説明

精度管理システム及びコンピュータプログラム

【課題】複数の方法で精度管理を行えるシステムに好適な新たな技術的手段を提供する。
【解決手段】 検査の精度管理に関する表示画面を表示可能な精度管理システムであって、精度管理に関する前記表示画面の表示制御を行う表示制御部を備え、前記表示制御部11は、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリー応じた前記表示画面を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度管理システム及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液検査や生化学検査などの臨床検査では、検査の信頼性を確保するために精度管理が重要となる
精度管理は、生体成分と同じ試料若しくはそれに類似した精度管理用試料(精度管理物質ともいう)を測定し、その測定結果を監視することによって行われる。
この精度管理としては、同一施設で同じ精度管理用試料を毎日測定して安定した測定結果が得られるのかを監視する方法(内部精度管理)と、多くの施設での精度管理用試料の測定結果を集計して精度管理を行う方法(外部精度管理)とが用いられている。
【0003】
外部精度管理を行う場合、多くの施設から送られた精度管理データを、例えば、精度管理用試料毎に分けて集計し、精度管理用試料毎の母集団を形成する。そして、各施設では、母集団全体の精度管理データの平均と当該施設の精度管理データの差を監視することができる。
【0004】
ここで、外部精度管理は、多くの施設から精度管理データを収集して集計する必要があるため、ネットワークを介して精度管理データを収集することが行われている。ネットワークを利用した精度管理システムは、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【特許文献1】特開2004−4105号公報
【特許文献2】WO2002/052278
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、外部精度管理の仕方は、必ずしも一様ではない。すなわち、精度管理データの集計方法や精度管理の結果閲覧方法には、多様な方法がある。例えば、多数の検査施設から送られてきた精度管理データ(精度管理用試料の測定値)の平均値を求める場合について言えば、その日のデータだけを対象に平均値を算出する場合や、一定期間内に発生したデータを対象に平均値を算出する場合がある。
また、精度管理用試料も、特定の検査装置の専用品や、ある検査分野の検査装置であれば装置の製造メーカ・機種を問わない汎用品がある。
さらに、システムを通じて精度管理結果を閲覧する際にも、集計方法や精度管理用試料の種別等に起因して異なる表示方法が採用されることになる。
【0006】
ところが、従来、集計方法等が異なる複数の方法で精度管理を行えるシステムは存在しなかった。一方、単に、複数の方法で精度管理を行えるシステムを構築した場合、システムが複雑になって、利便性やシステムの操作性が低下するおそれがある。
したがって、このような場合にも利便性やシステムの操作性が低下しないようにする新たな技術的手段が望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、複数の方法で精度管理を行えるシステムに好適な新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、精度管理方法に応じて精度管理用試料をカテゴリー分けしておけば、システムが、精度管理用試料のカテゴリーに応じて、自動的に複数の精度管理方法に対応することができるであろうという着想に基づくものである。
すなわち、本発明は、検査の精度管理に関する表示画面を表示可能な精度管理システムであって、精度管理に関する前記表示画面の表示制御を行う表示制御部を備え、前記表示制御部は、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリー応じた前記表示画面を表示することを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、表示制御部が、システムのユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリーに応じて異なる画面を表示する。したがって、複数の精度管理方法が行えるシステムにおいても、ユーザは自分が利用できる精度管理方法や自分が使用している精度管理用試料のカテゴリーを特に意識しなくても、システムの表示制御部は、個々のユーザに応じた表示画面を表示することができる。
【0010】
前記制御表示部は、異なるカテゴリーに属する精度管理用試料に共通した集計方法による共通の精度管理結果表示画面と、特定のカテゴリーに属する精度管理用試料に特有の集計方法による個別の精度管理結果表示画面と、が表示可能であり、さらに前記制御表示部は、前記特定のカテゴリーに属する精度管理用試料を使用するユーザに対しては、当該カテゴリー用の個別の精度管理結果表示画面と前記共通の精度管理結果表示画面を表示可能とするのが好ましい。
