説明

粘性材料の攪拌装置

【課題】攪拌装置に絞り出し手段を設けることで、攪拌装置と共に絞り出し手段を移動させることが出来、また作業現場においてフィルムパックから粘性材料等を効率良く、しかも確実に絞り出して使い切ることが出来、更に産業廃棄物削減にも大きく貢献することが出来る粘性材料の攪拌装置を提供する。
【解決手段】絞り出し手段12は、支持軸13と一体的に形成されたフィルムパック11の支持ベース部材14と、この支持ベース部材14に一端側がヒンジ部15を介して水平方向に開閉可能な挟持部材16とで構成してあり、挟持部材16の他端側には、支持ベース部材14に対して挟持部材16を固定する止めがね17が取付けられている。この実施形態では、挟持部材16として、支持軸18に回転可能に挿通されたローラ19により構成してある。また、6は従来と同様な支持軸13に固定された攪拌翼を示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2液性シーリング材等の粘性材料の攪拌装置に係わり、更に詳しくは攪拌装置にフィルムパックされた粘性材料を絞り出すための絞り出し手段を設けた粘性材料の攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に2液性シーリング材は、主剤を収納した容器(缶)と、硬化剤及びカラーマスターをそれぞれ封入したフィルムパックとがセットになっており、そして使用直前に、フィルムパックの一辺を切断して容器中に絞り出し、攪拌装置により十分に混合して使用するものである。
【0003】
従来の攪拌装置1は、図15に示すように、装置の支持台2上に、粘性材料Wを収容した容器3を回転させる回転テーブル4と、容器3内の粘性材料Wを攪拌する支持軸5と攪拌翼6とで構成された攪拌手段7とが設置されている。また、フィルムパックされた硬化剤及びカラーマスター等を絞り出す絞り出し装置は、攪拌装置1とは別の装置になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、絞り出し装置を使用しない場合、2液性シーリング材の使用時に、硬化剤及びカラーマスターを開封して主剤を収納した容器3内へ絞り出す作業には、多くの手間と時間がかかり、また完全に絞り出せないのが現状である。また、硬化剤等が高粘度である場合には、フィルムパックすることが出来ず、容器に入れたものを使用する場合には、その容器からへら等を使用して掻き出すものもあり、近年の産業廃棄物の削減には貢献出来ていないのが現状であり、更に缶等の容器を使用する場合には、フィルムパックに比較して高価となる問題があった。
【0005】
また、上記のような攪拌装置1とは別に絞り出し装置を用いてフィルムパックされた硬化剤及びカラーマスター等を絞り出す場合、絞り出し装置は攪拌装置1と常に対となって持ち運ぶ必要があり、多くの手間と時間がかかると言う問題があった。
【特許文献1】特開平6−191563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、攪拌装置に絞り出し手段を設けることで、攪拌装置と共に絞り出し手段を移動させることが出来、また作業現場においてフィルムパックから粘性材料等を効率良く、しかも確実に絞り出して使い切ることが出来、更に産業廃棄物削減にも大きく貢献することが出来る粘性材料の攪拌装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記目的を達成するため、攪拌手段に、フィルムパックされた粘性材料を絞り出す絞り出し手段を設けたことを要旨とするものである。
【0008】
ここで、前記絞り出し手段は、前記支持軸にフィルムパックの支持ベース部材と、この支持ベース部材に開閉可能な挟持部材とで構成し、挟持部材は、ローラにより形成するものである。また、前記絞り出し手段は、板バネ材料により開閉可能なクリップ状に形成することも可能である。更に、前記絞り出し手段は、前記攪拌手段の支持軸の一部にフィルムパックを挿通させて粘性材料の絞り出し可能なスリットを形成するものである。
【0009】
このように、攪拌装置に絞り出し手段を設けることで、攪拌装置と共に絞り出し手段を移動させることが出来、作業性を向上させることが出来るものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、上記のように攪拌装置の攪拌手段に、フィルムパックされた粘性材料を絞り出す絞り出し手段を設けたので、以下のような優れた効果を奏するものである。
