説明

粘着性組成物

初期タック、長期の粘着性、水分取り込みおよび半透明特性が改善され、そして溶融押し出しにより調製することができる粘着性組成物について記載する。これらの組成物の使用、例えば水疱パッドおよび創傷被覆材としてのその使用もまた記載する。本発明の1つの態様は疎水性ポリマー;弾性可塑剤;粘着樹脂;親水性ポリマー;親水性ポリマーに水素結合できる相補的ポリマー;および粘土粒子を含む粘着性組成物に関する。本発明のさらに別の態様は本発明の粘着性組成物の皮膚接触層および裏打ち層を含んでなる皮膚に適用するための粘着性クッションに関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に皮膚に接触する粘着性組成物に関し、そしてさらにとりわけ水疱パッチまたは個体の皮膚またはその他の身体表面に適用される類似物を含む多様な局面で有用な新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
種々の型の包帯および創傷被覆材が公知であり、そして創傷、火傷および水疱を保護するために用いられる。典型的には創傷浸出液が除去されそして創傷が乾燥し、治癒を促進するように、創傷被覆材は吸収材料で製造される。創傷被覆材はまた抗生物質、局所麻酔薬等のような1つまたはそれより多い薬理学的に活性な薬剤を含有できる。通常使用される創傷被覆材はガーゼおよびコットンパッドのような繊維性材料を含み、これはそれらが吸収性である点では有利であるが、繊維が創傷または新たに形成された組織に粘着して除去時に創傷損傷を引き起こし得る点で問題である。その他の創傷被覆材は発泡体およびスポンジで調製されているが、これらの材料の吸収性はしばしば限定的である。さらに、かかる創傷被覆材はそれ自体粘着性ではないので粘着テープの使用を必要とする。最後に、多くのこれらの創傷被覆材は半透明または透明ではなく、したがって被覆材を除去しないで治癒をモニタリングすることが困難になっている。
【0003】
慣用される繊維性創傷被覆材の吸収性を改善するために、水膨潤性ポリマーまたは「ヒドロゲル」が創傷に適用するためのガーゼまたはその他の繊維性材料に組み込まれている。例えばShahらに対する特許文献1は親水性および疎水性双方のセグメントを含有する熱可塑性ヒドロゲル形成コポリマーを含浸させたコットンガーゼのような繊維性材料から作られた、複合材料について記載している。創傷被覆材は吸収能力が増大されていると記載されているが、創傷または新たに形成された組織に対する繊維の粘着は深刻な不都合を残している。
【0004】
別の研究法はガーゼ、コットン等の代わりに水膨潤性ポリマー材料を用いることであった。かかる材料で作られた創傷接触表面は従来の繊維性材料よりも吸収性であるだけでなく、創傷治癒の間および創傷被覆材の除去時の繊維粘着の危険性がないという点でも有利である。かかる創傷被覆材は例えばSamuelsenに対する特許文献2に開示されており、それは水不溶性、粘性、弾性結合剤と混和したまたはそれに分散した水溶性または水膨潤性親水コロイドから作られた吸収性創傷接触組成物の使用について記載している。Sorensenらに対する特許文献3は造瘻装置のためのシーリング剤としての「親水コロイド硬膏剤」について記載しており、その材料はそこに分散された水溶性または水膨潤性ポリマーからなる不連続相を伴う、疎水性感圧接着剤、弾性可塑剤、および粘着樹脂から作られた連続した疎水性相からなる。かかる硬膏剤はまたNaestoftらに対する特許文献4にも記載されている。Wulffらに対する特許文献5は水不溶性、水膨潤性の架橋セルロース誘導体、アルギン酸塩および水からなるいくらか異なる型の親水コロイド創傷ゲルについて記載している。
【0005】
例えばChangらに対する特許文献6に記載されるように、ヒドロゲル包帯もまた創傷被覆材に用いられている。ヒドロゲル包帯は液体吸収架橋ポリマーから作られ、そして使用前に高い水分含量を有する。高い水分含量はヒドロゲルにほとんどまたは全く粘着性を呈さなくさせ、スペンコメディカル社(英国)から入手可能な2nd Skin(登録商標)被覆材のような粘着テープまたは硬膏剤の使用を必要とする。
【0006】
しかしながら、当分野における進歩にかかわらず、親水コロイドおよびヒドロゲルで作られたゲルベースの創傷被覆材で多くの問題に直面し続けている。その理由は一部には理想的な材料に関する相反する要件が存在するという点である。材料は創傷に粘着する傾向があり、そしてしたがって除去時に痛みまたはさらなる損傷を引き起こすほどに粘着性であってはならない。しかしながら、創傷被覆材は別個に粘着テープおよび粘着性硬膏剤を必要としないように身体表面に十分に粘着すべきである。周縁に接着剤を用いることができるが、さらなる製造工程を必要とする。加えて創傷被覆材は運動している間および静止時の双方で皮膚またはその他の身体表面の輪郭に合致すべきである。クッションパッドとしても提供される創傷被覆材に関しては、粘着性を全く喪失しない結合力の強い材料を用いるべきである。
【0007】
これらの多くの問題はClearyらに対する特許文献7およびKulichikhinらに対する特許文献8に記載される粘着性組成物により取り組まれている。しかしながら当分野におけるこれらの進歩にかかわらず、瞬間タックおよび長期間皮膚粘着性、高い液体処理能力、高い結合力、低いコールドフロー、少ない浸食、制御された能動送達、製造可能性の容易さ、ならびに半透明性を提供する自己粘着性被覆材に関する必要性が依然として存在している。本発明はこれらの必要性に取り組み、そして特許文献7に記載される処方と比較してコールドフローに対する抵抗性の増加および乾燥皮膚に対するより良好なタックを有する処方を提供する。特許文献8に記載される処方もまたかかる特性を有するが、本処方により粘着性の喪失なく高い水分取り込みが提供される。
【特許文献1】米国特許第5,527,271号明細書
【特許文献2】米国特許第4,867,748号明細書
【特許文献3】米国特許第4,231,369号明細書
【特許文献4】米国特許第5,643,187号明細書
【特許文献5】米国特許第6,201,164号明細書
【特許文献6】米国特許第4,093,673号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開番号第2003/0170308号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開番号第2003/0225356号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
本発明の1つの態様は疎水性ポリマー;弾性可塑剤;粘着樹脂;親水性ポリマー;親水性ポリマーに水素結合できる相補的ポリマー;および粘土粒子を含む粘着性組成物に関する。
【0009】
本発明の別の態様はポリイソプレン系、ブチルゴムスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類から選択される疎水性ポリマー;スチレンベースの可塑剤、低分子量ポリイソブチレン系、低分子量ポリイソプレンゴム類およびその組み合わせから選択される弾性可塑剤;水素化された炭化水素樹脂類、炭化水素樹脂類および合成ポリテルペン樹脂類から選択される粘着樹脂;親水性ポリマーはポリ(N−ビニルラクタムラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、およびそのコポリマーおよび混和物から選択され;低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;ならびにフィロケイ酸塩粒子を含んでなる粘着性組成物に関係する。
【0010】
本発明のさらに別の態様は本発明の粘着性組成物の皮膚接触層および裏打ち層を含んでなる皮膚に適用するための粘着性クッションに関係する。
【0011】
本発明のなお別の態様は、身体接触表面および外側に面した非密封裏打ち層を有する身体に面した層の積層複合材を含んでなる創傷被覆材に関し、ここで身体接触表面の少なくとも一部は本発明の粘着性組成物からなる。
【0012】
本発明の別の態様は治療上有効量の活性薬剤を含有する薬物レザバ、外側に面した裏打ち層、および本発明の粘着性組成物を含んでなる、身体表面に装置を固定するための手段からなる経皮薬物送達装置に関する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は:ポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、およびそのコポリマーおよび混和物から選択される親水性ポリマー;低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;ならびに粘土粒子を含んでなる緩徐に溶解するフィルムに関する。
【0014】
本発明の別の態様は:ポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、およびそのコポリマーおよび混和物から選択される親水性ポリマー;低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;水膨潤性水不溶性ポリマー;ならびに粘土粒子を含む緩徐に溶解するフィルムに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は以下のVの部分で詳記するように多くの適用において有用性が見出される粘着性組成物である。特に湿潤および耐力条件下での皮膚接触性粘着特性により、水疱の処置および足の手当に用いられる医療用フィルムに関して特に有用性が見出される。例えば粘着剤を足底、足指または足の任意のその他の位置に適用して、クッション効果を提供することによりたこ、魚の目、腱膜瘤または水疱により引き起こされる痛みを処置することができる。
【0016】
粘着性組成物は:疎水性ポリマー;弾性可塑剤;粘着樹脂;親水性ポリマー;親水性ポリマーに水素結合できる相補的ポリマー;および粘土粒子からなる。
【0017】
本発明の組成物は環境で見出される、またはそれが適用された身体表面からの水を吸収できるように長期間の水和を提供する。特に粘着剤は典型的な装着時間の72時間にわたって水分取り込み時に半透明のままであることが好ましい。組成物は適用中に皮膚表面に素早く引っ付く点で迅速な初期タックを有し、感圧性および身体感受性であり、そして粘着剤が足の下部表面に位置する場合に経験されるもののような耐力負荷に供されても優れた粘着性を維持できる。この場合、顕著なコールドフローなしに粘着性を保つために粘着性と弾性回復との間の適切な歩み寄りが見出されるべきである。加えて、組成物は好ましくは少なくとも72時間の連続装着で皮膚および使用者に優しい。
【0018】
粘着性組成物の個々の構成成分を注意深く選択し、そして製造中の1つまたはそれより多いパラメーターを調整することにより前記した特徴は容易に達成される。
【0019】
本発明の詳しい実施態様を記載する前に、本発明を記載するのに用いる定義を説明するのが有用であろう。説明する定義は本特許において用いる用語にのみ適用され、そしてその他の場で、例えば科学文献またはその他の特許またはこれらの発明者によるかもしくは共通の権利者に譲渡されたその他の出願を含む出願において用いられるのと同一の用語には適用されないかもしれない。加えて実例が与えられる場合、それらは例示のみを意図し、そして制限を意図するものではなく、そして特記しない場合、本発明が具体的な材料、活性薬剤、添加剤等に限定されないで変化し得ることはさらに理解されよう。例えば実例が具体的な特徴を「含む」とされる場合、それはその特徴を有し得るが、かかる実例はその特徴を含むものに限定されないことを意図する。したがって、例えば「疎水性ポリマー」に対する言及は2つまたはそれより多いかかるポリマー等の混合物を含む。最後に、本明細書および添付の請求の範囲で用いるような、単数形態の「a」「an」および「the」は、その局面が明らかにそれ以外を指示するのでなければ、複数の指示対象を含む。したがって例えば「活性薬剤(an active agent)」に対する言及は2つまたはそれより多いかかる薬剤の混合物等を含む。
【0020】
(I.定義)
本発明を記載および特許請求する場合、以下に説明する定義に従って以下の用語を用いる。
【0021】
「疎水性ポリマー」および「親水性ポリマー」なる用語は相対湿度100%でポリマーにより吸収される水蒸気の量に相対して定義されると意図される。この分類に従って、疎水性ポリマーは相対湿度(rh)100%で1重量%までしか吸収しないが、中程度の親水性を有するポリマーは1〜10重量%の水を吸収し、親水性ポリマーは10重量%超の水を吸収することができ、そして含水ポリマーは20重量%超の水を吸収する。
【0022】
「タック」および「タック性である」なる用語は定性的である。しかしながら本明細書で用いる「実質的に非タック性である」、「わずかにタック性である」および「タック性である」なる用語をPSAタック決定/ポリケンプローブ法(ソルティア社)により得られた値を用いて定量化できる。「実質的に非タック性である」とは約25g−cm/秒未満であるタック値を有する粘着剤を意味し、「わずかにタック性である」とは約25g−cm/秒から約100g−cm/秒の範囲のタック値を有する粘着剤を意味し、そして「タック」とは少なくとも100g−cm/秒のタック値を有する粘着剤を意味する。
【0023】
「半透明」なる用語は光を透過することができ、そのために材料を通して物体または画像を見ることができる材料を示すために用いる。本明細書の半透明材料は「透明」であってもなくてもよく、材料が光学的に透明であることを意味する。「半透明」なる用語は、材料が「不透明」ではないことを示し、不透明の場合材料を通して物体および画像を見ることができない。
【0024】
「活性薬剤」なる用語は、局所または経皮投与に適当で、そして望ましい効果を誘起する化学材料または化合物を意味する。用語は治療上有効、予防的に有効、および美容上有効な薬剤である薬剤を含む。また限定するものではないが塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝体、封入複合体、類似体等を含む、これもまた望ましい効果を誘起する、本明細書にて具体的に言及するこれらの活性薬剤の薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体もまた含まれる。本明細書では「活性薬剤」、「薬物」および「治療薬」なる用語を互換的に用いる。