この場合、ユーザは、異なるカテゴリーに共通した集計方法による精度管理結果も閲覧できるし、当該カテゴリー用の集計方法による精度管理結果も閲覧することができる。
【0011】
システムへログインするユーザの認証を行うログイン部と、ユーザ毎にユーザの属性情報が記憶されている記憶部と、をさらに備え、前記表示制御部は、ユーザの認証が成功した場合に、前記記憶部に記憶されているユーザの属性情報に基づいて、ユーザに応じた前記表示画面を表示するのが好ましい。ユーザがシステムにログインする際に行うユーザ認証によりユーザが特定されるので、特定したユーザの属性情報に基づき、表示画面を表示することで、ログイン認証を行うだけでユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリーの特定も行うことができ、システムの操作性が高まる。
【0012】
前記属性情報は、ユーザの使用する検査装置を示す情報であり、前記表示制御部は、前記属性情報に基づいて、システムへログインしたユーザから検査装置の選択を受け付けることができるように構成されており、前記ユーザが行った検査装置の選択に基づいて、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリーに応じた前記表示画面を表示するのが好ましい。ユーザが精度管理用試料のカテゴリーを覚えておいて入力するのは煩雑であるが、検査装置の選択は容易である。したがって、検査装置の選択に基づいて、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリーに応じた表示画面を表示することで、システム操作性が高まる。
【0013】
また、本発明は、ネットワークを介して検査の精度管理データを受信して集計する精度管理システムであって、精度管理用試料の測定結果を含む精度管理データを受信する受信部と、受信した精度管理データが属するカテゴリーを判別する試料判別部と、前記試料判別部による判別結果に基づいて前記精度管理データを蓄積するデータベースと、を備えていることを特徴とする。
上記本発明によれば、試料判別部が、受信した精度管理用試料のカテゴリーを判別することができる。したがって、複数の精度管理方法が行えるシステムにおいても、ユーザ側からシステム側に精度管理データが送信される際に、ユーザは自分が利用できる精度管理方法や自分が使用している精度管理用試料のカテゴリーを特に意識しなくても、システムでは自動的に複数の精度管理方法に対応した処理を行うことができる。
【0014】
前記データベースは、異なるカテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データを蓄積する共通データベースを含み、共通データベースのデータフォーマットとは異なる精度管理データを前記共通データベースに蓄積するためにデータフォーマットを変換するデータ変換部を備えているのが好ましい。
この場合、共通データベースには異なるカテゴリーに属する精度管理データが統一したフォーマットで蓄積されるため、蓄積されたデータの利用容易性が高まる。
【0015】
前記データ変換部は、不足データを補うデータ補完部を備えているのが好ましく、この場合、共通データベースに蓄積するデータに不足データがあっても自動的に補われる。
【0016】
また、本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを前記精度管理システムとして機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の方法で精度管理を行うための好適なシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[システムによって提供されるサービス概要]
図1に示すように、実施形態に係る精度管理システム(精度管理サーバ)1は、インターネット2等のネットワークを介して接続されるユーザ端末3,4から利用可能なものである。
【0019】
この精度管理システム1は、臨床検査の外部精度管理を行うためのものであり、ネットワーク2を介して多数の検査施設から送られてきた精度管理データに基づいて、外部精度管理を行う。
外部精度管理は、精度管理用試料(「コントロール物質」ともいう)を検査装置で測定した結果データが精度管理データとしてシステム1に送信され、これがシステム1において集計されることによって行われる。
【0020】
本実施形態のシステム1では、精度管理の対象となる精度管理用試料は、2種類(複数種類)にカテゴリー分けされている。
第1のカテゴリーには、血球分析装置、血液凝固測定装置、尿測定装置などの所定の検査装置について各装置の専用試料として販売されている専用精度管理用試料が属している。
第2のカテゴリーには、生化学、血清、グリコヘモグロビン、ウイルス・感染症、凝固などの検査分野において使用される精度管理用試料であって、その精度管理用試料が使用される装置の如何を問わない(他メーカの装置であってもよい)汎用精度管理用試料が属している。
【0021】
[システムのハードウェア構成]
図2は、システム(サーバ)1のハードウェア構成を示すブロック図である。システム1は、本体110と、ディスプレイ120と、入力デバイス130とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。
