説明

粒状飼料サプリメント

少なくとも1種の活性物質を含む粒状化コアと、コアを被覆する少なくとも1層の被覆材料からなる層と、を含む反芻動物用飼料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、反芻動物のための粒状飼料サプリメントに関する。特に、本発明は、生理活性物質が反芻動物の反芻胃において安定で、皺胃および後続する消化管において消化・吸収される反芻動物のための粒状飼料サプリメントに関する。また、粒状飼料サプリメントの製造方法および粒状飼料サプリメントの使用方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
反芻動物は、形態学的に異なる4つの区画(反芻胃、網胃、葉胃、皺胃)に分割された胃を有するウシ亜目の哺乳動物である。反芻胃および網胃は食道の末端部に由来するものであり、葉胃および皺胃のみが本来の胃であると考えられている。反芻胃内のバクテリアにより、反芻動物は草等のセルロース系物質を消化することができる。通常の消化は皺胃(「真の胃」とも呼ばれる)内において行われる。反芻動物としては牛、羊、ヤギがよく知られている。
【0003】
反芻胃は実質的な連続発酵槽であり、通常のライフサイクルの一部として反芻動物が摂取した飼料のほとんどを消化する様々な微生物を中性条件下において保持している。摂取したタンパク質は反芻胃において可溶性ペプチドとアミノ酸に分解され、それらは微生物類によって栄養分として利用される。微生物細胞を多く含む摂取物は、反芻胃を通過して葉胃に入る。葉胃の機能は液体と固体を分離することである。液体の多くが反芻胃に再び入り、残りの飼料は皺胃に入る。そして、皺胃において単胃動物と同様に消化・吸収される。皺胃の管腔に分泌される酵素は、微生物細胞を含む食物の多くを消化する。消化された微生物細胞は反芻動物にタンパク質とアミノ酸を供給する。
【0004】
反芻胃の微生物作用は、宿主に対して直接的な栄養価を有していない多くの飼料成分を、宿主と同化しかつ宿主によって利用できる生成物に転化することができるという大きな利点がある。例えば、尿素は、宿主動物によって消化・利用され得る微生物タンパク質に転化される。セルロースは、宿主のエネルギー源となり得る、揮発性脂肪酸の混合物に転化される。
【0005】
しかしながら、微生物作用は欠点も有する。例えば、高い栄養価を有する可溶性タンパク質は反芻胃において分解・消化され、一部は栄養価の低い微生物タンパク質に再合成される。また、アミノ酸も、アミノ酸を二酸化炭素、揮発性脂肪酸、アンモニアに転化する反芻胃内の微生物によって化学的に変化する。
【0006】
動物内に存在する全てのタンパク質は20種類を超える、異なるアミノ酸の組み合わせによって構成されている。これらのうち、10種類の必須アミノ酸は動物の体内において十分に合成されず、動物はそれらを摂取する必要がある。反芻動物用飼料に含まれる必須アミノ酸が不十分な場合には、反芻動物の健康、乳量等が悪影響を受ける。
【0007】
動物の健康状況および生産的活動を向上させるために、動物の毎日の食事において生体活性物質を反芻動物に与えることは、反芻動物において通常行われている。活性物質としては、アミノ酸、ビタミン、酵素、タンパク質や炭水化物等の栄養分、プロバイオティック微生物、プレバイオティクス食品、無機塩、コリン等が挙げられる。これらの物質のいくつかは、動物に与える食物中に通常存在している。場合によっては、食物内の必須活性物質の量は、欠乏状態または高い生産性が要求される状況にとって不十分な場合がある。これらの問題に対処するためには、反芻動物の日々の食事を慎重に用意または補うことが望ましい。
【0008】
しかしながら、アミノ酸やタンパク質等の生理活性物質を経口的に与える場合には、物質(タンパク質、アミノ酸等)のかなりの部分が反芻胃において微生物類によって分解され、飼料に含まれる投与されたタンパク質とアミノ酸の全てを動物が効果的に利用することが困難または不可能になる。そのため、必須アミノ酸は破壊され、動物の生産に利用できなくなる。動物の生産性は、反芻胃を完全な状態で通過またはバイパスし、吸収および利用が行われる後続する消化管に達する各必須アミノ酸の供給量によって制限される。
