説明

粗耕起作業機

【課題】
水田等をサブソイラタイプの作業機を用いて浅く粗耕起する場合、従来のサブソイラタイプの作業機では浅く粗耕起することができなかった。また、通常のロータリ作業に用いられているトラクタは水田作業に用いられることを考慮し軽量に作られているため牽引力に乏しく、車幅と同じ幅の作業機を牽引することができなかった。
【解決手段】
本発明では牽引力不足で作業できない場合、犂体相部に耕起残し部が発生するように配置したことで、耕起部分をまたいで全体を粗耕起できるようにした。
また、トラクタの踏圧によって硬くなった部分に犂体を配置することで、効率的に粗耕起できるようにし、かつ均一な耕深を保つ作業性を良好にすることができるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圃場において収穫後の秋起こし等で、切り株や雑草を一度下から持ち上げてほぐしながら耕す、粗耕起作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粗耕起(あらこうき)とは粗起こしともいい、作物栽培に必要な土壌の耕耘(こううん)整地における第一段階の耕起のことである。一般には秋起こしといわれている秋の作物収穫後の冬前に行う耕起をさすことが多い。
【0003】
粗耕起の目的は、土壌をこぶし大程度の土塊にし、圃場全体を膨軟にし乾燥させることである。粗耕起によって土塊間の空隙が大きくできるため透排水性が向上し、土壌深部まで空気が入り有機物の分解を早めることができ、次回収穫時の養分を増加することができる。更に雑草が実をつけないうちに耕起することで、雑草種子を減少させることができる。また、土壌の深い部分を反転させて乾燥させる役目をする。
【0004】
一般に行われている図12のようなロータリ耕耘では粗耕起ができない。また、代掻き時のロータリ耕耘の深さは、図10における作土層102の上半分の深さでありその下の練り層103は耕耘されない。通常ロータリ耕耘は代掻き等の仕上げの時に使用されるもので、土壌が細かくなりすぎて透排水性が改善されず、気相の増加も十分とはいえないので、腐植の促進の面では図9のようなサブソイラタイプの作業機を用いた粗耕起が望ましい。
【0005】
従来の粗耕起作業機としては、特許文献1に記載されている粗耕起作業機が実用化されている。この方法は主に畑作用に用いられており、図9のように犂体40を30センチメートル以上深く地中に差し込み、トラクタ等の牽引車両(以下トラクタと言う)の最大牽引力を利用してできる限り深い地中から膨軟にし、透排水性を向上させ、更に気相を増加させようとするものである。
【0006】
我国においてのトラクタは水田作業を中心に作られているため、軽量で馬力の小さいものがおおい。圃場においては、少しでも深く粗耕起しようとすれば牽引抵抗は増大し作業できなくなってしまう。特に水が張られた水田においてはトラクタのタイヤがスリップして、牽引力も低下してしまう。そのため犂体本数を減らしたり、小さ目のウイングを採用して耕起幅をトラクタ外幅より小さくするとどのように耕起してもタイヤ踏み後が残ってしまう。
【0007】
牽引タイプの粗耕起作業機を使用して、非力なトラクタで圃場内を全面耕起するためにはトラクタのタイヤ外幅より大きい耕起幅で粗耕起しないと、タイヤ跡が残ってしまうので浅く耕起せざるをえない。とくに畑作においては非力なトラクタを使っても深く全面耕起することが望まれていた。
【0008】
しかしながら、水田でこのような作業を行うと、水がたまりにくくなる上に、水を入れた時に地中深くまで軟らかくなってしまう。その結果トラクタはスタックしてしまうし、田植え機も沈み込んでしまって作業できなくなってしまう。そこで図10のような一定耕起深さの維持できるサブソイラタイプの作業機が用いられている。
【0009】
一般的な水が抜かれた時の水田の断面は図10のように、表層部が作土層102になっており作土層102の下半分は練り層103になっている。練り層103の下には踏圧によって作られた硬盤層104が有りその下は心土層105になっている。練り層103はトラクタの踏圧やタイヤの練り返し、過度の代かきや雑草対策のためのロータリ耕による犂床の練りつぶし等が原因で作られた、一般に青味がかったねずみ色をしている層である。
練り層103は粘土のようになっており水が浸透しない為、酸素供給不足にさせ、作物に発育不良を発生させている。また、硬く堆積しているので根の伸長を阻害している。
【0010】
そこで特許文献2~特許文献4に開示されているような粗度耕起が提案されている。これらの方法は図10のように、犂体のついたサブソイラタイプの耕起部後方に籠ローラー61を取り付けることによって、地表面を走行する籠ローラー61を支点にして、犂体が一定深さ以上に地中にもぐらないようにしている。これによって、犂体40の犂床(チゼル31の通過深さ)を一定にさせ硬盤層104の上部を削り取るように掘り起こして、粗く反転し練り層103の作土を風と太陽熱で乾かし、ち密度を下げて透水性を改善し、根圏域を拡大しようとするものである。
また、反転時に稲藁などの有機物を空気と一緒にすき込み微生物によって腐植分解を促進し、作物の根が吸収しやすい状態にするものである。
【0011】
この方法の場合殆んどは安定して粗耕起できるが、籠ローラーが大きな土塊に乗り上げてしまう場合がある。例えば粘土質の含有量の多い土壌では、トラクタに踏圧された土や、切り株周辺の土が固まったまま犂体のビームの間をすり抜けてしまうことが有り、このような大きな土塊に籠ローラー61が乗り上げてしまうと、図11のように一部の犂体が持ち上げられ、トラクタと作業機の犂体に角度θのねじれが発生し、片方の犂体の耕起深さが浅くなり、全体としての一定深さが保てなくなると言うことがあった。
【特許文献1】特願平8-162435
【特許文献2】特願2002-156677
【特許文献3】特願2002-156678
【特許文献4】特願2002-156679
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
水田における粗耕起の目的は、練り層103を耕起反転して乾かし、膨軟にすることにあるから、耕起残し部なく圃場全体を均一に耕起しなくてはならない。そのためビームに左右に伸びたウイングが取り付けられている。ウイングによって、土壌が水平に切断され耕起される。この作用によって圃場全体を隙間なく通過すれば、稲の切り株の根を切断し、練り層103を全て耕起することができる。
【0013】
しかし水田で多く使用されているトラクタは図12のようなロータリ耕耘に多用されている。ロータリ耕耘の場合は矢印の方向にロータが回転するのでトラクタはロータによって前方に押されるため、小型のトラクタでも低速度で耕耘作業することができる。しかしこのトラクタの牽引力で本発明のように耕起するには、牽引力不足になってしまうことが多かった。通常のロータリ作業に用いられているトラクタは水田作業に用いられることを考慮し高馬力だが軽量に作られているため牽引力に乏しく、車幅と同じ幅の作業機を牽引することができないことがあった。
【0014】
少しでも深く粗耕起しようとすれば牽引抵抗は増大し作業できなくなってしまう。特に水が張られた水田においてはトラクタのタイヤがスリップして、牽引力も低下してしまう。そのため犂体本数を減らしたり、小さ目のウイングを採用して耕起幅をトラクタ外幅より小さくするとどうしてもタイヤ踏み後が残ってしまう。
非力なトラクタだとしても全面耕起するためにはトラクタのタイヤ外幅より大きい耕起幅で粗耕起しないと、タイヤ跡が残ってしまうので浅く耕起せざるをえないこともある。特に畑作業では非力なトラクタでも深く全面耕起することが望まれていた。
【0015】
また、粗耕起作業はできるだけトラクタのタイヤが踏んだ部分を膨軟にすることが望まれている。
土の硬さは水田の状態によって異なるものである。粗耕起作業機の通過後は、耕起残し部がないように特許文献2~特許文献4のような犂体配置の作業機で作業することが望ましいが、牽引力不足になった場合、作業を諦めなければならなかった。
最小限1本の犂体を牽引して粗耕起作業することも可能であるが、1本の犂体ではどうしても牽引車両の踏みしめた跡が残ってしまうことになり、好ましくなかった。

