説明

粘着シートおよび粘着シートの製造方法

【課題】貼付時に使用する水の量が少量で済み、貼付工程初期段階における水の保持性および被着体への圧着時における排水性に優れ、かつ、貫通孔が目立たず外観に優れた粘着シート、および当該粘着シートの製造方法を提供する。
【解決手段】基材11と粘着剤層12とを備え、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔2が複数形成されており、貼付時に水を使用して貼付される粘着シート1であって、基材11の表面1Aにおける貫通孔2の孔径dが、20〜80μmであり、粘着剤層12の粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径dが、10〜60μmであり、基材11の表面1Aにおける貫通孔2の孔径dに対する粘着剤層の粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径dの比(d/d)が、1.2〜4.0である粘着シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付時に水を使用して貼付される粘着シートであって、空気溜まりを防止または除去することのできる粘着シート、および当該粘着シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓等の被着体に貼る装飾フィルム、マーキングフィルム、ガラス飛散防止フィルムなどの寸法の大きい粘着シートにおいては、貼付するときに当該粘着シートに皺が入ったり、被着体と粘着面との間に空気溜まりができたりして、粘着シートの外観を損ねてしまうことがある。また、粘着シートの被着体に対する位置合わせが難しいため、粘着シートの貼り直しが必要になる場合があり、その場合には、粘着シートが破れたり、粘着シートに皺ができたり、粘着性が低下する等の問題が生じることが多い。これらの不具合を防止するために、あらかじめ被着体および/または粘着面の全面に水を付けてから貼付することが行われている。
【0003】
しかしながら、上記作業においては多量の水を使用するため、被着体の周囲が水浸しになるという問題がある。例えば被着体が窓の場合には、窓の下の床が水浸しになってしまう。
【0004】
一方、特許文献1には、化粧シートと粘着剤層と離型紙とからなる粘着シートであって、化粧シートおよび粘着剤層を貫通する貫通孔を設けた粘着シートが開示されている。かかる粘着シートによれば、粘着面側の空気を貫通孔から粘着シート表面側に抜くことにより、粘着シートの空気溜まりを防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−125345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の実施例に係る粘着シートにおける貫通孔の孔径は0.01mm(100μm)であり、かつ、当該貫通孔は針で開けた孔であるため、この粘着シートを例えば窓に貼付した場合には、その貫通孔が目立ち、粘着シートの外観は良好ではなかった。また、水を使用して上記粘着シートを貼付した場合には、被着体と粘着面との間の水が貫通孔からすぐに抜けてしまい、粘着シートに皺が入り易くなったり、粘着シートの被着体に対する位置合わせが困難となったりすることがあり、さらには、粘着シートを被着体に圧着しても、水が貫通孔内に残存し、粘着性に悪影響を与えることがあった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、貼付時に使用する水の量が少量で済み、貼付工程初期段階における水の保持性および被着体への圧着時における排水性に優れ、かつ、貫通孔が目立たず外観に優れた粘着シート、および当該粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と粘着剤層とを備え、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔が複数形成されており、貼付時に水を使用して貼付される粘着シートであって、前記基材の表面における前記貫通孔の孔径が、20〜80μmであり、前記粘着剤層の粘着面における前記貫通孔の孔径が、10〜60μmであり、前記基材の表面における前記貫通孔の孔径に対する前記粘着剤層の粘着面における前記貫通孔の孔径の比が、1.2〜4.0であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0009】
なお、本明細書において、「シート」にはフィルムの概念、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。また、本発明において、「基材の表面」とは、基材における粘着剤層と接する面とは反対側の面をいい、「粘着剤層の粘着面」とは、粘着剤層が被着体と接する面(基材とは反対側の面)をいう。
【0010】