【0009】
したがって、生理活性物質が微生物類によって分解されないように反芻胃を通過させ、皺胃および後続する消化管において効果的に消化・吸収させることが重要である。そのため、実質的に変化することなく反芻胃を通過するが、皺胃において分解・吸収される生理活性物質を提供するために様々な研究が行われている。
【0010】
反芻胃の微生物相によって分解されることなく反芻胃を通過する栄養分の量を増加させ、栄養分の大部分を胃腸管に供給する方法として、熱および化学処理、カプセル化および被覆、アミノ酸類縁体またはアミノ酸高分子化合物の使用が数多く提案されている。
【0011】
例えば、生体活性物質を含む反芻動物飼料添加物を、脂肪酸、硬化動物油、硬化植物油等の保護物質によって被覆することが提案されている。しかしながら、油脂で被覆された粒子は反芻胃だけではなく、皺胃および後続する消化管でも安定しており、生体活性物質の皺胃および後続する消化管における放出が困難となる。
【0012】
別の方法では、反芻胃環境では溶解しないが、強酸性の皺胃では溶解するポリマーで被覆することによって反芻胃と皺胃のpH差を利用する。そのようなポリマーとしては、化学的に変性したポリビニルピロリドン、ポリアミド、セルロースが挙げられる。この方法には、製造コストが上昇すると共に合成ポリマーを使用することによって非生理的物質を動物の食物に取り入れることになるという欠点がある。そのようなポリマー被覆製品は食品医薬品局(FDA)の認可を必要とする。
【0013】
いくつかの特許文献が、反芻胃を通過するが、皺胃において分解される材料によって、生体活性物質を被覆することを開示している。
【0014】
例えば、米国特許第3,541,204号は、反芻胃を通過するが、腸管において分解されるコーティングとして、水素添加植物・動物脂および米糠ロウ等のロウを開示している。
【0015】
米国特許第3,959,493号は、炭素原子数が少なくとも14の脂肪族脂肪酸を利用することを開示している。脂肪酸は、コーティングとして各栄養分に塗布される。脂肪酸は反芻胃における分解に抵抗性を有すると言われている。活性物質は皺胃および/または腸に送られ、脂肪酸は反芻胃を通過した後の環境において還元される。
【0016】
米国特許第4,642,317号は、脂肪酸をカルシウム塩として反芻動物に与えるための方法を開示している。しかしながら、脂肪酸塩のみを飼料添加物として使用すると、飼料内の有機揮発物の酸化によって不快な臭気が発生し、飼料の摂取量と乳量が減少する。
【0017】
米国特許第4,713,245号は、生体活性材料のコアと、中性pHで安定だが、pH=3(皺胃内のpH)で溶解または分解するコーティングと、炭素原子数が少なくとも14の脂肪酸および40℃以上の融点を有するロウ、獣脂、植物脂からなる群から選択される少なくとも1種のコーティングを含む反芻胃通過性細粒(rumen−surviving granule)を開示している。
【0018】
米国特許第4,808,412号は、塩基性ポリマーに分子的に溶解した活性物質を含む、反芻胃において安定した組成物を開示している。ポリマーは約5以上のpHに抵抗性を有するが、約3.5未満のpHにおいて溶解または膨潤するため、活性物質は変化することなく反芻胃を通過することができる。この種の分散体では、組成物の表面上または表面近傍における活性物質の一部が反芻胃微生物の作用で破壊される。これは、表面に割れまたは溝が生じ、保護性能が減少するためである。
【0019】
米国特許第4,832,967号は、水溶性生理活性物質のための二層反芻胃通過性コーティングを開示している。得られる粒子は少なくともpH5.5において安定しており、pH3.5以下で生理活性物質を放出する。被覆材料は、pHの変化に敏感な材料からなる内側の第1の被覆層および生理活性コアに対して表面処理(疎水性バインダーの塗布)を行っていない場合には無機充填剤を含む疎水性組成物からなる外側の第2の被覆層を含む。外側の疎水性被覆層には、外部液体を拡散または浸透させるテクスチャが設けられている。外側の被覆層は、好ましくは疎水性物質の混合物を含む。
【0020】
