説明

粘着剤組成物及びこれを用いた光学部材

【課題】熱硬化性の相互浸透型高分子を利用して光漏れを改善し、低分子体ではなく高分子体のブレンド効果によって耐久性と剥離力に優れた粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】粘着剤組成物は、貯蔵弾性率が8×105〜1×108 dyne/cm2で、下記数式1で表されるゲル分率が83〜95%であることを特徴とする:


前記数式1において、Aは粘着剤組成物を常温(23℃)で48時間溶剤で溶解させ24時間乾燥させた後の残った質量、Bは粘着剤組成物の初期質量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及びこれを用いた光学部材に関するものである。より具体的には、本発明は熱硬化性の相互浸透型高分子を利用して光漏れを改善し、低分子体ではなく高分子体のブレンド効果によって耐久性と剥離力に優れた粘着剤を提供し得る粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルムとしては、偏光板、カラーフィルター、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、プラスチックLCD基板等を挙げることができ、これらは液晶表示装置を始めとする様々な光学部材に使用されている。
【0003】
このうち偏光板は、一定の方向に配列されたヨード系化合物または二色性偏光物質を含み、偏光子を保護するために両面にトリアセチルセルロース(TAC)系等の保護フィルムを使用して多層に構成したものである。また、偏光板は、一方向性の分子配列を有する位相差フィルムまたは液晶型フィルム等の光視野角補償フィルムを付加的に含むことができる。各フィルムは、互いに別の分子構造及び組成を有する材料で作られるため、物理的特性が相違している。特に、高温・高湿条件下では、一方向性の分子配列を有する材料は、収縮または膨張により寸法安定性が不足する。よって、偏光板が粘着剤で固定されている場合に、高温・高湿条件下で偏光板が収縮または膨張すると、TAC層に応力が集中し、複屈折が発生して、これにより光露出が生じやすくなる。これを光漏れ現象と言い、一般的に、延伸した偏光フィルムの光学的等方性が高温・高湿の環境で収縮によって非等方性を有するようになると共に発生することが知られている。
【0004】
これを防止するために、粘着剤を構成する成分の分子量を大きくしたり、架橋密度を高めて、発生するフィルムの収縮を制御しようとする技術が行われている。しかし、光漏れを考慮したこのような設計は、それ以外に様々な不良を招くため、耐久性の低下をもたらし得る。したがって、硬化の方法を一般の熱硬化方式以外にUV硬化方式に変えることによって、架橋密度の向上と更に耐久性に対する改善を進めている実情にある。
【0005】
光漏れ改善への対処方針としては、応力緩和型と応力強化型に分けられる。従来は、下記特許文献1に記載されているように、低分子量体を粘着剤に添加する等の応力緩和型が主に行われていた。
【0006】
また、下記特許文献2では、残留応力下で陽数値の光弾性係数を有する低分子量体をアクリル系粘着剤層に混合し、残留応力下でアクリル系粘着剤層が表す陰数値の複屈折を補正する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−087593号公報
【特許文献2】韓国特許公開第2003−0069461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、低分子量体の添加は、被着剤の汚染を誘発したり時間の経過に伴う耐久性の低下をもたらす恐れがある。また、応力緩和型光漏れが、発生地点の輝度は低いが面積が広い形態のため、完全な光漏れの改善とは見なし難い部分がある。
【0009】
応力強化型としての粘着剤設計技術は、既存の熱硬化型からUV/EB硬化型への硬化技術の転向によって行われている。しかし、UV/EB硬化型はUV照射装置等、別途の設備を導入しなければならず、一定のUV照射量が必要なため、工程性に制限が伴うという短所がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、粘着剤組成物に関するものである。一実施形態において、前記粘着剤組成物は貯蔵弾性率が8×105〜1×108dyne/cm2で、下記数式1で表されるゲル分率が83〜95%であることを特徴とする:
【0011】
【数1】

