説明

粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置

【課題】夏期であっても、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却して十分に使用可能な状態とすることができる、粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置を提供する。
【解決手段】粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビン1を複数並設してなる骨材貯蔵設備において、粗骨材を貯蔵し排出する骨材ビン1(1a、1b、1c)を、粒度群毎に3つずつ用意し、空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを2日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、3日目に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記3つの骨材ビン1a、1b、1cに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、粒度群毎に区分された粗骨材を毎日1ビンずつ使用可能に冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、骨材ビン内の粗骨材を冷却する技術分野に属し、さらに云えば、粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンを複数並設してなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートダム建設工事においては、一般に、施工現場に前記骨材貯蔵設備を設けてマスコンクリートを製造する。骨材は現場にて採取・製造する場合と購入する場合があるが、いずれにしろ骨材は施工現場にストックされる。
前記骨材貯蔵設備はコンクリートプラント近傍に設けられ、コンクリートの製造に伴い、骨材ビンの下端部から所定の粒度群毎に区分された骨材を、振動フィーダやカットゲートを用いて排出し(引き出し)、ベルトコンベアによって、前記コンクリートプラントの最上部の骨材ビン(トップビン)に供給される。
【0003】
ところで、コンクリートダム建設工事においては、コンクリートの打ち込み温度が25℃を超える場合には、打ち込み禁止とされている。コンクリート打設後のピーク温度が40〜50℃程度にまで達し、最終安定温度との差が大きくなるために収縮量も大きくなり、結果的にひび割れ(クラック)が生じる可能性が高くなり、構造物(製品として)の品質が低下するからである。
したがって、特に夏期では、コンクリートの打設を休止しなければならない期間が生じ、作業者の休業問題や設備機械の無駄な損料が発生したり、工期の延期に伴う経費の増大等、あまりに不経済であるという問題があり、何らかの対策を講じる必要があった。
【0004】
そこで、従来、コンクリートの原料となる骨材を種々な手法で冷却する発明が開示されている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
この中で、特許文献4に係る発明は、骨材ビン内の骨材を冷却水で冷却する技術であり、他の特許文献1〜3に係る発明と比して、シンプルな構成で、精密機械を導入する必要もなく設備費用も安く済み、故障することも少なく経済的に実施できる利点がある。
具体的に、この特許文献4に係る発明は、所定の粒度群毎に区分した骨材を夫々受入れ、貯蔵および排出する複数に配設した、頂部を開放端とする一対(2つ)の骨材ビン内にて冷却水と熱交換により骨材を冷却させる骨材の冷却装置であり、所定の粒度群毎に用意した一対の骨材ビンを交互に利用することにより、連続的な運転作業を可能としている(同文献1の請求項1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−182752号公報
【特許文献2】特開平6−198635号公報
【特許文献3】特開平10−329129号公報
【特許文献4】特開平7−167542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献4に係る発明は、骨材1分級(1区分)あたり骨材ビンを1ビンで実施する場合と比して、運転効率を高めることができるという一応の効果は認められるものの、骨材ビンの頂部を直射日光が当たる開放端で実施するなど、骨材の温度調整についてはまったく考慮されていない致命的な問題があった。
【0007】
すなわち、コンクリートの打ち込み温度が25℃を超えないためには、骨材ビンから排出される時点で、粗骨材の温度を18〜22℃の範囲内に納まるまで冷却する必要がある。
特許文献4に係る発明は、骨材1分級あたり骨材ビンを2ビンで交互に運転する構成であるが故に、1ビンあたり1日で、骨材を充填する工程、冷却水を散水して冷却処理する工程、及び水切り処理する工程、の以上3つの工程を確実に終え、翌日のコンクリートの打設に備えなければならない。
本出願人による実験結果によれば、粗骨材の温度を18〜22℃の範囲内に納めるためには、1日分の1分級あたり粗骨材の使用量(70〜150m程度)であっても、骨材を充填する工程に5〜10時間程度要し、冷却水を散水して冷却処理する工程に少なくとも20時間程度要し、水切り処理する工程に4〜8時間程度要することが分かっている。細骨材にいたっては、粗骨材より粒径がさらに小さいのでさらに水切り処理する工程に時間を要する。
【0008】
したがって、特許文献4に係る発明によれば、仮に頂部に直射日光を遮る屋根材を設けて実施したとしても、1ビンあたり1日で骨材(粗骨材、細骨材)の温度を18〜22℃の範囲内に冷却して使用可能な状態とすることは時間的に到底不可能であり、夏期には打ち込み禁止となり、上記した種々の問題が生じる。