米国特許第4,876,097号は、約3.5以下のpHで安定しているコーティング組成物を開示している。コーティングは、親水性を制御する物質を含むフィルム形成性・非水溶性バインダーと、必要に応じてpH感受性物質とを含む。親水性/疎水性バランスを制御するためにロウ(疎水性)およびプロピレングリコール(水溶性)が好適に使用される。粒子の親水性を制御すると、中性または弱酸性媒質(反芻胃内媒質)における生体活性材料の放出が制限されると言われている。酸性度が高い媒質(皺胃)では、pH感受性充填剤は媒質によって活性化され、コーティングの親水性に応じた速度でゆっくりと拡散する。その結果として生じるpH感受性充填剤の溶解または膨潤により、コーティングが分解され、生体活性物質が放出される。
【0021】
米国特許第5,093,128号は、脂肪およびカルシウム系生成物を含む微小ビーズ(beadlet)栄養分コーティングを開示している。被覆された反芻動物用栄養剤は、取り扱いまたは咀嚼中に割れたり、すり減ってしまうという欠点がある。
【0022】
米国特許第5,145,695号は、バランスが改善された必須アミノ酸を反芻胃を通過させる特定の飼料組成物をウシに与える方法を開示している。
【0023】
米国特許第5,227,166号は、被覆された生理活性物質(アミノ酸、薬剤、ビタミン等)からなる反芻動物のための飼料サプリメントを開示している。コーティング組成物は、レシチン、中性条件下で安定し、酸性条件下で溶解する少なくとも1種の無機物質、炭素原子数が14〜22の直鎖または分岐飽和または不飽和モノカルボン酸、それらの塩、硬化植物油、硬化動物油、ロウからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む。
【0024】
米国特許第5,496,571号は、コリンをカプセル化して反芻動物のための反芻胃バイパスサプリメントを得る方法を開示している。このようなカプセル化により、脂肪のシェルで取り囲まれたコリンのコアを有する球状粒子が得られる。カプセル化は比較的コストのかかる製造方法である。また、固化のために脂肪は高い飽和度を有する必要があるため、コリンの消化性が低下する傾向がある。
【0025】
米国特許第5,714,185号は、ゼイン/ホルムアルデヒドでタンパク質を処理して反芻胃における分解から成分を保護する方法を開示している。しかしながら、ホルムアルデヒドを使用することによってほとんどの必須アミノ酸が破壊され、生物学的利用性が減少してしまう(Broderick,G.A. et al.,“Control of rate and extent of protein degradation”,Physiological Aspects of Digestion and Metabolism in Ruminants, Tsuda et al.,eds.,p.541,1991;Academic Press, Londonを参照)。また、使用されるホルムアルデヒドの濃度が高過ぎると、発癌性に関連して健康に関する懸念があり、動物飼料用途においてはFDAによって承認されていない。
【0026】
米国特許第5,807,594号は、反芻胃保護担体によって塩化コリン組成物をカプセル化して反芻動物における体重増加および飼料効率を向上させる方法を開示している。好適なカプセル化または被覆材料として、硬化油、モノおよびジグリセリド、ロウ、種子脂肪が挙げられている。
【0027】
米国特許第6,022,566号は、飼料に脂肪を添加し、添加した脂肪に比例した量で反芻胃保護カプセル化塩化コリンを添加することを開示している。しかしながら、そのような塩化コリンの被覆およびカプセル化では、輸送およびその他の取り扱い時に摩耗、割れ等が生じ、コリンを分解する反芻胃液や微生物がコーティングを通過してしまう。
【0028】
米国特許第6,229,031号は、食品および食肉加工の副生成物である脂質をカルシウム塩に転化して飼料サプリメントを製造する方法を開示している。
【0029】
米国特許第6,242,013号は、反芻動物に与える脂肪酸を保護するために油料種子を高温加熱することによって製造された反芻胃保護された高油材料を開示している。しかしながら、加熱処理には高いエネルギーコストが必要となる。
