説明

粘着性有機無機複合体ゲル、及びその製造方法

【課題】剥離の際の皮膚に対する痛みや角質剥離といったダメージが無く、皮膚のかぶれを生じさせず、且つ皮膚に対する接着力が良好である粘着性有機無機複合体ゲル、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが複合化して形成した三次元網目構造中に、大気中で60℃、且つ1気圧の開放系における1cm当たり、毎時0.1g以下(0.1g/cm・hr・60℃・1atm以下)の揮発性を示す水溶性の低揮発性化合物(C)及び/又は水を含有する粘着性有機無機複合ゲルであって、
該ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含することを特徴とする粘着性有機無機複合ゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土鉱物を含有する粘着性の有機無機複合体ゲルに関する。本発明の粘着性有機無機複合ゲルは、医療用途、美容用途等に適した粘着材料として使用可能である。
【背景技術】
【0002】
皮膚患部の保護、薬物の経皮吸収等を目的とするヒドロゲルを用いた生体用の粘着テープやシートが知られている。これらの用途では、皮膚への適度な接着力が要求されるが、それと同時に、剥離の際の皮膚に対する痛みや角質剥離といったダメージを与えないこと、皮膚のかぶれを生じないこと等が求められる。
【0003】
一般的な粘着材と呼ばれるポリアクリルエステル樹脂などに対するハイドロゲルの利点は皮膚に対する刺激性が低いことである。この理由として、一般的な粘着材は流動性が高く、そのため皮膚角質の深部まで浸透し、粘着材を剥離する際に角質と共に剥離してしまうこと、及び、疎水性が高いために皮膚からの発汗によって生じた水分を透過させることができず、これにより滞留した水分によって浸軟が生じやすくなるために、炎症などが起こりやすくなると考えられている。また、ハイドロゲルの場合、架橋により流動性が制限されているため角質深部までは浸透せず、剥離時も角質を剥離しにくく、また親水性が高いために皮膚上に水分が滞留しにくく、皮膚へのダメージが低いからとされている。しかし、通常、ヒドロゲルは粘着力が低いため、これを改善する種々の技術が報告されている。例えば、特許文献1では、重合性単量体と架橋性単量体を共重合させた高分子マトリックス内に、非架橋の水溶性高分子と水とが保持された粘着性ゲルに関する技術が開示されている。そして、その実施例では、アクリルアミド、水、グリセリン、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド、及び非架橋の水溶性高分子としてポリビニルピロリドンからなる混合組成物を重合したヒドロゲルが開示されている。
【0004】
しかしながら、この技術では、剥離の際の皮膚に対する痛みやダメージを防ぐことはできるものの、化学的に共有結合により架橋されたポリアクリルアミドを用いているため、柔軟性、伸縮性が不十分であり、皮膚に対する密着性、特に、顔面等の凹凸や関節等の屈曲部に対する追従性を更に改善する必要があった。
【0005】
一般に、ゲル材料として十分な強度を保つために共有結合による架橋を増加させると、高分子粘着力が低下する。これを解消するため粘着性に寄与する成分を添加してゲルを合成するため、粘着性を必要とするゲル表面のみならず内部まで同一の成分組成となり、結果的に添加した粘着性成分によりゲル強度が低下するといったトレードオフの問題があった。
【0006】
ところで、粘土鉱物を用いたゲルとして、水溶性有機モノマーから得られる有機高分子と水膨潤性粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目を有し、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチエレングリコール等の低揮発性媒体を含む有機無機複合ヒドロゲルが知られている(特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2で開示された発明は、均一性、透明性、柔軟性、強靱性などを有し、且つ大気開放系において、従来のヒドロゲルと比べて安定して使える特徴を有する有機無機複合高分子ゲルに関するものであるが、粘着性を有しておらず、生体用の粘着テープやシートとして用いる技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−96431号公報(実施例1)
【特許文献2】特開2006−28446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、剥離の際の皮膚に対する痛みや角質剥離といったダメージが無く、皮膚のかぶれを生じさせず、且つ皮膚に対する接着力が良好である粘着性有機無機複合体ゲル、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究に取り組んだ結果、水溶性有機モノマーから得られる重合体と水膨潤性粘土鉱物とからなる三次元網目を有する高分子ゲル中に水溶性の低揮発性化合物又は水を含有させ、更に、該ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子を包含させた粘着性有機無機複合ゲルにより上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが複合化して形成した三次元網目構造中に、大気中で60℃、且つ1気圧の開放系における1cm当たり、毎時0.1g以下(0.1g/cm・hr・60℃・1atm以下)の揮発性を示す水溶性の低揮発性化合物(C)及び/または水を含有する粘着性有機無機複合ゲルであって、
該ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含することを特徴とする粘着性有機無機複合ゲルを提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記の粘着性有機無機複合ゲルの製造方法であって、
水溶性ラジカル重合性モノマーと、水膨潤性粘土鉱物(B)と、水溶性の低揮発性化合物(C)及び/または水とを含む溶液を調製し、
該水溶性ラジカル重合性モノマーを重合することにより、該水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが形成する三次元網目中に該水溶性の低揮発性化合物(C)及び/または水を含有する有機無機複合ゲルを製造し、
該有機無機複合ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を接触させることにより、該有機無機複合ゲルの表面全体又は一部に該アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含させることを特徴とする粘着性有機無機複合ゲルの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着性有機無機複合ゲルは、柔軟性に優れた有機無機複合体ゲルを用いているため、伸縮性及び弾力性が良好であり、皮膚に対する密着性、特に、顔面の凹凸や関節等の屈曲部に対する追従性に優れている。さらに、ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含するため、皮膚に対する良好な接着力が得られ、しかも、剥離の際の皮膚に対する痛みや角質剥離といったダメージが無く、皮膚のかぶれを生じさせない。
【0014】
本発明において、アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)により良好な粘着性が得られる理由は明らかではないが、アミド結合を有する水溶性高分子(D)が有機無機複合ゲルの三次元網目構造に入り込み、水素結合で水膨潤性粘土鉱物(B)と多重架橋している重合体(A)の前記水素結合を断つことにより架橋度を低下させ、水膨潤性粘土鉱物(B)の表面に片末端が固定された水溶性高分子(D)の高分子鎖(グラフト高分子鎖)が生成し、このグラフト高分子鎖が水または水溶性低揮発性媒体(C)共存下で粘着性を発現させているものと推測している。
【0015】
また、本発明の粘着性有機無機複合ゲルの製造方法では、ゲルに粘着性を発現させる成分である水溶性有機高分子(D)のゲル表面への添加をゲル製造後の後処理として行なうので、粘着性を任意の表面部分だけに発現させることができる。一般にゲルの粘着性は、ゲル製造の際に粘着性化合物を入れるため、表面にだけ粘着性を発現させることは難しく、ゲル自体の強度とのバランスから設計の自由度が狭い。また、本発明と同様にゲル製造後の後工程により表面から粘着性に寄与する化合物を入れたとしても、該化合物が表面に安定的に留まらず、ゲル内部に拡散してしまい、粘着力の低下を引き起こす。しかしながら、本発明の有機無機複合ゲルではゲルの力学的物性が変化すること無く、粘着性を発現することができる。その機構は必ずしも明らかではないが、ゲル表面に浸透した水溶性有機高分子(D)が表面部分の粘土鉱物となんらかの相互作用により固定化されて表面部分に留まるためであると推定される。また、本製造法は、粘着性の付与を表面のみの処理でおこなうため、結果として粘着を付与するための原料を最小限にできるという特徴をもっている。
【0016】
ヒドロゲルを用いた貼付剤としては、一般的に高い吸水性を有するポリアクリル酸ナトリウムやポリアクリル酸ナトリウムとポリアクリル酸エステルとの共重合体が用いられる。このポリアクリル酸やその塩は、たとえば水酸化アルミニウム等の多価金属塩で架橋することにより力学的な強度を増加させて用いられる。また、このポリアクリル酸若しくはポリアクリル酸塩以外には、キサンタンガム、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーン、寒天、カラギーナン、ポリビニルアルコール等も使用されている。しかしながら、これらのヒドロゲルは貼付材として使用するには強度が不十分であり、ポリエチレンやポリウレタンなどのシートや不織布からなる支持体を積層して使用しなければならない。
本発明の粘着性有機無機複合ゲルは上記のような効果を有するので、創傷被覆材、湿布剤、生体に貼付するサージカルテープ、心電図電極やその他センサー類の固定用テープ等の貼付材、剥離を目的とした工業用テープ等に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(有機無機複合ゲル)
