説明

粗軽油搬送システム及びこれに用いられるマグネットフィルタ

【課題】貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる粗軽油搬送システム及びこれに用いられるマグネットフィルタを提供する。
【解決手段】貯留タンク11から搬送路15に搬送された粗軽油に含まれる異物を、搬送路15に設けられた異物分離装置13により捕獲し、粗軽油とともに分岐口133から分岐路16内に排出する。そして、分岐路16内を流れる粗軽油に含まれる異物を、マグネットフィルタ14で磁力によって捕獲する。このように、搬送路15に設けられた異物分離装置13を開放して異物を除去するのではなく、異物分離装置13の分岐口133から分岐した分岐路16に設けられているマグネットフィルタ14によって、貯留タンク11から搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスの製造時に発生するコークス炉ガスの精製工程で副生する粗軽油を搬送するための粗軽油搬送システム及びこれに用いられるマグネットフィルタに関し、特に、粗軽油の搬送時に当該粗軽油中に同伴する鉄分などの異物を除去するための異物分離装置の開放を必要としない粗軽油搬送システム及びこれに用いられるマグネットフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークスの製造時にコークス炉から排出されるガス(以下、「コークス炉ガス」と呼ぶ。)には、アンモニア、硫化水素、粗軽油などの各種成分が含まれている。従来から、これらのコークス炉ガスに含まれる成分を副産物として回収する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
コークス炉ガスから回収された粗軽油は、ベンゼン、トルエン、キシレンを主成分としており、有用な化学原料となる。前記粗軽油は、貯留タンク内に一旦貯留され、必要に応じて当該貯留タンクから搬出されて、タンクローリーや船で化学原料として出荷される。しかしながら、一般的に、設備が数十年も経過するとコークス炉から貯留タンクに至る配管の内壁、貯留タンクの内壁及び出荷配管の内壁などには鉄錆が生じ、この鉄錆が貯留タンク内に堆積する。前記粗軽油を出荷する場合、前記貯留タンク内に堆積した鉄錆が粗軽油とともに貯留タンクから同伴されるのを防止するため、通常、貯留タンクから供給される粗軽油を搬送する搬送路の途中には、搬送される粗軽油に含まれる鉄錆を捕獲するための異物分離装置が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−10641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異物分離装置には、粗軽油中から捕獲された鉄錆などの異物が堆積するため、定期的に当該異物分離装置を開放し、堆積している異物を除去する作業を行う必要がある。しかしながら、粗軽油の搬送路に設けられる異物分離装置は比較的大きな装置であるため、当該異物分離装置を開放する作業は大掛かりとなり、異物の除去作業を短時間で行うことが比較的難しい。そのため、異物の除去作業中に粗軽油の有害な揮発成分の大気放散や臭気が発生し、作業者の人体や環境に対する影響も無視することができないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる粗軽油搬送システム及びこれに用いられるマグネットフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明に係る粗軽油搬送システムは、コークスの製造時に発生するコークス炉ガスの精製工程で副生する粗軽油を搬送するための粗軽油搬送システムであって、上記粗軽油を貯留する貯留タンクと、上記貯留タンク内に貯留されている上記粗軽油を外部に搬送する搬送路と、上記搬送路に設けられ、流入口から流入する上記粗軽油に含まれる異物を捕獲し、異物捕獲後の上記粗軽油を流出口から排出するとともに、捕獲した異物を上記粗軽油とともに分岐口から排出する異物分離装置と、上記異物分離装置の上記分岐口に接続された分岐路と、上記分岐路に設けられ、当該分岐路内を流れる上記粗軽油に含まれる異物を磁力によって捕獲するマグネットフィルタとを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、貯留タンクから搬送路に搬送された粗軽油に含まれる異物が、搬送路に設けられた異物分離装置により捕獲され、粗軽油とともに分岐口から分岐路内に排出される。そして、分岐路内を流れる粗軽油に含まれる異物が、マグネットフィルタで磁力によって捕獲される。このように、搬送路に設けられた異物分離装置を開放して異物を除去するのではなく、異物分離装置の分岐口から分岐した分岐路に設けられているマグネットフィルタによって、貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる。
【0009】