【0025】
「経皮」送達とは、薬剤が身体表面、例えば皮膚を通過し、そして個体の血流に達するように、活性薬剤を個体の身体表面に投与することを意味する。「経皮」なる用語は経粘膜投与、すなわち薬剤が粘膜組織を通過し、そして個体の血流に達するように薬物を個体の粘膜(例えば舌下、口腔、膣、直腸)表面に投与することを含むと意図される。
【0026】
「身体表面」なる用語は粘膜内層を有する体腔の内部表面を含む皮膚または粘膜組織を言及するために用いる。「皮膚」なる用語は「粘膜組織」を含むと解釈され、逆もまた同様である。
【0027】
「治療上有効量」なる用語は無毒性であるが、望ましい効果を提供するのに十分である活性薬剤の量を意味すると意図される。「有効」である量は対象によって異なり、個体の年齢および一般症状、特に活性薬剤または(複数の)活性薬剤等に依存する。したがって、正確な有効量を特定することが必ずしも可能とは限らない。しかしながら、任意の個体の場合の適切な有効量を日常的な実験を用いて当業者により決定することができる。さらに、治療上有効な範囲内である活性薬剤の量を送達するために、濃度が処方の即時適用を可能にするに十分な範囲内である限り、本発明の粘着剤に組み込まれた活性薬剤の正確な有効量は重要ではない。
【0028】
(II.組成物)
個々の構成成分の選択および製造中の1つまたはそれより多いパラメーターの調整により、望ましい粘着特性が達成される。例えば粘着性を高める、低下させるまたは排除するために製造中に粘着剤の粘着強度を制御することができる。様々な粘着成分の型および/もしくは量を変えることにより、または製造様式を変化させることによりこれを達成することができる。例えば多量の弾性可塑剤および粘着樹脂を組み込むことによりタックは増加するが、これらの構成成分の量を減らすかまたは脱粘性添加剤を組み込むか、または粉末親水性成分のレベルを上げることによりタックは低下する。また製造方法に関して、従来の溶融押し出し方法を用いて調製した粘着剤はよりタック性になる傾向があるが、鋳造方法により調製された粘着剤は低タックである傾向がある。加えて、特定の構成成分の相対量を変化させることにより(例えば粘土の量を減らすことにより)、または製造方法の条件(温度、押し出し速度、厚み等)を変化させることにより粘着剤を半透明にすることができる。
【0029】
本明細書で記載する組成物のような多成分系に関しては、適合性または状態図に随伴される問題が重要な役割を果たす。組成物の温度を変更することにより、処方全体の冷却および固化時に「凍結」され得る混和性(透明度)の明確なレベルを獲得することができる。この様式では、押し出し時に相平衡を変化させ、そして複合剪断および拡張フィールドの作用により、低分子量のタック性構成成分を製造したフィルムの周縁に移動させることができる。
【0030】
さらに、様々な水膨潤性および水溶性親水性ポリマーならびにその比率を選択することにより、粘着剤が水と接触したときに膨潤する程度を変化させるこができる。水膨潤性および水溶性親水性ポリマーの組み合わせにより、組成物の膨潤の程度を制御すること、およびさらなる湿潤の後に組成物を身体表面に再適用する能力を創成することが可能になる。
【0031】
1つの実施態様では、本発明の組成物は疎水性ポリマー;弾性可塑剤;粘着樹脂;親水性ポリマー;親水性ポリマーに水素結合できる相補的ポリマー;および粘土粒子からなる。組成物は2つ以上の疎水性ポリマーの組み合わせ;2つ以上の弾性可塑剤の組み合わせ;2つ以上の粘着樹脂の組み合わせ;2つ以上の親水性ポリマーの組み合わせ;2つ以上の相補的ポリマーの組み合わせ;および/または2つ以上の型の粘土粒子の組み合わせを含み得ることは理解される。
【0032】
典型的には組成物は約1〜40重量%疎水性ポリマー;約1〜30重量%弾性可塑剤;約1〜30重量%粘着樹脂;約1〜50重量%親水性ポリマー;約1〜30重量%相補的ポリマー;および約1〜30重量%粘土粒子である。
【0033】
1つの好ましい実施態様は15〜25重量%疎水性ポリマー;約10〜20重量%弾性可塑剤;約13〜20重量%粘着樹脂;約20〜30重量%親水性ポリマー;約8〜18重量%相補的ポリマー;および約8〜15重量%粘土粒子を有する。
【0034】
なお別の好ましい実施態様は19〜21重量%疎水性ポリマー;約14〜16重量%弾性可塑剤;約16〜18重量%粘着樹脂;約23〜25重量%親水性ポリマー;約11〜13重量%相補的ポリマー;および約11〜13重量%粘土粒子を有する。
【0035】
いくつかの適用に関して、例えば緩徐に溶解するフィルムとしては、疎水性ポリマーおよび弾性可塑剤は除外され得る。かかる処方は典型的には約50〜65重量%親水性ポリマー;約35〜45重量%相補的ポリマー;および約1〜5重量%粘土粒子を含んでなる。
【0036】
これらのパーセンテージは単に本発明の組成物を説明するものであることが意図される。処方に用いられる実際の材料および量を確定する場合に考慮され得るその他の因子がある。例えば粘着強度、結合力および組成物の水分吸収を最適化するために特定の材料の重量比を選択することができる。同様に、粘着剤のいくつかの適用に関して望ましい特徴である半透明性を組成物に付与するためにこれらの同一材料の重量比を選択することができる。
【0037】
本発明の実例的な実施態様では、組成物はポリイソプレン系、ブチルゴム類、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマ類ーから選択される疎水性ポリマー;スチレンベースの可塑剤、低分子量ポリイソブチレン系、低分子量ポリイソプレンゴム類およびその組み合わせから選択される弾性可塑剤;水素化炭化水素樹脂類、炭化水素樹脂類および合成ポリテルペン樹脂類から選択される無極性粘着樹脂;ポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、およびそのコポリマーおよび混和物から選択される親水性ポリマー;低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;ならびにフィロケイ酸塩粒子を含んでなる。
【0038】
(A.疎水性ポリマー)
限定ではなく説明の目的で、適当な疎水性ポリマーにはポリイソブチレン系、ブチルゴム類、天然ゴム粘着剤、ビニルエーテルポリマー類、ポリシロキサン系、ポリイソプレン系、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマ類ー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類、イソブチレン−イソプレンコポリマー類、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリクロロプレン系、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー類、アクリラート系およびその組み合わせが含まれる。ポリイソプレン系、ブチルゴム類、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類が本発明における使用に特にかなり適している。
【0039】
本発明の1つの実施態様では、疎水性ポリマーはスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)またはスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)のようなトリブロックスチレンコポリマーであり、そしてさらにジブロックコポリマー、スチレン−イソプレン(SI)ブロックコポリマーを含んでなる。
【0040】
市販により入手可能であるベクターシリーズ(デキシコポリマーズから入手可能)のようなスチレンベースのブロックコポリマーは本発明において特に有用である。これにはSISベクター4111(18重量%スチレン/82重量%イソプレン)および4411(44重量%スチレン/56重量%イソプレン)ならびにベクター4113(18重量%SIジブロック;全体で15重量%スチレン/85重量%イソプレン)、ベクター4114(42重量%SIジブロック;全体で15重量%スチレン/85重量%イソプレン)、ベクター4213(25重量%SIジブロック;全体で25重量%スチレン/75重量%イソプレン)およびベクター4215(18重量%SIジブロック;全体で30重量%スチレン/70重量%イソプレン)のようなSIS/SI混合物が含まれる。
【0041】
本発明の別の実施態様では、疎水性ポリマーはポリイソプレンまたはブチルゴムである。高分子量ポリイソプレンゴムNatsyn(登録商標)2210(グッドイヤータイヤ・アンド・ラバー)のような市販により入手可能であるポリイソプレン系、および高分子量ブチルゴムBR065(エクソン)のようなブチルゴム類は特に本発明において有用である。
【0042】
不飽和ゴムの場合、硬化剤を加えて組成物の構造を固定させること、およびコールドフローを防御することができる。具体的なレオロジー特性に到達すること、主にコールドフローの低減、すなわち実質的に全体的な弾性回復が望ましいので、不飽和疎水性成分(ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム等)を架橋させるのが好ましい。二重結合を含有するポリマーに共有結合の形成を伴う化学的架橋の過程を行う。得られた化学的ネットワークの密度は望ましいタックを保存するために高すぎてはならない。容量単位における架橋の数を架橋剤の性質および量により、ならびに続く温度時間手順により制御することができる。フェノールホルムアルデヒド樹脂類およびアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類はブチルゴムに適当な架橋剤であるが、ポリイソプレン系にはジクミルペルオキシドを用いることができる。
【0043】
架橋の程度をモニタリングする最も都合の良い方法は溶融粘度の経時的変化の測定を伴う。得られた流動態曲線により、架橋速度およびプラトー領域が不飽和疎水性ポリマーの二重結合と架橋剤との化学的相互作用の完了に相当することが実証される。
【0044】
トリブロックコポリマー類、例えばSISまたはSBSの場合、その固化はスチレンブロック類の分離およびそのガラス状態への遷移のために冷却したときに生じる。周囲温度ではトリブロックコポリマー処方の弾性反跳は90%を超える。高分子のSISおよびSBS中の弾性イソプレンまたはブタジエンブロック類、ならびに疎水相(例えば可塑剤)のさらなる構成成分の存在は望ましいタックおよび粘着特性を導く。
【0045】
(B.弾性可塑剤)
弾性可塑剤は好ましくはトリブロックコポリマー類と適合するように選択され、すなわち状態図の明確な温度−濃度領域の内側で多ブロックコポリマー類を伴う溶液を形成する。したがって、当業者は使用する各構成成分の適切な量に関する指針として疎水相の構成成分の状態図を容易に用いることができる。
【0046】
適当な弾性可塑剤には「分岐型(AB)」立体配置を有するブロックポリマー類を含み、ここで例えばAはアリール置換ビニルモノマー類、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を含んでなるポリマーブロックであり、Bは弾性抱合ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックであり、そしてxは3またはそれより大きい値を有する。好ましい可塑剤はスチレンベースのポリマー、とりわけスチレン−ブタジエンブロックコポリマー類およびスチレン−イソプレンブロックコポリマー類、ならびにその組み合わせである。これらの多くはLVSI 101(クラトン)の名で販売されているスチレン−イソプレンブロックコポリマーのように市販により容易に入手可能である。
【0047】
弾性可塑剤はまた、場合によってはパラフィン油と混合した、シス−1,4ポリイソプレン(例えばエレメンティス・スペシャリティーズ・パーフォーマンス・ポリマーズのIsolene(登録商標)400)のような低分子量ポリイソブチレンまたは低分子量ポリイソプレンゴム(分子量20,000〜100,000)でよい。
【0048】
本発明の1つの実施態様では、疎水相弾性可塑剤はブロックポリマー(例えばスチレン)および低分子量ポリイソプレンゴム(例えばシス−1,4ポリイソプレン)の双方を含む。
【0049】
(C.粘着樹脂)
粘着樹脂はかなり高いガラス遷移温度を有する比較的低分子量の樹脂(重量平均分子量は一般的に約50,000未満)である。その機能は接着剤の強度を増すことである。粘着樹脂には、例えばロジン誘導体、テルペン樹脂類、および合成または天然由来の石油樹脂類が含まれる。本明細書で好ましい粘着樹脂は一般に水素化炭化水素樹脂類、炭化水素樹脂類および合成ポリテルペン樹脂類からなる群から選択される無極性粘着樹脂である。粘着樹脂は好ましくは疎水性ポリマー/可塑剤組成物と混和でき三元溶液を提供する。これらのクラスに入る市販により入手可能である樹脂にはRegalrez(登録商標)1085(水素化炭化水素樹脂)およびRegalite(登録商標)9100(ヘルクレスから入手可能な部分的に水素化された炭化水素樹脂)のようなRegalite樹脂;エクソンケミカル社から入手可能なEscorez(登録商標)1304およびEscorez(登録商標)1102(炭化水素樹脂類)、ならびにEscorez(登録商標)5380(環状脂肪族炭化水素樹脂)、グッドイヤータイヤ・アンド・ラバーから入手可能なWingtac(登録商標)95およびWingtack(登録商標)85(合成ポリテルペン樹脂類)が含まれる。
【0050】
(D.親水性ポリマー)
適当な親水性ポリマーにはN−ビニルラクタムモノマー、カルボキシビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、カルボキシビニルモノマーのエステル、ビニルアミドモノマー、および/またはヒドロキシビニルモノマーから誘導される反復単位が含まれる。かかるポリマーには、実例としてはポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、置換および非置換アクリル酸およびメタクリル酸ポリマー類(例えばポリアクリル酸系およびポリメタクリル酸系)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミン、そのコポリマーおよび混和物ならびにその他の型の親水性モノマー(例えば酢酸ビニル)とのコポリマーが含まれる。
