二次造粒して得られる、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、ドライシロップ剤等の医薬製剤(例えば、口腔内崩壊性粒状製剤);第十五改正日本薬局方製剤総則等に記載の公知の方法に基づき、前記粒状組成物又は前記医薬製剤を、さらに錠剤(例えば、口腔内崩壊性錠剤)、カプセル剤等に製剤化したものが挙げられる。上記二次造粒の方法としては、湿式造粒法、上記粒状組成物よりも融点が低い物質を用いた溶融造粒法等が挙げられる。
【0034】
なお、本発明の固形医薬製剤は、前述の粒状組成物の他に、必要に応じて以下の成分(I)〜(VI)を含んでいてもよい。上記固形医薬製剤が口腔内崩壊性製剤やドライシロップ剤である場合、下記成分(I)を含有せしめることにより、斯かる製剤に好ましい甘味・清涼感を付与できる。
【0035】
(I)エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール
(II)乳糖水和物等の賦形剤
(III)ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピリセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール等の結合剤
(IV)アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、スクラロース、ステビア、ソーチン等の甘味剤
(V)dl−メントール、l−メントール等の矯味剤
(VI)カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等の崩壊剤
【0036】
本発明の固形医薬製剤を経口投与する場合、1日につき1〜4回程度に分けて、食前、食間、食後、就寝前等に服用することができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
下記の実施例における平均粒子径の測定は、レーザー回折式粒粗分布測定装置(LS 13 120 ベックマンコールター社)により行った。
【0039】
[試験例1] 粒状組成物の製造試験
下記化合物群に記載の融点が40〜150℃である化合物のうち1種を、化合物の融点を超える温度に加熱し溶融又は溶解させ、溶融液又は溶液を得、次いで、この溶融液又は溶液95質量部にグリメピリド5質量部を分散させ、混合物を得、この混合物をスプレーチリング(アジテータ速度:1500rpm、スプレー圧:1.5kg/cm2)することにより、粒状組成物の製造試験を行った。
化合物群:ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセリン、セタノール、ステアリルアルコール、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、サラシミツロウ、マクロゴール4000、マクロゴール6000
【0040】
上記試験の結果、硬化ヒマシ油、マクロゴール4000又はマクロゴール6000を用いた場合は、これら化合物の溶融液又は溶液を調製することが困難であり、また、溶融液又は溶液の凝固が速やかなため、操作性(ハンドリング)が極めて不良であった。
一方、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセリン、セタノール、ステアリルアルコール、硬化ナタネ油又はサラシミツロウを用いた場合は、噴霧造粒後の成形性が悪く、粒状組成物の強度が不十分であった。
【0041】
上記の結果から、融点が40〜150℃である化合物のうち2種以上でなく1種と、グリメピリドとを用いた場合には、粒状組成物が得られない、或いは粒状組成物の強度が不十分となることがわかった。
【0042】
[試験例2]
ステアリン酸モノグリセリン及びステアリルアルコールを加熱し溶融又は溶解させ、溶融液又は溶液を得、次いで、この溶融液又は溶液に、グリメピリド、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びヒプロメロースを分散させ、混合物を得、この混合物をスプレーチリング(アジテータ速度:2000rpm、混合物滴下法)することにより、下記表1の処方の粒状組成物を得た(実施例1〜3)。
そして、得られた粒状組成物につき、平均粒子径(累積50%粒子径)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、ステアリン酸モノグリセリン及びステアリルアルコールの2種類の組み合わせと、グリメピリドとを用いることにより、粒状組成物が得られ(実施例1〜3)、さらに、その粒状組成物は、いずれも経口投与に適した平均粒子径であることがわかった。
また、上記実施例1〜3の粒状組成物の平均粒子径について検討した結果、実施例3の平均粒子径は、服用感への影響が少ない範囲(評価:○)であり、実施例1及び2の平均粒子径は、服用感への影響が非常に少ない範囲(評価:◎)であると考えられた。実施例3と実施例1及び2との評価の差は、(B2)の合計含有量の相違に起因するものと推察される。
【0045】
[試験例3]
試験例2と同様にして、下記表2の処方の粒状組成物を得た(実施例4〜6)。
そして、得られた粒状組成物につき、平均粒子径(累積50%粒子径)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