【0030】
米国特許出願公開第2002/0127259号は、被覆された反芻動物用栄養剤は、取り扱いまたは咀嚼中に割れたり、すり減ってしまうために有用ではないことを示している。
【0031】
特開昭第60−168351号は、生体活性物質を保護物質に分散させる方法であって、少なくとも20重量%の炭酸カルシウムおよび少なくとも10重量%のモノカルボン酸、硬化油、および脂肪からなる群から選択される物質を含む生体活性物質を粒状化する方法を開示している。
【0032】
特開昭第61−195653号は、生体活性物質を、少なくとも10重量%のモノカルボン酸、硬化油、および脂肪からなる群から選択される物質および20〜50重量%の塩酸よりも酸性が低い酸の不溶性塩からなる被覆材料に分散させる方法を開示している。
【0033】
特開昭第63−317053号は、生体活性物質を、モノカルボン酸、硬化油、レシチン、およびグリセリン脂肪酸エステルからなる保護物質によって被覆する方法を開示している。
【0034】
国際公開第WO96/08168号は、乳牛の乳量を増加させる反芻動物用飼料を開示している。この飼料は、少なくとも1種の脂肪酸または脂肪酸石鹸を含む保護コーティングを有する反芻胃保護コリン化合物からなる。
【0035】
Watanabe et al.(K.Watanabe et al.,“Effects of fat coated rumen bypass lysine and methionine on performance of dairy cows fed a diet deficient in lysine and methionine”,Animal Science Journal,77:495-502,2006)は、反芻胃保護アミノ酸を製造する現在の技術はメチオニンに限定されると報告している。上記文献は、物理的・化学的特性のために、反芻胃保護リジンを開発することは困難であると報告している。また、工業的観点から、飼料成分として従来から使用されている水素添加脂肪および/またはミネラルを使用して反芻胃保護技術を確立することのみが有益であると報告している。そして、上記文献は、泌乳期の乳牛における脂肪で被覆された反芻胃保護L−リジン塩酸塩の生物学的利用性および貯蔵生牧草からなる食物を与えた高乳分泌乳牛の泌乳性に対する反芻胃保護L−リジン塩酸塩と反芻胃保護メチオニンの影響について開示している。また、上記文献では、脂肪被覆された反芻胃保護リジンの腸内利用性は66.2%と算出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
上述した問題に鑑み、反芻動物の反芻胃において生理活性物質を安定に保護し、皺胃および後続する消化管における活性物質の効果的な消化・吸収を可能とする飼料サプリメントを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は、反芻動物が消化、吸収、利用することができると共に安全かつ経済的である生体活性物質を含む改良された組成物を提供することによって、上記要請およびその他の要請を満たすものである。
【0038】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1種の生体活性物質を含む粒状化コア材料と、前記コア材料を被覆する被覆材料と、を含む反芻動物用飼料組成物を提供する。
【0039】
一実施形態において、本発明は、少なくともL−リジン硫酸塩を含む粒状化コアと、前記コアを被覆する水素添加植物油被覆材料と、を含む反芻動物用飼料組成物を提供する。
【0040】
一実施形態において、本発明は、アミノ酸を反芻動物に与える方法であって、被覆材料によって被覆された粒状化コアとしてアミノ酸を用意し、前記反芻動物に与える飼料に前記被覆粒を添加することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の実施形態は、被覆材料によって被覆されたコアを含み、反芻動物の反芻胃において安定で、皺胃および後続する消化管において消化・吸収される飼料添加物に関する。
【0042】
