説明

粘土膜の製造方法、この方法で得られた粘土膜

【課題】水を含む分散媒と合成粘土とを含有する粘土分散液の液膜を形成する工程と、この液膜から分散媒を除去する乾燥工程とを備えた粘土膜の製造方法において、乾燥工程にかかる時間を短くするために粘土分散液の固形分濃度を高くしても、得られる粘土膜のヘイズ(曇度)を小さくできる方法を提供する。
【解決手段】粘土分散液として、無機塩類を除去する脱塩処理がなされた合成粘土を含有するものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粘土膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイをはじめとするフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」と略称する。)の製造技術が飛躍的に進歩し、従来のブラウン管では到達し得ない薄型のディスプレイが現実のものとなった。
現在のFPDのほぼ全ては、ガラス基板上にデバイスが形成されており、ガラス以外の材質からなる基板を用いた実用的なFPDは存在しない。その理由としては、(1) ディスプレイの駆動回路や部材は高温で基板上に形成されるため、基板には高い耐熱性が要求されること、(2) ガラスは線膨張係数が小さいため、基板上の駆動回路や部材に与える熱応力を抑制でき、配線の破断や部品の特性変動が少ないこと、(3) ガラスは可視光域での透過率が高いため、光を取り出すのが容易であること、(4) ガラスはガスバリア性が高く、外部からの酸素や水蒸気の進入を阻止することができ、必要によっては高真空を保持できること等が挙げられる。
【0003】
しかし、ガラス基板は、柔軟性がなく、割れやすく、重いため、取り扱い難いという欠点があり、持ち運んで使うモバイル用途にはあまり適していない。特に、曲げて持ち運ぶことを想定したフレキシブルディスプレイ(電子ペーパー等)には使えない。
そのため、ガラス基板以外で、ガラス基板と同等の耐熱性、線膨張係数、透明性、ガスバリア性等を有し、軽量で、柔軟で、大型化が可能な、ディスプレイ用基板が望まれている。
【0004】
本発明者等は、ディスプレイ用基板への適用を想定して、合成粘土を原料とした粘土膜の開発を進めている。
高いアスペクト比を有する粘土粒子を配向して緻密に積層した状態で得られた粘土膜は、この膜を通過する際に気体分子の移動距離が飛躍的に上昇するために、高いガスバリア性を有することが分かっている。また、この粘土膜は、無機化合物を主とする組成であるため、従来のもので300℃以上、組成によっては600℃程度の温度でも性質が変化しない高い耐熱性を有する。
【0005】
下記の特許文献1には、高耐熱性、高ガスバリア性、自立性を有する粘土膜を製造する方法が記載されている。この方法は、粘土分散液を調整し、均一な分散液を得て、この分散液を水平に静置して粘土粒子を沈積させるとともに、分散媒である液体を種々の固液分離方法(例えば遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、又は加熱蒸発法)で分離し、膜状に形成した後に、これを支持体から剥離する方法である。
【0006】
合成粘土を原料として、この方法で得られた粘土膜は、高耐熱性、高ガスバリア性、自立性を有するという点で、上記のガラス代替材料として要求される性能を高度に満たし得ることが分かっている。
【特許文献1】特開2005−104133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で、得られる粘土膜のヘイズ(曇度)を小さくするためには、粘土分散液の固形分濃度を低くする必要があり、その結果、乾燥工程に時間がかかるという問題がある。
本発明の課題は、水を含む分散媒と合成粘土とを含有する粘土分散液の液膜を形成する工程と、この液膜から分散媒を除去する乾燥工程とを備えた粘土膜の製造方法において、乾燥工程にかかる時間を短くするために粘土分散液の固形分濃度を高くしても、得られる粘土膜のヘイズ(曇度)を小さくできる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、水を含む分散媒と合成粘土とを含有する粘土分散液の液膜を形成する工程と、この液膜から分散媒を除去する乾燥工程とを備えた粘土膜の製造方法において、前記粘土分散液として、無機塩類を除去する脱塩処理がなされた合成粘土を含有するものを使用することを特徴とする粘土膜の製造方法を提供する。
一般に、粘土合成時の未反応成分である無機塩類の存在により粘土分散液の粘度が高くなること、特に、硫酸イオン由来の硫黄成分が、分散している粘土粒子の架橋を促進して、粘土分散液の粘度を上昇させることが知られている。また、粘土粒子が有する電荷に対して余剰の層間無機陽イオン、特にナトリウムイオンが多いと、同様に粘土分散液の粘度が上昇し得ることが知られている。そして、本発明者等は、粘度が高いほど粘土分散液中の気泡が除去し難くなり、この気泡の残存に起因して、粘度の高い粘土分散液から得られる粘土膜のヘイズが大きくなることを見出した。
【0009】
