説明

粘着シートの製造方法及び粘着シートの製造装置

【課題】粘着シートの粘着剤層に、微細ピッチな凹凸パターンを自在に制御、形成し、同一の糊使用量であっても粘着力が大きく、また、糊使用量低減で安価な粘着シートを製造できる粘着シートの製造方法及び粘着シートの製造装置を提供する。
【解決手段】基材2の表面に粘着剤3を塗布し、該粘着剤3の塗布層が不完全乾燥状態にある時、基材搬送速度と速度差のある回転する凹凸ロール43を、該粘着剤3の塗布層に接触させ、該粘着剤3の塗布層を凹凸形状の凹凸部301を形成した後に、該粘着剤3の塗布層を完全乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートの製造方法及び装置に関するものである。更に、詳細には、粘着剤の量を減らしても粘着する粘着力を維持することができ、生産性にも優れる粘着シートの製造方法及び粘着シートの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粘着シートの粘着剤付着量を減少させると、粘着力が低下し、付着量を多くすると粘着力が増加することが知られている。ダンボールや紙などの粗面の様に凹凸が大きい被着体への接着には、粘着剤の使用量を多くしなければ、良好な粘着力を維持することができない。
しかしながら、粘着剤は高価なため使用量を低減することが望まれている。低付着量であっても、粘接着性を維持することができる方法として、微小泡またはフィラーなどの中空粒子等を粘着層へ含有する方法や、粘着層を微細凹凸加工して凸部の厚みを大きくする方法がある。
【0003】
粘着剤層への微細凹凸加工を施す方法の従来技術では、特許文献1では、貼ることが容易な防蝕用フィルムが記載されており、このフィルムは貼り付け時に空気の流通を促し、空気溜りを生じさせないで貼り付けることができる。このテープは、基材に粘着剤を塗工後、凹凸パターンを有する型でプレスすることにより製造される。
また、特許文献2では、支持体上に微細なピッチの縞状パターンを有する粘着剤層を設ける方法として、粘着剤を支持体表面に塗布した後に、微細な縞状ピッチを有する櫛歯状のかき落とし刃を用いる方法が記載されている。
また、特許文献3では、粘着剤の塗布後、不完全乾燥された粘着シートを、2本の金属ロールからなるニップロールで構成される凹凸付与装置を通過させ、金属ロールと粘着剤層との間に糸曳きが起こり凸状部及び筋状部からなる凹凸状の粘着層が形成される方法が記載されている。この方法は、金属ロールの回転をライン速度と同期にすることによって粘着剤を糸曳きさせて凹凸を形成している。そのため、凸状部及び筋状部の形状は、金属ロールの凹凸形状を承継するものではない。
【0004】
支持体上の粘着剤層の凹凸パターンの形成方法として、グラビア印刷、スクリーン印刷などによるパターン形成では、パターン塗工の際に、粘着剤の糸ひき(塗布液が高粘度の場合)や、塗布液が流れてパターンが変形してしまう(塗布液が低粘度の場合)などの問題が生じていたので、厚みの薄い粘着層における精密なパターン形成は非常に困難であった。
粘着層を塗工してから『凹凸パターンを有する型によるプレス加工』を施す方法では、乾燥厚みが薄い20μm程度以下の粘着層ではプレス加工が施しにくく、精密なパターン形成することは非常に困難であった。
微細な縞状ピッチを有する櫛歯状のかき落とし刃を用いる方法では、微細なパターンを形成するためには、塗工した粘着剤塗布液の乾燥が進まない状態でかき落とす必要があるので、かき落とした後に塗布液が流れてパターンが変形してしまい、やはり精密な縞状パターン(1000μm未満のピッチ)は形成不可能であった。
したがって、従来技術では、薄膜で微細な凹凸加工を施すことは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、粘着シートの粘着剤層に、微細ピッチな凹凸パターンを自在に制御、形成し、同一の糊使用量であっても粘着力が大きく、また、糊使用量低減で安価な粘着シートを製造できる粘着シートの製造方法及び粘着シートの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明の粘着シートの製造方法は、基材の表面に粘着剤を塗布し、該粘着剤の塗布層が不完全乾燥状態にある時、基材搬送速度と速度差のある回転する凹凸ロールを、該粘着剤の塗布層に接触させ、該粘着剤の塗布層を凹凸形状の凹凸部に形成した後に、該粘着剤の塗布層を完全乾燥させることを特徴とする。
