説明

粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シート並びに光学部材

【課題】高温、高湿の条件下においても透明導電膜とガラス板等との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板等との間に発泡や剥離を生じないうえに、透明導電膜の腐食を抑制することができ、耐久性、透明性および接着信頼性に優れた粘着剤組成物とこれを用いた粘着シート並びに光学部材を提供する。
【解決手段】C4〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルモノマー9.5〜87.95重量%、C1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー10〜40重量%、水酸基含有モノマー2〜50重量%及びカルボキシル基含有モノマー0.05〜0.5重量%を重合して得られるアクリル系ポリマー(A)と、前記カルボキシル基含有モノマーに対して当量配合の金属キレート化合物(B)とを含む重量平均分子量が50万〜150万の粘着剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤組成物に関する。詳しくは、ITOなどの透明導電膜への粘着に適する、金属キレート化合物を含むアクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤組成物に関し、さらには該粘着剤組成物を用いた粘着シートや光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置に、タッチパネルを組み合わせた入力装置が広く用いられるようになってきている。タッチパネルの製造等においては、ガラス基板や透明プラスチック基板(例えば、アクリル樹脂製基板やポリカーボネート樹脂製基板など)と透明導電膜を貼り合わせる用途に透明な粘着シートが使用されている。これらの用途に使用される粘着シートには、透明性に加え、高温や高湿環境下等で発泡や剥がれを生じない性質(耐発泡剥がれ性)などの優れた信頼性が求められるため、これまでは、液晶ディスプレイの製造等に使用されている偏光フィルムとガラス基板との貼り合わせ用粘着剤が使用されていた(例えば、特許文献1〜2)。
【0003】
一方、タッチパネルの感知方法として静電容量方式を採用する場合、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明性の高い金属薄膜や金属酸化物薄膜(以下、透明性の高い金属薄膜と金属酸化物薄膜を「透明導電膜」と総称する場合がある。)に直接粘着シートを貼り付けて用いる場合があるため、かかる用途においては、粘着シートには、上記透明導電膜を腐食させない、非腐食性が要求される。
【0004】
しかしながら、上記のカルボキシル基含有モノマーをモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマー等からなる粘着シートを透明導電膜に粘着、すなわち貼り付けて用いた場合には、加湿条件下で保存すると、透明導電膜の抵抗値が変化する、すなわち、透明導電膜が腐食するという問題が発生していた。
【0005】
そこで、アクリル系ポリマー等からなる粘着剤組成物に防錆効果を有する化合物を配合し、透明導電膜の腐食を抑制する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかし、防錆剤は通常粉末であり、十分な防錆効果を発現させるためには数%以上の配合が必要であるが、アクリル系ポリマー等からなる粘着剤との相溶性が悪いため、数%以上配合した場合、防錆剤が析出し、粘着シートの透明性を阻害する場合があり、防錆性と透明性の両立が十分でない。
【0006】
これに対して、透明導電膜の腐食を防止するため、カルボキシル基含有モノマーを使用しない、アクリル系ポリマー等からなる粘着剤が提案されている。(特許文献4参照)。しかしながら、カルボキシル基を含有しないアクリル系ポリマー等からなる粘着剤では、ガラス基板や透明プラスチック樹脂基板に対して高い接着力を得ることはできるが、透明導電膜に対しては高い接着力を得にくい。
【0007】
そこで、高い接着力を得るため、該粘着剤に使用する架橋剤量を少なくし接着力を高くすることが考えられるが、そうすると該粘着剤の凝集力が低下し、発砲や剥がれ等の耐久性が低下するので、高接着力と高耐久性の両立が十分でない。また、架橋剤量を少なくすると、アクリル系ポリマーの架橋密度が低くなるので、加湿条件下で保存すると、該粘着剤層が白化し、透明性を阻害する場合もあった。従って、上記のような防錆剤を配合したアクリル系ポリマーからなる粘着剤やカルボキシル基含有モノマーを含有しないアクリル系ポリマーからなる粘着剤層を有する粘着シートにおいて、透明導電膜に対する非腐食性(以下、単に「非腐食性」と称する場合がある。)と接着力及び透明性を十分に満足する粘着シートは得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−249752号公報
【特許文献2】特開2002−327160号公報
【特許文献3】特開2006−45315号公報