したがって、本発明の方法によれば、前記粘土分散液として、無機塩類を除去する脱塩処理がなされた合成粘土を含有するものを使用することにより、粘土分散液の固形分濃度を高くしても粘度が低くなる。よって、乾燥工程にかかる時間を短くするために固形分濃度の高い(例えば固形分濃度が3.0質量%程度の)粘土分散液を使用した場合でも、得られる粘土膜のヘイズ(曇度)を小さくすることができる。これにより、ヘイズが小さい粘土膜を短い時間で得ることができるため、粘土膜の生産性が向上できる。
【0010】
なお、乾燥工程にかかる時間を短縮する方法としては、粘土分散液の固形分濃度を高くする方法以外に、乾燥温度を上げる方法と、揮発しやすい分散媒を用いる方法がある。しかしながら、乾燥温度を上げる方法では、溶媒の沸点が上限である。また、揮発しやすい分散媒を用いる方法では、例えば、粘土粒子の層間に存在する無機陽イオンが有機カチオンで交換された有機化粘土を、有機溶媒に分散させるため、得られる粘土膜のガスバリア性が低下する。
【0011】
本発明の方法においては、前記脱塩処理がなされた合成粘土の硫黄含有率が、酸化物換算で、例えば1.2質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下であるものを使用する。これにより、例えば、固形分濃度が3.0質量%程度の粘土分散液を使用した場合でも、乾燥工程後に得られる粘土膜のヘイズ(曇度)を小さくすることができる。
【0012】
本発明の方法において、脱塩処理は、合成粘土を、水を含む溶媒で洗浄した後に濾過することで行うことができる。
脱塩処理は、合成粘土を得る工程で、乾燥、粉砕の前に、マグネシウム塩及び/又はアルミニウム塩と水ガラスとを水熱反応させて得られたスラリー状態の粘土に対して行うこともできる。
すなわち、マグネシウム塩及び/又はアルミニウム塩と水ガラスとを水熱反応させて得られたスラリー状態の粘土を、水を含む溶媒で洗浄した後に濾過し、次いで、乾燥、粉砕して得られた合成粘土は、脱塩処理されたものである。
脱塩処理に使用する溶媒としては、水とエタノールまたはアセトンとの混合溶媒が好ましい。
【0013】
本発明で使用する粘土分散液としては、合成サポナイト、合成ヘクトライト、および合成スチーブンサイトの少なくとも一つを含有するものが好ましい。
本発明はまた、本発明の方法で製造され、ヘイズが5%以下であり、全光線透過率が85%以上である粘土膜を提供する。
本発明はまた、本発明の方法で製造され、ヘイズが5%以下であり、全光線透過率が85%以上であり、粘土粒子が配向して積層した構造を有し、自立膜として利用可能な機械的強度を有する粘土膜を提供する。
【0014】
本発明はまた、本発明の方法で製造された粘土膜または本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする、(1)電子ペーパー、(2)フレキシブル基板、(3)フレキシブルプリント基板、(4)非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスが実装され、ガスバリア性を有する基板、(5)非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスをガスから保護するガスバリア膜、を提供する。
【0015】
以下、本発明について詳述する。
[粘土粒子について]
粘土鉱物は、厚みが約0.22nmの酸素やケイ素およびアルミニウム等を中心として構成される四面体層や八面体層が、1〜3層積層し、数10nm〜5μm程度の長軸方向の大きさを持つアスペクト比の大きなシート状の層状無機化合物(粘土粒子)からなる。無機化合物のみから形成されているという特徴のため、一般に粘土鉱物は600℃程度の温度でもその性質が変化せず、高耐熱性を有する。層状無機化合物間に無機陽イオンを有する一般的なもの、例えばスメクタイト族に属する粘土や膨潤性の合成雲母等は水やアルコールに分散させることが可能であり、その分散液をガラス板の上に広げ、静置、乾燥することにより、粒子の配向の揃った膜が形成されることが知られている。
【0016】
[合成粘土について]
本発明において用いる合成粘土の種類は、親水性であり、着色のない合成粘土であれば特に限定されるものではない。ここで、“着色のない”とは、400nmから800nmの波長領域において、吸光度の最大値と最小値の差が10%以下であることを意味する。吸光度の最大値と最小値の差は、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下、もっとも好ましくは3%以下である。そのような合成粘土としては、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトが挙げられる。分散性の点からは合成スメクタイト族の粘土が好ましく、特に、合成サポナイト、合成ヘクトライトまたは合成スチーブンサイトの少なくとも1種を含有していることが好ましい。
【0017】
これら合成粘土、特にスメクタイト族に属する粘土は一般に粘土粒子の層間に交換性の無機陽イオンを有し、それら無機陽イオンに水が配位することで水に良く分散する。特に、スメクタイト族に属する粘土は一般に単位層にまで水に分散させることが可能であるため好ましい。アルコール等の極性の強い有機溶媒も無機陽イオンに配位することができ、粘土を膨潤させるため、水にアルコール等の水と任意の割合で混じる溶媒を添加しても分散させることは可能である。