また、本発明の粘着シートの製造方法は、さらに、粘着剤固形分濃度58%、糊粘着剤粘度450ポイズ(B型粘度計測定25℃)のアクリルエマルジョン糊で、自然放置乾燥では20〜30秒間、23℃の室温風では風速9〜10m/秒で1〜5秒間、若しくは85℃の熱風では風速18〜19m/秒で0.5〜1秒間、または、これらの伝熱量に相当する乾燥強度で不完全乾燥させることを特徴とする。
【0007】
本発明の粘着シートの製造装置は、基材の表面に粘着剤を塗布し、該粘着剤の塗布層が不完全乾燥状態にある時、基材搬送速度と速度差のある回転する凹凸ロールを、該粘着剤の塗布層に接触させ、該粘着剤の塗布層を凹凸形状の凹凸部に形成した後、該粘着剤の塗布層を完全乾燥させることを特徴とする。
また、本発明の粘着シートの製造装置は、さらに、粘着剤固形分濃度58%、糊粘着剤粘度450ポイズ(B型粘度計測定25℃)のアクリルエマルジョン糊で、自然放置乾燥では20〜30秒間、23℃の室温風では風速9〜10m/秒で1〜5秒間、若しくは85℃の熱風では風速18〜19m/秒で0.5〜1秒間、又はこれらの伝熱量に相当する乾燥強度で不完全乾燥させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記課題を解決する手段である本発明によって、粘着シートの粘着剤の塗布層に、微細ピッチな凹凸部を自在に制御し形成することで、同一の糊使用量であっても粘着力の大きく、また、糊使用量低減で安価な粘着シートを製造できる粘着シートの製造方法及び粘着シートの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置における凹凸付与装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置における凹凸付与装置の構成を示す斜視図である。
【図4】粘着シートの製造装置によって製造された粘着シートの断面を示す概略図である。
【図5】経過時間と平均固形分濃度との関係を示す図である。
【図6】実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
【図7】実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
【図8】実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
【図9】実施例2における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
【図10】実施例2における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
【図11】実施例2における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
【図12】実施例6の凹凸ロールの形状パターンを模式的に示す図である。
【図13】実施例6における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
【図14】実施例6における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
【図15】実施例7の凹凸ロールの形状パターンを模式的に示す図である。
【図16】実施例7における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
【図17】実施例7における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
【図18】実施例8と比較例10における粘着剤の付着量と粘着力との関係を示す図である。
【図19】実施例9と比較例11における測定環境温度と粘着力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置の構成を示す概略図である。
本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置1は、主に、繰出し装置10、粘着剤塗布装置20、乾燥機30、凹凸付与装置40、ラミネート装置50、感熱シート繰出し装置60、巻取り装置70を備えている。
繰出し装置10は、粘着シート5の基体となる基材2を収納し、これを送り出している。基材2は、ローラに巻き付けられて収納されていることが多いが、基材2として枚葉紙のように一定の大きさに大きさに断裁した紙であってもよい。
そして、粘着剤塗布装置20では、この送り出された基材2に粘着剤3が塗布される。この粘着剤塗布装置20で、定体積を直接圧送するので、吐出口からのタレ・モレ・ツマリがなく、液切れが良好で、かつ、数日間の放置で硬化せず、すばやく稼働することが可能である。
乾燥機30のうち後に不完全乾燥機31では、粘着剤の塗布された基材2を、不完全乾燥する。