コアは、少なくとも1種の粒状化生理活性物質または生体活性物質(以下、「活性物質」という)を含む。コアは単一の顆粒であってもよく、粒状化活性物質のペレットの形成を促進する1種以上の賦形剤(例えば、結合物質、不活性成分、流動制御物質等)を含むマトリックスをさらに含むこともできる。コアは、通常は固体である1種以上の活性物質を含むことができ、後続する処理時(特に、コーティング作業中)に崩壊しない程度に堅固でなければならない。
【0043】
本明細書において使用する「活性物質」という用語は、例えば、アミノ酸、ビタミン、酵素、タンパク質や炭水化物等の栄養分、プロバイオティック微生物、プレバイオティクス食品、無機塩、乳酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸等の酸の混合物、コリン、コリン誘導体等を意味する。これらの活性物質は単独で使用してもよく、様々な重量比で混合して使用してもよい。
【0044】
具体的な活性物質としては、例えば、リジン、メチオニン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、スレオニン等のアミノ酸;N−アシルアミノ酸カルシウム塩、N−ヒドロキシメチルメチオニンカルシウム塩、リジン硫酸塩、リジン塩酸塩等のアミノ酸誘導体;2−ヒドロキシ−4−メチルメルカプト酪酸およびその塩等のアミノ酸のヒドロキシ同族化合物;穀物粉末、羽(feathers)、魚粉等の天然栄養分の粉末;カゼイン、トウモロコシタンパク質、ジャガイモタンパク質等のタンパク質;澱粉、ショ糖、グルコース等の炭水化物;ビタミンA、ビタミンAアセテート、ビタミンAパルミチン酸塩、ビタミンB、ビタミンB、塩酸チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、パントテン酸コリン、塩酸ピリドキシン、塩化コリン、ビタミンB12、ビオチン、葉酸、p−アミノ安息香酸、ビタミンD、ビタミンD、ビタミンE等のビタミンおよび同様な機能を有する物質;四環抗生物質、アミノ配糖体抗生物質、マクロライド型抗生物質、ポリエーテル型等の抗生物質;negfon等の殺虫剤ピペラジン等の殺寄生虫薬;エストロゲン、スチルベストロール(stibestrol)、へキセストロール、サイロプロテイン(tyroprotein)、抗甲状腺物質等のホルモンが挙げられる。
【0045】
反芻動物の乳および肉の産生を促進するアミノ酸(リジンおよびメチオニン)等のいくつかの活性物質が特定されている。栄養補助食品として使用する場合には、そのようなアミノ酸の様々な塩を所望のアミノ酸を供給するために利用することができる。例えば、リジンはリジン塩酸塩またはリジン硫酸塩を形成することができる。また、アミノ酸塩は、非常にきめ細かい(ほぼ粉末状)物理的形状から粒径の大きな顆粒形状を取り得る。したがって、最終生成物の化学的・物理的性質および反芻胃をバイパスし、反芻動物によって効果的に利用されるか否かは、選択されるアミノ酸塩に直接関連する。
【0046】
リジンの好ましい形態は、以下の属性を有する粒状化L−リジン硫酸塩である。粒径は、好ましくは約0.3mm〜約3.0mm、より好ましくは約0.3mm〜約1.0mm、約1.0mm〜約2.0mm、約2.0mm〜約3.0mm、約0.3mm〜約1.6mmまたは約0.8mm〜約1.2mmである。リジン濃度(lysine assay)は50%以上であることができる。含水量は5%以下、嵩密度は0.70±0.07g/ccであることができる。そのようなリジン生成物はBIOLYS(登録商標)としてEvonik社から市販されている。
【0047】
活性物質を含むコアを被覆するための被覆材料は、少なくとも部分的に水素添加された植物油であってもよい。好適な植物油の例としては、パーム油、大豆油、ナタネ油、綿実油、ヒマシ油が挙げられる。
【0048】
被覆材料は、最終製品のコーティングが硬い表面を有することによって最終製品の凝集を防止すると共に反芻胃における製品の安定性を向上させるために、約50℃〜約80℃、例えば約50℃〜約60℃、約60℃〜約70℃、約70℃〜約80℃、約55℃〜約65℃または約60℃〜約75℃の融点を有していることが必要である。