第2の本発明に係る粗軽油搬送システムは、上記異物分離装置が、捕獲した異物を上記粗軽油とともに自動的に上記分岐口から排出することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、異物分離装置により捕獲された異物が、粗軽油とともに自動的に分岐口から分岐路内に排出され、当該分岐路内において上記異物がマグネットフィルタにより捕獲される。すなわち、貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を自動的に分岐路へと分岐させ、マグネットフィルタにより捕獲することができるので、異物を容易に捕獲することができる。
【0011】
第3の本発明に係る粗軽油搬送システムは、上記マグネットフィルタが、上記分岐路内における上記粗軽油の流通方向に対して直交方向に延び、上記分岐路内を流れる上記粗軽油に接触して磁力により異物を捕獲することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、分岐路内における粗軽油の流通方向に対して直交方向に延びるマグネットフィルタに、分岐路内を流れる粗軽油が接触し、当該粗軽油に含まれる異物が磁力によって捕獲される。これにより、貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を簡単な構成で良好に捕獲することができる。
【0013】
第4の本発明に係る粗軽油搬送システムは、上記マグネットフィルタが、上記分岐路に対して着脱可能であることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、マグネットフィルタを分岐路から取り外すことにより、当該マグネットフィルタにより捕獲した異物を容易に除去することができる。
【0015】
第5の本発明に係る粗軽油搬送システムは、上記マグネットフィルタが、電磁石を含み、上記電磁石に対する通電を制御するための通電制御部を備えたことを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、電磁石に対する通電を行うことにより、当該電磁石から発生する磁力によって、分岐路内を流れる粗軽油から異物を捕獲することができる。また、電磁石に対する通電を所望のタイミングで停止することにより、捕獲した異物を容易に除去することができる。このように電磁石に対する通電の停止によって異物を除去するような構成の場合には、マグネットフィルタを取り外すことなく異物を除去することができるので、異物の除去作業中に粗軽油の有害な揮発成分の大気放散や臭気が発生するのを効果的に防止することができる。
【0017】
第6の本発明に係るマグネットフィルタは、コークスの製造時に発生するコークス炉ガスの精製工程で副生して貯留タンク内に貯留された粗軽油から異物を捕獲するためのマグネットフィルタであって、上記貯留タンクから上記粗軽油を外部に搬送する搬送路に対して分岐した分岐路に設けられ、当該分岐路内を流れる上記粗軽油に含まれる異物を磁力によって捕獲することを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、貯留タンクから搬送路に搬送された粗軽油に含まれる異物が、搬送路に対して分岐した分岐路内において、マグネットフィルタで磁力によって捕獲される。このように、搬送路に設けられた異物分離装置を開放して異物を除去するのではなく、搬送路から分岐した分岐路に設けられているマグネットフィルタによって、貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる。
【0019】
上記マグネットフィルタは、上記分岐路に対して着脱可能であってもよい。また、上記マグネットフィルタは、電磁石を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、搬送路から分岐した分岐路に設けられているマグネットフィルタによって、貯留タンクから搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る粗軽油搬送システムの一例を示したブロック図である。
【図2】分岐路の一部を示した斜視図であって、マグネットフィルタが取り付けられた状態を示している。
【図3】分岐路の一部を示した斜視図であって、マグネットフィルタが取り外された状態を示している。
【図4】マグネットフィルタの構成を示した斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る粗軽油搬送システムの一例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る粗軽油搬送システム1の一例を示したブロック図である。この粗軽油搬送システム1は、コークスの製造時にコークス炉2から排出されるコークス炉ガスから副産物として回収された粗軽油を搬送するためのシステムである。
【0023】
