説明

粒状複合肥料の製造方法

【課題】微粉末且つ低比重であるものの、有効な肥料成分を含む鶏ふん燃焼灰の特性を活かし、さらに鉱酸を加えることなく鶏ふん燃焼灰を利用した粒状複合肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】鶏ふん燃焼灰と、パームやし燃焼灰との混合物を製造する第1の工程と、前記混合物に水を加えて粒状に造粒化する第2の工程と、粒状にされた前記混合物を乾燥させる第3の工程と、を備えてなる粒状複合肥料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏ふん燃焼灰の肥料化に関し、より具体的には鶏ふん燃焼灰とパームやし燃焼灰とを原料としてこれを造粒化した粒状複合肥料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養鶏業で発生する鶏ふんは乾燥や堆肥化によって、農地へ還元されてきたが、その生産工程で発生する悪臭は大きな環境問題となっていた。また、鶏ふん自体水分を多く含むことから堆肥化では減容化できず、農家の引き取りがないときにはその置き場所に困るといった問題もあり有効利用が難しかった。
【0003】
そのため、鶏ふんを専用鶏ふんボイラー等により焼却処分するケースが増えている。この焼却処分により得られる鶏ふん燃焼灰は、りん、カリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛等の肥料成分を含んでいることから、これまでも肥料として使用されてきた。
【0004】
鶏ふん燃焼灰の肥料取締法上の位置づけは、それ自体は特殊肥料であるが、特例的に化成肥料の原料としての使用が認められているため、他の原料と混ぜ合わせた形で使用される場合が多い。しかしながら、この使い方では肥料原料の一つとして使われるため、使用量の増大が図り難く、また鶏ふん燃焼灰の持つ特徴が失われてしまい、販売戦略的にも、鶏ふん燃焼灰の優位性を打ち出せない等の問題がある。
【0005】
このような背景から、単に肥料原料の一つとして使用するだけではなく、鶏ふん燃焼灰の特徴を活かし、付加価値をつけたさまざまな肥料化の技術が提案されている。
【0006】
例えば、鶏ふん燃焼灰を、他の肥料原料と混合し粒状促進剤(バインダー)と水で造粒する技術が提案されている(特許文献1参照)。肥料としての成分特性が優れているものの極めて軽量で飛散しやすい鶏ふん燃焼灰の利用上の便宜を図ったものである。
【0007】
また鶏ふん燃焼灰にリン酸を反応させて熟成させて肥効の持続する肥料を提供する技術(特許文献2)、鶏ふん燃焼灰に硫酸を反応させて速緩効性肥料を提供する技術(特許文献3)、鶏ふん燃焼灰にアルカリ土類金属化合物を混合し鉱酸を添加してりん酸カリ複合肥料を製造する技術(特許文献4)、がそれぞれ提案されている。
【0008】
上記特許文献2〜4に記載の技術では、いずれも硫酸、りん酸等の鉱酸が使用されているのが特徴である。鉱酸を使う目的としては、鶏ふん燃焼灰に含まれるりん酸が難溶解性であるため、鉱酸を加えク溶化し、りん酸の有効度を高めること、次に、鶏ふん燃焼灰が強いアルカリ性であるため、アンモニア系肥料と混合した時のアンモニア揮散を防止すること、さらには鶏ふん燃焼灰の物性が軽量で飛散しやすいパサパサ状態であることから、鉱酸を加え反応物の粘りを利用して造粒しやすくすることなどがあげられる。
【特許文献1】特開平3−183680号公報
【特許文献2】特開2005−126252号公報
【特許文献3】特開2005−145785号公報
【特許文献4】特開2006−298706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜4に記載の技術は、鶏ふん燃焼灰を肥料として有効に利用することを目的とするものであるが、特許文献1によれば混合する他の肥料との関係において、鶏ふん燃焼灰の肥料成分が有する特徴を有効に活用したものとはいえず、特許文献2〜4によれば、これらの目的を達成するためには、相当量の鉱酸を使って処理物のpHを弱酸性側までもっていく必要があり、肥料成分が低下するという問題が発生する。また、一度中和工程で処理した後、別工程で造粒するなど、大掛かりな設備を必要とするばかりでなく、最終製品とするまでに非常に手間がかかる、そして何よりも、鶏ふん燃焼灰そのものはJAS有機認証資材として認められているにもかかわらず、酸処理することによりJAS有機認証不適合となってしまうという問題がある。
【0010】
鶏ふん燃焼灰は、天然物由来でJAS有機認証適合資材として認められている。特に、BSE発生以降は蒸製骨粉の入手がきわめて困難になったため、天然由来の貴重なりん酸源として見直され、有機肥料として使用の増大が望まれているが、そのままでは形状が微粉末で、且つ低比重であるため、施肥時に飛散しやすく作業効率が極端に落ちるという問題がある。このため、機械施肥が可能なように粒状化されているものもあるが、多くは複合肥料タイプの原料の一部に使われているにすぎない。また鶏ふん燃焼灰を主体にした粒状肥料は、上記のように鉱酸を加え造粒しているためJAS有機認証有機栽培には適合できない。
【0011】
