説明

粘着テープ貼付け方法およびこれを用いた粘着テープ貼付け治具

【課題】 ワークの粘着テープ貼付け対象面に貼付けられた粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って折り返して貼り付けるとき、気泡の巻き込み残留を発生することなく、かつ、能率よく端辺への折り返し貼付けを行う。
【解決手段】 治具本体1をワークFの端辺e係合案内してワーク長手方向に沿って移動させ、ワークFからはみ出たテープ部分tを治具本体1に備えた第1押圧部で端辺eの頂部に先行して押圧しながら折り返すとともに、折り返したテープ部分tを治具本体1に備えた第2押圧部3で端辺eの背面s’に後行して押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車におけるドアサッシュなどのワークに粘着テープを貼り付け処理する場合などに利用する粘着テープ貼付け方法およびこれを用いた粘着テープ貼付け治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の製造工程においては、ドアサッシュへの黒色塗装処理に代えて黒色の粘着テープを貼付ける技術が開発されており、ワーク外装となる主側面に沿って幅広の粘着テープを貼付けた後、粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って折り返して貼り付けることが実施されている。
【0003】
粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って折り返して貼り付ける手段としては、例えば、ワークに係合案内させた治具本体をワークに沿って手押し移動させながら、治具本体に備えた鼓形に形成された前後一対のローラをワークの端辺における頂部と背面に転動押圧するものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−211832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した貼付け手段では、鼓形ローラにおける周方向に一箇所が端辺の頂部と背面に対向するものであるので、粘着テープのはみ出し部分を端辺の頂部に押圧するタイミングと折り返したテープ部分を端辺の背面に押圧するタイミングが同時に行われる。したがって、先頭のローラが最初に粘着テープのはみ出し部分を押圧作用する際、テープの折り返しに伴って内側に巻き込まれた空気が端辺の背面に逃げ切らないうちに背面への貼付けが行われてしまい、端辺の頂部付近に気泡が残留してしまう問題がある。
【0005】
このような現象は治具を早く前進移動させるほど顕著となるものであり、気泡の巻き込み残留をなくすためには治具をゆっくり前進移動させて空気の逃げ時間を確保することが必要とである。つまり、従来の上記貼付け手段ではあまり速く治具を前進移動させることができず、作業能率の向上を図ることが難しいといった不都合が生じている。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、気泡の巻き込み残留を発生することなく、能率よく端辺への折り返し貼付けを行うことができる粘着テープ貼付け方法およびこれを用いた粘着テープ貼付け治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような手段を講じた。
【0008】
第1の発明は、ワークの粘着テープ貼付け対象面に貼付けられた粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って折り返して貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
治具本体をワークの端辺に係合案内してワークに沿って移動させ、ワークからはみ出たテープ部分を治具本体に備えた第1押圧部で前記端辺の頂部に先行して押圧しながら折り返した後に、折り返したテープ部分を治具本体に備えた第2押圧部で端辺の背面に押圧することを特徴とする。
【0009】
(作用・効果) この方法によると、はみ出たテープ部分が第1押圧部で端辺の頂部に先行して押圧されながら折り返されるために巻き込まれた空気は頂部から端辺の背面側に排除される。その後、折り返されたテープ部分が第2押圧部で端辺の背面に貼付けられることで、背面側に排除された空気が貼り付け面から外部に押し出し排除される。すなわち、気泡残留のない折り返し貼付けが行われる。
【0010】
この場合、治具本体の前進移動速度にかかわらず端辺頂部からの空気の押し出し排除が必ず先行するので、治具本体を速く前進移動させても気泡の巻き込み残留の発生ない状態で、能率的に折り返し貼付けを行うことが可能となる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記治具本体に備えた案内押圧部を前記ワークの粘着テープ貼り付け対象面に係合作用させるとともに、この案内押圧部と前記第2押圧部とを治具移動方向の前後に位置ずれさせてワークの前記端辺を両側から挟持押圧することを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この方法によると、第2押圧部がワークの端辺の背面に押圧されるとともに、案内押圧部がワークの対象面に押圧されるように治具本体を前進方向に対してひねり力を付与しながら前進操作操作することになる。すなわち、ワークを両面から挟持した状態となり治具本体を安定した姿勢に維持しながら円滑に移動させて、均一で仕上がりの良い貼付けを連続して行うことができる。