【0051】
本明細書で有用なポリ(N−ビニルラクタム)系は好ましくはN−ビニルラクタムモノマー単位の非架橋ホモポリマーまたはコポリマーであり、N−ビニルラクタムモノマー単位はポリ(N−ビニルラクタム)系コポリマーの全モノマー単位の大部分に相当する。本発明と組み合わせて使用するのに好ましいポリ(N−ビニルラクタム)系は1つまたはそれより多い以下のN−ビニルラクタムモノマー類、すなわちN−ビニル−2−ピロリドン;N−ビニル−2−バレロラクタム;およびN−ビニル−2−カプロラクタムの重合により調製される。N−ビニルラクタムモノマー単位との有用な非−N−ビニルラクタムコモノマー類の非限定例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸またはその塩、および酢酸ビニルが含まれる。
【0052】
ポリ(N−ビニルアミド)系には、実例としてはN−ビニルアセトアミドが含まれる。
【0053】
ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系には、実例としてはポリ(メタクリルアミド)およびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)が含まれる。
【0054】
カルボキシビニルモノマー類のポリマーは典型的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸および無水物、マレイン酸もしくはフマル酸のような1,2−ジカルボン酸、マレイン酸無水物、またはその混合物から形成され、このクラスの好ましい親水性ポリマーにはポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が含まれ、最も好ましくはポリアクリル酸である。
【0055】
セルロース誘導体、主に様々な分子量の水溶性ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)もまた親水性ポリマーとしての使用に適している。溶融時にセルロース誘導体はコレステリック構造を有する液晶(LC)融液を形成する。すなわち剛直高分子が無秩序な方式ではなく、等方性ポリマーのように配置され、むしろ層構造を形成し;高分子の長軸は一方向で層の内側に向いており、そしてこの方向は1つの層から他の層に通過するときのわずかな角度により変化し、いわゆるコレステリックのマクロならせんを形成する。平板間の空間の存在、およびこれらのポリマーの加工中の長繊維の形成により多くの利点が提供される。冷却時にHPCのLC融液は複合相構造を有する固体ポリマーである。
【0056】
水膨潤性寒天のような多糖類もまた親水性ポリマーとしての使用に適当であり、そしてかなりの量の水分の貯蔵が可能になる。
【0057】
本明細書で好ましい親水性ポリマーは以下のとおりである:ポリ(N−ビニルラクタム)系、とりわけポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルカプロラクタム(PVCap);ポリ(N−ビニルアセトアミド)系、とりわけポリアセトアミド自体;カルボキシビニルモノマー類のポリマー、とりわけポリアクリル酸およびポリメタクリル酸;ならびにそのコポリマーおよび混和物。PVPおよびPVCapがとりわけ好ましい。
【0058】
親水性ポリマーの分子量は重要ではない。しかしながら親水性ポリマーの数平均分子量は一般的におよそ50,000から2,000,000の範囲、さらに典型的にはおよそ100,000から1,500,000の範囲であり、またおよそ500,000から1,500,000の範囲である場合もある。
【0059】
(E.相補的ポリマー)
相補的ポリマーは親水性ポリマーに水素結合することができ、そして場合によっては親水性ポリマーに同様にイオン結合または共有結合することができる。相補的ポリマーは親水性ポリマーと水素結合を形成することができるポリマー、オリゴマー、または任意の低分子量物質でよい。
【0060】
好ましくは、相補的ポリマーは相補的オリゴマーである。好ましい相補的オリゴマーはヒドロキシル基、アミノまたはカルボキシル基で終端する。典型的にはオリゴマーは約−100℃から約−30℃の範囲のガラス遷移温度Tおよび約20℃よりも低い溶融温度Tを有する。オリゴマーはまた非晶質でもよい。親水性ポリマーおよびオリゴマーのT値の間の差は好ましくは約50℃より高く、さらに好ましくは約100℃よりも高く、そして最も好ましくは約150℃から約300℃の範囲である。親水性ポリマーおよび相補的オリゴマーは適合すべきであり、すなわち非混和構成成分の値の中間である単一のTを呈する均質な混和物を形成することができる。
【0061】
一般に、相補的オリゴマーは約45から約800の範囲、好ましくは約45から約600の範囲の分子量を有する。相補的オリゴマーは好ましくはポリエチレングリコール400のような低分子量ポリアルキレングリコール(分子量300〜600)であり、これはまた低分子量可塑剤としても提供され得て、そしてカルボキシル終端またはアミノ終端されてよい。これに代えて、異なる化合物をさらなる低分子量可塑剤として組み込むことができ、この場合以下に記載する任意の低分子量可塑剤を用いることができる。本発明の1つの実施態様では相補的オリゴマーは、親水性ポリマーに水素結合することができる、分子あたり少なくとも2つの官能基を含有する相補的低分子量またはオリゴマー可塑剤である。
【0062】
適当な相補的オリゴマーのその他の実例には、限定するものではないが低分子量ポリアルコール系(例えばグリセロール)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのようなモノマーおよびオリゴアルキレングリコール系、エーテルアルコール系(例えばグリコールエーテル系)、炭素二酸系(carbonic diacids)、ブタンジオールからオクタンジオールまでのアルカンジオール系が含まれ、前記したポリアルキレングリコールのカルボキシル終端およびアミノ終端された誘導体が含まれる。場合によってはカルボキシル終端されたポリアルキレングリコール系が本明細書では好ましく、そして約300から600の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールが最適な相補的オリゴマーである。
【0063】
単一の化合物、例えば約300から600の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールのような低分子量ポリアルキレングリコールを相補的オリゴマーおよび弾性可塑剤の双方として提供することができることは前記から理解されよう。
【0064】
相補的オリゴマーはそれ自体可塑剤として作用し得るので、さらなる可塑剤を組み込むことは一般には必要ではない。しかしながら、組成物中にさらなる低分子量可塑剤を含むことは選択可能であり、そして有利である場合もある。適当な低分子量可塑剤には:フタル酸ジアルキル系、フタル酸ジシクロアルキル系、フタル酸ジアリール系ならびにフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジアミルおよびフタル酸ジカプリルで示されるような混合フタル酸アルキル−アリール系;リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレシルおよびリン酸トリフェニルのようなリン酸アルキルおよびアリール系;クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸トリヘキシルのようなクエン酸アルキルおよびクエン酸エステル系;アジピン酸ジオクチル(DOA)(アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)とも称される)、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ(2−メチルエチル)およびアジピン酸ジヘキシルのようなアジピン酸ジアルキル系;酒石酸ジエチルおよび酒石酸ジブチルのような酒石酸ジアルキル系;セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピルおよびセバシン酸ジノニルのようなセバシン酸ジアルキル系;コハク酸ジエチルおよびコハク酸ジブチルのようなコハク酸ジアルキル系;二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロール(トリアセチン)、一乳酸二酢酸グリセロール、グリコール酸メチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチル、二酢酸エチレングリコール、二酪酸エチレングリコール、二酢酸トリエチレングリコール、二酪酸トリエチレングリコールおよびジプロピオン酸トリエチレングリコールのようなグリコール酸アルキル系、グリセロールアルキルエステル系、グリコール酸エステル系およびグリセロールエステル系;ならびにその混合物が含まれる。好ましい可塑剤はクエン酸トリエチル、フタル酸ジエチルおよびアジピン酸ジオクチルであり、アジピン酸ジオクチルが最も好ましい。
【0065】
(F.粘土粒子)
本発明の組成物に用いる粘土粒子は本発明の多くの有利な態様に寄与する。例えば粘土粒子は:皮膚表面から水分を除去し、そしてそれを蓄えるウィッキング作用を提供するのを助ける;コールドフローを防御する降伏挙動を強化する;組成物がその粘着性質を維持するのを助け、ならびに組成物の足底における適用で高い弾性反跳を供給するのを支持する構造を提供し、活性成分を捕捉し、そして次に特定の条件下で、例えば創傷からの浸出液に接触したとき等に放出するように機能することができるナノスペースを導入する。
【0066】
一般に、粘土は層構造を有し、そして隣接するプレートレットとの間の空間は、例えばNa−モンモリロナイトでは1nmである。バルク状態では、粘土材料は典型的には湿潤している場合は可塑性であるが、乾燥すると硬質であり、そしてしばしば、単独のまたはその他の無機物と組み合わせた、主に含水ケイ酸アルミニウムの微細なプレートレットからなる。個々の粘土プレートレットは可とう性であり、そして透明である。多くの官能基の表面に存在するので、粘土は処方のその他の構成成分と相互作用することができる。粒子上の負の電荷は対イオン、例えばNa+、Ca++、Ag+等またはその組み合わせにより補償される。したがって、荷電した粘土プレートレットとその他の構成成分との間のイオン相互作用が可能である。特に、適当な粘土粒子材料はフィロケイ酸塩類(層状ケイ酸塩類)および層状複水酸化物(混合金属水酸化物の正に荷電したブルーサイト型層を有する無機物および合成材料)からなる群から選択される。かかる材料は「Polymer−Clay Nanocomposites」T.J. PinnavaiaおよびG.W. Beall編(Wiley Series in Polymer Science、ジョンワイリー・アンド・サンズ社、(c)2000)(その開示は出典明示により本明細書の一部とする)のような参照文献に詳細に記載されている。
【0067】
本発明の1つの実施態様では、フィロケイ酸塩はアロフェン(含水ケイ酸アルミニウム);アポフィライト(含水カリウムナトリウムカルシウムケイ酸塩水酸化物フッ化物);バニステライト(含水カリウムカルシウムマンガン鉄亜鉛アルミニウムケイ酸塩水酸化物);カーレトナイト(含水カリウムナトリウムカルシウムケイ酸塩炭酸塩水酸化物フッ化物);カバンサイト(含水カルシウムバナジウム酸塩ケイ酸塩);クリソコラ(含水銅アルミニウム水素ケイ酸塩水酸化物);粘土鉱物(以下で詳細に記載する);デルヘイエライト(含水ナトリウムカリウムカルシウムアルミニウムケイ酸塩塩化物フッ化物硫酸塩);エルピダイト(含水ナトリウムジルコニウムケイ酸塩);フェドライト(含水カリウムナトリウムカルシウムケイ酸塩水酸化物フッ化物);フランクリンフルナセイト(カルシウム鉄アルミニウムマンガン亜鉛ケイ酸塩水酸化物);フランクリンフィライト(含水カリウムマンガンアルミニウムケイ酸塩);ゴニヤライト(マンガンマグネシウム鉄ケイ酸塩水酸化物);ガイロライト(含水カルシウムケイ酸塩水酸化物);カネマイト;ケニヤアイト;リューコスフェナイト(含水バリウムナトリウムチタンホウケイ酸塩);マガディアイト;マカタイト;バイオタイトのようなマイカス(カリウム鉄マグネシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物フッ化物)、レピドライト(カリウムリチウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物フッ化物)、マスコバイト(カリウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物フッ化物)、パラゴナイト(ナトリウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物)、フロゴパイト(カリウムマグネシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物フッ化物)およびチンワルダイト(カリウムリチウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物フッ化物);ミネヒルライト(含水カリウムナトリウムカルシウム亜鉛アルミニウムケイ酸塩水酸化物);ノルダイト(セリウムランタンストロンチウムカルシウムナトリウムマンガン亜鉛マグネシウムケイ酸塩);オクトシリケート;ペンタゴナイト(含水カルシウムバナジウム酸塩ケイ酸塩);ペタライト(リチウムアルミニウムケイ酸塩);プレナイト(カルシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物);ローデサイト(含水カルシウムナトリウムカリウムケイ酸塩);サンボーナイト(バリウムケイ酸塩);アンチゴライトのようなサーペンタイン(マグネシウム鉄ケイ酸塩水酸化物)、クリノクリソタイル(マグネシウムケイ酸塩水酸化物)、リザーダイト(マグネシウムケイ酸塩水酸化物)、オルソクリソタイル(マグネシウムケイ酸塩水酸化物)およびセルペンタイン(鉄マグネシウムケイ酸塩水酸化物);ウィッケンベルガイト(含水鉛カルシウムアルミニウムケイ酸塩);ならびにゼオフィライト(含水カルシウムケイ酸塩水酸化物フッ化物)からなる群から選択される。