以上、1対の骨材ビンを毎日交互に運転する場合の問題点を指摘したが、例えば、1ビンあたり2日分の使用量の粗骨材をまとめて充填し、1対の骨材ビンを中2日で交互に運転する場合は、初日に使用する粗骨材を冷却できたとしても、2日目に使用する粗骨材については、再度冷却し、更に水切りする必要が生じ、その作業に1日以上要するので、不合理な上に、やはり夏期には打ち込み禁止となり、上記した種々の問題が生じる。
【0009】
参考例として、本出願人が行ったヒートバランス計算結果を図3に示す。左列[従来のケース]を参照すると、屋根付き骨材ビンに充填した26℃の粗骨材300mに対し8時間散水した結果、冷却後の粗骨材は24.6℃で、その後のコンクリート(打ち込み)温度は25.4〜25.8℃となる。よって、8時間程度の散水では25℃を超えるので夏期には打ち込み禁止となる。
【0010】
本発明の目的は、シンプルな構成で、精密機械を導入する必要もなく設備費用も安く済み、故障することも少なく経済的に実施でき、且つ夏期であっても、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却して十分に使用可能な状態とすることができる、粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る粗骨材の冷却管理方法は、
粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンを複数並設してなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理方法であって、
粗骨材を貯蔵し排出する骨材ビンを、粒度群毎に少なくとも3つずつ用意し、
空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを複数日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、その後に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記少なくとも3つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、粒度群毎に区分された粗骨材を毎日1ビンずつ使用可能に冷却することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した発明に係る粗骨材の冷却管理方法は、粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンを複数並設してなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理方法であって、
粗骨材を貯蔵し排出する骨材ビンを、粒度群毎に3つずつ用意し、
空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを2日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、3日目に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記3つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、粒度群毎に区分された粗骨材を毎日1ビンずつ使用可能に冷却することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した粗骨材の冷却管理方法において、前記粗骨材の粒度群は、グループ1(150mm〜80mm)、グループ2(80〜40mm)、グループ3(40〜20mm)、グループ4(20〜5mm)の4つの粒度群、あるいは前記グループ2〜4の3つの粒度群とすることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した粗骨材の冷却管理方法において、前記冷却水は、約5℃に冷却して、1分間あたり20〜50リットルの割合で散水することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した粗骨材の冷却管理方法において、前記粗骨材に冷却水を散水する作業は、20時間〜30時間程度行うことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載した発明に係る粗骨材の冷却管理装置は、粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンが複数並設されてなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理装置であって、
粗骨材を貯蔵し、排出する骨材ビンが、所定の粒度群毎に少なくとも3体ずつ設けられ、前記各骨材ビンは、天端部に充填口を備えた屋根材が設けられ、同屋根材の下面には散水装置が付設されていること、
空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材が充填され、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理され、前記散水を停止して水切り処理されて、粗骨材の温度が18〜22℃に冷却されるよう、前記少なくとも3つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行われることにより、粒度群毎に区分された粗骨材が毎日1ビンずつ使用可能に冷却されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置によれば以下の効果を奏する。1)骨材貯蔵設備に設けた骨材ビンを所定の粒度群毎に3つずつ用意し、空の骨材ビン1に1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを2日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、3日目に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記3つの骨材ビン1a、1b、1cに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、各粒度群に係る粗骨材を、18〜22℃に冷却された状態で毎日1ビンずつ連続使用することができる。
