説明

粘度測定装置及び方法

【課題】粘度の変化を連続的に測定できるようにする。
【解決手段】粘度測定装置Aは、管路16の上流端と下流端との間の塗装用液剤aの圧力損失ΔPと、管路16を流れる塗装用液剤aの流量が所定量に達する毎に出力されるパルス信号が所定数だけ出力されるのに要する時間Tを、μ=k・ΔP・T(kは、パルス信号の出力間隔と対応する流量に基づく係数)の式に代入することで、塗装用液剤aの粘度μを演算する。実際に管路16を流れている塗装用液剤aの圧力と流量とに基づいて粘度を測定しているので、粘度の変化をリアルタイムで連続的に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度測定装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗料の粘度をブルックフィールド型粘度計で測定する技術が記載されている。ブルックフィールド型粘度計を用いて塗料の粘度を測定する手段としては、塗料を測定用のカップに貯留し、そのカップ内にブルックフィールド型粘度計のローターを浸漬させて、ローターに作用する回転抵抗に基づいて粘度を測定する方法が考えられる。
【特許文献1】特開2001−129454公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の測定方法では、測定対象となるカップ内の塗料が、実際に塗料供給源から塗装ガンに供給されて塗装に供される塗料ではないため、塗装に供される粘度の変化をリアルタイムで連続的に測定することができない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、粘度の変化を連続的に測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、塗装用液剤が流動する管路と、前記管路の上流端における前記塗装用液剤の圧力と前記管路の下流端における前記塗装用液剤の圧力との差である圧力損失を検出する差圧検出手段と、前記管路を流れる前記塗装用液剤の流量が所定量に達する毎にパルス信号を出力する流量計と、前記差圧検出手段によって検出された圧力損失ΔPの値と、前記流量計から所定数のパルス信号が出力されるのに要する時間Tの値を、μ=k・ΔP・T(kは、パルス信号の出力間隔と対応する流量に基づく係数)の式に代入することで、前記塗装用液剤の粘度μを演算する演算手段とを備えているところに特徴を有する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記管路の下流端が大気中に開放されているところに特徴を有する。
【0005】
請求項3の発明は、塗装用液剤が流動する管路の上流端における前記塗装用液剤の圧力と前記管路の下流端における前記塗装用液剤の圧力との差である圧力損失ΔPを検出し、前記管路を流れる前記塗装用液剤の流量が所定量に達する毎に流量計から出力されるパルス信号の出力数が、所定数に達するのに要する時間Tを測定し、前記圧力損失ΔPの値と、前記時間Tの値を、μ=k・ΔP・T(kは、パルス信号の出力間隔と対応する流量に基づく係数)の式に代入することで、前記塗装用液剤の粘度μを演算するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
<請求項1及び請求項3の発明>
本発明では、実際に管路を流れている塗装用液剤の圧力と流量とに基づいて粘度を測定しているので、粘度の変化をリアルタイムで連続的に測定することができる。
【0007】
<請求項2の発明>
管路の下流端を大気中に開放したので、圧力計は管路の上流端のみに設ければよく、管路の上流端と下流端の両方に圧力計を設ける形態に比べて、圧力計の数が少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。本実施形態の粘度測定装置Aは、塗装用液剤a(例えば、塗料、主剤、硬化剤など)の圧送源10と、液剤流路14と、ドレンタンク18とを備えている。圧送源10は、エア供給源11からレギュレータ12を介して圧送した作動エアを、気密状に密閉されている貯留タンク13内に送り込み、その作動エアの圧力により、貯留タンク13内に貯留されている塗装用液剤aを液剤流路14へ押し出すようになっている。
【0009】