【0012】
前記数式1において、Aは、粘着剤組成物を常温(23℃)で48時間、トルエン等の溶剤で溶解させ、24時間乾燥させた後の残った質量、Bは粘着剤組成物の初期質量である。
【0013】
一実施形態において、前記粘着剤組成物は(メタ)アクリレート系共重合体及び架橋剤を含み、前記(メタ)アクリレート系共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート系樹脂と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート系樹脂を含んでなる。
【0014】
実施形態において、前記(メタ)アクリレート系共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート系樹脂50〜100重量%と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート系樹脂0〜50重量%を含み得る。
【0015】
実施形態において、前記(メタ)アクリレート系樹脂(A2)は、ガラス転移温度が253.15〜423.15Kのモノマーが共重合されたものであり得る。前記ガラス転移温度が253.15〜423.15Kのモノマーは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート等を含み得る。
【0016】
実施形態において、前記(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート系樹脂は、重量平均分子量が800,000〜3,000,000g/molであり得る。また、前記(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート系樹脂は、重量平均分子量が100,000〜1,200,000g/mol、好ましくは500,000〜1,200,000g/molであり得る。
【0017】
一実施形態において、前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート系共重合体100重量部;架橋剤1〜10重量部;及びシランカップリング剤0.01〜5重量部を含み得る。
【0018】
前記架橋剤は、イソシアネート架橋剤及びイミド系架橋剤を含み得る。
【0019】
一実施形態において、前記イソシアネート架橋剤と前記イミド系架橋剤の比率は、100:1〜350:1であり得る。
【0020】
他の実施形態において、前記架橋剤はイソシアネート架橋剤3〜9重量部及びイミド系架橋剤0.01〜1重量部を含み得る。
【0021】
本発明の他の態様は、前記粘着剤組成物を光学フィルムの片面または両面の粘着剤層として含む光学部材に関するものである。実施形態において、前記光学部材は下記式によるエッジ部と中心部間の輝度差(ΔL)が1未満であることを特徴とする:
【0022】
【数2】

