説明

粘着剤組成物、及び、粘着シート

【課題】塗工安定性に優れ、透明性が高く、長期の耐候性、粘着特性に優れた粘着剤や、粘着剤層、及び、粘着シート等を得ることができる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系ポリマーに、少なくともヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、ベンゾトリアゾール系モノマーをモノマー成分として含み、前記モノマー成分をグラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖である(メタ)アクリル系ポリマーに、少なくとも紫外線吸収機能、及び/又は、ラジカル捕捉機能を有するモノマーを、グラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物、及び、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘着ポリマーと共に、紫外線吸収剤や、ラジカル捕捉剤などの光安定剤を添加する粘着剤組成物について、耐候性を向上させる試みがなされている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかしながら、光安定剤は通常、低分子量化合物であるため、粘着ポリマーに対して、満足できる相溶性が得られず、白濁したり、粘着シート等として使用する際に、光安定剤が、ブリードアウトしたり、揮発・流出するなど、光安定剤成分の消失・汚染が問題となっている。
【0004】
そこで、光安定剤をモノマーとして使用し、粘着ポリマーの共重合成分として使用する試みがなされている(特許文献4〜7)。
【0005】
しかしこの場合、光安定剤として、ヒンダードアミン系モノマーや紫外線吸収機能を有するモノマーを、粘着ポリマーを構成するモノマーと共に共重合させると、モノマー成分である光安定剤のアミノ基や、アミド基、水酸基などの化学構造により、希望しない反応や、水素結合が発生し、過度のゲル化や粘度上昇が起こり、粘着シート等を製造する際の塗工時間等に問題が生じるため、モノマーとして使用する光安定剤の配合量に限界を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4406152号
【特許文献2】特開2002−30264号公報
【特許文献3】特開2009−227851号公報
【特許文献4】特開平6−299132号公報
【特許文献5】特開2000−123621号公報
【特許文献6】特開2005−187662号公報
【特許文献7】特開2007−138117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、塗工安定性に優れ、透明性が高く、長期の耐候性、粘着特性に優れた粘着剤や、粘着剤層、及び、粘着シート等を得ることができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーに、少なくともヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、ベンゾトリアゾール系モノマーをモノマー成分として含み、前記モノマー成分をグラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする。なお、(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマー、及び/又は、メタクリル系ポリマーを意味する。モノマーに関しても同様である。
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、水酸基含有モノマー0.1〜10重量%を重合して得られることが好ましい。
【0011】
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られることが好ましい。
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、更に、架橋剤を含有し、前記架橋剤が、有機過酸化物系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、及び、エポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の粘着シートは、支持体の少なくとも片面に、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、主鎖である(メタ)アクリル系ポリマーに、少なくとも、紫外線吸収機能、及び/又は、ラジカル捕捉機能を有するモノマーをモノマー成分とし、前記モノマー成分をグラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することにより、塗工安定性に優れ、前記粘着剤組成物を用いた粘着剤や粘着剤層、粘着シート等(粘着フィルム、粘着テープ、両面粘着テープなどを含む)の透明性が高く、長期の耐候性、粘着特性に優れたものとなり、ガラス保護やプラスチック保護、金属板保護など、紫外線に曝される部材の保護用途や、長期耐熱性が要求される用途等の幅広い用途に使用することができ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー(主鎖)に、少なくともヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、ベンゾトリアゾール系モノマーを、グラフト重合(側鎖形成)してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする。なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、ホモポリマーやコポリマー(ランダムコポリマーや、ブロックコポリマー等を含む)を含むことを意味し、前記コポリマーとしては、アルキルアクリレートコポリマー及び/又はアルキルメタクリレートコポリマーを含むことを意味し、更にアルキル基とは、直鎖又は分岐鎖のあるアルキル基を有するものを指し、芳香環等を構造中に含むものは除外される。
【0016】
<(メタ)アクリル系ポリマー(主鎖)の調製>
本発明の粘着剤組成物は、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーは、主鎖として、(メタ)アクリル系ポリマーを有する。
【0017】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(主鎖)を構成するモノマー単位としては、特に制限されないが、例えば、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られることが好ましい。
【0018】
前記一般式CH=C(R)COORで表されるモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられ、中でも特に、n−ブチル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。また、これらのモノマーは、単独または組み合わせても使用することができる。
【0019】
本発明において、前記一般式CH=C(R)COORで表されるモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50重量%以上が好ましく、60〜99重量%がより好ましく、70〜98重量%が更に好ましい。前記モノマーが50重量%未満になると、粘着(接着)性が乏しくなるため、好ましくない。
【0020】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーには、モノマー単位として、水酸基含有モノマーを重合してなることが好ましい。前記水酸基含有モノマーを使用することにより、架橋剤として有機過酸化物を用いた場合に、加熱安定性に優れたものが得られ、有用である。また、主鎖に相当する(メタ)アクリル系ポリマーに、水酸基含有アクリル系モノマーが存在する場合、グラフト重合の際の水素引き抜きが起こる位置や、側鎖に相当するグラフトポリマーと、グラフト重合する際に生成する環状エーテル基含有モノマーから得られるホモポリマーとの相溶性に好ましい影響を与え、より良好な耐熱性が付与される。