液剤流路14は、上流端が圧送源10に接続された第1供給路15と、第1供給路15の下流端に接続された管路16と、管路16の下流端に接続された第2供給路17とから構成され、第2供給路17の下流端に上記ドレンタンク18が設けられている。また、管路16の断面積は全長に亘って一定である。
【0010】
第1供給路15の途中には容積式の流量計19が設けられている。流量計19は、圧送源10からドレンタンク18に至る液剤流路14(流量計19よりも下流側の管路16を含む流路)を流れる塗装用液剤aの流量を計測するものであり、流量計19を通過する(即ち、管路16を流れる)塗装用液剤aの体積が所定量Voに達する毎に、パルス信号を制御部20へ出力するようになっている。
【0011】
また、管路16の上流端には第1圧力計21が設けられ、この第1圧力計21は管路16の上流端における塗装用液剤aの圧力を測定し、その測定値を差圧検出部23(本発明の構成要件である差圧検出手段)へ出力するようになっている。管路16の下流端には第2圧力計22が設けられ、この第2圧力計22は管路16の下流端における塗装用液剤aの圧力を測定し、その測定値を差圧検出部23へ出力するようになっている。差圧検出部23においては、第1圧力計21から入力される測定値と第2圧力計22から入力される測定値との差が算出され、その算出された差圧の値、即ち圧力損失ΔPが制御部20に入力されるようになっている。
【0012】
制御部20では、流量計19から入力されるパルス信号の数がカウントされ、入力されたパルス信号の数が所定の数nに達するまでに要する時間Tを得る。また、制御部20には、演算部24(本発明の構成要件である演算手段)が接続されている。演算部24では、差圧検出部23で検出された圧力損失ΔPの値と、流量計19から所定数nのパルス信号が出力されるのに要する時間Tの値を、μ=k・ΔP・Tの演算式に代入することにより、塗装用液剤aの粘度μを演算する。尚、kは、パルス信号の出力間隔To(=T/n)の間に流量計19を通過する塗装用液剤aの体積Voに基づく係数である。
【0013】
ここで、上記式の意義について説明する。
管路16の断面積が全長に亘って一定である場合、管路16の上流端と下流端との間の圧力損失(圧力差)ΔPが、粘度μと塗装用液剤aの単位時間当たりの流量Qとの積の値μ・Qに概ね比例することは周知である。また、単位時間当たりの流量Qは、上記の時間Tが経過する間に流量計19を通過する塗装用液剤aの総体積n×Voを、時間Tで除した値であり、Q=n・Vo/Tであらわされる。制御部20でカウントされるパルス信号の数nと、パルス信号の出力間隔Toの間に流量計19を通過する塗装用液剤aの体積Voは、いずれも定数であるから、流量Qは時間Tに反比例することになる。したがって、粘度μは、ΔP/Qの値に比例し、換言すると圧力損失ΔPと時間Tの積の値に比例することになり、以上により、上記演算式が得られる。
【0014】
本実施形態では、実際に管路16を流れている塗装用液剤aの圧力と流量とに基づいて粘度を測定しているので、粘度の変化をリアルタイムで連続的に測定することができる。
【0015】
<実施形態2>
以下、本発明を具体化した実施形態2を図3を参照して説明する。本実施形態2の粘度測定装置Bは、塗装装置に適用したものであって、塗料b(本発明の構成要件である塗装用液剤)の圧送源30と、塗料流路31とを備えており、塗料流路31は、上流端が圧送源30に接続された供給路32と、供給路32の下流端に接続された管路33とからなり、管路33の下流端には、塗料bを噴出するためのノズル34が設けられている。
【0016】
供給路32の途中には、容積式の流量計35が設けられている。流量計35は、圧送源30からノズル34に至る塗料流路31を流れる塗料bの流量を計測するものであり、流量計35を通過する(即ち、管路33を流れる)塗料bの体積が所定量Voに達する毎に、パルス信号を制御部36へ出力するようになっている。
【0017】
また、管路33の上流端には圧力計37が設けられ、この圧力計37は管路33の上流端における塗料bの圧力を測定する。一方、ノズル34から塗料bが噴出する状態では、管路33の下流端のノズル34が大気に開放されているため、この圧力計37の測定値が、管路33の上流端における塗料bの圧力と管路33の下流端(ノズル34)における塗料bの圧力(大気圧)との差である圧力損失となる。つまり、圧力計37は、本発明の構成要件である差圧検出手段となっている。そして、この圧力計37で測定された値、即ち圧力損失ΔPの値が制御部36に入力されるようになっている。