【0049】
植物油は少なくとも部分的に水素添加されており、完全に水素添加されていてもよい。いくつかの実施形態では、完全に水素添加された大豆油を被覆材料として使用する。そのような水素添加された大豆油はBunge Oil Soybean FlakesとしてBunge社から市販されている。
【0050】
活性物質を含むコアは、コアを完全に被覆すると共に少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%または少なくとも65%の反芻胃バイパス率を得るために十分な量の被覆材料で被覆されている。別の実施形態では、コアは、少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%の反芻胃バイパス率を得るために十分な量の被覆材料で被覆されている。さらに別の実施形態では、コアは、少なくとも88%、例えば少なくとも90%、少なくとも93%または少なくとも96%の反芻胃バイパス率を得るために十分な量の被覆材料で被覆されている。「反芻胃バイパス率」とは、反芻胃を出る時にコアに残っている活性物質の、反芻胃に入る前にコアに含まれる活性物質に対する割合(%)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、被覆材料に対するコア材料の重量百分率比は、約50:50〜約70:30、例えば50:50、55:45、60:40、65:35または70:30である。別の実施形態では、被覆材料に対するコア材料の重量百分率比は約70:30、例えば90:10、75:25、80:20、85:15または90:10である。
【0052】
少なくとも50%の反芻胃バイパス率に加えて、被覆されたコア材料は十分な腸消化率を有していなければならない。「腸消化率」とは、反芻胃を通過した活性物質が皺胃および後続する消化管において消化・吸収される割合(%)である。いくつかの実施形態では、腸消化率は少なくとも80%、例えば80%〜約100%、80%〜約90%、約90%〜約100%、または約85%〜約96%、または約89%〜約95%、または約93%〜約99%である。
【0053】
コアは、スプレーコーティング、パンコーティング、流動床コーティング、連続注入コーティング、または当業者に知られているその他の方法によって被覆することができる。コアはバッチ処理または連続処理によって被覆することができる。コアは、一層の被覆材料からなる層によって一回のコーティングによって被覆するか、被覆材料からなる複数の層(例えば、2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層または10層以上)によって被覆することができる。コアを被覆する各層は、同一または異なる被覆材料をそれぞれ含むことができる。
【0054】
コアを被覆する際には、コアに塗布する際に被覆材料が液体となるように、被覆材料を融点を超える温度まで加熱することができる。液体の被覆材料をコアに塗布した後、被覆されたコアを冷却させて被覆材料を固化させ、コアを被覆する固体層を形成する。この処理を1回以上繰り返して、コアを被覆する複数の被覆材料からなる層を形成することができる。
【0055】
上述したように、同一の被覆材料からなる連続した複数層をコアに設ける場合には、各層は最終製品において識別できなくてもよい。ただし、上述した多層処理によって得られた最終製品は、多層製品の被覆と同じ厚みを有する同一の被覆材料の単層によって取り囲まれた製品と比較して特有の構造特性を有する。液体被覆材料を冷却・固化させて固体層とする際に、微細な亀裂、割れ、細孔等の欠陥が層内に形成される場合がある。これらの欠陥は、反芻胃内環境のアクセス経路を形成し、コアが分解し始める可能性がある。その他の層もそのような欠陥を有する可能性があるが、ある層の欠陥は上部または下部の直接接する被覆層の非欠陥領域によって相殺される場合がある。したがって、複数層の被覆材料からなる層をコアに塗布し、次の層を形成する前に各層を冷却・固化させることにより、最外層の外面からコアにつながるまたは最外層の外面からコアへの経路となる欠陥の数が減少する。
【0056】