(a).攪拌装置と共に絞り出し手段を移動させることが出来、作業性を向上させることが出来る。
(b).作業現場においてフィルムパックから粘性材料等を効率良く、しかも確実に絞り出して使い切ることが出来る。
(c).フィルムパック化出来ることにより、産業廃棄物削減にも大きく貢献することが出来る。
(d).攪拌装置は、どこの作業場でも2液性シーリング材を使用する場合には必要不可欠であるため、専用絞り出し機のように単独で持ち運ぶ必要はなく、従って絞り出し機を忘れて作業が出来なくなると言うこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。なお、従来例と同一構成要素は、同一符号を付して説明は省略する。
【0012】
図1は、この発明の実施形態を示す攪拌手段の正面図、図2は図1の側面図、図3は図1の平面図を示し、前記攪拌手段10には、フィルムパック11に封入された粘性材料Wを絞り出す絞り出し手段12が設けてある。
【0013】
前記絞り出し手段12は、支持軸13と一体的に形成されたフィルムパック11の支持ベース部材14と、この支持ベース部材14に一端側がヒンジ部15を介して水平方向に開閉可能な挟持部材16とで構成してあり、挟持部材16の他端側には、支持ベース部材14に対して挟持部材16を固定する止めがね17が取付けられている。なお、この実施形態では、挟持部材16として、支持軸18に回転可能に挿通されたローラ19により構成してある。また、6は従来と同様な支持軸13に固定された攪拌翼を示している。
【0014】
第1実施形態の絞り出し手段12は、上記のように構成され、フィルムパック11に封入された粘性材料Wを絞り出す際には、フィルムパック11の一端側(上端末部近傍)を支持ベース部材14と挟持部材16としてのローラ19との間に挟持させた状態で吊り下げ、フィルムパック11の他端側をカッター等の切断手段により開封させると、封入された粘性材料Wは自重により回転テーブル4上の容器3内に落下し、更に支持ベース部材14とローラ19とから突出したフィルムパック11の一端側を作業者が上方に引っ張り上げることで、支持ベース部材14とローラ19との間でフィルムパック11内の粘性材料Wは絞り出される。
【0015】
粘性材料Wが絞り出されフィルムパック11のシートは、そのまま、またはローラ19を固定する止めがね17を外して支持ベース部材14から開放させることにより簡単に、しかも手等を粘性材料Wで汚すことなく取出すことが出来る。
【0016】
図4〜図7は、絞り出し手段12の第2実施形態を示し、この実施形態は、支持軸13と一体的に形成されたフィルムパック11の支持ベース部材14の側面に、図4〜図6に示すような板バネ材料等により開閉可能なクリップ状に形成した絞り出し金具20を着脱可能に取付けるための断面凹状のフック21a,21bが取付けられている。
【0017】
前記絞り出し金具20は、図7に示すように二枚の板状または棒状のバネ材料20a,20bにより構成され、このバネ材料20a,20bの一端は連結固定され、この連結固定された側に山状に形成された開閉操作部21を形成し、この開閉操作部21から他端側に向かって交差し、かつフィルムパック11を開閉可能に挟持する直線状の挟持部22が形成されている。
【0018】
そして、この第2実施形態においてフィルムパック11に封入された粘性材料Wを絞り出す際には、前記絞り出し金具20のバネ材料20a,20bから成る開閉操作部21を矢印方向に押圧すると、直線状の挟持部22が矢印方向に開放し、この間にフィルムパック11の一端側(上端末部近傍)を板ばねの弾性力により挟持させる。そして、絞り出し金具20を前記断面凹状のフック21a,21bに引っかけてフィルムパック11を吊り下げ、図5に示すように、フィルムパック11の他端側をカッター等の切断手段により開封させると、封入された粘性材料Wは自重により回転テーブル4上の容器3内に落下し、更に直線状の挟持部22から突出したフィルムパック11の一端側を作業者が上方に引っ張り上げることで、直線状の二枚の挟持部22との間でフィルムパック11内の粘性材料Wは絞り出される。
【0019】
そして粘性材料Wが絞り出されフィルムパック11のシートは、絞り出し金具20を前記断面凹状のフック21a,21bから取外し、開閉操作部21を押圧することで挟持部22がフィルムパック11のシートは開放されて廃棄される。
【0020】
なお、その他の構成及び作用は上記第1実施形態と同様なので同一符号を付して説明は省略する。
【0021】
