説明

粘着剤組成物および粘着剤、ならびに光学部材用粘着剤、それを用いて得られる粘着剤層付き光学部材

【課題】帯電防止性能に優れ、さらには、高温,高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた粘着剤組成物および粘着剤、とりわけ光学部材用粘着剤組成物および光学部材用粘着剤ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂(A)と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有し常温で固体のイオン性化合物(B)を含有してなる粘着剤組成物[I]が、架橋されてなることを特徴とする粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着剤、ならびに光学部材用粘着剤、それを用いて得られる粘着剤層付き光学部材に関する。詳しくは、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム(偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等)等、特に具体的には、偏光フィルムが、三酢酸セルロース系フィルム等の保護フィルムで被覆された光学積層体と液晶セルのガラス基板との接着に用いられる光学部材用粘着剤、ならびにこの光学部材用粘着剤からなる粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光フィルム、例えば偏光性が付与されたポリビニルアルコール系フィルム等の両面が、セルロース系フィルム、例えば三酢酸セルロースフィルムで被覆された偏光板を、2枚のガラス板の間に配向した液晶成分を狭持させた液晶セルの表面に積層し、液晶表示板とすることが行われており、この液晶セル面への積層は、偏光板表面に設けた粘着剤層を上記液晶セル面に当接し、押し付けることにより行われるのが通常である。
【0003】
そして、上記偏光板等の光学部材の表面に設けた粘着剤層には、傷や汚れを防止する目的でセパレーターが設けられたり、加工および搬送過程で生じる傷や汚れ等を防止する目的で表面保護フィルム等が設けられたりするが、液晶セル等に貼り合わせる際にはこれらセパレーターや表面保護フィルムは不要となり、剥離除去されることになる。このような光学部材からセパレーターや表面保護フィルムを剥離する際に静電気が発生することとなり、この静電気により、光学部材にゴミが付着したり、液晶配向の乱れによる異常表示が生じたり、周辺回路素子の静電破壊が起きたりする等の不具合が生じるという問題がある。
【0004】
また、上記の粘着剤層を設けた光学部材を液晶セルに貼り合わせる際に、異物混入や損傷、接着ミス等が生じた場合、剥離して再貼合することになるが、この剥離に際しても上記と同様、静電気が生じ不具合が生じることとなる。
このような静電気発生に起因した不具合の発生防止対策として、例えば、光学部材の片面または両面にガラス転移温度が0℃以下のポリマーとイオン性液体を有する粘着剤層を形成させて得られる粘着型光学部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、アクリル系ポリマーと帯電防止剤としてパーフルオロアルキル基を有しているリチウムイミド塩を含有する帯電防止性粘着剤組成物を、帯電防止性表面保護フィルムとして用いること(例えば、特許文献2参照)や、フッ素含有イミドアニオンを有するイオン性液体、およびベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーを含有する粘着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−11365号公報
【特許文献2】特開2005−306937号公報
【特許文献3】特開2006−45475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、アクリル系ポリマーに単にイオン性液体を配合することは記載されているものの、使用するイオン液体の種類についての最適化は行われておらず、帯電防止性能の点や、かかる粘着剤を光学部材、特に偏光板用途において用いた場合に重要となる、耐久性および光漏れ防止性能については全く考慮されてはいないものであり十分ではないものであった。
【0007】
更には、特許文献2および特許文献3に開示の技術では、アクリルポリマーにフッ素含有リチウムイミド塩を配合した粘着剤組成物において、フッ素含有イミド塩としてパーフルオロアルキル基を有するイミド塩を用いることで帯電防止性能についての効果は認められるものの、かかる粘着剤を光学部材、特に偏光板用途において用いた場合に重要となる、耐久性および光漏れ防止性能については全く考慮されてはいないものであり、改善の余地の残るものであった。また、パーフルオロアルキル基を有するイミド塩は、その製造においてアルキル基のフッ素置換に電解フッ素化法を用いる必要があり、その製造は非常に難しく、コストのかかるものであった。
【0008】
ちなみに、偏光板が用いられる液晶表示板は、パソコンや液晶テレビ、カーナビゲーション等の表示装置として広範囲に使用され、それに伴って使用環境も非常に過酷になっており、上記過酷な環境下での使用においても耐久性に優れることが要求されており、例えば、高温、高湿といった過酷な環境下においても、粘着剤層とガラス板との間に生じる発泡や剥がれといった現象がないこと、さらに、高温、高湿の環境下では、偏光フィルムが収縮してしまうのに対して、粘着剤層がこの偏光フィルムの収縮に追従することができず、液晶表示板の周縁部から光が漏れるという、いわゆる光漏れ現象がないことが要求されている。
【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、帯電防止性能に優れ、さらには、高温,高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた粘着剤組成物および粘着剤、とりわけ光学部材用粘着剤組成物および光学部材用粘着剤ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂と併用する帯電防止剤として、スルホニル基に炭素原子を介さず直接フッ素原子が結合した構造を有するビス(フルオロスルホニルイミド)アニオンを有するイオン性化合物を用いることにより、十分な帯電防止性能が発揮され、かつ光学部材用途に用いた際の耐久性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、アクリル系樹脂(A)と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)を含有してなる粘着剤組成物[I]が、架橋されてなることを特徴とする粘着剤に関するものである。また、アクリル系樹脂(A)と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)を含有してなることを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
更には、上記粘着剤を用いてなる光学部材用粘着剤、および上記光学部材用粘着剤が光学部材に積層されてなることを特徴とする粘着剤層付き光学部材に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤は、特に光学部材用途として好適に用いることが可能であり、粘着物性と帯電防止性能のバランスに優れ、また、高温、高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性にも優れた液晶表示板を得ることができる。
【0013】
また、本発明の粘着剤は、一時表面保護用粘着剤として用いることも可能であり、ワープロ、コンピュータ、携帯電話、テレビ等の各種ディスプレイ;偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品;電子基板等の表面には、通常、表面保護および機能性付与の目的で、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の透明な表面保護シートが粘着剤を介して積層されるが、粘着剤が積層された表面保護粘着シートは、例えば液晶ディスプレイ等の組み込みが完了した後に、表面保護の役割を終え、剥離除去される場合が多く、この場合、表面保護粘着シート剥離時に静電気が発生して周囲のゴミを巻き込むという問題が生じず、更に、表面保護粘着シートを剥離する際に生じた剥離帯電により、液晶基板や電子回路が破壊されるというトラブルが生じにくいといった効果も有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0015】
まず、本発明の粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)を含有してなるものである。
【0016】
アクリル系樹脂(A)としては、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル系モノマー(a1)を含有する共重合成分を、その他の共重合成分と共重合、あるいは単独重合させたものを用いることが更に帯電防止性能を向上させる点で好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
上記一般式(1)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にはエチレン基が好ましい。また、nが2以上のポリオキシアルキレン鎖部位の場合は、同一オキシアルキレン鎖のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
【0019】
上記一般式(1)中のYは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかである。これらの中でも、水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、特に好ましくは水素原子、アルキル基、フェニル基であり、更に好ましくは、アクリル系樹脂(A)の製造のしやすさや帯電防止能の向上の点で、アルキル基が好ましく、殊に好ましくはメチル基である。
【0020】
上記アルキル基の炭素数は比較的短いものが好ましく、具体的には炭素数が1〜15が好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜6が更に好ましく、具体的には、一般式(1)のYはメチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。かかる炭素数が長すぎるとHLBが下がってしまい、親油性となることによって、帯電防止性能が低下する傾向がある。
【0021】
上記アリール基としては、通常、炭素数6〜20、好ましくは6〜15のものが用いられ、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基等があげられるが、これらの中でもフェニル基が好ましい。
【0022】
上記アラルキル基としては、通常、炭素数7〜20、好ましくは7〜15のものが用いられ、具体的にはベンジル基等があげられる。
【0023】
なお、上記アルキル基、アリール基、アラルキル基は、置換基を有するものであってもよく、置換基としては、通常、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、アリール基、ヘテロアリール基等があげられる。
【0024】
上記一般式(1)中のR1は、水素原子またはメチル基である。
【0025】
上記一般式(1)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜2あり、更に好ましくは1である。かかるnの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向があり、また、調達できる原料の中で、不純物が少なくアクリル系樹脂を作りやすい点でもnが小さいことが好ましい。