【特許文献4】特開2009−79203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高温、高湿の条件下においても透明導電膜とガラス板等との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板等との間に発泡や剥離を生じないうえに、透明導電膜の腐食を抑制することができ、耐久性、透明性および接着信頼性に優れ、透明導電膜の貼り合わせに適した粘着剤組成物及びこれを用いた粘着シート並びに光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、微量のカルボキシル基含有モノマー及び比較的多くの水酸基含有モノマーを有したアクリル系ポリマーに、該カルボキシル基含有モノマーと当量の金属キレート化合物を配合することにより、透明導電膜に対する非腐食性及び透明性に優れ、なおかつ、高い接着力を有する粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、(i)炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルモノマー9.5〜87.95重量%、(ii)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー10〜40重量%、(iii)水酸基含有モノマー2〜50重量%、及び(iv)カルボキシル基含有モノマー0.05〜0.5重量%を含むモノマーを重合して得られる、重量平均分子量が50万〜150万のアクリル系ポリマー(A)と、前記カルボキシル基含有モノマーに対して当量配合の金属キレート化合物(B)とを含む粘着剤組成物である。
【0012】
また本発明は、前記粘着剤組成物にイソシアネート系化合物(C)を加えて架橋させた粘着剤層を少なくとも具備する粘着シート、並びに少なくとも一方表面に透明導電膜を設けた透明電極を具備する光学部材であって、前記粘着シートが、前記透明電極の前記透明導電膜に粘着している光学部材該粘着シートが、その透明導電膜側に粘着している透明電極を具備する光学部材でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着組成物及びこれから得られる粘着シートは、粘着剤層を構成するアクリル系ポリマーのモノマー成分として微量のカルボキシル基含有モノマーを用いているため、接着性に優れている。さらに、金属キレート系化合物でカルボキシル基を封鎖しているため、透明導電膜に貼付した際に、金属薄膜の腐食を生じさせず耐発泡剥がれ性に優れる。さらに、水酸基含有モノマーを通常使用される量より多く共重合して粘着剤層の架橋密度を高くしたことによって耐湿熱白化性(透明性)に優れるものとしたため、ITO(酸化インジウムスズ)などの金属薄膜を形成した透明導電性フィルム上に貼付する用途等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、後述のアクリル系ポリマー(A)に、所定量の金属キレート化合物(B)を配合して得られる組成物である。ただし必要に応じて、その他の成分(添加剤など)が含まれていてもよい。
【0015】
(A.アクリル系ポリマー)
本発明におけるアクリル系ポリマー(A)は、
(i)炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルモノマー9.5〜87.95重量%、
(ii)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー10〜40重量%、
(iii)水酸基含有モノマー2〜50重量%、及び
(iv)カルボキシル基含有モノマー0.05〜0.5重量%
を含むモノマーを重合して得られる重量平均分子量が50万〜150万のポリマーである。
【0016】
(i)炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルモノマー
アクリル系ポリマー(A)における(メタ)アクリル酸C4−12アルキルエステルは、炭素数が4〜12の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステル)であり、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸C4−12アルキルエステルとしては、特に、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好適である。上記(メタ)アクリル酸C4−12アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
(ii)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
アクリル系ポリマー(A)における(メタ)アクリル酸C1−2アルキルエステルは、炭素数が1−2の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステル)であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどが挙げられる。アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー成分(モノマー成分全量)に対する、(メタ)アクリル酸C1−2アルキルエステル含有量は、10〜40重量%であり、好ましくは15〜25重量%である。(メタ)アクリル酸C1−2アルキルエステル含有量が10重量%
未満の場合、耐久性や加工適性が不十分となり、40重量%を超えると被着体に対する初期密着性が不十分となる。
【0018】
(iii)水酸基含有モノマー
アクリル系ポリマー(A)における水酸基含有モノマーとしては、特に限定されないが、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー成分(モノマー成分全量)に対する、水酸基含有モノマーの含有量は、2〜50重量%であり、好ましくは10〜30重量%である。水酸基含有モノマーの合計含有量が2重量%未満の場合、耐湿熱白化性が不十分となり、50重量%を超えると初期密着性が不十分となる。
【0019】
(iv)カルボキシル基含有モノマー
アクリル系ポリマー(A)におけるカルボキシル基含有モノマーとしては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーやこれらのカルボキシル基含有モノマーの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー)などが挙げられる。アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー成分(モノマー成分全量)に対する、カルボキシル基含有モノマーの含有量は、0.05〜0.5重量%であり、好ましくは0.1〜0.4重量%である。カルボキシル基含有モノマーの合計含有量が0.5重量%を超えると、透明導電膜の腐食を制御できなくなる。