上記のように貫通孔の孔径及び基材表面/粘着面における孔径の比を規定した本発明(発明1)によれば、粘着シートの貼付時に使用する水が、貼付工程初期段階において被着体と粘着面との間に程良く保持され、粘着シートの被着体に対する位置合わせが容易になるとともに、被着体と粘着面との間の空気が貫通孔から抜けることと相俟って、使用する水の量が少量で済み、しかも粘着シートに皺が入ることが効果的に防止される。さらに、使用した水は、粘着シートの被着体への圧着により貫通孔から抜け易く、貫通孔内に水が残存することによる粘着力の低下が防止される。また、上記貫通孔は、基材表面にて目立ち難く、したがって粘着シートは外観に優れたものとなる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、一の貫通孔の中心と、前記一の貫通孔と隣り合う他の貫通孔の中心との間の距離が、1〜15mmであることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記基材の表面の表面粗さ(Ra)が、0.7〜15μmであることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1〜3)において、前記基材には、装飾層が設けられていることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)において、前記装飾層は、二色以上の色分け模様を表示するものであることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1〜5)において、前記粘着剤層の粘着面には、前記貫通孔が貫通していない剥離材が積層されていてもよい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明6)において、前記剥離材は、紙からなる剥離基材と、前記剥離基材に設けられたポリオレフィン層とを備えていることが好ましい(発明7)。
【0017】
上記発明(発明1〜7)において、前記貫通孔は、レーザ加工により形成されていることが好ましい(発明8)。
【0018】
第2に本発明は、前記粘着シートの製造方法(発明1〜8)であって、前記基材の表面側からレーザ加工を施すことにより、前記貫通孔を形成することを特徴とする粘着シートの製造方法を提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る粘着シートによれば、貫通孔の孔径及び基材表面/粘着面における孔径の比を規定することで、貼付時に使用する水の量が少量で済み、また、貼付工程初期段階における水の保持性および被着体への圧着時における排水性に優れ、かつ、貫通孔が目立たず外観に優れる。さらに、本発明に係る粘着シートの製造方法によれば、上記のような粘着シートを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【図2】同実施形態に係る粘着シートの部分拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る粘着シートの製造方法の一例を示す図である。
【図4】実施例で形成した貫通孔の配列を示す図である。
【図5】実施例における基材に印刷した柄模様を示す図(カラー)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、基材11と、粘着剤層12と、剥離材13とを積層してなるものである。ただし、剥離材13は、粘着シート1の使用時に剥離されるものである。
【0023】
この粘着シート1においては、基材11および粘着剤層12を貫通し、基材表面1Aから粘着面1Bに至る貫通孔2が複数形成されている。粘着シート1の使用時、被着体と粘着剤層12の粘着面1Bとの間の空気は、この貫通孔2を通して基材表面1Aの外側に抜けるため、後述するように、空気溜まりを防止すること、または発生した空気溜まりを簡単に除去することができる。
【0024】
ここで、貫通孔2の拡大図を図2に示す。本実施形態では、基材表面1Aにおける貫通孔2の孔径(d)は、20〜80μm、好ましくは40〜70μmであり、粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径(d)は、10〜60μm、好ましくは20〜50μmであり、基材表面1Aにおける貫通孔2の孔径(d)に対する粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径(d)の比(d/d)は、1.2〜4.0、好ましくは1.2〜3.0である。すなわち、粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径(d)は、基材表面1Aにおける貫通孔2の孔径(d)よりも小さくなっており、好ましくは、図2に示すように、貫通孔2の孔径が基材表面1Aから粘着面1Bにかけて漸次小さくなるように、貫通孔2を形成する。
【0025】
貫通孔2が上記のような孔径(d,d)及びその比(d/d)を有することで、粘着シート1の貼付時に使用する水が、貼付工程初期段階において被着体と粘着面1Bとの間に程良く保持され、粘着シート1の被着体に対する位置合わせが容易になるとともに、被着体と粘着面1Bとの間の空気が貫通孔2から抜けることと相俟って、使用する水の量が少量で済み、しかも粘着シート1に皺が入ることが効果的に防止される。さらに、使用した水は、粘着シート1の被着体への圧着により貫通孔2から抜け易く(排水性に優れ)、貫通孔2内に水が残存することによる粘着力の低下が防止される。また、上記のような孔径(d,d)及びその比(d/d)を有する貫通孔2は、基材表面1Aにて目立ち難く、したがって粘着シート1は外観に優れたものとなる。