【0026】
上記一般式(1)中のYが水素原子の場合に、n=1のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーがあげられる。
nが2以上のモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0027】
上記一般式(1)中のYがアルキル基である場合には、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族系の(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。
【0028】
上記一般式(1)中のYが、アリール基である場合には、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等があげられる。
【0029】
上記一般式(1)中のYが、アラルキル基である場合には、例えば、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等があげられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)の中でも、効果的に親水性を与える点で水酸基含有モノマーやメトキシ基含有モノマーが好ましく、特には一級水酸基含有モノマーやメトキシ基含有モノマーが、更には2−ヒドロキシエチルアクリレートや2−メトキシエチルアクリレートが好ましい。また、上記モノマーを2種以上併用することも好ましく、特には2種併用することが好ましい。
【0031】
かかる(メタ)アクリル系モノマー(a1)は、アクリル系樹脂(A)の共重合成分として、共重合成分全体に対して5〜100重量%含有することが好ましく、特に好ましくは8〜70重量%、更に好ましくは10〜50重量%、殊に好ましくは20〜40重量%である。(メタ)アクリル系モノマー(a1)の含有量が少なすぎると帯電防止性能が不十分になる傾向がある。
【0032】
上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外のその他共重合成分としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)やその他の共重合性モノマー(a4)があげられる。
【0033】
かかる(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルがあげられる。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルについては、アルキル基の炭素数が、通常1〜12、特には1〜8、更には4〜8であることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等があげられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を併せて用いることができる。
【0034】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさおよび原料入手しやすさの点で、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、更に好ましくは帯電防止性能が優れる点でn−ブチル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0035】
かかる官能基含有モノマー(a3)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステル(例えば、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等)等のカルボキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド−3−メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノアルキルメタクリルアミド等のアミド基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリロイルモルフォリン等の窒素含有モノマー;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等のスルホン酸基含有モノマー等があげられ、単独または2種以上併用して用いられる。
【0036】
かかる官能基含有モノマー(a3)の中でも、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素含有モノマーが好適に用いられ、更にはカルボキシル基含有モノマーが、剥離物性に優れ、また耐久性にも寄与する点で、特に好適に用いられる。
【0037】
その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等のモノマーがあげられる。
【0038】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物等を併用することもできる。
【0039】
本発明においては、上記(a1)〜(a4)のモノマー成分を含む共重合成分を重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合に当たっては、従来公知の方法により行うことができる。例えば、有機溶媒中に、上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)、その他の官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)等の重合モノマー、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合する。
【0040】
また、(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外の重合成分の含有割合としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)が0〜95重量%、特には30〜92重量%、更には50〜90重量%、殊には、60〜85重量%であることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)が0〜40重量%、特には0〜30重量%、更には0〜20重量%であることが好ましく、その他の共重合モノマー(a4)が0〜50重量%、特には0〜40重量%、更には0〜30重量%であることが好ましい。
【0041】
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが好ましく、特に好ましくは、−15℃以下、更に好ましくは−30℃以下である。ガラス転移温度(Tg)の下限値は、通常−75℃である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、下記Foxの式より算出されるものである。
【0042】
【数1】

【0043】
かかるアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)の値は、共重合成分として使用するアクリル系モノマーの種類、配合割合を変更することによって調整することができるのである。
【0044】
かくして得られるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常、10万〜300万、好ましくは30万〜250万、特に好ましくは60万〜200万、殊に好ましくは100万〜150万である。重量平均分子量が小さすぎると、十分な凝集力が得られない傾向があり、大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で好ましくない傾向となる。
【0045】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には15以下が好ましく、更には10以下が好ましく、殊には7以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の、耐湿熱性や光漏れ等の耐久性能が劣る傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常2である。
【0046】
なお、上記の重量平均分子量、数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算によるものであり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるもので、また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度はFoxの式より算出されるものである。
【0047】
また、アクリル系樹脂(A)としては、HLBの値は、6.8以上のものを用いることも好ましく、特に好ましくは6.8〜10、更に好ましくは7.0〜8.2、殊に好ましくは7.2〜8.0である。かかるHLBの値が小さすぎると帯電防止能が低下する傾向となる。なお、HLBの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向がある。
【0048】
かかるHLB(Hydrophilie-Lipophile Balance)とは、Daviesの理論によるHLB値であり、HLB=Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)+7で表される値である。
かかる親水基、親油基の種類および親水基、親油基の基数の値の例としては、下記[表1]に記載するものがあげられるが、詳細に関しては、文献「新版界面活性剤ハンドブック」(日本油脂株式会社著、工学図書株式会社版)の第234〜242頁の5.1.5.〜5.1.7.に記載されている。
【0049】
【表1】

【0050】
本発明におけるビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)(以下、単に「イオン性化合物(B)」と記すことがある)は、アニオン部位としてビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(下記一般式(2)を参照)を有していればよく、そのカチオン部位に関しては、公知一般のカチオンを有していればよい。
【0051】
【化2】

【0052】
イオン性化合物(B)のカチオン成分としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属等の金属カチオンや、窒素原子含有ヘテロ環式化合物のカチオン類、鎖状の第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンをあげることができるが、これらの中でも、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン類、窒素原子含有ヘテロ環式化合物のカチオンが、特にはアルカリ金属カチオン、窒素原子含有へテロ環式化合物のカチオン類が好ましく用いられる。
【0053】
かかるアルカリ金属カチオンとしては、Li+、Na+、K+が好ましく、特には、アクリルポリマーへの溶解性に優れる点で、Na+、K+が好ましい。
【0054】
かかるアルカリ土類金属カチオンとしては、Ca+,Mg+が好ましい。
【0055】
かかる窒素原子含有へテロ環式化合物のカチオン類としては、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオンが好ましく、特にはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、更にはイミダゾリウムカチオンを用いることが良好な帯電防止性能を示す点で好ましい。