【0020】
(v)共重合可能なその他のモノマー
アクリル系ポリマー(A)においては、必要に応じて、(メタ)アクリル酸C4−12アルキルエステルに対して共重合が可能な他のモノマー成分(共重合性モノマー)がアクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー成分として併用されていてもよい。なお、アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー成分(モノマー成分全量)(100重量%)に対する、上記の共重合性モノマーの含有量(全ての共重合性モノマーの合計含有量)は、共重合性モノマーの種類応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
【0021】
上記のアクリル系ポリマー(A)における共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどの(メタ)アクリル酸C3アルキルエステル;(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C13−20アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]や(メタ)アクリル酸イソボルニル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル[(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなど]や(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルエステル]等の芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、などの多官能モノマーが挙げられる。
【0022】
(vi)重合方法
アクリル系ポリマー(A)は、上記のモノマー成分((メタ)アクリル酸C4−12アルキルエステルおよび/または(メタ)アクリル酸C1−2アルキルルエステル、カルボキル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、必要に応じて他のモノマー成分(共重合性モノマー))を、公知の重合方法で重合することにより調製することができる。アクリル系ポリマー(A)の重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法などが挙げられる。しかし、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、又は塊状重合方法で行なうことが好ましく、なかでも溶液重合方法で行うことが、より好ましい。
【0023】
(vii)重合開始剤
上記アクリル系ポリマー(A)の重合に際して用いられる重合開始剤などは、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択して使用することができる。より具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2´-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1´-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2´-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン、ジメチル-2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。なお、溶液重合の場合は、油溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー成分100重量部に対して0.005〜1重量部程度の範囲から選択することができる。
【0024】
(viii)溶剤
上記アクリル系ポリマー(A)の重合を溶液重合法で行う場合、用いる溶剤には各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
(ix)重量平均分子量
本発明におけるアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、50万〜150万が好ましい。より好ましくは80万〜150万である。アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が50万未満では粘着剤層として必要な凝集力が不足し、耐久性が不十分となる場合があり、一方、150万を超えると粘着剤組成物の粘度上昇による塗工性不良のため、塗工による粘着剤層の形成性が低下して粘着シートの生産性が低下する場合や、希釈溶媒を多量に要する場合がある。またアクリル系ポリマー(A)の分散比(Mw/Mn)は10以下であることが好ましい。分散比が10を超えると低分子量成分がかなり残存していることになるから、耐久性に劣るものが生じる場合がある。なお、Mnは数平均分子量を表す。
【0026】
なお、本発明では、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。より具体的には、例えば、GPC測定装置として、日本ウォーターズ(株)「Alliance E2695 セパレーションモジュール」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5重量% (テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:20μl