この結果、実施例4〜6の粒状組成物は、いずれも経口投与に適した平均粒子径であることがわかった。
また、上記実施例4〜6の粒状組成物の平均粒子径について検討した結果、いずれの平均粒子径も、服用感への影響が非常に少ない範囲(評価:◎)であると考えられた。
【0048】
[試験例4]
試験例2と同様にして、下記表3の処方の粒状組成物を得た(実施例7〜9)。
そして、各粒状組成物の製造過程におけるハンドリング性、及び該粒状組成物の成形度合いを、それぞれ評価した。また、上記粒状組成物につき、平均粒子径(累積50%粒子径)を測定した。測定結果を表3に示す。なお、表3中の実施例5は、前記試験例3の実施例5を意味する。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例8及び9の粒状組成物は、ハンドリング性及び成形度合いの評価が、いずれも良好(評価:○)であった。実施例5及び7の粒状組成物は、ハンドリング性及び成形度合いの評価が、いずれも非常に良好(評価:◎)であった。
一方、実施例7〜9の粒状組成物は、いずれも経口投与に適した平均粒子径であることがわかった。
また、上記実施例7〜9の粒状組成物の平均粒子径について検討した結果、いずれの平均粒子径も、服用感への影響が非常に少ない範囲(評価:◎)であると考えられた。
【0051】
[試験例5]
試験例2と同様にして、下記表4の処方の粒状組成物を得た(実施例10)。
そして、得られた粒状組成物につき、平均粒子径(累積50%粒子径)を測定した。測定結果を表4に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
この結果、実施例10の粒状組成物は、経口投与に適した平均粒子径であることがわかった。
また、上記実施例10の粒状組成物の平均粒子径について検討した結果、服用感への影響が非常に少ない範囲(評価:◎)であると考えられた。
【0054】
[試験例6]
実施例10の粒状組成物につき、第15改正日本薬局方記載の溶出試験法に基づいて、溶出試験(パドル法、50rpm、pH7.5リン酸水素二ナトリウム・クエン酸緩衝液900ml)を行った。結果を表5に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
表5から明らかなように、実施例10の粒状組成物は徐放性の溶出挙動を示した。この結果から、実施例10の粒状組成物は、放出制御が可能であることがわかった。
【0057】
[試験例7]
グリメピリドを1mg服用できる量の前記実施例7の粒状組成物をとり、1回服薬したところ、異物感及び不快味を感じることなく、服用することができた。この結果から、実施例7の粒状組成物は、口腔内で崩壊したときの服用感への影響が抑制され、且つ薬効成分の不快味がマスキングされたものであることがわかった。
よって、前記実施例7の粒状組成物を用いて製する経口投与用の固形医薬製剤は、易服用性経口投与製剤となり得ることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、口腔に含んだ際、服用感に影響を与えず、また薬物の有する不快味をもマスキング可能であって、薬物の放出制御をも可能であり、さらには十分な強度を有する造粒物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(A1)及び(A2)を含む方法により得られる粒状組成物。
(A1)(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得る工程
(A2)前記混合物を用いて造粒する工程
【請求項2】
前記成分(B2)が、下記成分(b1)及び(b2)を含有する請求項1記載の組成物。
(b1)非イオン性界面活性剤
(b2)高級アルコール類
【請求項3】
前記成分(b1)が、モノステアリン酸グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記工程(A1)において、前記成分(B1)及び(B2)に加えて、さらに、(B3)流動化剤を混合するものである請求項1〜3いずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(B3)が、ケイ酸カルシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムから選ばれる1種以上である請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(A)が、糖尿病治療剤である請求項1〜5いずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の組成物を含有する経口投与用の固形医薬製剤。
【請求項8】
下記工程(A1)及び(A2)を含む粒状組成物の製造方法。
(A1)(B1)薬効成分と(B2)融点が40〜150℃である2種以上の化合物とを、前記成分(B2)の融点以上の温度で混合し、前記成分(B1)及び(B2)を含有する混合物を得る工程
(A2)前記混合物を用いて造粒する工程

【公開番号】特開2012−116781(P2012−116781A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266765(P2010−266765)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】