説明

粗ノスカピンを精製する方法

本発明は、ノスカピンの色を実質的に変えることなくアヘン供給源からノスカピンを分離するための方法を提供する。この方法は、アヘン供給源を、ノスカピンの溶解を実質的にもたらす第1の溶剤に接触させて、約5よりも高いpHを含む反応混合物を形成するステップを含む。この方法はさらに、反応混合物を、不純物の溶解度を実質的に変えることなく反応混合物中のノスカピンの溶解度を低くしてノスカピンを再結晶化させる第2の溶剤に接触させることによって、不純物の不可逆的な色変化をもたらさない様式でノスカピンを不純物から分離するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピンを分離する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ノスカピン、CAS#128−62−1は、日本およびアジア大陸全土で鎮咳剤に用いられている。ノスカピンはアヘンに見出される天然の産物であり、血液脳関門を横断して中枢神経系にその効果を及ぼして、咳の抑制をもたらすことができる。加えて、ノスカピンは動物実験において腫瘍の成長を低減させることが示されており、抗腫瘍剤としてノスカピンを使用するための調査研究が行なわれている。
【0003】
図1に示されるとおり、ノスカピンは粗アヘンから抽出されてもよい。加えて、たとえばモルヒネなどのその他の物質が粗アヘン中に存在することがある。モルヒネは多くの地域で政府の規制を受けている規制物質であり、ノスカピンの特定の製造者が入手可能な粗アヘンの量は、粗アヘン中のモルヒネの量によって制限されることがある。したがって、ノスカピン供給源として粗アヘンを用いるノスカピン製造者の製造容量は、粗アヘンのモルヒネ含有量に関する政府の規則によって制限されることがある。
【0004】
この制限に対処するために、ノスカピン製造者はノスカピンの代替的な供給源、たとえばケシ殻(poppy straw)などに着目しており、これは収穫後のケシ、Papaver somniferumからの茎とさく果との混合物である。ケシの特定の系統、およびケシ殻の収穫後の処理によっては、ケシ殻のノスカピン含有量の割合がモルヒネ含有量よりもかなり高くなることがある。
【0005】
しかし、ケシ殻は付加的に、たとえばパパベルビン化合物などのいくつかの不純物を含有し得る。図2に示されるとおり、パパベルビン化合物は酸性条件下で赤色イミニウム塩に不可逆的に転換することがある。赤色イミニウム塩は、精製ノスカピン生成物中に存在すると、ノスカピン生成物に望ましくない赤みがかった色を与える。残念なことに、現在のほとんどのノスカピン抽出および精製方法は、粗ノスカピン供給源を酸性溶液に溶解するステップを含む。
【0006】
酸性のプロセス条件に曝されたときに不可逆的な色変化を起こす、パパベルビンまたはその他の不純物を含み得るアヘン供給源から、ノスカピンを分離する方法の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの局面は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピン(CAS#128−62−1)を分離する方法を提供する。この方法は、アヘン供給源を、ノスカピンの溶解を実質的にもたらす第1の溶剤に接触させて、約5よりも高いpHを含む反応混合物を形成するステップを含む。この方法はさらに、反応混合物を、不純物の溶解度を実質的に変えることなく反応混合物中のノスカピンの溶解度を低くしてノスカピンを再結晶化させる第2の溶剤に接触させることによって、不純物の不可逆的な色変化をもたらさない様式でノスカピンを不純物から分離するステップを含む。
【0008】
本発明の別の局面は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピン(CAS#128−62−1)を分離する方法を提供する。この方法は、アヘン供給源を溶剤混合物に接触させて、約5よりも高いpHを有するスラリーを形成するステップを含む。
【0009】
本発明の別の局面は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピン(CAS#128−62−1)を分離する方法を提供する。この方法は、アヘン供給源を、アセトン、アセトニトリル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される第1の溶剤に接触させて、約5よりも高いpHを有する反応混合物を形成するステップを含む。この方法はさらに、反応混合物を水に接触させてノスカピンを再結晶化させることによって、ノスカピンを不純物から分離するステップを含む。
【0010】
本発明の別の局面は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピン(CAS#128−62−1)を分離する方法を提供する。この方法は、アヘン供給源を、アセトン、アセトニトリル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される第1の溶剤と、水を含む第2の溶剤とを含む溶剤混合物に接触させて、約5よりも高いpHを有するスラリーを形成するステップを含む。
【0011】
本発明のその他の局面および特徴を、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ノスカピン、CAS#128−62−1の化学図である。
【図2】図2は、パパベルビン化合物の赤色イミニウム塩への転換を示す図である。
【図3】図3は、約5未満のpH条件に曝されると不可逆的な色変化を起こすいくつかのアヘン供給源において見出される3つの例示的な不純物の化学図である。
【図4−1】図4は、約5未満のpH条件に曝されても不可逆的な色変化を起こさないいくつかのアヘン供給源において見出される他の例示的な不純物の化学図である。
【図4−2】図4は、約5未満のpH条件に曝されても不可逆的な色変化を起こさないいくつかのアヘン供給源において見出される他の例示的な不純物の化学図である。
【図5】図5は、ノスカピンに対する滴定曲線である。
【図6】図6は、ノスカピン、モルヒネおよびオリパビンの混合物に対する滴定曲線である。
【図7】図7は、ノスカピンおよび濃縮ケシ殻の混合物に対する滴定曲線である。
【図8】図8は、アセトニトリル/水混合物中のノスカピンの溶解度をまとめた図である。
【図9】図9は、洗浄比率およびアセトニトリル洗浄溶剤濃度が、結果的に得られるノスカピン生成物の純度に与える影響をまとめた等高線図である。
【図10】図10は、洗浄比率およびアセトニトリル洗浄溶剤濃度が、結果的に得られるノスカピン生成物の収量に与える影響をまとめた等高線図である。
【図11】図11は、洗浄体積およびアセトニトリル洗浄溶剤濃度が、精製ノスカピン生成物中に残ったナルコトリン不純物の濃度に与える影響をまとめた等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(I)概要
本発明の1つの局面は、アヘン供給源からノスカピンを分離する方法を提供する。特に、このアヘン供給源は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含む。たとえば、いくつかのアヘン供給源中に存在する不純物であるパパベルビン化合物は、図2に示されるとおり、酸性条件下で赤色イミニウム塩への不可逆的な転換を起こす。いかなる特定の理論にも結び付けられることなく、もしパパベルビン不純物を含有するアヘン供給源が、プロセス中のいずれかの点でpHが約5を下回るようなプロセス条件下で精製されれば、赤色イミニウム塩が形成されることによって、望ましくない赤色またはピンク色の精製ノスカピンがもたらされるおそれがある。
【0014】
この方法は、アヘン供給源を、ノスカピンの溶解を実質的にもたらす第1の溶剤に接触させて、約5よりも高いpHを含む反応混合物を形成するステップを含む。第1の溶剤はノスカピンを溶解してpHが約5よりも高い溶液にすることで、溶解ノスカピンを含み、かつ第1の溶剤に可溶性のあらゆる溶解混入物も含み得る反応混合物を形成する。溶解混入物は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす不純物を含んでいてもよい。
【0015】
この方法はさらに、反応混合物を、不純物の溶解度を実質的に変えることなく反応混合物中のノスカピンの溶解度を低くする第2の溶剤に接触させるステップを含む。第2の溶剤は反応混合物中の不純物の溶解度を実質的に変えないため、不純物は反応混合物中に溶解したままである。しかし、第2の溶剤の添加によって反応混合物中のノスカピンの飽和濃度が低くなるため、反応混合物中に残った溶解ノスカピンの濃度が飽和レベルより低くなるまで、反応混合物からノスカピン結晶が沈殿する。ほとんどの実施形態において、結果として得られるノスカピン結晶は、純度が少なくとも98重量%のノスカピンを含み、かつアヘン供給源に対する収量が少なくとも80重量%のノスカピンを含む。この方法は、反応混合物からノスカピン結晶を濾過するステップをさらに含んでもよい。この方法は、濾過されたノスカピン結晶をリンス溶剤でリンスするステップを付加的に含んでもよい。
【0016】
