説明

粘着転写性液体現像剤、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】静電潜像担持体上に形成されたトナー像をトナー粒子の粘着力で転写する画像形成方法に用いた際に、転写時に画像が欠けることを抑制することができる粘着転写性液体現像剤及びこれを用いた画像形成装置並びに画像形成方法を提供する。
【解決手段】アクリ酸エステルモノマーA/メタクリル酸エステルモノマーB/アクリル酸(メタクリ酸)ベンジルエステルC/アクリル酸(メタクリ酸)エポキシエステルモノマーD/アクリル酸(メタクリ酸)ヒドロキシエステルモノマーE=5〜20/40〜80/2〜20/2〜16/2〜25(mol%)の多元共重合体樹脂を含有した粘着転写性液体現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子と、当該トナー粒子を分散させる液体とからなり、静電潜像担持体上の静電潜像にトナー粒子を付着させて当該静電潜像をトナー像化し、当該静電潜像担持体上に形成されたトナー像をトナー粒子の粘着力で転写基材上に非加熱で転写する画像形成方法に使用される粘着転写性液体現像剤、及びこれを用いた画像形成装置並びに画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消費者のニーズが多様化している今日、印刷物の製造についても少量かつ多品種の製造が要求される傾向が顕著になってきている。そこで、このような要求に対応するための方法として、費用と時間がかかる製版工程を必要としない電子写真法が着目されている。
【0003】
電子写真法におけるLED、レーザビーム等のデジタル的な潜像形成技術の発達により、例えば1200DPI等の高精細なドット像の書き込みが可能になっており、このような潜像形成技術を採用した高精細、高画質な画像を形成することができる電子写真用現像剤、画像形成方法及び装置が望まれている。
【0004】
このような高画質なプリントを得るためには、ドット面積の正確な再現性が必要で、トナー像を潜像担持体や中間転写体から中間転写体や転写紙等の転写基材に転写する際のトナー飛散や潰れ(加熱・加圧定着でも生じる)は、特にカラープリントにおいて主要な課題となる。使用するトナーの粒径を微細化すれば、高解像度トナー像を実現できる。又、微細な粒径のトナー粒子を使用すれば、トナー像の厚さも薄くなり色重ねでカラープリントを得る場合の色表現性も向上する他、最終記録体である転写紙上に転写されたトナー像の厚みが粒径に応じて薄くなる分、転写紙のカールやトナー像のヒビわれの程度も改善される。
【0005】
トナー粒子としては、粉体キャリア等と摩擦帯電させて乾式現像方式に用いられる粉体トナーと、液体キャリアである担体液に分散して液体現像方式に用いられるトナー(以下、液体トナーという)とがある。このうち粉体トナーでは、粒径が5ミクロンからサブミクロンのオーダの微粉トナーである場合、トナー飛散抑制や転写処理後の潜像担持体である感光体上の残留トナーの除去が困難になるという問題がある。一方、液体トナーは、トナー粒子が担体液に分散して使用されるため、このような問題も生じないで微細化トナーとしての取扱いが容易である。そのため、粉体トナーを用いた乾式電子写真法と比較して、グラビア印刷方式やオフセット印刷方式などのような高精細な画像の印刷が可能な方式と同程度の高精細性を達成することができる。又、トナーの溶融温度が低いほど消費電力や高速化に有利であるが、溶融温度が低い粉体トナーではブロッキングを起こすという問題がある。一方、液体トナーでは、トナー粒子を担体液に分散して使用するので、このような問題も無く、低融点(低軟化点)のトナーを採用できる。
【0006】
従来の液体トナーを使用する現像方式では、静電潜像を液体現像で現像してトナー像が形成された感光体表面に転写紙を接触させ、転写紙の裏面にコロナ放電器、転写ローラ等で転写電界を形成する。これにより、感光体上のトナー像を転写紙上に転写する静電的な転写方法を用いた場合には、電荷が付与されて帯電した転写紙が静電的に感光体に吸着される場合があった。また、転写ローラ等で加圧したりする結果、トナー像が潰れて例えば細線の幅や網点ドット面積の忠実な再現が困難な場合があった。
【0007】
また、従来の液体トナーを使用する液体現像画像形成装置においては、像がつぶれて高精細な画像を得られない場合があった。トナー粒子と担体液とから成る現像液により現像された潜像担持体の表面には、トナー粒子だけではなく担体液も含む現像液層から成るトナー像が形成されている。液体現像によって形成された潜像担持体上のトナー像を電界で転写紙等に電界を用いて転写するには、転写電界が形成された潜像担持体と転写紙等の転写相手との間、すなわち転写ギャップには、適正な量の担体液は必要である。
【0008】
しかし、担体液が過剰な場合、ドットやラインなどのトナー像がつぶれ、ライン幅が太くなったり、画像濃度にムラが出たりすることがあり、潜像担持体上に形成されたトナー像を忠実に転写紙等に転写するのは困難である。これは、潜像担持体の表面に担体液が過剰に存在すると、担体液が少ない場合と同じ転写電位差では電界不足となり、転写時に、潜像担持体の表面でトナー像を構成するトナー粒子が、潜像に忠実に移動できないことが原因であると考えられる。多量の担体液に合わせて必要な電界を形成するためには、より高電圧を必要とする不具合が生じる。
【0009】
また、プリントに用いられる転写紙等の転写基材についても多品種が要求されるようになってきている。普通紙に限らず、紙の表面に光沢を持たせたり、平滑性を良くしたりするためにその表面に「クレー」と呼ばれる白土を塗るコート紙や、樹脂製のフィルム等を転写基材として用いることが期待されている。コート紙や樹脂製のフィルムは、その表面の平滑性、材料の特徴から、担体液を全く吸収しないか或いは吸収量が普通紙に比較して少ない。このため、転写ギャップの担体液が多い場合のような転写状態となり、画像がつぶれてしまうことがある。
【0010】
このような問題に対して、従来の液体現像画像形成装置においては、潜像担持体の表面から余剰な担体液を除去するスクイズローラを備えたものがある。スクイズローラを備えた構成としては、潜像担持体表面に対して所定距離をとって対向配置し、潜像担持体回転方向と表面が逆方向に移動するよう回転させる方法や、画像部のトナーを除去しないような電位差を設けたローラをトナー像に接触させ、担体液を付着させて除去する方法が提案されている。そして、さらに画像のつぶれを防ぐための方法として、電圧を印加したローラを、潜像担持体上のトナー像の表面に、空隙をもって対向させ、潜像担持体上に形成されたトナー像のトナー固形分率を高めた後に該トナー像を記録媒体に転写する方法がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0011】
また、特許文献3には、潜像担持体上や中間転写体上のトナー画像を乾燥させた後、転写時に転写基材との間に非水液状担体を供給し、静電転写する方法が提案されている。乾燥させることにより、トナー画像を形成するトナー粒子の粒子間に存在する担体液が蒸発し、トナー粒子が凝集し、これによってトナー粒子間の相互作用が高まったところへ、非水担体液を供給し電界転写するものである。転写基材への転写時に、トナー粒子が個々に挙動しなくなりトナー粒子の凝集体として転写するので、トナー画像のつぶれや、広がりを防止し、高解像力のある、高画質な画像を得ることができる。
【0012】
しかしながら、このようなつぶれを防ぐための方法を用いても、液体現像方式で静電的に転写を行う場合、潜像担持体表面から転写基材へのトナー粒子の移動は、トナー粒子が液中を泳動するため、潜像担持体と転写基材との間に担体液が必要である。そして、担体液があるために画像が潰れたり、担体液が転写基材である転写紙に浸透して転写紙が膨潤し、画像が乱れたりといった不具合が生じる。
【0013】
そこで、液体現像方式で静電的な方法以外で転写を行うものとしては、特許文献4に記載の方法がある。特許文献4では、ガラス転移温度を調整することと、液体担体の乾燥程度を調整することによりトナーの粘着性を高め、その粘着力で転写する、粘着転写、オフセット転写等と呼ばれる方法である。トナー像が自己定着することにより、速やかなフィルム形成を行い、フィルム状となり一体的に挙動するトナー像をその粘着力により転写する。このようにトナーの粘着力で転写を行うものであれば、転写前にトナー以外の液を極力無くしておくことができ、つぶれや転写残しがなく、良好に転写することができる。
【0014】
しかしながら、特許文献4に記載の方法であっても、転写時にトナー像の一部が感光体表面に残ることがあった。これは、フィルム形成したトナー像であってもトナー粒子間のつながりが弱く、フィルム状のトナー像からトナー像の一部が剥がれ、感光体表面上に残るために生じる。そして、トナー像の一部が感光体表面に残ると、その部分の画像が欠けた状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、その目的は、静電潜像担持体上に形成されたトナー像をトナー粒子の粘着力で転写する画像形成方法に用いた際に、転写時に画像が欠けることを抑制することができる粘着転写性液体現像剤、及びこれを用いた画像形成装置並びに画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、担体液中に分散した、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子を静電潜像に静電気的に付着させて当該静電潜像をトナー像化し、当該トナー像を前記トナー粒子の粘着力により転写基材上に転写を行う画像形成方法で使用される粘着転写性現像剤において、
前記トナー粒子の樹脂が、下記一般式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD及びモノマーEを構成成分とする共重合体を含有することを特徴とする。
【0017】
【化1】