【0068】
好ましい実施態様では、粘土材料は粘土鉱物、カネマイト、ケニヤアイト、マガディアイトおよびマカタイトからなる群から選択されるフィロケイ酸塩である。
【0069】
別の好ましい実施態様では、フィロケイ酸塩は、ケイ酸塩シートの間に捕捉された水の大部分を含有するフィロケイ酸塩の群である粘土鉱物である。たいていの粘土鉱物は化学的および構造的にその他のフィロケイ酸塩類に類似するが、存在する大量の水によりその陽イオンのさらなる置換が可能になる。
【0070】
適当な粘土鉱物にはベイリクロア(亜鉛鉄アルミニウムマグネシウムケイ酸塩水酸化物)、シャモサイト(鉄マグネシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物酸化物)、一般無機物クロライト、クリノクロア(クロム変種カエメレライト)(鉄マグネシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物)、クーカイト(リチウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物)、ニマイト(ニッケルマグネシウム鉄アルミニウムケイ酸塩水酸化物)、ペナンタイト(マンガンアルミニウムケイ酸塩水酸化物)、ペンニナイト(鉄マグネシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物)およびスドイト(マグネシウムアルミニウム鉄ケイ酸塩水酸化物);グラウコナイト(カリウムナトリウム鉄アルミニウムマグネシウムケイ酸塩水酸化物);イライト(含水カリウムアルミニウムマグネシウム鉄ケイ酸塩水酸化物);カオリナイト(アルミニウムケイ酸塩水酸化物);モンモリロナイト(含水ナトリウムカルシウムアルミニウムマグネシウムケイ酸塩水酸化物);パリゴルスカイト(含水マグネシウムアルミニウムケイ酸塩水酸化物);パイロフィライト(アルミニウムケイ酸塩水酸化物);ソーコナイト(含水ナトリウム亜鉛アルミニウムケイ酸塩水酸化物);タルク(マグネシウムケイ酸塩水酸化物);ならびにバーミキュライト(含水マグネシウム鉄アルミニウムケイ酸塩水酸化物)のようなクロライトが含まれる。
【0071】
膨潤性粘土鉱物はその層の間にアルカリ金属を有するものであり、そして極性溶媒中膨潤することができる。これにはクーカイトのようなリチウム含有材料;グラウコナイトのようなナトリウム含有材料(これはカリウムをも含有する)、モンモリロナイトおよびソーコナイト;ならびにイライトのようなカリウム含有材料が含まれる。かかる膨潤性材料が非膨潤性粘土鉱物よりも好ましい場合もある。
【0072】
フィロケイ酸塩粒子を有機材料と処理して隣接する平板のケイ酸塩層の間で有機分子をインターカレートするのが望ましいかもしれない。例えばシランカップリング剤;第4級アンモニウム化合物;アミン、アミドおよびその混合物からなる群から選択される静電性官能基を有するモノマー化合物;ヒドロキシル、芳香族環、カルボニル、カルボン酸、ポリカルボン酸、アルデヒド、ケトン、アミン、アミド、エーテル、エステルおよびその組み合わせからなる群から選択される官能基を有するモノマー化合物;N−アルケニルアミドモノマー/アリルモノマー組み合わせ、N−アルケニルアミドモノマーおよびアリルモノマーを共重合することにより形成されるオリゴマー、N−アルケニルアミドモノマーおよびアリルモノマーを共重合することにより形成されるポリマー、ならびにその混合物;インターカラント;等のような有機材料と処理することができる。
【0073】
かかる粒子表面のいくらかの疎水化にかかわらず、例えば塩化または臭化ジ(オクタデシルジメチル)アンモニウムによるかかる処置はポリマーマトリックス中に均質に分布している粘土プレートレットの明確な分離に至る。典型的には強化粘土粒子の平均直径は約<15μであり、そして平均直径は約2−6μの範囲内であるのが好ましい。その厚さはほぼ10−100nmであり、そしてしたがってナノ粒子と称することができ、そしてしたがって組成物は「ナノ複合材料」である。好ましい粘土粒子はモンモリロナイト粒子であり、そして商標Cloisite Na+(空間長は11.7Å)、Cloisite 15A(空間長は31.5Åであり、粘土はジ(オクタデシルジメチル)アンモニウムで修飾されてさらに疎水性が付与されている)、Cloisite 20A等のもとでサザンクレイプロダクツ社から入手可能である。
【0074】
(G.選択可能な添加剤)
組成物には粘着剤、抗酸化剤、架橋剤または硬化剤、pH調節剤、色素、染料、屈折性粒子、導電種、抗菌剤、活性薬剤および透過促進剤などの従来の添加剤もまた含まれ得る。粘着性が低減されるかまたは排除されるこれらの実施態様では、従来の脱粘性剤を用いることもできる。これらの添加剤、およびその量は、それらが粘着剤の望ましい化学的および物理学的特性と有意に干渉しないような方式で選択される。
【0075】
(粘着剤)
本発明の組成物は粘着剤の粘着性およびタック特性を改善するために提供されるさらなる粘着剤をも含むこともでき、それはとりわけ皮膚接触型粘着剤を多量の機械的ストレスに供するような様式で用いる場合に粘着性を維持するのに有利である。材料の実例には、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン−イソプレンコポリマー類、ポリスチレン−ブタジエンコポリマー類、およびネオプレン(ポリクロロプレン)のようなタック性ゴムが含まれる。好ましい粘着剤には低分子量ポリイソブチレンおよびブチルゴムが含まれる。
【0076】
1つの実施態様では、PIBのような疎水性感圧接着剤材料を加え、これはSIS(35.0mJ/m)および新たな組成物(32.5mJ/m)と比較して低い表面エネルギー(30.5mJ/m)を有する傾向がある。したがって、PIBは容易にパッチ表面に移動することができる。この移動は押し出し手順により、および/またはパッチの加熱(例えば50℃で2時間)により加速させることができる。この処置の後に、処方の表面エネルギーは30.7mJ/mに等しくなり、すなわちPIB表面エネルギーに近くなる。したがって、皮膚との接触ゾーンにPIBを含めることにより初期タックが増加する。
【0077】
パッチ表面をクロロホルムで希釈したPIB溶液でコーティングすることにより類似の効果を達成することができる。溶媒を蒸発させた後、PIBの薄層が形成され、さらなるコールドフローを開始させることなく初期タックを補強する。したがって、本発明はまたシステムに疎水性感圧接着剤材料をコーティングし、そして次にコーティングを加熱して任意の溶媒を除去し、そして材料がシステムに拡散することを可能にすることもまた企図する。
【0078】
(抗酸化剤)
本発明の組成物はまた組成物の酸化安定性を増強させるために提供することができる1つまたはそれより多い抗酸化剤をも含み得る。熱、光、不純物およびその他の因子は粘着剤の酸化を招き得る。したがって、理想的には抗酸化剤は加工および/または保存中の光に誘起される酸化、化学的に誘起される酸化、および熱により誘起される酸化的分解に対して保護すべきである。当業者には理解されるように、酸化的分解はペルオキシラジカルの生成を伴い、今度はそれが有機材料と反応してヒドロペルオキシドを形成する。一次的には抗酸化剤はペルオキシフリーラジカルスカベンジャーであるが、二次的には抗酸化剤はヒドロペルオキシドの分解を誘起し、そしてしたがって材料をヒドロペルオキシドによる分解から保護する。最も一次的な抗酸化剤は立体障害によるフェノールであり、本明細書で用いるための化合物の実例はテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン(例えばIrganox(登録商標)1010、チバガイギー社、ホーソン、ニューヨーク)および1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル]ベンゼン(例えばEthanox(登録商標)330、エチル社)である。一次的抗酸化剤と置き換えるまたはそれを補足することができる二次的な抗酸化剤には亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(例えばIrgafos(登録商標)168、チバガイギー社)が含まれる。その他の抗酸化剤には、限定するものではないが多機能抗酸化剤が含まれ、これもまた本明細書で有用であり、そして一次および二次の双方の抗酸化剤として提供することができる。チバガイギーにより製造されるIrganox(登録商標)1520Dは多機能抗酸化剤の一例である。チバガイギーにより商標Irganox(登録商標)E17で販売されているようなビタミンE抗酸化剤もまた本粘着剤に有用である。その他の適当な抗酸化剤には、限定するものではないがアスコルビン酸、アスコルビン酸パルミタート、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ブチルプロパンジオアート、(チバガイギー社よりTinuvin(登録商標)144として入手可能)またはオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート(オクタデシル3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナートとしても公知)(ユニロイヤルケミカル社、ミドルベリー、コネチカット州からNaugard(登録商標)76として入手可能)およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルセバカート)(チバガイギー社からTinuvin(登録商標)765として入手可能)の組み合わせが含まれる。
【0079】
抗酸化剤は含まれる場合、粘着性組成物の2重量%までの量で存在し得るが、典型的には約0.05重量%から1.5重量%の範囲で存在する。
【0080】
(pH調節剤)
pH調節剤として有用な化合物には、限定するものではないがグリセロールバッファー、クエン酸塩バッファー、ホウ酸塩バッファー、リン酸塩バッファーおよびクエン酸−リン酸塩バッファーが含まれる。組成物のpHが個体の身体表面のpHに適合することを確実にするためにこれらの調節剤を含むことができる。
【0081】
(色素、染料および屈折性粒子)
色素、染料および屈折性粒子は典型的には美的目的で、皮膚表面の色を擬似するためかまたはそうでなければ色彩豊かな粘着剤を提供するために粘着剤に含まれる。
【0082】
粘着剤に含めることができる多くの色素および/または染料が存在する。好ましくはかかる添加剤は皮膚表面で浸出および染色しないか、またはそうでなければ刺激しない。屈折性粒子は粘着剤に当たる光を屈折および反射する粒子であり、そして反射した光の色は粘着剤を見る角度が変わるにつれて変化する。屈折性粒子の実例はエンボス加工されたアルミメッキされたポリエステルから作られたものである。
【0083】
(導電種)
生体用電極およびその他の電気的治療の局面で使用するために、すなわち電極またはその他の電気導電性の部材を身体表面に付着させるために組成物に電気導電性を付与することができる。例えば粘着剤を用いて経皮神経刺激電極、電気外科的対極板、またはEKG電極を患者の皮膚または粘膜組織に付着させることができる。かかる適用は一般的には、粘着性組成物に導電性を付与する導電種を含有するように粘着性組成物を修飾することを伴う。適当な導電種には、皮膚またはその他の身体表面に適用するために用いられる導電性粘着剤に通常見出されるものが含まれ、そしてイオン性無機塩、有機化合物または双方の組み合わせが含まれる。イオン導電性電解質の実例には、説明目的であり、そして限定するものではないが、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、酢酸モノエタノールアミン、酢酸ジエタノールアミン、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、クエン酸ナトリウムおよび塩化カリウム、および硫酸塩およびグルコン酸塩のような第二鉄および第一鉄塩の混合物のようなレドックス対、ならびにその組み合わせが含まれる。任意の量の電解質が本発明の粘着性組成物に存在し得るが、典型的には(複数の)電解質は粘着剤の約0.1〜15重量%の範囲内の量で存在する。
【0084】
生体用電極を製造するための手順は当分野において周知であり、そして本発明の粘着剤をかかる電極に組み込むために容易に適合させることができる。例えばNielsenらに対する米国特許第5846558号(詳細な製造に関してその開示は出典明示により本明細書の一部とする)を参照のこと。
【0085】
(抗菌剤)
抗菌剤を含めて保存時の腐敗を防御する、すなわち酵母およびカビのような微生物の成長を阻止することができる。適当な抗菌剤は典型的にはp−ヒドロキシ安息香酸のメチルおよびプロピルエステル(すなわちメチルおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、タンパク質(すなわちリゾチーム)、銀塩ならびにその組み合わせからなる群から選択される。
【0086】
(活性薬剤)