更に、イミダゾリウムカチオンとしては、アルキルイミダゾリウムカチオンを用いることが好ましく、特にはジメチルイミダゾリウムカチオンを用いることが好ましい。
【0056】
また、イミダゾリウムカチオンとしては、(メタ)アクリル系イミダゾリウムカチオンや、ビニル系イミダゾリウムカチオン等の重合性不飽和基含有イミダゾリウムカチオンを用いることもできる。
【0057】
本発明におけるイオン性化合物(B)としては、常温において、固体および液体のどちらを用いてもよいが、固体のものを用いる方が、精製で再結晶ができることにより、高純度のイオン性化合物を作りやすくなる点で好ましい。
なお、精製が不完全であると、目的外のイオン等が含まれることにより、耐湿熱性に悪影響を及ぼしたり、帯電防止性能がやや劣る傾向がある。
なお、本発明において常温とは、20℃±15℃(5〜35℃)を意味する。
【0058】
上記常温で固体のイオン性化合物(B)の具体例としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド等があげられる。また、上記常温で液体のイオン性化合物(B)の具体例としては、1,3−ジエチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジプロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジブチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジヘプチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジオクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−デシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−ノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ヘプチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−エチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−エチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ペンチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−オクチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−プロピル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−ヘプチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−ノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−デシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−ドデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−オクチル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ペンチル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−ノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−ノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−ヘプチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘプチル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−ヘプチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−オクチル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−ノニルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−ノニルオクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−ドデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−ウンデシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のジアルキルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドや、また3−エチル−1,2−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のトリアルキルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドがあげられる。
これらの中でも、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが、帯電防止性能が良好な点で好ましく用いられる。
なお、これらイオン性化合物(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
イオン性化合物(B)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、特には0.1〜15重量部が好ましく、更には0.5〜10重量部、殊には2〜5重量部が好ましい。かかる含有量が多すぎると耐湿熱性が低下する傾向があり、少なすぎると帯電防止性能が不十分な傾向がある。
【0060】
かくして本発明のアクリル系樹脂(A)とイオン性化合物(B)を含有してなるアクリル系樹脂組成物が得られる。
【0061】
また、本発明においては、上記アクリル系樹脂(A)とイオン性化合物(B)を含有してなる粘着剤組成物[I]を得るわけであるが、かかる粘着剤組成物[I]は、上記(A)および(B)成分に加え、更に後述する不飽和基含有化合物(C)、重合開始剤(D)を含有することも耐久性を向上させるためには好ましく、また、更に架橋剤(E)を含有すること、オキシアルキレン基含有化合物(F)を含有することも好ましい。そして、かかる粘着剤組成物[I]が架橋されて本発明の粘着剤となる。
【0062】
つぎに、本発明の粘着剤について説明する。
本発明の粘着剤は、上述した粘着剤組成物[I]が架橋されてなるものである。
なお、本発明においては、粘着剤組成物[I]が、アクリル系樹脂(A)を主成分とするものであることが好ましく、ここで「主成分とする」とは、上記アクリル系樹脂(A)が粘着剤組成物[I]全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。なお、上限としては通常99.9重量%である。
【0063】
上記粘着剤組成物[I]を架橋する方法としては、〔α〕不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有させ、活性エネルギー線および/または熱により架橋する方法、〔β〕架橋剤(E)を用いて架橋する方法があげられる。そして、その架橋度合いに関しては、上記〔α〕の方法のみでも十分なものが得られるが、粘着剤の架橋をより一層密とし、光漏れ防止性を向上させるという点から、上記〔α〕および〔β〕の各方法を併用することが特に好ましい。
【0064】
まず、上記〔α〕の方法、即ち、不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有させ、粘着剤組成物[I]を活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により架橋する方法について説明する。
【0065】
上記活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により架橋する場合には、粘着剤組成物[I]として、前述のアクリル系樹脂(A)およびイオン性化合物(B)に加えて、更に不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有する粘着剤組成物[I]を用いる。このように、不飽和基含有化合物(C)を含有することにより、架橋を調整することができ、光学部材用途に適した粘着物性を実現することが可能となるのである。また、上記重合開始剤(D)を含有することにより、活性エネルギー線照射時および/または加熱時の反応を安定化させることができる。
【0066】
上記架橋の場合は、不飽和基含有化合物(C)が活性エネルギー線および/または熱により重合(ポリマー化)されて、アクリル系樹脂(A)との架橋(物理架橋)が行なわれる。アクリル系樹脂(A)が、不飽和基含有アクリル系樹脂である場合には、活性エネルギー線および/または熱による不飽和基含有化合物(C)のポリマー化に限らず、不飽和基含有アクリル系樹脂(A)と不飽和基含有化合物(C)とのポリマー化等に伴う架橋も生じることとなる。
【0067】
本発明で用いられる不飽和基含有化合物(C)としては、1分子中に1つの不飽和基を有する単官能の不飽和基含有化合物であってもよいし、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する多官能の不飽和基含有化合物であってもよいが、好ましくは2つ以上の不飽和基を有する不飽和基含有化合物、より好ましくは3つ以上の不飽和基を有する不飽和基含有化合物であることが活性エネルギー線照射時の硬化性の点で好ましい。
【0068】
上記不飽和基含有化合物(C)の構造としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物や、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマー等を用いることができる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)、エチレン性不飽和モノマー(c2)を用いることが硬化速度や到達物性の安定性に優れる点で好ましい。
また、上記不飽和基含有化合物(C)は、オキシアルキレン鎖や水酸基、または酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造等の親水性を示す構造部位を含有することも帯電防止性能からより好ましい。
【0069】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)は、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物(必要に応じて、ポリオール系化合物)を、公知一般の方法により反応させて得られるものを用いればよく、その重量平均分子量としては、通常300〜4000のものを用いればよい。
【0070】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は特に限定されないが、ポリオール系化合物を含まず、多価イソシアネート化合物に直接水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物を反応させたものの方が好ましい。
【0071】