本体110は、CPU110aと、ROM110bと、RAM110cと、ハードディスク110dと、読出装置110eと、入出力インタフェース110fと、画像出力インタフェース110hとから主として構成されており、CPU110a、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110d、読出装置110e、入出力インタフェース110f、及び画像出力インタフェース110hは、バス110iによってデータ通信可能に接続されている。
【0022】
CPU110aは、ROM110bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM110cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、アプリケーションプログラム140aを当該CPU110aが実行することにより、後述するような各機能ブロックが実現され、コンピュータがシステム1として機能する。
ROM110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0023】
RAM110cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM110cは、ROM110b及びハードディスク110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU110aの作業領域として利用される。
ハードディスク110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。アプリケーションプログラム140aも、このハードディスク110dにインストールされている。
【0024】
読出装置110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体140に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体140には、コンピュータを本発明のシステムとして機能させるためのアプリケーションプログラム140aが格納されており、コンピュータが当該可搬型記録媒体140から本発明に係るアプリケーションプログラム140aを読み出し、当該アプリケーションプログラム140aをハードディスク110dにインストールすることが可能である。
【0025】
なお、前記アプリケーションプログラム140aは、可搬型記録媒体140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム140aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク110dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム140aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0026】
入出力インタフェース110fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス130が接続されており、ユーザが当該入力デバイス130を使用することにより、コンピュータ100aにデータを入力することが可能である。
画像出力インタフェース110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ120に接続されており、CPU110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ120に出力するようになっている。ディスプレイ120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0027】
[システムの機能]
図3は、システム1の機能ブロックを示している。図示のように、システム1は、ユーザがパーソナルコンピュータ等の端末装置4からインターネット2を介してシステムにアクセスしたときに当該端末装置4に画面(Webページ)を表示するための表示部(Webサーバ)10としての機能と、各検査施設の検査装置3又は検査装置から精度管理データが移されたパーソナルコンピュータ4(以下、両者を総称して「検査装置等」という)から精度管理データを収集し・蓄積し・処理するデータ処理部20としての機能を有している。
【0028】
[システムの表示部10]
表示部10は、ログイン画面や精度管理結果の表示画面などのWeb画面を表示するための表示制御部11を備えている。
例えば、ユーザがシステムにアクセスすると、表示制御部11は、システム1にアクセスしたユーザ端末4にログイン画面を表示する。また、表示部10は、ユーザログインのための処理を行うログイン部12を備えている。ログイン画面において入力されたログイン名及びパスワードが適切なものであれば、ログイン部12は、ログインを許可する。なお、ログイン名及びパスワードは検査施設毎に付与されている。
【0029】
表示制御部11は、登録情報データベース14を参照して表示制御を行ったり、データ処理部20のデータベース23,24に基づく統計処理結果を表示することができる。