【0016】
また、図9のような作業機のビーム下端部に、左右に水平に伸びたウイングをつけ、トラクタ1のロアリンク8で浅く一定高さに保持して粗耕起作業することも可能であるが、少しでもトラクタが前かがみになると後方の作業機は大きく跳ね上がってしまい、後かがみになると後方の作業機は深く潜ってしまうので一定深さで高速作業することができなかった。
【0017】
そこで特許文献2~特許文献4に記載されているような籠ローラー61を支点として作業機に取り付けロアリンク8をフリーにしておくことで犂体深さを一定に保ち練り層103を平坦に耕起できるようにした。この構造により水田の練り層103を耕起残し部なく膨軟にすることができるようになった。
【0018】
しかし稀にトラクタに踏圧された土や稲の切り株周辺の土が固まったまま、大きな土塊となって犂体のビーム間をすり抜けてしまうことがあり、このような大きな土塊に籠ローラー61の一部が乗り上げてしまうと、図11のように一部の犂体が持ち上げられ角度θが生じ耕起深さが浅くなり一定深さが保てないことがあった。
【0019】
また、粗耕起作業ではトラクタ等の牽引車両に踏圧された部分が特に固くなり作物の育成を妨げることになるので、踏圧部分が残らないように全体を均一に耕起することが望ましい。土壌が異なると作物育成の均一化を損なうことになってしまう。大きな圃場で均一な作物育成を損なうことは除草剤や収穫のタイミングをそれぞれに応じて変えねばならず、品質が安定せず、原価を上昇させる要因になってしまう。