本発明は、微粉末且つ低比重であるものの、有効な肥料成分を含む鶏ふん燃焼灰の特性を活かし、さらに鉱酸を加えることなく鶏ふん燃焼灰を利用した粒状複合肥料を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、鶏ふん燃焼灰を利用した粒状複合肥料の製造に際し、鶏ふん燃焼灰とパームやし燃焼灰との混合物を造粒化することにより前記課題の解決を図ったものである。
【0013】
すなわち、前記目的を達成するために本発明が提案するものは、鶏ふん燃焼灰と、パームやし燃焼灰との混合物を製造する第1の工程と、前記混合物に水を加えて粒状物に造粒化する第2の工程と、前記粒状物を乾燥させる第3の工程と、を備えてなる粒状複合肥料の製造方法である。
【0014】
パームやし燃焼灰には、水溶性カリ成分(WK)が鶏ふん燃焼灰よりも多く含まれており、この水溶性カリ成分が粒状促進剤(バインダー)として機能するため、本発明では水を加えるだけで造粒化でき、別途粒状促進剤(バインダー)を混入させる必要がない。
【0015】
前記第1の工程における混合物の製造においては、前記混合物は、鶏ふん燃焼灰が50〜98重量%、パームやし燃焼灰が2〜50重量%からなるものとすることができる。
【0016】
パームやし燃焼灰が2重量%未満では上記した粒状促進剤(バインダー)として機能する水溶性カリ成分(WK)が少なくて、前記混合物の造粒化が弱くなり、またパームやし燃焼灰が50重量%を越えると水溶性カリ成分(WK)が多くなり、急激に大粒化してその制御が極めて困難になるので好ましくない。
【0017】
造粒歩留、製品硬度とともに良好な状態にするには前記混合物のカリ成分全体(TK)における水溶性カリ成分(WK)の割合、すなわち前記混合物のWK/TKを33〜58%とすることが好ましい。
【0018】
前述した本発明の粒状複合肥料の製造方法において、前記第2の工程における造粒化は、容器を回転させて造粒する回転式造粒機により行うと共に、その回転の周速を75〜111m/分とすることが好ましい。
【0019】
回転式造粒機には、例えば、容器を傾斜回転する転動式造粒機を使用することができる。
【0020】
造粒機の周速が上記範囲未満では造粒化した粒の硬度が低くなり、機械施肥等において粉化する割合が高くなり利用効率が低下し、また上記範囲を越えると粒に働く遠心力が強くなり粒から水が浮き出て大粒子化してしまい機械施肥に不適当となるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鶏ふん燃焼灰の造粒化に際して鉱酸を使用することがないので、鶏ふん燃焼灰を使用してJAS有機認証に適合した有機肥料を提供することができる。
【0022】
また鶏ふん燃焼灰に、水溶性カリ成分を多く含むパームやし燃焼灰を混合したので、当該水溶性カリ成分がバインダーとなり、別途バインダーを必要とせず、水を加えるだけで造粒化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明を実施する最良の形態としての実施例を示す。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の粒状複合肥料製造方法の工程概略を説明する図である。
【0025】
図1に示すように、粒状複合肥料の製造工程は、粒状複合肥料の原料となる鶏ふん燃焼灰1とパームやし燃焼灰2とをミキサーで混合して混合物とする第1の工程(S11)と、第1の工程で製造された混合物を造粒機により粒状物に造粒化する第2の工程(S12)と、第2の工程で造粒化された粒状物を乾燥させる第3の工程(S13)とを備えている。
【0026】
なお、乾燥後には冷却機等により冷却(S14)することで迅速に粒状複合肥料を製造することができる。
【0027】
また第1の工程では混合の際、十分に原料を分散させることが必要であり、本発明における第1の工程では十分な分散を行うことを混合に伴うものとする。
【0028】
本発明の粒状複合肥料製造方法で使用する鶏ふん燃焼灰1としては、産卵鶏、育成鶏、ブロイラー養鶏業より排出される鶏ふんを、鶏ふんボイラー等で焼却処分した時得られるものを使用できる。いずれの業種のものであっても使用可能で有る。
【0029】
ただし、鶏ふん燃焼灰1の中にはエサ、敷料に由来すると思われる含有成分のばらつきがあり、また焼却時の温度、酸素濃度等の焼成条件によりク溶率(CP/TP)、すなわちりん酸全体(TP)に対するク溶性りん酸(CP)の割合に差があるいろいろな鶏ふん燃焼灰が存在している。
【0030】
本発明で使用する鶏ふん燃焼灰1は、その処理に鉱酸を使用しないことを大きな特徴とするため、あらかじめ分析を実施し、ク溶率のなるべく高い鶏ふん燃焼灰を選択することが好ましい。
【0031】
表1は本実施例で使用した鶏ふん燃焼灰の分析例を示すものであり、りん、カリ等の肥料成分を十分に含んだものであることがわかる。
【0032】
表1中ではりん酸全体(TP)を(T.P2O5)で、ク溶性りん酸(CP)を(C.P2O5)で、カリ全体(TK)を(T.K2O)で、ク溶性カリ(CK)を(C.K2O)で、水溶性カリ(WK)を(W.K2O)で、ク溶性苦土(CMg)を(C.MgO)でそれぞれ表示している。
【表1】