【0023】
ここで、a、b、d、eは、光学部材各辺の端部から全体面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度であり、cは光学部材中央部の1/32の面積の平均輝度である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、マトリックスを稠密に作って粘着剤の弾性率を上昇させて光漏れ現象を改善できる粘着剤組成物を提供する。前記粘着剤組成物は、中小型や大型の大きさでも光漏れ現象を防止でき、オリゴマー形態の分子体を使用しないため、高温及び高湿下でも優れた耐久性を有し、熟成時間を短縮しつつ目的とする物性を確保できる。また、前記粘着剤組成物は熱硬化方式を利用した応力強化型である。本発明は前記粘着剤組成物を利用してクリープ性、剥離強度、耐久信頼性、リワーク性及び切断性等の物性のバランスが卓越した光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る光学部材のエッジ部と中心部との間の輝度差を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の粘着剤組成物は、貯蔵弾性率が8×105〜1×108dyne/cm2で、上記のようにして得られるゲル分率が83〜95%である。貯蔵弾性率が上記の範囲であれば、粘着剤は偏光板の収縮または伸張による応力を吸収でき、光漏れ現象を防止できる。また、ゲル分率が上記範囲であれば、粘着剤はより稠密となり、耐久性を向上し得る。
【0027】
本発明は、熱硬化方式を利用した応力強化型であり、特定の組成を用いることによりマトリックスを稠密に作ることによって、粘着剤の弾性率を上昇させることができる。それにより、光漏れ現象を改善できる粘着剤組成物を提供する。以下、本発明を各要素に分けて詳細に説明する。
【0028】
<(メタ)アクリレート共重合体>
本発明の(メタ)アクリレート共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
一実施形態において、前記(メタ)アクリレート共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂50〜100重量%と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂0〜50重量%を含み得る。好ましくは、前記(メタ)アクリレート共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂55〜100重量%と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂0〜45重量%を含み得る。より好ましくは、前記(メタ)アクリレート共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂70〜100重量%と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂0〜30重量%を含み得る。(A1)の(メタ)アクリレート樹脂および(A2)の(メタ)アクリレート樹脂を前記範囲で含むことにより、これを用いた偏光板は優れた外観と切断性を有し、卓越した光漏れ低減効果が得られる。また、優れた粘着力及び信頼性を得ることができる。
【0030】
一実施形態において、前記(メタ)アクリレート樹脂(A1)は、C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体を含む単量体混合物から重合されたものであり得る。例えば、前記(メタ)アクリレート樹脂(A1)は、C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレート70〜99重量%、ヒドロキシ基を有する単量体0.01〜20重量%、及びカルボキシル基を有する単量体0.01〜10重量%を含み得る。前記(メタ)アクリレート樹脂(A1)は、ガラス転移温度が200K以上250K未満、好ましくは210K〜230Kであり得る。
【0031】
一実施形態において、前記(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体を含む単量体混合物から重合されたものであり得、ガラス転移温度を250K以上300K以下の範囲で含み得るように、C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレートの一部をガラス転移温度が253.15〜423.15Kのモノマーで代替して使用できる。前記(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、ガラス転移温度が250K以上300K以下、好ましくは255K〜275Kであり得る。
【0032】
例えば、前記(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレート70〜99重量%、ヒドロキシ基を有する単量体0.01〜20重量%、及びカルボキシル基を有する単量体0.01〜10重量%を含み得、前記C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレート中のガラス転移温度が253.15〜423.15Kのアルキル(メタ)アクリレートモノマーを50重量%以下、好ましくは45重量%以下で混合して用いることができる。例えば、1〜42重量%、好ましくは10〜40重量%で含み得る。
【0033】
一実施形態において、前記ガラス転移温度が253.15〜423.15Kのモノマーは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート等を含み得、必ずしもこれに制限されるのではない。これらは単独又は2種以上混合して使用し得る。
【0034】
一実施形態において、前記(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂は、重量平均分子量が800,000〜3,000,000g/mol、例えば1,000,000〜2,500,000g/molであり得る。好ましくは、1,200,000〜2,000,000g/molである。
【0035】
また、前記(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂は、重量平均分子量が100,000〜1,200,000g/mol、より好ましくは500,000〜1,200,000g/mol、例えば500,000〜1,000,000g/mol、好ましくは500,000〜950,000g/molであり得る。
【0036】
前記C1〜C20のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等がある。これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレートである。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートを共に意味する。
【0037】
前記ヒドロキシ基を有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等を挙げることができる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。前記ヒドロキシ基を有する単量体は、全単量体成分中に0.01〜20重量%で含み得る。好ましくは0.5〜10重量%で含み得る。より好ましくは1〜7.5重量%である。さらに好ましくは1〜5重量%である。
【0038】
前記カルボキシル基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸等を挙げることができる。このうち、より好ましくはアクリル酸である。前記カルボキシル基を有する単量体は、全単量体成分中に0.01〜10重量%で含み得る。好ましくは0.1〜3重量%である。
【0039】
<架橋剤>
前記架橋剤としては、イソシアネート架橋剤とイミド系架橋剤の組み合わせを用いることができる。
【0040】
一実施形態において、前記イソシアネート架橋剤と前記イミド系架橋剤の比率は、100:1〜350:1であり得る。好ましくはイソシアネート架橋剤:イミド系架橋剤=200:1〜300:1であり得る。前記範囲で架橋剤を用いると、架橋時間を安定的に減らすことができるという長所がある。
【0041】
他の実施形態において、前記架橋剤は、(メタ)アクリレート共重合体100重量部に対して、イソシアネート架橋剤3〜9重量部及びイミド系架橋剤0.01〜1重量部を含み得る。前記範囲で架橋剤を用いると、優れた粘着力及び剥離力と、低光漏れ効果を得ることができる。
【0042】
前記イソシアネート系架橋剤としては、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホルムジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びこれらのポリオール(トリメチロールプロパン等)等、並びに、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類;トランスシクロヘキサンー1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6−XDI(水添XDI)、H12−MDI(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート類;上記ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート類;またはこれらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート類などが挙げられる。また、上記イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体があり、必ずしもこれに制限されるのではない。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0043】
イソシアネート系架橋剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、コロネート(登録商標)HX、コロネート(登録商標)2030、コロネート(登録商標)2031(以上、日本ポリウレタン工業株式会社製)、タケネート(登録商標)D−102、タケネート(登録商標)D−110N、タケネート(登録商標)D−200、タケネート(登録商標)D−202(以上、三井化学ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)24A−100、デュラネート(登録商標)TPA−100、デュラネート(登録商標)TKA−100、デュラネート(登録商標)P301−75E、デュラネート(登録商標)E402−90T、デュラネート(登録商標)E405−80T、デュラネート(登録商標)TSE−100、デュラネート(登録商標)D−101、デュラネート(登録商標)D−201(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。このうち、コロネート(登録商標)Lが特に好ましい。
【0044】
前記イミド系架橋剤としては、カルボイミド、カルボジイミド等が使用できる。カルボジイミド系架橋剤は、特に制限されない。具体的には、例えば、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
【0045】
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
【0046】
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、ま
たは、これらの混合物を使用することができる。
【0047】
または、カルボジイミド系架橋剤は、市販品を使用してもよい。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、以下に制限されないが、日清紡績社製のカルボジライト(登録商標)シリーズなどが好ましく挙げられる。その中でもカルボジライト(登録商標)V−01,V−03,V−05,V−07,V−09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0048】
本発明において前記架橋剤の含量は、(メタ)アクリレート共重合体100重量部に対して、1〜10重量部で用いる。好ましくは4〜9重量部であり、より好ましくは4.5〜7重量部である。前記範囲で添加すると、目的とするゲル分率と優れた剥離強度を得ることができる。
【0049】
<シランカップリング剤>
本発明では、接着安定性と接着信頼性をより向上させるために通常のシランカップリング剤を用いることができる。
【0050】
前記シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及びγ−アセトアセテートプロピルトリメトキシシラン等があり、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0051】
前記シランカップリング剤は、(メタ)アクリレート共重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部で用いる。前記範囲内で添加すると、粘着安定性及び粘着信頼性効果を有することができる。
【0052】
本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて選択的に紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、可塑剤等の通常の添加剤をさらに含むことができる。
【0053】
本発明における粘着剤組成物の製造方法は、通常の方法に従い混合して製造できる。一実施形態において、(メタ)アクリレート共重合体に、熱開始剤、架橋剤、シランカップリング剤を均一に混合して製造できる。このとき、必要に応じて、例えばトルエン、酢酸エチル、2−ブタノン、イソプロピルアルコール等の溶媒を付加し希釈して使用できる。前記の混合及び希釈方法は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によって容易に行われ得る。
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、硬化速度調節を通じて高いゲル化を確保し、相互浸透構造を形成して高弾性を有する。実施形態では、下記数式1で表されるゲル分率が83〜95%、好ましくは85〜93%であることを特徴とする。前記範囲で光漏れ現象を改善できる。
【0055】
【数3】