本発明で製造する有機無機複合ゲルは、水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物(B)と、水とを必須の構成成分とし、水溶性有機高分子と水膨潤性粘土鉱物が分子レベルで複合化された三次元網目の中に水溶性の低揮発性化合物(C)又は水を取り込んだゲルである。
【0018】
(水溶性ラジカル重合性モノマー及びその重合体(A))
本発明で使用する水溶性ラジカル重合性モノマーは、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物(B)と相互作用を有し、非共有結合を形成できるものが好ましく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性ラジカル重合性モノマーとしては、具体的には、アミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが挙げられ、なかでもアミド基やエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが好ましい。特にアクリルアミド系モノマーが好ましい。
【0019】
アミド基を有する水溶性ラジカル重合性モノマーの具体例としては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、または、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類が挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。またエステル基を有する重合性ビニル基含有水溶性有機モノマーの具体例としては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
【0020】
また、かかる水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)としては、単一の(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体や(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体の他、これらから選ばれる複数の異なる水溶性有機モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効である。また上記の水溶性有機モノマーとそれ以外の有機溶媒可溶性の重合性不飽和基含有有機モノマーとの共重合体も、得られた重合体が水溶性や親水性を示すものであれば使用することができる。
【0021】
(水膨潤性粘土鉱物(B))
本発明で用いる水膨潤性粘土鉱物(B)は、水に膨潤し、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。中でも水膨潤性ヘクトライトや水膨潤性サポナイトを用いると有機無機複合ゲルの透明性が優れ、好ましい。
【0022】
(水溶性の低揮発性化合物(C))
本発明で使用する水溶性の低揮発性化合物(C)は、大気中60℃、且つ1気圧の開放系における1cm当たり、毎時0.1g以下(0.1g/cm・hr・60℃・1atm以下)の揮発性を示す化合物である。中でも水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)からなる三次元網目の中に均一に含まれるものが好ましく、揮発性が60℃・1気圧の開放系において1cm・1時間当たり0.05g以下が好ましく、0.01g以下がより好ましく、0.001g以下のものが特に好ましい。最も好ましいのは、室温(10〜30℃)において殆ど揮発しないものである。また、人体に対して毒性を有さないものが好ましい。具体的には、グリセリン(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)(括弧内は揮発性)、ジグリセリン(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)、エチレングリコール(0.01g/cm・hr・60℃・1atm)、プロピレングリコール(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)、ポリエチレングリコール(PEG400)(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)等が好ましく、これらから選ばれる一種または複数を用いるのが好ましい。より好ましくは、グリセリン及びジグリセリンであり、特に好ましくはグリセリンである。ちなみに水の揮発性は約0.28g/cm・hr・60℃・1atmである。
【0023】
(アミド結合を有する水溶性有機高分子(D))
アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)としては、分子量150,000以下のポリ−N−ビニルアミド誘導体であることが好ましく、分子量4,000〜58,000がより好ましく、10,000〜34,000が特に好ましい。具体的な化合物としては、それぞれN−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドのホモポリマーであるポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−ビニルホルムアミド(PVFm)、ポリ−N−ビニルアセトアミド(PVAm)等が好ましく、産業上の入手のし易さや生物学的安全性の点からポリ−N−ビニルピロリドンがより好ましい。ここでいう分子量とは重量平均分子量であり、光散乱法によって求めた値である。また、ポリ−N−ビニルピロリドンにおいて、粘度指標であるK値は分子量4,000で10〜14、分子量10,000で16〜18、分子量58,000で29〜32である。
