説明

粒状肥料配合物

【課題】
肥料袋からの排出時や動力肥料散布機のタンク内など、粒状肥料の粒子が移動する過程において、異なる種の粒状肥料の粒子が分離し難い粒状肥料配合物を提供すること。
【解決手段】
複数種の粒状肥料を配合してなる粒状肥料配合物であって、最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせの全てが下記の関係を有することを特徴とする粒状肥料配合物。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100;
好ましくは、更に下記の関係を有する粒状肥料配合物。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される、
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の粒状肥料を配合した粒状肥料配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業就労者の高年齢化、就労者数の減少、兼業農家の増加から、より効率よい作物栽培を目的に各種肥料成分を配合した粒状肥料配合物が提案されている。また、植物の成長にあわせ所定の時期に溶出させるために種々の肥効調整型被覆肥料も開発され、配合されている。例えば、特許文献1には緩行性被覆粒状肥料と非緩行性被覆粒状とを混合してなる被覆粒状配合肥料が記載され、特許文献2には窒素形態且つ供給パターンの異なる種類の粒状肥料からなる配合肥料が記載されている。
このように種々の目的に応じて設計された異なる肥料を配合した配合肥料が利用されているが、適切に配合された配合肥料が製品袋からの排出時や、動力肥料散布機のタンク内にて分離してしまい、実際に水田や畑に散布された際には、配合肥料の割合のムラが生じてしまい、作物の株によってはその成長に差異が生じる恐れがあった。
この為、動力肥料散布機の肥料タンク内に攪拌手段を設けた混合機等が使用されている(特許文献3を参照。)が、機械の構造が複雑になるなどの問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平6−329490号公報
【特許文献2】特開平11−147780号公報
【特許文献3】特開平10−136736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肥料袋からの排出時や動力肥料散布機のタンク内など、粒状肥料の粒子が移動する過程において、異なる種類の粒状肥料の粒子が分離し難い粒状肥料配合物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況下において、本発明者は粒状肥料配合物について鋭意検討を重ねた結果、主として配合された粒状肥料の形状に関する特定の係数が、互いに一定の関係にある粒状肥料を配合した場合に、筒状等の経路を移動する際に異なる種類の粒状肥料が容易に分離することがないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
複数種の粒状肥料を配合してなる粒状肥料配合物であって、
最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせの全てが下記の関係を有することを特徴とする粒状肥料配合物。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の平均値の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100
[発明2]
最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせの全てが、更に下記の関係を有することを特徴とする、発明1に記載された粒状肥料配合物。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3
[発明3]
粒状肥料配合物が、少なくとも1種の被覆粒状肥料を配合してなる粒状肥料配合物であるであることを特徴とする、発明1または2に記載された粒状肥料配合物。
[発明4]
粒状肥料配合物に最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料の候補とを決定する工程(工程イ)、
工程イで決定された、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料の候補との組み合わせが、下記の関係を有するかを判定する工程(工程ロ)、および
工程ロで下記の関係を有すると判定された、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料とを、所定の割合で混合する工程(工程ハ)を有することを特徴とする粒状肥料配合物の製造方法。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の平均値の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100
[発明5]