次ぎに、この不完全乾燥された粘着剤3が塗布された基材2は、凹凸付与装置40に送り出される。
【0012】
図2は、本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置における凹凸付与装置の構成を示す断面図である。
図3は、本発明の粘着シートの製造方法を適用した粘着シートの製造装置における凹凸付与装置の構成を示す斜視図である。
この凹凸付与装置40は、2本の金属製のパスロール42と凹凸ロール43構成されている。この凹凸付与装置40を通過させ、凹凸ロール43と粘着剤3との間で、押圧されて凹部、糸曳きが起こり凸部が形成される。この凹凸部301の形状、個数等は、粘着剤の種類に応じて当接する金属製凹凸ロール43の表面材質や表面形状、凹凸ロール43の回転速度比、接圧、ライン速度、乾燥温度等を選択することにより制御することができる。
次いで、乾燥機30のうち後に完全乾燥機32では、粘着剤の塗布された基材2を、完全に乾燥する。
その後、ラミネート装置50では、搬送されてきた基材2と、感熱シート繰り出し装置60から送り出されてきた感熱シート4とをローラの圧力でラミネートして積層する。
そして、巻き取り装置70では、ラミネートされた粘着シート5をローラに巻き取って収納する。
図4は、粘着シートの製造装置によって製造された粘着シートの断面を示す概略図である。
図4に示すように、粘着シート5は、基材2の上に、凹凸部301を形成した粘着剤3があり、さらに、その上にラミネートされて積層された感熱シート4とを有している。
【0013】
さらに、詳細には、繰出し装置10から引き出された基材2に粘着剤塗布装置20における粘着剤3が塗布される。粘着剤3は、アクリルエマルジョン糊(サイデン化学(株)サイビノールX−407−107E−10)を使用する。粘着剤5の塗布後、予備乾燥機31を経て不完全乾燥された粘着シートは、パスロール42及び凹凸ロール43からなる凹凸付与装置40を通過させ、凹凸ロール43と粘着剤3の層を接触させ、粘着剤3の塗布層に凹凸形状の凹凸部301が形成される。
予備乾燥機31内で、粘着剤3を不完全乾燥させる乾燥条件は、23℃・1〜5sec.・風速9〜10m/秒、85℃・0.5〜1sec.風速18〜19m/秒、自然乾燥(20℃)・20〜30sec.で、種々の寸法、形状を持つ凹凸ロール43であっても、粘着剤3の塗布層に凹凸部301を形成することができた。
したがって、不完全乾燥状態となる乾燥条件は前記条件に限定されることなく、それらの伝熱量に相当する乾燥強度で粘着剤3の塗布層を不完全乾燥し、凹凸ロール43を接触することで凹凸部301を有する粘着剤3の塗布層の形成が可能となる。この時の粘着剤3の平均固形分濃度(S.C.)が63〜66%となることで、次工程の凹凸部301の形成時に、粘着剤3が、その粘着剤3が有する粘弾性によって、レベリングして凹部を埋めることなく凹凸部301が形成される。
【0014】
なお、前記に記載の粘着剤3の平均固形分濃度(S.C.)の測定方法を以下に示し、併せて結果を図5に示している。
図5は、経過時間と平均固形分濃度との関係を示す図である。
基材2に一定の付着量で塗布された粘着剤3の塗布層に、一定時間の自然乾燥後、PETフィルムを貼り合せる。貼り合せ後直ちに、10cm×10cmにカットし重量を測定する。重量測定後、PETフィルム及び基材に付着した粘着剤3を剥がし、PETフィルム及び基材2の重量をそれぞれ測定する。
測定されたデータを下記計算式にあてはめ、平均固形分濃度を算出した。
・粘着剤重量(g)=
<10cm×10cmサンプル総重量>−<PETフィルム重量>−<基材重量>
・平均固形分濃度(S.C.)(%)=粘着剤重量/塗布付着量
なお、0秒のデータは、直接、粘着剤液の固形分濃度を絶乾法で測定した。
したがって、時間の経過と共に基材3に粘着している粘着剤3の平均固形分濃度(S.C.)が増加していることがわかる。したがって、粘着剤を不完全乾燥状態にし、粘度をあげる(固形分も変化する)ことで凹凸ロール接触時の凹凸形状を形成し易くする効果がある。そのために、凹凸付与装置40で凹凸部301がレベリングさせないためには、粘着剤塗布装置20と乾燥機30とを予め定めた時間で経過しなければならない。
【0015】
凹凸ロール43の凹凸部301の形状は、基材2の進行方向に対して平行な溝もしくは突条によって形成されている。形成された粘着剤3の凹凸部301の高さ、形状、個数等は、凹凸ロール43の形状を選択することによって、制御することが出来る。
凹凸ロール43は、モーター等により駆動され回転される。粘着剤3の塗布は通常100〜600m/min.程度の速度で実施されているため、凹凸ロール43には粘着剤3の塗布済みの基材2の搬送により同伴される風速1.6〜10m/sec.程度のいわゆる同伴空気が連続的に衝突している。