本発明の別の局面は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピンを分離する方法を提供する。この方法は、アヘン供給源を溶剤混合物に接触させてスラリーを形成するステップを含む。溶剤混合物は、ノスカピンの溶解度が高い溶剤と、ノスカピンが比較的不溶性である溶剤との混合物を含む。スラリー中のノスカピンの濃度は、反応混合物中のノスカピンに対する飽和限界よりも少なくとも10倍高いことによって、溶剤混合物はノスカピンを溶解するのではなく、アヘン供給源を洗浄することとなる。溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度およびスラリー中のノスカピンの濃度は、この方法によってもたらされるノスカピン結晶の純度および収量に影響する。この方法は、ノスカピンからの不純物の分離を促進するためにスラリーを加熱するステップをさらに含んでもよい。この方法は、スラリーからノスカピン結晶を濾過するステップをさらに含んでもよい。この方法は、濾過されたノスカピン結晶をリンス溶剤でリンスするステップを付加的に含んでもよい。
【0017】
アヘン供給源、第1の溶剤、第2の溶剤、溶剤混合物、およびリンス溶剤を含む、本発明の方法において用いられる材料の詳細な説明を下記および以下の実施例において提供する。加えて、温度およびpHなどの反応条件を下記および以下の実施例において提供する。濾過およびリンスなどの、本発明の付加的な局面を下記および以下の実施例において提供する。
【0018】
(II)アヘン供給源
本発明の方法を用いてノスカピンを分離するためのアヘン供給源は、生のケシ植物、またはケシPapaver somniferumに由来する植物物質からの浸出物を用いて生成される。アヘン供給源は、モルヒネ、コデイン、オリパビン、テバイン、パパベリン、およびノスカピンを含む麻薬性アルカロイドをさまざまな量含有する。本発明の方法に好適なアヘン供給源は、アヘン、ケシ殻、濃縮ケシ殻、粗ノスカピン、および粗ナルコチンを含む。アヘンは、生のアヘン植物の種鞘からの乾燥浸出物である。ケシ殻は収穫後のケシ植物の茎とさく果とを集めたものであり、濃縮ケシ殻とはケシ殻を何らかのやり方で予め処理することによって、いくつかの不純物を除去するか、またはケシの茎から1つまたはそれ以上の麻薬性アルカロイドを抽出したものである。粗ナルコチンは処理されたアヘン剤供給源であり、その中のノスカピン含有量はアヘン、ケシ殻または濃縮ケシ殻に比べて高くなっている。
【0019】
(a)ノスカピン含有量
アヘン供給源のノスカピン含有量は、約1重量%から約99重量%の範囲であってもよい。ノスカピン含有量は、約1重量%から約5重量%、約4重量%から約10重量%、約9重量%から約15重量%、約14重量%から約20重量%、約19重量%から約25重量%、約24重量%から約30重量%、約29重量%から約35重量%、約34重量%から約40重量%、約39重量%から約45重量%、約44重量%から約50重量%、約49重量%から約55重量%、約54重量%から約60重量%、約59重量%から約65重量%、約64重量%から約70重量%、約69重量%から約75重量%、約74重量%から約80重量%、約79重量%から約85重量%、約84重量%から約90重量%、約89重量%から約95重量%、および約94重量%から約99重量%の範囲であってもよい。好ましくは、アヘン供給源のノスカピン含有量は、約80%から約99%の範囲であってもよい。
【0020】
(b)不純物
アヘン供給源は、約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含有する。加えてアヘン供給源は、酸性条件下で色を変化させることはないが、好適な純度のノスカピン生成物を生産するためにアヘン供給源から除去する必要のあるその他の不純物を含有することがある。
【0021】
(i)pH<5に曝されると不可逆的な色変化を起こす不純物
約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす不純物は、パパベルビン、グラウジン、エピグラウジン、オレオジン、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。パパベルビンは、パパベルビンA、パパベルビンB、パパベルビンC、パパベルビンD、パパベルビンE、パパベルビンF、パパベルビンG、エピパパベルビンG、パパベルビンH、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす不純物の代表的なサンプルの化学図を図3に示す。
【0022】
(ii)その他の不純物
アヘン供給源は、約5未満のpHに曝されても必ずしも不可逆的な色変化を起こさない不純物をも含んでいてもよい。これらの不純物は、本発明の方法の目的に対しては不純物と分類されるが、商業的価値を有するものであってもよく、他の精製法を適用してこの不純物を商業的に有用な生成物にしてもよい。約5未満のpHに曝されても不可逆的な色変化を起こさない不純物は、モルヒネ、オリパビン、パパベリン、テバイン、コデイン、コデイン、クリプトピン、ノスカピン類似体、ナルコトリン、ノルノスカピン、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。その他の不純物の代表的なサンプルの化学図を図4に示す。
【0023】
(III)第1の溶剤
本発明の局面においては、第1の溶剤が最初にアヘン供給源に接触させられて、反応混合物をもたらしてもよい。反応混合物は第1の溶剤および溶解ノスカピンに加えて、ノスカピンとともに反応混合物に溶解し得るあらゆる不純物を含む。本発明の方法に好適な第1の溶剤は、アヘン供給源中のノスカピンを溶解する能力を有する。特に、第1の溶剤は約5よりも高いpHにおいてノスカピンに対する高い溶解度を有していてもよい。加えて、第1の溶剤中のノスカピンの溶解度は、第2の溶剤との接触後に有意に減少してもよい。
【0024】
(a)第1の溶剤の組成
好適な第1の溶剤は、アルカンおよび置換アルカン溶剤、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン、ならびにそれらの組み合わせを含む。特に、好適な第1の溶剤は、アセトニトリル、アセトン、ベンゼン、ブタノール、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルケトン、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロメタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、フルオロベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルメチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸ペンチル、酢酸n−プロピル、テトラヒドロフラン、トルエン、およびそれらの組み合わせを含む。好ましくは、第1の溶剤はアセトニトリル、アセトン、およびそれらの組み合わせである。
【0025】
第1の溶剤の濃度は、好ましくは100%純粋である。しかし、第1の溶剤は、第1の溶剤と混和性の別の溶剤によって希釈されてもよい。たとえば、アセトニトリルは水で希釈されてもよい。第1の溶剤の濃度は、100重量%から約95重量%、約97重量%から約93重量%、約95重量%から約90重量%、約93重量%から約87重量%、約90重量%から約85重量%、約87重量%から約83重量%、約85重量%から約80重量%、約83重量%から約77重量%、約80重量%から約75重量%、約77重量%から約73重量%、約75重量%から約70重量%、約73重量%から約67重量%、約70重量%から約65重量%、約67重量%から約63重量%、約65重量%から約60重量%、約61重量%から約55重量%、約56重量%から約50重量%、約51重量%から約45重量%、約46重量%から約40重量%、約41重量%から約35重量%、約36重量%から約30重量%、約31重量%から約25重量%、約26重量%から約20重量%、約19重量%から約15重量%、約16重量%から約10重量%、約11重量%から約5重量%、および約10重量%から約1重量%の範囲であってもよい。
【0026】
(b)第1の溶剤の量
アヘン供給源に接触させられる第1の溶剤の量は、アヘン供給源に含有されるノスカピンの本質的に全量が反応混合物に溶解されるように選択されてもよい。しかし、本発明の方法の全収量を最適化するために、反応混合物に溶解されるノスカピンの量は、第1の溶剤中のノスカピンに対する飽和限界に近くてもよい。本発明の方法に対して好適な溶剤の絶対量は、使用される第1の溶剤の化学的性質に依存し、特に第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度に依存する。
【0027】
アヘン供給源に接触させられる第1の溶剤の量は、反応混合物中のノスカピン濃度が、第1の溶剤におけるノスカピンの飽和濃度の99%以下となるように選択されてもよい。アヘン供給源に接触させられる第1の溶剤の量は、反応混合物中のノスカピン濃度が、第1の溶剤におけるノスカピンの飽和濃度の98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下となるように選択されてもよい。
【0028】
(c)第1の溶剤のその他の性質
第1の溶剤のpHは、4から約5、約4.5から約5.5、5から約6、約5.5から約6.5、6から約7、約6.5から約7.5、7から約8、約7.5から約8.5、8から約9、約8.5から約9.5、9から約10、約9.5から約10.5、10から約11、および約11.5から約12の範囲であってもよい。第1の溶剤は、好ましくは約5以上のpHを有する。
【0029】