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量(流速):0.3mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム: 商品名「TSKguard
column HSPgel RT−MB−H+ HSPgel RT−2.0」(東ソー株式会社製)
・検出器:示差屈折計(RI)商品名「Alliance2414」(日本ウォーターズ株式会社製)
【0027】
アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0028】
(B.金属キレート化合物)
本発明で用いる金属キレート化合物(B)としては、特に限定されないが、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタネート、ジ-n-ブトキシ・ビス(トリエタノールアミン)チタネート、ジヒドロキシ・ビスチタネート、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチル酢酸エチル)チタネート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムジ-n-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ-ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテートラアセチルアセトナートなどが挙げられる。金属キレート化合物(B)の配合量は、カルボキシル基含有モノマーに対し当量とする。当量未満の場合、透明導電膜を腐食する場合あり、当量を超える場合、金属キレートが析出し、透明導電膜の透明性を損なう場合が発生する。
【0029】
(その他の添加物)
粘着剤組成物には、上記(A),(B)の他に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、老化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤や溶媒、溶剤(水系溶媒や前述の有機溶剤など)が含まれていてもよい。
【0030】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、前述の本発明の粘着剤組成物にイソシアネート系化合物(C)を加え、架橋させて得られる粘着剤層を少なくとも含む粘着シートである。本発明の粘着シートの基本構成としては、基材(基材層)を有しない、いわゆる「基材レスタイプ」の粘着シート(以下、「基材レス粘着シート」と称する場合がある。)であってもよいし、基材を有するタイプの粘着シートであってもよい。具体的構成としては、例えば、(1)前記粘着剤層のみからなる基材レスタイプの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)、(2)前記粘着剤層と他の粘着剤層を有する基材レス両面粘着シート、(3)前記粘着剤層を基材の両面に粘着させた基材タイプの両面粘着シート、(4)前記粘着剤層を基材の一方片面に粘着させ、基材の反対面に他の粘着剤層(本発明の粘着剤組成物以外の粘着剤組成物による粘着剤層)を粘着させた基材を有するタイプの両面粘着シート、(5)前記粘着剤層を基材の片面にのみ粘着させた基材を有するタイプの片面粘着シートなどが挙げられる。中でも、粘着シートの薄膜化、透明性などの光学特性の向上の観点からは、(1)の本発明の粘着剤層のみからなる基材レス両面粘着シートが好ましい。
【0031】
(C.イソシアネート系化合物)
本発明で架橋剤として用いられるイソシアネート系化合物(C)としては特に限定されないが、なかでも多官能性ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物が好ましい。また、架橋剤として、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、ヘキサメチレンジイシシアネート系化合物以外の多官能性イソシアネート系化合物を混合して使用することも好ましい。
【0032】
上記の多官能性ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0033】
上記の多官能性メラミン化合物としては、例えば、メチル化トリメチロールメラミン、ブチル化ヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。また、多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルアニリン、グリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
上記イソシアネート系架橋剤(C)の使用量(添加量)は特に制限されないが、なかでも、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.1〜1.2重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8重量部である。架橋剤の使用量が0.1重量部未満では発泡が生じやすく、耐久性が低下する場合があり、1.2重量部を超えると初期密着性が低下する場合がある。
【0035】
(粘着剤層)
前記粘着剤層は、イソシアネート系架橋剤(C)を含む前記粘着剤組成物が架橋して形成される粘着剤層であり、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。また粘着剤層のゲル分率は60〜90%であることが好ましい。ゲル分率が60%未満であると凝集力不足で耐久性不良になりやすく、逆に90%を超えると凝集力が高くなり接着力および初期密着性が不良になりやすい。
【0036】
粘着剤層の厚さは特に制限されないが、なかでも10〜300μmが好ましく、より好ましくは40〜200μm、さらに好ましくは50〜175μmである。粘着剤層厚さが10μm未満では剥がれが生じやすくなる場合があり、300μmを超えると光透過性を低下させる場合がある。