なお、登録情報データベース14には、ユーザに関する情報、ユーザが保有する検査装置の情報、各ユーザが保有する各検査装置における測定条件(測定方法や使用する試薬の種類)等のユーザ属性に関する情報その他の様々な情報が登録されている記憶部である。
【0030】
[システムのデータ処理部20]
データ処理部20は、電子メールその他のデータ送信手段によって検査装置等から送られてくる精度管理データを受信する受信部21を有している。精度管理データは、所定のデータフォーマットで記述された添付ファイルとして電子メールに添付され、検査装置等からシステム1に送信され、受信部21にて受信される。なお、精度管理データは、電子メール本体に記述されていてもよい。
【0031】
ここで、第1カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データと、第1カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データとは、データフォーマット及びデータ項目が互いに異なる。
例えば、前者の精度管理データは、データ項目として、検査装置の種類(ロット番号、濃度レベル)、検査項目(血球分析装置であれば、赤血球数、白血球数等)、検査項目ごとの精度管理用試料の測定値、検査日時などを含んでおり、これらのデータが第1カテゴリー用の専用フォーマットで記述されている。
【0032】
また、後者の精度管理データは、データ項目として、検査装置の種類、検査項目、検査項目ごとの精度管理用試料の測定値、検査日時、精度管理用試料の種類(ロット番号、濃度レベル)などを含んでおり、これらのデータが第2カテゴリー用の専用フォーマットで記述されている。
【0033】
データ処理部20は、精度管理データのデータフォーマットに基づき、受信した精度管理データが、第1カテゴリーに属する精度管理用試料のものであるか、第2カテゴリーに属する精度管理用試料のものであるかの判別を行う試料判別部22を備えている。なお、試料判別部22は、精度管理データに付加されたデータ種別識別情報に基づいてカテゴリーを判別してもよい。
試料判別部22によって、第1カテゴリーの精度管理データであると判別されたデータは、第1データベース23に蓄積される。また、試料判別部22によって、第2カテゴリーの精度管理データであると判別されたデータは、第2データベース24に蓄積される。さらに、第1カテゴリーの精度管理データであると判別されたデータは、第2データベース24にも蓄積される。
【0034】
このように、第1データベースは、第1カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データが蓄積される個別データベースであり、第2データベースは、両カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データが共に蓄積される共通データベースとなっている。
なお、本実施形態では、共通データベース24におけるデータフォーマットとして第2カテゴリーのデータフォーマットを採用しているため、共通データベース24は、第2カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データが蓄積される個別データベースとしての機能を包含している。したがって、本実施形態では、第2カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データだけが蓄積される個別データベースは省略されている。
【0035】
また、システム1は、第1カテゴリーの精度管理データを、データフォーマットが異なるデータ用である第2データベースに蓄積するため、第1カテゴリーの精度管理データは、データ変換部25によって、第2カテゴリーのデータフォーマットに変換される。
また、情報の一部欠落等によって、第1カテゴリーの精度管理データのみでは、第2カテゴリーのフォーマットに変換できない場合がある。このような場合に、第1カテゴリーのフォーマットから第2カテゴリーのフォーマットへデータ変換を確実に行うため、データ変換部は、データ補完機能(データ補完部)を有している。
具体的には、データ変換部25のデータ補完部は、データ補完が必要とされるデータである場合、ユーザ毎に登録された補完情報25aを参照して、第1カテゴリーの精度管理データに補完情報を加えて、第2データベース24に格納するためのデータとする。
【0036】
データ処理部20は、両データベース23,24に蓄積されたデータに基づいて、精度管理のための統計処理を行う統計処理部26を備えている。表示部10の表示制御部11では、この統計処理部26での統計処理結果をWeb画面としてユーザ端末に表示させることができる。
【0037】
統計処理部26は、第1の方法による第1統計処理と、第2の方法による第2統計処理が可能である。
第1統計処理では、第1データベース23に基づき、試料の種類毎に母集団が形成されるように集計され、母集団ごとに統計処理が可能である。
第1統計処理としては、例えば、母集団における精度管理データ(精度管理試料の測定結果)の平均の算出、母集団における各精度管理データの標準偏差の算出などが行われる。