第1の溶剤は、さらに本方法の方法の第2の溶剤と混和性であるべきである。加えて、第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度は、この方法が行なわれる温度、pHまたはその他の条件の変化に対する感受性(sensitivity)を有していてもよい。たとえば、以下の実施例に記載されるとおり、アセトニトリルの温度が22℃から50℃に上げられるとき、アセトニトリルにおけるノスカピンの溶解度は2倍より大きくなる。
【0030】
(IV)第2の溶剤
本発明の局面において、第2の溶剤は、溶解ノスカピンおよび第1の溶剤を含む反応混合物に接触させられてもよい。第2の溶剤が反応混合物と接触すると、ノスカピンは反応混合物から再結晶化する。本発明の方法に対して好適な第2の溶剤は、反応混合物におけるノスカピンの溶解度を下げる能力を有していてもよい。特に、第2の溶剤は、約5よりも高いpHにおいて第1の溶剤よりもノスカピンに対する溶解度が低くてもよく、さらに約5より高いpHにおいて反応混合物に溶解されているあらゆるその他の不純物に対する溶解度が本質的に同等またはそれより高くてもよく、上述のとおり、その不純物は、約5よりも高いpHに曝されると色変化を起こすあらゆる不純物を含む。さらに、第2の溶剤は反応混合物中の第1の溶剤と混和性であってもよい。
【0031】
(a)第2の溶剤の組成
使用のために選択される第2の溶剤の組成は、反応混合物中の第1の溶剤の組成に依存する。第2の溶剤が第1の溶剤に関して上述された溶解度および混和性の性質を有している限り、あらゆる第2の溶剤が用いられてもよい。
【0032】
本発明の方法に対する好適な第2の溶剤は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ペンタノール、およびそれらの組み合わせを含む。好ましい第2の溶剤は、水およびエタノールである。特に好ましい第2の溶剤は水である。
【0033】
(b)第2の溶剤の量
反応混合物に接触させられる第2の溶剤の量は、アヘン供給源に含有されるノスカピンの本質的に全量が反応混合物から再結晶化されるように選択されてもよい。したがって、反応混合物に接触させられる第2の溶剤の量は、ノスカピンに対する反応混合物の溶解度が、第2の溶剤と接触する前の反応混合物の溶解度の約10%未満に低減するように選択される。反応混合物に接触させられる第2の溶剤の量は、ノスカピンに対する反応混合物の溶解度を、第2の溶剤と接触する前のノスカピンに対する反応混合物の溶解度の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、または約0.1%未満に低減させてもよい。
【0034】
本発明の方法に対して好適な第2の溶剤の絶対量は、使用される特定の第1の溶剤および第2の溶剤の化学的性質、特に使用される特定の第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度に依存する。たとえば、反応混合物に使用される第1の溶剤においてノスカピンの溶解度が高ければ、第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度が幾分低いときよりも、ノスカピンに対する反応混合物の溶解度を好適に低いレベルに低減させるためにより大量の第2の溶剤が必要となり得る。
【0035】
上述のとおり、反応混合物供給源に接触させられる第2の溶剤の量は、ノスカピンに対する反応混合物の溶解度を低減させるように選択される。反応混合物に接触させられる第2の溶剤の量は、反応混合物を形成するためにノスカピンに接触させられる第1の溶剤の体積の約5%から約500%であってもよい。反応混合物に接触させられる第2の溶剤の量は、反応混合物を形成するためにノスカピンに接触させられる第1の溶剤の体積の約5%から約10%、約9%から約20%、約19%から約30%、約29%から約40%、約39%から約50%、約49%から約60%、約59%から約70%、約69%から約80%、約79%から約90%、約89%から約100%、約99%から約110%、約109%から約120%、約119%から約130%、約129%から約140%、約139%から約150%、約149%から約160%、約159%から約170%、約169%から約180%、約179%から約190%、約189%から約200%、約199%から約250%、約249%から約300%、約299%から約350%、約349%から約400%、約399%から約450%、および約449%から約500%であってもよい。好ましくは、反応混合物に接触させられる第2の溶剤の量は、反応混合物を形成するためにノスカピンに接触させられる第1の溶剤の体積の約40%から約60%である。
【0036】
(c)第2の溶剤のその他の性質
第2の溶剤のpHは、約4から約5、約4.5から約5.5、約5から約6、約5.5から約6.5、約6から約7、約6.5から約7.5、約7から約8、約7.5から約8.5、8から約9、約8.5から約9.5、約9から約10、約9.5から約10.5、約10から約11、および約11.5から約12の範囲であってもよい。第2の溶剤は、好ましくは約5以上のpHを有する。
【0037】
(V)溶剤混合物
本発明の局面において、溶剤混合物がアヘン供給源に接触させられることによって、アヘン供給源と溶剤混合物とを含むスラリーをもたらしてもよい。溶剤混合物中のアヘン供給源からのノスカピンの濃度は、溶剤混合物におけるノスカピンに対する溶解度限界よりもかなり高いことによって、ノスカピンは本質的に溶解しないままとなる。スラリー中で溶剤混合物はアヘン供給源を洗浄して不純物を溶解して取除き、精製ノスカピンを残す。本発明の方法に対して好適な溶剤混合物は、そのノスカピンに対する溶解度が、不純物に対する溶剤混合物の溶解度よりも比較的低くてもよく、上述のとおり、その不純物は、約5よりも高いpHに曝されると色変化を起こすあらゆる不純物を含む。
【0038】
(a)溶剤混合物の組成
使用のために選択される溶剤混合物の組成は、セクション(III)に記載される第1の溶剤の群から選択される第1の溶剤と、セクション(IV)に記載される第2の溶剤の群から選択される第2の溶剤との混合物である。第1および第2の溶剤が混和性である限り、上述の第1および第2の溶剤のいずれが溶剤混合物に用いられてもよい。
【0039】
第2の溶剤中の第1の溶剤の濃度は、約10重量%から約70重量%の範囲であってもよい。第2の溶剤中の第1の溶剤の濃度は、約10重量%から約70重量%、約10重量%から約20重量%、約15重量%から約25重量%、約20重量%から約30重量%、約25重量%から約35重量%、約30重量%から約40重量%、約35重量%から約45重量%、約40重量%から約50重量%、約45重量%から約55重量%、約50重量%から約60重量%、約55重量%から約65重量%、および約60重量%から約70重量%の範囲であってもよい。
【0040】
好適な溶剤混合物は、アセトニトリル濃度が約20重量%から約70重量%の範囲であるアセトニトリルと水との混合物、およびアセトン濃度が約20重量%から約60重量%の範囲であるアセトンと水との混合物を含む。好ましい溶剤混合物は、約50重量%の濃度の水とアセトニトリルとの混合物である。
【0041】
(b)溶剤混合物の量
アヘン供給源に接触させられる溶剤混合物の量は、アヘン供給源からのノスカピンの濃度が、溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度限界よりもかなり高くなるように選択されてもよい。したがって、アヘン供給源に接触させられる溶剤混合物の量は、スラリー中のノスカピンの濃度が、溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度限界の約100%から約30,000%の範囲となるように選択される。アヘン供給源に接触させられる溶剤混合物の量は、スラリー中のノスカピンの濃度が、溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度限界の約100%から約200%、約150%から約250%、約200%から約300%、約250%から約350%、約300%から約400%、約350%から約450%、約400%から約500%、約450%から約550%、約500%から約600%、約550%から約650%、約600%から約700%、約650%から約750%、約700%から約800%、約750%から約850%、約800%から約900%、約850%から約950%、約900%から約1,000%、約950%から約1,050%、約1,000%から約2,000%、約1,500%から約2,500%、約2,000%から約3,000%,約2,500%から約3,500%,約3,000%から約4,000%,約3,500%から約4,500%、約4,000%から約5,000%、約4,500%から約5,500%、約5,000%から約10,000%、約7,500%から約12,500%、約10,000%から約15,000%、約12,500%から約17,500%、約15,000%から約20,000%、約17,500%から約22,500%、約20,000%から約25,000%、約22,500%から約27,500%、および約25,000%から約30,000%の範囲となるように選択される。アヘン供給源に接触させられる溶剤混合物の好ましい量は、スラリー中のノスカピンの濃度が、溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度限界の約500%から約1500%の範囲となるように選択される。
【0042】