【0018】
そして、少なくとも水を含む溶媒中に分散した粘土粒子は、その高アスペクトな形状および粘土自身が有する電荷による相互作用により、分散液に粘性を与える。また、分散液の特性として、非ニュートン性の流動特性を示すこと、および、カードハウス構造に代表される粘土粒子間の相互作用によるネットワークの形成(粒子間の架橋)により、チクソトロピー性が発現することが特徴的である。特に、市販の合成スメクタイトの水分散液においてはその粘土粒子のサイズから推定される溶液の粘度より高い粘度が発現し、またチクソトロピー性が顕著になることが知られている。
【0019】
このように粘土分散液の粘度が上昇する原因として、粘土合成時に未反応となって残った塩類、特に硫酸イオン由来の硫黄成分が分散している粘土粒子の架橋を促進させるためであると考えられている。そして、分散液の粘度が高くなることにより、分散液中の気泡を除去することがより困難になるため、その分散液より作製した粘土膜のヘイズが気泡により増大するという弊害が生じる。
【0020】
本発明の粘土膜の製造方法においては、合成粘土に含まれる無機塩類、特に硫酸イオンを減少させる処理(脱塩処理)を行うことで、粘土粒子の架橋が抑制され、粘土分散液の粘度を低下させることが可能である。そして、そのような低粘度の粘土分散液を用いることで、分散液の濃度を高くしてもヘイズの低い粘土膜を作製でき、なおかつ成膜時間を短縮し、粘土膜の生産性を向上させることが可能となる。
【0021】
[脱塩処理について]
脱塩処理の方法として、具体的には粘土合成時に、水熱反応させて得られた水熱反応処理物を濾過して未反応又は遊離の塩類を除去する方法が好ましい。すなわち、高温高圧下(一般的にはオートクレープ等でそのような環境を形成する)で混合された原料を水熱反応させて得られた粘土(スラリー状態のもの)を、水や熱水、もしくは水と任意の割合で混合できる有機溶媒と水との混合溶媒で1回もしくは数回に渡って洗浄・濾過することで、前記塩類を除去することが好ましい。洗浄に用いる液体の温度は高いほうが脱塩効率が上がるため好ましい。
【0022】
水熱反応処理物を洗浄・濾過する際に用いる液体は、合成粘土に含まれる無機塩類、特にアルミニウムイオンや硫酸イオンの溶解度の高さから、水、水と任意の割合で混合できる溶媒またはそれらの混合物であることが好ましい。特に、合成サポナイトの場合は水熱反応処理物の水に対する膨潤性が低いため、水、特に熱水を用いることが好ましい。
洗浄・濾過した粘土は必要に応じて乾燥・粉砕する。特に合成サポナイトは洗浄後、再乾燥することが、分散性を向上するために好ましい。
他の脱塩方法として、水熱反応処理物を乾燥・粉砕して得た粘土、例えば市販の合成粘土を、水と任意の割合で混合できる溶媒と水との混合溶媒で洗浄・濾過することでも、ある程度前記塩類を除去することが可能である。
【0023】
水と任意の割合で混合できる溶媒は、限定されず、例えば、アセトン、エタノール、メタノール、その他アルコール類、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。このとき、水の量が多いと粘土がゲル化してしまい、濾過するのが困難となるため、水と有機溶媒との混合比は、有機溶媒の比率が50%以上となることが望ましく、より好ましくは67%以上である。水と任意の割合で混合できる溶媒としては、粘土が塊状になりにくいために、粘土を粉末にする際に加える外力を抑えられ、結果として粘土結晶の破砕を抑制できるという観点から、たとえばエタノールやアセトンが特に好ましい。必要な洗浄・濾過の回数はその方法や洗浄に用いる液体の量及び種類、さらには透明粘度膜の組成に依存するが、複数回に渡って洗浄・濾過をすることで、より高い効果が得られる。また、超音波洗浄を行うことも効果的である。
【0024】
脱塩処理の方法としては、分散液の粘度を低下させるという観点から、水熱反応処理物を乾燥・粉砕してから粘土を洗浄する方法よりも、前述の水熱反応処理物を乾燥する前に洗浄する方法の方が好ましい。しかし、水熱反応処理物を乾燥・粉砕してから粘土を洗浄する方法により脱塩処理した粘土より調製した高濃度分散液を用いて粘土膜を作製した場合でも、そのヘイズは、市販の合成粘土より調製した同濃度の分散液を用いて作製した粘土膜のそれよりも大きく低下する。
【0025】
脱塩処理により、粘土を合成する際における未反応成分である硫黄成分や粘土層間に束縛されていないナトリウムイオン等を減少させ、硫黄含有量として酸化物換算で、好ましくは1.2重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、もっとも好ましくは0.2重量%以下に抑えることにより、例えば3重量%の高濃度においても粘度の低い分散液を調製し、より短い乾燥時間で、なおかつヘイズの小さい透明な粘土膜が得られることを見出した。
【0026】
[添加剤について]
脱塩処理後、得られた粘土を必要に応じ添加剤とともに分散媒中に分散させる。粘土分散液は、粘土のみ又は粘土と添加剤とを溶媒と混合し、振とうや攪拌により混合・分散させて得る方法が一般的である。このとき、常温よりも高い温度で振とうや攪拌することで、粘土粒子の分散を促進し、粘土分散液の作製時間を短縮するので効果的である。