【0033】
次に、本発明で使用するパームやし燃焼灰2としては、パームやしの果房から果実を除いた空果房、および果実から油を抽出搾取した油かすを燃焼、灰化させたものを使用できる。主として、マレーシア、タイ、インドネシアで産出されるものを使用することができる。
【0034】
表2は本実施例で使用したパーやしの燃焼灰の分析例を示すものであり、りん、カリ等の肥料成分を十分に含んだものであることがわかる。
【0035】
表2中では表1と同様に、りん酸全体(TP)を(T.P2O5)で、ク溶性りん酸(CP)を(C.P2O5)で、カリ全体(TK)を(T.K2O)で、ク溶性カリ(CK)を(C.K2O)で、水溶性カリ(WK)を(W.K2O)で、ク溶性苦土(CMg)を(C.MgO)でそれぞれ表示している。
【0036】
表2からパームやし燃焼灰2には、鶏ふん燃焼灰1と比較してカリ成分がかなり多く含まれていることが判る。特に、表1と表2とを対比すると、パームやし燃焼灰には混合物の造粒化のための粒状促進剤(バインダー)の役割を有する水溶性カリ成分(WK)が、鶏ふん燃焼灰よりも約5倍多く含まれており、別途粒状促進剤(バインダー)を混入させる必要がない理由が理解できる。
【0037】
パームやし燃焼灰の上記成分特性を利用し、鶏ふん燃焼灰と混合することが本発明の特徴点の一つである。
【表2】