本発明の方法に対して好適な第2の溶剤の絶対量は、使用される特定の第1の溶剤および第2の溶剤の化学的性質、特に使用される特定の第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度に依存する。たとえば、溶剤混合物の第1の溶剤の重量濃度が、第2の溶剤の重量濃度よりも比較的高いときは、溶剤混合物が比較的低濃度の第1の溶剤を含有しているときよりも少ない溶剤混合物が用いられてもよい。
【0043】
(c)溶剤混合物の温度
アヘン供給源に接触させられる溶剤混合物の温度は、溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度が溶剤混合物における不純物の溶解度に対して最小限になるように選択されてもよい。溶剤混合物の温度は、溶剤混合物の共晶温度と、溶剤混合物に含まれる第1の溶剤および第2の溶剤の低い方の沸点温度との間の範囲であってもよい。溶剤混合物の温度は、約0℃から約100℃、約0℃から約10℃、約9℃から約20℃、約19℃から約30℃、約29℃から約40℃、約39℃から約50℃、約49℃から約60℃、約59℃から約70℃、約69℃から約80℃、約79℃から約90℃、および約89℃から約100℃の範囲であってもよい。この方法のすべてのステップにわたって温度が本質的に一定の値に維持されてもよいし、この方法のステップの間に温度が変えられてもよい。
【0044】
(d)溶剤混合物のその他の性質
溶剤混合物のpHは、約4から約5、約4.5から約5.5、約5から約6、約5.5から約6.5、約6から約7、約6.5から約7.5、約7から約8、約7.5から約8.5、約8から約9、約8.5から約9.5、約9から約10、約9.5から約10.5、約10から約11、および約11.5から約12の範囲であってもよい。第2の溶剤は、好ましくは約5以上のpHを有する。
【0045】
(VI)ノスカピン除去方法に対するプロセス条件
本発明の方法に対するプロセス条件は、アヘン供給源から精製されるノスカピンの量を最大限にし、この方法によって生成されるノスカピン中の不純物を最小限にし、かつこの方法によって生成されるノスカピンに望ましくない色特徴を与え得る不純物の形成を避けるように選択される。特に、本発明の方法が行なわれるときのpHおよび温度は、本発明の方法を用いて精製されるノスカピンの収量および純度に影響する。
【0046】
(a)pH
本発明の方法が行なわれるときのpHは、一般的に約5よりも高い。本発明の方法が行なわれるときのpHは、約5から約6、約5.5から約6.5、約6から約7、約6.5から約7.5、7から約8、約7.5から約8.5、約8から約9、約8.5から約9.5、約9から約10、約9.5から約10.5、約10から約11、および約11.5から約12の範囲であってもよい。この方法のすべてのステップにわたってpHが本質的に一定の値に維持されてもよいし、この方法のステップの間にpHが変えられてもよいし、1つのステップに対してpHが異なる値に維持され、この方法の別のステップに対して第2の値に維持されてもよい。たとえば、第1の溶剤はpH約5にてアヘン供給源に接触させられてもよく、第2の溶剤はpH約11にて反応混合物に接触させられてもよい。
【0047】
(b)温度
本発明の方法が行なわれるときの温度は、第1の溶剤をアヘン供給源に接触させるときに第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度特性を高めるように、かつさらに反応混合物を第2の溶剤に接触させた後の反応混合物におけるノスカピンの溶解度を低減させるように選択されてもよい。したがって本発明の方法が行なわれるときの温度は、使用される第1および第2の溶剤の組成に依存する。いかなる特定の理論にも結び付けられることなく、溶剤における化合物の溶解度は、一般的に溶剤温度が高くなると増加し、溶剤温度が低くなると減少する。
【0048】
本発明の方法が行なわれるときの温度は、第2の溶剤が加えられた後の反応混合物の共晶温度と、第1の溶剤の沸点との間の範囲であってもよい。この温度範囲は、最初に第1の溶剤をアヘン供給源に接触させるときに反応混合物が沸騰することを防ぎ、さらに第2の溶剤に接触させた後に反応混合物が凝固することを避ける。本発明の方法が行なわれるときの温度は、約0℃から約100℃、約0℃から約10℃、約9℃から約20℃、約19℃から約30℃、約29℃から約40℃、約39℃から約50℃、約49℃から約60℃、約59℃から約70℃、約69℃から約80℃、約79℃から約90℃、および約89℃から約100℃の範囲であってもよい。この方法のすべてのステップにわたって温度が本質的に一定の値に維持されてもよいし、この方法のステップの間に温度が変えられてもよいし、温度が1つのステップに対して異なる値に維持され、別のステップに対して第2の値に維持されてもよい。たとえば、第1の溶剤は約50℃の温度でアヘン供給源に接触させられてもよく、反応混合物が第2の溶剤に接触させられた後に反応混合物は約22℃の温度に冷却されてもよい。
【0049】
ある実施形態において、本発明の方法が行なわれるときの温度は、反応混合物の共晶温度と、溶剤混合物の沸点との間の範囲であってもよい。溶剤混合物をアヘン供給源と接触させてスラリーを形成するときの温度は、約20℃から約760℃、約20℃から約24℃、約23℃から約25℃、約24℃から約26℃、約25℃から約27℃、約26℃から約28℃、約27℃から約29℃、約28℃から約30℃、約25℃から約35℃、約30℃から約40℃、約35℃から約45℃、約40℃から約50℃、約45℃から約55℃、約50℃から約60℃、約55℃から約65℃、および約65℃から約70℃の範囲である。溶剤混合物をアヘン供給源と接触させてスラリーを形成するときの好ましい温度は、約20℃から約25℃の範囲である。
【0050】
(VII)方法のその他の局面
本発明の方法は、この方法によってもたらされるノスカピン生成物の収量、純度および色特性を高めるための付加的なステップをさらに含んでもよい。付加的なステップは、ノスカピン結晶の濾過、および濾過されたノスカピン結晶のリンス溶剤によるリンスを含んでもよい。
【0051】
(a)濾過
第2の溶剤を反応混合物に接触させることによってノスカピンを再結晶化した後、得られたノスカピン結晶を公知の濾過方法を用いて反応混合物溶剤から濾過してもよい。好適な濾過媒体は、ブフナー漏斗、ヒルシュ漏斗、またはその他のフィルタ漏斗とともに用いられる濾紙を通じた濾過、および焼結ガラス漏斗を通じた濾過を含んでもよい。好適な濾過方法は、重力濾過、加圧濾過、支流濾過、深層濾過、連続回転濾過および遠心分離を含んでもよい。
【0052】
(b)濾過されたノスカピン結晶のリンス
本発明の方法は、濾過されたノスカピン結晶をリンス溶剤によってリンスするステップをさらに含んでもよい。いかなる特定の理論にも結び付けられることなく、リンスすることによって、濾過プロセスの際にノスカピン結晶に付着したおそれのある残余不純物が洗い流されてもよい。よってノスカピン結晶をリンスすることによって、本発明の方法によってもたらされるノスカピンの純度が高められ得る。しかし、もしリンス溶剤が不純物に加えて結晶化ノスカピンのいくらかの部分をも洗い流してしまえば、ノスカピン結晶をリンスすることによって精製ノスカピンの全収量が減少し得る。リンスするプロセスの有効性に寄与する2つの要素は、リンス溶剤の組成と、濾過されたノスカピン結晶をリンスするために用いられるリンス溶剤の量とである。
【0053】
(i)リンス溶剤の組成
濾過されたノスカピン結晶をリンスするために用いられるリンス溶剤は、約5未満のpHに曝されると色変化を起こす不純物を含む上述の不純物に対する高い溶解度を有するように選択される。リンス溶剤は、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ペンタノール、アセトニトリル、アセトン、およびそれらの組み合わせを含む第2のリンス溶剤との混合物であってもよい。
【0054】
リンス溶剤中の第2のリンス溶剤の濃度は、0重量%から約70重量%の範囲であってもよい。リンス溶剤中の溶剤の濃度は、0重量%から約5重量%、約3重量%から約8重量%、約5重量%から約10重量%、約8重量%から約13重量%、約10重量%から約15重量%、12重量%から約17重量%、15重量%から約20重量%、17重量%から約22重量%、20重量%から約25重量%、22重量%から約27重量%、25重量%から約30重量%、27重量%から約32重量%、30重量%から約35重量%、32重量%から約37重量%、35重量%から約40重量%、37重量%から約42重量%、40重量%から約45重量%、42重量%から約47重量%、45重量%から約50重量%、47重量%から約52重量%、50重量%から約55重量%、52重量%から約57重量%、55重量%から約60重量%、62重量%から約67重量%、および65重量%から約70重量%の範囲であってもよい。例示的なリンス溶剤は、水中のイソプロパノールの33重量%溶液、水中のアセトニトリルの20重量%溶液、および100%の水を含む。
【0055】
(i)リンス溶剤の量
濾過されたノスカピン結晶をリンスするために用いられるリンス溶剤の量は、ノスカピンの有意な損失を回避しながら、濾過されたノスカピン結晶に付着したあらゆる残余不純物が結晶から本質的に洗い流されるように選択される。濾過されたノスカピン結晶のリンスに用いられるリンス溶剤の量は、リンス溶剤の組成に依存する。たとえば、比較的高濃度の第2のリンス溶剤を有するリンス溶剤は、より低い濃度の第2のリンス溶剤でリンスするよりも少量のリンス溶剤によって同様の結果を達成するかもしれない。
【0056】