【0027】
また、必要に応じて、超音波照射やホモジナイザー等で混合・分散を促進させても良い。また、添加剤を加える場合には、粘土を溶媒に分散させた粘土のみの分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、を別々に調製し、これらを混合して該当の粘土分散液を得る方法は、粘土と添加剤がより均一に混合された粘土分散液を得る方法として特に好ましい。
【0028】
なお、本発明において用いる添加剤の種類は特に限定されるものではないが、親水性粘土を用いるため、親水性を有し、水への分散性または溶解性が高く、着色のないものが好ましい。着色がないとは、400nmから800nmの波長領域において、吸光度の最大値と最小値の差が10%以下であることを意味する。吸光度の最大値と最小値の差は、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下、もっとも好ましくは3%以下である。
【0029】
例えば、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、セルロース繊維、セラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸、ポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物が好適である。
【0030】
なお、これらは水への分散性又は溶解性が高いため、得られる粘土膜の耐水性は一般に低い。そこで、塩や他の反応性モノマーやポリマー又はオリゴマー等を加えて、添加剤を水に不溶化させてもよい。不溶化処理としては、膜状に形成後、加熱もしくは光照射等によって上記添加物を反応させ、重合させる方法等が挙げられる。あるいは、ラテックスやエマルジョンといった、水分散系の材料を用いてもよい。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記の樹脂の中では、セルロース系樹脂、ポリアクリル樹脂等が、透明性と強度の点から好適である。
【0031】
[分散液について]
また、本発明において粘土分散液に用いられる溶媒(分散媒)の種類としては、水および、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール等の有機物や塩などを少量溶解させた水を用いることができる。有機物、塩などを添加する目的は、粘土分散液における粘土の分散性を変化させる、粘土分散液の粘性を変化させる、粘土膜の乾燥のしやすさを変化させる、粘土膜の均一性を向上させる等である。
【0032】
このようにして得られた粘土分散液には、振とうや攪拌の際に気体を巻き込むこと等により、多かれ少なかれ各種の気体が混入している。従って、粘土膜の表面平滑性、透明性の観点から、支持体の表面に塗布する前の粘土分散液に、脱気処理、例えば真空脱泡を施すことが好ましい。これらの気体を脱泡して除去するためには、一般には粘土分散液の粘度が低く、十分な流動性を有していることが必要になる。本発明においては脱塩された粘土を用いることで粘土分散液の粘度を下げることが可能なので、高い固形分濃度の粘土分散液でも効率よく脱泡を行うことが可能となる。
なお、粘土分散液の粘度を下げ効率よく脱泡を行うために、室温よりも高い温度で、かつ、粘土分散液を撹拌しながら行うことは好ましく、また、撹拌と真空脱泡を同時に行わずに、例えば撹拌脱泡して粘土分散液の流動性を高めた後に真空脱泡を行うのも有効である。
【0033】
[液膜形成工程と乾燥工程について]
このようにして得られた粘土分散液を支持体の表面に一定の厚さで塗布した後に、溶媒を除去して粘土膜を形成する。
粘土分散液を支持体表面に塗布する方法は特に限定されるものではないが、得られる膜の均一性、平滑性を高くするという観点から、粘土分散液が均一に塗布されていることが望ましい。そのような方法としては例えば、支持体上に粘土分散液を塗布した後、平坦なもの、例えばガラス棒やヘラなどで粘土分散液表面を平滑化する方法等が上げられる。
【0034】
溶媒を除去する方法は特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離、濾過、真空乾燥、凍結真空乾燥、不活性ガス雰囲気下放置、及び加熱蒸発法が好ましい。あるいは、これらの方法のうち複数を組み合わせてもよい。これらの方法のうち例えば加熱蒸発法を用いる場合は、平坦な支持体に粘土分散液を塗布するとよい。
【0035】
支持体としてはトレイ等を例にあげることができる。支持体の材質としては真鍮等の平滑な材料であれば特に限定されるものではないが、乾燥後に支持体に粘土膜が貼り付かず容易に粘土膜が剥離できるようにするためには、撥水性の強いポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の材料を用いることが好ましい。