【0021】
前記水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、その他、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。また、これらのモノマーは、単独または組み合わせても使用することができる。
【0022】
前記水酸基含有モノマーは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、0.1〜10重量%が好ましく、0.2〜7重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましい。前記水酸基含有モノマーの含有量が、10重量%を超えると、前記(メタ)アクリル系ポリマーを重合する際に、ゲル化しやすくなり、一方、0.1重量%未満では、その添加効果が得にくくなり、好ましくない。
【0023】
また、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーには、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを使用することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などがあげられる。またこれらの無水物を用いることができる。これらの中でも特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましく用いられる。また、これらのモノマーは、単独または組み合わせても使用することができる。
【0024】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、前記カルボキシル基含有モノマーの割合は、モノマー単位として、0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜10重量%がより好ましく、0.5〜7重量%が更に好ましい。前記カルボキシル基含有モノマーの含有量が、20重量%を超えると、粘着(接着)性が低下したり、粘度が高くなり、生産性に使用をきたす恐れがあり、一方、0.1重量%未満であると、粘着剤等を作製する際に、発泡したり、貼付した際に剥がれが生じる等の恐れがあり、好ましくない。
【0025】
その他の共重合可能なモノマーとして、酢酸ビニルやビニルエーテル等のビニル化合物や、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド気含有モノマー等の窒素含有モノマーを必要に応じて、適宜使用することができる。また、これらのモノマーは、単独または組み合わせても使用することができる。
【0026】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。
【0027】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、(メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0028】
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどがあげられる。
【0029】
その他窒素含有モノマーとして、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどがあげられる。
【0030】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、前記窒素含有モノマーの割合は、モノマー単位として、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましく、2〜10重量%が更に好ましい。前記窒素含有モノマーの含有量が、20重量%を超えると、粘着(接着)性に劣り、一方、0.1重量%未満では、高湿度下において、剥がれが生じ易くなり、好ましくない。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、30万以上が好ましく、40万〜300万がより好ましく、50万〜200万が更に好ましい。重量平均分子量が30万よりも小さい場合には、粘着剤層の耐久性が乏しくなったり、粘着剤層の凝集力が小さくなって糊残りが生じやすくなる。一方、重量平均分子量が大きくなりすぎると、貼り合せ性、粘着(接着)力が低下するため、作業性が悪化し、好ましくない。さらに、粘着剤組成物が溶液系において、粘度が高くなりすぎ、塗工が困難になる場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0032】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーやコポリマー(ランダムコポリマーやブロックコポリマーなど)のいずれでもよい。
【0033】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0034】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0035】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー全量100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0037】
なお、前記重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.3重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.2重量部程度とするのが好ましい。
【0038】
前記連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0039】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
さらに、前記乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤を使用してもよく、前記反応性乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(アデカ社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0041】
<側鎖の調製>
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーに、少なくとも、ラジカル捕捉機能を有するヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、紫外線吸収機能を有するベンゾトリアゾール系モノマーをモノマー成分とし、前記モノマー成分をグラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする。
【0042】
前記ヒンダードアミン系モノマーとしては、ラジカル捕捉機能を有する重合可能なモノマー成分(モノマー単位)であれば、特に制限されないが、例えば、以下の構造式を有するヒンダードアミン系モノマーを使用することができる。なお、これらヒンダードアミン系モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
【化1】


(化学式1は、アデカ社製、アデカスタブLA87。)
【0044】
【化2】


(化学式2は、アデカ社製、アデカスタブLA82。)
【0045】