上記水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられ、中でも3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル系化合物が好ましく用いられる。また、これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
上記多価イソシアネート化合物としては、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートがあげられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネートあるいはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業社製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、または、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等があげられる。中でも、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートや、それらの3量体化合物または多量体化合物が好ましく用いられる。
【0073】
本発明で用いられるエチレン性不飽和モノマー(c2)としては、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマー等を用いることができる。
【0074】
上記単官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフエステル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等があげられる。
【0075】
上記エチレン性不飽和モノマーとして、上記の他にアクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルもあげられ、上記アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等があげられる。また、特定の置換基をもつカルボン酸である上記2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等があげられる。さらに、オリゴエステルアクリレートもあげられる。
【0076】
上記2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等があげられる。
【0077】
上記3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0078】
また、上記エチレン性不飽和モノマー(c2)にオキシアルキレン鎖を含有させた化合物を用いることも好ましい。
【0079】
上記不飽和基含有化合物(C)の中でも、優れた帯電防止性能を示す点で、オキシアルキレン鎖を含有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)やエチレン性不飽和モノマー(c2)を用いることも好ましい。特には、オキシアルキレン鎖を含有し、かつ不飽和基を3個以上含有する不飽和基含有化合物が好ましい。
【0080】
また、不飽和基含有化合物(C)として、分子中に酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造を含有する(メタ)アクリレート系化合物を使用することも、帯電防止能をさらに向上させる点で好ましい。
【0081】
これら不飽和基含有化合物(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記不飽和基含有化合物(C)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して2〜99重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは8〜30重量部である。上記不飽和基含有化合物(C)の含有量が多すぎると、樹脂との相溶性が悪くなり、塗膜の白化する傾向が見られたり、架橋密度が上がりすぎて、粘着力が下がりすぎてしまい、耐久試験で剥離が起こりやすくなる傾向が見られ、少なすぎると粘着剤の架橋密度が不十分となり、光漏れ防止性や耐久性が低下する傾向がある。
【0083】
前記重合開始剤(D)としては、例えば、光重合開始剤(d1)、熱重合開始剤(d2)等の種々の重合開始剤を用いることが可能であるが、特には光重合開始剤(d1)を使用することが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により架橋(硬化)させることが可能となる点で好ましい。
【0084】
また、上記光重合開始剤(d1)を用いるときは、活性エネルギー線照射により粘着剤組成物[I]を架橋させ、熱重合開始剤(d2)を用いるときは、加熱により粘着剤組成物[I]を架橋させるのであるが、必要に応じて、両方を併用することも好ましい。
【0085】
上記光重合開始剤(d1)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類等があげられる。なお、これら光重合開始剤(d1)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0087】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
【0088】
また、上記熱重合開始剤(d2)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤等があげられる。なお、これらの熱重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記重合開始剤(D)の含有量については、前記アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、特には0.1〜7重量部、さらには0.3〜3重量部であることが好ましい。上記重合開始剤(D)の含有量が少なすぎると、硬化性に乏しく物性が安定しなくなる傾向がみられ、多すぎてもそれ以上の効果が得られない傾向がみられる。
【0090】
上記活性エネルギー線照射に際しては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行なう場合は、上記光重合開始剤(d1)を用いなくても硬化可能である。
【0091】
そして、上記紫外線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。上記高圧水銀ランプの場合は、例えば、5〜3000mJ/cm2、好ましくは10〜1000mJ/cm2の条件で行われる。また、上記無電極ランプの場合は、例えば、2〜1500mJ/cm2、好ましくは5〜500mJ/cm2の条件で行われる。そして、照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は、数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。一方、上記電子線照射の場合には、例えば、50〜1000Kevの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜50Mradの照射量とするのがよい。
【0092】
また、上記重合開始剤(D)として、熱重合開始剤(d2)を用いる場合には加熱により重合反応を開始し、進行させる。加熱による架橋時の処理温度や処理時間は、使用する熱重合開始剤(d2)の種類によって異なるものであり、通常、開始剤の半減期より計算されるものであるが、処理温度は、通常70℃〜170℃であることが好ましく、処理時間は、通常0.2〜20分が好ましく、特には0.5〜10分が好ましい。
【0093】
つぎに、前記〔β〕の方法、即ち、架橋剤(E)を用いて架橋する方法について説明する。
上記架橋剤(E)を用いて架橋する場合は、粘着剤組成物[I]として、前記アクリル系樹脂(A)およびイオン性化合物(B)に加え、さらに架橋剤(E)を含有する粘着剤組成物[I]を用いる。
【0094】
上記架橋剤(E)を用いる場合には、アクリル系樹脂(A)は官能基を有するものであることが好ましく、この官能基と架橋剤が反応することにより架橋(化学架橋)が行なわれる。
【0095】
上記架橋剤(E)としては、前記アクリル系樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物であればよく、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、メラミン系化合物、アルデヒド系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物があげられる。これらの中でも、基材との密着性を良くできる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系化合物が好適に用いられる。
【0096】
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等があげられる。
【0097】
上記エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等があげられる。
【0098】
上記アジリジン系化合物としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等があげられる。
【0099】
上記メラミン系化合物としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等があげられる。
【0100】
上記アルデヒド系化合物としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等があげられる。
【0101】
上記アミン系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等があげられる。
【0102】
アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等があげられる。
【0103】
また、これらの架橋剤(E)は、単独で使用しても良いし、2種以上併用してもよい。
【0104】
上記架橋剤(E)の含有量は、前記アクリル系樹脂(A)中に含まれる官能基の量、アクリル系樹脂(A)の分子量、用途目的により適宜選択できるが、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜15重量部であることが好ましく、さらには0.2〜12重量部、特には1.5〜10重量部、殊には0.5〜3重量部であることが好ましい。上記架橋剤(E)が少なすぎると、凝集力が不足し、十分な耐久性が得られない傾向がみられ、多すぎると柔軟性、および粘着力が低下し、耐久性が悪くなり、剥離が起こりやすくなるため光学フィルムと貼り合わせることが困難となる傾向がみられる。
【0105】
また、本発明においては、粘着剤組成物[I]が架橋されて得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層向上させるために、架橋剤(E)の一部に、帯電防止性能を有する構造部位が導入された架橋剤を用いることも好ましい。
【0106】
本発明においては、上記の〔α〕活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)による架橋のみでも十分なものが得られるが、さらに、〔β〕架橋剤による架橋とを併用することが好ましく、粘着剤の架橋密度を上げ、凝集力を上げて光漏れ防止と耐久性に関してより一層優れたものが得られるようになる。
【0107】