【0038】
第1の工程では、鶏ふん燃焼灰1とパームやし燃焼灰2とを混合する比率については、後述する比較例から明らかなように、鶏ふん燃焼灰が50〜98重量%、パームやし燃焼灰2〜50重量%になる範囲で混ぜ合わせることが好ましい。
【0039】
パームやし燃焼灰が2重量%未満では、対する98重量%以上となる鶏ふん燃焼灰中にバインダーの機能を発揮する水溶性カリ成分(WK)が少量しか存在しないため、これらの混合物中に含まれる水溶性カリ成分が少量となってしまい、第2の工程で混合物に水を加えても、結局、造粒性が低下したままとなってしまうからである。
【0040】
ところが鶏ふん燃焼灰98重量%以下に対し、パームやし燃焼灰2重量%以上として混ぜ合わせた場合には、造粒歩合、製品硬度ともに向上する。
【0041】
これは、溶け出した水溶性カリ成分(WK)のカリ全体(TK)に対する割合(WK/TK)が転動造粒にとって適度な粘りと適度な転がり(流動性)を発生させる範囲となったためと考えられる。
【0042】
この傾向は混合物のカリ成分全体(TK)における水溶性カリ成分(WK)の割合である混合物のWK/TKの比率が高くなるに従い強まるが、パームやし燃焼灰が50重量%を越えると、鶏ふん燃焼灰1、パームやし燃焼灰2ともに保水性が小さい性質のため、造粒時に含有できる水分が少なくなり、転動により水分が浮き出ることになる。そして同時に水溶性カリ(WK)の粘りが強すぎることになり急激に大粒化する現象が起こり、造粒の制御が困難となる。またパームやし燃焼灰2の価格が高いため、粒状複合肥料の価格が高くなりすぎるといった経済的問題や、PK成分のバランス上、K成分の割合が高くなりすぎ、本肥料の目的とする蒸製骨粉の代用としての使い方が制約される、などの問題が発生する。
【0043】
造粒歩留、製品硬度が機械施肥に適したものとなるには、WK/TKの範囲が、鶏ふん燃焼灰50〜98重量%とパームやし燃焼灰2〜50重量%の範囲と、表1及び2の含有成分値等から、33〜58%であることが求められる。
【0044】
機械施肥に適したものとなる条件には、例えば、水稲側条施肥用粒状複合肥料として、粒径が2mm〜4mmにその大部分が含まれ、硬度が粒径2.0mm〜2.8mmのものについての圧壊強度の平均が2kgf以上、水分1.0%以下、機械施肥に支障がないこと等がある(JA全農、肥料農薬部「くみあい肥料の品質および銘柄取扱いの考え方」平成17年7月)。
【0045】
第1の工程(S11)における混合を行う装置、時間については、混合により十分な分散が行われるものであれば特に限定するものではない。
【0046】
第2の工程(S12)における回転式の造粒機については、機械施肥適正のある球状品が得られ、水を加えながら粒度を調整できる転動式造粒機、例えば皿型造粒機、ドラム式造粒機や、その他攪拌式造粒機が好ましい。
【0047】
皿型造粒機は傾斜した円形容器を回転させ、供給された粉体に適宜液体(水等)を添加して造粒化するものである。またドラム式造粒機は傾斜したドラムを回転させて、ドラムの上方片側から粉体を供給し、下方片側から造粒化された粒状物を排出するものである。攪拌式造粒機は攪拌羽根やスクリューにより混合攪拌しながら適宜液体(水等)を添加して造粒化するものである。
【0048】
また一度ペレット造粒機でペレット化したものを、回転式整粒機で水を加えながら整粒し、球形化する方法も採用できる。
【0049】
造粒機はいずれのものでもよいが、比較例3の結果が示すように回転する造粒機の周速を75〜111m/分とすることが望ましい。周速が75m/分未満では成形した粒の硬度が機械施肥に適した上記条件より低くなり、機械施肥やまたBB肥料原料として使用する際、粉化等の支障をきたすからである。逆に111m/分を越えると粒から水分が浮き出る現象が発生して粒が大型化して機械施肥に適した上記粒径の範囲を超えてしまうからである。
【0050】
第3の工程の乾燥(S13)、そしてその後の冷却(S14)における装置機器については、造粒品の崩壊を最小限に留めるものであれば、特に限定されるものでなく、支障のない範囲で乾燥機、冷却機を選択できる。
【0051】
以下、本発明の粒状複合肥料の製造方法を用いて製造した粒状複合肥料について、比較例と対照しつつ、原料の配合比率、造粒機の周速値等と、製造される粒状複合肥料の性状等の関係について試験を行って検討した結果を説明する。
【0052】
(比較検討試験1)
鶏ふん燃焼灰およびパームやし燃焼灰をそれぞれ目幅1.4mmの篩いを通し、1.4mm以下の粉状のサンプルを得て、これを造粒用の原料とした。次に鶏ふん燃焼灰に対するパームやし燃焼灰の混合比率(重量%)が100:0、95:5、85:15、70:30、50:50、40:60となるように計量し、よく混合して分散したものを6試験区、各2kg準備した。
【0053】
次にサンプル2kgを皿型造粒試験機に投入した後、造粒機を回転(周速40m/分)させ、スプレイで水を噴霧しながら造粒操作を行った。造粒が完了したら造粒機の回転を止め、得られた造粒物を取り出した。次のサンプルも同様の操作を行い6種類の造粒物を得た。
【0054】
そして、得られた造粒物を棚型通気乾燥機に入れ、90℃、5時間乾燥した。乾燥した造粒物は目幅が2mm、および4mmの篩いでふるい、粒径が2〜4mmのものを製品サイズとしてその歩留まりを求めた。さらに各試験区の製品粒を木屋式硬度計により硬度を測定した(15粒平均)。また別途、各試験区の乾燥前の造粒物の水分を求めた。各試験区の配合割合を表3、造粒結果を表4にそれぞれ示す。
【表3】