また、第1統計処理では、母集団における平均の算出を日単位で行う。すなわち、ある日の精度管理データの平均値を算出する際には、当該日の精度管理データだけを対象に平均値を算出する。
【0038】
第2統計処理では、第2データベースに基づき、試料の種類毎に全体母集団が形成されるように集計され、母集団又は選択された基準母集団ごとに統計処理が可能である。
第2統計処理では、第1統計処理と同様に、(基準)母集団における精度管理データの平均の算出、(基準)母集団における各精度管理データの標準偏差の算出などが行われる。なお、第2統計処理の方が、第1統計処理よりも多彩な統計処理機能を有している。
また、第2統計処理では、母集団における平均の算出は、複数の日をまたがった所定の期間(対象となる精度管理用試料の有効使用期間)内における精度管理データ平均値として算出される。すなわち、第2統計処理では、同一の精度管理用試料であって、かつ試料のロット番号等で特定される当該試料の有効使用期間が同一であるものについての精度管理データの平均値が算出される。
このように、第1統計処理と第2統計処理では、統計処理方法が互いに異なるものである。
【0039】
[精度管理データの受信・蓄積処理]
図4は、ユーザの検査装置等3,4から送信された精度管理データの受信に関する処理を示している。また、ユーザの検査装置によって精度管理用試料が測定されると、直ちに又は定期的に検査装置等からシステム1に電子メールにて精度管理データが送信され、システム1の受信部21はこれを受信する(ステップS1)。
システム1は、受信部21によって受信されたメールから精度管理データを取り出し、試料判別部22が、精度管理データのデータフォーマットに基づき、第1カテゴリーの精度管理データであるか第2カテゴリーの精度管理データであるかを判別する(ステップS2)。
【0040】
データが第1カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データである場合、システム1は、当該データを第1データベース(個別データベース)23に蓄積する(ステップS3)。データは、図5に示すように、精度管理用試料(検査装置)毎に分けられて、試料毎の母集団が形成されるように蓄積される。さらにシステム1は、第1カテゴリーの精度管理データを第2カテゴリーのデータフォーマットに変換する(ステップS4)。また、システム1は、必要に応じて、共通データベースである第2データベースに蓄積する精度管理データとして足りないデータの補完も行う(ステップS4)。変換・補完されたデータは、第2データベースにも蓄積される(ステップS5)。データは、図5に示すように、試料別に分けられて試料毎の(全体)母集団が形成されるように蓄積される。
【0041】
データが第2カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データである場合、システム1は、当該データを共通データベースである第2データベース24に蓄積する(ステップS6)。データは、図5に示すように、試料別に分けられて、試料ごとの(全体)母集団が形成されるように蓄積される。
上記処理の結果、すべての精度管理データは、カテゴリーに関係なく、共通データベース24に蓄積される。したがって、すべての精度管理データは、機能の充実した第2統計処理による処理が可能である。
また、第1カテゴリーの精度管理データは第1データベース23に、第2カテゴリーの精度管理データは第2データベース24に存在するため、カテゴリーに応じた集計・精度管理結果表示も容易となっている。
なお、データベース23,24に蓄積されたデータは、統計処理部によって処理され、Web画面による各種表示が可能となる。
【0042】
図6は、ユーザがシステム1にログインして、精度管理結果(QC結果)を閲覧するための手順を示している。まず、システム1は、ログイン画面にてログイン名とパスワードの入力を受け付ける(ステップS11)。
【0043】
ログインの認証成功後、システム1の表示制御部11は、登録情報データベース14を参照して、ログインしたユーザのユーザ属性情報(ユーザ保有検査装置の一覧情報)を取得し、システム1に登録されているユーザ保有検査装置の一覧を表示する(ステップ S12)。装置一覧画面を図7に示す。装置一覧画面では、システムにログインしたユーザが保有する装置名とともに、装置が設置されている施設部署名が表示される。また、装置毎に、各種画面に移行するための操作アイコンが表示される。
画面移行操作アイコンとしては、精度管理結果(QCデータ)を表示するための操作を行う画面に移行するための精度管理結果アイコン1A,1B,1C、精度管理データをマニュアル入力するための画面に移行するためのマニュアル入力アイコン2A,2B,2C、装置のエラー履歴を表示するための画面に移行するためのエラー履歴アイコン3A,3B,3C、装置設置施設名・装置カテゴリー・装置モデル名・装置シリアルナンバー等の装置情報を表示するための画面に移行するための装置情報アイコン4A,4B,4Cが設けられている。
なお、図7の装置一覧画面は、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリーにかかわらず共通である。
【0044】
