説明

粗粒ダストの脱水処理方法

【課題】粗粒ダストの含水率を、広大なスペースを用いることなく、従来よりも短時間に目標値まで低減でき、粗粒ダスト中の金属鉄の酸化を抑制して、経済的に再利用できる粗粒ダストの脱水処理方法を提供する。
【解決手段】転炉11で発生し、湿式の粗粒分離機13で分離した金属鉄を含む粗粒ダストの脱水処理方法において、水分が付着した粗粒ダストを脱水ホッパー14に供給して通風乾燥し、粗粒ダストの含水率を10質量%以下に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉で発生した粗粒ダストを脱水し乾燥させ、転炉等で再利用するための粗粒ダストの脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転炉で発生するダストは、図5に示すように、集塵装置(以下、OGともいう)によって捕捉され、大量の集塵水と共にトラフ(水路)を通って粗粒分離機に送られ、細粒ダスト(例えば、粒径:40μm未満)と粗粒ダストに分離されている。
分離された細粒ダストは、シックナーで凝集沈殿させた後、フィルタープレスで脱水処理し、含水率が約28質量%のケーキにして後工程に送られ、更に処理がなされ、リサイクルして有効に使用されている。
一方、粗粒ダストは、含まれる全鉄中の金属鉄(M−Fe)の割合が高く、かつ粒子の大きさが細粒ダストに比べて大きいため、乾燥後、そのまま転炉に戻し、鉄源として有効に使われている。
【0003】
粗粒ダストを転炉へ戻すリサイクル方法としては、一般に、スクラップシュートに粗粒ダストを積み込み、スクラップと同時に転炉に装入する方法がとられている。
しかし、粗粒分離機から排出された粗粒ダストは、含水率が15質量%程度と高く、水蒸気爆発や溶銑装入時の火炎の問題から、転炉にそのまま装入することができなかった(通常、転炉に装入される粗粒ダストの含水率は10質量%以下に規制)。
そこで、粗粒分離機から排出された粗粒ダストは、約5日間の自然養生(天日による乾燥)を行って脱水乾燥がなされ、含水率を10質量%以下に低減した後、溶銑装入前にスクラップシュートで転炉中に装入されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−113126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粗粒ダストを自然養生する場合、以下のような問題があった。
自然養生を行うヤードと転炉間の輸送費や、粗粒ダストの積上げ積下ろしの作業費が必要であった。また、自然養生を行うための広いスペース(土地)を確保する必要があった。更に、水分が付着した粗粒ダストを乾燥すると、一部粉塵となり飛散するため、環境に悪影響を与える恐れがあった。
また、粗粒ダストは、平均粒径が0.1mm(100μm)程度と細かく、表面積も大きいため、自然養生の際に、粗粒ダスト中の金属鉄が空気中の酸素と反応し易く、一部が酸化されて酸化鉄になっていた。このため、粗粒ダストを転炉へ装入する際に、酸化された鉄分を還元するための新たな熱源が必要となって、製造コストの上昇を招いていた。更に、酸化鉄の増分が、溶銑装入時の火炎発生を助長していた。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、粗粒ダストの含水率を、広大なスペースを用いることなく、従来よりも短時間に目標値まで低減でき、粗粒ダスト中の金属鉄の酸化を抑制して、経済的に再利用できる粗粒ダストの脱水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る粗粒ダストの脱水処理方法は、転炉で発生し、湿式の粗粒分離機で分離した金属鉄を含む粗粒ダストの脱水処理方法において、
水分が付着した前記粗粒ダストを脱水ホッパーに供給して通風乾燥し、該粗粒ダストの含水率を10質量%以下に低減する。
【0008】
本発明に係る粗粒ダストの脱水処理方法において、前記脱水ホッパーの下側には、通風部材が取付けられ、前記脱水ホッパー内の前記粗粒ダストに付着した水分を、前記通風部材を介して吸引手段により吸引除去することが好ましい。
本発明に係る粗粒ダストの脱水処理方法において、前記脱水ホッパーは上部が開放していることが好ましい。
【0009】
本発明に係る粗粒ダストの脱水処理方法において、前記通風部材は、前記脱水ホッパーの下部側壁に取付けられ、前記脱水ホッパーの側壁であって、前記通風部材とは対向する位置で、しかも該通風部材の取付け位置より上方に、外部の空気を前記脱水ホッパーの内部へ流すための空気導入口が設けられていてもよい。なお、脱水ホッパーの上部が開放であっても、粗粒ダストで目詰まりする場合もあり、中間部に空気導入口があれば、脱水を更に促進できる。