また、前記ベンゾトリアゾール系モノマーとしては、紫外線吸収機能を有する重合可能なモノマー成分(モノマー単位)であれば、特に制限されないが、例えば、以下の構造式を有するベンゾトリアゾール系モノマーを使用することができる。なお、これらベンゾトリアゾールは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
【化3】


(化学式3のRは、水素または炭素数1〜8のアルキル基、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、Rは、水素又はメチル基を示す。)
【0047】
【化4】


(化学式4は、大塚化学社製、RUVA−93。)
【0048】
前記ヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、前記ベンゾトリアゾール系モノマーの配合量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(主鎖)100重量部に対して、0.5〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、1〜8重量部が更に好ましい。前記モノマーの配合量が0.5重量部未満であると、耐候性が十分に発揮されず、一方20重量部を超えると、塗工性や、粘着剤等の透明性に問題が生じる場合があり、好ましくない。
【0049】
前記側鎖を構成するヒンダードアミン系モノマーやベンゾトリアゾール系モノマー以外に使用できるその他の共重合可能なモノマーとして、特に制限はされないが、例えば、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜9のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。前記一般式CH=C(R)COORで表されるモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、その他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレートなどがあげられ、中でも特に、n−ブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、これらのモノマーは、単独または組み合わせても使用することができる。
【0050】
本発明において、前記一般式CH=C(R)COORで表されるモノマーや、脂環式(メタ)アクリレート等は、前記側鎖を構成するモノマー成分の全量に対して、30〜80重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましい。前記モノマーが30重量%未満になると、粘着(接着)性が乏しくなり、一方で、80重量%を超えると、耐候性の向上が図れないため、好ましくない。
【0051】
また、前記側鎖を構成するその他の共重合可能なモノマーとして、その他に挙げるとすると、例えば、水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0052】
前記水酸基含有モノマーとしては、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分として使用するものを使用することができる。その中でも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。前記水酸基含有モノマーを使用することにより、ヒンダードアミン系モノマーやベンゾトリアゾール系モノマーがグラフトされやすくなり、有効である。
【0053】
前記水酸基含有モノマーは、前記側鎖を構成するモノマー成分の全量に対して、3〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。前記水酸基含有モノマーの含有量が、20重量%を超えると、グラフト重合する際にゲル化しやすくなり、一方、3重量%未満では、その添加効果が得にくくなり、好ましくない。
【0054】
前記側鎖を構成するモノマー成分の全量中における前記ヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、ベンゾトリアゾール系モノマーと、その他の共重合可能なモノマー(例えば、水酸基含有モノマーなど)の重量比(配合比)は、99:1〜1:99が好ましく、98:2〜2:98がより好ましい。透明性や塗工性、粘着(接着)特性に応じて、重量比を変えることが可能である。なお、前記ヒンダードアミン系モノマーやベンゾトリアゾール系モノマーと共に、その他の共重合性モノマーを重合することにより、理由は明らかではないが、前記ヒンダードアミン系モノマーや、ベンゾトリアゾール系モノマーによるポリマーの形成が阻害されるため、得られるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーは、透明性や塗工性が向上するものと推測される。
【0055】
<グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
前記(メタ)アクリル系ポリマー(主鎖)に、前記ヒンダードアミン系モノマーやベンゾトリアゾール系モノマー等のモノマー成分をグラフト重合して、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーの調製する方法としては、当業者に公知の方法であれば、特に限定はされないが、例えば、溶液重合や乳化重合等を使用することができ、特に溶液重合の場合、主鎖を構成する前記(メタ)アクリル系ポリマーの溶液(固形分100重量部)に、グラフト重合させるモノマーと、粘度調整のための溶媒を加えて、窒素置換した後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系重合開始剤等を0.02〜5重量部加え、50℃〜80℃で、4〜15時間加熱して行うことができる。なお、前記重合開始剤の配合量が0.02重量部未満であると、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを得るのに時間がかかりすぎ、5重量部を超えると、前記ヒンダードアミン系モノマーやベンゾトリアゾール系モノマーから構成されるポリマーが多く生成し、グラフトしない割合が上昇するおそれがあるため、好ましくない。
【0056】
また、必要に応じて、通常使用される低分子量の紫外線吸収剤や、光安定剤、老化防止剤等を使用することもできる。特に紫外線吸収機能を有するベンゾトリアゾール紫外線吸収剤や、ラジカル捕捉機能を有するヒンダードアミン光安定剤を使用することが好ましい。
【0057】
上記紫外線吸収剤の具体例としては、低分子量のものが挙げられるが、具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール)]等を挙げることができる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記紫外線吸収剤のなかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いる場合には、耐侯性をより向上させることができるため、紫外線吸収剤のブリードによって、粘着(接着)力が低下してしまうことをより防止することができる。そして、その結果、本発明の粘着シートを、被着体に貼り付けた後、長期間保管した場合であっても、粘着力を充分に保持することができるため、粘着力の低下によって剥がれることを充分に防止することができる。また、長期間保管後の糊残りを充分に防止することができる。
【0059】
上記光安定剤としては、従来公知のものを使用することができるが、たとえば、ヒンダードアミン系光安定剤やベンゾエート系光安定剤など公知の光安定剤を適宜使用することができる。中でも特に、ヒンダードアミン系光安定剤を使用する場合には、耐侯性をより向上させることができるため、光安定剤のブリードによって、粘着力が低下してしまうことをより防止することができる。そして、その結果、本発明の粘着シート等を、被着体に貼り付けた後、長期間保管した場合であっても、粘着力を充分に保持することができるため、粘着力の低下によって、剥がれることを充分に防止することができる。また、長期間保管後の糊残りを充分に防止することができる。