【0026】
なお、粘着シート1の貼付時に使用する水の量としては、例えば、粘着シート1を窓に貼付する場合、粘着シート1および/または窓から垂れない程度の水の量で足り、さらには、水を含む布で窓を拭いた後に残った水滴程度でも足りる。
【0027】
貫通孔2の孔径(d,d)が上記よりも小さいと、空気および水が貫通孔2から抜け難くなる。一方、貫通孔2の孔径(d,d)が上記よりも大きいと、貫通孔2が基材表面1Aにて目立ち易く、粘着シート1の外観を損なう。また、貼付工程初期段階において、被着体と粘着面1Bとの間の水が貫通孔2からすぐに抜けてしまい、粘着シート1に皺が入り易くなったり、粘着シート1の被着体に対する位置合わせが困難となったり、あるいは多量の水を必要とする。
【0028】
基材表面1Aにおける貫通孔2の孔径(d)に対する粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径(d)の比(d/d)が、上記よりも大きいと、貫通孔2の壁面の斜度が大きくなり、貫通孔2が基材表面1Aにて目立ち易くなる。当該比(d/d)が上記よりも小さい(d/d≒1,d≒d)と、貫通孔2内に埃等が溜まり易く、当該比(d/d)がさらに小さくなると(d/d<1,d<d)、粘着シート1を被着体に圧着した後も、貫通孔2から水が抜けきらず、貫通孔2内に水がこもり、それにより粘着力が低下してしまう。
【0029】
一の貫通孔2の中心と、その一の貫通孔2と隣り合う他の貫通孔2の中心との間の距離(孔間距離)は、0.5〜15mmであることが好ましく、特に1〜12mmであることが好ましい。孔間距離が0.5mm未満であると、被着体と粘着面1Bとの間の水が貫通孔2からすぐに抜けてしまい、多量の水を必要としたり、粘着シート1に皺が入り易くなったり、粘着シート1の被着体に対する位置合わせが困難となる場合があり、また、粘着シート1の機械的強度が低下するおそれがある。一方、孔間距離が15mmを超えると、空気および水が抜け難くなるおそれがある。
【0030】
貫通孔2は、後述するレーザ加工により形成するのが好ましい。レーザ加工によれば、上記の条件を満たす貫通孔を容易に形成することができる。ただし、貫通孔2の形成方法はこれに限定されるものではなく、例えば、ウォータージェット、マイクロドリル、精密プレス、熱針、溶孔等によって形成してもよい。
【0031】
基材11の材料としては、上記のような貫通孔2が形成され得る材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂フィルム、金属フィルム、金属を蒸着させた樹脂フィルム、それらの積層体等を使用することができる。
【0032】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂などの樹脂からなるフィルム、発泡フィルム、またはそれらの積層フィルム等を使用することができる。樹脂フィルムは、市販のものを使用してもよいし、工程材料を用いてキャスト製膜法等で形成したものを使用してもよい。
【0033】
上記の中でも、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは、曲面追従性に優れる点から好ましい。また、後述する装飾層を印刷によって形成する場合には、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは、インキの定着性に優れる点からも好ましい。
【0034】
基材11が樹脂フィルムからなる場合、基材11は不透明であってもよいし、透明であってもよいが、一般的に基材11が不透明の方が、貫通孔2が目立ち難い。
【0035】
また、貫通孔2を目立ち難くするために、基材11の表面の表面粗さ(Ra)を、0.7〜15μmとすることが好ましく、特に0.7〜10μmとすることが好ましい。
【0036】
あるいは、貫通孔2を目立ち難くするために、基材11には、貫通孔2を設ける前に、あらかじめ装飾層を設けることが好ましい。基材11が不透明の場合には、装飾層は基材11の表面側に設けられる必要があるが、基材11が透明の場合には、装飾層は基材11の表面側に設けられてもよいし、裏面側(粘着剤層12側)に設けられてもよいし、その両面に設けられてもよい。
【0037】
装飾層は、二色以上の色分け模様を表示するものであることが好ましく、それにより、貫通孔2はより目立ち難くなる。模様は、所定の柄であってもよいし(実施例参照)、写真であってもよいし、文字であってもよい。
【0038】
装飾層は、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法によって形成することができる。基材11には、上記装飾層を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のアンダーコート層が形成されていてもよいし、ハードコート、汚染防止コート、表面粗さおよび鏡面光沢度調整用コート等のトップコート層が形成されていてもよい。また、それら装飾層、アンダーコート層またはトップコート層は、基材11の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
【0039】