【0056】
前記数式1において、Aは粘着剤組成物を常温(23℃)で48時間、トルエン等の溶剤で溶解させ24時間乾燥させた後の残った質量、Bは粘着剤組成物の初期質量である。
【0057】
前記の製造された粘着剤組成物は、光学フィルム上にコーティングした後、熟成して粘着体層を形成する。実施形態において、前記粘着体層は25℃での貯蔵弾性率が8×105〜1×108であり、より好ましくは1×106〜1×107dyne/cm2範囲を有する。
【0058】
本発明の他の態様は、前記粘着剤組成物を利用した光学部材に関するものである。前記光学部材は、前記粘着剤組成物を光学フィルムの片面又は両面の粘着剤層として含み得る。本発明において前記光学フィルムに粘着剤層を形成する方法は、特に制限はなく、前記光学フィルムの表面に前記粘着剤組成物を直接塗布して乾燥させたり、或いは剥離性基材表面に前記粘着剤層を形成させた後光学フィルムに転写する方法を用いることができる。前記粘着剤層の厚さは、10〜100μm、好ましくは20〜70μmで形成できる。また、粘着剤層を形成した後、24〜100時間熟成させてもよい。
【0059】
一実施形態において、前記光学部材は下記式によるエッジ部と中心部間の輝度差(ΔL)が1未満、好ましくは0.01〜0.8、より好ましくは0.01〜0.5であり得る。
【0060】
【数4】