よって、コンクリート打ち込み温度が25℃を超えることはないので(一例として、図3の右列参照)、夏期であっても他の時期と同様にコンクリートの打設作業を行い得る。 したがって、コンクリートの打設を休止する必要も一切なく、作業者の休業問題や設備機械の無駄な損料が発生することもなく、工期の延期に伴う経費の増大等もない、合理的、且つ経済的な粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置を提供することができる。
2)副次的な効果として、骨材を購入する場合、市販の骨材は乾式製造であるため、表面にはかなりの石粉が付着しており、コンクリートのフレッシュな性状や硬化後の品質に影響を及ぼす。石粉が多くなれば必要な単位水量も多くなり、示方配合の単位水量では定められたスランプを得ることはできない。スランプを得るために単位水量を増加すると、強度が低下する。また、乾燥収縮も大きくなり表面ひび割れ発生の原因ともなる。しかし、粗骨材に十分な冷却水を直接散水することによって表面に付着した石粉を洗い流すことができ、コンクリートの品質の向上に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置を概略的に示した立面図である。
【図2】A〜Cは、粒度群毎に用意した3つの骨材ビンに対して行う所定の作業工程を段階的に示した立面図である。
【図3】従来のケースと本実施例のケースを対比したヒートバランス計算結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置の実施例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1と図2は、本発明に係る粗骨材の冷却管理方法および冷却管理装置の実施例を示している。
本発明に係る粗骨材の冷却管理方法は、粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビン1を複数並設してなる骨材貯蔵設備10における粗骨材の冷却管理方法であり、粗骨材を貯蔵し排出する骨材ビン1を、粒度群毎に3つずつ用意し、
空の骨材ビン1に1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを2日かけて行い、粗骨材の温度(表面温度)を18〜22℃に冷却し、3日目に前記骨材ビン1から前記粗骨材を排出する工程を、前記3つの骨材ビン1に対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、粒度群毎に区分された粗骨材を毎日1ビンずつ使用可能に冷却することを特徴としている。
【0021】
前記骨材貯蔵設備10は、通常、コンクリートプラント(図示省略)近傍に設けられ、コンクリートの製造に伴い、骨材ビン1の下端部から所定の粒度群毎に区分された粗骨材を、振動フィーダやカットゲートを用いて排出し、ベルトコンベア11によって、前記コンクリートプラントの最上部の骨材ビン(トップビン)に供給される。
前記骨材ビンの構成等は、公知の骨材ビンを適用できる。粗骨材を排出する手法も前記したように、公知の振動フィーダやカットゲートを用いて排出する。なお、隣接する骨材ビン1から垂れ落ちる冷却水の浸入を遮断するべく、排水側溝を設けたり、排出口3自体を数cm程度嵩上げする等の工夫は適宜行われる。
【0022】
前記粗骨材は、その粒径の大きさに応じてグループ1(150mm〜80mm)、グループ2(80〜40mm)、グループ3(40〜20mm)、グループ4(20〜5mm)の4つの粒度群に大別され、各粒度群毎に分けて骨材ビン1に貯蔵される。
なお、構築するコンクリートダムの強度、大きさ等の構造設計に応じ、前記グループ1〜4の4つの粒度群の粗骨材をすべて使用する場合もあれば、前記グループ2〜4の3つの粒度群の粗骨材を使用する場合もあり、粒度群の組み合わせは構造設計に応じて適宜選択可能である。ちなみに、本実施例に係る骨材貯蔵設備10は、図1に示したように、前記グループ2〜4の3つの粒度群に区分された粗骨材の使用状況を示している。
【0023】
本発明に係る冷却管理方法は、前記粗骨材を各粒度群毎に分けて貯蔵される骨材ビン1を、さらに各粒度群毎に3つに分けて所定の工程を遂行することにより、コンクリートを打設するのに適正な温度(18〜22℃)に冷却した粗骨材を連続供給し得る工夫が施されている。
以下、各粒度群毎(本実施例ではグループ2〜4)に3つずつ用意した骨材ビン1に対して行う作業工程を具体的に説明する。
【0024】
図2A〜Cは、一例として、前記グループ2(粒径:80〜40mm)の粒度群を貯蔵し排出する3つの同形同大の骨材ビン1(1a、1b、1c)に対する作業工程を段階的に示している。
ちなみに、図2Aは第1日目、図2Bは第2日目、図2Cは第3日目を示す。なお、作業工程を段階的に説明するにあたり、3つの骨材ビンのうち中央の骨材ビン1bを中心に説明する。
【0025】
図2Aの骨材ビン1bは、前日に粗骨材をすべて排出した空の状態から、1日に使用する量の粗骨材を、上方の充填口2を通して充填する段階を示している。図2Bの骨材ビン1a、及び図2Cの骨材ビン1cについても同様である。