【0018】
(但し、一般式(1)中、RはH又はCHを表し、RがHの場合、nは6〜9、RがCHの場合、nは10〜14を表す。)
【0019】
【化2】

【0020】
(但し、一般式(2)中、nは6〜8を表す。)
【0021】
【化3】

【0022】
(但し、一般式(3)中、RはH又はCHを表す。)
【0023】
【化4】

【0024】
(但し、一般式(4)中、RはH又はCHを表す。)
【0025】
【化5】

【0026】
(但し、一般式(5)中、RはH又はCHを表す。)
【0027】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の粘着転写性液体現像剤において、
前記モノマーA〜Eの構成成分比がモノマーA/モノマーB/モノマーC/モノマーD/モノマーE=5〜20mol%/40〜80mol%/2〜20mol%/2〜16mol%/2〜25mol%であることを特徴とする。
【0028】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の粘着転写性液体現像剤において、
前記樹脂の重量平均分子量(Mw)が20000〜50000、数平均分子量(Mn)が10000〜40000であることを特徴とする。
【0029】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の粘着転写性液体現像剤において、
前記樹脂の体積抵抗が1×1010〜1×1016Ω・cmであることを特徴とする。
【0030】
また、請求項5の発明は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、当該静電潜像担持体上に形成された静電潜像にトナー粒子を含有する粘着転写性液体現像剤を供給して、当該静電潜像をトナー像化する現像手段と、当該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した前記現像剤中の担体液の一部を当該静電潜像担持体から除去する余剰液除去手段と、当該担体液の一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写手段とを備えた画像形成装置において、
前記粘着転写性液体現像剤は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の粘着転写性液体現像剤であることを特徴とする。
【0031】
また、請求項6の発明は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、当該静電潜像担持体上に形成された静電潜像にトナー粒子を含有する粘着転写性液体現像剤を供給して、当該静電潜像をトナー像化する現像工程と、当該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した前記現像剤中の担体液の一部を当該静電潜像担持体から除去する余剰液除去工程と、当該担体液の一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写工程とを備えた画像形成方法において、
前記粘着転写性液体現像剤は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の粘着転写性液体現像剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、トナー粒子の樹脂成分として、上記一般式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD及びモノマーEを反応させた生成物(共重合体)を含有することによって、静電潜像担持体上に形成されたトナー像をトナー粒子の粘着力で転写する画像形成方法に用いた際に、転写時に画像が欠けることを抑制することができる粘着転写性液体現像剤及びこれを用いた画像形成装置並びに画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】液体現像剤の転写性の良否を説明するための図である。
【図2】樹脂の体積抵抗の測定に用いた装置の概略図である。
【図3】本発明による第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明による第2実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明による第3実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者は、液体現像画像形成装置における画像欠けの問題について検討した結果、下記一般式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD及びモノマーEを反応させた生成物(共重合体)を含有する樹脂をトナー粒子の樹脂成分として含む粘着転写性液体現像剤とすることよって、静電潜像担持体上に形成されたトナー像をトナー粒子の粘着力で転写する画像形成方法に用いた際に、転写時に画像が欠けることを抑制することができることを究明した。
【0035】
【化6】