あるいは、支持体のうち粘土分散液を塗布する部分に、フッ素樹脂コーティングやチタニアコーティング等の撥水処理を行うことも好ましい。もしくは、同様の剥離容易化処理又は撥水加工処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製フィルムをトレイに敷いて支持体としても良い。
【0036】
なお、そのような樹脂製フィルムを用いると、乾燥時に支持体が変形することが可能となり、乾燥収縮に伴って粘土膜内部に発生する応力を緩和し、粘土膜の割れの発生を抑制することができる。また、粘土膜の表面平滑性、ヘイズの観点から、支持体の表面はできる限り平滑であることが好ましい。
粘土分散液を支持体の表面に塗布したら、強制送風オーブン中、もしくはホットプレート上において、30℃以上90℃以下、好ましくは50℃以上70℃以下の温度条件下で乾燥することで粘土膜を得る。このとき、粘土膜の表面に異物が付着し表面の平滑性や透明性が低下することを防ぐために、乾燥雰囲気中に異物ができるだけ少ないクリーンオーブンやクリーンルーム中で乾燥させることが望ましい。
【0037】
このような本発明の粘土膜の製造方法によれば、従来の製造方法と比較し、粘土分散液の固形分濃度を上げて乾燥時間を短縮しても、透明性が高くヘイズが小さい粘土膜を得ることができる。
このようにして得られる本発明の粘土膜は、ヘイズが5%以下であり、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。透明性の高い粘土膜は、ガラス代替材料として、FPD基板等に用いる材料として有用である。
【0038】
[粘土膜について]
本発明の粘土膜は、粘土粒子が配向して積層しており、自立膜として利用可能な強度を有することが好ましい。自立膜として利用可能な強度と高い透明性及びガスバリア性を生かして、フレキシブルな電子ペーパーの基板又は視認側であるフロントプレーン側のガスバリア膜や太陽電池の基板として用いることができる。
また、耐熱性を生かして、電子ペーパーのバックプレーンとなるアクティブマトリックス駆動回路を、粘土膜に高温下で直接形成することが可能となる。そうすれば、ガラス基板上等に駆動回路を形成した後に樹脂フィルムに転写する等の従来方法を用いなくてもよいので、電子ペーパーの製造工程を少なくすることができる。なお、本発明の粘土膜を適用可能な電子ペーパーの種類は特に限定されるものではないが、例えば電気泳動駆動式,電子粉流体方式の電子ペーパーがあげられる。
【0039】
また、次世代のディスプレイやRFIDタグ等の電子デバイスの駆動材料として研究開発が進められているペンタセンやチオフェン類に代表される有機半導体は、一般に酸素や水分によって劣化しやすく、またアモルファス無機半導体も、有機半導体ほどではないが酸素や水分の影響を受けやすい。そのため、それらを用いたデバイスでは、酸素や水蒸気の侵入を十分に阻止する必要がある。
【0040】
本発明の粘土膜は透明であり、かつ高いガスバリア性を有しているため、酸素等による劣化に敏感な有機半導体やアモルファス無機半導体を有する前記電子デバイス用の基板や、有機半導体やアモルファス無機半導体を保護するガスバリア膜としても好適である。また、粘土膜は高温でも柔軟性を保持するので、上記電子デバイスをフレキシブル化することも可能である。
【0041】
その他には、絶縁性である特徴を生かして、粘土膜を電気回路のフレキシブル基板として広範囲に用いることもできる。基板が透明であれば、電子部品を実装する際の位置あわせが光学的に可能となり、CCDカメラ等で部品の組み付け位置を確認しながらの実装が可能となる。
さらに、基板上の導体部分を導電性インクの塗布又は印刷で形成したフレキシブルプリント基板においては、粘土膜の耐熱性を生かして導電性インクをより高温で焼成することが可能なため、塗布又は印刷で形成した導体部分の抵抗率をより低くすることが可能である。このようなフレキシブル基板及びフレキシブルプリント基板の好適な用途としては、銅張積層板等があげられる。
【0042】
なお、前述した電子ペーパー、フレキシブル基板、フレキシブルプリント基板、有機半導体又はアモルファス無機半導体を有する電子デバイス等に対して、本発明の透明粘土膜を適用する際には、粘土膜をそのまま適用してもよいし、必要に応じて粘土膜に別の機能を有する膜(例えば主として無機材料からなる水蒸気バリア膜、樹脂材料等からなる補強材、傷等を防ぐ保護層、表面を平滑化する平滑化層)等を付与して用いてもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明の方法によれば、水を含む分散媒と合成粘土とを含有する粘土分散液の液膜を形成する工程と、この液膜から分散媒を除去する乾燥工程とを備えた粘土膜の製造方法において、乾燥工程にかかる時間を短くするために粘土分散液の固形分濃度を高くしても、得られる粘土膜のヘイズ(曇度)を小さくすることができる。
したがって、本発明の方法を採用して、粘土分散液の固形分濃度を高くして乾燥工程にかかる時間を低減することにより、ヘイズの小さい粘土膜の製造効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態に相当する実施例を、従来例等に相当する比較例と対比して説明する。
[実施例1]