凹凸ロール43を回転させない場合には、この同伴空気により凹凸ロール43の表面に付着した糊を乾燥固化させ、経時で成長し、これが粘着剤3の塗布面にいわゆる塗布スジを形成してしまう。このためには、凹凸ロール43の回転は極めて有効に働き、凹凸ロール43の表面に付着した糊の乾燥固化と、これに伴う塗布スジは形成されないことが明らかになった。
本発明の粘着シート1の製造方法における粘着剤3の塗布層への凹凸部301の形成は、塗布済み後の不完全乾燥状態の粘着剤3の塗布層への凹凸ロール43の適用による液流動により、凹凸部301を形成する。したがって、短時間での粘着剤3の塗布では凹凸ロール43の回転は不要であるが、粘着剤3の連続塗布での品質安定のために凹凸ロール43を回転させるので、凹凸ロール43の表面に付着した糊が乾燥固化しなければよいので、糊の粘度固形分、塗布速度に応じて、その回転数は適宜設定できる。
【0016】
凹凸ロール43の回転方向は、凹凸ロール43の表面の進行方向が糊塗布済み基材3の進行方向と反対方向となるいわゆる逆回転が望ましい。逆回転により、凹凸ロール43と粘着剤3の塗布層の間の糸曳きが抑制できるが、逆回転と限定されるものではない。
凹凸ロール43の径は、特に規定しないが、ロール撓みが小さくなるようロール径を選択することが好ましい。具体的には、塗布巾1.5m程度の時には、凹凸ロール43の径はφ75mm程度以上でロール撓みは小さく、塗布層の層厚均一性への影響は認められない。凹凸ロール43の表面は、粘着剤3が付着しにくく、清掃しやすいようにフッ素樹脂コーティング、メッキ処理等の表面処理をすることが好ましい。
凹凸部301が付与された粘着シート5は、完全乾燥機32を経て、完全乾燥される。これにより、粘着剤3の塗布層における凹凸形状の凹凸部301が固定される。
これによって得られた粘着シート5は、感熱シート繰出し装置60から供給される感熱シート4とラミネート装置50におけるラミネートされ、感熱シート4が被覆された状態で巻取り装置70に巻き取られる。
【実施例】
【0017】
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実験例1)
粘着剤アクリルエマルジョン糊を剥離紙にワイヤバーで手塗り塗布後、自然乾燥(室温23℃)で不完全乾燥させ、凹凸ロールを無回転手曳きで粘着剤の塗布層に凹凸ロールで凹凸加工する。凹凸加工後100℃、1分で完全乾燥させる。凹凸ロールの形状パターンと不完全乾燥時の乾燥時間を振り、粘着剤層の凹凸部の形成状態を評価した。
この時の、粘着剤条件、塗布付着量条件は下記記載条件とする。乾燥時間条件は、表1に示している。
また、図6は、表1における実施例1及び比較例1及び2の凹凸ロールの形状パターン1を示す写真である。
図9は、表1における実施例2及び比較例3及び4の凹凸ロール形状パターン2を示す写真である。
【0018】
<粘着剤条件、塗布付着量条件>
・粘着剤:アクリルエマルジョン糊(サイデン化学(株)サイビノールX−407−107E−10)
・粘着剤固形分濃度:58%
・粘着剤粘度:B型粘度計測定25℃ 450ポイズ(45Pa・s)
・手塗りワイヤバー径:φ0.4mm(ドライ付着量16.5g/m
表1に示すように、実施例1及び2の凹凸形状パターン及び不完全乾燥条件で、良好な凹凸形成ができた。
【表1】

【0019】
また、実施例1の粘着剤の塗布層における凹凸部の形状を、図7及び図8に示している。
図7は、実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
図8は、実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
図7のレーザー顕微鏡写真でも、レベリングされながらも連続した微細な凹凸部を形成していることがわかる。それは、図8による数値でも、明らかに連続した微細な凹凸部を確認することができた。
同様に、実施例2の粘着剤の塗布層における凹凸部の形状を、図10及び図11に示している。
図10は、実施例2における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
図11は、実施例2における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
ここでも、同様に、連続した微細な凹凸部を確認することができた。
したがって、表1からも明らかなように、実施例1及び2では、自然乾燥(室温23℃)の不完全乾燥で、凹凸ロールで凹凸加工することで連続した微細な凹凸部を形成することができた。