コークスは、コークス炉2で石炭が乾留されることにより生成され、CDQ(乾式消火設備)3により冷却された後、高炉4に搬入される。コークス炉2で石炭が乾留される際には、コークス炉2内でガスが発生し、当該ガスがコークス炉ガスとして回収装置5に送られる。コークス炉ガスには、アンモニア、硫化水素、粗軽油などの各種成分が含まれており、これらの成分ごとに回収装置5により副産物として回収される。このようにして回収される各成分のうち、粗軽油は、粗軽油搬送システム1に備えられた貯留タンク11内に貯留される。
【0024】
粗軽油搬送システム1には、上記貯留タンク11の他に、ポンプ12、異物分離装置13、マグネットフィルタ14、搬送路15及び分岐路16などが備えられている。搬送路15及び分岐路16は、それぞれ配管により構成されている。貯留タンク11内に貯留されている粗軽油は、必要に応じて、搬送路15を介して貯留タンク11の外部に搬送され、船などに積み込まれて出荷される。搬送路15を介して粗軽油を搬送する際には、搬送路15に設けられたポンプ12が駆動され、搬送路15における当該ポンプ12よりも下流側に設けられた異物分離装置13を通って粗軽油が搬送される。
【0025】
異物分離装置13は、搬送路15内を流れる粗軽油から異物を分離するための装置である。上記異物としては、例えば貯留タンク11の内壁やコークス炉2から貯留タンク11に至る配管の内壁などに生じた鉄錆を挙げることができる。異物分離装置13には、搬送路15内を流れる粗軽油が流入する流入口131と、異物が分離された後の粗軽油を下流側の搬送路15に排出する流出口132と、搬送路15を分岐するための分岐口133とが備えられている。流入口131、流出口132及び分岐路133には、それぞれ開閉弁(図示せず)が設けられている。
【0026】
流入口131及び流出口132が開かれるとともに分岐口133が閉じられた状態で、ポンプ12が駆動されることにより搬送路15内を粗軽油が搬送されているときには、流入口131から異物分離装置13内に流入する粗軽油に含まれる異物が、当該異物分離装置内に備えられたメッシュ状のストレーナ134により捕獲される。ストレーナ134は、例えば有底円筒状に形成されている。
【0027】
ストレーナ134により捕獲された異物は、粗軽油とともに分岐口133から排出される。具体的には、異物分離装置13の流入口131及び流出口132には、それぞれ流圧を測定するための圧力計(図示せず)が設けられており、各圧力計における測定値の圧力差が一定値以上になった場合、すなわち流出口132における流圧が流入口131における流圧よりも上記一定値以上小さくなった場合に、所定量以上の異物が捕獲されたと判断され、その捕獲された異物が自動的に分岐口133から排出されるようになっている。このとき、流入口131及び分岐口133が開かれるとともに流出口132が閉じられた状態で、流入口131から異物分離装置13内に粗軽油が供給されるとともに、ストレーナ134に付着している異物が、流入する粗軽油の圧力又は別途設けられたブラシ等によってストレーナ134から分離されることにより、異物を含む粗軽油が分岐口133に接続された分岐路16に排出される。
【0028】
このように、異物分離装置13により捕獲された異物を定期的に異物分離装置13から排出することにより、ストレーナ134の目詰まりを防止し、効率よく粗軽油を搬送することができる。ただし、異物分離装置13が捕獲した異物を分岐口133から排出する動作は、上記のように流入口131及び流出口132に備えられた圧力計による測定値の圧力差に基づいて行われるような構成に限らず、流入口131又は流出口132のいずれか一方の圧力に基づいて行われるような構成や、圧力以外の測定値に基づいて行われるような構成、所定時間ごとに定期的に行われるような構成などであってもよい。また、異物分離装置13が、捕獲した異物を分岐口133から自動的に排出するような構成に限らず、作業者の操作に基づいて排出するような構成であってもよい。
【0029】
分岐路16は、貯留タンク11へと連通しており、その途中で脱水処理などが施されるようになっている。当該分岐路16は、その内径が搬送路15の内径よりも小さく、例えば搬送路15の内径の1/3〜1/10程度の内径からなる。分岐路16の途中には、磁石を備えたマグネットフィルタ14が設けられている。このマグネットフィルタ14は、異物分離装置13より分岐して分岐路16内を流れる粗軽油から、鉄錆などの異物を磁力によって捕獲する。本実施形態では、マグネットフィルタ14が、分岐路16に対して着脱可能に構成されている。
【0030】
図2は、分岐路16の一部を示した斜視図であって、マグネットフィルタ14が取り付けられた状態を示している。図3は、分岐路16の一部を示した斜視図であって、マグネットフィルタ14が取り外された状態を示している。図4は、マグネットフィルタ14の構成を示した斜視図である。
【0031】
分岐路16は配管161により形成されており、当該配管161の外周面には円形の開口部162が形成されている。当該開口部162の内径は、例えば100mm〜200mmである。マグネットフィルタ14は、分岐路16内における粗軽油の流通方向Aに対して直交方向Bにスライドさせるようにして、開口部162に対して着脱することができる。開口部162には、その周縁部に沿って環状のパッキン163が設けられている。