また、本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらにオキシアルキレン基含有化合物(F)(ただし、(C)は除く)(以下、単にオキシアルキレン基含有化合物(F)と記すことがある。)を含有することが、さらに帯電防止機能を向上させる点や光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。
【0108】
上記オキシアルキレン基含有化合物(F)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.1〜90重量部に設定され、好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは3〜30重量部、殊には5〜10重量部である。上記オキシアルキレン基含有化合物(F)の含有量が少なすぎると、帯電防止能の向上効果が得られにくい傾向があり、多すぎると粘着物性が悪化する傾向がある。
【0109】
本発明で使用するオキシアルキレン基含有化合物(F)としては、オキシアルキレン基を有する化合物(不飽和基含有化合物は除く)であれば特に限定されず、公知のオキシアルキレン基含有化合物を用いることができる。
上記オキシアルキレン基含有化合物(F)の中でも、架橋システムに組み込まれず、分子鎖の自由度が高いため帯電防止機能を向上させる点で、オキシアルキレン構造を含有し、分子鎖末端に水酸基を含有しないものが好ましく、特に好ましくは、下記一般式(3)で示される化合物を使用することが、帯電防止能がより向上する点で好ましい。
【0110】
【化3】

【0111】
上記一般式(3)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にはエチレン基が好ましい。また、nが2以上のポリオキシアルキレン鎖部位の場合は、同一オキシアルキレン鎖のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
【0112】
上記一般式(3)中のY1およびY2は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基のいずれかであり、互いに同一であっても異なっていてもよい。これらの中でも、アルキル基であることが、オキシアルキレン鎖の働きの自由度を阻害せずに帯電防止機能の向上に寄与する点で特に好ましい。
【0113】
上記アルキル基の炭素数は比較的短いものが好ましく、具体的には炭素数が1〜15が好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜6が更に好ましい。
【0114】
上記アリール基としては、通常、炭素数6〜20、好ましくは6〜15のものが用いられ、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基等があげられるが、これらの中でもフェニル基が好ましい。
【0115】
上記アラルキル基としては、通常、炭素数7〜20、好ましくは7〜15のものが用いられ、具体的にはベンジル基等があげられる。
【0116】
なお、上記アルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基は、置換基を有するものであってもよく、置換基としては、通常、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、アリール基、ヘテロアリール基等があげられる。
【0117】
上記一般式(3)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜2あり、更に好ましくは1である。
【0118】
本発明で使用するオキシアルキレン基含有化合物(F)について、上記一般式(3)で示される化合物の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等があげられる。
また、上記一般式(3)で示される化合物以外のオキシアルキレン基含有化合物(F)化合物の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、オキシアルキレン基を有するカチオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシアルキレン基含有ポリエーテルエステル等があげられる。
【0119】
これらの中でも、オキシエチレン基含有化合物が好ましく、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンジアミン、オキシエチレン基含有ポリエーテル系ポリマー、オキシエチレン基含有ポリエーテルエステルアミド、オキシエチレン基含有ポリエーテルアミドイミド、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等があげられ、オキシエチレン基を有するポリエーテル系ポリマーまたはアクリル系ポリマーが、ベースポリマーとの相溶性のバランスがとり易く好ましく用いられる。
【0120】
オキシエチレン基含有ポリエーテル系ポリマーとしては、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのランダム共重合体等のポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体があげられる。グリコール鎖の末端は、水酸基のままでもよいし、アルキル基、フェニル基等で置換されていてもよい。
【0121】
上記ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体のポリエチレングリコール比率としては5〜75重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。ポリエチレングリコール比率が少なすぎるとイオン性液体との相溶性が低下し、十分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向があり、多すぎると結晶性が高くなりアクリル系ポリマーとの相溶性が低下し十分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向がある。
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。上記オキシエチレン基含有化合物のなかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、効果的に帯電防止能を上げる点で好ましい。
【0122】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の繰返しが2のもの、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等の繰返しが3のもの、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、それ以上のポリオキシエチレンジメチルエーテル等があげられ、これらの中でも、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく用いられる。
【0123】
また、本発明においては、上記オキシアルキレン基含有化合物(F)中のオキシアルキレン基含有率が5〜85重量%であることが好ましく、7〜80重量% であることがより好ましく、9〜75重量%であることがさらに好ましい。かかる含有率が低すぎると、帯電防止性能に劣る傾向があり、多すぎると、親水性になりすぎることにより、耐湿熱性に劣る傾向がある。
【0124】
上記オキシアルキレン基含有化合物(F)の分子量としては、数平均分子量が100〜10000が好ましく、特に好ましくは180〜1000、更に好ましくは200〜300である。
【0125】
また、本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらにシランカップリング剤(G)を含有することが、光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。上記シランカップリング剤(G)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部であり、より好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.03〜0.8重量部である。上記シランカップリング剤(G)の含有量が少なすぎると、添加効果が得られない傾向があり、多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し接着力や凝集力が得られなくなる傾向がある。
【0126】
上記シランカップリング剤(G)としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、水酸基系シランカップリング剤、カルボキシル基系シランカップリング剤、アミノ基系シランカップリング剤、アミド基系シランカップリング剤、イソシアネート基系シランカップリング剤等をあげることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ系シランカップリング剤とメルカプト系シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
【0127】
上記エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があげられるが、中でも好ましいのはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
【0128】
上記メルカプト系シランカップリング剤の具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等があげられる。
【0129】
本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらに上述したイオン性化合物(B)以外の帯電防止剤(H)を含有することも、得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層優れたものとする点で好ましい。上記帯電防止剤(H)としては、例えば、イミダゾリウム塩((B)を除く)、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第4級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、過塩素酸リチウムや塩化リチウム等の有機酸または無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
【0130】
上記帯電防止剤(H)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜20重量部であり、より好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.02〜5重量部である。上記帯電防止剤(H)の含有量が少なすぎると、添加効果が得られない傾向があり、多すぎると耐久性が低下したり、帯電防止剤がブリードアウトする可能性がある。
【0131】
本発明において、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。
また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物[I]の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0132】
このようにして、本発明では、上記粘着剤組成物[I]が架橋されてなる粘着剤が得られる。
また、上記の架橋方法の他にも、アクリル系樹脂(A)およびイオン性化合物(B)を含有してなる粘着剤組成物[I]の架橋方法としては、粘着剤組成物[I]に実質的に不飽和基を含有させず、粘着剤組成物[I]に、活性エネルギー線を照射する方法により架橋させることもできる。なお、このときに重合開始剤(D)、架橋剤(E)、オキシアルキレン基含有化合物(F)、シランカップリング剤(G)を含有することが、上記と同様の理由で好ましい。