【表4】

【0055】
上記表3、表4を参照すると、パームやし燃焼灰が0のものに比べ、パームやし燃焼灰を加えた試験区において、混合割合が増える程、歩留の向上、硬度の上昇、造粒水分の低下(乾燥エネルギーの低減)の効果が見られた。
【0056】
ただし、パームやし燃焼灰を60重量%使用した試験区は逆に歩留の低下が見られた。また、硬度は全般的に低い傾向となった。これは使用した皿型造粒試験機が小型で周速が40m/分までしか上げられず、十分な圧密作用が得られなかったためで、機械施肥の実用に耐えうる硬度(上記した圧壊強度の平均が2kgf以上)とするためには、十分な周速が得られる大型機が必要と考えられた。
【0057】
(比較検討試験2)
鶏ふん燃焼灰1およびパームやし燃焼灰2をそれぞれ目幅1.4mmの篩いをとおし、粒径1.4mm以下の粉状のサンプルを得、これを造粒用原料とした。そして鶏ふん燃焼灰とパームやし燃焼灰の混合比率(重量%)が、100:0、98:2、97:3、95:5、90:10となるように計量し、よく混合、分散したものを5試験区、各2kg準備した。
【0058】
次にサンプル2kgをステンレス製ボールにいれ、一定量の水を加え移植用スコップでよく混合した、これをペレット造粒機(ディスクペレッター)により押出し成形し、直径3mmの円柱状ペレット成型品を得た。
【0059】
次に成形物を回転式整粒機(マルメライザー)に入れ、周速111m/分で、60秒間整粒した。他のサンプルも同様の操作を行い5種類の造粒物を得た。そしてこれら造粒物を棚型通気乾燥機に入れ90℃、5時間乾燥した。乾燥した造粒物は2mm、及び4mmの篩いでふるい、粒径2〜4mmのものを製品サイズとし歩留まりを求めた。
【0060】
各試験区の製品粒を木屋式硬度計により硬度を測定した(15粒平均)。また別途、各試験区の乾燥前の造粒物の水分を求めた。以下、各試験区の配合割合を表5、造粒結果を表6に示す。
【表5】

【表6】

【0061】
比較検討試験2における造粒法においては、一度ペレットで成形しているため、パームやし燃焼灰が0の試験区(試験No.7)でも高い歩留まりを示したが、パームやし燃焼灰を加えた試験区ではさらに歩留まりが上昇し、硬度において顕著な差があらわれた。
【0062】
表5、6を参照すると、パームやし燃焼灰を2重量%以上加えた試験区(試験No.9〜12)では、パームやし燃焼灰が0の試験区(試験No.7)及びパームやし燃焼灰を1重量%加えた試験区(試験No.8)と比較して顕著な歩留まりの上昇、硬度の上昇がパームやし燃焼灰を2重量%加えたところを境界として見られた。
【0063】
また、WK/TK(%)の最適な範囲は、表5を参照すると33%以上の範囲とし、また比較検討試験1の表3からは58%以下の範囲とすること望ましいと判明した。よってWK/TK(%)は、33%以上58%以下の範囲にとることで、製品サイズの粒径(2mm〜4mm)となる歩留が高く、硬度も機械施肥に適したものが得られることが判明した。
【0064】
(比較検討試験3)
鶏ふん燃焼灰およびパームやし燃焼灰をそれぞれ目幅1.4mmの篩いをとおし、粒径1.4mm以下の粉状のサンプルを得て、これを造粒用原料とした。そして鶏ふん燃焼灰とパームやし燃焼灰の混合比率(重量%)が97:3になるように計量し、よく混合、分散したものを6kg準備した。
【0065】
次にサンプル6kgをステンレス製ボールに入れ、水420gを加え移植用スコップでよく混合した。これをペレット造粒機(ディスクペレッター)により押出し成形し、直径3mmの円柱状ペレット成形品約6.5kgを得た。
【0066】
次に、この内から成形物1kgを取り出し回転式整粒機(マルメライザー)に投入した。そして回転式整粒機の周速を44m/分に設定して作動させ、60秒間整粒した。同様に成形物を1kgずつ回転式整粒機に投入し、60秒間の整粒時間は一定とするが、周速にそれぞれ段階を設け、4種類の造粒物を得た。
【0067】
上記の造粒物を棚型通気乾燥機に入れ、90℃、5時間乾燥した。乾燥した造粒物は目幅2mm、および4mmの篩いでふるい、ふるい分けたものを計量し粒度分布割合を求めた。粒径2〜4mmの造粒物を製品サイズとしてその歩留まりを求めた。各試験区の製品粒を木屋式硬度計により硬度を測定した(15粒平均)。以下、各試験区の整粒機の周速を表7に、その造粒結果を表8に示す。
【表7】

