粘着シートと粘着シート構造体
【課題】使用済みとなった際に粘着シート自体の材質を容易に識別して、分別回収及びリサイクルを可能とする。
【解決手段】文字,図形,記号をもってプラスチック材質を識別するための材質表示を繰返し模様Mにて、粘着層2の裏面2Bの全体に表示する。
【解決手段】文字,図形,記号をもってプラスチック材質を識別するための材質表示を繰返し模様Mにて、粘着層2の裏面2Bの全体に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートと粘着シート構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策として各種プラスチック製品に材質表示し、それらの廃棄物を材質別に分別回収するリサイクル方法が盛んに行われている。
ところが、粘着シートに関しては、その用途として、広い面積の装飾シートや広告・宣伝シートとして、電車,バス,飛行機に貼着したり、ビルディング外壁や店舗等に貼着される場合も多い。このような場合に、粘着シートの表て面には美しい風景や人物やその他各種デザインの文字等が印刷等にて表示されているので、美観上(美的理由)から、粘着シートに材質表示を行うことは至難であり、実施されていないのが実状であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2503717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粘着シートでは、上述のように美観上(美的理由)からそのプラスチック材質に関しての材質表示が困難であるとして、行われていなかったので、所定使用期間の後に被貼付面から剥して廃棄物として廃棄する際、不燃物として埋立処理せざるを得なかった。
そこで、本発明は、粘着シートを、各種プラスチック廃棄物として、分別回収を可能とすること、及び、高能率にリサイクルできることを、目的とする。また、フィルムがコンパウンドである場合に、RoHS指令の有害物質が含有されているか否か等の有用な情報は、粘着シートに表示することは、上述の美感上(美的理由)等から困難とされており、従来から、このような情報の表示も行われていなかった。
【0005】
2層以上の多層からなる粘着シートはその殆どが種々のプラスチックで構成されている。一般的にプラスチック廃棄物のリサイクル処理方法には、(i) マテリアルリサイクル、(ii)サーマルリサイクル、(iii) ケミカルリサイクルの3種類ある。
マテリアルリサイクルは、使用済みプラスチック製品を熱溶融によって融かし同じ製品もしくは別の製品(殆どがより低品位な製品)の樹脂材料として再利用する手法であるが、廃棄物は同一成分、同一物性である必要があり分別収集が必須である。また、サーマルリサイクルは、使用済みのプラスチックを発電所などで燃焼して電気、熱エネルギーとして回収する、もしくは固形燃料化して再利用する手法であるが、燃焼カロリーが低いPVCや添加剤、充填剤を混入したコンパウンド樹脂などはエネルギー回収効率を悪化させる、あるいはダイオキシンなど有毒ガスが発生する危険性がある一方、PPやPE,PSなどポリオレフィン樹脂は石灰よりも高く、灯油とほぼ同等の燃焼カロリーを保有しており、エネルギー回収効率が著しく向上するため、廃棄物の分別収集は必須になる。ケミカルリサイクルは、化学反応を用いて使用済みプラスチックを分解して高品位な燃料(例えばガソリンなど)や化学原料(モノマー原料)に還元して再利用する手法である。PETなどポリエステル系樹脂の加水分解反応によるモノマー還元、ポリオレフィン樹脂の熱分解反応による油化や改質反応によるガソリン生成やガス化、アクリル樹脂の熱分解反応によるモノマー還元などのプロセス例があるが、この場合も分別収集されなければリサイクルで用いる化学反応の反応率や収率、生産性を著しく損なう結果となる。以上から粘着シート廃棄物をいずれの上記リサイクル処理法にて効率良く実現するためには粘着シート廃棄物の材質種類と成分を正確かつ明確に識別でき分別することが必須となる。
そこで、本発明の他の目的とするところは、前記RoHS指令の有害物質の含有の有無等の情報―――フィルム材質に関する情報と呼ぶ―――を、粘着シート自体から読み取り可能とし、かつ、美観を損なわずに表示する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る粘着シートは、フィルム本体と、該フィルム本体の裏面に積層した粘着層とを備えた粘着シートに於て、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、凹状又は凸状に形成したものである。
また、フィルム本体と、該フィルム本体の裏面に積層した粘着層とを備えた粘着シートに於て、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、凹状又は凸状に形成したものである。
【0007】
また、本発明に係る粘着シート構造体は、フィルム本体と粘着層と剥離フィルムを順次積層した粘着シート構造体に於て、上記剥離フィルムの表て面には反転模様を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、上記反転模様の押圧によって、凹状又は凸状に形成したものである。
また、フィルム本体と粘着層と剥離フィルムを順次積層した粘着シート構造体に於て、上記剥離フィルムの表て面には反転模様を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、上記反転模様の押圧によって、凹状又は凸状に形成したものである。
【0008】
また、露出状態とした上記粘着層の裏面の情報表示単位又は材質表示単位は、肉眼又は読取機器にて情報を読み取り可能な大きさに形成されている。
また、被貼付面に上記粘着層を貼付けた状態で、上記繰返し模様によって、上記被貼付面と上記粘着層との間で、外部に連通する多数本の通気路が形成されると共に、各通気路の幅寸法が大小変化して、最小幅:最大幅が、(1:15)〜(1:5)に設定されている。