【0061】
前記式中、a、b、d、eは、図1に示すように、光学部材各辺の端部から全体の面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度であり、cは光学部材中央部の1/32の面積の平均輝度である。
【0062】
前記光学フィルムとしては、偏光板、カラーフィルター、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、プラスチックLCD基板等を挙げることができる。前記光学フィルムの製造方法は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によって容易に製造できる。
【0063】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、この実施例は単に説明を目的とするためのものであり、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0064】
下記実施例1〜2及び比較例1〜5で使用された各成分の仕様は次の通りである:
(A)(メタ)アクリレート共重合体
(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂
窒素ガスで1次パージング(purging)しながら1L反応器にn−ブチルアクリレートを98.5重量部投入し、ヒドロキシエチルメタアクリレート1重量部とアクリル酸0.5重量部をさらに反応器に投入した。溶剤はエチルアセテートを一定量投入し、一定時間窒素パージングを行った後、重合開始剤である2,2’−アゾビス イソブチロニトリル(AIBN)を0.05重量部投入した。温度は60℃±2程度に管理し、反応半ばで重合開始剤を0.001重量部を2回に亘って投入して未反応単量体を最小化し、8時間反応させた。製造された(メタ)アクリレート樹脂(A1)は、重量平均分子量が1400,000g/molで、分子量分布は3.8、ガラス転移温度が227K、固形分15%だった。
【0065】
(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂
n−ブチルアクリレート98.5重量部の代わりに、n−ブチルアクリレート60重量部、メチルアクリレート23.5重量部、メチルメタアクリレート15重量部、ヒドロキシエチルメタアクリレート1重量部及びアクリル酸0.5重量部を使用したことを除いては、前記(A1)と同様に(メタ)アクリレート樹脂を製造した。製造された(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、重量平均分子量が800,000g/molで、分子量分布は4.7、ガラス転移温度は265K、固形分25%だった。
【0066】
(B)架橋剤
(B1)イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トルエンジイソシアネート(コロネート−L:日本ポリウレタン社製)を使用した。
【0067】
(B2)イミド系架橋剤としてカルボジライト(登録商標)(V−09:日清紡ケミカル)を使用した。
【0068】
(c)シランカップリング剤
γ−グリシトキシプロピルメトキシシラン(KBM−403:信越化学工業社製)を使用した。
【0069】
<実施例1〜3及び比較例1〜4>
前記の各成分を下記表1の組成で混合し、エチルアセテート30重量部を加えて20分間攪拌して均一な混合液を製造した。製造された混合液は、偏光板に25μmの厚さにコーティングして72時間熟成した後、下記の方法で物性評価を行った。
【0070】
物性評価
(1)ゲル分率:下記数式1のように、常温(23℃)でサンプル1.0〜2.0gを48時間トルエン(20ml)に溶かし、24時間乾燥した後残った残量に対する質量を初期質量に対する百分率で表した。
【0071】
【数5】

【0072】
前記数式1において、Aは粘着剤組成物を常温(23℃)で48時間溶剤で溶解させ24時間乾燥させた後の残った質量、Bは粘着剤組成物の初期質量である。
【0073】
(2)外観:目視にて色及び透明度を評価した。
【0074】
(3)剥離強度:粘着剤−ガラス基板間180度剥離力は、JIS 2107規格によって測定した。試料を25mm×100mmの大きさに切断し、ガラス面に積層した後、それぞれを引張試験測定器(Texture Analyzer )を用いて30kgf荷重セルで粘着層とガラス基板を上下治具に連結した後、引張速度300mm/minの速度で剥離して剥離時の荷重を測定した。
【0075】
(4)リワーク性及び切断性の測定:粘着剤組成物がコーティングされた偏光板400mm×250mmをトムソンカッターで切断、粘着層の切られた断面を観察した後、ガラス基板に貼り合わせ、圧力を4〜5kg加えて試片を製作した。70℃で6時間放置した後、1時間以上常温で徐冷してリワーク(貼り合わせたガラス基板をはがす)してガラス基板面に粘着剤が転写しているかどうかを目視で確認した。
【0076】
○:切断面の粘着剤の取れ具合が良好(リワーク時の転写なし)
△:切断面の粘着剤の取れが多少あり(リワーク時の転写多少あり)
×:切断面の粘着剤の取れがあり(リワーク時の転写あり)
(5)光漏れ:偏光板を設置した液晶表示装置を駆動させた後、輝度測定装置を使用して1mの高さで表示パネル全面の輝度を測定した。そのうち、中央部と光漏れが表れるエッジ部の輝度の差により光漏れの程度を定量化した。下記式によるエッジ部と中心部間の輝度差(ΔL)を求めた。ΔL値が低いほど光漏れの防止に優れる。
【0077】
【数6】