【課題を解決するための手段】
【0020】
以上のような課題に対して本発明は、作業機のフレームに取り付けられたビームと該ビームに取付けられた左右に伸びたウイングとからなる複数の第一犂体とを備え、前記複数の第一犂体全幅が、牽引車両のタイヤ外幅もしくは履帯外幅より大きく、かつ前記複数の第一犂体の耕起部間には少なくとも1箇所耕起残し部が作られるよう前記フレームに第一犂体を配置することを特徴とする粗耕起作業機である。
【0021】
また本発明は、前記耕起残し部の幅は、前記耕起部の幅より小さく作られるように前記第一の犂体が前記フレームに配置されていることを特徴とする請求項1記載の粗耕起作業機である。
そして前記耕起残し部が耕起される位置であって、前記第一犂体の前方に配置された第二犂体を備えたことを特徴とする請求項1記載の粗耕起作業機である。
【0022】
更に本発明は、牽引車両に牽引される作業機であって、該作業機のフレームに一対のゲージホイルと、該ゲージホイルの後方に取り付けられたビームとからなる複数の犂体を備え、少なくとも前記牽引車両の後輪もしくは履帯の左右の踏み跡の位置上に前記ゲージホイルと前記ビームとが直列に位置するように配置したことを特徴とする粗耕起作業機である。
【0023】
そして本発明は、牽引車両に牽引される作業機であって、該作業機のフレームに一対のゲージホイルと、該ゲージホイルの後方に取り付けられたビームとからなる複数の犂体を備え、少なくとも前記ゲージホイルの取り付け部と前記ビームの取り付け部とが前記フレームに相接して取付けられるようにしたことで前記牽引車両の後輪もしくは履帯踏み跡上に前記ゲージホイルと前記ビームを直列に配置したことを特徴とする粗耕起作業機である。