【0036】
(但し、一般式(1)中、RはH又はCHを表し、RがHの場合、nは6〜9、RがCHの場合、nは10〜14を表す。)
【0037】
【化7】

【0038】
(但し、一般式(2)中、nは6〜8を表す。)
【0039】
【化8】

【0040】
(但し、一般式(3)中、RはH又はCHを表す。)
【0041】
【化9】

【0042】
(但し、一般式(4)中、RはH又はCHを表す。)
【0043】
【化10】

【0044】
(但し、一般式(5)中、RはH又はCHを表す。)
【0045】
特に、上記粘着転写性液体現像剤を使用することによって、転写基材の特性(抵抗値など)や表面性(凹凸など)によらず良好な転写性が得られ、かつ、定着も非加熱で現像後の担体液のスクイズによりトナー層中の担体液を除去して適度に粘着化して、トナー像を転写基材上に適切に転写し、転写基材に加圧ローラでトナー像を圧着して定着することが可能となる。非加熱での粘着転写を実現するには、前記現像剤中の担体液が減少したときに、トナー層が粘着性を発現し、トナー層が一体となって転写することが重要となる。トナー層が粘着性を帯びていても、トナー層内で分断されてしまうと、転写率が低下し、狙いの画像濃度を得ることができなくなる。即ち、図1に示すように、静電潜像担持体1上に形成されたトナー像3を転写紙等の転写基材2上に転写する際に、平坦面を有する転写基材2Aや凹凸面を有する転写基材2Bに、(C)や(D)で示す場合のように、トナー像3が層の中間部で分断されて一部3aが静電潜像担持体1上に残存する場合がある。しかし、上記本発明による粘着転写性液体現像剤を使用することによって、(A)や(B)で示すように、トナー像の全量を転写基材2A及び2B上に確実に転写することが可能となる。
【0046】
また、定着された最終画像には粘着性が残っていないことも重要である。このため、転写時に担体液が一定量除去されたときに粘着性を発現し、トナー層が一体となって転写基材上に転写されたときに、最終的には粘着性のない画像を形成することが必要となる。上記本発明による粘着転写性液体現像剤を使用することによって、粘着性のない画像を適切に形成することが可能となる。
【0047】
本発明による粘着転写性液体現像剤のトナー粒子の樹脂成分となる反応生成物(共重合体)を構成するモノマーAは、転写時の粘着性を付与するものであり、モノマーBは、トナー粒子と担体液との親和性を高め、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる。また、モノマーCは、トナー層のフィルム化を促進させ、転写時にトナー層を一体化して転写させたり、定着後のトナー層被膜を強固にしたりする効果がある。そして、本発明者の鋭意研究の結果、モノマーAとモノマーBとが共重合しているところにモノマーCが分岐してグラフト重合しているポリマーとすることにより、従来の粘着転写性液体現像剤よりもトナー像の欠けが生じにくいフィルム状のトナー像を容易かつ確実に形成することができることが分かった。しかし、モノマーAとモノマーBとが共重合しているポリマーにモノマーCは直接グラフト重合することができないので、モノマーDとモノマーEとを前記ポリマーとモノマーCとを連結する役割として使用することが大切である。
【0048】
このようなモノマーAとしては、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレートなどがある。
モノマーBとしては、ヘキシルメタアクリレート、ヘプチルメタアクリレート、オクチルメタアクリレート、2エチルヘキシルメタアクリレートなどがある。
モノマーCとしては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどがある。
モノマーDとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどがあげられる。
モノマーEとしてはアクリル酸、メタクリル酸があげられる。
【0049】
モノマーAは、転写時の粘着性を付与するものであり、前記共重合体における成分比が5mol%未満であると粘着力が不足し粘着転写性が低下しやすい。モノマーAが20mol%よりも多いとトナー層のフィルム化効果を阻害し、粘着転写時にトナー層中で分離したり、定着後も印字面がベトつく不具合が生じやすい。このためモノマーAは、前記共重合体成分中で5mol%〜20mol%が望ましい。
【0050】
モノマーBは、トナー中の溶媒との親和性を高め、トナーの分散安定性を向上さ、定着後の粘着性を抑える効果がある。モノマーBの前記共重合体における成分比が40mol%未満であると分散安定の効果が低下し、80mol%よりも多いと粘着性が低下し粘着転性を阻害する傾向がある。このため、モノマーBは前記共重合体成分中で40mol%〜80mol%が望ましい。
【0051】
モノマーCは、トナー像を形成するトナー層のフィルム化を促進させ、転写時にトナー層を一体化して転写させたり、定着後のトナー層皮膜を強固にする効果がある。前記共重合体における成分比が2mol%未満ではフィルム化効果が少なく転写不良を発生させたり、定着強度を低下させ、20mol%よりも多いと溶媒との親和性が低下し凝集が発生する場合がある。このため、モノマーCは前記共重合体成分中で2〜20mol%が望ましい。
【0052】
モノマーDは、樹脂骨格をグラフト、架橋構造にし、転写時のトナー層膜強度を上げたり、着色剤に吸着、一体化させる効果がある。モノマーDの前記共重合体における成分比が2mol%未満ではその効果が少なく、16mol%以上では溶媒親和性が低下する傾向がある。このため、モノマーDは前記共重合体成分中で2〜16mol%が望ましい。
【0053】
モノマーEは、モノマーDとの反応で架橋構造形成に作用したり、カルボン酸の水素結合によるトナー層のフィルム一体化転写性に効果がある。モノマーEの前記共重合体における成分比が2mol%未満ではその効果が少なく、25mol%以上では溶媒親和性が低下する。このため、モノマーE前記共重合体成分中で2〜25mol%が望ましい。
【0054】
これらのモノマーA、B、C、D及びEにより得られる共重合体(樹脂成分)のTg(ガラス転移点)は、−20℃〜30℃が好ましい。−20℃未満では定着後も画像が粘着性を帯び、30℃より高いと粘着転写性が低下する。
【0055】
また、上記モノマーA、B、C、D及びEにより得られる共重合体の構造としては、重合方法によって変わり得るが、一例として以下の一般式(6)で示す構造のようなものがあげられる。なお、下記一般式(6)において、a、b、c、d、eは、それぞれモノマーA、B、C、D、Eのモノマー成分比(mol%)である。
【0056】
【化11】