合成粘土として、脱塩処理された合成サポナイト(クニミネ工業株式会社提供)を用意した。また、親水性添加剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アルドリッチ株式会社製)を用意した。
用意した合成粘土は、次の方法で得られたものである。先ず、硫酸マグネシウム及び硫酸アルミニウムと水ガラスを、水酸化ナトリウムとともに水熱反応させて、スラリー状態の粘土を得た。次に、このスラリーを減圧濾過し、得られた濾過物を熱水で10回洗浄した。この洗浄が脱塩処理に相当する。次に、この洗浄後の濾過物を、乾燥した後に粉砕することで粘土粒子を得た。得られた粘土粒子の硫黄含有量は、酸化物換算で0.1質量%であった。
【0045】
この粘土粒子3.1gと純水87mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間、激しく振とうすることで、粘土が水に分散された分散液を得た。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.54gと純水29mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌することで、添加剤が水に分散された分散液を得た。
【0046】
次に、これらの分散液を密封容器に入れて2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌し、固形分濃度(粘土粒子と添加剤の合計濃度)が3.0質量%である粘土分散液を得た。
次に、この粘土分散液を、軸の周りを公転しながら自転する容器を備えた自転−公転型攪拌脱泡装置AR−100(株式会社シンキー製)の容器内に入れて、先ず、5分間撹拌した。次に、脱泡モード(自転が停止され、公転のみで、遠心力にて混入気泡を除去するモード)にて2分間脱泡した。次に、この容器内の液体を、プラスチック製のディスポトレイに移して、薄い液膜状とした。次に、このトレイを減圧装置に入れて、10分間減圧下で真空脱泡した。
【0047】
次に、B6サイズの長方形の真鍮板の四端面に、厚さ1mmのテフロン(登録商標)製板を固定して、深さが1mmで底面がB6サイズのトレイを作成した。次に、厚さ50μmのPETフィルム(大成ラミネーター株式会社製)の表面に、剥離性付与剤としてシリコーン樹脂を塗布し、乾燥させた。次に、このPETフィルムを、シリコーン樹脂が塗布された面を上に向けて、トレイの真鍮板からなる底面に載せた。
【0048】
次に、このトレイに、前述の真空脱泡された粘土分散液を9.5g入れて、その液面をガラス棒で平滑化することにより、厚さ1mmの粘土分散液からなる膜を形成した(液膜形成工程)。次に、このトレイをオーブン内に入れて、60℃で140分間加熱することで、トレイ内の液膜から分散媒を除去した(乾燥工程)。これにより、トレイ内に粘土膜が形成された。この粘土膜を、PETフィルムから剥離した。この粘土膜は、透明で、厚さが約21μmの均一な膜であった。
得られた粘土膜のヘイズ及び全光線透過率を日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH 2000」で測定したところ、全光線透過率は91.9%で、ヘイズ(曇度)は2.0%であった。また、肉眼で分かる着色は認められなかった。
【0049】
[実施例2]
合成粘土として、合成サポナイト(クニミネ工業株式会社の「スメクトンSA」)を用意した。また、親水性添加剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アルドリッチ株式会社製)を用意した。
用意した合成粘土に対して、以下の方法で脱塩処理を行った。先ず、アセトンと水を2:1の体積比で混合することで混合溶媒を調製した。次に、容器内に、この混合溶媒を約200mlと、用意した合成粘土を約15gを入れ、さらに攪拌子を入れて、2分間、回転速度300rpmで攪拌した。次に、攪拌後の容器内容物を濾過した後、濾過物をアセトン約100mlで洗浄した。
【0050】
この一連の操作(この混合溶媒による攪拌、濾過、洗浄)を4回繰り返した。次に、洗浄後の濾過物を乾燥させた後に、粉砕した。これにより、脱塩処理された合成サポナイトからなる粘土粒子を得た。得られた粘土粒子の硫黄含有量は、酸化物換算で1.2質量%であった。
このようにして得られた粘土粒子5.1gと純水145mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間、激しく振とうすることで、粘土が水に分散された分散液を得た。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.8gと純水45mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌することで、添加剤が水に分散された分散液を得た。
【0051】
次に、これらの分散液を密封容器に入れて2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌し、固形分濃度(粘土粒子と添加剤の合計濃度)が3.0質量%である粘土分散液を得た。