工程ロが、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料の候補との組み合わせが、更に下記の関係を有するかを判定する工程である、発明4に記載された粒状肥料配合物の製造方法。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3
[発明6]
粒状肥料配合物に最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料との組み合わせが下記の関係を有するように、粒状肥料の粒子の形状を変化させる処理または粒状肥料の粒子の形状に基づき選別する処理に付する工程(工程ニ)、および
工程ニで粒状肥料の粒子の形状を変化させる処理または粒状肥料の粒子の形状に基づき選別する処理に付された、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料とを、所定の割合で混合する工程(工程ホ)を有することを特徴とする粒状肥料配合物の製造方法。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100
[発明7]
工程ニが、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料との組み合わせが、更に下記の関係を有するように、粒状肥料の粒子の形状を変化させる処理または粒状肥料の粒子の形状に基づき選別する処理に付する工程である、発明6に記載された粒状肥料配合物の製造方法。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3
【発明の効果】
【0007】
本発明の粒状肥料配合物は、肥料袋からの排出や、動力肥料散布機のタンク内等のような筒状の経路において移動する際に、異なる粒状肥料の粒子同士が容易に分離しないので、場所におけるバラツキを少なく、散布することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を詳しく説明する。
本発明において使用され得る粒状肥料は、肥料成分を含有する粒状物である。肥料成分は、水稲などの植物栽培において養分を与えるために土壌に施される窒素、リン、カリウム、珪素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄等の種々の元素を含有する成分であり、具体例としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質肥料;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム質肥料;珪酸カルシウム等の珪酸質肥料;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料;鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)等を挙げることができる。窒素(N)、リン(P)およびカリウム(K)より選ばれる肥料成分の一種以上、特にこれら三種全ての肥料成分を含有する肥料としては、NPK成分型(N−P2O5−K2O)肥料が挙げられ、かかる肥料としては、例えば、5−5−7(N−P2O5−K2Oの重量比率を意味する。以下同じ。)、12−12−16等の1型平上り型、5−5−5、14−14−14等の2型水平型、6−6−5、8−8−5等の3型平下がり型、4−7−9、6−8−11等の4型上り型、4−7−7、10−20−20等の5型上り平型、4−7−4、6−9−6等の6型山型、6−4−5、14−10−13等の7型谷型、6−5−5、18−11−11等の8型下がり平型、7−6−5、14−12−9等の9型下がり型、3−20−0、18−35−0等の10型NP型、16−0−12、18−0−16等の11型NK型、0−3−14、0−15−15等の12型PK型等を挙げることができる。
【0009】
また、粒状肥料は除草剤、殺虫剤等の農薬成分を含有することができる。該農薬成分は、例えば粒状肥料表面に付着した状態、あるいは粒状肥料内部または全体に分散した状態で存在し得る。農薬成分を含有する粒状肥料は、例えば含有せしめる農薬成分の水、有機溶剤等の溶液、あるいは界面活性剤等がさらに添加されたエマルジョン液を、粒状肥料の粒子表面に散布し、粒子内部に浸透させ、同時、またはその後に溶媒を蒸散等により除去することによって製造できる。
【0010】
粒状肥料は、肥料を必須成分とする原料を造粒することにより得ることができる。造粒法としては、転動造粒法、押出し造粒法、圧縮造粒法、破砕造粒法、噴流造粒法等、公知の造粒法のいずれを用いてもよいが、これらの造粒法により得られる肥料の形状においては、針状、燐片状(フレーク状)のように、物理的な強度の不足した形状の固形肥料は除かれる。即ち、本発明における粒状肥料とは、塊状の肥料を意味し、具体的には塊における最大幅と、最小幅の比が0.2以上である粒状肥料を意味する。
粒状肥料の粒子径は、製造上の観点等から、通常、重量平均粒子径として、0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmである。
【0011】