【0037】
粘着剤層は、高い透明性を有していることが好ましい。例えば、可視光波長領域における全光線透過率(JISK7361に準じる)が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくは91%以上である。また、本発明の粘着剤層のヘイズ値(JISK7136に準じる)は、例えば、3.0%未満が好ましく、より好ましくは1.0%未満である。なお、上記全光線透過率及びヘイズ値は、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ値0.4%のもの)などに粘着剤層を貼り合わせ、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製、商品名「COH300」)を用いて測定することができる。
【0038】
粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、例えば、上記の粘着剤組成物を、基材または剥離ライナー上に塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥および/または硬化することにより本発明の粘着剤層を形成することができる。中でも、本発明の粘着剤層のみからなる基材レスタイプの両面粘着シートの場合には、上記粘着剤組成物を剥離ライナー上に塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥および/または硬化することにより本発明の粘着剤層を形成することができる。
【0039】
なお、粘着剤組成物の塗工には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いることができる。
【0040】
イソシアネート化合物(C)を含む粘着剤組成物を架橋して粘着剤層を形成する工程においては、特に比較的高温で加熱処理する工程を設けることが好ましく、具体的には、比較的高温で乾燥する工程(高温乾燥工程)を設けることが好ましい。すなわち、上記の粘着剤組成物を、基材または剥離ライナー上に塗布(塗工)し、高温乾燥(および必要に応じて硬化)することにより本発明の粘着剤層を形成することが好ましい。上記加熱処理工程(特に、高温乾燥工程)の加熱温度(乾燥温度)は、80〜150℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。加熱処理工程(特に、高温乾燥工程)の加熱時間(乾燥時間)は、30〜300秒が好ましく、より好ましくは60〜120秒である。上記の加熱処理工程(特に、高温乾燥工程)を設けることより、残留モノマーや有機溶剤を除去できるため、耐久性試験時の発泡の低減に有効である。
【0041】
粘着剤層を形成する工程においては、上記の比較的高温で加熱処理する工程の他にも、急激な乾燥により発泡が生じて粘着剤層の表面平滑性が低下することを防止する及び粘着剤層表面の発泡を防止する観点で、低温で予備乾燥を行ってもよい。上記予備乾燥は、特に限定されないが、例えば、乾燥温度30〜70℃(より好ましく30〜60℃)、乾燥時間20秒以上の条件で行うことが好ましい。
【0042】
(他の粘着剤層)
本発明の粘着シートが、他の粘着剤層を有する場合、他の粘着剤層としては、特に制限されず、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知慣用の粘着剤層が挙げられる。上記粘着剤は単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。他の粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物以外のアクリル系粘着剤層であってもよい。
【0043】
(基材)
本発明の粘着シートが基材を有する場合、基材としては、特に制限されないが、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、上記の「基材」とは、粘着シートを被着体(金属薄膜等)に使用(貼付)する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。なお、後述の粘着シートの使用時(貼付時)に剥離される剥離ライナー(セパレータ)は「基材」には含まない。
【0044】
上記の中でも、基材としては、透明基材が好ましい。上記「透明基材」は、例えば、可視光波長領域における全光線透過率(JISK7361に準じる)が85%以上の基材が好ましく、さらに好ましくは90%以上の基材である。また、上記透明基材としてはPETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムが挙げられる。
【0045】
基材としては、特に、全光線透過率(JISK7361に準じる)が90% 以上であり、ヘイズ値(JIS7361に準じる)が2.0%以下のPETフィルムが好ましい。
【0046】
基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、25〜75μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの適宜な公知の表面処理が施されていてもよい。
【0047】