【0133】
そして、上記粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0134】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましい。
【0135】
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、例えば、〔1〕光学部材上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、さらに離型シートを貼合する方法、または〔2〕離型シート上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合する方法等により製造することできる。中でも、上記〔2〕の方法である、離型シート上に粘着剤組成物[I]を塗布する製造方法が、希釈溶剤により光学部材を劣化させる可能性が低い点で好ましい。
【0136】
また、粘着剤層付き光学部材を実用に供する際には、上記離型シートを剥離して用いられる。そして、上記離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0137】
また、粘着剤組成物[I]が、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による架橋を行なう場合には、〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔3〕光学部材上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、離型シートを貼合する方法、〔4〕離型シート上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、光学部材を貼合する方法、により製造することできる。これらの中でも、〔2〕の方法で活性エネルギー線照射のみを行なう場合が基材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0138】
上記粘着剤組成物[I]の塗布に際しては、この粘着剤組成物[I]を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物[I]を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0139】
また、上記粘着剤組成物[I]の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0140】
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、粘着剤組成物[I]が、不飽和基含有化合物(C)、重合開始剤(D)を含有し、活性エネルギー線および/または熱により架橋する場合には、耐久性能と光漏れ防止性能の点から70%以上であることが好ましく、特には90%以上が好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足や光漏れ現象が悪化する傾向がある。なお、通常、ゲル分率の上限値は100%である。
【0141】
また、粘着剤組成物[I]が、架橋剤(E)を含有し、架橋剤により架橋する場合には、不飽和基含有化合物(C)、重合開始剤(D)を含有しない場合には、上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と光漏れ防止性能のバランスの点から20〜90%であることが好ましく、特には30〜80%が好ましく、更には40〜70%であることが好ましく、殊には50〜60%であることが好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足が起こりやすい傾向にあり、ゲル分率が高すぎると凝集力が上がることによる光漏れが悪化する傾向にある。
【0142】
なお、光学部材用粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、活性エネルギー線の照射量や照射強度を調整すること、不飽和基含有化合物の種類と量を調整すること、重合開始剤の種類およびその併用割合を調整すること、重合開始剤の配合量を調整すること、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。また、上記活性エネルギー線の照射量や照射強度、重合開始剤の組成比、添加量は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
【0143】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0144】
また、得られる粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、通常5〜300μmが好ましく、特には10〜50μmが好ましく、更には12〜30μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると光学部材全体の厚みが増しすぎてしまう傾向がある。
【0145】
本発明の粘着剤層付き光学部材は、離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば液晶表示板に供されるのである。
【0146】
本発明において、粘着剤層の初期粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、ガラス基板に貼着する場合には、0.2N/25mm〜20N/25mmの粘着力を有することが好ましく、さらには0.5N/25mm〜10N/25mmが好ましい。
【0147】
上記初期粘着力は、例えば、つぎのようにして算出される。粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「コーニング1737」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合する。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行った後、23℃・50%R.H.で24時間放置後に、180度剥離試験を行なう。
【0148】
本発明における光学部材としては、特に限定されることなく、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム、例えば、偏光板や位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているもの等があげられる。中でも特に偏光板であることが本発明では有効である。
【0149】
本発明で用いられる偏光板は、通常、偏光フィルムの両面に三酢酸セルロース系フィルムを保護フィルムとして積層したものであり、上記偏光フィルムとしては、平均重合度が1,500〜10,000、ケン化度が85〜100モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、2〜10倍、好ましくは3〜7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
【0150】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。また、ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂およびポリビニルアルコール誘導体もあげられる。
【0151】
なお、ここまでで本発明の粘着剤を光学部材用途に用いる場合について詳細に説明してきたが、本発明の粘着剤は一時表面保護用途において一時表面保護用粘着剤として用いることも帯電防止性能、場合によっては高速剥離性の点で有用であるので、以下、本発明の粘着剤を一時表面保護用途に用いる際についての説明を記載する。
【0152】
一時表面保護用粘着剤として使用する場合には、粘着剤組成物[I]としては、上記アクリル系樹脂(A)、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)成分を電子線で硬化させても良く、さらに他に、不飽和基含有化合物(C)、重合開始剤(D)、架橋剤(E)成分のうち少なくとも1つを含有させた粘着剤組成物[I]とし、架橋させて粘着剤とすることが好ましく、更には、アクリル系樹脂(A)、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)および架橋剤(E)成分に加えて、不飽和基含有化合物(C)、および重合開始剤(D)を含有した粘着剤組成物[I]を架橋させて粘着剤とすることが特に好ましい。
【0153】
かかる一時表面保護用粘着剤として用いる時のアクリル系樹脂(A)としては、上述したアクリル系樹脂(A)と同様のものを使用することができる。
【0154】
かかる一時表面保護用粘着剤として用いる時の不飽和基含有化合物(C)としては、上述した不飽和基含有化合物(C)と同様のものを使用することができるが、中でも、粘着剤の架橋密度を高めるために、多官能、即ち不飽和基を2個以上有する不飽和基含有化合物を用いることが好ましく、更には不飽和基を3個以上有する不飽和基含有化合物が好ましく、特には不飽和基を4個以上有する不飽和基含有化合物が好ましく、殊には不飽和基を5個以上有する不飽和基含有化合物が好ましい。
【0155】
また、優れた帯電防止性能を示す点で、アルキレングリコール鎖を含有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物やエチレン性不飽和モノマーを用いることも好ましい。特には、アルキレングリコール鎖を含有し、かつ不飽和基を3個以上含有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
【0156】
不飽和基含有化合物(C)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して200重量部以下であることが好ましく、より好ましくは5〜150重量部、更に好ましくは10〜100重量部、殊に好ましくは20〜80重量部である。不飽和基含有化合物(C)の含有量が少なすぎると架橋が不十分となり凝集力が低下し被着体汚染の原因となる傾向があり、多すぎると、粘着力が低下する傾向が見られる。
【0157】
かかる一時表面保護用粘着剤として用いる時の重合開始剤(D)としては、上述した重合開始剤(D)と同様のものを使用することができる。
【0158】
かかる一時表面保護用粘着剤として用いる時の架橋剤(E)としては、上述した架橋剤(E)と同様のものを使用することができる。
【0159】
上述した粘着剤組成物[I]を硬化させて得られる一時表面保護用粘着剤は、基材上に積層することにより一時表面保護用粘着シートとして有用に用いることができる。
【0160】
なお、本発明における「シート」は、フィルムも含めた意味である。
【0161】
上記粘着剤組成物[I]を設ける基材としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂フィルムまたはシート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布があげられる。これらの基材は、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0162】
これら基材の中で、価格面を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂フィルムまたはシートが好適に用いられる。
【0163】