基材11の厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは25〜200μm程度であるが、粘着シート1の用途に応じて適宜変更することができる。
【0040】
粘着剤層12を構成する粘着剤の種類としては、貫通孔2が形成され得るものであれば特に限定されるものではなく、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系、シリコーン系等のいずれであってもよい。また、粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。
【0041】
粘着剤層12の厚さは、通常は1〜300μm、好ましくは10〜50μm程度であるが、粘着シート1の用途に応じて適宜変更することができる。
【0042】
剥離材13の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0043】
剥離材13の材料としては、上記の中でも、ラミネート紙に剥離処理したものを使用することが好ましい。かかる剥離材13としては、図2に示すように、紙からなる剥離基材131と、剥離基材131上にラミネートされたポリオレフィン層132と、ポリオレフィン層132上に形成された剥離剤層133とを備えたものが好ましい。この剥離剤層133にも、上記で挙げた剥離剤を用いることができる。
【0044】
ポリオレフィン層132は、レーザ光の照射エネルギーを分散し易く、かかるポリオレフィン層132を備えていることにより、粘着シート1の表面側からレーザ加工を施したときに(図3(d)参照)、レーザ光が基材11および粘着剤層12のみを貫通し、剥離材13は貫通しないようにすることができる。これにより、レーザ光照射による製造ライン、具体的にはステージ(粘着シート1を支持搬送する部材)の損傷を防止することができる。
【0045】
ポリオレフィン層132を構成するポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、中でもポリエチレンが好ましい。
【0046】
剥離材13の厚さは、通常10〜250μm程度であり、好ましくは50〜200μm程度である。また、剥離基材131の厚さは、好ましくは5〜220μm程度であり、ポリオレフィン層132の厚さは、好ましくは10〜30μm程度であり、剥離剤層133の厚さは、通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜3μmである。
【0047】
なお、本実施形態に係る粘着シート1における貫通孔2は、基材11および粘着剤層12のみを貫通するものであるが、剥離材13をも貫通していてもよい。
【0048】
また、本実施形態に係る粘着シート1は剥離材13を備えたものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、剥離材13はなくてもよい。さらに、本実施形態に係る粘着シート1の大きさ、形状等は特に限定されるものではない。例えば、粘着シート1は、基材11および粘着剤層12のみからなるテープ状のもの(粘着テープ)であって、ロール状に巻き取られて巻取体となり得るものであってもよい。
【0049】
〔粘着シートの製造〕
上記実施形態に係る粘着シート1の製造方法の一例を図3(a)〜(d)を参照して説明する。
【0050】
本製造方法においては、最初に図3(a)〜(b)に示すように、剥離材13の剥離処理面に、粘着剤層12を形成する。粘着剤層12を形成するには、粘着剤層12を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離材13の剥離処理面に塗布して乾燥させればよい。
【0051】
次に、図3(c)に示すように、粘着剤層12の表面に基材11を圧着し、基材11と粘着剤層12と剥離材13とからなる積層体とする。
【0052】
そして、図3(d)に示すように、少なくとも基材11および粘着剤層12を貫通する貫通孔2を形成する。この貫通孔2の形成はレーザ加工によって行うことが好ましく、特に、基材表面1A側からレーザ光を照射することが好ましい。レーザ加工によって形成する貫通孔2には、通常先細りのテーパがつくため、上記のように基材表面1A側からレーザ加工を施すことにより、粘着剤層12の粘着面1Bにおける孔径(d)は、基材表面1Aにおける貫通孔2の孔径(d)よりも小さくなり、基材表面1Aにおける貫通孔2の孔径(d)に対する粘着面1Bにおける貫通孔2の孔径(d)の比(d/d)を前述した範囲内(1.2〜4.0)に制御し易くなる。
【0053】
上記のようにレーザ加工を行う場合、レーザ光(貫通孔2)は、基材11および粘着剤層12は貫通するが、剥離材13は貫通しないことが好ましい。これにより、レーザ光照射による製造ラインの損傷を防ぐことができる。
【0054】
レーザ加工に利用するレーザの種類は特に限定されるものではなく、例えば、炭酸ガス(CO)レーザ、TEA−COレーザ、YAGレーザ、UV−YAGレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YVOレーザ、YLFレーザ等を利用することができる。
【0055】