また基材として、各種の機能性フィルムを用いることもできる。その場合、本発明の粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面に本発明の粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムとなる。上記の機能性フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、光学的機能性(偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有するフィルム、紫外線カット性を有するフィルム、ハードコート性(耐傷付き性)を有するフィルム等が挙げられる。さらに具体的には、ハードコートフィルム(PETフィルムなどのプラスチックフィルムの少なくとも片面にハードコート処理が施されたフィルム)、偏光フィルム、波長板、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、プリズム、カラーフィルターなどが挙げられる。粘着型機能性フィルムとしては、例えば、PETフィルムの片面にハードコート処理をしたハードコートフィルムの非ハードコート処理面に本発明の粘着剤層を有する粘着型ハードコートフィルム等が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」には、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態をも含まれるものとし、例えば、「偏光フィルム」には、偏光板」、偏光シート」も含まれるものとする。また、「機能性フィルム」には「機能性板」、「機能性シート」も含まれるものとする。
【0048】
(剥離ライナー)
本発明の粘着シートの粘着剤層表面(粘着面)は、使用時までは剥離ライナー(セパレータ)により保護されていてもよい。剥離ライナーは粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼着する際に剥がされる。また、粘着シートが基材レス粘着シートの場合には、剥離ライナーは粘着剤層の支持体の役割も担う。なお、剥離ライナーは必ずしも設けられていなくてもよい。上記剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙などが挙げられる。また、上記フッ素系ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。さらに、上記無極性ポリマーからなる低接着性基材における無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、剥離ライナーは公知の方法により形成することができる。また、剥離ライナーの厚さ等も特に制限されない。
【0049】
[金属(酸化物)薄膜、透明導電膜]
本発明の粘着シートは金属薄膜に対して貼り付ける用途に好ましく用いられる。金属薄膜は、金属だけでなく、金属酸化物やこれらの混合物からなる薄膜も含まれ、特に限定されないが、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、SnO、CTO(酸化カドミウムスズ)の薄膜が挙げられる。金属薄膜の厚みとしては、特に限定されないが、100〜3000Åが好ましい。なかでも透明性の高いITOなどの透明導電膜は、例えば、PETフィルム上に設けられ、透明導電フィルムとして使用される。本発明の粘着剤層は優れた耐腐食性を有しているので、本発明の粘着シートは、基材上に設けられた金属薄膜に対して粘着させる際には、金属薄膜側に粘着させる用途に特に適している。
【0050】
[光学部材]
本発明の粘着シートは、粘着剤層ににごりがなく、透明性に優れる。また、前述の通り、耐発泡剥がれ性にも優れている。このため本発明の粘着シートは、前述のITOなどの透明導電膜を少なくとも一方の表面に設けた透明電極の、その透明導電膜側から貼り付けることに適しているので、かかる透明電極を具備する光学部材の製造用途などに好適である。光学部材としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)などの表示装置やタッチパネルなどが挙げられる。
【0051】
また例えば、本発明の粘着シートは、光学部材であるタッチパネル用の粘着シートとして、タッチパネルの製造用途に用いることができる。例えば、静電容量方式のタッチパネルの製造において、ITOなどの透明導電膜を設けた透明導電フィルムの該透明導電膜側に、本発明の粘着シートを介してポリメチルメタクリレート(PMMA)板やハードコートフィルムを貼り合わせるなどの用途に用いることができる。上記タッチパネルは、特に限定されないが、例えば、タッチパネルを有する携帯電話などに用いられる。
【0052】
本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合、本発明の粘着シートを、各種の機能性フィルムの少なくとも片面に貼付、積層することにより、機能性フィルムの少なくとも片面に本発明の粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムを得ることができる。上記の機能性フィルムは前述のとおりである。例えば、PETフィルムの片面にハードコート処理をしたハードコートフィルム(ハードコートPETフィルム)の非ハードコート処理面に本発明の粘着シートを積層することにより、粘着剤層(本発明の粘着剤層)を有する粘着型ハードコートフィルムを得ることができる。上記粘着型機能性フィルムに用いられる本発明の両面粘着シートは、基材レスの両面粘着シートであってもよいし、基材付きタイプの両面粘着シートであってもよい。
【0053】
粘着型機能性フィルムの粘着面(本発明の粘着剤層表面)をITOフィルム(ITO層を設けたフィルム)の電極面(ITO面)に貼り合わせることにより、機能性フィルムとITOフィルムの積層体を得ることができる。構造は、タッチパネル(例えば、携帯電話のタッチパネル)などに用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例および比較例で用いたアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマー溶液)のモノマー組成および重量平均分子量、固形分濃度を表1,2に示す。また、実施例および比較例における粘着剤層を調製する際のアクリル系ポリマー、架橋剤の配合組成を表3,4に示す。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】

【0055】
〔製造例:アクリル系ポリマー(A)〕
(アクリルa)