次に、この粘土分散液を、軸の周りを公転しながら自転する容器を備えた自転−公転型攪拌脱泡装置AR−100(株式会社シンキー製)の容器内に入れて、先ず、5分間撹拌した。次に、脱泡モード(自転が停止され、公転のみで、遠心力にて混入気泡を除去するモード)にて2分間脱泡した。次に、この容器内の液体を、プラスチック製のディスポトレイに移して、薄い液膜状とした。次に、このトレイを減圧装置に入れて、10分間減圧下で真空脱泡した。
【0052】
次に、B6サイズの長方形の真鍮板の四端面に、厚さ1mmのテフロン(登録商標)製板を固定して、深さが1mmで底面がB6サイズのトレイを作成した。次に、厚さ50μmのPETフィルム(大成ラミネーター株式会社製)の表面に、剥離性付与剤としてシリコーン樹脂を塗布し、乾燥させた。次に、このPETフィルムを、シリコーン樹脂が塗布された面を上に向けて、トレイの真鍮板からなる底面に載せた。
【0053】
次に、このトレイに、前述の真空脱泡された粘土分散液を9.6g入れて、その液面をガラス棒で平滑化することにより、厚さ1mmの粘土分散液からなる膜を形成した(液膜形成工程)。次に、このトレイをオーブン内に入れて、60℃で140分間加熱することで、トレイ内の液膜から分散媒を除去した(乾燥工程)。これにより、トレイ内に粘土膜が形成された。この粘土膜を、PETフィルムから剥離した。この粘土膜は、透明で、厚さが約23μmの均一な膜であった。
得られた粘土膜のヘイズ及び全光線透過率を日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH 2000」で測定したところ、全光線透過率は91.7%で、ヘイズ(曇度)は6.2%であった。また、肉眼で分かる着色は認められなかった。
【0054】
[比較例1]
合成粘土として、合成サポナイト(クニミネ工業株式会社の「スメクトンSA」)を用意した。また、親水性添加剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アルドリッチ株式会社製)を用意した。
用意した合成粘土の硫黄含有量は、酸化物換算で1.3質量%であった。
この粘土粒子3.1gと純水87mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間、激しく振とうすることで、粘土が水に分散された分散液を得た。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.54gと純水29mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌することで、添加剤が水に分散された分散液を得た。
【0055】
次に、これらの分散液を密封容器に入れて2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌し、固形分濃度(粘土粒子と添加剤の合計濃度)が3.0質量%である粘土分散液を得た。
次に、この粘土分散液に対して、実施例1と同じ方法で二段階の脱泡を行った。次に、実施例1と同じ方法で作成した、底面がB6サイズで、PETフィルムが載せられたトレイに、この粘土分散液を9.5g入れて、その液面をガラス棒で平滑化することにより、厚さ1mmの粘土分散液からなる膜を形成した(液膜形成工程)。
【0056】
次に、このトレイをオーブン内に入れて、60℃で140分間加熱することで、トレイ内の液膜から分散媒を除去した(乾燥工程)。これにより、トレイ内に粘土膜が形成された。この粘土膜を、PETフィルムから剥離した。この粘土膜の厚さは約29μmであった。
得られた粘土膜のヘイズ及び全光線透過率を日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH2000」で測定したところ、全光線透過率は91.4%で、ヘイズ(曇度)は16.6%であった。また、肉眼で分かる着色は認められなかった。
この比較例1では、実施例2と同じ合成粘土を用いたが、実施例2とは異なり脱塩処理を行っていないため、乾燥工程を60℃で140分間の同じ条件で行ったことで、得られた粘土膜のヘイズが、脱塩処理を行った実施例2の6.2%より大きくなった。
【0057】
[比較例2]
合成粘土として、合成サポナイト(クニミネ工業株式会社の「スメクトンSA」)を用意した。また、親水性添加剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アルドリッチ株式会社製)を用意した。
用意した合成粘土の硫黄含有量は、酸化物換算で1.3質量%であった。
この粘土粒子1.0gと純水89mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間、激しく振とうすることで、粘土が水に分散された分散液を得た。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.18gと純水30mlをプラスチック製密封容器に入れて、25℃で2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌することで、添加剤が水に分散された分散液を得た。
【0058】