【発明の効果】
【0024】
本発明のように少なくとも2本の犂体40を中央に耕起残し部が発生するように配置して作業すると、多少時間がかかっても耕起残し部無く、車輪による踏み跡も残さず仕上げることができる。トラクタの車輪の位置を考慮して耕起残し部を設定することにより、耕起した部分をまたぐように作業すれば、牽引力不足であっても圃場全面を耕起残し部なく、踏み跡も無く粗耕起することができる。
【0025】
本発明では牽引車両の踏みしめた跡を耕起する一対の犂体を配置したものを最小限とした。しかも一対の犂体間には、あえて耕起残し部が発生するようにし、最初に耕起した部分をまたいで耕起残し部に車輪を通過させて全面耕起できるようにした。これにより牽引力不足であっても、踏み跡が無いように耕起し、小型トラクタで多少時間がかかっても圃場全体を耕起残し部が無いように粗耕起できるようになった。
【0026】
耕起残し部を敢えて作るように犂体を配置したのは、一度ウイングが通過してしまうとその部分が膨軟になりトラクタの片方の車輪が膨軟部に乗り上げるとトラクタが傾いて走行してしまうからである。本発明ではこの点も解決することができた。
【0027】
また本発明は一対のゲージホイルを犂体の前方に配置することで、ゲージホイルは耕起されビームの間をくぐりぬけたおおきな土塊の影響を受け耕起深さが変化することがなくなった。しかし犂体前方には稲の切り株等があり、これにゲージホイルが乗り上げるたびに耕起深さが変化する。そこで本発明のゲージホイルは牽引車両の車輪及び履帯の踏み跡部を通過するように配置した。
【0028】
重量のある牽引車両が踏みしめた跡は、稲の切り株などはつぶされ平坦になっておりゲージホイルの上下動をなくすことができた。図3のようにゲージホイルはトラクタの後輪タイヤ踏み跡幅a内におさまる範囲に配置される為、トラクタに踏圧されほぼ均平になった部分を通過するので、収穫物の切り株の影響や地表面の凹凸に左右されることが少ない。その結果粗耕起深さは更に一定に保つことができるようになった。
【0029】
更に牽引車両の踏みしめた跡部は、硬くなり水はけが悪く一番乾燥しにくい場所である為に、本発明はこの部分に重点的に犂体を配置し効果的に耕起することができるようにした。トラクタの後輪タイヤの踏み跡幅a内に犂体が配備されるため、踏圧により硬くなった土壌を効果的に粗耕起することができる。また、トラクタオペレータは後輪タイヤの位置が、犂体の通過する位置であることがわかるので、畦際や耕起残し部を容易に耕起することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明はウイングのついた犂体相部間に、あえて耕起残し部が発生するように配置し、一度耕起した部分をまたいで耕起残し部に牽引車両の車輪や犂体を通過させれば全面耕起できるようにした。
そのために第一犂体全幅である耕起幅が、トラクタのタイヤ外幅より広く、第一犂体全幅の中間部に耕起残し部が作られるように配置し、この耕起残し部の幅は第一犂体の片側の耕起幅より小さくした。
【0031】
また本発明は犂体40の前方にゲージホイル22を配置しかつトラクタの後輪5の踏み跡幅a内に収まるようにしたので、ゲージホイル22はトラクタの後輪5の踏圧した部分を走行することになり、切り株や土塊などの影響を受けにくくなり、安定した一定深さで耕起反転することができる。
【0032】
更に犂体40本体(ウイング34及びモールド35を除く部分)も後輪5の踏み跡幅a内に収まるようにしたので、一番踏圧された硬い部分を効果的に膨軟にし耕起反転することができるものである。