図8〜図10は、絞り出し手段12の第3実施形態を示し、この実施形態は、支持軸13と一体的に形成されたフィルムパック11の支持ベース部材14aに、ピン23を介して開閉する挟持部材24を設け、支持ベース部材14aの下方には、攪拌翼6が固定されている。なお、挟持部材24はピン23等に設けたコイルバネ等により常時支持ベース部材14a側に附勢されている。25は操作用ピンを示している。
【0022】
この第3実施形態においてフィルムパック11に封入された粘性材料Wを絞り出す際には、挟持部材24をピン23を支点として操作用ピン25により開放する方向に操作し、そして図9及び図10に示すように、支持ベース部材14aと挟持部材24との間に、フィルムパック11の一端側(上端末部近傍)を挿入して挟持部材24を閉じて挟持させる。
【0023】
そして、フィルムパック11の他端側をカッター等の切断手段により開封させると、封入された粘性材料Wは自重により回転テーブル4上の容器3内に落下し、更に支持ベース部材14aと挟持部材24とから突出したフィルムパック11の一端側を作業者が上方に引っ張り上げることで、支持ベース部材14aと挟持部材24との間でフィルムパック11内の粘性材料Wは絞り出される。
【0024】
そして粘性材料Wが絞り出されフィルムパック11のシートは、挟持部材24をピン23を支点として操作用ピン25により開放する方向に操作して絞り出し手段12から取外して廃棄するものである。
【0025】
なお、その他の構成及び作用は上記第1実施形態と同様なので同一符号を付して説明は省略する。
【0026】
図11(a),(b)〜図14(a),(b),(c)は、絞り出し手段12の第4実施形態〜第7実施形態を示し、この実施形態は、上記絞り出し手段12の第1実施形態〜第3実施形態のように、支持軸13に特別な部品等を具備させたり、形状を変化させることなく、フィルムパック11から粘性材料Wを効率良く絞り出すことが出来るシンプルな構成としたものである。
【0027】
即ち、この絞り出し手段12の第4実施形態〜第7実施形態では、攪拌手段10の支持軸13の一部にフィルムパック11を挿通させて粘性材料Wの絞り出し可能なスリット26を形成したものである。具体的には、図11(a),(b)に示す第4実施形態では、鉛直な支持軸13aに支持軸13aと直交する向きにスリット26を形成し、このスリット26にフィルムパック11の一端側を挿入すると共に、他端側をカッター等の切断手段により開封させ、前記挿入した一端側を作業者が引っ張ることで、フィルムパック11内の粘性材料Wを絞り出すことが出来る。
【0028】
この第4実施形態〜第7実施形態における絞り出し手段12の一般的な使用方法としては、例えば、フィルムパック11の開封前の粘性材料Wが略一杯に入っている状態では、フィルムパック11の端末部を切断して開封し、絞り出し手段12を使用することなくフィルムパック11内の粘性材料Wを大まか(8〜9割程度)に絞り出す。
【0029】
そして、大まかに絞り出したフィルムパック11内に残存する(1〜2割程度)粘性材料Wは、フィルムパック11内に付着すると共に、粘性があるため手動操作によりフィルムパック11内の粘性材料Wを短時間に綺麗に絞り出すことが難しい。そこで、大まかに絞り出したフィルムパック11を二つ折り、または四つ折りにした状態で、上記のように開口端末部側と反対側の端末部を絞り出し手段12のスリット26に挿通させて作業者が引っ張ることで、フィルムパック11内の略全ての粘性材料Wを確実に絞り出すことが出来るものである。
【0030】
従って、スリット26の長さLは、少なくともフィルムパック11の幅で、スリット26の幅tは、少なくともフィルムパック11の厚さ以上でなければならず、フィルムパック11の2倍以上の厚さが好ましく、2mm程度が最適である。
【0031】
また、図12(a),(b)に示す第5実施形態では、水平な支持軸13bに支持軸13aと平行にスリット26を形成し、このスリット26に水平方向からフィルムパック11の一端側を挿入すると共に、他端側をカッター等の切断手段により開封させ、前記挿入した一端側を作業者が引っ張ることで、フィルムパック11内の粘性材料Wを絞り出すことが出来る。 なお、その他の構成及び作用は上記第4実施形態と同様なので同一符号を付して説明は省略する。
【0032】
また、図13(a),(b)に示す第6実施形態では、水平な支持軸13bに支持軸13aと直交する向きにスリット26を形成し、このスリット26に下側からフィルムパック11の一端側を挿入すると共に、他端側をカッター等の切断手段により開封させ、前記挿入した一端側を作業者が引っ張ることで、フィルムパック11内の粘性材料Wを絞り出すことが出来る。
【0033】