【0060】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、低分子量タイプのものが挙げられるが、具体的には、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ビペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(分子量:737)(これを70%と、ポリプロピレン30%とを混合物とした市販品:「TINUVIN 123S」)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフエニル〕メチル〕ブチルマロネ―ト(分子量:685)(市販品:「TINUVIN 144」)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケ―トおよびメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ビペリジニルセバケ―ト混合物(分子量:509)(市販品:「TINUVIN 765」)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケ―ト(分子量:481)(市販品:「TINUVIN 770」、「TINUVIN 770DF」、「TINUVIN 770FL」)などを挙げることができる。上記市販品は、いずれも、チバ・スペシヤルテイ・ケミカルズ株式会社製のものである。また、アデカ社製のアデカスタブLA−52やアデカスタブLA−62などの市販品も挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの光安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の粘着剤組成物においては、更に、架橋剤を含有することができ、前記架橋剤が、有機過酸化物系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、及び、エポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記架橋剤の配合量は、前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記架橋剤の全量が、0.01〜2重量部含有することが好ましく、0.02〜1.5重量部がより好ましく、0.02〜1.0重量部が更に好ましい。0.01重量部未満であると、架橋不足で耐熱性に劣ったり、剥離時に糊残りする場合があり、一方、2重量部を超えると、架橋過多となり粘着(接着)力が低くなる場合があり、好ましくない。
【0062】
前記イソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0063】
前記イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。更に、これらイソシアネート化合物の各種ポリオールの付加物や、ジイソシアネートイソシアヌレート、ビューレットなどを用いることもできる。これらイソシアネート系架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。なお、保存時、又は、光が当たった際の着色のしやすさ(透明性を得られにくい)から、芳香族系イソシアネート系架橋剤の使用には、配合量を少なくする等の考慮が必要である。
【0064】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが、反応速度が速いため好ましい。
【0065】
前記イソシアネート系架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤を、0.01重量部以上含有することが好ましく、0.02〜2重量部含有することがより好ましく、0.05〜1.5重量部含有することが更に好ましい。前記範囲内であれば、耐熱性に優れ、また剥離時に糊残りすることもなく、好ましい態様となる。また、架橋安定性や、加工性、ハンドリング性などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0066】
前記有機過酸化物系架橋剤としては、加熱によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。前記1分間半減期温度が80℃未満であると、塗布乾燥を行う前の保存時に反応が進行してしまい、粘度が上昇し、塗布自体を行うことができなくなり、一方、160℃を超えると、架橋反応時の温度が高くなるため、副反応がおこり、また、未反応の有機過酸化物が多く残存した状態で、架橋反応が進行する恐れがあり、好ましくない。
【0067】
前記有機過酸化物系架橋剤としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0068】
なお、前記有機過酸化物系架橋剤の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0069】
前記有機過酸化物系架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記有機過酸化物を0.02〜2重量部含有することが好ましく、0.05〜1重量部がより好ましく、0.08〜0.6重量部が更に好ましい。0.02重量部未満であると、架橋反応が不十分となり、耐久性に劣る恐れがあり、一方で、2重量部を超えると、架橋過多となり、粘着(接着)性が劣る恐れがあり、好ましくない。また、架橋安定性や、加工性、ハンドリング性などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0070】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0071】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0072】
前記エポキシ系架橋剤とは、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいい、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、スピログリコールジグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0073】
前記エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記エポキシ系架橋剤を0.01〜2重量部含有することが好ましく、0.02〜1.5重量部がより好ましく、0.02〜1.0重量部が更に好ましい。前記範囲内であれば、耐熱性に優れ、また剥離時に糊残りすることもなく、好ましい態様となる。また、架橋安定性や、加工性、ハンドリング性などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0074】
また、架橋剤として、その他に、多官能性金属キレート等を用いることができる。前記多官能性金属キレートとは、多価金属と有機化合物とが共有結合または配位結合しているものである。前記多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0075】
本発明においては、さらに、架橋剤として、オキサゾリン系架橋剤等を加えることも可能である。前記オキサゾリン系架橋剤としては、分子内にオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用できる。前記オキサゾリン基は、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基のいずれでもよい。前記オキサゾリン系架橋剤としては、付加重合性オキサゾリンに不飽和単量体を共重合した重合体が好ましく、特に付加重合性オキサゾリンに2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを用いたものが好ましい。例としては、日本触媒(株)製の商品名「エポクロスWS−500」等があげられる。