本発明における粒状肥料は、肥料成分を含有する粒状物が樹脂にて被覆された被覆粒状肥料であってもよい。該被覆における樹脂としては、例えば、ワックス、水溶性高分子、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、カーボワックス、ヘキストロウ、蔗糖エステル、脂肪酸エステルなどの合成ワックス、カルナウバワックス、ミツロウ、木ロウなどの天然ワックス、パラフィンワックス、ペトロラクタムなどの石油ワックス等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどのビニル重合物、ブタジエン重合物、イソプレン重合物、クロロプレン重合物、ブタジエン−スチレン共重合物、エチレン−プロピレン−ジエン共重合物、スチレン−イソプレン共重合物などのジエン系重合物、エチレン−プロピレン共重合物、ブテン−エチレン共重合物、ブテン−プロピレン共重合物、エチレン−酢酸ビニル共重合物、エチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−メタアクリル酸共重合物、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合物、エチレン−一酸化炭素共重合物、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合物などのポリオレフィン共重合物、塩化ビニル−ビニルアセテート共重合物、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合物などの塩化ビニル共重合物等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレア・メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0012】
本発明において、異なる種の粒状肥料とは、イ)粒状肥料に含有されるいずれかひとつの肥料成分の種類が異なる、ロ)粒状肥料に含有されるいずれかひとつの肥料成分の含有率が実質的に異なる(例えば、含有率が1.5倍以上異なる)、ハ)粒状肥料における被覆の有無が異なる、ニ)被覆粒状肥料における被覆の種類が異なる、ホ)粒状肥料の粒径が実質的に異なる(例えば、粒径が2倍以上異なる)、または、ヘ)粒状肥料の形状が実質的に異なることを意味する。
【0013】
本発明における粒状肥料配合物は、粒状肥料配合物に主として配合された粒状肥料の関係において、具体的には、粒状肥料配合物の全体に対して最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせ、より好ましくは、最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の5重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせの全てが、下記の形状係数の平均値に関する関係を有する粒状肥料配合物であり、さらに好ましくは、該粒状肥料の組み合わせの全てが、更に下記の流動度に関する関係を有する粒状肥料配合物である。
【0014】
まず、本発明における粒状肥料の形状係数について、以下に説明する。本発明における粒状肥料の形状係数は、下記に示す方法により測定される。
粒状肥料の粒子を板硝子面等の滑らかな平面上に置く。該平面に対して垂直方向から、該粒子の各々の平面として画像を取得する。次に平面画像として取り込んだ粒子の輪郭における、周囲長と包絡周囲長を市販の画像解析装置等を用いて測定して、下記の式に従い、形状係数を計算する。
形状係数=(1−包絡周囲長/周囲長)×100
例えば図1に示した粒子の輪郭においては、「包絡周囲長」とは破線で示したようにその凸部を最短の距離をもって結んだときの周囲の長さを意味し、「周囲長」とは実線で表わされた輪郭そのものの長さを意味する。因みに、包絡周囲長と周囲長より算出される該形状係数は、一般に「収縮率」と呼称される形状係数である。
実際には、該形状係数を統計的に有意な数の粒状肥料の粒子について取得し、これの平均値を計算する。具体的には20〜100粒の粒状肥料の粒子を用いて、各々の形状係数の平均値を算出する。
【0015】
本発明における上記の式で求められる形状係数は、具体的には、CCDカメラ等を用いて取り込んだ粒状肥料の平面画像を、WinROOF(三谷商事製)等の画像解析処理装置を使いて、測定することができる。
【0016】
上記の方法により、粒状肥料配合物に最も多く配合された種の粒状肥料およびそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料について、各々の粒子の形状係数を測定する。
次に、最も多く配合された種の粒状肥料と、それ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせにおいて、形状係数の大きい粒状肥料を「粒状肥料A」とし、もう一方を「粒状肥料B」とする。粒状肥料Aの形状係数に対する、粒状肥料Bの形状係数の比を求める。本発明の粒状肥料配合物は、この形状係数の比が0.3〜1.0、好ましくは0.4〜1.0である。
粒状肥料配合物にそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料が2種以上ある場合は、最も多く配合された種の粒状肥料と、それ以外の2種以上の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせにおいても、同様の形状係数の比を求める。
【0017】