【0018】
制御部36では、流量計35から入力されるパルス信号の数がカウントされ、入力されたパルス信号の数が所定の数nに達するまでに要する時間Tを得る。また、制御部36には、演算部38(本発明の構成要件である演算手段)が接続されている。演算部38では、圧力損失ΔPの値と、流量計35から所定数nのパルス信号が出力されるのに要する時間Tの値を、μ=k・ΔP・Tの演算式に代入することにより、塗料bの粘度μを演算する。尚、kは、パルス信号の出力間隔To(=T/n)の間に流量計35を通過する塗料bの体積Voに基づく係数である。上記式の意義については、実施形態1で説明したとおりである。
【0019】
本実施形態2では、実際に管路33を流れている塗料bの圧力と流量とに基づいて粘度を測定しているので、粘度の変化をリアルタイムで連続的に測定することができる。
また、管路33の下流端(ノズル34)を大気中に開放したので、圧力計37は管路33の上流端だけに設ければよくなっている。したがって、管路33の上流端と下流端の両方に圧力計を設ける形態に比べて、圧力計37の数が1つだけで済んでいる。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では管路の上下両端間の圧力差を検出する手段として、管路の上流端と下流端の両方に圧力計を設けたが、本発明によれば、管路の下流端を大気圧に開放するとともに、圧力計を管路の上流端のみに設ける構成としてもよい。
(2)上記実施形態2では管路の下流端(塗装ガンのノズル)を大気圧に開放することで、必要な圧力計の数を1つとしたが、本発明によれば、管路の下流端をノズルよりも上流側に設定して、管路の上流端と下流端の双方に圧力計を設け、この2つの圧力計の計測値に基づいて圧力損失を検出してもよい。
(3)上記実施形態1,2では流量計を管路よりも上流側に配置したが、本発明によれば、流量計は、管路の途中に設けてもよく、管路よりも下流側に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の構成図
【図2】流量計から出力されるパルス信号の波形をあらわすグラフ
【図3】実施形態2の構成図
【符号の説明】
【0022】
A…粘度測定装置
a…塗装用液剤
16…管路
19…流量計
23…差圧検出部(差圧検出手段)
24…演算部(演算手段)
B…粘度測定装置
b…塗料(塗装用液剤)
33…管路
35…流量計
37…圧力計(差圧検出手段)
38…演算部(演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装用液剤が流動する管路と、
前記管路の上流端における前記塗装用液剤の圧力と前記管路の下流端における前記塗装用液剤の圧力との差である圧力損失を検出する差圧検出手段と、
前記管路を流れる前記塗装用液剤の流量が所定量に達する毎にパルス信号を出力する流量計と、
前記差圧検出手段によって検出された圧力損失ΔPの値と、前記流量計から所定数のパルス信号が出力されるのに要する時間Tの値を、μ=k・ΔP・T(kは、パルス信号の出力間隔と対応する流量に基づく係数)の式に代入することで、前記塗装用液剤の粘度μを演算する演算手段とを備えていることを特徴とする粘度測定装置。
【請求項2】
前記管路の下流端が大気中に開放されていることを特徴とする請求項1記載の粘度測定装置。
【請求項3】
塗装用液剤が流動する管路の上流端における前記塗装用液剤の圧力と前記管路の下流端における前記塗装用液剤の圧力との差である圧力損失ΔPを検出し、
前記管路を流れる前記塗装用液剤の流量が所定量に達する毎に流量計から出力されるパルス信号の出力数が、所定数に達するのに要する時間Tを測定し、
前記圧力損失ΔPの値と、前記時間Tの値を、μ=k・ΔP・T(kは、パルス信号の出力間隔と対応する流量に基づく係数)の式に代入することで、前記塗装用液剤の粘度μを演算することを特徴とする粘度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−76307(P2008−76307A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257872(P2006−257872)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)