【0032】
マグネットフィルタ14は、それぞれ棒状に形成された複数本の捕獲部141と、これらの捕獲部141を保持する保持部142と、保持部142に設けられた把持部143とが一体的に形成されることにより構成されている。各捕獲部141は、互いに所定間隔を隔てて平行に延びるように保持部142に固定されており、それぞれに磁石が備えられている。保持部142は、開口部162よりも大きい円板状に形成され、その一方の面に上記複数本の捕獲部141が固定されるとともに、他方の面に略U字状の把持部143の両端部が固定されている。
【0033】
配管161にマグネットフィルタ14を取り付ける際には、作業者により把持部143が把持され、複数本の捕獲部141が上記直交方向Bに沿って開口部162から挿入される。そして、保持部142がパッキン163に当接した状態で、当該保持部142により開口部162が覆われ、この状態で固定具164を用いて保持部142が開口部162に固定される。上記固定具164としては、例えば保持部142及び開口部162の各周縁部を挟み込むようにして固定するような構成のものを採用することができる。
【0034】
このようにして配管161に取り付けられたマグネットフィルタ14は、上記直交方向Bに沿って延びており、その捕獲部141が配管161内に位置することにより、当該捕獲部141が分岐路16内を流れる粗軽油に接触して磁力により異物が捕獲される。すなわち、分岐路16内を流れる粗軽油は、互いに所定間隔を隔てて平行に延びる複数本の捕獲部141の間を流通し、その過程で当該粗軽油に含まれる異物が各捕獲部141により捕獲されるようになっている。
【0035】
配管161からマグネットフィルタ14を取り外す際には、固定具164を取り外した後、作業者が把持部143を把持し、上記直交方向Bに沿って開口部162から抜脱することにより、容易に取り外すことができる。
【0036】
本実施形態では、貯留タンク11から搬送路15に搬送された粗軽油に含まれる異物が、搬送路15に設けられた異物分離装置13により捕獲され、粗軽油とともに分岐口133から分岐路16内に排出される。そして、分岐路16内を流れる粗軽油に含まれる異物が、マグネットフィルタ14で磁力によって捕獲される。このように、搬送路15に設けられた異物分離装置13を開放して異物を除去するのではなく、異物分離装置13の分岐口133から分岐した分岐路16に設けられているマグネットフィルタ14によって、貯留タンク11から搬送される粗軽油に含まれる異物を捕獲し、その捕獲した異物を容易に除去することができる。
【0037】
特に、本実施形態では、異物分離装置13により捕獲された異物が、粗軽油とともに自動的に分岐口133から分岐路16内に排出され、当該分岐路16内において上記異物がマグネットフィルタ14により捕獲される。すなわち、貯留タンク11から搬送される粗軽油に含まれる異物を自動的に分岐路16へと分岐させ、マグネットフィルタ14により捕獲することができるので、異物を容易に捕獲することができる。
【0038】
また、本実施形態では、分岐路16内における粗軽油の流通方向Aに対して直交方向Bに延びるマグネットフィルタ14に、分岐路16内を流れる粗軽油が接触し、当該粗軽油に含まれる異物が磁力によって捕獲される。これにより、貯留タンク11から搬送される粗軽油に含まれる異物を簡単な構成で良好に捕獲することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、マグネットフィルタ14が分岐路16に対して着脱可能に構成されているため、マグネットフィルタ14を分岐路16から取り外すことにより、当該マグネットフィルタ14により捕獲した異物を容易に除去することができる。
【0040】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る粗軽油搬送システム1の一例を示したブロック図である。この粗軽油搬送システム1は、マグネットフィルタ14に関する構成のみが第1実施形態と異なるため、第1実施形態と同様の構成については、図に同一符号を付して説明を省略することとする。
【0041】
本実施形態では、マグネットフィルタ14が電磁石14Aを備えている。当該電磁石14Aの構成としては、鉄芯にコイルを巻回することにより形成されるような一般的な構成を採用することができる。電磁石14Aに対する通電は、通電制御部17により制御することができる。
【0042】
上記のような構成によれば、電磁石14Aに対する通電を行うことにより、当該電磁石14Aから発生する磁力によって、分岐路16内を流れる粗軽油から異物を捕獲することができる。また、電磁石14Aに対する通電を所望のタイミングで停止することにより、捕獲した異物を容易に除去することができる。電磁石14Aにより捕獲した異物を当該電磁石14Aから除去する際には、異物捕獲後の粗軽油の流路が電磁弁などによって閉鎖され、別個に設けられた異物回収タンク内に除去された異物が回収されるような構成となっていてもよい。この場合、上記異物回収タンクには、当該異物回収タンク内に回収された異物を確認するための窓(例えばガラス窓)が設けられていてもよい。