【0024】
また、かかるアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)としては、単一のポリ−N−ビニルアミド誘導体の他、これらから選ばれる複数の異なる水溶性有機モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効である。また上記のN−ビニルアミド誘導体とそれ以外の有機溶媒可溶性の重合性不飽和基含有有機モノマーとの共重合体も、得られた重合体が水溶性や親水性を示すものであれば使用することができる。
【0025】
(製造方法)
本発明の粘着性有機無機複合ゲルの具体的な製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(4)の工程を順次行なう製造方法がある。
(1)水溶性ラジカル重合性モノマーと水膨潤性粘土鉱物(B)とを水中、水溶性の低揮発性化合物(C)中、または水と水溶性の低揮発性化合物(C)の混合液中に分散させ、更に、重合開始剤及び触媒を混合させ反応液を調製する工程、
(2)前記反応液をガラス製密閉容器に充填し、重合させる工程
(3)前記重合により得られた有機無機複合ゲルに必要に応じて水溶性の低揮発性化合物(C)を包含させ、または、水分量を調整するために脱水乾燥する工程
(4)前記で得られる有機無機複合ゲルの表面全体又は一部表面にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を接触させることにより、該有機無機複合ゲルの表面全体又は一部に該アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含させる工程
【0026】
(有機無機複合ゲルの製造)
上記(1)における工程では、水溶性ラジカル重合性モノマーと水膨潤性粘土鉱物(B)とを水中、水溶性の低揮発性化合物(C)中、または水と水溶性の低揮発性化合物(C)の混合液中に入れ、均質混合溶液を調製した後、水溶性ラジカル重合性モノマーを重合させて、水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との沈殿物やゲル状の有機無機複合ゲルを製造する。
【0027】
水溶性ラジカル重合性モノマーは、活性アルミナカラムを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用することが好ましく、重合開始剤は約2%の濃度に純水で希釈し、水溶液にして使用することが好ましく、水は、イオン交換水を蒸留した純水を用い、高純度窒素を予めバブリングさせ、含有酸素を除去してから使用することが好ましい。
【0028】
更に、本発明の有機・無機複合高分子ゲルの製造方法としては、幾つかの方法が可能である。例えば、有機高分子(A)の重合原料である水溶性のラジカル重合性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物(B)と水と低揮発性媒体(C)を含む均一溶液または均一分散液を調製した後、水溶性有機モノマーを重合させることで、低揮発性媒体(C)を含む有機・無機複合高分子ヒドロゲルを製造する方法、また、有機高分子(A)の重合原料である水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物(B)と水を含む均一溶液または均一分散液を調製した後、水溶性有機モノマーを重合させ、有機高分子(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)からなる三次元網目ネットワークを形成させた後、得られたヒドロゲルを低揮発性媒体(C)または低揮発性媒体(C)を含む液に含浸させて少なくとも一部の媒体を低揮発性媒体(C)とする方法が用いられる。更に、これらのいずれの場合に対しても、得られた有機・無機複合高分子ヒドロゲルから低揮発性媒体(C)以外の媒体を、例えば乾燥などの方法により除去して、媒体中の低揮発性媒体(C)濃度を上げることによる製造方法も好ましく用いられる。
【0029】
なお、本発明の粘着性有機無機複合ゲルでは、下記(1)〜(3)のいずれの場合であっても、アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)をゲルの表面全体又は一部に包含させる工程を行なうことによって粘着性を発現させることができるが、(3)の有機無機複合ヒドロゲルが最も強い粘着性を発現するので、好ましい。
(1)水を含有するが低揮発性媒体(C)を含有しない有機無機複合ヒドロゲル
(2)水を含有せずに低揮発性媒体(C)を含有する有機無機複合ゲル
(3)水と低揮発性媒体(C)を共に含有する有機無機複合ヒドロゲル
(重合開始剤および重合触媒)