【0057】
本発明で使用されるトナー粒子の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜100000が好ましく、20000〜50000が特に好ましい。また、このトナー粒子の樹脂の数平均分子量(Mn)は、10000〜80000が好ましく、10000〜40000が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が10000未満、数平均分子量(Mn)が10000未満では、粘着転写性や転写時のトナー凝集力が低下し、一方、重量平均分子量(Mw)が100000以上、数平均分子量(Mn)が80000以上では分散安定性が低下する。この場合、モノマーD、Eにより樹脂の一部をグラフト化、架橋構造にした方が、トナー層の凝集力が高まり、担体液があっても良好な粘着転写性を発現できる。ここで、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、GPC(ゲルパーメイションクロマトグラフ)(島津製作所製、CBM−20/LC−20A/CTO−20A/RID−10Aシステム)を使用することによって測定可能である。
【0058】
また、トナー粒子の樹脂の体積抵抗が1×1010〜1×1016Ω・cmであることが望ましい。1×1010Ω・cm未満であるとトナーとしたときに現像性が低下する。一方、1×1016Ω・cmより高い場合には、トナーの帯電不良となり好ましくない。ここで、樹脂の体積抵抗の測定は、図2に示す装置を用い、2cm×2cmの電極版4A、4B、電極間距離5mmのセル5に被測定物たる樹脂を充填し、500Vの電圧を印加したときに流れる電流値より次式によって計算して求めた。
【0059】
体積抵抗(Ω・cm)=(印加電圧(500V)/電流値)×(電極面積(2cm×2cm)/電極間距離(0.5cm))
【0060】
トナー粒子を構成する着色剤と樹脂の割合は、質量比で1/1〜1/5が望ましい。樹脂の割合が1/1未満では粘着転写性が低下し、1/5より多いとトナー着色力が低下する。
【0061】
着色剤は一般の無機・有機顔料、染料を用いることができる。例えば、プリンテックスV、プリンテックスU、プリンテックスG、スペシャルブラック15、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4−B(以上、デグサ社製)、三菱#44、#30、MR−11、MA−100(以上、三菱化成社製)、ラーベン1035、ラーベン1252、ニュースペクトII(以上、コロンビアカーボン社製)、リーガル400、660、ブラックパール900、1100、1300、モーガルL(以上、キャボット社製)などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ピーコックブルーレーキ、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY、ナフトールイエローS、ナフトールレッド、リソールファーストイエロー2G、パーマネントレッド4R、ブリリアントファーストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3Bインジゴ、チオインジゴオイルピンクおよびボルド−10Bなどの有機顔料、ディスパースファーストイエローG、ディスパースブルーFFR、ディスパースブルーグリーンB、ディスパースイエロー5G、ディスパースレッドFB、リアクティブオレンジ2R、リアクティブレッド3B、リアクティブブルー3G、リアクティブブリリアントブルーR、リアクティブブラックBなどの染料があげられる。
【0062】
これらの着色剤は、純度が高いものが望ましく、特に80%以上のものが望ましい。また、着色剤の極性や抵抗を制御したい場合には、着色剤をフラッシング処理することもトナー粒子の帯電性制御に効果がある。フラッシング処理とは、着色剤を水に溶かした含水液に、更に樹脂分散媒を加え、フラッシャーと呼ばれるニーダー中で良く混合し、顔料のまわりに存在する水を後から添加される樹脂分散媒によって置換する処理をいう。この操作により取出される水を排出し、樹脂溶液中に顔料が分散された状態とし乾燥させて、溶剤を除去し、得られた塊を粉砕することにより着色剤の粉末が得られる。
【0063】
フラッシングする際の着色剤と樹脂の割合は、樹脂100質量部に対して着色剤10〜60質量部が適当である。フラッシング処理には、フミン酸、フミン酸塩(Na塩、NH塩など)またはフミン酸誘導体の存在下に行うのが特に有利である。これら添加されるフミン酸類の量は、着色剤含水液の0.1〜30質量%程度が適当である。フラッシング処理で使用する樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂などが望ましい。
【0064】
本発明の液体現像剤に使用される担体液としては、高抵抗で低誘電率のものが良く、イソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン、ポリアルファオレフィン、シリコーン系オイル等が良好である。
イソパラフィン系炭化水素は、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上、エクソンモービル社製)などが、流動パラフィンはクリストールJ52にJ72、J102、J142、J172、J202(以上、エッソ石油社製)などが、ポリアルファオレフィンはSyn2、Syn4、Syn6(以上、エクソンモービル社製)などが、シリコーン系オイルとしては、KF96 1〜10000cst(信越シリコーン)、SH200、SH344(以上、東レシリコーン社製)、TSF451(東芝シリコーン社製)などがある。
【0065】
トナーのζ電位は10〜200mVが良好である。ζ電位が10mVよりも低いとトナー粒子が凝集したり、電気泳動性が低下して地汚れしたり、濃度が低下する。またζ電位が200mVよりも高いと感光体付着量が低下し濃度が低下する場合がある。
【0066】
トナー粒子の平均粒径は、0.1〜3μmが望ましく、0.1μm以下では、十分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、3μmを超える場合には、色彩、解像性が悪くなる場合がある。
【0067】
本発明の液体現像剤は、現像工程や担体液除去工程で固形分率を上げることによりトナー粒子に粘着性が発現し、粘着転写を可能にする。一方、トナー粒子を転写基材に粘着転写して定着後は、担体液がほとんどなくなるため、粘着性は消失する。
【0068】
次に、本発明に係る粘着転写用液体現像剤を適用可能な画像形成装置ついて図3〜図5に基づいて説明する。
【0069】
図3は、本発明による第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。この第1実施形態に係る画像形成装置10は、静電潜像担持体であるドラム状の感光体11の周囲に、帯電チャージャ等の帯電電圧付与部材12、現像装置13、スクイズローラ14、転写ローラ15、転写基材分離ローラ16、クリーニングブレード17、クリーニングローラ18を備えている。さらに、この画像形成装置10は、画像情報に対応する露光Lを感光体11上に照射する図示しない露光装置、感光体11の表面に残存する電荷を除電する露光Eを照射する図示しない除電装置及び感光体11上に塗布された現像剤中の担体液の一部を乾燥除去するブロア−Bも備えている。
【0070】
このような画像形成装置によって画像を転写紙等の転写基材P上に形成する場合には、矢印A方向に回転駆動する感光体11の表面に、帯電電圧付与部材12により、感光体11の表面を一様に帯電して電荷を与え、露光Lにより非画像部の電荷を消去する。感光体11は、セレン感光体、有機感光体、アモルファスシリコン感光体が使用できる。感光体の表面電位は、400V〜1600Vの範囲が良好である。現像装置13の矢印B方向に回転する現像ローラ13aから供給される液体現像剤Dにより感光体11の電荷の残っている静電潜像にトナー粒子を供給してトナー像化して現像する。その後、スクイズローラ14で余剰の現像液Dを除去し、トナー粒子の粘着力により転写基材Pにトナー像を転写させる。この場合、転写ローラ15によって付与される転写圧は、0.1〜10Kg/cmが良好である。
【0071】
現像ローラ13aは、感光体11と順方向に回転し、スクイズローラ14は感光体11と逆方向に回転させる。この場合、感光体11に対する線速は、現像ローラ13aが1.2倍〜6倍、スクイズローラ14の線速は1.2倍〜4倍が効果的である。現像ローラ13aと感光体11との間には、ギャップG1が形成されており、現像ローラ13aと感光体11の表面との間に供給された液体現像剤DがギャップG1を通じて感光体11の表面に所定厚みで塗布、形成される。この現像ローラ13aと感光体11の表面とのギャップG1は50〜250μmが推奨される。
【0072】
このように現像ローラ13aによって感光体11の表面に供給された液状現像剤D中のトナー粒子は、静電気的に感光体11の表面側に吸引されるために、感光体11の表面から離隔する側の液状現像剤Dは、担体液が主成分となる。この感光体11の表面から離隔する側の液状現像剤D中の担体液を感光体11と逆回転するスクイズローラ14によって感光体11の表面から除去する。このように、感光体11の表面から離隔する側の液状現像剤D中の担体液を感光体11の表面から除去するために、スクイズローラ14と感光体11の表面との間にもギャップG2が形成されている。このギャップG2は30〜150μmが良好である。転写されずに感光体11に残った現像剤Dをクリーニングブレード17、クリーニングローラ18で除去後、感光体11を除電して感光体11の表面を初期状態に設定する。この実施形態においては、露光Lとして、画像部の電荷を残し、非画像部の電荷を消去したが、画像部の電荷を消去し、非画像部の電荷を残す現像方式でも同様に画像形成できる。
【0073】