次に、これらの分散液を密封容器に入れて2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーで10分間10000rpmで撹拌し、固形分濃度(粘土粒子と添加剤の合計濃度)が1.0質量%である粘土分散液を得た。
次に、この粘土分散液に対して、実施例1と同じ方法で二段階の脱泡を行った。次に、厚さ3mmのテフロン(登録商標)製板を固定した以外は実施例1と同じ方法で作成した、深さが3mmで底面がB6サイズで、PETフィルムが載せられたトレイに、この粘土分散液を20.1g入れて、その液面をガラス棒で平滑化することにより、厚さ3mmの粘土分散液からなる膜を形成した(液膜形成工程)。
【0059】
次に、このトレイをオーブン内に入れて、60℃で300分間加熱することで、トレイ内の液膜から分散媒を除去した(乾燥工程)。これにより、トレイ内に粘土膜が形成された。この粘土膜を、PETフィルムから剥離した。この粘土膜の厚さは約14μmであった。
得られた粘土膜のヘイズ及び全光線透過率を日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH2000」で測定したところ、全光線透過率は91.4%で、ヘイズ(曇度)は3.5%であった。また、肉眼で分かる着色は認められなかった。
この比較例2では実施例2と同じ合成粘土を用いたが、実施例2とは異なり脱塩処理を行っていない。そのため、比較例1よりもヘイズを低減するためには、分散液の固形分濃度を1.0質量%として、乾燥工程を60℃で300分間行う必要があり、乾燥工程に時間がかかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む分散媒と合成粘土とを含有する粘土分散液の液膜を形成する工程と、この液膜から分散媒を除去する乾燥工程とを備えた粘土膜の製造方法において、
前記粘土分散液として、無機塩類を除去する脱塩処理がなされた合成粘土を含有するものを使用することを特徴とする粘土膜の製造方法。
【請求項2】
前記脱塩処理がなされた合成粘土の硫黄含有率が酸化物換算で0.5質量%以下である請求項1記載の粘土膜の製造方法。
【請求項3】
前記脱塩処理は、合成粘土を、水を含む溶媒で洗浄した後に濾過することで行う請求項1記載の粘土膜の製造方法。
【請求項4】
前記合成粘土は、マグネシウム塩及び/又はアルミニウム塩と水ガラスとを水熱反応させて得られたスラリー状態の粘土を、水を含む溶媒で洗浄した後に濾過し、次いで、乾燥、粉砕して得られたものである請求項1または2に記載の粘土膜の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は、水とエタノールまたはアセトンとの混合溶媒である請求項3または4記載の粘土膜の製造方法。
【請求項6】
前記粘土分散液は、合成サポナイト、合成ヘクトライト、および合成スチーブンサイトの少なくとも一つを含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で製造され、ヘイズが5%以下であり、全光線透過率が85%以上である粘土膜。
【請求項8】
粘土粒子が配向して積層した構造を有し、自立膜として利用可能な機械的強度を有する請求項7記載の粘土膜。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、請求項7又は請求項8に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする電子ペーパー。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、請求項7又は請求項8に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、請求項7又は請求項8に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項12】
非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスが実装され、ガスバリア性を有する基板であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、請求項7又は請求項8に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする基板。
【請求項13】
非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスをガスから保護するガスバリア膜であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、請求項7又は請求項8に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするガスバリア膜。

【公開番号】特開2008−137828(P2008−137828A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324208(P2006−324208)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】