【実施例1】
【0033】
本発明の実施例を図1図2図3図4に基いて説明する。トラクタ1の後部には油圧で上下する2本のロアリンク8と1本のトップリンク9が有り、作業機のマスト10にはトップリンク9が、フレーム11にはロアリンク8が、それぞれピンによって連結されトラクタ1によって牽引される。
道路走行時や図8における枕地でのターンT時には、ロアリンク8を油圧によって高々と差し上げることによって、作業を中断して移動できるようになっている。
【0034】
フレーム11にはマスト10と角フレーム12が固着されている。角フレーム12にはゲージホイルブラケット13とビームブラケット14が角フレーム12を両側から挟み込むようにくの字型に形成されておりボルト15で締結固定されている。この構造によりトラクタ1の大きさが変化してもボルト15を弛めて角フレーム12上を左右に移動してゲージホイルブラケット13とビームブラケット14を後輪5の踏み跡幅a内に収まるように調整して、固定できるようになっている。
【0035】
ゲージホイルブラケット13先端部には、ゲージホイルプレート20がボルト21によって前後、上下に移動できるようにして固定されており、ゲージホイルプレート20の下端部にゲージホイル22が取り付けられている。
ゲージホイル22は、その名のとおり深さを設定する車輪である。ゲージホイル22の位置が上に上がると犂体は深く刺さり込む構造になっている。ゲージホイル22がトラクタの車輪5との距離が近い場合は後ろに下げることができる様に取り付け穴が複数あけられている。
【0036】
ビームブラケット14の後端部にはビーム30が取り付けられており、ビーム30下端部にはチゼル31、ビーム30中間部には撥土板32が取り付けられ、撥土板32中央近傍に突出するようにナイフ33が取り付けられている。
これにより最初にチゼル31によって掘削された土が撥土板32上を滑り、ナイフ33によって左右に分断され砕土しながら地表面に放擲される構造になっている。
【0037】
ビーム30下端部のチゼル31後部にはウイング34が若干前方に傾斜した状態でビーム30の左右に取り付けられている。ウイング34の後方には、ウイング34によって水平に切断された土を上昇させ耕起反転させるようにモールド35が取り付けられている。
ウイング34は、例えばプラウのシェアのように、土を切断し上昇させる。牽引速度が速ければ土壌は跳ね上げられ砕土され膨軟になる。また土壌の一部がモールドボード35によって反転される際、土の粘性によって他の土も追従して反転する。
【0038】
しかし図3のように作業機の中央部分のウイング34の相互間には耕起残し部bが発生する。この部分は耕起されていないので硬いまま残っており、後で後輪5が踏んでも沈下することが無く、トラクタは水平に保たれる。
【0039】
犂体全体の耕起幅Xは、左右片側の犂体耕起幅cと耕起残し部bを足したものでありX=b+2cである。そして犂体全体の耕起幅Xはトラクタのタイヤ外幅Yより大きいものであり、X>Yである。
なおトラクタのタイヤ外幅Yは、左右の踏み後幅aとトラクタのタイヤ内幅Zを足したものでありY=Z+2aである。
更に片側の犂体の耕起幅cは耕起残し部の幅bより大きいものでありc>bである。
【0040】
また、モールド35は全て作業機内側に土が反転するようにねじれのある湾曲形状になっている。耕起した土が作業機幅より外に出さないためにこのような構造をしているものであるが、この構造により多少の土塊が中央近傍の耕起残し部b部分に落下しても、後輪5によって踏圧され平坦になるのでゲージホイル22の上下動を抑えることができる。
もちろんモールド35はそれぞれに反転方向を変更することができるものであり、左右片側の犂体耕起幅c内に反転させ、耕起残し部bに土塊がいかないようにすることもできる。
【0041】
次に図5、図6に基いて説明する。図1~図4の粗耕起作業機はあえて耕起残し部bを生ずるように犂体が配置されているが、牽引車両に牽引力が充分にあるようなら、第一犂体である犂体40の1及び犂体40の2の前方に第二犂体である犂体40の3を備え、犂体40の3のウイングが犂体40の1及び犂体40の2のウイングと重なるように配置することによって、耕起残し部bが発生しないようにすることができる。
【0042】
この方法は従来の作業機と同様で作業機幅いっぱいに耕起残し部無く作業できるので容易ではあるが、圃場の硬さはその時によりまちまちである。圃場の一部が牽引できたとしても湿り具合によって土壌が重くなり途中で牽引できなくなることはよく発生する。本発明であればそのときは犂体本数を減らしても全面耕起することができる。
【0043】
本件では、余力がある場合は3本の犂体40の1〜3として作業し、余力の無い場合は2本の犂体40の1〜2を用いて、時間がかかっても耕起部をまたいで耕起残し部b部を作業するようにしたものである。犂体40が偶数の時は、耕起残し部bを作り耕起部をまたいで作業するようにし、犂体40が奇数の時は全面耕起するように配置することで無限大に耕起幅を増加させることができる。
【0044】
また、図3のようにトラクタの後輪5の踏み跡幅a内にゲージホイル22とチゼル31を含むビーム30が有り、後輪5とゲージホイル22とビーム30は踏み跡幅(タイヤ幅)a内でほぼ一直線上に並ぶようにゲージホイルブラケット13とビームブラケット14を位置決めし粗耕起作業する。
【0045】
このことにより、トラクタの後輪5の踏み後幅aの上をゲージホイル22が追従するので、トラクタの踏圧により平坦になった部分を走行することになり、ゲージホイル22が上下動することがない。その結果チゼル31が上下動しないので犂床が安定し平坦になり均一な作土層を作ることができる。
【0046】
更にトラクタの後輪5の踏み跡幅a部をビーム30に取り付けられたチゼル31が掘削するので、硬くなった部分を重点的に耕起反転することができる。チゼル31はウイング34よりも若干深く耕起するようになっており、撥土板32とナイフ33が上部についていて練り層103の土壌を砕土しながら地表まで上昇させて放擲する構造になっているので、練り層103が踏圧によって硬くなってしまうことを防止することができる。
【0047】
以上のように構成された、作業機をトラクタ1によって牽引する場合を説明する。作業機はロアリンク8とトップリンク9によって牽引される。道路走行時や枕地でのターン時には、ロアリンク8を油圧によって高々と差し上げることによって、作業を中断して移動できるようになっている。
通常作業時のロアリンク8はフリーになっており、ゲージホイル22がなくても牽引されることによってトップリンク9の長さと、作業機のフレーム形状に応じた位置にとどまるようになっている。しかし水田などで必要以上に深くならないように耕起する場合はゲージホイルが必要である。
【0048】
図2のように、ゲージホイル22から測定して作土層102を耕起する深さにウィング34を設定し耕起作業する。このとき後輪5が沈み込むようであれば、ゲージホイル22とウイング34の高低差を調整して、水田が深くなりすぎないようにする。
【0049】
作業時は、トラクタ1のロアリンク8を一番下まで下げて、ゲージホイル22によってウイング34の深さが決定されるようにして作業する。通常トラクタのロアリンク8は作業機を持ち上げる力はあるが、下に押し付ける力は無い。作業機は自らのサクションと自重で地中に刺さり込みゲージホイル22によってウイング34の位置が一定深さに保たれる。
【0050】
畑等で深く粗耕起したい場合は、ゲージホイルを外して作業する。ロアリンク8は作業機を浮かせる力が発生しないように、一番下の位置に下降させておくと、牽引時の引っ張り力がロアリンク左右2本に加わり角度はトップリンクの長さ調整で安定する。この状態で圃場内を牽引すると、一定深さのウイングが通過したあとはすべて耕起され、切り株の根も切断され良好な粗耕起状態になる。
【0051】
図1~図4の作業機を牽引して粗耕起すると、図3のように耕起残し部bを生じる。図8において最初に実線の矢印の白いトラクタMのように耕起すると、ちょうど実線の矢印の位置に耕起残し部bが発生する。
【0052】
次に実線の矢印の位置をトラクタの後輪が通過するような軌跡で、点線の矢印の黒いトラクタNのように耕起すると、耕起残し部b部を全て耕起することができる。白いトラクタMの作業時に耕起残し部を敢えて作ったことにより、耕起残し部b部は膨軟になっておらず、トラクタの走行しやすい硬い地表面の状態のまま残っており、その周りは耕起された状態になっているので運転者はレール上を走行するように案内されやすい。
図8では圃場の片側から順次作業する方法を一例として記載したが、圃場外周から中心に向って渦巻状に進行し、次に中心部から耕起残し部bを伝って外側に渦巻状に進行する事で全面耕起することも可能である。
【0053】
また、黒いトラクタNの作業時は車輪が走行する耕起残し部bの上に、先に耕起したときの周りの土がこぼれていたり、かぶさっていたりしても、トラクタの車輪5が踏圧するので、踏み跡幅内aは比較的平坦になっており、ゲージホイル20が上下せず追従するので犂体40は一定深さで安定する。つまり耕起残し部bに土塊が転がっている場合でも、トラクタで踏み潰した後をゲージホイルが通過する構造になっているので、上記のような使い方に適している。
【0054】
また、踏圧されてゲージホイルが通過した後の硬くなった部分を、犂体40が耕起することで、圃場全体を均一に粗耕起することができる。これらの作業は牽引力の不足している、小型のトラクタで作業することができる。
次に牽引力に余力がある場合は、図5及び図6のように40の3の犂体を取り付け作業機の通過面の全面を粗耕起するように作業すればよい。このときの耕起方法は図8における白いトラクタMの走行順路でよい。
【0055】
また、本発明の牽引車両は図7のように履帯6であっても良い。
【0056】
以上のような粗耕起作業機であれば、牽引力の不足しているトラクタでも全面粗耕起することができる。また、ゲージホイルが牽引車両の踏み跡を追従するので圃場の凹凸が著しくても上下動が少なく安定している。その結果一度耕起した後の耕起残し部の処理も安定して作業できる。
また、犂体40は牽引車両の踏み跡を重点的に耕起していくので、硬くなった部分をより効果的に粗耕起することができる。