【0078】
前記式中、a、b、d、eは、図1に示すように、光学部材各辺の端部から全体面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度であり、cは光学部材中央部の1/32の面積の平均輝度である。
【0079】
(6)クリープ:偏光板を接着面積1.5cm×1.5cmでガラス板に付着させ、常温放置3日後にクリープを評価した。クリープはUTM(Universal Test Machine )を利用して試片に3kgfの力を15分間加えて押し出された距離(mm)を測定した。
【0080】
(7)tack(gf):試片の粘着面上にプローブを200gfで押し付けた後、20秒維持させ、プローブを除去した時の力の変形を TA-アナライザ により測定した。温度は常温25℃基準である。
【0081】
(8)耐久信頼性:粘着剤組成物がコーティングされた偏光板100mm×175mmをガラス基板に合わせた後、圧力を4〜5kg加えて試片を製作した。試片の耐湿熱特性を把握するために60℃/90%相対湿度条件下で500時間放置した後、気泡や剥離が発生したか観察した。耐熱特性は、80℃で500時間放置した後実施した。二つの条件共に、常温で1時間以上放置した後、目視又は顕微鏡により観察した。熱衝撃は、−40℃で85℃まで100cycle行って常温で1時間放置した後、気泡や剥離が発生したか観察した。
【0082】
○:気泡や剥離現象なし
△:気泡や剥離現象多少あり
×:気泡や剥離現象あり
(9)貯蔵弾性率(dyne/cm2):粘着層を積層して、直径8mm、厚さ1mmの試片を製作し、レオメーターを利用して温度を20℃から120℃まで5℃/minの速度で上温しながら10rad/sで貯蔵弾性率を測定した。

【0083】
【表1】

【0084】
前記表1に示した通り、実施例1〜3の場合は、外観、剥離強度、リワーク性、光漏れ、クリープ性、粘着性及び信頼性等の物性のバランスが全て優れていることが分かる。しかし、ゲル分率と貯蔵弾性率が本発明の範囲から外れている比較例1〜4は、光漏れ現象が発生し、信頼性が低下した。
【0085】
本発明の単純な変形−変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施され得、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。
【符号の説明】
【0086】
a 光学部材一辺の端部から全体の面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度、
b 光学部材一辺の端部から全体の面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度、
c 光学部材中央部の1/32の面積の平均輝度、
d 光学部材一辺の端部から全体の面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度、
e 光学部材一辺の端部から全体の面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵弾性率が8×105〜1×108dyne/cm2で、下記数式1で表されるゲル分率が83〜95%の粘着剤組成物:
【数1】

前記数式1において、Aは粘着剤組成物を常温(23℃)で48時間溶剤で溶解させ、24時間乾燥させた後の残った質量、Bは粘着剤組成物の初期質量である。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート共重合体及び架橋剤を含み、前記(メタ)アクリレート共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート共重合体は、(A1)ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂50〜100重量%と、(A2)ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂0〜50重量%を含んでなることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤組成物.
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、ガラス転移温度が253.15〜423.15 Kのモノマーが共重合されたことを特徴とする請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ガラス転移温度が253.15〜423.15 Kのモノマーは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレートからなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ガラス転移温度が200K以上250K未満の(メタ)アクリレート樹脂(A1)は、重量平均分子量が800,000〜3,000,000g/molであり、前記ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、重量平均分子量が100,000〜1,200,000g/molであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記ガラス転移温度が250K以上300K以下の(メタ)アクリレート樹脂(A2)は、重量平均分子量が500,000〜1,200,000g/molであることを特徴とする請求項6に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリレート共重合体100重量部;架橋剤1〜10重量部;及びシランカップリング剤0.01〜5重量部を含むことを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記架橋剤は、イソシアネート架橋剤及びイミド系架橋剤を含むことを特徴とする請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記イソシアネート架橋剤と前記イミド系架橋剤の比率は、100〜350:1であることを特徴とする請求項9に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記架橋剤は、イソシアネート架橋剤3〜9重量部及びイミド系架橋剤0.01〜1重量部を含むことを特徴とする請求項9または10に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の粘着剤組成物を光学フィルムの片面又は両面の粘着剤層として含むことを特徴とする光学部材。
【請求項13】
前記光学部材は、下記式によるエッジ部と中心部間の輝度差(ΔL)が1未満であることを特徴とする請求項12に記載の光学部材:
【数2】

前記式中、a、b、dおよびeは、光学部材各辺の端部から全体面積の1/16の面積に該当する位置の平均輝度であり、cは光学部材中央部の1/32の面積の平均輝度である。


【図1】
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【公開番号】特開2012−140587(P2012−140587A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210719(P2011−210719)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】