骨材ビン1bの大きさは、70〜150m程度(本実施例では100m)で実施され、その頂部に直射日光を遮る屋根材が設けられている。前記屋根材は骨材ビンと一体化させて実施することもできるし、取り外し可能に実施することもできる。
前記充填作業は通常、日中に行われ、ダンプトラック等の運搬車を利用して5〜10時間程度要して充填される。充填作業を終えた後は、通常、第1日目の夜間から第2日目にかけて、図2Bに示したように散水作業を開始する。
【0026】
図2Bの骨材ビン1bは、粗骨材に冷却水を散水して冷却処理する段階を示している。図2Cの骨材ビン1a、及び図2Aの骨材ビン1cについても同様である。
前記冷却水の温度は、5〜8℃程度(本実施例では5℃)で、1分間あたり20〜50リットル程度(本実施例では40リットル)の割合で20〜30時間程度(本実施例では24時間)散水して、粗骨材の温度を18〜22℃まで冷却する。これらの数値は、本出願人による試算、及び実験に基づいている。なお、冷却水の温度はできる限り低い方が好ましい。また、散水量および散水時間は、現場での天候、気温はもとより、骨材ビン1bの大きさ、粗骨材の充填量等の諸条件に応じて前記した数値の範囲内を目安に適宜設計変更される。
【0027】
冷却水を散水する装置は、本実施例では、外部にタンク及び貯留槽を設備し、屋根材の下面に噴射器具をバランス良く複数取り付けたシャワーリング装置で実施している。なお、散水手段はこれに限定されず、充填した粗骨材の上部に冷却水が満遍無く当たるように散水することを条件に、外部からホース材を引き入れて散水するなどの公知の散水手段で実施可能である。
前記シャワーリング装置により粗骨材へ満遍無く降り掛け、流下した冷却水は、前記排水口3を通じて下方へ垂れ流される。よって、冷却水を散水して冷却処理する工程、及びその後の水切り処理する工程の間は、冷却水のベルトコンベアへの落下を回避するべく、排水口3の直下位置にスライド式の排水用樋を設置しておくことに留意する。
なお、骨材ビン1b内の粗骨材の温度は、本出願人による試算、及び実験に基づく粗骨材の充填量と散水時間との関係でおおよその見当はつくが、念のため、温度感知センサーを設けて実施することもできる。
また、現場での気象状況等により、所定の時間より早く粗骨材の温度が低下する場合は、通常は、水切り処理に必要な時間まで散水作業を継続して行う。
【0028】
かくして、第1日目の夜間から20〜30時間程度の散水作業を行うことにより、粗骨材を18〜22℃の温度に冷却処理した後、散水作業を中止し、通常、第2日目の深夜から第3日目の早朝にかけて水切り処理を行う。ちなみに、ここでいう水切り処理とは、単に散水作業を中止することを指す。
水切り処理に必要な時間は、この図2に係るグループ2(粒径:80〜40mm)の粗骨材の場合で4〜5時間程度要することが本出願人による試算、及び実験に基づき分かっている。よって、第3日目の粗骨材を排出する時間から逆算して、少なくとも4〜5時間前に散水作業を中止して水切り処理に切り替える。
なお、水切り処理は通常、深夜から早朝にかけて行うのでその間に粗骨材の温度が不当に上昇する虞は少ないが、18〜22℃を確実に保持するべく、気象状況等に応じて骨材ビン1bの外周に寒冷紗を設置したり、骨材ビン1b自体に冷却水を散水する等の工夫は適宜行われる。
【0029】
図2Cの骨材ビン1bは、前記水切り処理を終えた粗骨材をコンクリートの打設のために所定の時間をかけて断続的に、或いは一括して外へ排出する段階を示している。図2Aの骨材ビン1a、及び図2Bの骨材ビン1cについても同様である。
粗骨材を排出する際は、前記スライド式の排水用樋をスライドさせて避けておき、18〜22℃に冷却した粗骨材を、振動フィーダやカットゲートを用いて排出させてベルトコンベア11へ落下させ、同ベルトコンベア11によってコンクリートプラント最上部の骨材ビン(トップビン)に供給される。
【0030】
よって、上記説明したように、本実施例に係るグループ2(粒径:80〜40mm)の粒度群を貯蔵し排出する3つの骨材ビン1(1a、1b、1c)に係る粗骨材の冷却管理方法によれば、空の骨材ビン1に1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理するまでの作業を2日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、3日目に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記3つの骨材ビン1a、1b、1cに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、グループ2(粒径:80〜40mm)の粒度群に係る粗骨材を、18〜22℃に冷却された状態で毎日1ビンずつ連続使用することができるのである。
【0031】
参考のため、本実施例に係るヒートバランス計算結果を図3の右列に示す。本実施例によれば、骨材ビン1bに充填した26℃の粗骨材100mに対し24時間散水した結果、冷却後の粗骨材は19.3℃にまで低下することができ、その後のコンクリート(打ち込み)温度は22.3〜23.4℃となる。よって、25℃未満なので夏期でも十分にコンクリートの打設作業を行うことができるのである。
【0032】
以上は、グループ2(粒径:80〜40mm)の粒度群について説明したが、図1に係るグループ3(40〜20mm)、及びグループ4(20〜5mm)の粒度群についても上記説明した同様の工程を同時期に行うことにより、18〜22℃に冷却された粗骨材を毎日1ビンずつ連続使用することができる。
なお、グループ3(40〜20mm)、及びグループ4(20〜5mm)の粒度群は、グループ2(粒径:80〜40mm)の粒度群と比して粒径が小さいので、散水時間は2〜3時間程度短くても目標値に達する。その反面、水切り時間は2〜3時間長くする必要があるので、トータルの所要時間はほぼ同じである。