なお、本発明に於て、図形又は記号としては、QRコードやバーコード等の暗号をも包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新品又は使用中若しくは使用済みの粘着シートに関して、RoHS指令の有害物質の有無、及び、その対策方法等の莫大なかつ有益な「フィルム材質に関する情報」を、確実に粘着シートの美感を損なわずに表示でき、さらに、確実かつ容易に読み取ることができる。あるいは、使用済みで廃棄物となった粘着シートに関して、プラスチック材質毎の分別回収が可能となり、高効率なリサイクル利用を実現できる。
また、粘着層の裏面全体に材質表示単位が施されているので、粘着シートの表て側からは人の目には見えず、装飾やメディア(広告・宣伝)等の用途に於て、美観(美感)を損ねることがなく、乗り物の外表面やビルディング等の広い面積の箇所への貼着から、比較的狭い箇所への貼着にも、好適である。
しかも、貼着使用状態で、ふくらみ(ふくれ)を防ぐために、被貼着面との間のエアー(ガス)を抜くエアー抜け性能も維持される上、貼着時の仮留め、位置決め性能も維持される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態を示す拡大要部断面図である。
【図2】剥離フィルムの表て面の反転模様の一例の説明図である。
【図3】粘着層の裏面の繰返し模様の一例の説明図である。
【図4】剥離フィルムの表て面の反転模様の他例を示す説明図である。
【図5】粘着層の裏面の繰返し模様の他例を示す説明図である。
【図6】粘着シート構造体から剥離フィルムを剥離した状態を示す拡大要部断面図である。
【図7】通気路の一例の幅寸法説明図である。
【図8】通気路の他の例の幅寸法説明図である。
【図9】剥離フィルムの表て面の反転模様の別例を示す説明図である。
【図10】粘着層の裏面の繰返し模様の別例を示す説明図である。
【図11】剥離フィルムの表て面の反転模様のさらに他の例を示す説明図である。
【図12】粘着層の裏面の繰返し模様のさらに他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1及び図6に示す拡大要部断面図に於て、1はフィルム本体、2は粘着層、3は剥離フィルムであって、表て面から裏面側に、フィルム本体1と粘着層2と剥離フィルム3が順次積層され粘着シート構造体Sが構成される。
【0012】
フィルム本体1は公知の各種のプラスチック材質や構造のもの(不織布,複合積層材を含む)が適用可能であって、1層構造に限らず、2層以上の構造とすることもでき、厚さ寸法T1 は6〜3000μmが使用でき、80〜 200μmが好適であり、また、広告・宣伝や装飾のために人物,風景,製品,絵画等や文字(文章)等が印刷等にて表示されている(図示省略)。
粘着層2の材質も公知の種々のものを用い得て限定されるものではない(なお、ホットメルトタイプも含む)と共に、(平均)厚さ寸法T2 は5〜 300μm程度が好ましい。粘着層の材質は貼着時に圧力や熱を利用して接着性が発現するものをいう。圧力によって接着性が発現するものを感圧接着剤と呼び、常温にて粘着性を保持している。感圧接着剤には架橋剤を用いてもよく、熱硬化型や紫外線など放射線硬化型が好んで使用される。熱によって接着性が発現するものをホットメルト接着剤(もしくは粘着剤)と呼びJIS K 7210におけるメルトフローレイトが 0.1〜1000g/10分の間のものが好ましい。また、粘着シートの識別性能を向上させる、もしくは隠蔽性を付加するなどのために粘着層に無機、有機顔料の充填剤などを添加してもよい。
剥離フィルム3は、その表て面3Aは剥離面である。剥離フィルム3の材質も公知の種々のものを用い得て限定されるものではない。紙やプラスチックフィルム単体でも良いし、それらの複合体、積層体を用いても良い。またシリコーンなど表面張力が16〜21dyn/cmほどの小さい剥離剤を施して剥離処理面を設けても良い。
【0013】
図6に示すように、剥離フィルム3を粘着層2の裏面2Bから剥離することによって、被貼着面に貼付ける、フィルム本体1と粘着層2とから成る粘着シート10が得られる。
そして、図6に於て、矢印C−C方向から見た場合、粘着層2の裏面2Bの全体にわたって、図3や図5又は図10もしくは図12に示す如く、文字,図形,記号を組み合わせて成ると共に、廃棄の際に(そのプラスチックの)材質を識別するための材質表示単位を繰返して連続させた繰返し模様M、又は、(図示省略の)QRコード,バーコード等のコード(暗号表示)を用いた「フィルム材質に関する情報」を示す情報表示単位を繰返して連続させた繰返し模様Mが、形成されている。
なお、(図示省略するが、)上記のフィルム材質に関する情報を示す情報表示単位と、上記の材質を識別するための材質表示単位を、併用して、繰返し模様Mとするも、望ましい。
【0014】
図3と図5では、繰返し模様Mは凹状に形成され、また、図10,図12では、繰返し模様Mは凸状に形成されている。
材質表示単位としては、例えば、SPIコードをベースとしたもの(図3,図10参照)や、プラスチック製容器包装マーク等をベースとして表示したもの(図5参照)や、JIS(ISO)プラスチック材質表示を併記したもの(図5参照)等が列挙できる。
【0015】
また、図3に示す具体例では、前記材質表示単位は、数字「1」とそれを包囲する三角、及び、「PET」とそれを包囲する逆三角とを、組み合わせた菱形ユニットが該当するといえる。
また、図5に示す他の具体例では、前記材質表示単位は、「PP.PAK」の文字、及び、「プラの文字とそれを包囲する2本の矢印」とを、組合せたユニットが該当するといえる。
また、図10に示す別の具体例では、前記材質表示単位は、数字「1」とそれを包囲する3個の矢印から成る三角、及び、「PET」との組合せたユニットが該当するといえる。
また、図12に示すような表示も好ましく、「PP」と「PAK」が、フィルム本体1と粘着層2に使用されていることが、明らかに判る。
また、文字や記号の太さは接着面積、つまり接着性能やエアー抜け性能、仮留め位置決め性能に影響してくるので、要求性能に合わせて適度に調整する。必要ならばコンマやピリオド、コロンなどの句読点もしくは強調線などを挿入して接着面積を増減、調節してもよい(図4,図5,図11, 図12参照)。その場合でも情報の識別、読み取りが可能でかつ挿入した句読点に関わる通気路が連通してガス、エアー抜け性能、位置決め性能が保持できるようにする。
図3,図5,図10,図12のいずれも、上下左右の4方向に繰返す繰返し模様である場合を例示した。なお、2方向に繰返す繰返し模様とすることも可能である(図示省略)。