なお、その他の構成及び作用は上記第4実施形態と同様なので同一符号を付して説明は省略する。
【0034】
また、図14(a),(b),(c)に示す第7実施形態は、図12(a),(b)に示す第5実施形態の変形例を示し、この実施形態の場合には、絞り出す粘性材料Wを効率良く攪拌翼6上に落下させて絞り出すようにするため、スリット26の位置を攪拌翼6側にオフセットさせて形成したものである。これにより、絞り出す粘性材料Wは常に容器3の中心側で絞り出す事が出来るものである。
【0035】
なお、その他の構成及び作用は上記第4実施形態と同様なので同一符号を付して説明は省略する。
【0036】
以上のように、この発明では攪拌装置の攪拌手段10に、フィルムパックされた粘性材料Wを絞り出す絞り出し手段12を設けたので、作業現場においてフィルムパック11から粘性材料等を効率良く、しかも確実に絞り出して使い切ることが出来、また攪拌装置と共に絞り出し手段を移動させることが出来、作業性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施形態を示す攪拌手段の正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】この発明の第2実施形態を示す絞り出し手段の正面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】第2実施形態において使用する絞り出し金具の正面図である。
【図8】この発明の第3実施形態を示す絞り出し手段の正面図である。
【図9】第3実施形態でフィルムパックされた粘性材料を絞り出す工程の説明図である。
【図10】図9の側面図である。
【図11】(a)は絞り出し手段の第4実施形態の正面図、(b)は第4実施形態でフィルムパックされた粘性材料を絞り出す工程の説明図である。
【図12】(a)は絞り出し手段の第5実施形態の正面図、(b)は第5実施形態でフィルムパックされた粘性材料を絞り出す工程の説明図である。
【図13】(a)は絞り出し手段の第6実施形態の正面図、(b)は第6実施形態でフィルムパックされた粘性材料を絞り出す工程の説明図である。
【図14】(a)は絞り出し手段の第7実施形態の正面図、(b),(c)は第7実施形態でフィルムパックされた粘性材料を絞り出す工程の説明図である。
【図15】従来の攪拌装置の斜視説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 攪拌装置 2 支持台
3 容器 4 回転テーブル
5 支持軸 6 攪拌翼
7 攪拌手段 W 粘性材料
10 攪拌手段 11 フィルムパック
12 絞り出し手段 13 支持軸
13a 鉛直な支持軸 13b 水平な支持軸
14 支持ベース部材 15 ヒンジ部
14a 支持ベース部材 16 挟持部材 17 止めがね
18 支持軸 19 ローラ
20 絞り出し金具 20a,20b バネ材料
21 開閉操作部
21a,21b フック 22 挟持部
22 挟持部 23 ピン
24 挟持部材 25 操作用ピン
26 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の支持台上に、粘性材料を収容した容器を回転させる回転テーブルと、容器内の粘性材料を攪拌する支持軸と攪拌翼とで構成された攪拌手段とを設置して成る粘性材料の攪拌装置において、
前記攪拌手段に、フィルムパックされた粘性材料を絞り出す絞り出し手段を設けたことを特徴とする粘性材料の攪拌装置。
【請求項2】
前記絞り出し手段は、前記支持軸にフィルムパックの支持ベース部材と、この支持ベース部材に開閉可能な挟持部材とで構成した請求項1に記載の粘性材料の攪拌装置。
【請求項3】
前記挟持部材を、ローラにより形成した請求項2に記載の粘性材料の攪拌装置。
【請求項4】
前記絞り出し手段を、板バネ材料により開閉可能なクリップ状に形成した請求項1に記載の粘性材料の攪拌装置。
【請求項5】
前記絞り出し手段は、前記攪拌手段の支持軸の一部にフィルムパックを挿通させて粘性材料の絞り出し可能なスリットを形成した請求項1に記載の粘性材料の攪拌装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−282275(P2006−282275A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142280(P2005−142280)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】