図4は、本発明による第2実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。この第2実施形態に係る画像形成装置20は、図3で示す第1実施形態に係る画像形成装置10に中間転写部材として中間転写ローラ21を追加した例である。この第2実施形態に係る画像形成装置20においては、矢印F方向に回転する中間転写ローラ21を使用している。そして、感光体11の表面に形成されたトナー像は、中間転写ローラ21の表面に転写され、中間転写ローラ21の表面に転写されたトナー像は、矢印方向Hに搬送される転写基材P上に転写ローラ22によって、転写される。また、この実施形態においては、スクイズローラとして、感光体11の表面と接触せずに現像剤Dの一部を除去するスクイズローラ14aと感光体11の表面と接触してさらに現像剤D中の担体液を除去するスクイズローラ14bを使用している。
【0074】
中間転写ローラ21の材質は、ウレタンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム等の耐溶剤性、弾力性のあるものが望ましく、フッ素樹脂等でコーティングされていれば更に良い。この第2実施形態に係る画像形成装置20においては、図1で示す第1実施形態に係る画像形成装置10よりもさらに高い転写圧力を付与できる。この際、中間転写ローラ21の表面にフッ素樹脂等の低表面エネルギーの材料を用いる場合には、中間転写ローラ21にトナー像を転写するときに高固形分化できるなどの利点があり、第1実施形態に係る画像形成装置10よりも粘着転写性は向上する。この場合、感光体11から中間転写ローラ21にトナー像を転写する一次転写は、100V〜1000Vの静電転写を用い、一次転写圧は0.1〜3Kg/cm、中間転写ローラ21から転写基材Pにトナー像を転写する二次転写圧は0.1〜30Kg/cmが良好である。
【0075】
図5は、本発明による第3実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。この第3実施形態に係る画像形成装置30は、図3で示す第1実施形態に係る画像形成装置10において現像ローラ13aから感光体11の表面に液状現像剤Dを供給する現像装置13を変更している。即ち、液体現像剤Dを貯留する容器13dから汲み上げローラ13cによって液体現像剤Dを汲み上げ、汲み上げローラ13cによって汲み上げられた液状現像剤Dを供給ローラ13bに転写し、さらに、供給ローラ13bから所定厚みの液状現像剤Dを現像ローラ13aに転写し、現像ローラ13aから所定厚みの液状現像剤Dを感光体11の表面に供給するようになっている。このような現像装置13を使用することによって感光体11の表面に液状現像剤Dを薄層にして供給、現像することが可能となっている。この場合の感光体11の表面に形成される液状現像剤Dの層厚は、1〜15μm程度が良く、望ましくは3〜10μmが良い。層厚1μm以下では、濃度が十分でなく15μm以上では解像度が低下する。
【0076】
また、この第3実施形態に係る画像形成装置30においては、中間転写ローラ21上に付着された液状現像剤Dの担体液を除去するために、担体液除去ローラ(溶剤除去ローラ)23が中間転写ローラ21の表面に対向させて配設されている。このような担体液除去ローラ23を配設することによって、転写基材P上に転写されるトナー像の粘着度をより適切に調整することが可能となる。
【0077】
この第3実施形態に係る画像形成装置30は、前述の第2実施形態に係る画像形成装置20と転写基材P上に画像形成する方法は、基本的に同一のため、説明は省略する。なお、この第3実施形態に係る画像形成装置30においては、現像ローラ13aに形成した静電荷像用液体トナー層(液状現像剤D)にコロナ放電を行った後に静電潜像を現像することにより、トナー粒子の凝集力を向上させることができ、解像度を高めることができる。このコロナ放電は、トナー粒子と同極性の場合に効果が高く、電圧は500〜8000V程度が良い。
【0078】
本発明による電子写真液体現像剤は、着色剤、樹脂、担体液、必要に応じて帯電制御剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行い得ることができる。その場合の上記材料の配合割合は、着色剤5〜20質量%、樹脂5〜40質量%、担体液65〜95質量%、帯電制御剤0.1〜1質量%が好ましい。この現像剤をそのまま、あるいは、適当な割合に希釈して現像装置に供給して画像形成を行えば適切な画像を形成することができる。
【実施例】
【0079】
次に、本発明による粘着転写性現像剤について、具体例としての実施例及び比較例に基づいて説明する。先ず、トナー粒子の樹脂の合成例について、(樹脂合成例1)〜(樹脂合成例5)及び(樹脂合成比較例1)〜(樹脂合成比較例3)について説明する。なお、下記各実施例及び比較例の配合量の「部」は質量部を示す。
【0080】
(樹脂合成例1)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーHを300gを仕込み、90℃に加熱し、攪拌しながらラウリルメタアクリレート(モノマーA)0.02mol、2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.23mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.04mol、メタクリル酸(モノマーE)0.01mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、95℃に保ち5時間重合を行った。その後、ベンジルメタアクリレート(モノマーC)0.08mol、アズビスイソブチロニトリル(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を1時間かけて滴下し、85℃に保ち1時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は97%、分子量(Mn)は22000、(Mw)は39000であった。
【0081】
(樹脂合成例2)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにクリストールJ72を320g仕込み、105℃に加熱し、攪拌しながらトリデシルメタアクリレート(モノマーA)0.08mol、ヘプチルメタアクリレート(モノマーB)0.16mol、ベンジルアクリレート(モノマーC)0.02mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.06mol、メタクリル酸(モノマーE)0.06mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、100℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は98%、分子量(Mn)は11000、(Mw)は21000であった。
【0082】
(樹脂合成例3)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにエクソールD130を270g仕込み、80℃に加熱し、攪拌しながら2エチルヘキシルアクリレート(モノマーA)0.05mol、ヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.30mol、ベンジルメタクリレート(モノマーC)0.01mol、グリシジルアクリレート(モノマーD)0.04mol、メタクリル酸(モノマーE)0.02mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は98%、分子量(Mn)は39000、(Mw)は49000であった。
【0083】
(樹脂合成例4)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5Lのフラスコにイソドデカン350gを仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながらテトラデシルメタアクリレート(モノマーA)0.03mol、2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.31mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.01mol、メタクリル酸(モノマーE)0.01mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。その後、ベンジルアクリレート(モノマーC)0.03mol、アズビスイソブチロニトリル(反応開始剤)0.3gよりなるモノマー溶液を1時間かけて滴下し、80℃に保ち2時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は98%、分子量(Mn)は28000、(Mw)は46000であった。
【0084】
(樹脂合成例5)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーMを350g仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながらデシルメタアクリレート(モノマーA)0.05mol、2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.20mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.05mol、メタクリル酸(モノマーE)0.10mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。その後、ベンジルアクリレート(モノマーC)0.01mol、アズビスイソブチロニトリル(反応開始剤)0.4gよりなるモノマー溶液を1時間かけて滴下し、80℃に保ち2時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は97%、分子量(Mn)は34000、(Mw)は43000であった。
【0085】
(樹脂合成比較例1)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーLを320g仕込み、105℃に加熱し、攪拌しながらステアリルメタアクリレート(モノマーA)0.01mol、オクチルメタアクリレート(モノマーB)0.20mol、メチルメタアクリレート(該当なし)0.15mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.03mol、メタクリル酸(モノマーE)0.02mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、100℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は97%、分子量(Mn)は15000、(Mw)は27000であった。