【0016】
ところで、図6に示すように粘着層2の裏面2Bを露出状とした状態で、矢印C−C方向から見て、前述の材質表示単位は、人の肉眼にて、材質の識別情報を読み取り可能な大きさ(寸法)に形成するのが望ましい。例えば、この材質表示単位の寸法(縦横平均寸法)を、 1.5mm〜15mmに該当する。特に、4mm〜8mmとするのが、上述の読み取り可能で、かつ、貼着使用状態で裏面の繰返し模様Mが目立たない(見えない)という点から、望ましい。
また、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位については、人の肉眼にて読み取り可能とすることも可能であるが、好ましくは、コードリーダ等の読み取り機器を用いて読み取り可能とする。
粘着層表面において、その凸面は主に粘着力など粘着性能を、凹面は文字や記号など表示識別性能を保有する面であるが、その識別性能を保有する凹面のみに梨地や鏡面などのエンボス加工、もしくは着色を施して識別情報の読み取りをより容易にすることも可能である。その場合、剥離フィルムの凸面にエンボス加工を施す、もしくは粘着加工の際に転写する着色インクを施しておくとよい。
なお、繰返し模様Mとして、図3,図5,図10,図12の具体例に限らず、種々設計変更自由であり、廃棄方法、返品(リサイクル)方法、製造メーカー名、ホームページアドレス等を、材質表示単位、及び/又は、情報表示単位の構成の一部乃至全体として記載したり、あるいは、上記繰返し模様Mの一部に所定ピッチにて介在させるのも、自由である。
【0017】
次に、粘着シート構造体Sの一部を構成している剥離フィルム3について追加説明すれば、この剥離フィルム3の表て面3Aには、図2,図4,図9,図11に示すような反転模様Zが全面にわたって形成されている。つまり、この反転模様Zの押圧によって、前述の繰返し模様Mが粘着層2の裏面2B全体に、凹凸を逆転して、形成される。
【0018】
図2,図3,図4,図5,図9,図10,図11,図12に於て、黒色部分は凸状(突条部)を示し、白抜き部分は凹状(凹溝乃至凹窪部)を示す。
図2と図3、図4と図5、図9と図10,図11と図12とが各々対応し、繰返し模様Mを裏返したのが反転模様Zであるといえる。言い換えると、反転模様Zは繰返し模様Mの鏡像であり、凹と凸も逆である。
【0019】
図3,図5,図10,図12に示した繰返し模様Mに於て、白色部分(白抜き部)は、凹状(凹溝乃至凹窪部)であることは、既に説明したが、各図面から明白な如く、この繰返し模様Mに於て、独立(孤立)した凹部が全く存在していない。即ち、この繰返し模様Mは、材質表示単位(及び他の文字・図形等)が相互に連続状に描かれ(表示され)、かつ、上下左右の4方向(又は2方向)に繰返されるため、フィルム本体1の(図外の)外端縁部に、(凹状の)凹溝乃至凹窪部は全て連通状態である。
従って、以下のように表現することもできる。即ち、被貼付面に粘着シート10の粘着層2を貼付けた状態で、繰返し模様Mによって、被貼付面と粘着層2との間で、外部(外端縁部)に連通する多数本の通気路Eが、交叉と分岐を複雑に繰返しつつ、形成され、いずれの通気路Eも、その幅寸法Wが、大きく変化する(図3,図5,図10,図12及び図7,図8参照)。
【0020】
この幅寸法Wの最小幅をW2 とし、最大幅をW1 とすると、W2 :W1 を、(1:15)〜(1:5)の範囲に設定するのが望ましい。つまり、1/15≦(W2 /W1 )≦1/5とする。図7,図8に於て、最小幅W2 の部位は、狭小連通部5に該当する。
下限値未満であると、気体(ガスや空気)が、被貼付面と、粘着シート10の粘着層2との間に貼り込まれた、又は、ガスとして発生した、気体が外部へ抜けにくくなる。逆に、上限値を越すと、繰返し模様Mとしてのデザインが難しくなり、かつ、材質表示の読み取りが困難となる場合が多い。
なお、前記厚さ寸法T2 は平均厚さ寸法を意味する。従って、所望によって、最も厚さ寸法T2 が小さい箇所では、極めて小乃至零もあり得る。
【0021】
本発明に係る繰返し模様Mは、上述の図示の実施の形態以外にも種々変形自由であって、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成る情報表示単位、及び/又は、材質表示単位を、繰返して連続させれば十分である。つまり、文字のみ,図形のみ,記号のみから情報表示単位、及び/又は、材質表示単位を構成しても良い。また、SPIコード、プラスチック製容器包装マーク、その他のマーク(コード)を、そのまま用いても、デザイン上の変形を加えても、自由である。また、廃棄(処理)方法や返品方法や製造メーカー名やそのホームページアドレス等を連続した文字又は筆記体によって上述の繰返し模様と一体連続状に追加表示することもできる。
なお、本発明に於て、図形又は記号としては、QRコードやバーコード等の暗号表示も包含するものと定義する。フィルムがコンパウンドの場合、RoHS指令の有害物質等の莫大なデータを上記暗号表示にて、記録され、これは、コードリーダー等の各種の読み取り機器にて読み取るのが好ましい。
【0022】
ところで、本発明の上述の粘着シート構造体Sの製法について説明すれば、まず、剥離フィルム素材をエンボス加工によって、一面に前記反転模様Zを形成して、図6の下半部に示した剥離フィルム3を作製する。
図6を参考として説明すると、フィルム本体1に、繰返し模様Mの凹溝や凸条の全く無い粘着層を積層した中間フィルムを作製しておいて、この中間フィルムの粘着層の平坦面(図示省略)に対して、上述の反転模様Zの形成された剥離フィルム3を、押圧することで、図1に示すような、凹溝や凸条の繰返し模様Mが形成される。
使用時には、逆に図1から剥離フィルム3を剥離して、図2のような粘着シート10を得る。
【0023】
本発明は上述のように、粘着シート10の裏面には、情報媒体としての表示が施され、特に、情報媒体としての表示として、RoHS指令の有害物質等のデータを読み取り可能な、又は、使用済み粘着シート10のプラスチック材質を識別可能な、繰返し模様Mが形成されているものである。
本発明は、上述のように構成されているので、美感(装飾)が重要視される装飾フィルムとして特に好適であり、かつ、廃棄処分の際に偉力を発揮して、偉力を発揮して、材質別の分別回収及びリサイクルの実現に貢献する。しかも、粘着シートとして半永久的に重要な情報を(裏面側に)表示できている。