また、上記のようにレーザ加工を行うときに、基材11の表面に保護フィルムを貼付することにより、レーザ加工で生じ得る溶融物が基材11の表面に付着することを防ぐことができる。保護フィルムとしては、建築材料や金属板に用いられる公知の保護フィルムを用いることができる。また、基材11として、キャスト製膜法で製造したものを用いる場合には、基材11の表面にキャスト製膜用のキャリアシートを積層した状態でレーザ加工を行っても、同様の効果が得られる。
【0056】
なお、上記製造方法では、粘着剤層12を剥離材13上に塗布形成し、形成された粘着剤層12と基材11とを貼り合わせたが、本発明はこれに限定されるものではなく、粘着剤層12を基材11上に直接塗布形成してもよい。
【0057】
〔粘着シートの使用〕
例えば窓等の被着体に粘着シート1を貼付する際には、まず、剥離材13を粘着剤層12から剥離し、露出した粘着剤層12の粘着面1Bおよび/または被着体の表面に、水を付ける。水は、霧吹き等によって付けることができるが、その量は、垂れない程度でよい。また、水を含む布で被着体を拭いた後に残った水滴程度でも足りる。本実施形態に係る粘着シート1によれば、このように少量の水を使用することで、粘着シート1に皺が入るのを防止することができ、また、被着体に対して粘着シート1を位置合わせすることが容易になる。
【0058】
次に、露出した粘着剤層12の粘着面1Bを被着体に貼り付けながら、被着体に対する粘着シート1の位置合わせができたら、手貼り又はスキージ等により、粘着シート1を被着体に圧着する。このとき、被着体と粘着剤層12の粘着面1Bとの間の空気は、粘着シート1に形成された貫通孔2から基材表面1Aの外側に抜けるため、被着体と粘着面1Bとの間に空気溜まりができることが防止される。仮に空気溜まりができたとしても、その空気溜まり部または空気溜まり部を含んだ空気溜まり部周辺部を再圧着することにより、空気が貫通孔2から基材表面1Aの外側に抜けて、空気溜まりが消失する。このような空気溜まりの除去は、粘着シート1の貼付から長時間経過した後でも可能である。
【0059】
また、上記のように粘着シート1を被着体に圧着することにより、粘着面1Bおよび/または被着体に付いていた水は貫通孔2から抜け、貫通孔2内に水が残存することによる粘着力の低下、それによる粘着シート1の浮き、剥がれが防止される。なお、本実施形態に係る粘着シート1における貫通孔2は基材表面1Aにて目立ち難く、したがって当該粘着シート1は外観に優れる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
上質紙の片面をポリエチレン樹脂でラミネートし、そのラミネート面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離材(リンテック社製,KP−64シロ,厚さ:80μm)の剥離処理面に、アクリル系溶剤型粘着剤(リンテック社製,PA−10)の塗布剤を乾燥後の厚さが26μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させた。このようにして形成した粘着剤層に、表面粗さ(Ra)が0.19μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなる透明の基材(オカモト社製,厚さ:100μm)を圧着し、3層構造の積層体を得た。
【0062】
なお、表面粗さ(Ra)の測定は、JIS B0601に従い、カットオフ値λc=0.8mm、評価長さln=10mmとし、測定装置としてミツトヨ社製SV−3000S4を使用して行った(以下同じ)。
【0063】
次いで、基材表面側から上記積層体に対してCOレーザ光を照射して、図4に示すような配列で貫通孔を形成し、これを粘着シートとした。具体的には、平面視にて、孔数26個の直線状に並んだ単位を粘着シートの幅方向にジグザグ状に形成し、それを一群として、粘着シートの長さ方向に当該群を互いに重ならないように繰り返し形成した。直線状に並んだ単位の長さは50mm、当該単位における孔間距離は2mmであり、群の長さ方向端部における孔間距離(粘着シート幅方向の距離)は3mmおよび10mmであった。また、直線状に並んだ単位の粘着シート長さ方向に対する傾斜角θは、7°であった。
【0064】
形成した貫通孔の基材表面における孔径(d)は約50μm、粘着面における孔径(d)は約30μm、それらの孔径の比(d/d)は1.7であった。貫通孔の孔径は、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製,S−2360N形)を使用して測定した(以下同じ)。なお、貫通孔は、基材および粘着剤層は貫通するが、剥離材は貫通しなかった。
【0065】
ここで、使用した基材における印刷の有無または柄模様の種類、表面粗さ(Ra)、貫通孔の粘着面および基材表面における孔径(d,d)、ならびに孔径の比(d/d)を表1に示す。
【0066】
〔実施例2〜10,比較例1〜5〕
表1に示す印刷および表面粗さ(Ra)を有する基材を使用するとともに、貫通孔の粘着面および基材表面における孔径(d,d)、ならびに孔径の比(d/d)が表1の値になるように貫通孔を形成する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0067】
ここで、実施例2および4〜10ならびに比較例1〜5では、表面粗さ(Ra)を大きくするために、表面(粘着剤層と接しない面)にエンボス加工によるマット処理が施されている基材を使用した。また、実施例3〜10および比較例1〜5では、さらに裏面(粘着剤層と接する面)にスクリーン印刷により柄模様A〜Fが印刷されている基材を使用した。