濾過されたノスカピン結晶をリンスするために用いられるリンス溶剤の量は、ノスカピン結晶1グラム当り約1gから約50gのリンス溶剤の範囲であってもよい。リンス溶剤の量は、濾過されたノスカピン結晶1グラム当り約1gから約5g、約3gから約7g、約5gから約10g、約7gから約13g、約10gから約15g、約17gから約23g、約20gから約25g、約27gから約33g、約25gから約30g、約27gから約33g、約30gから約35g、約32gから約37g、約35gから約40g、約37gから約43g、約40gから約45g、約43gから約47g、および約45gから約50gのリンス溶剤の範囲であってもよい。好ましくは、リンス溶剤の量は、濾過されたノスカピン結晶1グラム当り約5gから約25gのリンス溶剤の範囲であってもよい。
【0057】
(VIII)精製ノスカピン生成物
本発明の方法によって生成されたノスカピン生成物の品質は、以下に説明されるノスカピン結晶の色、ノスカピン生成物の純度、およびノスカピン生成物の収量を用いて評価されてもよい。
【0058】
(a)ノスカピン生成物の色
上述の本発明の方法は、約5のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす不純物を除去する方法を提供する。本発明の方法によってもたらされる精製ノスカピン生成物は、淡黄褐色から白色の範囲であってもよい。好ましくは、本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物は白色である。
【0059】
(b)ノスカピン生成物の純度
本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の純度は、ノスカピン生成物がノスカピンを含む割合として定義され、ノスカピン生成物の総重量のパーセンテージとして表される。一般的に、純度とは、アヘン供給源から不純物を除去することについての本発明の方法の有効性を表す量である。本発明の方法によってより多くの不純物が除去されるほど、その結果得られるノスカピン生成物の純度が高くなる。
【0060】
本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の純度は、約20重量%から100重量%の範囲であってもよい。本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の純度は、100重量%から約98重量%、約99重量%から約97重量%、約98重量%から約96重量%、約97重量%から約95重量%、約96重量%から約94重量%、約95重量%から約93重量%、約94重量%から約92重量%、約93重量%から約91重量%、約92重量%から約90重量%、約91重量%から約89重量%、約90重量%から約88重量%、約89重量%から約87重量%、約88重量%から約86重量%、約87重量%から約85重量%、約86重量%から約84重量%、約85重量%から約83重量%、約84重量%から約82重量%、約83重量%から約81重量%、約82重量%から約80重量%、約81重量%から約79重量%、約80重量%から約75重量%、約76重量%から約70重量%、約71重量%から約65重量%、約66重量%から約60重量%、約61重量%から約55重量%、約56重量%から約50重量%、約51重量%から約45重量%、約46重量%から約40重量%、約41重量%から約35重量%、約36重量%から約30重量%、約31重量%から約25重量%、および約26重量%から約20重量%の範囲であってもよい。好ましくは、本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の純度は少なくとも98重量%である。
【0061】
(a)ノスカピン生成物の収量
本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の収量は、ノスカピン生成物がノスカピンを含む量として定義され、本発明の方法に対する供給原料として用いられるアヘン供給源に含有されるノスカピンのパーセンテージとして表される。一般的に、収量とは、本発明の方法が処理の間のノスカピンの損失を最小限にしながら、アヘン供給源から不純物を除去することの効率を表す量である。ノスカピン収量が高いことは、本発明の方法を用いてアヘン供給源から最小限のノスカピンが除去されたことを示す。
【0062】
本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の収量は、アヘン供給源中のノスカピンの重量の100%から約20%の範囲であってもよい。本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物の収量は、アヘン供給源中のノスカピンの重量の100%から約98%、約99%から約97%、98%から約96%、97%から約95%、96%から約94%、95%から約93%、94%から約92%、93%から約91%、92%から約90%、91%から約89%、90%から約88%、89%から約87%、88%から約86%、87%から約85%、86%から約84%、85%から約83%、84%から約82%、83%から約81%、82%から約80%、81%から約79%、80%から約75%、76%から約70%、71%から約65%、66%から約60%、61%から約55%、56%から約50%、51%から約45%、46%から約40%、41%から約35%、36%から約30%、31%から約25%、および26%から約20%の範囲であってもよい。好ましくは、本発明の方法によってもたらされるノスカピン生成物は、アヘン供給源中のノスカピンの重量の少なくとも80%の純度を有する。
【0063】
(IX)方法の例示的な実施形態
例示的な実施形態において、本発明の方法は、セクション(II)に記載されるアヘン供給源をセクション(III)に記載される第1の溶剤に接触させて反応混合物を形成するステップを含む。この方法はさらに、反応混合物をセクション(IV)に記載される第2の溶剤に接触させることによって反応混合物からノスカピンを再結晶化させるステップを含む。セクション(VII)(a)に記載されるとおり、この方法はノスカピン結晶を濾過するステップをさらに含んでもよい。セクション(VII)(b)に記載されるとおり、この方法は濾過された結晶をリンス溶剤でリンスするステップをさらに含んでもよい。
【0064】
例示的な実施形態において、本発明の方法は、セクション(II)に記載されるアヘン供給源をセクション(V)に記載される溶剤混合物に接触させてスラリーを形成するステップを含む。セクション(VII)(a)に記載されるとおり、この方法はスラリーからノスカピン結晶を濾過するステップをさらに含んでもよい。セクション(VII)(b)に記載されるとおり、この方法は濾過された結晶をリンス溶剤でリンスするステップをさらに含んでもよい。
【0065】
ある実施形態において、セクション(II)に記載されるアヘン供給源を、約70℃の温度でアセトニトリルに接触させて、アセトニトリル1グラム当り約200mgのノスカピンの濃度にすることによって、約5よりも高いpHを含む反応混合物を形成する。次いで反応混合物をゆっくり冷却して約20℃から30℃の範囲の温度にする。次いで反応混合物を、反応混合物中のアセトニトリルの量とほぼ等しい量の水に接触させることによって、ノスカピンを再結晶化させてもよい。その結果得られたノスカピン結晶を次いで濾過し、水中の20重量%アセトニトリル溶液でリンスした後に、水で第2のリンスを行なってもよい。
【0066】
ある実施形態において、セクション(II)に記載されるアヘン供給源を、約50℃の温度でアセトンに接触させて、アセトン1グラム当り約100mgから約120mgの範囲のノスカピン濃度にすることによって反応混合物を形成する。次いで反応混合物をゆっくり冷却して約20℃から30℃の範囲の温度にする。次いで反応混合物を、反応混合物中のアセトンの量とほぼ等しい量の水に接触させることによって、ノスカピンを再結晶化させた。その結果得られた白色ノスカピン結晶を次いで濾過し、水中の20重量%アセトニトリル溶液でリンスした後に、水で第2のリンスを行なう。
【0067】
ある実施形態において、約20℃から70℃の範囲の温度において、アヘン供給源を水中の約40重量%および約60重量%アセトニトリルの混合物に接触させて、ノスカピン1グラム当り約2gから約30gの溶剤混合物を有するスラリーを形成する。その結果得られたノスカピン結晶を次いで濾過し、水中の20重量%アセトニトリル溶液でリンスした後に、水で第2のリンスを行なってもよい。
【0068】
この方法のその他の例示的な反復を本明細書および実施例において説明する。
【0069】
定義
本明細書において用いられる「収量(yield)」という用語は、本発明の方法によってもたらされる精製ノスカピンの量を示し、アヘン供給源に含有されるノスカピンのパーセンテージとして表される。
【0070】
本明細書において用いられる「純度」という用語は、本発明の方法によってもたらされる最終生成物がノスカピンを含む割合を示し、総最終生成物の重量パーセントとして表される。
【0071】
本明細書において用いられる「ケシ殻」という用語は、収穫後のケシ、Papaver somniferumからの茎とさく果との混合物を示す。
【0072】
本発明の範囲から逸脱することなく上記の方法にさまざまな変更を加えることができるため、上記の説明および以下に与えられる実施例に含まれるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきであって限定する意味に解釈されるべきではないことが意図される。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、本発明のさまざまな実施形態を示すものである。
【0074】
(実施例1)