本発明において、最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせは、更に粒状肥料の流動性が下記の関係を有していることが好ましい。
本発明における粒状肥料の流動性は、下記に示すように、日本工業規格による流動度測定方法に基づいた方法により測定される。
まず、図2に示す、オリフィス管部の口径12mmφ、長さ55mm、漏斗状部の上端部の口径75mmφ、長さ50mmである、漏斗状オリフィス管を用意し、該オリフィス管が垂直となるように固定する。予め量り取っておいた粒状肥料50gを、該オリフィス管の漏斗状部へ投入して、下端から落下しはじめた時点をスタート時として、全量がオリフィス管から出るまでの時間を測定して、単位重量あたりの粒子の落下時間を流動度(秒/g)として算出する。1種類の粒状肥料について、3度の測定を行い、その平均値を算出し、その粒状肥料における流動度とする。
【0018】
本発明の粒状肥料配合物は、形状係数に基づいて定めた“粒状肥料A”および“粒状肥料B”について、粒状肥料Aの流動度に対する、粒状肥料Bの流動度の比が好ましくは0.8〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.2である。
【0019】
本発明の粒状肥料配合物は、例えば、最も多く配合された粒状肥料と10重量%以上配合された他の粒状肥料との比重差が0.1〜0.4g/cm3程度あったとしても、混合された粒状肥料同士が容易に分離することがないので、攪拌手段を有しない動力肥料散布機のタンク内においても、分離することなく、均一に粒状肥料配合物を散布することが可能である。
【0020】
粒状肥料の製造においては、その肥料成分の種類や量が同一であっても、造粒方法や造粒条件等が異なると、得られる粒状肥料の粒径分布や形状が変化する場合がある。この場合には、同一種類の粒状肥料においても、造粒方法、造粒条件、更には保存条件が変化した製品毎に、上記の形状係数や流動度を測定しておき、実際に粒状肥料配合物を製造する際に、形状係数や流動度の比が特定の範囲となるような粒状肥料を組み合わせて配合することにより、本発明の分離し難い本発明の粒状肥料配合物を製造することができる。
具体的には、粒状肥料配合物に最も多く配合される種の粒状肥料を決定し、更に粒状肥料配合物に10重量%以上配合するそれ以外の粒状肥料の候補を決定する。それ以外の10重量%以上配合する粒状肥料が複数の種類ある場合には、その粒状肥料についての候補も決定する。次に、粒状肥料配合物に最も多く配合させる種の粒状肥料およびそれ以外の10重量%以上配合する種の粒状肥料の候補について、上記ような粒状肥料の形状係数、好ましくは更に流動度を測定する。そして、最も多く配合させる種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合する種の粒状肥料の候補との組み合わせにおいて、粒状肥料の形状係数の比、好ましくは更に流動度の比を計算し、その組み合わせが分離し難い粒状肥料の組み合わせであるかを判定する。次いで、分離し難い粒状肥料の組み合わせから選ばれた粒状肥料を所定の割合で混合することにより、本発明の粒状肥料配合物を製造することができる。
【0021】
また、粒状肥料における上記の形状係数や流動度は、粒状肥料に対して、粒子の形状を変化させる処理、または粒子の形状に基づき選別する処理を行うことにより、その形状係数や流動度を変化させることができる。粒子の形状を変化させる処理としては、例えば整粒機を用いた粒子の角取り処理が挙げられ、粒子の形状に基づき選別する処理としては、篩を用いた粒径による粒子を選別する処理、転選機を用いた転がり度合いより粒子を選別する処理が挙げられる。角取り処理を行うことにより、上記の形状係数が小さな粒状肥料とすることができる。転がり度合いによる選別にて、転がり易い粒状肥料を集めると、上記の形状係数が小さな粒状肥料を得ることができる。このような処理に付することにより、最も多く配合される種の粒状肥料およびそれ以外の10重量%以上配合する種の粒状肥料との組み合わせにおいて、形状係数や流動度の比が特定の範囲とすることができ、本発明の分離し難い粒状肥料配合物を製造することができる。
具体的には、設計された粒状肥料配合物において、最も多く含有させる種の粒状肥料と、それ以外の10重量%以上配合する種の粒状肥料との組み合わせにおける、形状係数が上記の関係を有するように、好ましくは更に流動度が上記の関係を有するように、粒子の形状を変化させる処理、または粒子の形状に基づき選別する処理を行う。その後、前記処理に付した粒状肥料を所定の割合で混合することにより、本発明の粒状肥料配合物を製造することができる。
【0022】
本発明の粒状肥料配合物は、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料との組み合わせが、上記したような特定の形状係数の関係を、好ましくは更に特定の流動度の関係をも有している、複数種の粒状肥料の混合物であるが、粒状肥料の混合割合は特に限定されない。粒状肥料配合物が、例えば2種の粒状肥料の配合物である場合、最も多く配合される粒状肥料の割合は粒状肥料配合物の全体に対して90〜50重量%の割合であり、3種の粒状肥料の配合物である場合、最も多く配合される粒状肥料の割合は粒状肥料配合物の全体に対して85〜35重量%の割合である。