【0020】
(実験例2)
実機装置を想定した不完全乾燥条件を確認するために、温風吹付けによる不完全乾燥を実施した。
粘着剤としてのアクリルエマルジョン糊を剥離紙にワイヤバーで手塗り塗布後、温風乾燥で不完全乾燥させ、凹凸ロールを無回転手曳きで粘着剤の塗布層に凹凸加工する。
凹凸加工後100℃、1分で完全乾燥させる。
不完全乾燥時の温風温度及び乾燥時間をふり、粘着剤層の凹凸部の形成状態を評価した。この時の、粘着剤条件、塗布付着量条件は下記記載条件とする。使用する凹凸ロール形状パターンは図6に示した実施例1と同じである。
【0021】
<粘着剤条件、塗布付着量条件>
・粘着剤:アクリルエマルジョン糊(サイデン化学(株)サイビノールX−407−107E−10)
・粘着剤固形分濃度:58%
・粘着剤粘度:B型粘度計測定25℃ 450ポイズ(45Pa・s)
・手塗りワイヤバー径:φ0.4mm(ドライ付着量16.5g/m
【0022】
表2に示すように、実施例3及び4の不完全乾燥条件で、良好な凹凸部を形成することができた。
【表2】

【0023】
(実験例3)
凹凸ロール形状パターンを変化させ、形成される粘着層の凹凸部の形状を比較した。
粘着剤としてのアクリルエマルジョン糊を剥離紙にワイヤバーで手塗り塗布後、自然乾燥(室温23℃)・25sec.で不完全乾燥させ、凹凸ロールを無回転手曳きで粘着剤層に凹凸加工する。凹凸加工後100℃、1分で完全乾燥させる。
実施例5の凹凸ロールの形状パターンは、図6に示した実施例1と同じ形状パターン1である。
実施例6の凹凸ロール形状パターンは、図12に示している。
実施例7の凹凸ロール形状パターンは、図15に示す。
【0024】
この時の、粘着剤条件、塗布付着量条件は下記記載条件とする。
<粘着剤条件、塗布付着量条件>
・粘着剤:アクリルエマルジョン糊(サイデン化学(株)サイビノールX−407−107E−10)
・粘着剤固形分濃度:58%
・粘着剤粘度:B型粘度計測定25℃ 450ポイズ
・手塗りワイヤバー径:φ0.45mm(ドライ付着量17.0g/m
【0025】
また、実施例5の粘着剤の塗布層における凹凸部の形状を、図7及び図8に示している。
図7は、実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
図8は、実施例1における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
図7のレーザー顕微鏡写真でも、レベリングされながらも連続した微細な凹凸部を形成していることがわかる。それは、図8による数値でも、明らかに連続した微細な凹凸部を確認することができた。
【0026】
図12は、実施例6の凹凸ロールの形状パターンを模式的に示す図である。
このように図11に示す凹凸ロールで形成される粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を比較した。実施例6の粘着剤の塗布層における凹凸部の形状を、図12及び図13に示している。
図13は、実施例6における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
図14は、実施例6における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
ここでも、同様に、連続した微細な凹凸部を確認することができた。
【0027】
図15は、実施例7の凹凸ロールの形状パターンを模式的に示す図である。
このように図13に示す凹凸ロールで形成される粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を比較した。実施例7の粘着剤の塗布層における凹凸部の形状を、図16及び図17に示している。
図16は、実施例7における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の形状を示すレーザー顕微鏡写真である。
図17は、実施例7における凹凸ロールで加工された粘着剤の塗布層の凹凸部の断面形状の測定値を示している図である。
ここでも、同様に、連続した微細な凹凸部を確認することができた。
このように、凹凸ロールの形状を変えることで、粘着剤の塗布層における凹凸部を様々な形状に形成することができた。
【0028】
(実験例4)
粘着剤の塗布層の凹凸部の形状による凸部厚み増加の効果を粘着力測定し確認した。
粘着剤の付着量差による粘着力を、それぞれ粘着剤付着量を振った実施例8として凹凸加工したサンプルと、比較例10として凹凸加工無しのサンプルを、下記粘着力評価条件で粘着力を測定する。