1つまたはそれより多い活性薬剤を本発明の組成物に含めることができる。本発明の粘着剤に組み込むことができる適当な活性薬剤には、説明目的であり、そして限定するものではないが:蘇生薬;鎮痛薬;関節炎治療薬;抗腫瘍薬を含む抗癌薬;抗コリン薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;止瀉薬;駆虫薬;抗ヒスタミン薬;抗高脂血症薬;抗高血圧薬;抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、および静菌性および殺菌性化合物のような抗感染薬;抗炎症薬;抗偏頭痛製剤;制嘔吐薬;抗パーキンソン薬;止痒薬;抗精神病薬;解熱薬;鎮痙薬;抗結核薬;抗潰瘍薬;抗不安薬;食欲抑制薬;注意欠陥障害および注意欠陥多動性障害薬;カルシウムチャンネル遮断薬、抗狭心症薬、中枢神経系薬、ベータ遮断薬および抗不整脈薬を含む循環器官用製剤;腐食剤;中枢神経系刺激薬;充血除去薬を含む感冒薬;サイトカイン;利尿薬;遺伝物質;薬草療法;ホルモン分解剤;催眠薬;血糖降下剤;免疫抑制薬;角質溶解薬;ロイコトリエン阻害薬;分裂抑制薬;筋弛緩薬;麻酔拮抗薬;ニコチン;ビタミン、必須アミノ酸および脂肪酸のような栄養剤;抗緑内障薬のような眼科用薬;麻酔薬のような疼痛緩和薬;副交感神経遮断薬;ペプチド薬;タンパク質分解酵素;精神刺激薬;抗喘息薬を含む呼吸器官用薬;鎮静薬;プロゲストゲン、エストロゲン、コルチコステロイド、アンドロゲンおよびタンパク質同化薬を含むステロイド;禁煙薬;交感神経刺激薬;組織治癒促進薬;トランキライザー;一般冠状動脈、末梢および脳を含む血管拡張薬;発泡薬;ならびにその組み合わせのような通常身体表面および膜を通って送達される広範なクラスの化合物が含まれる。
【0087】
好ましい実施態様では、活性薬剤は抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、静菌性および殺菌性化合物、腐食剤、角質溶解薬、疼痛緩和薬、タンパク質分解酵素、組織治癒促進薬、血管拡張薬、発泡薬ならびにその組み合わせからなる群から選択される。典型的には(複数の)活性薬剤は治療上有効な量で存在する。これらのクラスの薬物の実例を以下で説明する。
【0088】
本発明の粘着剤に「負荷された」活性薬剤の放出は典型的には膨潤制御拡散メカニズムを介する水の吸収および薬剤の脱離の双方を伴う。活性薬剤含有粘着剤を粘着性クッション、創傷被覆材、経皮薬物送達装置等に含めることができる。
【0089】
抗生物質にはリンコマイシンファミリー(元来ストレプトミセス・リンコルネンシスから回収された抗生物質薬剤のクラスを称する)の抗生物質;テトラサイクリンファミリー(元来ストレプトミセス・アウレオファシエンスから回収された抗生物質薬剤のクラスを称する)の抗生物質;スルホンアミドのようなイオウベースの抗生物質;等が含まれる。リンコマイシンファミリーの抗生物質の実例にはリンコマイシン自体(6,8−ジデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)−カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−セロ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、クリンダマイシン、リンコマイシンの7−デオキシ、7−クロロ誘導体(すなわち7−クロロ−6,7,8−トリデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−セロ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、ならびに薬理学的に許容されるその塩およびエステルが含まれる。テトラサイクリンファミリーの抗生物質の実例にはテトラサイクリン自体(4−(ジメチルアミノ)−1,4,4α,5,5α,6,11,12α−オクタヒドロ−3,6,12,12α−ペンタヒドロキシ−6−メチル−1,11−ジオキソ−2−ナフタセンカルボキシアミド)、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、メタサイクリンおよびドキシサイクリン、ならびに薬学的に許容される塩およびエステル、とりわけ塩酸塩のような酸付加塩が含まれる。イオウベースの抗生物質の実例には、限定するものではないがスルホンアミド、スルファセタミド、スルファベンズアミド、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾールならびに薬理学的に許容されるその塩およびエステル、例えばスルファセタミドナトリウムが含まれる。
【0090】
抗真菌薬の実例にはクロロキシレノール、シクロピロックス、クロトリマゾール、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、トルナフテート、ウンデシレン酸等が含まれる。
【0091】
抗炎症剤の実例にはコルチコステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬が含まれる。非ステロイド抗炎症薬の実例には、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブチブフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸等が含まれる。
【0092】
静菌性および殺菌性化合物の実例には、ホウ酸フェニル水銀またはメルブロミンのようなアリール水銀化合物;チメロサールのようなアルキル水銀化合物;クロラミン;クロロヘキシジン;ヨウ素、ヨードポビドン複合体(例えばPVPおよびヨウ素の複合体、「ポビジン」とも称され、商標Betadine(登録商標)でプルデフレデリックより入手可能)のようなハロゲン化合物;ヨウ化物塩;8−ヒドロキシキノリン、クロルキナルドール、クリオキノール、エタクリジン、ヘキセチジン、クロルヘキシジンおよびアンバゾンのような有機窒素化合物;安息香酸トリ−n−ブチルスズのような有機スズ化合物;過酸化水素および過マンガン酸カリウムのような酸化剤;チモール、O−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、ヘキサクロロフェンおよびヘキシルレゾルシノールのようなフェノール;銀、およびスルファジアジン、銀タンパク質アセチルタンナート、硝酸銀、リン酸銀、チオ硫酸銀複合体、酢酸銀、乳酸銀、硫酸銀および塩化銀のような銀含有化合物、ならびにその組み合わせ;次亜塩素酸ナトリウム;亜鉛および亜鉛塩;等が含まれる。
【0093】
腐食剤の実例にはポドフィリン等が含まれる。
【0094】
角質溶解薬の実例には乳酸、サリチル酸、尿素等が含まれる。
【0095】
疼痛緩和薬の実例には局部または局所麻酔薬が含まれ、限定するものではないがアセトアミドオイゲノール、酢酸アルファドロン、アルファキサロン、アムカイン、アモラノン、アミロカイン、ベノキシナート、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブレタミン、ブタカイン、ブタベン、ブタニリカイン、ブタリタール、ブトキシカイン、カルチカイン、2−クロロプロカイン、シンコカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペラドン、ジクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、アミノ安息香酸エチル、塩化エチル、エチドカイン、エトキサドロール、β−オイカイン、オイプロシン、フェナルコミン、ホモカイン、ヘキソバルビタール、ヘキシルカイン、ヒドロキシジオン、ヒドロキシプロカイン、ヒドロキシテトラカイン、p−アミノ安息香酸イソブチル、ケンタミン、ロイシノカインメシラート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、メトヘキシタール、塩化メチル、ミダゾラム、ミルテカイン、ナエパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサザイン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェンシクリジン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパニジド、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポホール、プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロカイン、リソカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、チアルバルビタール、チミラル、チオブタバルビタール、チオペンタール、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン等が含まれ、本明細書ではテトラカイン、リドカインおよびプリロカインが特に適当である。
【0096】
タンパク質溶解酵素の実例には有効な創傷清浄薬であるこれらの薬剤が含まれ、そして例えばペプシン、トリプシン、コラゲナーゼ、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ等が含まれる。
【0097】
組織治癒促進薬は当分野において組織再生薬とも称され、そしてコラーゲン;ヒアルロン酸、ヘパリン、硫酸ヘパリンおよび硫酸コンドロイチンのようなグリコサミノグリカン;バーシカンおよびビグリカンのようなプロテオグリカン;フィブロネクチン、ビトロネクチン、オステオポンチンおよびトロンボスポンジンのようなペプチド(その全てはトリペプチド配列RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)を含有し、配列は一般的には粘着性タンパク質に随伴され、そして細胞表面受容体との相互作用に必要である);血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子およびインスリン様成長因子のようなポリペプチド成長因子;フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンのような基質付着分子;等のような薬剤を含む。
【0098】
血管拡張薬の実例には、発赤薬および反対刺激薬のような真皮の血流を増加させるのに有用なこれらの局所血管拡張薬が含まれる。発赤薬にはニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸エチル、ニコチン酸ブトキシエチル、ニコチン酸フェネチルおよびニコチン酸サーフィルのようなニコチン酸塩、ならびにマスタード、ターペンチン、カヤプトおよびトウガラシ油のような精油およびその構成成分が含まれる。
【0099】
発泡薬の実例にはカンタリジン等が含まれる。
【0100】
(透過促進剤)
1つまたはそれより多い透過促進剤を本発明の組成物に含めることができる。いくつかの活性薬剤に関しては、皮膚または粘膜を通して治療上有効な流動性を達成するために薬剤を適当な透過促進剤と共に投与することが望ましいかもしれない。適当な透過促進剤の選択は送達される薬剤および粘着剤のその他の構成成分と促進剤との適合性に依存する。
【0101】
透過促進剤の実例には、説明目的であり、そして限定するものではないが、ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド;ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル;ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ポロキサマー(231、182、184)、トゥイーン(20、40、60、80)およびレシチンのような界面活性剤;1−置換アザシクロヘプタン−2−オン、とりわけ1−n−ドデシルシクロアザシクロヘプタン−2−オン;エタノール、プロパノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール等のようなアルコール;ラウリン酸、オレイン酸および吉草酸のような脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸メチルおよびオレイン酸エチルのような脂肪酸エステル;プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコールおよびモノラウリン酸ポリエチレングリコールのようなポリオールおよびそのエステル;尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンのようなアミドおよびその他の窒素化合物;テルペン;アルカノン;および有機酸、とりわけサリチル酸およびサリチル酸塩、クエン酸およびコハク酸;ならびにその混合物が含まれる。
【0102】
(水膨潤性水不溶性ポリマー)
本発明の組成物を、例えば1つまたはそれより多い活性薬剤を含有する緩徐に溶解するフィルムとして用いる場合、親水性ポリマー、相補的ポリマーおよび粘土粒子と一緒に水膨潤性水不溶性ポリマーをも含むのが望ましいかもしれない。
【0103】
水膨潤性水不溶性ポリマーの実例は、一般的にはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルおよび/またはその他のビニルモノマーから形成されるアクリラートベースのポリマーまたはコポリマーである。これらのいくつかは前記の親水性ポリマーとしても分類される。適当なアクリラートポリマーはロームファーマ(ドイツ)から商標「Eudragit」で入手可能なこれらのコポリマーである。Eudragit(登録商標)シリーズE、L、S、RL、RSおよびNEコポリマーは有機溶媒中、水性分散物中、または乾燥粉末として可溶化されて入手可能である。好ましいアクリラートポリマーはEudragit LおよびEudragit Sシリーズポリマーのようなメタクリル酸およびメタクリル酸メチルのコポリマーである。特に好ましいかかるコポリマーはEudragit L30D−55およびEudragit L100−55(後者のコポリマーは水で再構築することができるEudragit L30D−55のスプレー乾燥形態である)である。Eudragit L30D−55およびEudragit L100−55コポリマーの分子量はおよそ135000Daであり、遊離カルボキシル基のエステル基に対する比率はおよそ1:1である。Eudragit L100−55コポリマーは一般的にpH5.5未満の水性液体中で不溶性である。別のとりわけ適当なメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーはEudragit S−100であり、それは遊離カルボキシル基のエステル基に対する比率がおよそ1:2であるという点でEudragit L30D−55と異なる。Eudragit S−100はpH5.5未満で不溶性であるが、Eudragit L30D−55とは異なり、5.5から7.0の範囲のpHの水性液体中でわずかに溶解する。このコポリマーはpH7.0およびそれ以上で溶解する。pH6.0未満で不溶性である限り、Eudragit L30D−55とEudragit S−100との間のpH依存性溶解プロフィールを有するEudragit L100もまた用いることができる。Eudragit L30D−55、L100−55、L100およびS−100を類似のpH依存性溶解特性を有するその他の許容されるコポリマーと置き換えることができることは当業者には理解されよう。その他の適当なアクリラートポリマーはビーエーエスエフ・エージー(ドイツ)から商標「Kollicoat」で入手可能なこれらのメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー類である。例えばKollicoat MAEはEudragit L100−55と同一の分子構造を有する。