【0024】
本発明は以上詳述したように、フィルム本体1と、該フィルム本体1の裏面に積層した粘着層2とを備えた粘着シートに於て、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様Mとして、上記粘着層2の裏面2Bの全体に、凹状又は凸状に形成した構成であるので、使用済みとなった際に材質表示単位を読めばその材質を容易かつ確実に識別でき、材質別に分別回収できて、資源のリサイクル活用に大きく貢献できる。さらに、乗物やビルディングや店舗等に貼着した際にエアーが貼り込まれずに繰返し模様Mと被貼着面の間に形成される多数本の通気路Eを介して、外部に抜けてゆき、美しく平坦面状に貼付けでき、しかも、使用期間中にガスが仮に発生したとしても上記通気路Eから外部へ抜けてゆき、ふくれを発生しない(エアー抜け性能が従来と変わらず維持できる)。しかも、フィルム本体1に表現された美しい広告・宣伝表示や各種の装飾が、粘着層2の裏面2B側に形成された繰返し模様によって、損なわず、使用状態に於ける粘着シート10の美観(美感)は優秀なまま維持できる。
【0025】
また、本発明に係る粘着シート構造体は、フィルム本体1と粘着層2と剥離フィルム3を順次積層した粘着シート構造体に於て、上記剥離フィルム3の表て面3Aには反転模様Zを全面にわたり凸状又は凹状に形成し、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様Mとして、上記粘着層2の裏面2Bの全体に、上記反転模様Zの押圧によって、凹状又は凸状に形成したので、粘着シート10を容易に、かつ、正確な模様Mを描くことが可能であり、例えば、粘着シート構造体をロール巻きとして作製して、使用箇所に応じて必要な寸法(面積)の枚葉シートとすることができて好都合である。
【0026】
そして、被貼付面に貼着使用した粘着シート10が、使用済みとなった際に材質表示単位を読めばその材質を容易かつ確実に識別でき、材質別に分別回収できて、資源のリサイクル活用に大きく貢献できる。さらに、乗物やビルディングや店舗等に貼着した際にエアーが貼り込まれずに繰返し模様Mと被貼着面の間に形成される多数本の通気路Eを介して、外部に抜けてゆき、美しく平坦面状に貼付けでき、しかも、使用期間中にガスが仮に発生したとしても上記通気路Eから外部へ抜けてゆき、ふくれを発生しない(エアー抜け性能が従来と変わらず維持できる)。しかも、フィルム本体1に表現された美しい広告・宣伝表示や各種の装飾が、粘着層2の裏面2B側に形成された繰返し模様によって、損なわず、使用状態に於ける粘着シート10の美観(美感)は優秀なまま維持できる。
【0027】
また、露出状態とした上記粘着層2の裏面2Bの材質表示単位は、肉眼にて又は読み取り機器にて材質の識別情報又はフィルム材質に関する情報を読み取り可能な大きさに形成されているので、簡単かつ迅速に、分別回収あるいは使用時の注意を十分に行うことができる。
また、被貼付面に上記粘着層2を貼付けた状態で、上記繰返し模様Mによって、上記被貼付面と上記粘着層2との間で、外部に連通する多数本の通気路Eが形成されると共に、各通気路Eの幅寸法Wが大小変化して、最小幅W2 :最大幅W1 が、(1:15)〜(1:5)に設定されているので、貼付使用状態で表て面側から一層確実に裏面の模様Mが見えにくくなり、かつ、ふくれも発生しにくくなる。しかも、情報表示単位,材質表示単位を区別して読み取り易いような表示設計が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 フィルム本体
2 粘着層
2B 裏面
3 剥離フィルム
3A 表て面
10 粘着シート
E 通気路
M 繰返し模様
S 粘着シート構造体
W1 最大幅寸法
W2 最小幅寸法
Z 反転模様
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートと粘着シート構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策として各種プラスチック製品に材質表示し、それらの廃棄物を材質別に分別回収するリサイクル方法が盛んに行われている。
ところが、粘着シートに関しては、その用途として、広い面積の装飾シートや広告・宣伝シートとして、電車,バス,飛行機に貼着したり、ビルディング外壁や店舗等に貼着される場合も多い。このような場合に、粘着シートの表て面には美しい風景や人物やその他各種デザインの文字等が印刷等にて表示されているので、美観上(美的理由)から、粘着シートに材質表示を行うことは至難であり、実施されていないのが実状であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2503717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粘着シートでは、上述のように美観上(美的理由)からそのプラスチック材質に関しての材質表示が困難であるとして、行われていなかったので、所定使用期間の後に被貼付面から剥して廃棄物として廃棄する際、不燃物として埋立処理せざるを得なかった。
そこで、本発明は、粘着シートを、各種プラスチック廃棄物として、分別回収を可能とすること、及び、高能率にリサイクルできることを、目的とする。また、フィルムがコンパウンドである場合に、RoHS指令の有害物質が含有されているか否か等の有用な情報は、粘着シートに表示することは、上述の美感上(美的理由)等から困難とされており、従来から、このような情報の表示も行われていなかった。
【0005】
2層以上の多層からなる粘着シートはその殆どが種々のプラスチックで構成されている。一般的にプラスチック廃棄物のリサイクル処理方法には、(i) マテリアルリサイクル、(ii)サーマルリサイクル、(iii) ケミカルリサイクルの3種類ある。