図7の装置一覧画面で、精度管理結果作アイコンIA,IB,ICのいずれかが選択されると(装置の選択;ステップS13)、システム1は、選択された検査装置の種類に基づいて、ユーザの保有する装置の種類に応じた作表メニュー画面(第1カテゴリー用の表示画面)を表示する(ステップS14,S17)。
本システム1では、精度管理用試料とユーザの使用する検査装置とは対応付けられており、検査装置の選択によって、ユーザがその検査装置において使用する精度管理試料を選択することになる。
ユーザが使用する精度管理用試料が第1カテゴリーに属する場合、図8に示す第1作表メニュー画面が表示される(ステップS14)。この第1作表メニュー画面は、複数の操作アイコンIa−1,Ia−2,Ib−1,Ib−2,Ib−3,Ib−4,Ib−5,Ib−6,Ib−7を有している。
第1作表メニュー画面の操作アイコンは、大きく2つに大別される。一つは、第1データベース23に基づいて第1統計処理を行った結果表示を行う第1アイコン群Ia−1,Ia−2であり、他は、第2データベース24に基づいて第2統計処理を行った結果表示を行う第2アイコン群Ib−1,Ib−2,Ib−3,Ib−4,Ib−5,Ib−6,Ib−7である。
【0045】
ここで、第2データベースには、両カテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データが蓄積されているため、第2アイコン群に属するアイコンは、両カテゴリーについて精度管理結果を表示できる共通操作アイコンである。すなわち、すべてのユーザは、使用する試料の種類にかかわらず機能の豊富な第2統計処理による精度管理結果を表示することができる。
一方、第1アイコン群に属する操作アイコンは、第1データベース23に基づく統計処理であって、第1データベースには第1カテゴリのデータしか蓄積されていないから、第1アイコン群は、特定のカテゴリー(第1カテゴリー)に属する精度管理用試料に特有の集計方法(第1統計処理)による個別の精度管理結果を表示するためのものである。
【0046】
第1アイコン群のアイコンIa−1は、第1データベースに基づいて精度管理結果を表示するためのものである。具体的には、アイコンIa−1をクリックすると(ステップS15)、試料(装置)ごとの母集団統計値(精度管理結果の平均値)に対する測定値の状態(偏差)を、日単位のチャートで表示するSDIチャートと、測定値や母集団統計値、エラーフラグなど、集計や異常判定の結果を数値で確認するための数値テーブルを表示することができる(ステップS16)。
【0047】
また、第1アイコン群のアイコンIa−2は、第1データベース23に基づいて統計処理部26によって作成された精度管理結果をダウンロード可能な帳票一覧として表示するためのものである。
【0048】
第2アイコン群のアイコンIb−1は、第2データベース24に基づいて、精度管理結果を表示するためのものである。具体的には、アイコンIb−1をクリックすると、選択された基準母集団統計値(精度管理結果の平均値)に対する測定値の状態(偏差)を、日単位のチャートで表示するSDIチャートと、測定値や母集団統計値、エラーフラグなど、集計や異常判定の結果を数値で確認するための数値テーブルを表示することができる。
アイコンIb−1によるSDIチャート表示の際には、同一精度管理用試料についての全体母集団から表示の対象となる基準母集団を選択することができる。基準母集団には、検査の分類、検査方法、検査装置、検査試薬等を要因として分けられたいくつかの種類がある。ユーザが、所望の基準母集団を選択すると、システム1は、選択された基準母集団の統計値に対する測定値の状態を表示する。
【0049】
第2アイコン群のアイコンIb−2は、第2データベース24に基づいて統計処理部26によって作成された精度管理結果をダウンロード可能な帳票一覧として表示するためのものである。
【0050】
第2アイコン群のアイコンIb−3は、第2データベース24に基づき、検査項目別に装置の平均値と全体の平均値の格差を確認するためのQAP MATRIXを表示するためのものである。
第2アイコン群のアイコンIb−4は、第2データベース24に基づき、選択された2濃度の精度管理用試料の日内、日次、月次の報告値または集計結果から偏差(SDI)とばらつき(PI)の値を算出し、SDI/PI管理図又は数値テーブルを表示するためのものである。
第2アイコン群のIb−5は、第2データベース24に基づき、グループ内のSDI/PI管理図又は数値テーブルを表示するためのものである。
第2アイコン群のIb−6は、第2データベース24に基づき、自装置データと全装置データを2濃度のチャートのプロットし、自装置のデータがどの位置にあるかを確認するための散布図を表示するためのものである。
第3アイコン群のIb−7は、第2データベース24に基づき、精密さ評価レポートを表示するためのものである。
【0051】
表示制御部11は、ステップS14の判別結果として、第2カテゴリーと判別された場合、図9に示す第2作表メニュー画面を表示する(ステップS17)。この第2作表メニュー画面(第2カテゴリー(第2ユーザ)用の表示画面)は、複数の操作アイコンIb−1,Ib−2,Ib−3,Ib−4,Ib−5,Ib−6,Ib−7を有しており、これらのアイコンを選択することで(ステップS18)、各アイコンに対応した画面を表示することができる(ステップS19).