本発明に係る粗粒ダストの脱水処理方法において、前記脱水ホッパーは複数あって、該各脱水ホッパーに前記水分が付着した粗粒ダストを供給して該各脱水ホッパーの上側開口部を閉じることを順次行い、該各脱水ホッパーごとに前記粗粒ダストの水分除去を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る粗粒ダストの脱水処理方法は、水分が付着した粗粒ダストを脱水ホッパーに供給して通風乾燥するので、従来のように、自然養生を行って脱水し乾燥させる必要がない。これにより、自然養生を行うヤードと転炉間の輸送費や、粗粒ダストの積上げ積下ろしの作業費、更には、自然養生を行うための広いスペース(土地)が不要となる。しかも、粗粒ダストを乾燥した際の粉塵の飛散を防止できるため、環境負荷も低減できる。
また、自然養生と比較して、短時間に水分除去ができるので、粗粒ダスト中に含まれる金属鉄の酸化を抑制できる。このため、酸化された金属鉄を還元するための熱が不要となり、粗粒ダストの再利用を経済的に実施できる。また、酸化鉄の増分による溶銑装入時の火炎発生を抑制できる。
【0011】
また、脱水ホッパーの下側に通風部材を取付け、粗粒ダストに付着した水分を、通風部材を介して吸引手段により吸引除去する場合は、水分が重力により下方へ落下しようとする力と、吸引手段による吸引力により、粗粒ダストに付着した水分を、短時間に効率的に除去できる。
そして、通風部材を脱水ホッパーの下部側壁に取付け、外部の空気を脱水ホッパーの内部へ流すための空気導入口を、通風部材と対向する位置で、しかもその取付け位置より上方の脱水ホッパーの側壁に設ける場合は、粗粒ダストの落下方向と交差する方向に空気の流れを形成でき、粗粒ダストに付着した水分の除去効率を、更に高めることができる。
【0012】
更に、脱水ホッパーが複数あり、この各脱水ホッパーに粗粒ダストを供給して各脱水ホッパーの上側開口部を閉じることを順次行い、各脱水ホッパーごとに粗粒ダストの水分除去を行う場合は、粗粒分離機で分離した粗粒ダストを、複数の脱水ホッパーへ順次供給できるので、粗粒ダストの脱水ホッパーへの供給を停止する必要がない。また、粗粒ダストの水分除去は、脱水ホッパーの上側開口部を閉じて行うので、空気の流れを、粗粒ダストの落下方向と交差する方向のみにでき、粗粒ダストの脱水効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る粗粒ダストの脱水処理方法の説明図である。
【図2】粗粒ダストの脱水特性を調べるための試験装置の説明図である。
【図3】各試験ごとの粗粒ダストの含水率を示した結果の説明図である。
【図4】試験結果に基づき作製した試験装置の説明図である。
【図5】従来例に係る粗粒ダストの脱水処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係る粗粒ダストの脱水処理方法を適用する脱水処理設備について説明した後、本発明の一実施の形態に係る粗粒ダストの脱水処理方法について説明する。
図1に示すように、脱水処理設備10は、転炉11で発生したダストを回収する集塵装置12と、この集塵装置12で回収されたダストを、粒径が40μmアンダーの細粒ダストと粗粒ダストに分離する湿式の粗粒分離機13と、この粗粒ダストに付着した水分を除去する脱水ホッパー14を有している。
【0015】
集塵装置12は、転炉11の炉上に設置された非燃焼方式の廃ガス回収装置(図示しない)を経て回収する従来公知の湿式の集塵装置である。この集塵装置12で回収されたダストは、大量の集塵水と共にトラフ(図示しない)を通って湿式の粗粒分離機13へ送られる。
湿式の粗粒分離機13は、逆円錐台状の分離槽15を備える。
分離槽15の上端部には、集塵水と共にダストが供給される流入口が設けられている。
これにより、流入口を介して分離槽15内へ供給されたダストは、浮遊した状態を維持する細粒ダストと、分離槽15の底部に沈降する粗粒ダストとに分離される。
【0016】
分離槽15の下端部には、分離槽15の底部に沈降した粗粒ダストを搬送するスクリューコンベア16(搬送手段)が設けられている。なお、粗粒ダストを搬送できれば、スクリューコンベアに限定されるものではない。
これにより、粗粒ダストを脱水ホッパー14へ搬送できる。
脱水ホッパー14は、上部が開放した円筒状又は角筒状で、下部が下方へ向かって縮幅した形状(漏斗状)となっている。なお、脱水ホッパー14の内径(最大内幅)は、例えば、1〜5m程度であり、高さは、例えば、内径の1〜5倍程度であるが、仕様に応じて適宜変更できる。