工程(2)で水溶性ラジカル重合性モノマーを重合させる際に使用する重合開始剤および触媒としては、慣用のラジカル重合開始剤および触媒のうちから適宜選択して用いることができる。好ましくは水に分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが用いられる。特に好ましくは層状に剥離した粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤である。具体的には、重合開始剤として水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有する水溶性のラジカル開始剤なども用いられる。
また触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが用いられる。重合温度は、用いる水溶性有機高分子、重合触媒および開始剤の種類などに合わせて0℃〜100℃の範囲に設定する。
【0030】
(各成分の使用量)
本発明の粘着性有機無機複合ゲルにおける水溶性のラジカル重合性有機モノマー重合体(A)に対する水膨潤性粘土鉱物(B)の質量比(B/A)は、0.05〜2.0であることが好ましく、より好ましくは、0.07〜1.0、特に好ましくは、0.1〜0.5である。
【0031】
また、粘着性有機無機複合ゲルに含有される水膨潤性粘土鉱物(B)の質量割合は、1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは3〜8質量%である。
【0032】
更に、重合を行う際の水溶性の低揮発性化合物(C)又は水の使用量は使用するモノマーや粘土鉱物の種類や量、使用目的などにより異なるため一概には規定できないが、通常、水溶性ラジカル重合性モノマーと水膨潤性粘土鉱物(B)の合計質量100質量部に対して、水溶性の低揮発性化合物(C)又は水は200〜10000質量部、好ましくは250〜5000質量部が使用される。
【0033】
低揮発性媒体(C)と重合体(A)との質量比(C)/(A)は、0.1〜10であることが好ましく、1〜5あることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。(C)/(A)がこの範囲であると、ゲル本来が有する特徴である柔軟性が良好であり、且つゲル材表面の粘着力が発現する。(C)/(A)がこの範囲より小さい場合には、ゲルの凝集力が強すぎるため、柔軟性と表面の粘着力が低下する。また(C)/(A)がこの範囲より大きい場合には、柔軟性は増すものの、粘着特性に必要な凝集力が不足するため粘着力が低下する。
【0034】
有機無機複合ゲルの表面全体又は一部に包含させるアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)の質量割合は、ゲル表面積に対して0.1〜2mg/cmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1mg/cmである。水溶性有機高分子(D)の使用質量割合が好ましい範囲より小さい場合には有効な粘着力が発現せず、また、大きい場合には糊残りが生じる。この原因として、水溶性有機高分子(D)の質量割合が小さい場合には、有機無機複合ゲルの三次元網目構造に入り込んだ際に、水膨潤性粘土鉱物(B)の表面に片末端が固定されて生成する水溶性高分子(D)の高分子鎖(グラフト高分子鎖)も少なく、粘着力が発現しない。また、大きい場合には水膨潤性粘土鉱物(B)の表面に固定できる水溶性高分子(D)の量が過多となり、結果として固定化できなかった水溶性高分子(D)が糊残りとなる。
【0035】
(その他の溶媒)
なお、本発明で使用する水としては、水単独以外に、水と混和する有機溶媒との混合溶媒であり、水を主成分とするものが含まれる。
水と混和する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0036】
(水溶性有機高分子(D)を包含させる方法)
水溶性有機高分子(D)を有機無機複合ゲルの表面に包含させる方法は、以下に示す処理によって達成することが出来る。水溶性有機高分子(D)を水あるいは水溶性の低揮発性化合物(C)または水と水溶性の低揮発性化合物(C)の混合物に溶解した溶液をゲル表面に接触させ、ゲル内部へ含浸させる。水溶性有機高分子の溶液をゲル表面に接触させる方法としては、スプレー法、コーターを用いた塗布法などがあげられるが、必ずしも限定するものではなく、溶液粘度や塗布量によって最適な方法を選択することが出来る。
【0037】
ゲル内部へ水溶性有機高分子(D)を含浸させる場合、水溶性有機高分子(D)の分子量を適宜選択することにより浸透の早さや深さを調整することができる。例えば、低分子量の水溶性有機高分子(D)は、有機無機複合ゲルの三次元網目構造内へ深く速やかに浸透し、高分子量の水溶性有機高分子(D)は緩やかに浸透する。したがって、所期の粘着力を発現させるため、水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)の組成比率に応じて、水溶性有機高分子(D)の分子量を適宜選択するとよい。
【0038】
また、水溶性有機高分子(D)を有機無機複合ゲルの三次元網目構造内へ浸透させた後に、水溶性有機高分子(D)を水膨潤性粘土鉱物(B)に担持させるため、加熱処理を行なうことが好ましい。そうすることにより有機無機複合ゲルが粘着性を発現しやすくなる。