【0104】
(H.追加的な要素)
(裏打ち部材)
皮膚への適用後、被覆材、クッションまたは経皮薬物送達装置の外側表面として提供するために組成物に積層することができる裏打ち部材を含むように本発明の組成物を処方することができる。裏打ち部材材料の実例にはフランネル、フェルト、綿、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド等のような繊維性または多孔性のシートが含まれる。裏打ち部材は典型的には厚みが約1〜2.5ミルのオーダーに従うが、必要によりさらに厚くても薄くてもよい。所望により、裏打ちを着色するか、金属化するか、または書き込みに適当なマット仕上げを提供することができる。
【0105】
裏打ち層は非密封(すなわち「通気性がある」)、すなわち水分透過性でよく、そして一般的に可とう性、弾力性のある外側層から作られ、皮膚表面に適用するためにそこに積層された本発明の粘着性組成物の層を伴って半透明または透明のフィルム、フォームパッドまたは布地のような繊維性材料から製造される。裏打ち層の実例には透明ポリウレタン、アクリル系粘着剤でコーティングした(組成物と裏打ち層と発泡ポリウレタンとの間の結合を強化するため)透明ポリウレタンが含まれる。発泡体または布地の裏打ちの使用によりクッション性を増すことができるが、かかる裏打ちの使用により製品の透明特性が低下する。水分透過性がとりわけ好ましい場合、裏打ち層は異方性、すなわち皮膚から組成物および裏打ち部材を通って、そして次に環境に水分輸送を提供すべきであるが、逆に、例えば入浴中は提供すべきでない。
【0106】
一般に、裏打ち層に用いられる材料は、組成物が皮膚の輪郭をたどることを可能にすべきであり、そして関節またはその他の屈曲点のような皮膚の部分で心地よく装着されるべきであり、それは通常機械的ひずみに供されても、皮膚および粘着剤の可とう性または弾力性の差のために粘着剤が皮膚から離れる可能性がほとんどまたは全くない。
【0107】
裏打ち部材は組成物の広い表面部分を覆うので、水透過性の高い裏打ちを、水が粘着剤に入るための重要な導管として提供することができる。裏打ちへの水透過性の程度および必要とされる装着時間中、粘着剤が水を保持する能力の組み合わせは均衡がとれている必要がある。したがって、粘着剤が皮膚からおよび粘着剤の周縁からの水を十分に保持するように設計されており、そして必要な装着時間にその結合−粘着特性を喪失しない場合、そのときは水不透過性裏打ちが使用に適している。
【0108】
しかしながら、装着中にいくらかの水を粘着剤から逃がすのが好ましい場合、そのときは水または水分透過性裏打ちが好ましい。その場合、水の粘着剤への侵入量および水分蒸発透過率は均衡がとれているべきである。また水は裏打ち層であまりに水溶性であってはならず、そうでなければ、裏打ち層は膨潤し、そして薄層に裂けるかまたは粘着剤に時期尚早な剥離を引き起こすかのいずれかになるかもしれない。裏打ちの外側表面は理想的には、粘着剤が通常ソックス、ストッキングまたはベッドリネンで用いられる布を接着する能力を最小にする表面特性を有する。
【0109】
組成物を被覆材またはクッションに使用する場合、裏打ちはそれが適用される皮膚表面に合致することができ、例えば足が静止しているときに、それはヒトの足の母指球およびかかとの湾曲に合致することができる。歩行および走行中に裏打ちおよび粘着剤で圧迫、引っ張りおよび剪断力が一時的に増加する。可とう性および/または弾性のある裏打ち部材の使用により、次に被覆材またはクッションのソックスまたはベッドカバーリングへの付着を引き起こし、そして皮膚表面から剥がれる可能性がある、裏打ちの周囲を超える粘着剤残留の発生を最小にする。したがって裏打ちの摩擦、圧迫およびその他の弾性特性の係数もまた重要な検討材料である。
【0110】
本発明の1つの実施態様では、裏打ちは約1.5〜2.0ミルの厚さを有するポリウレタンフィルムである。本発明の別の実施態様では、裏打ちは発泡ポリマー材料である。発泡の多孔性性質により、圧力が皮膚接触粘着剤に適用された場合に粘着処方が連続的に孔の外に押し出されて皮膚に接触している粘着層を補給するように、粘着剤の貯留所を提供することができる。
【0111】
(剥離紙)
保存中および使用前に組成物を保護するために提供することができる剥離紙を含むように本発明の組成物を処方することができる。剥離紙は好ましくは簡単に剥がれ、そして強引に付着したり、保存中に組成物から取り除くのが困難になったりすることはない。理想的には、剥離紙は長時間にわたって接触したままである粘着特性を有している。多くの適当な材料から剥離紙を作ることができるが、材料の質感またはデザインで本発明の組成物、クッション等とは区別されるのが好ましく、そして組成物に対して非透過性である。剥離紙の実例にはシリコンまたはフッ化炭素処理した材料、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびテレフタル酸ポリエチレンフィルムが含まれる。剥離紙は典型的には厚さ約3ミルのオーダーに従うが、必要によりさらに厚くても薄くてもよい。
【0112】
(アプリケータータブまたは機構)
粘着剤、クッション等の適切な皮膚位置への適用を促すために設計されたアプリケータータブまたはアプリケーター機構を含むように本発明の組成物を処方することができる。例えばアプリケータータブを2ミルポリオレフィンフィルムにすることができる。
【0113】
(III.形状および大きさ)
本発明の組成物の皮膚接触面積は任意の大きさでよいが、以下のVの部分で記載するような具体的な適用に依存して、典型的には約3〜250cmの範囲内であり、そして好ましくは約20〜150cmの範囲である。
【0114】
(IV.製造)
本発明の組成物は溶融押し出しであり、そしてしたがって単純な混和および押し出し方法を用いて調製することができる。組成物の構成成分を検量し、そして次に、一般的には約90〜160℃の範囲内の温度で例えばブラベンダー、ハーケまたはベーカーパーキンスブレンダーを用いて混合する。溶媒を加えることができるが、必要とはされていない。シングルまたはツインスクリュー押し出し機を用いて得られた組成物を押し出すことができる。組成物を裏打ち部材のような基材に直接押し出し、剥離紙で覆い、輪郭を描き、そして切断することができる。別の可能性は、2枚の剥離紙の間に処方の薄層を押し出し、続いて切断し、そして例えばカーバープレスを用いて圧締することにある。
【0115】
得られた組成物は種々の厚みを有し得るが、典型的には約0.10〜1.0mmの範囲であり、さらに通常的には約0.20〜0.60mmの範囲である。好ましい実施態様では、組成物はテーパードエッジを有するように設計される。
【0116】
種々の成分をミキサーに加えることができる順序は本発明には重要ではない。しかしながら好ましい方法では、粘土粒子をその他の成分と混合する前に相補的ポリマーと混合して均一な分布にする。加えて、粘土を処方に加える前に最初に粘土粒子をジまたはポリグリコールのような構成成分と混合することによりかかる構成成分を粘土構造に挿入するのが望ましいかもしれない。別の好ましい方法では、親水性ポリマー、相補的ポリマー、および粘土粒子の予備混合物を形成する。この予備混合物に疎水性ポリマー、粘着樹脂、さらなる粘土粒子および最後に弾性可塑剤を加える。
【0117】
製造を促すか、または製品特性を制御するために各添加で温度を上昇または低下させることができる。例えば特定の構成成分を低温で加えて、その可能な化学的分解を防御することができる。この様式で、温度条件、攪拌速度および時間を変化させることにより組成物の物理学的特徴を修飾することができる。
【0118】
組成物の望ましい一貫性を提供するために温度プロフィールを設計することもでき、それにより形成された縁を圧締し、そして望ましい創傷被覆材、粘膜またはクッション製品を切断することができる。製造に適当な温度はほぼ70〜110℃である。
【0119】
(V.具体的な用途)
本発明の組成物は経皮および/または経粘膜薬物送達装置、局所および経皮医薬用組成物、圧力軽減クッション(薬用であってもなくてもよい)、包帯、造瘻装置、プロテーゼ固定手段、フェースマスク、音、振動または衝撃吸収材料等のような多くの適用において有用性が見出される。また、電気導電性材料の組み込みにより組成物に電気導電性を付与することもでき、そしてしたがって電極(例えば経皮電気神経刺激電極、電気外科的対極板またはEKGモニタリング電極)のような電気導電性粒子を個体の身体表面に付着させて用いることができる。
【0120】
組成物は:
(1)身体表面から処方を除去することなく、創傷の治癒の程度を見ることを可能にする半透明になるように製造すること;
(2)水と接触したときに非常に高度な膨潤を示すこと;
(3)活性薬剤を貯蔵し、そして適切な条件下で放出するナノスペースを含有すること;
(4)使用中にコールドフローをほとんどまたは全く呈さないこと;および
(5)製造中に粘着、吸収および半透明のような特性を最適化できるように容易に修飾されること;
を含むいくつかの重要な利点を提供する。
【0121】
(A.粘着性クッション)
本発明の組成物は製品の身体表面に対する粘着が要求されるか、または望ましいいくつもの適用において有用である。かかる実施態様の1つは本発明の組成物の皮膚接触層および前記したような裏打ち層を含んでなる粘着性クッションである。
【0122】
適当なクッションには、アーチ支持パッド、水疱パッド、腱膜瘤パッド、たこパッド、魚の目パッド、ひじパッド、指パッド、前腕パッド、かかとクッション、靴中敷き、ひざパッド、中足骨パッド、脛パッド、足指パッド、手首パッド等が含まれる。好ましくは粘着性クッションは少なくとも74時間皮膚に貼られたままである。
【0123】
粘着性クッションはさらに治療上有効量の前記で定義したような活性薬剤を含んでなることができる。特に、静菌性および殺菌性化合物および抗生物質薬剤ならびにその組み合わせのような活性薬剤を粘着性組成物に含めることができる。
【0124】
粘着性クッションは約3〜250cm、典型的には約3〜10cmの範囲の皮膚接触面積を有し得る。粘着性たこクッションの一般的な形態は円形であり、そしてかかるパッチは典型的には直径約3.15〜3.50cmの範囲内である。水疱、腱膜瘤、魚の目クッションは典型的には様々な寸法のテーパードエッジを伴う楕円形態を有する。
【0125】
粘着性クッションは圧力軽減クッションとして足に適用するのに特に有用性が見出される。1つのかかる実施態様では、クッションは褥瘡性、静脈性および糖尿病性足潰瘍等の処置のための活性薬剤を含有する。
【0126】
(B.創傷被覆材)
本発明の組成物は創傷被覆材として有用である。創傷被覆材の実例は身体接触表面を有する身体に面する層および外側に面する非密封裏打ち層の積層複合材を含んでなり、ここで身体接触表面の少なくとも一部は本発明の粘着性組成物からなる。
【0127】
創傷被覆材に適当な活性薬剤は創傷の処置に有用なものであり、そして限定するものではないが抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、静菌性および殺菌性化合物、疼痛緩和薬、タンパク質分解酵素、組織治癒促進薬、血管拡張薬、およびその組み合わせを含む。これらのクラスに入る具体的な薬剤は前記で定めた。
【0128】
身体接触表面全体が粘着剤からなるか、または水分吸収能の高いヒドロゲルもしくは非タック性親水コロイドのような材料で作られた内部創傷接触領域を伴う粘着剤で周縁を作ることができる(マトリックス−アイランド設計)ように創傷被覆材を設計することができる。創傷被覆材はさらに裏打ち層および、創傷被覆材の身体接触表面を覆い、そして同一の広がりを有する取り外し可能な剥離紙を含み得る。
【0129】
身体表面に適用した場合に、実質的に非タック性であるかまたは最大限でもわずかしかタック性がないように粘着性組成物を調製するのが望ましいかもしれない。加えて粘着性組成物は治療上有効量の、前記で定義したような創傷に適用するのに適当である活性薬剤をさらに含んでなり得る。特に抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、静菌性および殺菌性化合物、疼痛緩和薬、タンパク質分解酵素、組織治癒促進薬、血管拡張薬、およびその組み合わせのような活性薬剤が粘着性組成物に含まれ得る。
【0130】
典型的な皮膚接触面積は約3〜250cm、典型的には約3〜10cmの範囲である。創傷被覆材はしばしば長方形の形態であり、そして一般に250cmほどの大きさである。
【0131】
(C.経皮薬物送達装置)
皮膚接触粘着性組成物はまた経皮薬物送達装置に組み込まれた場合にも有用性が見出されている。装置の一例は治療上有効量の活性薬剤を含有する薬物レザバ、外側に面した裏打ち層、および本発明の粘着性組成物を含んでなる装置を身体表面に固定するための手段を含んでなる。
【0132】
かかる経皮薬物送達装置の製造において、皮膚接触粘着性組成物を鋳造するか、またはかかる装置の裏打ち層もしくは剥離紙上に押し出すことができ、そして「パッチ」の皮膚接触面として提供する。薬物レザバを粘着性組成物から分離できるか、または粘着剤自体を装置内の薬物貯蔵器として提供することができる。