【0068】
上記柄模様A〜Fを図5に示す。Aは、シャボン玉風の模様である。Bは、花びら、蝶およびてんとう虫の模様である。Cは、小花が咲いた植物の模様である。Dは、ハワイアン風の植物の模様である。Eは、ステンドグラス風の模様である。Fは、いびつな円形が複数表示された模様である。いずれの模様も、3色以上の色で色分けされている。
【0069】
〔試験例〕
(1)水・空気抜け性試験
実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下のようにして水・空気抜け性試験を行った。結果を表2に示す。
【0070】
被着体として、最大深さ1mmの部分球面形の窪み(凹部)を有する70mm×70mmのガラス板を用意した。粘着シート(大きさ:50mm×50mm)から剥離材を剥離し、露出した粘着面およびメラミン塗装板の表面に、霧吹きにより少量の水を付着させた。
【0071】
そして、粘着シートの粘着面をメラミン塗装板の表面に貼り付け(窪みと粘着シートとの間には空気溜りが存在する)、その粘着シートを手で圧着し、水および空気が抜けるか否かを確認した。その結果、水および空気が残らなかったものを○、水または空気が残ったものを×で表す。
【0072】
(2)外観検査
実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下のようにして外観検査を行った。結果を表2に示す。
【0073】
剥離材を剥した粘着シート(大きさ:30mm×30mm)をメラミン塗装板に貼り、室内蛍光灯の下、肉眼によって、粘着シート表面の外観について検査した。なお、目から粘着シートまでの距離は約30cmとし、粘着シートを見る角度は種々変えた。その結果、貫通孔を認識できなかったものを◎、一部の角度だけで貫通孔を認識できたものを○、総じて貫通孔を認識できたものを×で表す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表1および表2から分かるように、本発明の条件に合致する貫通孔を形成した粘着シート(実施例1〜10)は、水抜け性およびエア抜け性に優れるとともに、貫通孔が見え難く、良好な外観を呈していた。なお、比較例5においては、貫通孔の中に水が残っているのが見えた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の粘着シートは、窓等の被着体に貼る装飾フィルム、マーキングフィルム、ガラス飛散防止フィルム等の寸法の大きい粘着シートとして好適である。
【符号の説明】
【0078】
1…粘着シート
11…基材
12…粘着剤層
13…剥離材
131…剥離基材
132…ポリオレフィン層
133…剥離剤層
1A…基材表面
1B…粘着面
2…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層とを備え、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔が複数形成されており、貼付時に水を使用して貼付される粘着シートであって、
前記基材の表面における前記貫通孔の孔径が、20〜80μmであり、
前記粘着剤層の粘着面における前記貫通孔の孔径が、10〜60μmであり、
前記基材の表面における前記貫通孔の孔径に対する前記粘着剤層の粘着面における前記貫通孔の孔径の比が、1.2〜4.0である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
一の貫通孔の中心と、前記一の貫通孔と隣り合う他の貫通孔の中心との間の距離が、1〜15mmであることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記基材の表面の表面粗さ(Ra)が、0.7〜15μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記基材には、装飾層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
前記装飾層は、二色以上の色分け模様を表示するものであることを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層の粘着面には、前記貫通孔が貫通していない剥離材が積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
前記剥離材は、紙からなる剥離基材と、前記剥離基材に設けられたポリオレフィン層とを備えていることを特徴とする請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記貫通孔は、レーザ加工により形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の粘着シートの製造方法であって、
前記基材の表面側からレーザ加工を施すことにより、前記貫通孔を形成することを特徴とする粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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