この脱水ホッパー14の上端位置には、粗粒ダストを供するための上側開口部17が設けられ、下端位置には、脱水ホッパー14の開閉を可能とするダンパー18が設けられている。
【0017】
また、脱水ホッパー14の下部側壁には、通風部材19が取付けられている。なお、通風部材19の取付け位置は、脱水ホッパー14の下端位置から、脱水ホッパー14の高さの30%以下(好ましくは、20%以下、更には15%以下)の範囲内である。また、通風部材19は、脱水ホッパー14の下部側壁に1箇所取付けられているが、脱水ホッパー14の周方向に複数箇所取付けてもよく、また脱水ホッパー14の周方向全体に渡って、同一ピッチ、又は異なるピッチで取付けてもよい。また、通風部材は、脱水ホッパーの形状によっては、底部に取付けることもできる。
この通風部材19は、濾布と金属製の網とで構成され、これが、脱水ホッパー14の下部側壁に形成された通風口20に取付けられている。なお、通風部材は、粗粒ダストが漏れ出すことなく、脱水ホッパー内から水分を吸引除去できる構成であれば、これに限定されるものではない。
【0018】
通風部材19には、脱水ホッパー14内の空気を、通風部材19を介して吸引する真空ポンプ(吸引手段の一例)21のダクト22が接続されている。この真空ポンプ21の能力は、通風部材19での吸引圧力が、例えば、0.1〜1MPa程度となるものであればよいが、仕様に応じて適宜変更できる。
なお、脱水ホッパー14の外部から内部へ入り、通風部材19側へ流れる空気を、脱水ホッパー14の高さ方向と交差するように流すには、通風部材19とは対向する位置で、しかも通風部材19の取付け位置より上方(例えば、脱水ホッパー14の高さ方向中央部)の脱水ホッパー14の側壁に、空気導入口23を設けることが好ましい。なお、空気導入口23には、金属製の網が取付けられ、粗粒ダストが外部へ漏れ出さないような構成となっている。
【0019】
ここで、脱水ホッパー14の構成を、上記した構成とした経過について説明する。
粗粒ダストは、細粒ダストに比べ、粒径が大きく脱水がし易い。そこで、粗粒ダストの脱水特性を調査するため、以下の試験1〜3を行った。
試験1は、直径:100mm、長さ:1mのアクリルの円筒管に、水分が付着した粗粒ダストを充填し、これを2時間放置した後に、粗粒ダストの含水率を測定した。なお、この試験1に使用した円筒管は、図2に示す底部が閉じた状態のものである。
試験2は、図2に示すように、底部に排水膜(濾布)を取付けた円筒管を使用し、上記試験1と同様、粗粒ダストを充填した円筒管を2時間放置した後に、粗粒ダストの含水率を測定した。
試験3は、図2に示す底部に排水膜(濾布)を取付けた円筒管に、水分が付着した粗粒ダストを充填し、円筒管の上部から、0.1〜0.2MPa(1〜2kg/cm)の圧力の空気を圧入しながら、2時間放置した後に、粗粒ダストの含水率を測定した。
【0020】
以上に示した試験1〜3の粗粒ダストの含水率の結果を、図3に示す。なお、図3は、縦軸に粗粒ダストの含水率を、横軸に円筒管の底位置からの高さを、それぞれとっている。ここで、粗粒ダストの含水率とは、粗粒ダスト(粗粒ダスト+水)の総重量に対する蒸発した水の質量を意味する。
図3に示すように、粗粒ダストに付着した水分は、時間の経過に伴って自然に沈降するため、充填した粗粒ダストの上部(高さ:900mm)位置の含水率がかなり低下する。一方、下部(高さ:100mm)位置には、粒子間の付着水や毛細管現象によると考えられる水等があるため、含水率が上部位置に比べかなり高いことが分かった。
また、試験3から、下部の水を強制的に排水することによって、排除可能なことも分かった。
【0021】
そこで、上記した各種試験に基づき、図4に示す脱水ホッパー24で試験を行った。
この脱水ホッパー24は、下部を除く部分が円筒状となって、下部が、下方へ向かって縮幅した容器25を有し、その下部側壁の対向位置に濾布26を取付け、この濾布26を介して真空ポンプ27で、容器25内の水分を強制的に排水する機能を有している。なお、容器25の下端位置から上端位置までの高さは1200mm、内径は100mmである。
この容器25内に、水分が付着した粗粒ダスト28を充填し、濾布26を介して容器25内の水分を真空ポンプ27で強制的に排水する試験を行ったところ、試験3と同様、粗粒ダストの含水率が、平均で目標となる10質量%以下になることが確認された。
この結果に基づき、前記した脱水ホッパー14を想到するに至った。
【0022】