層内の欠陥の数とサイズは、コアのサイズ、被覆材料、被覆工程および被覆されたコアを形成するために使用する工程パラメータに応じて異なる。そのため、所望のバイパス率および腸消化率を得るために必要な層の数および各層の厚みは選択する変数に応じて異なる。
【0057】
被覆されたコア材料は、飼料サプリメントまたは飼料添加物として使用することができる。適当な量の被覆された細粒を反芻動物用飼料に添加(例えば混合)する。反芻動物が飼料サプリメントを摂取すると、生理活性物質は上述したバイパス率で反芻胃を通過して安定して供給され、活性物質は消化のために反芻胃を通過して反芻動物の内部に取り込まれる。リジン硫酸塩を使用する場合には、ウシ一頭当たりのリジン硫酸塩の量が約5〜120g/日となる量で飼料サプリメントを反芻動物用飼料に添加する。
【実施例】
【0058】
0.3〜1.6mmの直径を有する粒状化リジン硫酸塩(BIOLYS(登録商標)、Evonik社製)300gを熱伝導によって43℃に加熱し、低剪断混合機に入れた。低剪断下においてリジン硫酸塩を撹拌しながら、93℃に加熱した水素添加大豆油(T=49℃)33容量%を連続注入によって混合機に添加し、リジン硫酸塩を被覆した。得られた製品を撹拌下で43℃まで冷却した。93℃に加熱した水素添加大豆油を製品の温度が54℃に達するまで添加し、得られた製品を撹拌下で43℃まで冷却した。上記サイクルをもう一度繰り返し、水素添加大豆油の添加を終了した。最終製品におけるコアの割合は60重量%であり、コーティングの割合は40重量%だった。
【0059】
試験製品約10gを5cm×10cmの袋(ANKOM#510、平均細孔径:50±15μm)に秤量した。各袋を2回加熱封止した。各ウシのために合計5袋の試験製品およびブランク4袋を用意した。各袋に油性マーカーを使用して順次標識を付け、サンプル情報をログシートに記録した。試験製品のサンプルを回収し、初期乾燥物質(DM)含有量および窒素(N)含有量を分析した。
【0060】
反芻胃への挿入直前に、袋を39℃の水に約5分間浸漬し、試験物質を湿潤させた。次に、反芻胃カニューレを取り付けた3頭のほ乳期のホルスタイン牛の反芻胃に袋を挿入した。16時間後、反芻胃から袋を取り出し、すぐに氷水内に入れ、3回洗浄した。洗浄後、袋を45℃で乾燥した。乾燥後、各袋と残渣の重さを計り、以下の式を使用して反芻胃において分解されなかった乾燥物質(DM)および窒素(N)の量を調べた。
【0061】
%DM escape=(初期サンプルの質量−残渣サンプルの質量)/(初期サンプルの質量)×100
%N escape=(初期サンプルの質量N−残渣の質量N)/(初期サンプルの質量N)×100
試験製品の反芻胃バイパス率(%DM escape)は75.17%であり、標準偏差は2.85%だった。
【0062】
腸消化率は生体外(in vitro)ペプシン消化性試験によって調べた。試験のプロトコルとしては、0.2Nペプシン溶液を使用するA.O.A.C.参照番号#971.09に記載された飼料のペプシン消化性試験を修正して使用した。試験製品の腸消化率を調べるために、0.0002Nペプシン溶液を使用した。試験製品サンプルにおけるリジンの腸消化率は90〜95%だった。
【0063】
なお、上述した特徴およびその他の特徴および機能またはそれらの代替手段を必要に応じて組み合わせて異なる方法または用途とすることができる。また、当業者によって行われ得る予期または予想しない代替手段、変形または改良も本願の請求項の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の活性物質を含む粒状化コアと、
前記コアを被覆する少なくとも1層の被覆材料からなる層と、
を含む、反芻動物用飼料組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記活性物質がアミノ酸塩である、組成物。
【請求項3】
請求項2において、
前記アミノ酸がリジンおよびメチオニンからなる群から選択される、組成物。
【請求項4】
請求項1において、
前記被覆材料が、少なくとも部分的に水素添加された植物油である、組成物。
【請求項5】
請求項4において、