マテリアルリサイクルは、使用済みプラスチック製品を熱溶融によって融かし同じ製品もしくは別の製品(殆どがより低品位な製品)の樹脂材料として再利用する手法であるが、廃棄物は同一成分、同一物性である必要があり分別収集が必須である。また、サーマルリサイクルは、使用済みのプラスチックを発電所などで燃焼して電気、熱エネルギーとして回収する、もしくは固形燃料化して再利用する手法であるが、燃焼カロリーが低いPVCや添加剤、充填剤を混入したコンパウンド樹脂などはエネルギー回収効率を悪化させる、あるいはダイオキシンなど有毒ガスが発生する危険性がある一方、PPやPE,PSなどポリオレフィン樹脂は石灰よりも高く、灯油とほぼ同等の燃焼カロリーを保有しており、エネルギー回収効率が著しく向上するため、廃棄物の分別収集は必須になる。ケミカルリサイクルは、化学反応を用いて使用済みプラスチックを分解して高品位な燃料(例えばガソリンなど)や化学原料(モノマー原料)に還元して再利用する手法である。PETなどポリエステル系樹脂の加水分解反応によるモノマー還元、ポリオレフィン樹脂の熱分解反応による油化や改質反応によるガソリン生成やガス化、アクリル樹脂の熱分解反応によるモノマー還元などのプロセス例があるが、この場合も分別収集されなければリサイクルで用いる化学反応の反応率や収率、生産性を著しく損なう結果となる。以上から粘着シート廃棄物をいずれの上記リサイクル処理法にて効率良く実現するためには粘着シート廃棄物の材質種類と成分を正確かつ明確に識別でき分別することが必須となる。
そこで、本発明の他の目的とするところは、前記RoHS指令の有害物質の含有の有無等の情報―――フィルム材質に関する情報と呼ぶ―――を、粘着シート自体から読み取り可能とし、かつ、美観を損なわずに表示する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る粘着シートは、フィルム本体と、該フィルム本体の裏面に積層した粘着層とを備えた粘着シートに於て、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、凹状又は凸状に形成したものである。
また、フィルム本体と、該フィルム本体の裏面に積層した粘着層とを備えた粘着シートに於て、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、凹状又は凸状に形成したものである。
【0007】
また、本発明に係る粘着シート構造体は、フィルム本体と粘着層と剥離フィルムを順次積層した粘着シート構造体に於て、上記剥離フィルムの表て面には反転模様を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、上記反転模様の押圧によって、凹状又は凸状に形成したものである。
また、フィルム本体と粘着層と剥離フィルムを順次積層した粘着シート構造体に於て、上記剥離フィルムの表て面には反転模様を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様として、上記粘着層の裏面の全体に、上記反転模様の押圧によって、凹状又は凸状に形成したものである。
【0008】
また、露出状態とした上記粘着層の裏面の情報表示単位又は材質表示単位は、肉眼又は読取機器にて情報を読み取り可能な大きさに形成されている。
また、被貼付面に上記粘着層を貼付けた状態で、上記繰返し模様によって、上記被貼付面と上記粘着層との間で、外部に連通する多数本の通気路が形成されると共に、各通気路の幅寸法が大小変化して、最小幅:最大幅が、(1:15)〜(1:5)に設定されている。
なお、本発明に於て、図形又は記号としては、QRコードやバーコード等の暗号をも包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新品又は使用中若しくは使用済みの粘着シートに関して、RoHS指令の有害物質の有無、及び、その対策方法等の莫大なかつ有益な「フィルム材質に関する情報」を、確実に粘着シートの美感を損なわずに表示でき、さらに、確実かつ容易に読み取ることができる。あるいは、使用済みで廃棄物となった粘着シートに関して、プラスチック材質毎の分別回収が可能となり、高効率なリサイクル利用を実現できる。
また、粘着層の裏面全体に材質表示単位が施されているので、粘着シートの表て側からは人の目には見えず、装飾やメディア(広告・宣伝)等の用途に於て、美観(美感)を損ねることがなく、乗り物の外表面やビルディング等の広い面積の箇所への貼着から、比較的狭い箇所への貼着にも、好適である。
しかも、貼着使用状態で、ふくらみ(ふくれ)を防ぐために、被貼着面との間のエアー(ガス)を抜くエアー抜け性能も維持される上、貼着時の仮留め、位置決め性能も維持される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態を示す拡大要部断面図である。
【図2】剥離フィルムの表て面の反転模様の一例の説明図である。
【図3】粘着層の裏面の繰返し模様の一例の説明図である。
【図4】剥離フィルムの表て面の反転模様の他例を示す説明図である。
【図5】粘着層の裏面の繰返し模様の他例を示す説明図である。
【図6】粘着シート構造体から剥離フィルムを剥離した状態を示す拡大要部断面図である。
【図7】通気路の一例の幅寸法説明図である。
【図8】通気路の他の例の幅寸法説明図である。
【図9】剥離フィルムの表て面の反転模様の別例を示す説明図である。
【図10】粘着層の裏面の繰返し模様の別例を示す説明図である。
【図11】剥離フィルムの表て面の反転模様のさらに他の例を示す説明図である。
【図12】粘着層の裏面の繰返し模様のさらに他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1及び図6に示す拡大要部断面図に於て、1はフィルム本体、2は粘着層、3は剥離フィルムであって、表て面から裏面側に、フィルム本体1と粘着層2と剥離フィルム3が順次積層され粘着シート構造体Sが構成される。
【0012】
フィルム本体1は公知の各種のプラスチック材質や構造のもの(不織布,複合積層材を含む)が適用可能であって、1層構造に限らず、2層以上の構造とすることもでき、厚さ寸法T1 は6〜3000μmが使用でき、80〜 200μmが好適であり、また、広告・宣伝や装飾のために人物,風景,製品,絵画等や文字(文章)等が印刷等にて表示されている(図示省略)。