続いて、本発明の一実施の形態に係る粗粒ダストの脱水処理方法について、図1を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る粗粒ダストの脱水処理方法は、転炉11で発生し、湿式の粗粒分離機13で分離した金属鉄を含む粗粒ダストの脱水処理方法であり、水分が付着した粗粒ダストを脱水ホッパー14に供給して通風乾燥し、粗粒ダストの含水率を10質量%以下に低減する方法である。なお、粗粒ダストの含水率の下限値は、特に規定していないが、現実的には5質量%、更には7質量%程度である。また、粗粒ダストの含水率とは、粗粒ダスト(粗粒ダスト+水)の総重量に対する蒸発した水の質量の割合である。以下、詳しく説明する。
【0023】
まず、転炉11で発生したダストを、前記した廃ガス回収装置を経て集塵装置12で回収した後、大量の集塵水と共に湿式の粗粒分離機13へ送る。
粗粒分離機13の分離槽15内へ、流入口を介して供給されたダストは、浮遊した状態を維持する細粒ダストと、分離槽15の底部に沈降する粗粒ダストとに分離される。
これにより、分離された細粒ダストは、粗粒分離機13の分離槽15からオーバーフローして、種々の処理がなされ、リサイクルされる。
一方、分離槽15の底部に沈降した粗粒ダストは、分離槽15の底部から排出され、スクリューコンベア16によって脱水ホッパー14へ搬送される。
【0024】
分離された粗粒ダストは、全鉄(T−Fe)中の金属鉄(M−Fe)が70質量%(更には80質量%)以上であり、粗粒ダストの全体量の80質量%(更には90質量%)以上の粒径が、40μm以上500μm以下の範囲内のものである。この全鉄中の金属鉄の割合の上限値については、特に規定していないが、現実的には、95質量%以下程度である。
なお、この粗粒ダストの含水率は、例えば、15〜20質量%程度である。
脱水ホッパー14は、上端部が開口しており、粗粒ダストを、脱水ホッパー14の上方から供給する。この間、真空ポンプ21を連続運転させることで、脱水ホッパー14の下部へ流れ落ちる水分を、脱水ホッパー14の外部へ強制的に吸引除去して、粗粒ダストを脱水できる。
【0025】
そして、脱水ホッパー14内へ供給される粗粒ダスト量が満杯になれば、ダンパー18を開放し、脱水させた粗粒ダストをトラック29(運搬車)上に搬出して、次工程に搬送する。なお、真空ポンプ21は、脱水ホッパー14から脱水させた粗粒ダストを排出し終わるまで、連続的に運転するのが好ましいが、停止してもよい。
ここで、脱水させた粗粒ダストの一部を、脱水ホッパー14内に残存させた状態で、ダンパー18を閉じる場合は、スクリューコンベア16を停止することなく、脱水ホッパー14へ粗粒ダストを連続的に供給できる。
【0026】
一方、脱水した粗粒ダストの全部を、脱水ホッパー14から排出する場合は、粗粒ダストが、分離槽15から連続的に排出されるのであれば、脱水ホッパー14のダンパー18が開状態の間、スクリューコンベア16を停止して、脱水ホッパー14への粗粒ダストの供給を停止する必要がある。しかし、粗粒ダストが、分離槽15から間欠的に排出されるのであれば、スクリューコンベア16から脱水ホッパー14へ粗粒ダストが供給されない時期を、脱水ホッパー14のダンパー18の閉状態の時期に合わせることで、スクリューコンベア16を連続運転できる。
【0027】
この操作を繰返し、水分が付着した粗粒ダストを、スクリューコンベア16で脱水ホッパー14へ供給しながら、粗粒ダストの脱水処理を行う。
このとき、前記した試験結果から、脱水ホッパー14が満杯になるまでの時間を、2時間以上確保できるように、例えば、脱水ホッパー14の大きさを適宜設定したり、またスクリューコンベア16の搬送速度を調整することが好ましい。これにより、粗粒ダストの搬出時の平均含水率を、10質量%以下にできる(試験を行ったところ、例えば、8質量%程度に低減できた)。
【0028】
なお、脱水ホッパーは、2以上の複数台設置してもよい。
この場合、1つの脱水ホッパーが、スクリューコンベアから搬送される粗粒ダストで満杯になれば、次の他の脱水ホッパーへ、粗粒ダストを順次供給することで、脱水ホッパーへの粗粒ダストの供給を、連続的にできる。そして、粗粒ダストで満杯になった脱水ホッパーは、満杯になるごとに、脱水ホッパーの上側開口部を蓋で閉じる操作を順次行うことにより、真空ポンプで吸引される空気の流れを制御でき、更なる含水率の低下が図れる。
なお、真空ポンプは、脱水ホッパーへの粗粒ダストの供給開始(開始の直前でもよい)と共に、運転を開始し、少なくとも脱水ホッパーから脱水させた粗粒ダストを排出し終わるまでは、連続運転する。
【0029】
脱水ホッパー14から排出された粗粒ダストを積載したトラック29は、粗粒ダストをスクラップヤードまで搬送して降ろす。そして、この粗粒ダストを、天井クレーン30によってスクラップシュート31に積み込み、スクラップと同時に転炉11に装入する。