【0043】
このように電磁石14Aに対する通電の停止によって異物を除去するような構成の場合には、マグネットフィルタ14を取り外すことなく異物を除去することができるので、異物の除去作業中に粗軽油の有害な揮発成分の大気放散や臭気が発生するのを効果的に防止することができる。
【0044】
以上の実施形態では、配管161の外周面に開口部162が形成され、当該開口部162から配管161内の分岐路16にマグネットフィルタ14が挿入されるような構成について説明したが、このような構成に限らず、配管161の開口部162に対応する位置に凹部が形成され、当該凹部内にマグネットフィルタ14が挿入されるような構成であってもよい。上記マグネットフィルタ14は、第1実施形態のように磁石(永久磁石)を用いたものであってもよいし、第2実施形態のように電磁石14Aを用いたものであってもよい。上記のような構成によれば、配管161内の分岐路16には、上記凹部に対応する凸部が粗軽油の流通方向Aに対して直交方向Bに突出するように形成され、分岐路16内を流れる粗軽油が上記凸部に接触することにより、粗軽油に含まれる異物が凸部内に配置されているマグネットフィルタ14の磁力によって凸部に付着する。
【0045】
上記のように、マグネットフィルタ14によって異物を直接捕獲するのではなく、マグネットフィルタ14が収容されている凸部によって異物を捕獲するような構成によれば、所望のタイミングでマグネットフィルタ14を取り外し、凸部に作用する磁力を解除することにより、当該凸部に付着していた異物を落下させて別の配管へと導き、容易に除去することができる。このように配管161の外周面に開口部162が形成されていない構成では、マグネットフィルタ14を取り外した場合であっても、粗軽油の有害な揮発成分の大気放散や臭気が発生することがない。
【符号の説明】
【0046】
1 粗軽油搬送システム
2 コークス炉
11 貯留タンク
13 異物分離装置
14 マグネットフィルタ
14A 電磁石
15 搬送路
16 分岐路
17 通電制御部
131 流入口
132 流出口
133 分岐口
134 ストレーナ
141 捕獲部
142 保持部
143 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスの製造時に発生するコークス炉ガスの精製工程で副生する粗軽油を搬送するための粗軽油搬送システムであって、
上記粗軽油を貯留する貯留タンクと、
上記貯留タンク内に貯留されている上記粗軽油を外部に搬送する搬送路と、
上記搬送路に設けられ、流入口から流入する上記粗軽油に含まれる異物を捕獲し、異物捕獲後の上記粗軽油を流出口から排出するとともに、捕獲した異物を上記粗軽油とともに分岐口から排出する異物分離装置と、
上記異物分離装置の上記分岐口に接続された分岐路と、
上記分岐路に設けられ、当該分岐路内を流れる上記粗軽油に含まれる異物を磁力によって捕獲するマグネットフィルタとを備えたことを特徴とする粗軽油搬送システム。
【請求項2】
上記異物分離装置が、捕獲した異物を上記粗軽油とともに自動的に上記分岐口から排出することを特徴とする請求項1に記載の粗軽油搬送システム。
【請求項3】
上記マグネットフィルタが、上記分岐路内における上記粗軽油の流通方向に対して直交方向に延び、上記分岐路内を流れる上記粗軽油に接触して磁力により異物を捕獲することを特徴とする請求項1又は2に記載の粗軽油搬送システム。
【請求項4】
上記マグネットフィルタが、上記分岐路に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粗軽油搬送システム。
【請求項5】
上記マグネットフィルタが、電磁石を含み、
上記電磁石に対する通電を制御するための通電制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粗軽油搬送システム。
【請求項6】
コークスの製造時に発生するコークス炉ガスの精製工程で副生して貯留タンク内に貯留された粗軽油から異物を捕獲するためのマグネットフィルタであって、
上記貯留タンクから上記粗軽油を外部に搬送する搬送路に対して分岐した分岐路に設けられ、当該分岐路内を流れる上記粗軽油に含まれる異物を磁力によって捕獲することを特徴とするマグネットフィルタ。
【請求項7】
上記分岐路に対して着脱可能であることを特徴とする請求項6に記載のマグネットフィルタ。
【請求項8】
電磁石を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載のマグネットフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−215766(P2010−215766A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63145(P2009−63145)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】