ノスカピンpKaの決定。
【0075】
酸溶液に溶解した後にノスカピンおよびさまざまな不純物が沈殿するときのpHを定めるために、以下の実験を行なった。純粋なノスカピンを水に加え、その混合物に塩酸の37重量%溶液を加えて混合物のpHを約2まで下げた。混合物のpHをモニタしながら0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を徐々に加えることによって、滴定曲線を得た。この実験の結果をまとめた滴定曲線を図5に示す。
【0076】
第2の実験において、等量のノスカピン、モルヒネおよびオリパビンを水と混合し、前述のとおり塩酸を加えることによって混合物のpHを約2まで上げた。前述のとおり、混合物のpHを測定しながら水酸化ナトリウムを加えることによって、滴定曲線を得た。図6は、この実験の結果をまとめた滴定曲線を示す。
【0077】
第3の実験は、ノスカピンを、水中でモルヒネ(84.01重量%)、オリパビン(4.39重量%)、コデイン(0.15重量%)、およびテバイン(0.59重量%)を含有する濃縮ケシ殻と混合した。塩酸を加えて溶液のpHを約2に調整し、前述のとおり、混合物のpHを測定しながら水酸化ナトリウム溶液を徐々に加えることによって、滴定曲線を得た。その結果得られた滴定曲線を図7に示す。
【0078】
この実験の結果から、ノスカピン含有材料を酸性溶液に溶解し、次いで混合物のpHを少し上げることによって、ノスカピンをその他の不純物から分離し得ることが示された。図6に示される滴定曲線は、ノスカピンがpH4.5から5.5で酸性溶液から沈殿し、モルヒネおよびオリパビンはpH7.0から8.5でともに溶液から沈殿することを示した。図5および図7はさらに、ノスカピンが溶液から沈殿するときのpHは、混合物中のその他の溶解混入物の存在に対する感受性を有さないことを示した。
【0079】
(実施例2)
CPS不純物の分析。
【0080】
酸性のプロセス条件によってもたらされるノスカピン生成物において観察される赤色およびピンク色の不純物の組成を定めるために、以下の実験を行なった。最初に、pH13にて抽出された黄色のノスカピンの部分をpH1.3にて酸処理し、45〜55℃に加熱した。30分間の間に抽出物は徐々に赤くなった。
【0081】
52.5重量%のノスカピン、13.3重量%のテバイン、2.0重量%のパパベリン、0.062重量%のコデイン、および0.391重量%のクリプトピンを含有する濃縮ケシ殻(Concentrated poppy straw:CPS)を得た。CPSは黄褐色の流動性の乾燥粉末であった。
【0082】
CPSからノスカピンを抽出し、抽出物を強酸で処理してpH2にして、50℃にて30分間加熱することによって、赤色イミニウム塩溶液を形成した。各抽出物(酸処理の前と後との両方)のサンプルにUV走査を行なって、赤色体を同定するための理想的な波長を決定した。どちらの溶液のUV走査も280〜285nmにおいてピーク波長を示した。
【0083】
Waters HPLCを用いて2波長走行を行なって、クロマトグラフ上でパパベルビンおよび赤色イミニウム塩を特徴付けした。クロマトグラフの試験によって、9個の未知の不純物ピークが明らかになった。UV走査によって定められたクロマトグラフのピークのうち少なくとも8個はおそらくパパベルビンであり、クロマトグラフのピークのうち少なくとも4個はおそらく赤色イミニウム塩であると考えられた。
【0084】
この実験の結果によって、ノスカピンを精製する元となったCPS中に、少なくとも8つのパパベルビンと考えられる混入物が同定された。この実験の結果はさらに、抽出法の多くにおいて形成された赤色体は、酸性(すなわち約2よりも低いpH)条件に曝されたときに1つまたはそれ以上のパパベルビン混入物から形成されたイミニウム塩である可能性が高いことを定めた。すべてのステップが2より十分に高いpHにて起こるノスカピン精製法は、赤色イミニウム塩混入物の形成を防ぐだろう。
【0085】
(実施例3)
中性pHの選択された溶剤におけるノスカピン溶解度の調査。
【0086】
中性pHのさまざまな異なる溶剤におけるノスカピンの溶解度を定めるために、以下の実験を行なった。ノスカピン溶解度は、周囲温度(22℃〜23℃)および50℃にて、ノスカピンを溶解し、以下の溶剤に対する飽和の前に溶解した量を記録することによって定められた:アセトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ペンタノール、トルエン、および水。この実験で測定された溶解度を表1にまとめている。
【0087】
【表1】

【0088】
ノスカピンはさまざまな溶剤において広範囲の溶解度を有し、その範囲はクロロホルムにおける高溶解性から水におけるほぼ不溶性までにわたる。さらに、アセトンおよびアセトニトリルにおけるノスカピンの溶解度は23℃から50℃への温度上昇に対して比較的感受性が高かったのに対し、トルエンにおけるノスカピンの溶解度は溶剤温度の同等の変化に対して比較的感受性が低かった。
【0089】
重量比でほぼ1:1の比率で混合された以下の溶剤混合物に対しても、室温にてノスカピン溶解度を定めた:アセトン:水、アセトニトリル:水、クロロホルム:エタノール、トルエン:エタノール。上述の方法と同様の方法を用いて溶解度を決定し、測定された溶解度を表2にまとめている。
【0090】
【表2】

【0091】
ノスカピンの溶解度が最も高かった4つの溶剤におけるノスカピンの溶解度は、ノスカピンの溶解度が最も低かった2つの溶剤の一方を加えることによって一様に低くなった。表1および表2を比べると、アセトンおよび水に等量の水を加えることによって、溶剤におけるノスカピンの溶解度がそれぞれ約95%および約98%低くなった。
【0092】
この実験の結果は、さまざまな純粋な溶剤および溶剤混合物におけるノスカピンの溶解度を特徴付けた。異なる溶剤および混合物における広範囲の溶解度を利用して、たとえばアセトンまたはアセトニトリルなどの溶剤の1つに粗ノスカピンを溶解し、次いで水などの他の溶剤の1つを加えることによって再結晶化させるという抽出技術を開発してもよい。
【0093】
(実施例4)
アセトニトリルへの溶解後の水による結晶化を用いた、濃縮ケシ殻の精製。
【0094】
粗ノスカピン供給源から不純物を除去することについてのアセトニトリル溶解/水結晶化法の方法の有効性を定めるために、以下の実験を行なった。実施例2に記載されるものと同様の濃縮ケシ殻(CPS)を得た。50℃の温度にてCPSを純アセトニトリルに溶解し、アセトニトリル1グラム当り136mgのノスカピンの濃度にした。混合物にフィルタ補助を加えてから混合物を濾過した。濾液を室温に冷却した後、アセトニトリルの量とほぼ等しい量の水を混合物に加えてノスカピンを再結晶化した。ノスカピン結晶が形成されて、バイアルの底にて回収された。沈殿物は黄褐色であり、母液は暗褐色であった。
【0095】
この実験の結果から、アセトニトリル抽出に続く水再結晶化は、この実験で用いられたCPSに対する実行可能なノスカピン精製法であり得ることが示された。
【0096】
(実施例5)
アセトンへの溶解後の水による結晶化を用いた、濃縮ケシ殻の精製。
【0097】
粗ノスカピン供給源から不純物を除去することについてのアセトン溶解/水結晶化法の方法の有効性を定めるために、以下の実験を行なった。実施例2に記載されるものと同様の濃縮ケシ殻(CPS)を得た。50℃の温度にてCPSを純アセトンに溶解し、アセトン1グラム当り132mgのノスカピンの濃度にした。混合物にフィルタ補助を加えてから混合物を濾過した。濾液を室温に冷却した後、アセトンの量とほぼ等しい量の水を混合物に加えてノスカピンを再結晶化した。ノスカピン結晶が形成されて、バイアルの底にて回収された。沈殿物は黄褐色であり、母液は暗褐色であった。
【0098】
加えて、同じ方法を用いてCPSのより大きなバッチを処理した。CPSを50℃にてアセトニトリルに溶解して、アセトニトリル1グラム当りほぼ150mgのノスカピンの濃度にした。混合物を50℃に維持しながら、アセトニトリルの量とほぼ等しい質量の水を混合物にゆっくり加えた。混合物を室温まで徐々に冷却し、次いで混合物を氷浴に入れた。その結果得られたノスカピン結晶は淡黄褐色であり、その収量はCPS中の元のノスカピンの86%であり、純度は92%であった。
【0099】
この実験の結果から、アセトン抽出に続く水再結晶化は、この実験で用いられたCPSに対する実行可能なノスカピン精製法であり得ることが示された。
【0100】
(実施例6)
アセトンへの溶解後の水による結晶化を用いた、濃縮ケシ殻の精製。
【0101】
粗ノスカピン供給源から不純物を除去することについてのアセトン溶解/水結晶化法の方法の有効性を定めるために、以下の実験を行なった。実施例2に記載されるものと同様の濃縮ケシ殻(CPS)を得た。50℃の温度にてCPSを純アセトンに溶解し、アセトン1グラム当り132mgのノスカピンの濃度にした。混合物にフィルタ補助を加えてから混合物を濾過した。濾液を室温に冷却した後、アセトンの量とほぼ等しい量の水を混合物に加えてノスカピンを再結晶化した。ノスカピン結晶が形成されて、バイアルの底にて回収された。沈殿物は黄褐色であり、母液は暗褐色であった。
【0102】
この実験の結果から、アセトン抽出に続く水再結晶化は、この実験で用いられたCPSに対する実行可能なノスカピン精製法であり得ることが示された。
【0103】
(実施例7)
温度およびアセトニトリル濃度の変化に対するアセトニトリル/水系のノスカピンの溶解度の感受性。
【0104】