【表8】

【0068】
表7、表8を参照すると、周速44m/分の試験区においては、十分な圧密作用が得られず、後述する周速75m/分〜111m/分の範囲と比較して歩留が低く、硬度も低いことが判明する。周速75m/分〜111m/分の範囲では、適度な圧密作用が得られ、歩留、硬度とも十分な高さの数値が得られた。
【0069】
一方、周速141m/分の試験区においては硬度は高くなるものの、整粒中に粒の成長(大型化)が起こり、粒径4mm以上の粒度分布が増加し、製品歩留(製品サイズ粒径2〜4mm)が低下した。
【0070】
上記のように、回転式造粒する整粒機を使用する際に、周速を75m/分〜111m/分の範囲において、歩留、硬度とも十分な高さの顕著な数値が得られた。
【0071】
(試験例1)
配合適正試験:
比較検討試験2で作成した粒状品(鶏ふん燃焼灰97:パームやし燃焼灰3)の物理性を次の方法で測定した。
【0072】
嵩比重:サンプル約400gを500mLのメスシリンダーに入れ、メスシリンダーの底を軽く3回たたく。容積を目盛りで読み取り、重量は中身を自動天秤で量る。同じ操作を3回行い平均を求める。
【0073】
硬度:木屋式硬度計で15粒の硬度を測定し、その平均を求める。
【0074】
安息角:三輪式安息角測定器(筒井理化学製)で測定。同じ操作を2回行い平均を求める。
【0075】
粉化率:
あらかじめサンプルを目幅1.7mmの篩いでふるい、1.7mm未満の粉を除去する。1.7未満の粉を除去したサンプル250gを500mLのスチロール棒瓶に入れ、蓋をした後、往復振とう機(TAITEC製RECIPRO SHAKER SR−2W、振とう設定:300min−1)で15分間振とうする。振とう後のサンプルを再び1.7mmの篩いでふるい、篩下部分の比率を求める(重量%)ことにより粉化率とした(本明細書において「当社法」という)。
【0076】
測定結果を表9に示し、次に同じサンプルを目幅4.0、3.36、2.83、2.0mmの篩いを使ってふるいわけ、粒度分布を測定した。この測定結果を表10に示す。
【表9】

【表10】

【0077】
表9より、重量%で鶏ふん燃焼灰97重量%:パームやし燃焼灰3重量%の混合比のものの硬度は4.3(kgf)、粉化率は0.89%となり、機械施肥に適した条件の基準値(表9の欄外に記載したJA品質基準)を満たし、さらにその他安息角も36.5度であり、基準値40度以下(JA品質基準値)を十分満足するものであることが判明した。
【0078】
また表10より造粒品粒度分布も、上記基準値(JA品質基準値:粒径が2〜4mmに大部分収まること)内に入るものが殆どであり、十分満足する結果となった。
【0079】
(試験検討試験4)
アンモニア揮散試験
比較検討試験2で作成した試験No.7、8、9、10のサンプルについてpHと粉化率を以下の方法で測定した。
【0080】
pH:肥料分析法 3.3.1による(1992年版、農林水産省農業環境技術研究所発行
粉化率:試験例1で説明した当社法
測定結果を表11に示す。
【表11】