【0013】
第3の発明は、ワークの粘着テープ貼付け対象面に貼付けられた粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って巻き込んで貼り付ける粘着テープ貼付け治具であって、
前記ワークの端辺に係合した状態でこの端辺に沿って手押し移動させる治具本体に、端辺の頂部に対向する第1押圧部と、
前記ワークの端辺の背面に対向する第2押圧部と、
前記ワークの粘着テープ貼付け対象面に対向する案内押圧部とを備え、
前記第1押圧部および前記案内押圧部を前記第2押圧部よりも治具移動方向の前方に配備した
ことを特徴とする。
【0014】
(作用・効果) 上記構成の粘着テープ貼付け治具によると、上記発明方法を好適に実施することができる。
【0015】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記治具本体に前記端辺に外嵌係合されるガイド溝を設け、このガイド溝は、前後中間部に幅狭のくびれ部を有するとともに、その前後が先広がり状に開口された鼓形溝に形成されており、
前記ガイド溝の底面を前記第1押圧部に、
前記くびれ部の前方における溝内側面の一方を前記案内押圧部に、
さらに、前記くびれ部の後方における溝内側面の他方を前記第2押圧部に、構成した
ことを特徴とする。
【0016】
(作用・効果) この構成によると、例えば硬質樹脂材からなるブロック状の治具本体の一面に鼓形溝を形成するだけで、ローラや支軸などをまったく備えない極めて簡素な構造で上記方法の機能を発揮する粘着テープ貼付け治具を安価に製作することができ、実用上の利便性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る粘着テープ貼付け方法およびこれを用いた粘着テープ貼付け治具によれば、気泡の巻き込み残留を発生することなく、かつ、能率よくワーク端辺への折り返し貼付けを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0019】
図1は本発明に係る粘着テープ貼付け治具Aの斜視図、図2はワークFと粘着テープ貼付け治具Aの斜視図、図3から図6はワークFに粘着テープTを折り返し貼付ける工程の斜視図がそれぞれ示されている。
【0020】
なお、本実施例の前記ワークFは自動車におけるドアサッシュであり、その外向きの主側面Sに黒色塗装に代えて黒色の粘着テープTを貼り付けるものである。
【0021】
ワークFは、図2に示すように、1枚の鋼板をプレス重合して構成されたものであり、ドア外面となる横外側に縦壁状の外枠部f1を有するとともに、この外枠部f1からドア内側へ向けて張り出す中空の横向き枠部f2を連設した断面形状に形成されている。そして、横向き枠部f2の中空部位と外枠部f1との間に窓ガラス装着溝m1が形成されるとともに、横向き枠部f2の外面(図では上面)の左右中間部位にはワーク長手方向に沿ってリブf3が突設され、このリブf3と外枠部f1との間にウエザーストリップ装着溝m2が形成されている。そして、外枠部f1の主側面Sがテープ貼付け面となっている。そして、粘着テープTはテープ貼付け面Sの幅よりも広幅のセパレータ付き粘着テープが用いられ、外枠部f1における上下の端辺eからそれぞれ数mmづつはみ出すように位置決めされてテープ貼付け面Sに貼付けられる。なお、このテープ貼付け面Sへの粘着テープ貼付けには専用の貼付け治具が用いられ、手作業で貼付け処理される。
【0022】
テープ貼付け面Sからはみだされたテープ部分tは、後行程において端辺eに沿って折り込まれてその背面s’に貼付けられるものであり、この折込み貼付けが本発明の粘着テープ貼付け治具Aを用いて以下のように行われる。
【0023】
粘着テープ貼付け治具Aの治具本体1は、図1に示すように、滑性に優れた硬質樹脂材で前後方向長さLが約20mm、左右幅Wが約30数mm、高さHが約20数mmの角ブロック状に形成されている。その貼付け作用面(図3では下面)には、本体1の前後に亘る深さ数mmのガイド溝2が形成された構造となっている。なお、粘着テープ貼付け治具Aは、粘着テープTと接触する面が滑性に優れていればよく、例えば、フッ素コーティングが施されているものや、治具本体自体がフッ素樹脂によって構成されているものが挙げられる。
【0024】
このガイド溝2は、前後中間部に幅狭のくびれ部2aを有するとともにその前後が先広がり状に開口された鼓形に形成されている。また、くびれ部2aの後方における先広がり溝部2rの一方の内側面3と、くびれ部2aの前方における先広がり溝部2fの他方の内側面4がそれぞれ前後方向に沿って互いに平行に形成されるとともに、これら両内側面3,4の間隔c、つまり、くびれ部2aの左右方向間隔が、端辺eの厚さにテープ厚さの2倍の値を加えた寸法あるいはこれより若干大きく設定されている。
【0025】
そして、ガイド溝2の底面5が端辺eの頂部に対向する第1押圧部に構成されるとともに、後方側の前記内側面3が端辺eの背面s’に対向する第2押圧部に構成され、かつ、前方側の前記内側面4がワークFにおける貼付け面Sに対向する案内押圧部に構成されている。
【0026】
前記粘着テープ貼付け治具Aは以上のように構成されたものであり、次のようにして使用される。
【0027】
先ず貼付け準備段階として、ワークの貼付け面Sに貼付けられて端辺eからはみ出たテープ部分tは、そのテープ長手方向の一端において手作業で折り返されて端辺の背面に部分的に貼付けられる。この貼付け部分に粘着テープ貼付け治具Aの治具本体1がガイド溝2を介して外嵌係合される。この場合、図4に示すように、本体1を前後方向に対して斜めにして端辺eに押圧不可のかからない状態で無理なく係合する。