【産業上の利用可能性】
【0057】
本願作業機のゲージホイル22の用途については水田で使用することが良好であるので、主に水田で利用することを述べたが、畑でも浅く耕起したい場合も利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の鳥瞰図である。
【図2】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の側面図である。
【図3】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の上面図である。
【図4】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の後面図である。
【図5】本発明の第2の実施例で3つの犂体を取り付けた作業機の鳥瞰図である。
【図6】本発明の第2の実施例で3つの犂体を取り付けた作業機の上面図である。
【図7】本発明の実施例を履帯式のトラクタに取り付けた状態の側面図である。
【図8】本発明で圃場を耕起するときの軌跡を描いた図である。
【図9】従来例で畑を深く耕起するときの側面図である。
【図10】従来の籠ローラー方式による水田の粗耕起の側面図である。
【図11】従来の籠ローラー方式による粗耕起で土塊に乗り上げた状態を示す図である。
【図12】ロータリー耕耘の側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1
トラクタ
5
後輪
6
履帯
8 ロアリンク
9
トップリンク
10
マスト
11
フレーム
12
角フレーム
13
ゲージホイルブラケット
14
ビームブラケット
15
ボルト
20
ゲージホイルプレート
21
ボルト
22
ゲージホイル
30
ビーム
31
チゼル
32
撥土板
33
ナイフ
34
ウイング
35
モールド
40
犂体
61
籠ローラー
102
作土層
103
練り層
104
硬盤層
105
心土層
T 枕地ターンの軌跡
M 白いトラクタ
N 黒いトラクタ
a 踏み後幅(タイヤ幅)
b 耕起残し部もしくは耕起残し部の幅
c 片側の犂体の耕起幅
X 犂体全幅
Y トラクタのタイヤの外幅
Z トラクタのタイヤの内幅