加熱処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、水溶性有機高分子(D)を含浸させた有機無機複合ゲルの表面に離型処理を施したセパレータフィルムを貼付し、該表面を加熱処理することによって有機無機複合ゲルの表面近傍に浸透した水溶性高分子(D)を水膨潤性粘土鉱物(B)に担持させることができる。
【0039】
具体的な加熱処理方法としては、低揮発性化合物(C)のみを含有する有機無機複合ゲルでは熱風乾燥機等の加熱空気による方法が使用でき、水を含む有機無機複合ゲルの場合、水分の気化による乾燥を防止するため、オートクレーブや恒温恒湿機等の湿熱加熱による方法が好ましい。
【0040】
加熱処理の条件は、水を含まない水溶性の低揮発性化合物(C)のみを含有する有機無機複合ゲルの場合、使用する低揮発性化合物(C)の沸点以下の加熱条件であることが好ましく、沸点より10〜30℃低い温度であることがより好ましい。また、水を含む有機無機複合ゲルの場合、ゲル中の水を蒸発させない程度の温度及び装置であれば特に限定されないが、上記湿熱加熱装置を用い、加熱部分が40〜90℃になる加熱条件であることが好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜85℃が特に好ましい。
【実施例】
【0041】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
内部を窒素置換した100mLの丸底フラスコに、純水30.2gとグリセリン18.6gからなる均一水溶液に、水膨潤性粘土鉱物(B)として1.2gのラポナイトXLG(ROCKWOOD社製)を加え、無色透明の溶液を調製した。この溶液を氷冷した後、N、N−ジメチルアミノアクリルアミド(DMAA;株式会社興人製)5.0gを添加し、次いで、触媒としてテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)20μLを加え、次いで、予め調製した2%ペルオキソ二硫化カリウム(KPS:関東化学株式会社製)水溶液1.25gを撹拌下で加えた。厚さ2mm、幅5mmのブチルゴムをスペーサとし、15cm×15cmのガラス板2枚を用いてゲルシート調製容器を作成した。反応溶液を窒素雰囲気下でゲルシート調製容器中に入れた。尚、ゲルシート調製容器内への溶液の導入は窒素雰囲気としたグローブボックス内で行った。20℃で24時間保持することで重合を進行させた。得られたゲルは無色透明であり、十分な強度と伸縮性を有するゲルであった。得られたゲルは、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)と水膨潤性粘土鉱物からなる三次元網目を有し、媒体の30質量%が低揮発性媒体(グリセリン)で残りの媒体が水からなる、柔らかさと強靱性を併せ持つ無色透明の有機・無機複合高分子ゲルであった。次いで、ゲルを60℃で一定質量になるまで乾燥することにより、水分が除去され、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)と水膨潤性粘土鉱物とグリセリンからなる均一透明な有機・無機複合高分子ゲルが得られた。得られたゲルの片面(196cm)に、予め調製した3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液(平均分子量34,000;ISP社製)2.0gを塗布し、ゲル内部に浸透させた。塗布面にシリコンで離型処理されたポリエステルフィルム(PET、38μm)を貼付し、80℃で1時間保持することにより、ゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルが得られた。該ゲルはグリセリンのみ含有し、グリセリンの有機高分子に対する質量比率は3.0であった。また粘土鉱物の有機高分子に対する質量比率は0.24であった。
【0042】
(実施例2)
最初の均一水溶液として水とグリセリンの水溶液を用いる代わりに、水のみを48.8g用いる以外は、実施例1と同様にして、有機・無機複合高分子ヒドロゲルを調製した。得られた、均一透明なヒドロゲルシートを10cm×10cmにカットし、15cm×15cm角のポリスチレンケース内に入れ、85%グリセリン8.6gを上面から吸収させた。ポリスチレンケース内で1日間保持した。60℃で質量一定になるまで乾燥することにより、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)と水膨潤性粘土鉱物とグリセリンからなる有機・無機複合高分子ゲルが得られた。得られたゲルの片面(196cm)に、予め調製した3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液(平均分子量34,000;ISP社製)2.0gを塗布し、ゲル内部に浸透させた。塗布面にシリコンで離型処理されたポリエステルフィルム(PET、38μm)を貼付し、80℃の熱風乾燥機内で1時間保持することにより、ゲル表面に粘着が付与された有機・無機複合高分子ゲルが得られた。該ゲルはグリセリンのみを含有し、グリセリンの有機高分子に対する質量比率は3.0であった。また粘土鉱物の有機高分子に対する質量比率は0.24であった。
【0043】
(実施例3、4)