【0133】
いくつもの活性薬剤も本発明の薬物送達装置を用いて投与することができる。装置は予め決定された送達期間をかけて望ましい用量を提供するのに有効なある量の薬理学的に活性な薬剤を含有し、そしてまたキャリア(例えば活性薬剤を可溶化するためのベヒクル)、必要により透過促進剤、および場合によっては着色剤、増粘剤、安定剤、界面活性剤等のような賦形剤を含有することもできる。
【0134】
経皮薬物送達装置はまた剥離紙または薬物処方に含有される1つまたはそれより多い構成成分の流れを制限するために選択される材料で形成された速度制御膜を含有することもできる。速度制御膜を形成するのに有用な代表的な材料にはポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアミド系、ポリエステル系、エチレン−エタクリラートコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニル酢酸メチルコポリマー、エチレン−ビニル酢酸エチルコポリマー、エチレン−ビニル酢酸プロピルコポリマー、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリシロキサン−ポリカーボナートブロックコポリマー等が含まれる。粘土結晶構造中に具体的な薬物が組み入れられている場合、水分の存在下で薬物は拡散の法則に従って放出される。この過程は粘土間の空間の内側の荷電種の交換を伴い、したがって一定の薬物放出速度を提供する。
【0135】
(D.口腔ケア製品)
本発明の粘着性組成物はまた種々の口腔ケア製品を処方するのにも有用である。これらは例えば感染、炎症、口唇ヘルペス、潰瘍、外傷性損傷または歯肉炎のような口の症状を処置するための種々の活性成分を局所投与することを可能にする製品を提供するのに有用である。これらの活性薬剤は活性成分として、例えば前記のII.G.の部分で列挙した型の抗生物質、抗炎症薬、疼痛緩和薬、タンパク質分解酵素、および組織治癒酵素を含み得る。例えば活性薬剤トリクロサンを含有する組成物を抗歯肉炎処方として用いることができる。本発明の粘着性組成物を用いる口腔ケア処方のための活性薬剤はまた口臭消臭剤、歯のカラーリング、または美容用薬剤でもよい。口腔ケア処方を作る単一の構成成分または様々な構成成分のいずれかで複数の活性成分を含有するように、本発明の粘着性組成物を用いる口腔ケア処方を設計することができる。例えば、歯または口腔内の何らかのその他の表面に直に接触している粘着層に加えて、様々な層に複数の活性成分を配することができる。これに代えて、様々な活性成分を含有する2つまたはそれより多い構成成分が互いに並んでいることも可能である。
【0136】
本発明の粘着性組成物は特に歯のホワイトニング製品において有用である。歯のホワイトニング製品の設計についての多くの情報はSinghらに対する米国公開特許出願番号第2004/0105834号において見出される。
【0137】
本発明の粘着性組成物で作ることができる口腔ケア製品の実例は、歯の並びに交差して適用される粘着剤含有材料の可とう性ストリップを含んでなる。この口腔ケア製品は歯への適用の後にシステムの外部表面を提供する外側の裏打ち部材;外側の裏打ち部材に接触している粘着層中の1つまたはそれより多い活性物質(例えば歯のホワイトニングまたは抗歯肉炎活性物質);および使用前にそれがなければ暴露される活性物質含有粘着性組成物を覆う前記したような取り外し可能な剥離紙を含んでなる。裏打ち部材はII.G.の部分で記載したとおりでよい。それは例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の不活性材料からなってよい。理想的には、裏打ちはシステムが歯の輪郭に合致することを可能にし、そして使用者に対する任意の不快感を最小にするように比較的軟質で、そして可とう性である。裏打ち部材自体が活性成分を含有してもよい。
【0138】
本発明の粘着性組成物で作られるその他の口腔ケア製品を、口腔のその他の部分に、例えば歯肉、口蓋または口唇の周囲の部分に粘着するように設計することができる。
【0139】
前記で論じたように、口の水分と接触している特定の時間の後に溶解または浸食されるように本発明の粘着性組成物設計することができる。結果的に口の中で溶解または浸食され、そして使用者により除去される必要がない口腔ケア製品にこれを用いることができる。かかる口腔ケア製品を用いて前記で列挙した活性成分を送達することができる。裏打ち部材を含むかかる製品の処方では、裏打ち部材が、歯またはその他の口腔表面に粘着する媒体よりもさらに緩徐に浸食されることが望ましい。かかる裏打ち部材の設計は前記で引用した米国公開特許出願番号第2004/0105834号にて論じられている。かかる裏打ち部材の好ましいクラスはアクリラートポリマー類から作られる。好ましいアクリラートポリマー類はEudragit(登録商標)シリーズE、L、S、RL、RSおよびNEコポリマーのようなEudragit(登録商標)コポリマー(メタクリル酸およびメタクリル酸メチルのコポリマー)である。加えて、Eudragitポリマーの混合物またはEudragitポリマーとその他のポリマーとの混合物および賦形剤(例えば緩衝剤、pH調整剤)を用いて、口腔ケア製品の残りの構成成分に相対して裏打ち部材の浸食の速度を調整することができる。
【0140】
(E.身体表面への粘着が要求されるその他の製品)
本発明の組成物はまた例えば医療用装置、診断システムおよび身体表面に固定されるその他の装置を固定するための粘着剤として、多くのその他の局面において、および身体表面への粘着が必要であるかまたは望ましい任意のその他の適用においても有用である。組成物はまた造瘻装置のためのシーリング材として、歯科用粘着剤を含むプロテーゼとして、フェースマスクとして、音、振動または衝撃吸収材料として、化粧用および薬用化粧用ゲル製品、薬物を含有する緩徐に溶解するフィルムまたは口腔適用のための口臭消臭剤における担体としても有用であり、そして当業者に公知もしくは解明可能な、または未だ見出されていないその他の用途を有するであろう。
【0141】
本発明の実施には、特記しない場合、当業者の範疇であるポリマー化学および粘着剤製造の従来技術を用いる。かかる技術は文献において十分に説明されている。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は、本発明の化合物を作製および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために出すものであり、そして発明者がその発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではない。数字(例えば量、温度等)に関する精度を確実にするための努力を行っているが、いくらかの誤差および偏差は説明されるべきである。特記しない場合、部分は重量による部分であり、温度は℃であり、そして圧力は大気圧であるかまたはそれに近い。
【0143】
(略語および商標)
実施例では以下の略語を用いる:
Cloisite Na 天然粘土(サザンクレイプロダクツ)
Cloisite 15A ジオクタデシルアンモニウムで修飾した天然粘土(サザンクレイプロダクツ)
Eudragit Eudragit 100−55、メタクリル酸コポリマー(ロームアメリカ社)
HPC ヒドロキシプロピルセルロース(ヘルクレス)
Irganox Irganox(登録商標)1010、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン(チバガイギー)
Isolene Isolene(登録商標)400、シス−1,4ポリイソプレン(エレメンティス・スペシャリティーズ・パーフォーマンス・ポリマーズ)
PEG PEG400、ポリエチレングリコール
1,2−PG 1,2−プロピレングリコール
PIB ポリイソブチレン、Vistanex(登録商標)LM−MH(エクソンモービルケミカル)
PVP Kollidon(登録商標)90ポリビニルピロリドン(BASF)
Regalite Regalite(登録商標)9100、部分的水素化炭化水素樹脂(ヘルクレス)
SIS SIS ベクター4114、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(デキシコポリマーズ);42重量%スチレン−イソプレンジブロック;全体のスチレン:イソプレン比 15:85
(実施例1)
処方1を以下のように作製した。PEG21gにCloisite Na7gを加え、そして手で均質なペーストが形成されるまで混合した。取り扱いが可能になるまで粉末PVPの一部をこのペーストに加えた。得られた予備混合物を2個のシグマブレードローターを有するハーケミキサーに移し、130℃まで加熱した。PVPの残りを少量ずつ12分間、30rpmの攪拌速度で加えた。処方全体の混合を60分間続けた。最終組成物を表1に示す。
【0144】
【表1】

ヒドロゲル処方1は透明であり、むしろ剛性であり、そして水に溶解できる。この処方を顕著に圧搾することなく、身体表面に装着することができる。コールドフローは類似のPVP−PEG組成物に関するものよりも有意に少なく、特徴はその運動性を妨害するPEGおよび粘土のインターカレーションに起因し得る可能性がある。この仮定を解明するために、粘土の小角度への基底反射のシフト、すなわち空間距離の増加を示すX線回折パターンが得られた。分子運動性の喪失はPVP−PEG処方の溶解時間を〜1.3倍に低下させた。粘膜適用のための見込みのある候補であるが、溶解時間を増加させるように処方を修飾するのが好ましい。
【0145】
(実施例2)
溶解時間を増加させるためには、ポリマー構成成分間の相互作用がかなり高くなければならない。PVPおよびPEGはPEGの末端ヒドロキシル基とPVPのカルボニル基の間でH結合を形成することができる。この相互作用は迅速な溶解を妨げるかなり希な物理的ネットワークの形成に至る。このさらなる溶解遅延によりインターカレーション過程が生じるのが可能になる。H結合の密度を増加させるために、PEGを低分子量1,2−PGで置換し、そしてカルボキシ基(Eudragit)またはヒドロキシル(HPC)を含有するさらなる構成成分を導入した。結果として、表2に示すように2つのその他の処方、処方2および処方3を調製した。
【0146】
【表2】

混合手順は以下のとおりである。粘性の塊を形成するまで粉末PVPを液体1,2−PGに加えた。この塊に粘土粒子を手で分散させた。次いで塊をハーケミキサーに移し、30rpmの攪拌速度で130℃まで加熱し、そして残留PVPおよびEudragit(またはHPC)を少量ずつ6〜7分間隔で加えた。全混合サイクルは〜60分であった。最終処方は透明であり、そして加熱圧締により〜0.3mmの厚さのサンプルに容易に加工することができた。これを水疱(パッド)として、および緩徐に溶解するフィルムとして試験した。水疱に適用するために、これらの組成物を24〜36時間装着した。組成物は緩徐に溶解するフィルムとして良好な使用可能性を示した。少し溶解し、そしてゲルを形成する膨潤性フィルムの場合、処方2を口腔粘膜(アーチおよび頬)に30〜90分装着した。粘膜表面に何ら残留物を残すことなくフィルムを除去した。処方3は経口適用時に溶解時間>20分で完全に溶解した。
【0147】
(実施例3)
例えば体重により粘着剤が発達させる負荷に対する抵抗性を改善するために、選択されるヒドロゲル処方を親水コロイドマトリックスと組み合わせた。この目的のために、SISベースのマトリックスおよび高含量の親水相を含有するいくつかの処方、表3に示す処方4〜7を調製した。
【0148】
第1段階をPVP/PEG/粘土組成物として予備混合物(PM)として調製した。PEG21gにCloisite NaまたはCloisite15A 7gを加え、そして手で比較的均質な分散物に到達するまで、およそ5分間混合した。この段階の間、PEGは粘土間の空間に浸透する。次いでこの分散物を、シグマブレードを有するハーケミキサー(シグマブレードの代わりにベンバリーローターを用いることができる)中30rpmで置いた。次いで室温および30rpmで粉末PVP42gをゆっくりと、およそ40分間かけて加えた。したがって、PMは60%PVP、30%PEGおよび10%粘土を含有した。
【0149】
予備混合組成物の高い粘性のために、自己加熱の結果として温度は約50〜60℃まで上昇した。ローター速度60rpmでおよそ85分間混合を続けた。予備混合物を調製した後、ミキサーから出した。全ての最終親水コロイド処方に関して、混合の温度計画は類似した。
【0150】
【表3】

処方7に関する混合計画は以下のとおりである。温度を130℃まで上昇させ、そしてSIS 14gおよびRegalite 11.9gを30rpmで加えた。およそ15分後、混合を開始した後、PM28gを加えた(およそPVP16.8g、PEG8.4gおよび粘土2.8gを含有する)。およそ15分後、さらなる粘土5.6gを加えた。約10分後、Isolene 10.5gを導入した。この最後の成分を充填した後、速度を60rpmまで上げ、そしてさらに30分間混合を続けた。
【0151】
組成物をミキサーからくみ上げ、そして剥離紙またはその他の適切な基材上に押し出した。
【0152】
処方7ならびに双方ともコンバテック社の市販の製品DuoDERM(登録商標)制御処方被覆材(「DuoDERM CGF」)およびDuoDERM(登録商標)Extra Thin CGF(登録商標)被覆材(「DuoDERM Thin」)をPETまたはPE基材に対する、およびヒト皮膚に対してもその粘着力に関して試験した。PETおよびPE基材に対する粘着強度、ならびに水分蒸発透過速度および水取り込みに関する結果を表4で示す。
【0153】
【表4】

以下の表の処方7、ならびに処方5および6を溶融混合および圧締(または押し出し)により調製した。全処方は同一の設計であった:厚み1.5ミルの裏打ちフィルムMedifilm437(非タック性)、粘着層(〜15ミル)、および剥離紙(粘着しない一面を有するPETフィルム)。DuoDERM被覆材と比較して、処方7はいくつかの重要な利点を有した:双方の基材に対しておよそ同一の値の粘着強度でMVTRおよび水取り込みが本質的に高かった。
【0154】