また、基材に対する粘着剤の投錨性を上げるために、基材の表面に対して、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理等の易接着性を改良する処理を施しても良いし、更なる帯電防止のために帯電防止層が設けられても良い。
【0164】
上記基材の厚さは、特に限定されないが、一般には500μm以下、好ましくは1〜300μm、更に好ましくは5〜200μm、特に好ましくは10〜100μm程度の厚さを例示することができる。
【0165】
上記基材に設ける粘着剤組成物[I]の厚みは、特に制限はないが、乾燥後において、一般に1〜200μm、好ましくは2〜100μm、更に好ましくは3〜50μm、特に好ましくは5〜30μm程度の厚さを例示することができる。厚過ぎると、一時表面保護用粘着シートを被着体から剥離する際に粘着剤が被着体表面に糊残りする傾向があり、また、薄過ぎると、被着体に対する接着力が低下し、一時表面保護用粘着シートを被着体に貼り合わせた後、被着体および一時表面保護用粘着シートが高温に晒された際に一時表面保護用粘着シートが剥がれてしまうなどの問題が起こる傾向がある。
【0166】
かかる一時表面保護用粘着シートを被着体に貼り合わせるまで、その粘着剤を汚染から保護する目的で、粘着剤の表面にセパレータを積層することができる。セパレータとしては、上記で例示した合成樹脂フィルムまたはシート、紙、布、不織布等の基材を離型処理したものを使用することができる。
【0167】
上記基材上に粘着剤組成物[I]を設けるに当たっては、通常、粘着剤組成物[I]の溶液として、特には溶剤により塗布に適した粘度に調整した後、基材に塗布し、乾燥することが行われる。塗布する方法としては、溶液状の粘着剤組成物[I]を基材に直接塗工する直接塗工法や、溶液状の粘着剤組成物[I]をセパレータに塗工したのち基材と貼り合わせる転写塗工法などがあげられる。
【0168】
直接塗工法においては、基材に粘着剤組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、活性エネルギー線を照射し、その後、セパレータを貼り合わせる方法や、基材に粘着剤組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、セパレータを貼り合わせ、その後、活性エネルギー線を照射する方法などがあげられる。塗工は、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法により行われる。
【0169】
一方、転写塗工法においては、セパレータに粘着剤組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、活性エネルギー線を照射し、その後、基材を貼り合わせる方法や、セパレータに粘着剤組成物[I]を塗工し加熱乾燥した後、基材を貼り合わせ、その後、活性エネルギー線を照射する方法などがあげられる。塗工方法については、直接塗工と同様の方法が使用できる。
【0170】
かかる一時表面保護用粘着シートを被着する被着体の種類は、特に制限はないが、例えば、上記の基材で例示した、金属箔、合成樹脂フィルムまたはシート、紙、織物や不織布に加えて、ガラス板、合成樹脂板、金属板があげられる。
【0171】
かかる一時表面保護用粘着シートの初期粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、SUS304BA板に貼着する場合には、0.01N/25mm〜50N/25mmの粘着力を有することが好ましく、一時保護用(表面保護用、マスキング用)に使用される場合は、0.01N/25mm〜5N/25mmの粘着力が好ましく、特には0.02N/25mm〜1N/25mmの粘着力が好ましい。
【0172】
上記の粘着力は、つぎのようにして算出される。まず、得られた粘着シートを25mm×100mmに切断した後、これを、被着体としてのステンレス板(SUS304BA板)もしくはアクリル板(PMMA板)に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを用いて2往復させることにより圧着し、試験片を作製する。この試験片を、同雰囲気下で、30分放置した後、剥離速度剥離速度0.3m/分により、180度剥離試験を行い、測定した粘着力(N/25mm)を初期粘着力とする。
【0173】
また、かかる一時表面保護用粘着シートの高速剥離粘着力は、通常、初期粘着力の6倍以下であればよく、特には4倍以下であることが好ましく、更には2倍以下であることが好ましい。かかる高速剥離粘着力は、上記初期粘着力と同様の方法により作製した試験片を、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、30分放置した。その後、同雰囲気下で、剥離速度30m/分の高速により、180度剥離試験を行い、測定した粘着力(N/25mm)を、高速剥離粘着力とする。
【実施例】
【0174】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0175】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂、各種不飽和基含有化合物を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0176】
〔アクリル樹脂(A)の調製〕(表2参照。)
[アクリル系樹脂(A−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、撹拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)30部、ブチルアクリレート(a2)69部、アクリル酸(a3)1部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(重量平均分子量(Mw)80万、分散度(Mw/Mn)4.5、ガラス転移温度−45℃、固形分35%、粘度7,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−1)のHLBに関しては、以下の計算により求め、7.42であった。
・重合時の2−ヒドロキシエチルアクリレートを各構成部分に分解すると、
(CH2:−0.475)(CH:−0.475)(COO:2.4)(CH2:−0.475)(CH2:−0.475)(OH:1.9)であるので、
HLB値=Σ疎水機の基数+Σ親水基の基数+7
={(−0.475)×4}+{(2.4)+(1.9)}+7
=9.4
・同様に、アクリル酸(CH2:−0.475)(CH:−0.475)(COOH:2.1)についても計算すると、
HLB値={(−0.475)×2}+(2.1)+7
=8.15
・同様に、ブチルアクリレート(CH2:−0.475)(CH:−0.475)(COO:−2.4)(CH2:−0.475)(CH2:−0.475)(CH2:−0.475)(CH3:−0.475)についても計算すると、
HLB値={(−0.475)×6}+(2.4)+7
=6.55
・アクリル系樹脂(A−1)
=BA/HEA/AAc
=69/30/1であるので、上記計算値に各モノマーの含有割合を掛け合わせると、
HLB値=(6.55×69+9.4×30+8.15×1)/100
=7.42
【0177】
[アクリル系樹脂(A−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)10部、2−メトキシエチルアクリレート(a1)40部、ブチルアクリレート(a2)49部、アクリル酸(a3)1部および酢酸エチル140部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(重量平均分子量(Mw)120万、分散度(Mw/Mn)4.3、ガラス転移温度−49℃、固形分20%、粘度5,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−2)のHLBは7.55であった。
【0178】
[アクリル系樹脂(A−3)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)10部、2−メトキシエチルアクリレート(a1)40部、ブチルアクリレート(a2)50部および酢酸エチル140部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−3)溶液(重量平均分子量(Mw)120万、分散度(Mw/Mn)4.6、ガラス転移温度−50℃、固形分20%、粘度4,700mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−3)のHLBは7.54であった。
【0179】
[アクリル系樹脂(A−4)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)5部、ブチルアクリレート(a2)94.5部、アクリル酸(a3)0.5部および酢酸エチル100部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−4)溶液(重量平均分子量(Mw)158万、分散度(Mw/Mn)3.7、ガラス転移温度−50℃、固形分18%、粘度8,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−4)のHLBに関しては、6.70であった。
【0180】
[アクリル系樹脂(A−5)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)1.5部、ブチルアクリレート(a2)98部、アクリル酸(a3)0.5部および酢酸エチル100部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−5)溶液(重量平均分子量(Mw)165万、分散度(Mw/Mn)3.5、ガラス転移温度−55℃固形分18%、粘度8,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−5)のHLBは6.60であった。
【0181】
【表2】

【0182】
[イオン性化合物(B)]
イオン性化合物(B−1)として、以下のものを用意した。
・カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド
イオン性化合物(B−2)として、以下のものを用意した。
・1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド
イオン性化合物(B−3)として、以下のものを用意した。
・ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド
イオン性化合物(B’−1)として、以下のものを用意した。
・カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
イオン性化合物(B’−2)として、以下のものを用意した。
・カリウムビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミド
イオン性化合物(B’−3)として、以下のものを用意した。
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド
【0183】
なお、上記イオン性化合物(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B’−1)、(B’−2)および(B’−3)は、いずれも常温で固体である。
【0184】
[不飽和基含有化合物(C−1)の製造]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソホロンジイソシアネート19.2部、ジ−t−ブチルヒドロキシフェノール0.05部、ジブチルスズジラウレート0.02部を仕込み、50℃以下で、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(共栄社化学社製ライトアクリレートPE−3A、水酸基価120mgKOH/g)80.8部を、70℃で反応を継続し、不飽和基含有化合物(C−1)を得た。