【0086】
(樹脂合成比較例2)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーHを290g仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながら2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.35mol、スチレン(該当なし)0.02mol、グリシジルアクリレート(モノマーD)0.03mol、メタクリル酸(モノマーE)0.02mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は95%、分子量(Mn)は31000、(Mw)は48000であった。
【0087】
(樹脂合成比較例3)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーHを290g仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながらブチルメタアクリレート(該当なし)0.36mol、ベンジルアクリレート(該当なし)0.05mol、グリシジルアクリレート(モノマーD)0.04mol、メタクリル酸(モノマーE)0.03mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は96%、分子量(Mn)は20000、(Mw)は37000であった。
【0088】
〔実施例1〕
フタロシアニンブルー(PB−15:3、大日精化社製) 14部
樹脂合成例1の樹脂(固形分19.5%) 215部
アイソパーH(エクソンモービル社製) 25部
荷電制御剤(フォスファチジルコリン、辻製油社製) 3部
をボールミルに入れて72時間分散後、さらにアイソパーHを30部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0089】
この濃縮液体現像剤100gとアイソパーH、1Lとを混合した現像剤により前述の図3で示す画像形成装置10で画像形成を行った。この場合、転写現像剤固形分92%、転写圧力2Kg/cmでリコー社製ペーパー70Wに粘着転写を行った。
【0090】
〔実施例2〕
前述の図4で示す画像形成装置20で画像形成、粘着転写を行った以外は実施例1と同様に行った。なお、一次転写は印加電圧200Vの静電転写、二次転写は転写圧力8Kg/cmで粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は97%であった。
【0091】
〔実施例3〕
キナクリドンレッド(PR−122、富士色素社製)/ポリエステル樹脂
(三菱レイヨン社製)フラッシング混練物(比率1/1) 30部
樹脂合成例2の樹脂(固形分17.3%) 173部
クリストール J72(エッソ石油社製) 20部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム、日本化学産業社製) 2部
をボールミルに入れて90時間分散後、さらにクリストールJ72を30部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0092】
この濃縮液体現像剤を図5で示す画像形成装置30で薄層現像し、画像形成を行った。この場合、一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力5Kg/cmでリコー社製OHPシートに粘着転写を行った。二次転写時の現像剤固形分は80%であった。
【0093】
〔実施例4〕
ディスパースブルー60(DB−60、有本化学社製) 15部
樹脂合成例3の樹脂(固形分19.9%) 151部
エクソールD130(エクソンモービル社製) 5部
荷電制御剤(ナフテン酸コバルト、日本化学産業社製) 3部
をバスケットミルに入れて5時間分散後、さらにエクソールD130を5部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0094】
この濃縮液体現像剤200gとエクソールD130、1Lとを混合した現像剤により図4で示す画像形成装置20で画像形成を行った。なお、一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力10Kg/cmでポリエステルサテンに粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は96%であった。
【0095】
〔実施例5〕
ナフトールレッド(PR−184、クラリアント社製) 18部
樹脂合成例4の樹脂の樹脂(固形分17.6%) 511部
イソドデカン(エクソンモービル社製) 20部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム、日本化学産業社製) 2部
をボールミルに入れて96時間分散後、さらにイソドデカンを30部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0096】
この濃縮液体現像剤を図5で示す画像形成装置30で薄層現像し、画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力8Kg/cmで厚さ0.5mmの真鍮版に粘着転写を行った。二次転写時の現像剤固形分は95%であった。
【0097】
〔実施例6〕
ナフトールレッド(PR−184、クラリアント社製)/エポキシ樹脂
(ジャパンエポキシレジン社製)フラッシング混練物(比率1/1) 34部
樹脂合成例5の樹脂(固形分12.0%) 425部
アイソパーM(エクソンモービル社製) 5部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム、日本化学産業社製) 2部
をボールミルに入れて90時間分散後、さらにアイソパーMを5部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0098】
この濃縮液体現像剤を図5で示す画像形成装置30で薄層現像し、画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力6Kg/cmでハイコート紙に粘着転写を行った。二次転写時の現像剤固形分は96%であった。
【0099】
〔比較例1〕
フタロシアニンブルー(PB−15:3、大日精化社製) 14部
樹脂合成比較例1の樹脂(固形分22.1%) 190部
アイソパーH(エクソンモービル社製) 30部
荷電制御剤(フォスファチジルコリン、辻製油社製) 3部
をボールミルに入れて72時間分散後、さらにアイソパーHを30部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0100】
この濃縮液体現像剤トナー100gとアイソパーH、1Lとを混合した現像剤により図3で示す画像形成装置20で画像形成を行った。転写現像剤固形分90%、転写圧力6Kg/cmでリコー製ペーパー70Wに粘着転写を行った。
【0101】
〔比較例2〕
ディスパースブルー60(DB−60、有本化学社製) 15部
樹脂合成比較例2の樹脂(固形分25.6%) 117部
エクソールD130(エクソンモービル社製) 40部
荷電制御剤(ナフテン酸コバルト、日本化学産業社製) 3部
をバスケットミルに入れて5時間分散後、さらにエクソールD130を40部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0102】
この濃縮液体現像剤200gとエクソールD130、1Lとを混合した現像剤により図4で示す画像形成装置20で画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力10Kg/cmでポリエステルサテンに粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は92%であった。
【0103】
〔比較例3〕
ディスパースブルー60(DB−60、有本化学社製) 15部
樹脂合成比較例3の樹脂(固形分26.6%) 113部
エクソールD130(エクソンモービル社製) 40部
荷電制御剤(ナフテン酸コバルト、日本化学産業社製) 3部
をバスケットミルに入れて5時間分散後、さらにエクソールD130を40部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
【0104】
この濃縮液体現像剤200gとエクソールD130、1Lとを混合した現像剤により図4で示す画像形成装置20で画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力10Kg/cmでポリエステルサテンに粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は93%であった。
【0105】
各実施例及び比較例の液体現像剤に用いた樹脂の体積抵抗、得られたトナー粒子の平均粒径、当該液体現像剤により画像形成を行ったときの帯電制御率、転写率、画像濃度について、次の評価方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0106】
〈評価方法〉
(1)樹脂抵抗(Ω・cm)は、前述の方法により測定した。
(2)トナー粒子の平均粒径は、島津製作所Sa−CP3を使用し、液体現像剤を積分球式濁度計で透過率15%程度になるまでアイソパーで希釈し、Sa−CP3用セルに充填する。測定条件はACCEL480、MODE:CENT、3〜16チャンネルで行った。
(3)帯電制御率は、電着法により算出。なお、電着条件として、電極間距離:1cm、電極面積:2cm×2cm、電着時間:100秒で測定した。
(4)転写率としては、テープ剥離法による濃度に基づき次式から算出した。
転写率=(転写前感光体上濃度−転写後感光体残濃度)/(転写前感光体上濃度)×100%
(5)画像濃度は、X−Riteにより測定した。
【0107】
【表1】