ヒト皮膚に相対する剥離力に関するデータを表5に示す。180度方向の剥離力作用で装着時間の関数として剥離力を測定した。
【0155】
【表5】

処方7の最も独特な特徴は装着時間での粘着の増加である。2つのカテゴリーの志願者(M=男性、F=女性)に関して、装着24時間後の剥離力は初期剥離力よりも4〜7倍高かった。DuoDERM CGF被覆材を含むその他の処方に関しては、かかる効果を観察されなかった。恐らく10% PIBの存在のために、押し出し時に水分流の速度を減速させるために提供される疎水層を形成した処方4〜6もまたこの効果を示さなかった。この効果の説明は、粘着強度がPVP−PEG組成物の水含量に依存することに基づく。水の存在下の空隙率の増加およびレオロジー特性の変化のために、このポリマー対の粘着強度は最大になる。粘着強度の最大値は水の〜20重量%に相当し、すなわち24時間で処方7の水濃度はこの値に達する。さらに加湿したときに、剥離力は低下する。この処方を、全層または中間層湿性創傷における、またはマトリックス−アイランド被覆材のためのマトリックスとして、または水疱パッチとしての長時間適用に用いることができる。処方4〜6は魚の目および腱膜瘤クッション、水疱パッチ、原因となる創傷等のための被覆材等として有用性が見出される。処方7から調製した水疱パッチの装着研究の結果を、ブランド名Dr.Scholl’s(シェーリングプラウ・ヘルスケアプロダクツ社)のもとで販売されている水疱パッチと比較して表6に示す。6人の志願者を研究に用いた。
【0156】
【表6】

処方7に関して装着の永続性が高くなることが観察された。初期タック、滑り、縁の浮き上がり、心地よさ、コールドフローのような特性を4等級で評価した場合、それらはとりわけ2日目および3日目で、処方7に関してDr.Scholl製品よりもかなり高かった。パッチの厚みは装着結果に有意な影響及ぼさないことが見出されたが、15ミル(〜375□)パッチに関するデータは10ミルパッチよりもわずかに良好であった。
【0157】
(実施例4)
処方8〜10は有意な量の水分を吸収することができる非タック性アイランドのために開発された。水取り込みを増加させるために、HPCのようなさらなる親水性薬剤および寒天を処方に導入した。加えて、PMに含有される親水性粘土Cloisite Naを、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウムで修飾した、より疎水性であるCloisite 15Aと組み合わせて用いた。一般に、HPC、寒天および粘土は初期タックおよび粘着強度を抑制することが見出された。加えて、粘着促進剤Regaliteおよび低分子量PIBを除去した。得られた処方を表7に示す。
【0158】
【表7】

これらの処方は、乾燥サンプルの重量を超えて20倍ほどの重量の膨潤サンプルとして計算される非常に高い膨潤比率を呈した。処方をまた特徴的な境界線を示さないで一緒に圧締することもできる。健常な手の皮膚でのマトリックス−アイランドパッチの装着結果は成功であり、装着時間は装着者の60%で80時間を超え、そして装着者の20%で100時間を超えた。
【0159】
本発明を、その好ましい具体的な実施態様、前記の記載、ならびに説明を意図するものであり、そして発明の範囲を限定するものではない実施例と組み合わせて記載してきたが、発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、そして均等物を置き換えることができることは当業者には理解されるべきであることは理解されよう。その他の態様、利点および修飾は本発明に関係する当業者には明白であろう。
【0160】
したがって、本発明の範囲は故に、請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と一緒に添付の請求の範囲を参照して決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性ポリマー;
弾性可塑剤;
粘着樹脂;
親水性ポリマー;
該親水性ポリマーに水素結合できる相補的ポリマー;および
粘土粒子;
を含む、粘着性組成物。
【請求項2】
前記疎水性ポリマーがポリイソブチレン系、ブチルゴム類、天然ゴム粘着剤、ビニルエーテルポリマー類、ポリシロキサン系、ポリイソプレン系、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類、イソブチレン−イソプレンコポリマー類、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリクロロプレン系、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー類、アクリラート系およびその組み合わせから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性ポリマーがポリイソプレン系、ブチルゴムスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類、およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記弾性可塑剤がスチレンベースの可塑剤、低分子量ポリイソブチレン系、低分子量ポリイソプレンゴム類およびその組み合わせから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記スチレンベースの可塑剤がスチレン−ブタジエンブロックコポリマー類、スチレン−イソプレンブロックコポリマー類およびその組み合わせから選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記粘着樹脂が水素化炭化水素樹脂類、炭化水素樹脂類および合成ポリテルペン樹脂類から選択される無極性粘着樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、ならびにそのコポリマーおよび混和物から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記親水性ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系ならびにそのコポリマーおよび混和物から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記相補的ポリマーが低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択されるオリゴマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記オリゴマーが低分子量ポリアルキレングリコールである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記粘土粒子の平均直径が約<15μである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記粘土粒子がフィロケイ酸塩からなる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記フィロケイ酸塩がモンモリロナイトである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
約1〜40重量%疎水性ポリマー;約1〜30重量%弾性可塑剤;約1〜30重量%粘着樹脂;約1〜50重量%親水性ポリマー;約1〜30重量%相補的ポリマー;および約1〜30重量%粘土粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
約15〜25重量%疎水性ポリマー;約10〜20重量%弾性可塑剤;約13〜20重量%粘着樹脂;約20〜30重量%親水性ポリマー;約8〜18重量%相補的ポリマー;および約8〜15重量%粘土粒子を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
さらに活性薬剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記活性薬剤が抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、静菌性および殺菌性化合物、腐食剤、角質溶解薬、疼痛緩和薬、タンパク質分解酵素、組織治癒促進薬、血管拡張薬、発泡薬ならびにその組み合わせから選択され、そして治療上有効な量で存在する請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
さらに透過促進剤を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
粘着剤、抗酸化剤、架橋剤または硬化剤、pH調節剤、色素、染料、屈折性粒子、導電種および抗菌剤からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ポリイソプレン系、ブチルゴム類、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類、およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類から選択される疎水性ポリマー;
スチレンベースの可塑剤、低分子量ポリイソブチレン系、低分子量ポリイソプレンゴム類およびその組み合わせから選択される弾性可塑剤;
水素化炭化水素樹脂類、炭化水素樹脂類および合成ポリテルペン樹脂類から選択される粘着樹脂;
ポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、ならびにそのコポリマーおよび混和物から選択される親水性ポリマー;
低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;ならびに、
フィロケイ酸塩粒子;
を含む、粘着性組成物。
【請求項21】
前記疎水性ポリマーがスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーである請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記弾性可塑剤が低分子量ポリイソプレンゴムである請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記粘着樹脂が水素化炭化水素樹脂である請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記親水性ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系ならびにそのコポリマーおよび混和物から選択される請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記相補的ポリマーが低分子量ポリアルキレングリコールである請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記フィロケイ酸塩がモンモリロナイトである請求項20に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の粘着性組成物の皮膚接触層および裏打ち層を含む、皮膚に適用するための粘着性クッション。
【請求項28】
少なくとも一部が請求項1に記載の粘着性組成物からなる身体接触表面および外側に面した非密封裏打ち層を有する身体に面した層の積層複合材を含む、創傷被覆材。
【請求項29】
治療上有効量の活性薬剤を含有する薬物レザバ、外側に面した裏打ち層、および請求項1に記載の粘着性組成物を含む装置を身体表面に固定するための手段からなる経皮薬物送達装置。
【請求項30】
ポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、およびそのコポリマーおよび混和物から選択される親水性ポリマー;
低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;ならびに
粘土粒子;
を含む、緩徐に溶解するフィルム。
【請求項31】
前記粘土粒子がフィロケイ酸塩からなる請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
ポリ(N−ビニルラクタム)系、ポリ(N−ビニルアミド)系、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)系、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、セルロース誘導体、多糖類、およびそのコポリマーおよび混和物から選択される親水性ポリマー;
低分子量ポリアルキレングリコール系、低分子量ポリアルコール系、モノマーおよびオリゴマーアルキレングリコール系、エーテルアルコール系、炭素二酸系(carbonic diacids)およびアルカンジオール系から選択される相補的ポリマー;
水膨潤性水不溶性ポリマー;ならびに
粘土粒子;
を含む、緩徐に溶解するフィルム。
【請求項33】
前記粘土粒子がフィロケイ酸塩からなる請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の粘着性組成物の歯接触層および裏打ち層を含む、歯に適用するための口腔ケア製品。
【請求項35】
請求項1に記載の粘着性組成物の粘膜接触層および裏打ち層を含む、口腔粘膜に適用するための口腔ケア製品。

【公表番号】特表2008−508954(P2008−508954A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525060(P2007−525060)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/028063
【国際公開番号】WO2006/017807
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505316978)コリウム インターナショナル, インコーポレイテッド (5)
【出願人】(503013358)エイ.ブイ.トップチーブ インスティテュート オブ ペトロケミカル シンセシス (9)
【Fターム(参考)】