例えば粒状肥料配合物が、40重量%の粒状肥料a、40重量%の粒状肥料bおよび20重量%の粒状肥料cの配合物である場合、粒状肥料aまたは粒状肥料bのどちらか一方を最も多く配合された種の粒状肥料として、粒状肥料aと粒状肥料bとの組み合わせ及び粒状肥料aと粒状肥料cとの組み合わせが上記関係を有するか、あるいは、粒状肥料bと粒状肥料aとの組み合わせ及び粒状肥料bと粒状肥料cとの組み合わせが上記関係を有する場合に、本発明の粒状肥料配合物であるものとする。
【0023】
本発明の粒状肥料配合物は、所定割合の複数種の粒状肥料を公知の混合機を用いて均一混合することにより、製造することができる。本発明の粒状肥料配合物の製造に用いることのできる混合機としては、実開昭53−90274号公報、特開2001−17847等に記載の重力落下式混合機や、V型混合機、二重円錐混合機、リボン型混合機等の動力式混合機を挙げることができる。また、製造する粒状肥料配合物の量が少量である場合は、所定の割合の複数種の粒状肥料等を、袋または小型容器に入れて、振り混ぜるような簡易な方法により、製造することも可能である。
【0024】
本発明の粒状肥料配合物は、一般的な粒状肥料の包装形態に包装される。一般的な包装形態における包装材としては、クラフト袋、ポリエチレン袋、ポリエチレン内装アルミニウム袋、紙袋、ポリエチレン内装紙袋が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例
5種類の粒状肥料(イ)〜(ホ)について、本発明の方法により、その形状係数および流動度を測定した。更に、重量平均粒径、密度を測定した。結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】

*1:粒状化成肥料(N−P25−K2O=4%−20%−20%)
*2:りん酸肥料(P25=45%)
*3:粒状化成肥料(N−P25−K2O=14%−2%−17%)
*4:被覆粒状肥料(N=42%、ウレタン樹脂コート率=7%)
*5:粒状尿素肥料(N=46%)
【0027】
尚、表1に記載の粒状肥料の比重は、農薬公定検査法に準じて測定した。即ち、内径50mm、100ml容の金属製容器に、容器上縁10cmの高さから測定する粒状肥料を自然落下させて、容器内につめる。その後、ただちにスライドガラスを用いて余剰の粒状肥料をすり切りし、容器内の内容物の重量を測定し、見かけ比重(g/cm3)を求める。
【0028】
製造例1
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(ハ)を50g、ついで粒状肥料(ニ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
製造例2
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(ニ)を50g、ついで粒状肥料(ホ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
比較例1
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(イ)を50g、ついで粒状肥料(ニ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
比較例2
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(ロ)を50g、ついで粒状肥料(ニ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
【0029】
試験例1
製造例1、製造例2、比較例1及び比較例2で得られた粒状肥料配合物について、異なる粒状肥料の分離のし易さについて、下記の方法により測定した。
図2に示す漏斗状オリフィス管を、紙製のウエスを敷いた床面と、下端との間隔が5cmとなるように垂直に固定した。この漏斗状オリフィス管に、粒状肥料配合物100gを投入し、床面に形成された略円錐形形状の粒状肥料配合物の堆積物について、中央部と周辺部における肥料粒子の分布を目視にて観察した。その結果、2種類の肥料粒子の分布状態を、下記の評価基準にて評価した。
評価基準
分離がまったく認められない ○
2種類の粒子が少し分離している △
完全に2種類の粒子が分離している ×
結果を、表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
製造例3
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(イ)を50g、ついで粒状肥料(ロ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
製造例4
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(ハ)を50g、ついで粒状肥料(ホ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
比較例3
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(イ)を50g、ついで粒状肥料(ハ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