【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機のフレームに取り付けられたビームと該ビームに取付けられた左右に伸びたウイングとからなる複数の第一犂体とを備え、
前記複数の第一犂体全幅が、牽引車両のタイヤ外幅もしくは履帯外幅より大きく、かつ
前記複数の第一犂体の耕起部間には少なくとも1箇所耕起残し部が作られるよう前記フレームに第一犂体を配置すること
を特徴とする粗耕起作業機。

【請求項2】
前記耕起残し部の幅は、前記耕起部の幅より小さく作られるように前記第一の犂体が前記フレームに配置されていること
を特徴とする請求項1記載の粗耕起作業機。

【請求項3】
前記耕起残し部が耕起される位置であって、前記第一犂体の前方に配置された第二犂体を備えたこと
を特徴とする請求項1記載の粗耕起作業機。

【請求項4】
牽引車両に牽引される作業機であって、該作業機のフレームに一対のゲージホイルと、該ゲージホイルの後方に取り付けられたビームとからなる複数の犂体を備え、
少なくとも前記牽引車両の後輪もしくは履帯の左右の踏み跡の位置上に前記ゲージホイルと前記ビームとが直列に位置するように配置したこと
を特徴とする粗耕起作業機。

【請求項5】
牽引車両に牽引される作業機であって、該作業機のフレームに一対のゲージホイルと、該ゲージホイルの後方に取り付けられたビームとからなる複数の犂体を備え、
少なくとも前記ゲージホイルの取り付け部と前記ビームの取り付け部とが前記フレームに相接して取付けられるようにしたことで前記牽引車両の後輪もしくは履帯踏み跡上に前記ゲージホイルと前記ビームを直列に配置したこと
を特徴とする粗耕起作業機。




【図9】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−136(P2007−136A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309338(P2005−309338)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(391057937)スガノ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】