前記植物油が、パーム油、大豆油、ナタネ油、綿実油、およびヒマシ油からなる群から選択される、組成物。
【請求項6】
請求項2において、
前記アミノ酸塩がL−リジン硫酸塩である、組成物。
【請求項7】
請求項1において、
前記粒状化コアの材料が約0.3mm〜約3.0mmの粒径を有する、組成物。
【請求項8】
請求項1において、
前記被覆材料に対するコア材料の重量百分率比が50:50〜90:10である、組成物。
【請求項9】
請求項1において、
前記コアが2層以上の前記被覆材料からなる層によって被覆されている、組成物。
【請求項10】
請求項1において、
前記被覆材料が約50℃〜約80℃の融点を有する、組成物。
【請求項11】
請求項1において、
前記コアが、少なくとも50%の反芻胃バイパス率を得るために十分な量の被覆材料で被覆されている、組成物。
【請求項12】
請求項11において、
少なくとも80%の腸消化率を有する、組成物。
【請求項13】
少なくともL−リジン硫酸塩を含む粒状化コア材料と、
前記コア材料を被覆する少なくとも1層の水素添加植物油被覆材料からなる層と、
を含む、反芻動物用飼料組成物。
【請求項14】
請求項13において、
前記植物油が大豆油である、組成物。
【請求項15】
請求項13において、
前記コアが2層以上の被覆材料からなる層によって被覆されている、組成物。
【請求項16】
請求項14において、
前記被覆材料が約50℃〜約80℃の融点を有する、組成物。
【請求項17】
請求項13において、
前記コアが、少なくとも50%の反芻胃バイパス率を得るために十分な量の被覆材料で被覆されており、前記組成物が少なくとも80%の腸消化率を有する、組成物。
【請求項18】
リジンによって反芻動物の食物を補う方法であって、
少なくともL−リジン硫酸塩を含む粒状化コア材料と、前記コア材料を被覆する少なくとも1層の水素添加植物油被覆材料からなる層と、を含む反芻動物用飼料組成物を前記反芻動物に与えることを含む、方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記植物油が大豆油である、方法。
【請求項20】
請求項18において、
前記コアが2層以上の被覆材料からなる層によって被覆されている、方法。
【請求項21】
反芻動物用飼料組成物の製造方法であって、
L−リジン硫酸塩を含むコアを得ること、
液体植物油を含む被覆材料からなる連続する層によって前記コアを被覆すること、
前記被覆材料の層を固化させて被覆コアを得ること、
を含む、方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記被覆コアを前記被覆材料からなる1以上の層で被覆することをさらに含み、前記被覆材料からなる次の層を形成する前に前記被覆材料からなる各層を固化させる、方法。
【請求項23】
請求項21において、
前記コアをバッチ処理または連続処理によって被覆する、方法。
【請求項24】
請求項21において、
前記植物油が少なくとも部分的に水素添加されている、方法。
【請求項25】
請求項24において、
前記植物油が、パーム油、大豆油、ナタネ油、綿実油、およびヒマシ油からなる群から選択される、方法。

【公表番号】特表2010−539976(P2010−539976A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527957(P2010−527957)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/011266
【国際公開番号】WO2009/045369
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510092719)エイチ ジェイ ベーカー アンド ブラザー インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】H.J.BAKER & BRO.,INC.
【住所又は居所原語表記】228 Saugatuck Avenue, Westport,Connecticut 06880−6425,U.S.A.
【Fターム(参考)】