粘着層2の材質も公知の種々のものを用い得て限定されるものではない(なお、ホットメルトタイプも含む)と共に、(平均)厚さ寸法T2 は5〜 300μm程度が好ましい。粘着層の材質は貼着時に圧力や熱を利用して接着性が発現するものをいう。圧力によって接着性が発現するものを感圧接着剤と呼び、常温にて粘着性を保持している。感圧接着剤には架橋剤を用いてもよく、熱硬化型や紫外線など放射線硬化型が好んで使用される。熱によって接着性が発現するものをホットメルト接着剤(もしくは粘着剤)と呼びJIS K 7210におけるメルトフローレイトが 0.1〜1000g/10分の間のものが好ましい。また、粘着シートの識別性能を向上させる、もしくは隠蔽性を付加するなどのために粘着層に無機、有機顔料の充填剤などを添加してもよい。
剥離フィルム3は、その表て面3Aは剥離面である。剥離フィルム3の材質も公知の種々のものを用い得て限定されるものではない。紙やプラスチックフィルム単体でも良いし、それらの複合体、積層体を用いても良い。またシリコーンなど表面張力が16〜21dyn/cmほどの小さい剥離剤を施して剥離処理面を設けても良い。
【0013】
図6に示すように、剥離フィルム3を粘着層2の裏面2Bから剥離することによって、被貼着面に貼付ける、フィルム本体1と粘着層2とから成る粘着シート10が得られる。
そして、図6に於て、矢印C−C方向から見た場合、粘着層2の裏面2Bの全体にわたって、図3や図5又は図10もしくは図12に示す如く、文字,図形,記号を組み合わせて成ると共に、廃棄の際に(そのプラスチックの)材質を識別するための材質表示単位を繰返して連続させた繰返し模様M、又は、(図示省略の)QRコード,バーコード等のコード(暗号表示)を用いた「フィルム材質に関する情報」を示す情報表示単位を繰返して連続させた繰返し模様Mが、形成されている。
なお、(図示省略するが、)上記のフィルム材質に関する情報を示す情報表示単位と、上記の材質を識別するための材質表示単位を、併用して、繰返し模様Mとするも、望ましい。
【0014】
図3と図5では、繰返し模様Mは凹状に形成され、また、図10,図12では、繰返し模様Mは凸状に形成されている。
材質表示単位としては、例えば、SPIコードをベースとしたもの(図3,図10参照)や、プラスチック製容器包装マーク等をベースとして表示したもの(図5参照)や、JIS(ISO)プラスチック材質表示を併記したもの(図5参照)等が列挙できる。
【0015】
また、図3に示す具体例では、前記材質表示単位は、数字「1」とそれを包囲する三角、及び、「PET」とそれを包囲する逆三角とを、組み合わせた菱形ユニットが該当するといえる。
また、図5に示す他の具体例では、前記材質表示単位は、「PP.PAK」の文字、及び、「プラの文字とそれを包囲する2本の矢印」とを、組合せたユニットが該当するといえる。
また、図10に示す別の具体例では、前記材質表示単位は、数字「1」とそれを包囲する3個の矢印から成る三角、及び、「PET」との組合せたユニットが該当するといえる。
また、図12に示すような表示も好ましく、「PP」と「PAK」が、フィルム本体1と粘着層2に使用されていることが、明らかに判る。
また、文字や記号の太さは接着面積、つまり接着性能やエアー抜け性能、仮留め位置決め性能に影響してくるので、要求性能に合わせて適度に調整する。必要ならばコンマやピリオド、コロンなどの句読点もしくは強調線などを挿入して接着面積を増減、調節してもよい(図4,図5,図11, 図12参照)。その場合でも情報の識別、読み取りが可能でかつ挿入した句読点に関わる通気路が連通してガス、エアー抜け性能、位置決め性能が保持できるようにする。
図3,図5,図10,図12のいずれも、上下左右の4方向に繰返す繰返し模様である場合を例示した。なお、2方向に繰返す繰返し模様とすることも可能である(図示省略)。
【0016】
ところで、図6に示すように粘着層2の裏面2Bを露出状とした状態で、矢印C−C方向から見て、前述の材質表示単位は、人の肉眼にて、材質の識別情報を読み取り可能な大きさ(寸法)に形成するのが望ましい。例えば、この材質表示単位の寸法(縦横平均寸法)を、 1.5mm〜15mmに該当する。特に、4mm〜8mmとするのが、上述の読み取り可能で、かつ、貼着使用状態で裏面の繰返し模様Mが目立たない(見えない)という点から、望ましい。
また、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位については、人の肉眼にて読み取り可能とすることも可能であるが、好ましくは、コードリーダ等の読み取り機器を用いて読み取り可能とする。
粘着層表面において、その凸面は主に粘着力など粘着性能を、凹面は文字や記号など表示識別性能を保有する面であるが、その識別性能を保有する凹面のみに梨地や鏡面などのエンボス加工、もしくは着色を施して識別情報の読み取りをより容易にすることも可能である。その場合、剥離フィルムの凸面にエンボス加工を施す、もしくは粘着加工の際に転写する着色インクを施しておくとよい。
なお、繰返し模様Mとして、図3,図5,図10,図12の具体例に限らず、種々設計変更自由であり、廃棄方法、返品(リサイクル)方法、製造メーカー名、ホームページアドレス等を、材質表示単位、及び/又は、情報表示単位の構成の一部乃至全体として記載したり、あるいは、上記繰返し模様Mの一部に所定ピッチにて介在させるのも、自由である。
【0017】
次に、粘着シート構造体Sの一部を構成している剥離フィルム3について追加説明すれば、この剥離フィルム3の表て面3Aには、図2,図4,図9,図11に示すような反転模様Zが全面にわたって形成されている。つまり、この反転模様Zの押圧によって、前述の繰返し模様Mが粘着層2の裏面2B全体に、凹凸を逆転して、形成される。
【0018】
図2,図3,図4,図5,図9,図10,図11,図12に於て、黒色部分は凸状(突条部)を示し、白抜き部分は凹状(凹溝乃至凹窪部)を示す。
図2と図3、図4と図5、図9と図10,図11と図12とが各々対応し、繰返し模様Mを裏返したのが反転模様Zであるといえる。言い換えると、反転模様Zは繰返し模様Mの鏡像であり、凹と凸も逆である。
【0019】
図3,図5,図10,図12に示した繰返し模様Mに於て、白色部分(白抜き部)は、凹状(凹溝乃至凹窪部)であることは、既に説明したが、各図面から明白な如く、この繰返し模様Mに於て、独立(孤立)した凹部が全く存在していない。即ち、この繰返し模様Mは、材質表示単位(及び他の文字・図形等)が相互に連続状に描かれ(表示され)、かつ、上下左右の4方向(又は2方向)に繰返されるため、フィルム本体1の(図外の)外端縁部に、(凹状の)凹溝乃至凹窪部は全て連通状態である。