以上のように、本発明の粗粒ダストの脱水処理方法を用いることで、粗粒ダストの含水率を、広大なスペースを用いることなく、従来よりも短時間に目標値まで低減でき、粗粒ダスト中の金属鉄の酸化を抑制して、経済的に再利用できる。なお、脱水ホッパー14内を流れる空気の代わりに、不活性ガス(例えば、窒素ガス、炭酸ガス)を使用することで、全鉄中の金属鉄の割合を、更に高めることができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
脱水ホッパー14へ供給される粗粒ダストとして、含水率が15〜18質量%のものを使用し、脱水ホッパー14からの粗粒ダストの排出間隔(ダンパー18を開状態とする間隔)を4時間に設定した。
その結果、脱水ホッパー14から排出された粗粒ダストの含水率を、8〜10質量%に低減できた。このとき、粗粒ダストに含まれる全鉄中の金属鉄が85質量%であった。
一方、従来のように、約5日間、自然養生(天日による乾燥)して含水率を10質量%以下にした粗粒ダストは、全鉄中の金属鉄が80質量%であった。
従って、本願発明を適用することで、粗粒ダストの含水率を、広大なスペースを用いることなく、従来よりも短時間に目標値まで低減でき、粗粒ダスト中の金属鉄の酸化を抑制して、経済的に再利用できることを確認できた。
【0031】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の粗粒ダストの脱水処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、理解を容易にするため、具体的数字を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲で各数値を変更しても、本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
10:脱水処理設備、11:転炉、12:集塵装置、13:粗粒分離機、14:脱水ホッパー、15:分離槽、16:スクリューコンベア、17:上側開口部、18:ダンパー、19:通風部材、20:通風口、21:真空ポンプ(吸引手段)、22:ダクト、23:空気導入口、24:脱水ホッパー、25:容器、26:濾布、27:真空ポンプ、28:粗粒ダスト、29:トラック、30:天井クレーン、31:スクラップシュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉で発生し、湿式の粗粒分離機で分離した金属鉄を含む粗粒ダストの脱水処理方法において、
水分が付着した前記粗粒ダストを脱水ホッパーに供給して通風乾燥し、該粗粒ダストの含水率を10質量%以下に低減することを特徴とする粗粒ダストの脱水処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の粗粒ダストの脱水処理方法において、前記脱水ホッパーの下側には、通風部材が取付けられ、前記脱水ホッパー内の前記粗粒ダストに付着した水分を、前記通風部材を介して吸引手段により吸引除去することを特徴とする粗粒ダストの脱水処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の粗粒ダストの脱水処理方法において、前記脱水ホッパーは上部が開放していることを特徴とする粗粒ダストの脱水処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の粗粒ダストの脱水処理方法において、前記通風部材は、前記脱水ホッパーの下部側壁に取付けられ、前記脱水ホッパーの側壁であって、前記通風部材とは対向する位置で、しかも該通風部材の取付け位置より上方に、外部の空気を前記脱水ホッパーの内部へ流すための空気導入口が設けられていることを特徴とする粗粒ダストの脱水処理方法。
【請求項5】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の粗粒ダストの脱水処理方法において、前記脱水ホッパーは複数あって、該各脱水ホッパーに前記水分が付着した粗粒ダストを供給して該各脱水ホッパーの上側開口部を閉じることを順次行い、該各脱水ホッパーごとに前記粗粒ダストの水分除去を行うことを特徴とする粗粒ダストの脱水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−284582(P2010−284582A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139468(P2009−139468)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000233734)株式会社アステック入江 (25)
【Fターム(参考)】