【0033】
このように、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、本実施例では、前記グループ2〜4の3つの粒度群に分粒された粗骨材を用いる骨材貯蔵設備について説明したが、これに限定されず、前記グループ1〜4の4つの粒度群に分粒された粗骨材を用いる骨材貯蔵設備でも同様に実施できる。勿論、規模は大きくなるが、5つ以上の粒度群に分粒された粗骨材を用いる骨材貯蔵設備でも同様に実施できる。
また、本実施例では、1つの粒度群毎に3つの骨材ビン1(1a、1b、1c)で効率的かつ合理的に実施しているが、粗骨材の充填時間、冷却処理時間、水切り処理時間をそれぞれさらに長くするなどして、4つ以上の骨材ビン1を用いて行うこともできる。一例として、4つの骨材ビンを用いる場合は、空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを3日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、4日目に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記4つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行うのである。
【符号の説明】
【0034】
1(1a、1b、1c) 骨材ビン
2 充填口
3 排出口
4 スライド式の排水用樋
10 骨材貯蔵設備
11 ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンを複数並設してなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理方法であって、
粗骨材を貯蔵し排出する骨材ビンを、粒度群毎に少なくとも3つずつ用意し、
空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを複数日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、その後に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記少なくとも3つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、粒度群毎に区分された粗骨材を毎日1ビンずつ使用可能に冷却することを特徴とする、粗骨材の冷却管理方法。
【請求項2】
粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンを複数並設してなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理方法であって、
粗骨材を貯蔵し排出する骨材ビンを、粒度群毎に3つずつ用意し、
空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材を充填し、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理し、前記散水を停止して水切り処理する作業までを2日かけて行い、粗骨材の温度を18〜22℃に冷却し、3日目に前記骨材ビンから前記粗骨材を排出する工程を、前記3つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行うことにより、粒度群毎に区分された粗骨材を毎日1ビンずつ使用可能に冷却することを特徴とする、粗骨材の冷却管理方法。
【請求項3】
前記粗骨材の粒度群は、グループ1(150mm〜80mm)、グループ2(80〜40mm)、グループ3(40〜20mm)、グループ4(20〜5mm)の4つの粒度群、あるいは前記グループ2〜4の3つの粒度群とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載した粗骨材の冷却管理方法。
【請求項4】
前記冷却水は、約5℃に冷却して、1分間あたり20〜50リットルの割合で散水することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した粗骨材の冷却管理方法。
【請求項5】
前記粗骨材に冷却水を散水する作業は、20時間〜30時間程度行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した粗骨材の冷却管理方法。
【請求項6】
粗骨材、細骨材を粒度群毎に貯蔵し排出する骨材ビンが複数並設されてなる骨材貯蔵設備における粗骨材の冷却管理装置であって、
粗骨材を貯蔵し、排出する骨材ビンが、所定の粒度群毎に少なくとも3体ずつ設けられ、前記各骨材ビンは、天端部に充填口を備えた屋根材が設けられ、同屋根材の下面には散水装置が付設されていること、
空の骨材ビンに1日に使用する量の粗骨材が充填され、前記粗骨材に冷却水を散水して冷却処理され、前記散水を停止して水切り処理されて、粗骨材の温度が18〜22℃に冷却されるよう、前記少なくとも3つの骨材ビンに対し1日ずつずらして繰り返し行われることにより、粒度群毎に区分された粗骨材が毎日1ビンずつ使用可能に冷却されることを特徴とする、粗骨材の冷却管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−5799(P2011−5799A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153250(P2009−153250)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【Fターム(参考)】