【0076】
なお、前記架橋剤(多官能性金属キレートやオキサゾリン系架橋剤等)は、前記有機過酸化物系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、及び、エポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種と共に、本発明の特性を損なわない範囲で、適宜、配合量を考慮し、使用することができる。
【0077】
また、前記粘着剤(層)の製造にあたり、架橋された粘着剤層のゲル分率は、20〜95重量%となるように調製することが好ましく、40〜90重量%がより好ましい。前記ゲル分率は、前記架橋剤の配合量や、架橋処理温度や時間などの条件を、適宜考慮することにより行うことができる。
【0078】
さらに、本発明の粘着剤組成物あるいは粘着剤層を有する粘着シートを、ガラスなどの親水性被着体に適用する場合には、界面との密着性を上げて、耐久性を上げるために、シランカップリング剤を用いることができる。
【0079】
前記シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン 、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0080】
前記シランカップリング剤は、単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用しても良いが、全体としての含有量は、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー全量100重量部に対し、0.01〜1重量含有することが好ましく、0.02〜0.6重量部含有することがより好ましく、0.05〜0.3重量含有することが更に好ましい。0.01重量部未満であると、耐水性(耐久性)の向上を図ることが難しく、1重量部を超えると、ガラスへの粘着(接着)力が増大し、再剥離性に劣る傾向にあり、好ましくない。
【0081】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。なお、これら添加物は、前記粘着剤組成物を用いて、粘着剤層を形成した際に、前記粘着剤層の弾性率を著しく変化させない程度に、配合量を調製する必要がある。
【0082】
本発明において使用される溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサン、n‐ヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、水などがあげられる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合してもよい。
【0083】
<粘着シートの調製>
本発明の粘着シートは、本発明の粘着シートは、支持体の少なくとも片面に、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有することが好ましい。
【0084】
前記粘着剤層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記粘着剤組成物(溶液)を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し、架橋処理して粘着剤層を形成した後に支持体に貼り合わせる方法、または、支持体上に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し、架橋処理して粘着剤層を支持体上に形成する方法などにより作製される。その後、粘着剤層の架橋反応を調整する目的で、エージング処理を行ってもよい。また、粘着剤組成物を均一に塗布できるように、適宜に、重合溶媒以外の一種以上の溶媒(溶剤)を新たに加えてもよい。
【0085】
前記剥離処理したセパレーターとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着(接着)特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0086】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0087】
前記支持体としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)製フィルム、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)製フィルム、塩化ビニル系樹脂製フィルム、酢酸ビニル系樹脂製フィルム、ポリイミド系樹脂製フィルム、ポリアミド系樹脂製フィルム、フッ素系樹脂製フィルム、その他セロハン類等のプラスチックフィルム類;和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等の紙類;各種の繊維状物質(天然繊維、半合成繊維または合成繊維のいずれでもよい。例えば、綿繊維、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等)の、単独または混紡等による織布や不織布等の布類;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート類;発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等の発泡体からなる発泡体シート類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体;等を用いることができる。前記プラスチックフィルム類は、無延伸タイプであってもよく、延伸タイプ(一軸延伸タイプまたは二軸延伸タイプ)であってもよい。
【0088】
前記支持体には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。支持体の表面(特に、粘着剤層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、粘着剤層の支持体投錨性を高めるための処理であり得る。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0089】
前記支持体の厚さは、特に制限されず、例えば、10μm〜500μm程度が好ましく、10μm〜200μm程度がより好ましい。
【0090】
前記粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0091】
前記粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度が好ましく、2〜50μm程度がより好ましく、2〜40μm程度が更に好ましく、5〜35μm程度が特に好ましい。
【0092】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘着剤層を保護してもよい。
【0093】
前記セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0094】
前記プラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0095】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0096】
本発明の粘着シートは、ガラス保護やプラスチック保護、金属板保護など光(紫外線)に曝される部材の保護用途や、長期耐熱性が要求される用途に使用でき、有用である。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RH(1時間あるいは1週間)である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0098】