実施例8及び比較例10のサンプル条件は下記に示す。
<粘着力評価条件>
・粘着力評価方法:180°剥離試験法
・測定環境温度: 23℃
・被着体:ダンボール(米国SCOPE PACKAGING INC社 TU791 C/BPAD T−400)
<サンプル条件>
・実施例8:微細凹凸加工有り(パターン1) ドライ付着量10.2、16.2、20.6g/m、不完全乾燥条件は自然乾燥(室温20℃)・25sec.とした。
・比較例10:凹凸加工無し ドライ付着量10.4、16.1、19.6g/m
で、その他の条件は実施例8と同じである。
図18は、実施例8と比較例10における粘着剤の付着量と粘着力との関係を示す図である。
図18に示すように、実施例8で凹凸加工された粘着シートの粘着力は、比較例10の凹凸加工無しの粘着シートの粘着力に比べて、粘着力の増加の効果を確認できた。
【0029】
(実験例5)
粘着力測定環境温度差による粘着力を、それぞれ測定環境温度を振った実施例9として凹凸加工した粘着シートと、比較例11として凹凸加工無しの粘着シートを下記粘着力評価条件で粘着力を測定する。
実施例9及び比較例11の粘着シートの条件は下記に示す。
<粘着力評価条件>
・粘着力評価方法:180°剥離試験法
・測定環境温度:−10℃、2℃、23℃、40℃
・被着体:ダンボール(米国SCOPE PACKAGING INC社 TU791 C/BPAD T−400)
<サンプル条件>
・実施例9:微細凹凸加工有り(パターン2) ドライ付着量16.5g/m
不完全乾燥条件は自然乾燥(室温20℃)・25sec.とした。
・比較例11:凹凸加工無し ドライ付着量16.5g/m
図19は、実施例9と比較例11における測定環境温度と粘着力との関係を示す図である。
図19に示すように、実施例9で凹凸加工された粘着シートの粘着力は、比較例11の凹凸加工無しの粘着シートの粘着力に比べて、測定環境温度−10〜40℃の範囲内で粘着力の増加の効果を確認できた。
【符号の説明】
【0030】
1 粘着シートの製造装置
2 基材
3 粘着剤
301 凹凸部
4 感熱シート
5 粘着シート
10 繰出し装置
20 粘着剤塗布装置
30 乾燥機
31 予備乾燥機
32 乾燥機
40 凹凸付与装置
42 パスロール
43 凹凸ロール
50 ラミネート装置
60 感熱シート繰出し装置
70 巻取り装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開平01−204986
【特許文献2】特開平03−167281
【特許文献3】特開2008−150431

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に粘着剤を塗布し、該粘着剤の塗布層が不完全乾燥状態にある時、基材搬送速度と速度差のある回転する凹凸ロールを該粘着剤の塗布層に接触させ、該粘着剤の塗布層を凹凸形状の凹凸部に形成した後に、該粘着剤の塗布層を完全乾燥させる
ことを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項2】
粘着剤固形分濃度58%、糊粘着剤粘度450ポイズ(B型粘度計測定25℃)のアクリルエマルジョン糊で、
自然放置乾燥では20〜30秒間、
23℃の室温風では風速9〜10m/秒で1〜5秒間、
若しくは85℃の熱風では風速18〜19m/秒で0.5〜1秒間、
または、これらの伝熱量に相当する乾燥強度で不完全乾燥させる
ことを特徴とする請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項3】
基材の表面に粘着剤を塗布し、該粘着剤の塗布層が不完全乾燥状態にある時、基材搬送速度と速度差のある回転する凹凸ロールを、該粘着剤の塗布層に接触させ、該粘着剤の塗布層を凹凸形状の凹凸部に形成した後、該粘着剤の塗布層を完全乾燥させる
ことを特徴とする粘着シートの製造装置。
【請求項4】
粘着剤固形分濃度58%、糊粘着剤粘度450ポイズ(B型粘度計測定25℃)のアクリルエマルジョン糊で、
自然放置乾燥では20〜30秒間、
23℃の室温風では風速9〜10m/秒で1〜5秒間、
若しくは85℃の熱風では風速18〜19m/秒で0.5〜1秒間、
または、これらの伝熱量に相当する乾燥強度で不完全乾燥させる
ことを特徴とする請求項3に記載の粘着シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図12】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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