アセトニトリル/水系のノスカピンの溶解度を特徴付けるために、以下の実験を行なった。アセトニトリル濃度が0重量%、20重量%、40重量%、60重量%、80重量%、および100重量%であるアセトニトリルおよび水の混合物において、0℃、22℃、50℃、および70℃にてノスカピン溶解度を定めた。溶解度測定の結果を表3にまとめ、かつ図8のグラフにまとめている。
【0105】
【表3】

【0106】
ノスカピン溶解度は、溶剤温度およびアセトニトリル濃度の変化に対する感受性が高かった。アセトニトリル/水混合物中のノスカピンの溶解度は、約50%以上のアセトニトリル濃度において0℃から70℃の間で最大10倍に増加した。さらに、アセトニトリル/水溶剤中のノスカピンの溶解度の感受性は、温度が高くなるほどかなり高くなった。純アセトニトリル中のノスカピン溶解度の、純水中のノスカピン溶解度に対する比率は、0℃の溶剤温度では約78であった。これと同じ比率が、70℃の溶剤温度では約647という値に増加した。
【0107】
この実験の結果から、約40重量%より高いアセトニトリル濃度に対しては、アセトニトリル/水溶剤中のノスカピンの溶解度は温度およびアセトニトリル濃度の両方に感受性を有することが示された。
【0108】
(実施例8)
ノスカピンの精製に対するアセトニトリル濃度および洗浄体積の影響。
【0109】
アセトニトリル濃度および洗浄体積を変えることがCPSからのノスカピンの精製に与える影響を評価するために、以下の実験を行なった。97.94%のノスカピン、0.34%のパパベリン、0.03%のクリプトピン、および0.38%のテバインを含有する高ノスカピン濃縮ケシ殻(CPS)を得た。アセトニトリル濃度が20重量%から50重量%の範囲であるアセトニトリル/HO溶液によって高ノスカピンCPSのサンプルをスラリー洗浄した。洗浄比率は、ノスカピン1グラム当り洗浄溶剤8.25グラムから24.75に変動された。テストされたすべての条件に対して、スラリー洗浄後のノスカピンの純度を図9にまとめている。スラリー洗浄前の元のノスカピン含有量のパーセントとしてのノスカピン収量を図10にまとめている。ノスカピン生成物のパーセント質量としてのナルコトリン不純物の濃度を図11にまとめている。
【0110】
図10に示されるとおり、ノスカピンの精製は、より高いアセトニトリル濃度、およびより高い溶剤対ノスカピンの洗浄比率によって改善された。図10に示されるとおり、約80%から95%の範囲であったノスカピン収量もまた、高いアセトニトリル濃度および高い溶剤対ノスカピンの洗浄比率の条件下で最も低かった。この実験の結果は、スラリー洗浄法で用いられるアセトニトリル濃度および洗浄比率に関する収量と純度との間の明らかなトレードオフを示した。図11に示されるとおり、ノスカピン生成物中のナルコトリン不純物の濃度は、高いアセトニトリル濃度および高い溶剤対ノスカピンの洗浄比率の条件下で最も低かった。
【0111】
この実験の結果は、アセトニトリル/HO溶液によるCPSのスラリー洗浄の際の、アセトニトリル濃度および溶剤対ノスカピンの洗浄比率の変化に対する純度、収量および不純物濃度の感受性を特徴付けた。この実験結果は、ノスカピン生成物の収量および純度の間のトレードオフを強調した。ナルコトリン不純物を最も効果的に低減したのは、純度は最高だが収量が最低のノスカピン生成物をもたらした条件と同様の条件だった。
【0112】
(実施例9)
pH13でのアセトニトリル/水洗浄を用いた濃縮ケシ殻の精製
ノスカピン精製のアセトニトリル/水洗浄法の有効性に対するpHの影響を評価するために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されたCPSを、アセトニトリルの濃度が50重量%であって、かつ50%水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpHを13の値に調整したアセトニトリル/水溶剤で、15分間スラリー洗浄した。
【0113】
その結果得られたノスカピンは、CPSに含有されるノスカピンのほぼ85%の収量を有し、これはpHを調整しなかった実施例8の方法を用いたノスカピン収量よりもわずかに低かった。さらに、結果として得られたノスカピンの純度は、実施例8の方法を用いて生成されたノスカピンの純度に匹敵するものであった。
【0114】
この実験の結果から、アセトニトリル/水洗浄のpHを13の値に調整することによって、pH未調整のアセトニトリル/水洗浄によってもたらされるノスカピンに比べて収量がわずかに減少し、ノスカピン純度に対する影響は無視できることが示された。
【0115】
(実施例10)
50℃におけるアセトニトリル/水洗浄を用いた濃縮ケシ殻の精製
ノスカピン精製のアセトニトリル/水洗浄法の有効性に対する温度の影響を評価するために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されたCPSを、アセトニトリルの濃度が50重量%であるアセトニトリル/水溶剤で、50℃にて15分間スラリー洗浄した。次いで混合物を室温までゆっくり冷却した。
【0116】
その結果得られたノスカピンは、CPSに含有されるノスカピンのほぼ87%の収量を有し、これは室温での実施例8の方法を用いたノスカピン収量よりもわずかに低かった。さらに、結果として得られたノスカピンの純度は、室温で実施例8の方法を用いて生成されたノスカピンの純度に匹敵するものであった。
【0117】
この実験の結果から、アセトニトリル/水洗浄を50℃にて行なってから混合物を室温まで冷却することによって、精製の間中室温のアセトニトリル/水洗浄によってもたらされるノスカピンに比べて、収量がわずかに減少し、ノスカピン純度に対する影響は無視できることが示された。
【0118】
(実施例11)
アセトン/水洗浄を用いた濃縮ケシ殻の精製
ノスカピン精製のアセトン/水洗浄法の有効性を評価するために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されたCPSを、アセトニトリルの濃度が約20重量%から約50重量%の範囲であるアセトン/水溶剤でスラリー洗浄した。スラリー洗浄の洗浄比率をノスカピン1グラム当り洗浄溶剤8.25gから24.75gまで変動させ、50℃の温度にて15分間行なった。次いで混合物を室温まで冷却した。
【0119】
アセトン/水洗浄法を用いた精製は、最高アセトン濃度および最高の溶剤対ノスカピン洗浄比率のときに最も効果的であった(結果は示さず)。93%から100%の範囲であったノスカピン収量も、これと同じ条件下で最低であった(結果は示さず)。実施例8に記載されたアセトニトリル/水洗浄法と同様に、ノスカピン収量を最大にする精製条件と、最高純度のノスカピンをもたらす条件との間にトレードオフが存在した。
【0120】
この実験の結果から、アセトン/水洗浄法はノスカピン精製の有効な方法であることが示された。実施例10に記載されたアセトニトリル/水洗浄法に比べて、アセトン/水洗浄法は色およびその他の不純物の両方の除去に対する効果が低かったが、より高い収量をもたらした。
【0121】
(実施例12)
50℃におけるアセトン/水洗浄を用いた濃縮ケシ殻の精製
ノスカピン精製のアセトン/水洗浄法の有効性に対する温度の影響を評価するために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されたCPSを、アセトンの濃度が50重量%であるアセトン/水溶剤で、50℃の温度にて15分間スラリー洗浄した。次いで混合物を室温までゆっくり冷却した。
【0122】
その結果得られたノスカピンは、CPSに含有されるノスカピンのほぼ95%の収量を有し、これは室温での実施例11の方法を用いたノスカピン収量よりもわずかに低かった。さらに、結果として得られたノスカピンの純度は、室温にて実施例11の方法を用いて生成されたノスカピンよりもわずかに高かった。
【0123】
この実験の結果から、アセトン/水洗浄を50℃にて行なってから混合物を室温まで冷却することによって、実施例11に記載された精製の間中室温のアセトン/水洗浄によってもたらされるノスカピンに比べて、収量がわずかに減少し、ノスカピン純度がわずかに高くなることが示された。この実験の方法は、ナルコトリン不純物の除去においてもわずかに有効性が高かった。この実験において、ナルコトリン不純物は約0.15%の濃度に低減された。
【0124】
(実施例13)
アセトニトリルへの溶解後の水による結晶化を用いた、濃縮ケシ殻の精製。
【0125】
粗ノスカピン供給源から不純物を除去することについてのアセトン溶解/水結晶化法の方法の有効性を定めるために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されるものと同様の濃縮ケシ殻(CPS)を得た。50℃の温度にてCPSを純アセトニトリルに溶解し、アセトニトリル1グラム当り116mgのノスカピンの濃度にした。濾液を室温までゆっくり冷却した後、アセトニトリルの量とほぼ等しい量の水を混合物に加えてノスカピンを再結晶化した。その結果得られたノスカピン結晶を濾過して、30%イソプロピルアルコール溶液でリンスした。
【0126】
この実験によってもたらされたノスカピン生成物は白色に近く、ほぼ100%純粋であった。この実験のプロセスの全収量は約87%であり、ナルコトリン不純物は約0.05%の最終濃度にまで低減された。
【0127】
この実験の結果から、アセトニトリル抽出に続く水再結晶化は、この実験で用いられたCPSに対する有効なノスカピン精製法であることが示された。
【0128】
(実施例14)
アセトンへの溶解後の水による結晶化を用いた、濃縮ケシ殻の精製。
【0129】