【0108】
上記表1の結果より明らかな通り、本発明による各実施例の液体現像剤を第1〜第3実施形態に係る画像形成装置を使用して画像形成を行った結果、帯電制御性、非加熱粘着転写性が良好で高画像濃度の印字が可能となった。また、転写基材の材質(抵抗値など)に制約を受けず、トナー層が一体となり転写するため、凹凸のある基材にも良好な転写を行うことができた。以下に各実施例及び比較例についての考察結果を示す。
【0109】
実施例1は、本発明の液体現像剤を用いているため、粘着転写性は良好であるが、感光体からの直接転写のため、実施例2に比べて転写性は落ちる。実施例2の結果の結果からわかるように中間転写体の方が感光体よりも表面エネルギーが低く、トナー層の剥離性が良いこと、転写時に圧力がかけられることが効いていると考えられる。実施例3は、粘着樹脂比率が低いため、転写率はやや下がった。実施例4は、転写基材が凹凸のある布であるにも関わらず画像がフィルム化して一体となり転写した。実施例5は静電転写が困難な金属の転写基材にも高い転写率で転写できた。実施例6は、モノマーEの比率が高いため、トナー帯電率がやや低下した。
【0110】
比較例1は本発明の材料を用いていないために粘着性が発現せず、トナー特性非加熱粘着転写はできずトナー特性も良くなかった。比較例2は、本発明のモノマーA成分がないため、粘着性が発現せず粘着転写しなかった。また、モノマーC成分がないため、成膜化せずトナー層中で分裂し、樹脂抵抗が低いためトナー現像性も悪かった。比較例3は合成樹脂の溶媒親和性が低く凝集ぎみでトナー粒径が大きく、現像性が悪いことに加え、転写層が柔らかく、定着後の画像にべとつきが発生した。
【符号の説明】
【0111】
1 静電潜像担持体
2、2A、2B 転写基材
3、3a、3b トナー層
4A、4B 電極板
5 セル
10、20、30 画像形成装置
11 感光体
12 帯電電圧付与部材
13 現像装置
13a 現像ローラ
13b 供給ローラ
13c 汲み込みローラ
13d 容器
14、14a、14b スクイズローラ
15、22 転写ローラ
16 転写基材分離ローラ
17 クリーニングブレード
18 クリーニングローラ
21 中間転写ローラ
23 担体液除去ローラ(溶剤除去ローラ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特許第2990675号公報
【特許文献2】特開平9−204109号公報
【特許文献3】特開平2−272476号公報
【特許文献4】特表2001−501654号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体液中に分散した、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子を静電潜像に静電気的に付着させて当該静電潜像をトナー像化し、当該トナー像を前記トナー粒子の粘着力により転写基材上に転写を行う画像形成方法で使用される粘着転写性現像剤において、
前記トナー粒子の樹脂が、下記一般式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD及びモノマーEを構成成分とする共重合体を含有することを特徴とする粘着転写性液体現像剤。
【化1】