[実施例1]
((メタ)アクリル系ポリマーA1の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート67重量部、メチルアクリレート30重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部とトルエン30重量部とを共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って、10時間重合反応を行い、重量平均分子量91万の主鎖に相当する(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液を調製した。
【0099】
(グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB1の調製)
前記(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液(固形分100重量部)を、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに入れ、ベンゾトリアゾール系モノマー(大塚化学社製、RUVA−93)5重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を65℃付近に保って、2時間、次いで70℃で4時間重合反応を行い、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB1溶液を調製した。
【0100】
(粘着シートC1の作製)
前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB1溶液(固形分100重量部)に対して、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製、D−110N)0.3重量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。ついで、前記粘着剤組成物溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポン社製、テトロンHB3−50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、110℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートC1を作製した。
【0101】
[実施例2]
(粘着シートC2の作製)
実施例1で得られた前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB1溶液(固形分100重量部)に対して、架橋剤として、過酸化ベンゾイル0.3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製、D−160N)0.07重量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。ついで、前記粘着剤組成物溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポン社製、テトロンHB3−50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、140℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートC2を作製した。
【0102】
[実施例3]
((メタ)アクリル系ポリマーA3の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート50重量部、イソブチルアクリレート47重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部とトルエン30重量部とを共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って、10時間重合反応を行い、重量平均分子量98万の主鎖に相当する(メタ)アクリル系ポリマーA3溶液を調製した。
【0103】
(グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB3の調製)
前記(メタ)アクリル系ポリマーA3溶液(固形分100重量部)を、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに入れ、ヒンダードアミン系モノマー(アデカ社製、アダカスタブLA−82)5重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を65℃付近に保って、3時間、次いで70℃で3時間重合反応を行い、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB3溶液を調製した。
【0104】
(粘着シートC3の作製)
前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB3溶液(固形分100重量部)に対して、架橋剤として、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製、テトラッドC)0.03重量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。ついで、前記粘着剤組成物溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポン社製、テトロンHB3−50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、110℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートC3を作製した。
【0105】
[実施例4]
(グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB4の調製)
前記(メタ)アクリル系ポリマーA3溶液(固形分100重量部)を、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに入れ、ベンゾトリアゾール系モノマー(大塚化学社製、RUVA−93)3重量部、ヒンダードアミン系モノマー(アデカ社製、アダカスタブLA−87)1重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、ブチルアクリレート10重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を65℃付近に保って3時間、次いで70℃で4時間重合反応を行い、グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB4溶液を調製した。
【0106】
(粘着シートC4の作製)
前記グラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーB4溶液(固形分100重量部)に対して、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製、D−160N)0.7重量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。ついで、前記粘着剤組成物溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポン社製、テトロンHB3−50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、110℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートC4を作製した。
【0107】
[比較例1]