この第2作表メニュー画面では、第1作表メニュー画面における第2アイコン群だけが表示されている。すなわち、第2カテゴリーの精度管理用試料を使用するユーザは、第2統計処理の機能だけを利用することができるのである。
【0052】
このように、本実施形態のシステム1は、両カテゴリーに対して、共通の統計処理(第2統計処理)を提供することができるため、ユーザの利便性が向上している。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、精度管理の対象は、例示したものに限らず、様々なものに適用可能である。また、精度管理用試料のカテゴリーは、2つに限られるものではなく、3以上の任意の数のカテゴリーを設けることができる。また、統計処理の種類及び表示画面の種類も任意の数とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】精度管理システムのネットワーク構成図である。
【図2】精度管理システムのハードウェア構成図である。
【図3】精度管理システムの機能ブロック図である。
【図4】精度管理データ受信処理のフローチャートである。
【図5】データベースの詳細図である。
【図6】精度管理結果表示処理のフローチャートである。
【図7】装置一覧画面である。
【図8】第1作表メニュー画面である。
【図9】第2作表メニュー画面である。
【符号の説明】
【0055】
1 精度管理システム
11 表示制御部
12 ログイン部
13 ユーザ判別部
21 受信部
22 データ判別部
23 第1データベース(個別データベース)
24 第2データベース(共通データベース)
25 データ変換部(データ補完部)
25a 補完情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査の精度管理に関する表示画面を表示可能な精度管理システムであって、
精度管理に関する前記表示画面の表示制御を行う表示制御部を備え、
前記表示制御部は、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリー応じた前記表示画面を表示することを特徴とする精度管理システム。
【請求項2】
前記制御表示部は、異なるカテゴリーに属する精度管理用試料に共通した集計方法による共通の精度管理結果表示画面と、
特定のカテゴリーに属する精度管理用試料に特有の集計方法による個別の精度管理結果表示画面と、が表示可能であり、
さらに前記制御表示部は、前記特定のカテゴリーに属する精度管理用試料を使用するユーザに対しては、当該カテゴリー用の個別の精度管理結果表示画面と前記共通の精度管理結果表示画面を表示可能とする、
ことを特徴とする請求項1記載の精度管理システム。
【請求項3】
システムへログインするユーザの認証を行うログイン部と、
ユーザ毎にユーザの属性情報が記憶されている記憶部と、をさらに備え、
前記表示制御部は、ユーザの認証が成功した場合に、前記記憶部に記憶されているユーザの属性情報に基づいて、ユーザに応じた前記表示画面を表示することを特徴とする請求項1又は2記載の精度管理システム。
【請求項4】
前記属性情報は、ユーザの使用する検査装置を示す情報であり、
前記表示制御部は、前記属性情報に基づいて、システムへログインしたユーザから検査装置の選択を受け付けることができるように構成されており、前記ユーザが行った検査装置の選択に基づいて、ユーザが使用する精度管理用試料のカテゴリーに応じた前記表示画面を表示することを特徴とする請求項3記載の精度管理システム。
【請求項5】
ネットワークを介して検査の精度管理データを受信して集計する精度管理システムであって、
精度管理用試料の測定結果を含む精度管理データを受信する受信部と、
受信した精度管理データが属するカテゴリーを判別する試料判別部と、
前記試料判別部による判別結果に基づいて前記精度管理データを蓄積するデータベースと、
を備えていることを特徴とする精度管理システム。
【請求項6】
前記データベースは、異なるカテゴリーに属する精度管理用試料の精度管理データを蓄積する共通データベースを含み、
共通データベースのデータフォーマットとは異なる精度管理データを前記共通データベースに蓄積するためにデータフォーマットを変換するデータ変換部を備えていることを特徴とする請求項5記載の精度管理システム。
【請求項7】
前記データ変換部は、不足データを補うデータ補完部を備えていることを特徴とする請求項6記載の精度管理システム。
【請求項8】
コンピュータを請求項1〜7のいずれかに記載の精度管理システムとして機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−292516(P2007−292516A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118522(P2006−118522)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】