比較例4
1Lのポリエチレン袋に、粒状肥料(イ)を50g、ついで粒状肥料(ホ)を50g秤量して入れ、該ポリエチレン袋の口を密封して両手で30秒間振り混ぜて、粒状肥料配合物を調製した。
【0032】
試験例2
製造例3、製造例4、比較例3及び比較例4で得られた粒状肥料配合物について、異なる粒状肥料の分離のし易さについて、試験例1と同様の方法により測定した。結果を、表3に示す。
【0033】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の粒状肥料配合物は、配合物における異なる種の粒状肥料が分離し難く、特に動力肥料散布機を用いた肥料散布時の均一性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】平面画像として取り込んだ粒状肥料の粒子の輪郭を示す模式図を示す。
【図2】本発明において流動度の測定に用いた漏斗状オリフィス管の略側面図を示す。
【符号の説明】
【0036】
1 包絡周囲長
2 周囲長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の粒状肥料を配合してなる粒状肥料配合物であって、
最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせの全てが下記の関係を有することを特徴とする粒状肥料配合物。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の平均値の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100
【請求項2】
最も多く配合された種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合された種の粒状肥料との組み合わせの全てが、更に下記の関係を有することを特徴とする、請求項1に記載された粒状肥料配合物。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3
【請求項3】
粒状肥料配合物が、少なくとも1種の被覆粒状肥料を配合してなる粒状肥料配合物であるであることを特徴とする、請求項1または2に記載された粒状肥料配合物。
【請求項4】
粒状肥料配合物に最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料の候補とを決定する工程(工程イ)、
工程イで決定された、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料の候補との組み合わせが、下記の関係を有するかを判定する工程(工程ロ)、および
工程ロで下記の関係を有すると判定された、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料とを、所定の割合で混合する工程(工程ハ)を有することを特徴とする粒状肥料配合物の製造方法。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の平均値の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100
【請求項5】
工程ロが、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料の候補との組み合わせが、更に下記の関係を有するかを判定する工程である、請求項4に記載された粒状肥料配合物の製造方法。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3
【請求項6】
粒状肥料配合物に最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料との組み合わせが下記の関係を有するように、粒状肥料の粒子の形状を変化させる処理または粒状肥料の粒子の形状に基づき選別する処理に付する工程(工程ニ)、および
工程ニで粒状肥料の粒子の形状を変化させる処理または粒状肥料の粒子の形状に基づき選別する処理に付された、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料とを、所定の割合で混合する工程(工程ホ)を有することを特徴とする粒状肥料配合物の製造方法。
粒状肥料の個々の粒子を平面として取り込んだ画像より、下記式を用いて求められる
形状係数の比が、0.3〜1.0
形状係数=100−(包絡周囲長/周囲長)×100
【請求項7】
工程ニが、最も多く配合される種の粒状肥料とそれ以外の10重量%以上配合される種の粒状肥料との組み合わせが、更に下記の関係を有するように、粒状肥料の粒子の形状を変化させる処理または粒状肥料の粒子の形状に基づき選別する処理に付する工程である、請求項6に記載された粒状肥料配合物の製造方法。
日本工業規格による流動度試験方法(JIS Z 2502)に基づいて
オリフィス径12mmφの漏斗状オリフィス管を用いて測定される
粒状肥料の流動度(秒/g)の比が、0.8〜1.3

【図1】
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【図2】
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