実施例1において、ベンゾトリアゾール系モノマーを配合しなかった以外は、同様の方法にて、比較例1の粘着シートを得た。
【0108】
[比較例2]
実施例1で得られた(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液(固形分100重量部)に対して、ベンゾトリアゾール系モノマー(大塚化学社製、RUVA−93)5重量部、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製、D−110N)0.3重量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。ついで、前記粘着剤組成物溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポン社製、テトロンHB3−50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、110℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0109】
[比較例3]
実施例1で得られた(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液(固形分100重量部)に対して、高分子量タイプのヒンダードアミン(BASF社製、Uvinul5050H)5重量部、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製、D−110N)0.3重量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。ついで、前記粘着剤組成物溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポン社製、テトロンHB3−50)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、110℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0110】
[比較例4]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート67重量部、メチルメタクリレート30重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3重量部、ベンゾトリアゾール系モノマー(大塚化学社製、RUVA−93)5重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部とトルエン30重量部とを共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って重合反応を開始したところ、重合中に急激に粘度が上昇し、ゲル化が過度に進行したため、塗工可能な (メタ)アクリル系ポリマーを得ることができなかった。
【0111】
[比較例5]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート67重量部、メチルメタクリレート30重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3重量部、ヒンダードアミン系モノマー(アデカ社製、アダカスタブLA−82)5重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部とトルエン30重量部とを共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って重合反応を開始したところ、重合中に急激に粘度が上昇し、ゲル化が過度に進行したため、塗工可能な (メタ)アクリル系ポリマーを得ることができなかった。
【0112】
上記実施例および比較例で得られた、粘着シートについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0113】
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をテトラヒドロフランに溶解して0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm 計90cm
・溶離液:テトラヒドロフラン(濃度0.1重量%)
・流量:0.8ml/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度:40℃
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計
・標準試料:ポリスチレン
【0114】
<透明性>
粘着シートの状態を、目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:透明
×:白濁
【0115】
<剥離力>
実施例および比較例で得られた粘着シートを、幅20mm×長さ約50mmに裁断し、厚さ1.5mmの被着体であるガラス板(マツナミ社製)に、2kgのロール1往復で貼り付け、次いで放射照度を約50(w/m)に設定したキセノンウェザーメーター(スガ試験機社製、Xe25)に、700時間投入させ、粘着シートを被着体ガラスに密着させた後、23±2℃、湿度約50%RHの雰囲気下の条件にて、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離力(N/20mm)を測定した。なお、前記剥離力としては、0.5〜25N/20mmであることが好ましく、2〜20N/20mmであることがより好ましく、5〜15N/20mmであることが更に好ましい。前記範囲内であると、ガラスや金属板等の保護の用途に使用する際に、使用中に剥がれることなく、また使用後には容易に剥離することができ、好ましい。
【0116】
<汚染性>
前記剥離力の評価試験後の被着体表面を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:被着体ガラス表面に糊残りなし
×:被着体ガラス表面に糊残りあり
【0117】
【表1】

【0118】
表1の結果から、本発明の粘着剤組成物を使用した粘着シートは、主鎖である(メタ)アクリル系ポリマーに、少なくとも、紫外線吸収機能、及び/又は、ラジカル捕捉機能を有するモノマー成分をグラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することにより、塗工安定性に優れ、前記粘着剤組成物を用いた粘着シートが、透明性が高く、長期の耐候性(剥離力)、粘着特性(糊残りなし)に優れたものとなり、幅広い用途に使用できることが、確認できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマーに、
少なくともヒンダードアミン系モノマー、及び/又は、ベンゾトリアゾール系モノマーをモノマー成分として含み、前記モノマー成分をグラフト重合してなるグラフト変性(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、水酸基含有モノマー0.1〜10重量%を重合して得られることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
更に、架橋剤を含有し、
前記架橋剤が、有機過酸化物系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、及び、エポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
支持体の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。


【公開番号】特開2012−188620(P2012−188620A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55445(P2011−55445)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】