【0028】
次に、治具本体1を図4の矢印に示す方向にひねり操作することで、図5に示すように、前方の案内押圧部4と後方の第2押圧部3とで端辺eの前後箇所を左右から挟持し、治具本体1の左右姿勢がワークFの長手方向と直交する姿勢に安定保持する。これに動作によって、折り返されたテープ部分tが第2押圧部3で端辺eの背面s’に押圧される。
【0029】
このようにして貼付け準備ができると、図3に示すように、治具本体1を下方に押し付けて第1押圧部(ガイド溝2の底面)5を端辺eの頂部に押圧しながら、かつ、図4に示すひねり操作を加えたままの状態で、本体1を前方に押し動かす。この動作に追従して、先ず、折り返されたテープ部分tの基部がくびれ部2aより前方において第1押圧部5によって端辺eの頂部に貼付けられる。そして、前進移動に伴ってテープ部分tが先広がり溝部2fの内部で次第に折り返しが強められて端辺eの背面s’に沿った姿勢となり、くびれ部2aの後方においては、図6に示すように、第2押圧部3によって端辺eの背面s’に押圧されて貼付けられてゆく。
【0030】
この場合、テープ部分tが第1押圧部5で端辺eの頂部に先行して押圧されるためにテープ折り返しに伴って粘着面側に巻き込まれた空気は頂部から端辺eの背面s’側に押し出し排除され、その後、折り返されたテープ部分tが第2押圧部3で端辺eの背面s’にしっかりと貼付けられることで、残留気泡のない折り返し貼付けが行われることになる。
【0031】
なお、本発明は以下のような形態で実施することもできる。
【0032】
(1)上記実施例では、第1押圧部5、第2押圧部3、および、案内押圧部4をそれぞれガイド溝2における扁平な内面で構成しているが、これら押圧部を、図7に示すように、遊転自在なローラRで構成することもでき、これによると本体1を移動抵抗少なく円滑に手押し移動することができる。
【0033】
(2)本体1を左右一対のブロックで構成するとともに、互いの対向部位間に前記ガイド溝2を形成し、両ブロックを接近離反調節してガイド溝2の間隔を調整可能に構成することで、端辺eの厚さの異なるワークFに対応できるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】粘着テープ貼付け治具の貼付け作用面側から見た斜視図である。
【図2】ワークと粘着テープ貼付け治具を示す斜視図である。
【図3】折り返し貼付け工程を示す斜視図である。
【図4】貼付け準備状態の要部の横断平面図である。
【図5】折り返し貼付け工程の横断平面図である。
【図6】図5におけるX-X線断面図である。
【図7】変形例治具の平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 … 治具本体
2 … ガイド溝
2a… くびれ部
2f… 先広がり溝部
2r… 先広がり溝部
3 … 第2押圧部(内側面)
4 … 案内押圧部(内側面)
5 … 第1押圧部(底面)
F … ワーク
e … 端辺
T … 粘着テープ
S … 貼付け面
s’… 背面
t … テープ部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの粘着テープ貼付け対象面に貼付けられた粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って折り返して貼り付ける粘着テープ貼付け方法であって、
治具本体をワークの端辺に係合案内してワークに沿って移動させ、ワークからはみ出たテープ部分を治具本体に備えた第1押圧部で前記端辺の頂部に先行して押圧しながら折り返した後に、折り返したテープ部分を治具本体に備えた第2押圧部で端辺の背面に押圧する
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着テープ貼付け方法において、
前記治具本体に備えた案内押圧部を前記ワークの粘着テープ貼り付け対象面に係合作用させるとともに、この案内押圧部と前記第2押圧部とを治具移動方向の前後に位置ずれさせてワークの前記端辺を両側から挟持押圧する
ことを特徴とする粘着テープ貼付け方法。
【請求項3】
ワークの粘着テープ貼付け対象面に貼付けられた粘着テープのはみ出し部分をワークの端辺に沿って巻き込んで貼り付ける粘着テープ貼付け治具であって、
前記ワークの端辺に係合した状態でこの端辺に沿って手押し移動させる治具本体に、端辺の頂部に対向する第1押圧部と、
前記ワークの端辺の背面に対向する第2押圧部と、
前記ワークの粘着テープ貼付け対象面に対向する案内押圧部とを備え、
前記第1押圧部および前記案内押圧部を前記第2押圧部よりも治具移動方向の前方に配備した
ことを特徴とする粘着テープ貼付け治具
【請求項4】
請求項3に記載の粘着テープ貼付け治具であって、
前記治具本体に前記端辺に外嵌係合されるガイド溝を設け、このガイド溝は、前後中間部に幅狭のくびれ部を有するとともに、その前後が先広がり状に開口された鼓形溝に形成されており、
前記ガイド溝の底面を前記第1押圧部に、
前記くびれ部の前方における溝内側面の一方を前記案内押圧部に、
さらに、前記くびれ部の後方における溝内側面の他方を前記第2押圧部に、構成した
ことを特徴とする粘着テープ貼付け治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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