従って、以下のように表現することもできる。即ち、被貼付面に粘着シート10の粘着層2を貼付けた状態で、繰返し模様Mによって、被貼付面と粘着層2との間で、外部(外端縁部)に連通する多数本の通気路Eが、交叉と分岐を複雑に繰返しつつ、形成され、いずれの通気路Eも、その幅寸法Wが、大きく変化する(図3,図5,図10,図12及び図7,図8参照)。
【0020】
この幅寸法Wの最小幅をW2 とし、最大幅をW1 とすると、W2 :W1 を、(1:15)〜(1:5)の範囲に設定するのが望ましい。つまり、1/15≦(W2 /W1 )≦1/5とする。図7,図8に於て、最小幅W2 の部位は、狭小連通部5に該当する。
下限値未満であると、気体(ガスや空気)が、被貼付面と、粘着シート10の粘着層2との間に貼り込まれた、又は、ガスとして発生した、気体が外部へ抜けにくくなる。逆に、上限値を越すと、繰返し模様Mとしてのデザインが難しくなり、かつ、材質表示の読み取りが困難となる場合が多い。
なお、前記厚さ寸法T2 は平均厚さ寸法を意味する。従って、所望によって、最も厚さ寸法T2 が小さい箇所では、極めて小乃至零もあり得る。
【0021】
本発明に係る繰返し模様Mは、上述の図示の実施の形態以外にも種々変形自由であって、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成る情報表示単位、及び/又は、材質表示単位を、繰返して連続させれば十分である。つまり、文字のみ,図形のみ,記号のみから情報表示単位、及び/又は、材質表示単位を構成しても良い。また、SPIコード、プラスチック製容器包装マーク、その他のマーク(コード)を、そのまま用いても、デザイン上の変形を加えても、自由である。また、廃棄(処理)方法や返品方法や製造メーカー名やそのホームページアドレス等を連続した文字又は筆記体によって上述の繰返し模様と一体連続状に追加表示することもできる。
なお、本発明に於て、図形又は記号としては、QRコードやバーコード等の暗号表示も包含するものと定義する。フィルムがコンパウンドの場合、RoHS指令の有害物質等の莫大なデータを上記暗号表示にて、記録され、これは、コードリーダー等の各種の読み取り機器にて読み取るのが好ましい。
【0022】
ところで、本発明の上述の粘着シート構造体Sの製法について説明すれば、まず、剥離フィルム素材をエンボス加工によって、一面に前記反転模様Zを形成して、図6の下半部に示した剥離フィルム3を作製する。
図6を参考として説明すると、フィルム本体1に、繰返し模様Mの凹溝や凸条の全く無い粘着層を積層した中間フィルムを作製しておいて、この中間フィルムの粘着層の平坦面(図示省略)に対して、上述の反転模様Zの形成された剥離フィルム3を、押圧することで、図1に示すような、凹溝や凸条の繰返し模様Mが形成される。
使用時には、逆に図1から剥離フィルム3を剥離して、図2のような粘着シート10を得る。
【0023】
本発明は上述のように、粘着シート10の裏面には、情報媒体としての表示が施され、特に、情報媒体としての表示として、RoHS指令の有害物質等のデータを読み取り可能な、又は、使用済み粘着シート10のプラスチック材質を識別可能な、繰返し模様Mが形成されているものである。
本発明は、上述のように構成されているので、美感(装飾)が重要視される装飾フィルムとして特に好適であり、かつ、廃棄処分の際に偉力を発揮して、偉力を発揮して、材質別の分別回収及びリサイクルの実現に貢献する。しかも、粘着シートとして半永久的に重要な情報を(裏面側に)表示できている。
【0024】
本発明は以上詳述したように、フィルム本体1と、該フィルム本体1の裏面に積層した粘着層2とを備えた粘着シートに於て、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様Mとして、上記粘着層2の裏面2Bの全体に、凹状又は凸状に形成した構成であるので、使用済みとなった際に材質表示単位を読めばその材質を容易かつ確実に識別でき、材質別に分別回収できて、資源のリサイクル活用に大きく貢献できる。さらに、乗物やビルディングや店舗等に貼着した際にエアーが貼り込まれずに繰返し模様Mと被貼着面の間に形成される多数本の通気路Eを介して、外部に抜けてゆき、美しく平坦面状に貼付けでき、しかも、使用期間中にガスが仮に発生したとしても上記通気路Eから外部へ抜けてゆき、ふくれを発生しない(エアー抜け性能が従来と変わらず維持できる)。しかも、フィルム本体1に表現された美しい広告・宣伝表示や各種の装飾が、粘着層2の裏面2B側に形成された繰返し模様によって、損なわず、使用状態に於ける粘着シート10の美観(美感)は優秀なまま維持できる。
【0025】
また、本発明に係る粘着シート構造体は、フィルム本体1と粘着層2と剥離フィルム3を順次積層した粘着シート構造体に於て、上記剥離フィルム3の表て面3Aには反転模様Zを全面にわたり凸状又は凹状に形成し、文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様Mとして、上記粘着層2の裏面2Bの全体に、上記反転模様Zの押圧によって、凹状又は凸状に形成したので、粘着シート10を容易に、かつ、正確な模様Mを描くことが可能であり、例えば、粘着シート構造体をロール巻きとして作製して、使用箇所に応じて必要な寸法(面積)の枚葉シートとすることができて好都合である。
【0026】
そして、被貼付面に貼着使用した粘着シート10が、使用済みとなった際に材質表示単位を読めばその材質を容易かつ確実に識別でき、材質別に分別回収できて、資源のリサイクル活用に大きく貢献できる。さらに、乗物やビルディングや店舗等に貼着した際にエアーが貼り込まれずに繰返し模様Mと被貼着面の間に形成される多数本の通気路Eを介して、外部に抜けてゆき、美しく平坦面状に貼付けでき、しかも、使用期間中にガスが仮に発生したとしても上記通気路Eから外部へ抜けてゆき、ふくれを発生しない(エアー抜け性能が従来と変わらず維持できる)。しかも、フィルム本体1に表現された美しい広告・宣伝表示や各種の装飾が、粘着層2の裏面2B側に形成された繰返し模様によって、損なわず、使用状態に於ける粘着シート10の美観(美感)は優秀なまま維持できる。
【0027】