【0185】
[光重合開始剤(D)]
光重合開始剤(D−1)として、以下のものを用意した。
・ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)
【0186】
[架橋剤(E)]
架橋剤(E−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)
【0187】
[オキシアルキレン基含有化合物(F)]
オキシアルキレン基含有化合物(F−1)として、以下のものを用意した。
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル(東邦化学工業社製、「ハイソルブMTEM」)
【0188】
[シランカップリング剤(G)]
シラン系化合物(G−1)として、以下のものを用意した。
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、「KBM403」)
【0189】
〔実施例1〜6、比較例1〜4〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表3および表4に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これをメチルエチルケトンにて希釈し(粘度〔1000〜10000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した。
【0190】
そして、上記粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)上に転写し、フュージョン社製無電極ランプ[LH6UVランプのHバルブ]にてピーク照度:600mW/cm2,積算露光量:240mJ/cm2で紫外線照射を行ない(120mJ/cm2×2パス)、その後23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0191】
〔実施例7〜12、比較例5,6〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表3および表4に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これをメチルエチルケトンにて希釈し(粘度〔1000〜10000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した。
【0192】
そして、上記粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)上に転写した後、23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせ、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0193】
このようにして得られた粘着剤層付きPETフィルムを用いて、表面抵抗率、ゲル分率を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記の表3および表4に併せて示した。
【0194】
〔表面抵抗率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmの大きさに切断した後、これを温度23℃×相対湿度65%の条件下に3時間放置し調湿した後、離型シートを剥がして10〜20秒後の粘着剤層について、抵抗率計(三菱化学社製、ハイレスターUP)を用いて表面抵抗率を測定した。なお、表面抵抗率が小さいほど帯電防止性能が高いことを意味する。
【0195】
〔ゲル分率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに切断した後、離型シートを剥がし粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の重量変化にてゲル分率の測定を行なった。
【0196】
【表3】

【0197】
【表4】

【0198】
つぎに、実施例2〜4の粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層を偏光板(厚み190μm)上に転写し、ポリエステル系離型シート側からフュージョン社製無電極ランプ[LH6UVランプのHバルブ]にてピーク照度:600mW/cm2,積算露光量:240mJ/cm2で紫外線照射を行ない(120mJ/cm2×2パス)、その後23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて粘着剤層付き偏光板を得た。
なお、上記偏光板には、膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99モル%、ヨウ素染色、4倍延伸)の両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した偏光板(ポリビニルアルコール偏光フィルムの延伸軸方向を45°傾けて100mm×100mmに切断)を用いた。
【0199】
このようにして得られた粘着剤層付き偏光板を用いて、耐久性(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験、耐熱試験)、粘着力を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表5に併せて示す。
【0200】
〔耐久性〕
得られた粘着剤層付き偏光板の離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、コーニング1737)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行ない、その後、下記の耐久試験(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験、耐熱試験)における発泡、剥がれ、光漏れ現象の評価を行なった。
なお、耐熱試験のみは、偏光板がクロスニコルになるように表と裏の両面に同じサンプルを貼合し、光漏れ観察用とした。
なお、使用した試験片サイズは、耐湿熱・ヒートサイクルでは10cm×10cmを使用し、耐熱試験では20cm×15cmのものを使用した。
【0201】
〔耐久試験〕
(1)耐湿熱試験
60℃、90%R.H.100時間の耐久試験
(2)ヒートサイクル試験
−40℃で30分間放置した後、85℃で30分間放置する操作を1サイクルとして、100サイクル行なう耐久試験
(3)耐熱試験
80℃、100時間の耐久試験
【0202】
〔評価基準〕
(発泡)
○・・・発泡がほとんど見られない
△・・・発泡がわずかに見られる
×・・・発泡が多く見られる
(剥離)
○・・・0.5mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
△・・・0.5mm以上10mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
×・・・10mm以上の剥がれ、もしくは10mm以上の浮き跡の発生
(光漏れ)
上記(3)耐熱試験のみ光漏れに関する評価を行なった。
○・・・光漏れがほとんど見られない
△・・・光漏れが僅かに発生
×・・・4辺に光漏れが大きく発生
【0203】
〔粘着力〕
調製した粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「コーニング1737」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行い、24時間後に180度剥離試験を行った。剥離性においては粘着力が小さいことが望まれ、1日後で10N/25mm以下が目標となる。
【0204】
【表5】

【0205】
実施例に記載の炭素原子を含まないフッ素含有イミドアニオンであるビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを配合した粘着剤は、炭素原子を有するパーフルオロアルキル基を含んだイミドアニオンを配合した粘着剤に場合に比べ、効果的に帯電防止性能が向上しているのが分かる。
更には、偏光板用粘着剤としての高耐久・耐光漏れ性にも優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明の粘着剤は、各工程で発生する静電気が帯電しにくく、また、高温,高湿の条件下においても、光学積層体とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、光学フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を抑制することができるため、耐久性に優れた液晶表示板を得ることができ、非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)を含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
アクリル系樹脂(A)と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)を含有してなる粘着剤組成物[I]が、架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項3】
アクリル系樹脂(A)のHLBが6.8以上であることを特徴とする請求項2記載の粘着剤。
【請求項4】
アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で示されるオキシアルキレン基含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)を5〜100重量%含有する共重合成分を共重合させてなるものであることを特徴とする請求項2または3記載の粘着剤。
【化1】

【請求項5】
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを有するイオン性化合物(B)のカチオン部が、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、窒素原子含有ヘテロ環式化合物のカチオン類のいずれかであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項6】
粘着剤組成物[I]が、不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有し、活性エネルギー線および/または熱により架橋されてなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項7】
粘着剤組成物[I]が、架橋剤(E)を含有し、架橋剤により架橋されてなることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項8】
オキシアルキレン基含有化合物(F)(ただし、(C)は除く)を含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項に記載の粘着剤を用いてなる光学部材用粘着剤。
【請求項10】
光学部材が偏光板であることを特徴とする請求項9記載の光学部材用粘着剤。
【請求項11】
請求項9または10記載の光学部材用粘着剤が光学部材に積層されてなることを特徴とする粘着剤層付き光学部材。

【公開番号】特開2011−16990(P2011−16990A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131619(P2010−131619)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】