粗ノスカピン供給源から不純物を除去することについてのアセトン溶解/水結晶化法の方法の有効性を定めるために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されるものと同様の濃縮ケシ殻(CPS)を得た。50℃の温度にてCPSを純アセトンに溶解し、アセトン1グラム当り116mgのノスカピンの濃度にした。濾液を室温までゆっくり冷却した後、アセトンの量とほぼ等しい量の水を混合物に加えてノスカピンを再結晶化した。その結果得られたノスカピン結晶を濾過して、30%イソプロピルアルコール溶液でリンスした。
【0130】
この実験によってもたらされたノスカピン生成物は白色に近く、ほぼ100%純粋であった。この実験のプロセスの全収量は約95%であり、ナルコトリン不純物は約0.06%の最終濃度にまで低減された。
【0131】
この実験の結果から、アセトン抽出に続く水再結晶化は、この実験で用いられたCPSに対する有効なノスカピン精製法であることが示された。
【0132】
(実施例15)
ノスカピン精製法の有効性の評価
粗ノスカピン供給源から不純物を除去することについてのさまざまな精製法の有効性を評価するために、以下の実験を行なった。実施例8に記載されるものと同様の濃縮ケシ殻(CPS)を得た。実施例2に記載されるHPLC法を用いて未処理CPSの不純物を分析した。アセトニトリル/水洗浄(実施例10)、アセトニトリル溶解/水再結晶化(実施例13)、およびアセトン溶解/水再結晶化(実施例14)によるCPSの処理によってもたらされるノスカピン中の不純物のレベルを評価するために、HPLCも用いた。HPLC測定の結果を表4および表5にまとめている。
【0133】
【表4】

【0134】
【表5】

【0135】
実施例8に記載されたCPSにおいては、実施例2において前に同定された9個の重要と考えられる未知の不純物ピークのうち7個しか検出されなかった。さまざまな精製法による処理の前後のCPSにおける、これら7つの検出された不純物の量を表4に挙げている。精製法の各組み合わせに対して、各々の未知の不純物の全体的な低減を、未処理CPSに見出された元の量のパーセンテージとして表5に挙げている。
【0136】
精製実験において、後にナルコトリンであることが定められる未知の不純物#5は、全体的な不純物除去を評価するために最も重要な不純物であることが見出された(データは示さず)。表5に示されるとおり、未知の不純物#5除去の除去に対する最も有効な方法は、溶剤溶解および水における再結晶化であり、これは溶剤としてアセトニトリルまたはアセトンのいずれかを用いて、それぞれ91%および89%の除去をもたらした。
【0137】
この実験の結果は、実施例8に記載されたCPSから抽出されたノスカピンから未知の不純物を除去することについてのさまざまな精製法の有効性を定めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピンを分離する方法であって、前記方法は、
(a)前記アヘン供給源を、ノスカピンの溶解を実質的にもたらす第1の溶剤に接触させて、約5よりも高いpHを含む反応混合物を形成するステップと、
(b)前記反応混合物を、前記不純物の溶解度を実質的に変えることなく前記反応混合物中の前記ノスカピンの溶解度を低くして前記ノスカピンを再結晶化させる第2の溶剤に接触させることによって、前記不純物の不可逆的な色変化をもたらさない様式で前記ノスカピンを前記不純物から分離するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の溶剤は、アセトニトリル、アセトン、ベンゼン、ブタノール、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルケトン、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロメタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、フルオロベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルメチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸ペンチル、酢酸n−プロピル、テトラヒドロフラン、トルエン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、そして、前記第2の溶剤は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ペンタノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)における前記反応混合物中の前記ノスカピンの濃度は、前記第1の溶剤におけるノスカピンの溶解度限界の約10%から約90%の範囲であり、前記反応混合物に接触させられる前記第2の溶剤の量は、前記第2の溶剤に接触する前の前記反応混合物の溶解度の少なくとも約10%以下だけ前記反応混合物中の前記ノスカピンの溶解度を低くするために十分な量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法のステップ(a)は約50℃から前記第1の溶剤の沸点までの範囲の温度で行なわれ、ステップ(b)は約20℃からステップ(b)の前記組み合わされた第1の溶剤および第2の溶剤の共晶温度までの範囲の温度で行なわれる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の溶剤は前記第1の溶剤と混和性である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
約5未満のpHに曝されると不可逆的な色変化を起こす少なくとも1つの不純物を含むアヘン供給源から、ノスカピンを分離する方法であって、前記方法は、
(a)前記アヘン供給源を、アセトン、アセトニトリル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される第1の溶剤に接触させて、約5よりも高いpHを有する反応混合物を形成するステップと、
(b)前記反応混合物を水に接触させて前記ノスカピンを再結晶化させることによって、前記ノスカピンを前記不純物から分離するステップと
を含む、方法。
【請求項7】
前記方法のステップ(a)は約40℃から約60℃の範囲の温度で行なわれ、ステップ(b)は約0℃から約25℃の間の温度で行なわれ、ステップ(a)における前記反応混合物中のノスカピンの濃度は約10重量%から約20重量%の範囲であり、そして、ステップ(b)において前記反応混合物に加えられる水の量は、前記反応混合物中の前記第1の溶剤の体積と本質的に等しい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
(a)結晶化された前記ノスカピンを濾過するステップと、
(b)濾過された前記ノスカピンの生成物をリンス溶剤でリンスするステップと
をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記リンス溶剤は、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ペンタノール、アセトニトリル、アセトン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される第2のリンス溶剤との混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記不純物は、パパベルビン、グラウジン、エピグラウジン、オレオジン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記パパベルビンは、パパベルビンA、パパベルビンB、パパベルビンC、パパベルビンD、パパベルビンE、パパベルビンF、パパベルビンG、エピパパベルビンG、パパベルビンH、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アヘン供給源は、モルヒネ、オリパビン、パパベリン、テバイン、コデイン、コデイン、クリプトピン、ノスカピン類似体、ナルコトリン、ノルノスカピン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのその他の不純物を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アヘン供給源は、ケシ殻、濃縮ケシ殻、アヘン、粗ノスカピン、および粗ナルコチンからなる群より選択される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ノスカピンの結晶は、前記アヘン供給源からの分離の前後に黄褐色のままである、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ノスカピンの結晶は純度が少なくとも98重量%のノスカピンを含み、ノスカピン結晶は前記アヘン供給源に対する収量が少なくとも80重量%のノスカピンを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−504123(P2012−504123A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529031(P2011−529031)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/005373
【国際公開番号】WO2010/039218
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(595181003)マリンクロッド エルエルシー (203)
【Fターム(参考)】