また、露出状態とした上記粘着層2の裏面2Bの材質表示単位は、肉眼にて又は読み取り機器にて材質の識別情報又はフィルム材質に関する情報を読み取り可能な大きさに形成されているので、簡単かつ迅速に、分別回収あるいは使用時の注意を十分に行うことができる。
また、被貼付面に上記粘着層2を貼付けた状態で、上記繰返し模様Mによって、上記被貼付面と上記粘着層2との間で、外部に連通する多数本の通気路Eが形成されると共に、各通気路Eの幅寸法Wが大小変化して、最小幅W2 :最大幅W1 が、(1:15)〜(1:5)に設定されているので、貼付使用状態で表て面側から一層確実に裏面の模様Mが見えにくくなり、かつ、ふくれも発生しにくくなる。しかも、情報表示単位,材質表示単位を区別して読み取り易いような表示設計が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 フィルム本体
2 粘着層
2B 裏面
3 剥離フィルム
3A 表て面
10 粘着シート
E 通気路
M 繰返し模様
S 粘着シート構造体
W1 最大幅寸法
W2 最小幅寸法
Z 反転模様
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム本体(1)と、該フィルム本体(1)の裏面に積層した粘着層(2)とを備えた粘着シートに於て、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
フィルム本体(1)と、該フィルム本体(1)の裏面に積層した粘着層(2)とを備えた粘着シートに於て、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
フィルム本体(1)と粘着層(2)と剥離フィルム(3)を順次積層した粘着シート構造体に於て、
上記剥離フィルム(3)の表て面(3A)には反転模様(Z)を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、上記反転模様(Z)の押圧によって、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート構造体。
【請求項4】
フィルム本体(1)と粘着層(2)と剥離フィルム(3)を順次積層した粘着シート構造体に於て、
上記剥離フィルム(3)の表て面(3A)には反転模様(Z)を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、上記反転模様(Z)の押圧によって、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート構造体。
【請求項5】
露出状態とした上記粘着層(2)の裏面(2B)の情報表示単位又は材質表示単位は、肉眼又は読取機器にて情報を読み取り可能な大きさに形成されている請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項6】
被貼付面に上記粘着層(2)を貼付けた状態で、上記繰返し模様(M)によって、上記被貼付面と上記粘着層(2)との間で、外部に連通する多数本の通気路(E)が形成されると共に、各通気路(E)の幅寸法(W)が大小変化して、最小幅(W2 ):最大幅(W1 )が、(1:15)〜(1:5)に設定されている請求項1又は2記載の粘着シート
。
【請求項1】
フィルム本体(1)と、該フィルム本体(1)の裏面に積層した粘着層(2)とを備えた粘着シートに於て、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
フィルム本体(1)と、該フィルム本体(1)の裏面に積層した粘着層(2)とを備えた粘着シートに於て、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
フィルム本体(1)と粘着層(2)と剥離フィルム(3)を順次積層した粘着シート構造体に於て、
上記剥離フィルム(3)の表て面(3A)には反転模様(Z)を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、フィルム材質に関する情報を示す情報表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、上記反転模様(Z)の押圧によって、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート構造体。
【請求項4】
フィルム本体(1)と粘着層(2)と剥離フィルム(3)を順次積層した粘着シート構造体に於て、
上記剥離フィルム(3)の表て面(3A)には反転模様(Z)を全面にわたり凸状又は凹状に形成し、
文字,図形,記号の内の少なくとも一つから成り、廃棄の際に材質を識別するための材質表示単位を、繰返して連続させて繰返し模様(M)として、上記粘着層(2)の裏面(2B)の全体に、上記反転模様(Z)の押圧によって、凹状又は凸状に形成したことを特徴とする粘着シート構造体。
【請求項5】
露出状態とした上記粘着層(2)の裏面(2B)の情報表示単位又は材質表示単位は、肉眼又は読取機器にて情報を読み取り可能な大きさに形成されている請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項6】
被貼付面に上記粘着層(2)を貼付けた状態で、上記繰返し模様(M)によって、上記被貼付面と上記粘着層(2)との間で、外部に連通する多数本の通気路(E)が形成されると共に、各通気路(E)の幅寸法(W)が大小変化して、最小幅(W2 ):最大幅(W1 )が、(1:15)〜(1:5)に設定されている請求項1又は2記載の粘着シート
。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−219137(P2012−219137A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84590(P2011−84590)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000226091)日栄化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000226091)日栄化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]