モノマー成分として、アクリル酸n-ブチル(BA):59.5重量部、アクリル酸メチル(MA):20重量部、アクリル酸(AA):0.5重量部、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル(HPA):20重量部、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル:0.02重量部、および重合溶媒として酢酸エチル:43重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入して重合系内の酸素を除去した後、70℃に昇温し、8時間反応させて、アクリル系ポリマー(A)であるアクリルaを得た。これに、溶剤として酢酸エチルを加え、固形分濃度30重量%のアクリルaの溶液を得た。アクリルaの重量平均分子量は100万であった。
【0056】
(アクリルb〜p)
表1、2に示すように、モノマー成分の種類、配合量、溶媒(酢酸エチル)の配合量を変更した以外はアクリルaの溶液と同様の製造方法にて、アクリル系ポリマー(A)であるアクリルb〜hの溶液と、下記の点でアクリル系ポリマー(A)の範囲から外れるアクリル系ポリマーのアクリルi〜pを得た。該アクリルb〜pの重量平均分子量は表1,2に示したとおりである。
アクリルi:(iv)カルボキシル基含有モノマーの過剰配合
アクリルj:(iv)カルボキシル基含有モノマーの過少配合
アクリルk:重量平均分子量が過小
アクリルl:(ii)C1〜2(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの過剰配合
アクリルm:(ii)C1〜2(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの過少配合
アクリルn:(iii)水酸基含有モノマーの過剰配合
アクリルo:(iii)水酸基含有モノマーの過少配合
アクリルp:重量平均分子量が過大
【0057】
〔実施例1〕
固形分換算でアクリルa溶液:100重量部(アクリルa:100重量部)に対して、架橋剤として多官能ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートHL」)0.1重量部、金属キレート化合物としてアクリル酸と等molのアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)(日本化学産業(株)製,商品名「ナーセムアルミニウム」)を配合して実施例1の粘着剤組成物(溶液)を調製した。上記で得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、100℃で1分間加熱乾燥し、さらに40℃で72時間エージングを行うことで、前記粘着剤組成物の架橋反応が進み、実施例1の基材レス型粘着シートを得た。
【0058】
〔実施例2〜9、比較例1,2,4〜11〕
表3,4に示すように、アクリル樹脂溶液の種類および架橋剤の配合量を変更した以外は実施例1と同様の方法で、各実施例,比較例の粘着剤組成物と粘着シートを得た。なお比較例1,2,4〜11は次の点で本発明の粘着剤組成物から外れる。
比較例1:イソシアネート化合物(C)の過剰配合
比較例2:イソシアネート化合物(C)の過少配合
比較例4:アクリルiの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例5:アクリルjの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例6:アクリルkの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例7:アクリルlの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例8:アクリルmの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例9:アクリルnの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例10:アクリルoの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
比較例11:アクリルpの使用によるアクリル系ポリマー(A)からの範囲逸脱
【0059】
〔比較例3〕
金属キレート化合物(B)を添加しない以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の粘着剤組成物および粘着シートを作製した。
【0060】
〔評価〕
実施例1〜9および比較例1〜11で得られた粘着シートについて、塗工性、耐腐食性、接着力、耐湿熱白化性(透明性)、耐久性、初期密着性を、下記の測定方法又は評価方法により評価した。なお、評価結果は、表3、4に示した。なお、表1,2のゲル分率は、上記粘着シートから採取した粘着剤のゲル分率の値である。
【0061】
(1)耐湿熱白化性(透明性)
実施例、比較例で得られた各粘着シートを、スライドガラス(全光線透過率91.8%、ヘーズ値0.4%)に貼り合わせ、その後PETフィルムを剥離して、粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。上記で作製した試験を60℃×90%RH条件下で72時間曝した後、室温に戻した該試験片のヘーズ(ヘイズ)値(%)を、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製、商品名「COH300」)を用いて測定した。ヘーズ値が3.0%未満であると透明性良好(○)、3.0%以上では不良(×)である。
【0062】
(2)耐腐食性