3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液を0.6g(実施例3)、または6.7g(実施例4)を除き、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルを製造した。該ゲルはグリセリンのみ含有するゲルであった。
【0044】
(実施例5〜7)
3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−12水溶液を(実施例5)、または3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−30水溶液を(実施例6)、または、3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−90水溶液を(実施例7)使用したことを除き、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルを製造した。該ゲルはグリセリンのみ含有するゲルであった。
【0045】
(実施例8、9)
水膨潤性粘土鉱物(ラポナイトXLG)と含浸させる85%グリセリンは、各々2.0gと9.6g(実施例8)、または2.8gと10.5g(実施例9)としたことを除き、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルを製造した。該ゲルはグリセリンのみ含有し、グリセリンの有機高分子に対する質量比率は3.0であった。また粘土鉱物の有機高分子に対する質量比率は0.4または0.56であった。
【0046】
(実施例10)
グリセリンを吸収させずヒドロゲルのままで3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液を包含させ、恒温恒湿器を用いて80℃、湿度95%条件で加熱処理したことを除き、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ヒドロゲルを製造した。該ゲルは水のみ含有するゲルである。
【0047】
(実施例11)
3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液を包含させた後の加熱処理条件を、熱風乾燥機を用いた80℃の代わりにオートクレーブを用いた80℃での湿熱加熱を除くと、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルが得られた。該ゲルはグリセリン及び水を含有し、グリセリンの有機高分子に対する質量比率は3.0、水分の有機高分子に対する質量比率は1.0であった。
【0048】
(実施例12)
調製した有機・無機複合高分子ヒドロゲルシート(10cm×10cm)に吸収させるグリセリンの代わりにポリエチレングリコール400(PEG400;三洋化成社製)を使用することを、および、3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液を包含させた後の加熱処理条件を、熱風乾燥機を用いる代わりにオートクレーブを用いた湿熱加熱で行うことを除くと、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルが得られた。該ゲルはグリセリン及び水を含有し、ポリエチレングリコール400の有機高分子に対する質量比率は3.0、水分の有機高分子に対する質量比率は1.0であった。
【0049】
(実施例13)
粘着性を発現させる為に包含させたポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液の代わりにポリ−N−ビニルホルムアミド水溶液を使用することを、包含させた後の加熱処理条件を、熱風乾燥機を用いる代わりにオートクレーブを用いた湿熱加熱で行うことを除くと、実施例2と同様にしてゲル表面に粘着性が付与された有機・無機複合高分子ゲルが得られた。該ゲルはグリセリン及び水を含有し、グリセリンの有機高分子に対する質量比率は3.0、水分の有機高分子に対する質量比率は1.0であった。
【0050】
(比較例1)
水膨潤性粘土鉱物の代わりにN,N−メチレンビスアクリルアミド0.21gを使用したことを除き、実施例1と同様にして無色透明な有機架橋高分子ゲルを製造した。
【0051】
(比較例2)
水膨潤性粘土鉱物の代わりにN,N−メチレンビスアクリルアミド0.21gを使用したことを除き、実施例2と同様にして無色透明な有機架橋高分子ゲルを製造した。
【0052】
(比較例3)
3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液を塗布しないことを除き、実施例1と同様にして有機・無機複合高分子ゲルを製造した。
【0053】
(比較例4)
3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液を塗布しないことを除き、実施例2と同様に有機・無機複合高分子ゲルを製造した。
【0054】
(比較例5、6)
3%ポリ−N−ビニルピロリドンK−25水溶液の代わりに、3%ポリビニルアルコール(ケン化度88%;日本合成化学社製EG−05)2.0gを(比較例5)、そして2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液(HPMC;信越化学社製メトローズSH−60SH−15)3.0gを(比較例6)使用したことを除き、実施例2と同様にして有機・無機複合高分子ゲルを製造した。