(但し、一般式(1)中、RはH又はCHを表し、RがHの場合、nは6〜9、RがCHの場合、nは10〜14を表す。)
【化2】


(但し、一般式(2)中、nは6〜8を表す。)
【化3】


(但し、一般式(3)中、RはH又はCHを表す。)
【化4】


(但し、一般式(4)中、RはH又はCHを表す。)
【化5】


(但し、一般式(5)中、RはH又はCHを表す。)
【請求項2】
請求項1記載の粘着転写性液体現像剤において、
前記モノマーA〜Eの構成成分比がモノマーA/モノマーB/モノマーC/モノマーD/モノマーE=5〜20mol%/40〜80mol%/2〜20mol%/2〜16mol%/2〜25mol%であることを特徴とする粘着転写性液体現像剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の粘着転写性液体現像剤において、
前記樹脂の重量平均分子量(Mw)が20000〜50000、数平均分子量(Mn)が10000〜40000であることを特徴とする粘着転写性液体現像剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の粘着転写性液体現像剤において、
前記樹脂の体積抵抗が1×1010〜1×1016Ω・cmであることを特徴とする粘着転写性液体現像剤。
【請求項5】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、当該静電潜像担持体上に形成された静電潜像にトナー粒子を含有する粘着転写性液体現像剤を供給して、当該静電潜像をトナー像化する現像手段と、当該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した前記現像剤中の担体液の一部を当該静電潜像担持体から除去する余剰液除去手段と、当該担体液の一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写手段とを備えた画像形成装置において、
前記粘着転写性液体現像剤は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の粘着転写性液体現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、当該静電潜像担持体上に形成された静電潜像にトナー粒子を含有する粘着転写性液体現像剤を供給して、当該静電潜像をトナー像化する現像工程と、当該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した前記現像剤中の担体液の一部を当該静電潜像担持体から除去する余剰液除去工程と、当該担体液の一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写工程とを備えた画像形成方法において、
前記粘着転写性液体現像剤は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の粘着転写性液体現像剤であることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−262126(P2010−262126A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112536(P2009−112536)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】