実施例、比較例で得られた粘着シートに、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラーS−10#25」、厚さ:25μm)を貼り合わせ、20mm×50mmのサイズに切り出し、試験片とした。透明導電膜付きガラス板(ITO膜200μ、抵抗値25Ω/□、サイズ:50mm×100mm)の両端部に15mm幅で銀ペーストを塗布し、その導電面(ITO膜形成面側)に、剥離ライナーを剥離した上記試験片1の粘着面を貼り合わせた。これを60℃×95%RHの環境下で500時間放置し、貼付直後との抵抗値の変化率(%)を測定した。なお、抵抗値は、三菱化学株式会社製「低抵抗率計 MCP−T610」を用いて測定した。抵抗率の変化率が120%未満であれば耐腐食性良好(○)、120%以上であれば耐腐食性不良(×)と判断した。なお、ブランクとして粘着シートを貼付しない透明導電膜付きガラス板のみで同様の試験を行った結果、60℃×95%RHの条件では120%であった。
【0063】
(3)耐久性
実施例、比較例で得られた粘着シートを、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラーS−10#100」、厚さ:100μm)に貼り合わせ、幅100mm×長さ100mmのフィルム片を作製した。このフィルム片より剥離ライナーを剥離して、アクリル(PMMA)板(株式会社クラレ製、商品名「コモグラス CG P」、厚さ1mm)に貼り合わせて固定し、PETフィルム/粘着剤層/PMMA板の層構造を有するサンプル片を作製した。上記サンプル片を70℃のオーブン中で5時間熱処理(耐熱性試験)を行った。この耐熱性試験後、サンプル片を接着界面(粘着剤層とPMMA板との界面)を目視にて観察し、「気泡」や「浮き」が全く見られなかった場合には耐発泡剥がれ性良好(○)、「気泡」や「浮き」が僅かでも見られた場合には耐発泡剥がれ性不良(×)と判断した。
【0064】
(4)初期密着性
実施例、比較例で得られた粘着シートを、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラーS−10#25」、厚さ:25μm)に貼り合わせ、幅50mm×長さ70mmのフィルム片を作製した。アクリル(PMMA)板(長さ50mm×幅70mm×厚み1mm)(株式会社クラレ製、商品名「コモグラス CG P」)に作成したフィルム試料片を置き、粘着面全体がアクリル板に密着するまでに要した時間を観察した。全面が密着するまでの時間が20秒未満の場合は初期密着性良好(○)、20秒以上であれば初期密着性不良(×)と判断した。
【0065】
(5)接着力
実施例、比較例で得られた粘着シートを、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラーS−10#25」、厚さ:25μm)に貼り合わせ、幅100mm×長さ300mmのフィルム片を作製した。作成したフィルム片を25mm×100mmに切断し、ITO膜付きガラス板に2kgゴムローラーを用いて貼着し1時間放置後、引っ張り試験機にて180度方向に300mm/minの引っ張り速度で測定する。
【0066】
(6)ゲル分率
実施例、比較例で得られた粘着シートから粘着剤皮膜1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを50cc加えて72時間放置した後、該サンプル瓶の内容物を300メッシュのステンレス製金網にてろ別し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥させて乾燥重量を測定した。ゲル分率は次式[1]より求めた。

ゲル分率(%)= (乾燥重量/粘着剤採取重量)×100 ・・・[1]




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルモノマー9.5〜87.95重量%、
(ii)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー10〜40重量%、
(iii)水酸基含有モノマー2〜50重量%、及び
(iv)カルボキシル基含有モノマー0.05〜0.5重量%
を含むモノマーを重合して得られる、重量平均分子量が50万〜150万のアクリル系ポリマー(A)と、
前記カルボキシル基含有モノマーに対して当量配合の金属キレート化合物(B)とを含む粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマー(A)が、溶液重合又は塊状重合により得られるものである請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着剤組成物にイソシアネート系化合物(C)を加えて架橋させた粘着剤層を少なくとも具備する粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層のゲル分率が60〜90%である請求項3記載の粘着シート。
【請求項5】
前記イソシアネート系化合物(C)が、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物である請求項3または4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記イソシアネート系化合物(C)の配合量が、前記アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して0.1〜1.2重量部である請求項3〜5いずれかの項に記載の粘着シート。
【請求項7】
少なくとも一方表面に透明導電膜を設けた透明電極を具備する光学部材であって、請求項3〜6いずれかの項に記載の粘着シートが、前記透明電極の前記透明導電膜に粘着している光学部材。



【公開番号】特開2012−136660(P2012−136660A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291161(P2010−291161)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(390029458)一方社油脂工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】