【0055】
(対皮膚粘着力)
人皮膚に対する粘着力を測定するため、実施例及び比較例の試験片1の粘着面を人皮膚に貼付し、5分間静置後、JIS−Z0237の測定条件に準じて90度剥離粘着力を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0056】
(粘着面からの水溶性高分子(D)の糊残り評価)
上記、実施例1〜11と比較例1〜6の高分子ゲルを、40mm角に切り出してサンプル片とした。あらかじめ水洗し、清潔なタオルで水分を拭き取った人の内腕にサンプル片を貼付し、5分静値した後、ゲルを剥ぎ取り、皮膚表面への糊残り物の有無を評価した。この結果を表1及び表2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
(皮膚かぶれのモニターテスト)
実施例11の試料について、モニターテストにより皮膚に対する刺激性を調べた。
【0060】
[試験方法]
無作為に抽出した年齢18〜40歳の女性10名を被験者にし、実施例11の試料と市販のアクリル粘着剤を付したポリウレタン製フィルムドレッシング材をそれぞれ左右の内腕部に貼付し、3時間後の皮膚の状態を以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表3に示す。
【0061】
スコア 皮膚の状態
0 : 紅斑なし
1 : 極く軽度の紅斑
2 : 明らかな紅斑
3 : 中程度から強い紅斑
【0062】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが複合化して形成した三次元網目構造中に、大気中で60℃、且つ1気圧の開放系における1cm当たり、毎時0.1g以下(0.1g/cm・hr・60℃・1atm以下)の揮発性を示す水溶性の低揮発性化合物(C)及び/または水を含有する粘着性有機無機複合ゲルであって、
該ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含することを特徴とする粘着性有機無機複合ゲル。
【請求項2】
前記水溶性の低揮発性化合物(C)が、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチエレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる一種以上である請求項1記載の粘着性有機無機複合ゲル。
【請求項3】
前記低揮発性媒体(C)と重合体(A)との質量比(C)/(A)が0.1〜10である請求項1又は2記載の粘着性有機無機複合ゲル。
【請求項4】
前記水溶性ラジカル重合性モノマーが、N−置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換アクリルアミド誘導体、N−置換メタクリルアミド誘導体及びN,N−ジ置換メタクリルアミド誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の粘着性有機無機複合ゲル。
【請求項5】
前記アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)が、分子量150,000以下のポリ−N−ビニルアミド誘導体である請求項1〜4のいずれかに記載の粘着性有機無機複合ゲル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の粘着性有機無機複合ゲルを用いた医療用部材。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の粘着性有機無機複合ゲルを用いた貼付剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の粘着性有機無機複合ゲルの製造方法であって、
水溶性ラジカル重合性モノマーと、水膨潤性粘土鉱物(B)と、水溶性の低揮発性化合物(C)及び/または水とを含む溶液を調製し、
該水溶性ラジカル重合性モノマーを重合することにより、該水溶性ラジカル重合性モノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが形成する三次元網目中に該水溶性の低揮発性化合物(C)及び/または水を含有する有機無機複合ゲルを製造し、
該有機無機複合ゲルの表面全体又は一部にアミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を接触させることにより、該有機無機複合ゲルの表面全体又は一部に該アミド結合を有する水溶性有機高分子(D)を包含させることを特徴とする粘着性有機無機複合ゲルの製造方法。

【公開番号】特開2012−36226(P2012−36226A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174375(P2010−174375)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)一般財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】