【0081】
次に、上記で粉化率を測定した後のサンプル(1.7mmの篩いでふるい、篩下部分を戻したもの)と、粒状りん酸アンモニウムとを表12の重量割合で混ぜ合わせた配合肥料を作成した。
【表12】

【0082】
作成した配合肥料サンプル1kgをチャック付きポリ袋につめ密封した。密封してから30分経過した後、各チャック付きポリ袋にガス検知管を差し込み、アンモニア濃度を測定した。
【0083】
次に、30℃のインキュベイター中に5袋段積みにし、板を一枚上に置き、更に20kgの錘を載せて加重した。この状態で保管し、1週間後に取り出して、前記と同様に、各チャック付きポリ袋にガス検知管を差し込み、アンモニア濃度を測定した。
【0084】
測定結果を表13に示す。
【表13】

【0085】
粒状鶏ふん燃焼灰は、pHがアルカリ性であるためアンモニア態窒素を含む原料と配合した場合、アンモニア揮散が心配されたが、表13のような結果となった。
【0086】
サンプル作成直後に比べ、1週間後は加温と加重により揮散が助長され、アンモニア濃度は高まったが、最高の区でも15ppmに留まり、アンモニア揮散が問題となる濃度30ppmには達しなかった。
【0087】
また、試験No.11の粒状りん酸アンモニウム単独でも10ppmのアンモニア揮散があることを考え合わせると、粒状鶏ふん燃焼灰を混合したことによる影響は少なく、粉化率0.89%の試験No.15でアンモニア濃度の上昇はほとんどなく(4ppmから8ppm)、粉化率1.10%の試験No.12でアンモニア濃度がやや上昇した(4ppmから13ppm)。
【0088】
以上のことから、pHよりも粉の影響が大きいと推察され、粉化率1.0%以下の粒状鶏ふん燃焼灰であれば、配合原料としての適正があると考えられる。
【0089】
上記したように、本発明の粒状複合肥料の製造方法によれば、鶏ふん燃焼灰の肥料特性を十分に活かした肥料が提供でき、鶏ふん燃焼灰の造粒化に際して鉱酸を使用することがないので、JAS有機認証に適合した鶏ふん燃焼灰使用の有機肥料を提供できる。
【0090】
また鶏ふん燃焼灰に、水溶性カリ成分を多く含むパームやし燃焼灰を混合したので、当該水溶性カリ成分がバインダーとなり、別途バインダーを必要とせず、水を加えるだけで造粒化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の製造方法により製造した鶏ふん燃焼灰とパームやし燃焼灰とを混合してなる粒状複合肥料は、ク溶性りん酸、ク溶性カリ、水溶性カリ、ク溶性苦土(マグネシウム)を含む比較的暖効的な肥料である。粒状促進剤(バインダー)を使用することなく、天然物由来の原料のみを水で造粒した粒状品であるため、機械施肥可能であるばかりでなく、JAS有機認証にも適合する肥料として利用できる。また鶏ふん燃焼灰の積極的な利用を通じて、鶏ふんの処理に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の粒状複合化肥料の製造方法の工程概略を説明する図。
【符号の説明】
【0093】
1 鶏ふん燃焼灰
2 パームやし燃焼灰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏ふん燃焼灰と、パームやし燃焼灰との混合物を製造する第1の工程と、前記混合物に水を加えて粒状物に造粒化する第2の工程と、前記粒状物を乾燥させる第3の工程と、を備えてなる粒状複合肥料の製造方法。
【請求項2】
前記混合物は、鶏ふん燃焼灰が50〜98重量%、パームやし燃焼灰が2〜50重量%からなることを特徴とする請求項1記載の粒状複合肥料の製造方法。
【請求項3】
前記混合物のカリ成分全体(TK)における水溶性カリ成分(WK)の割合であるWK/TKが33〜58%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒状複合肥料の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程における造粒化を、容器を回転させて造粒する回転式造粒機により行うと共に、その回転の周速を75〜111m/分とすることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の粒状複合肥料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−239382(P2008−239382A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80399(P2007−80399)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(392027933)朝日工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】