説明

糊抜け検査装置及び方法

【課題】蛍光体や着色体などの添加物を糊に添加しなくとも糊切れを検査できる装置を提供する。
【解決手段】糊切れ検査装置1は,糊3を塗布する帳票4の温度と差が生じるように,糊付けタンク21からノズル20に供給される糊3を加熱するコードヒータ10と,帳票4に塗布された糊3の温度を連続して計測するように設置される非接触温度センサ11を備え,非接触温度センサ11は,計測した温度が事前に設定された下限値を下回ったときパトライト11dを点灯させるアラーム信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
帳票などの用紙を丁合するコレータや製本機などで発生する糊抜けを検査するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の用紙を丁合するコレータや製本機など糊付け工程を行う装置では,糊を塗布するノズルから糊が吐出されない状態になる糊抜けを検査することが必要とされ,これまでに,糊抜けを検査するための様々な発明が開示されている。
【0003】
例えば,特許文献1では,蛍光体を添加した糊を塗布し,紫外線を照射して該糊に添加された蛍光体を検出することで糊抜けを検査する発明が開示されている。また,特許文献2では,着色体を添加した糊を塗布し,レーザ光を照射して該糊に添加された着色体を検出することで糊抜けを検査する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭和63−193046号公報
【特許文献2】特開2002−263551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上述した従来技術では,糊付け不良を検査するために,糊抜けを検査する装置で検出する添加物(蛍光体や着色体)を塗布する糊に添加しなければならず,添加物の量を間違えると不良品が製造されることがあるし,また,該物質を検出するセンサ以外に,紫外線やレーザ光など照射する光源を設置する必要があるため,コレータや製本機などの既存装置に,糊抜けを検査する装置を設置できないことがあった。
【0006】
そこで,本発明は,蛍光体や着色体などの添加物を糊に添加しなくとも糊抜けを検査できる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する第1の発明は,糊を塗布する対象物の温度と差が生じるように,塗布される前の前記糊に対して加熱又は冷却を行うヒートポンプ手段と,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測するように設置される温度センサと,前記温度センサが計測した温度と事前に設定された閾値を比較することにより糊抜けを検知する検査手段を備えたことを特徴とする糊抜け検査装置である。
【0008】
更に,第2の発明は,前記温度センサは,前記糊を塗布するノズルの弁の開閉を示す開閉信号によって前記ノズルの弁が開状態であることが示されている間,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測することを特徴とする第1の発明に記載の糊抜け検査装置である。
【0009】
更に,第3の発明は,前記検査手段は,糊抜けを検知したときにアラーム信号を出力するようにしたことを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の糊抜け検査装置である。
【0010】
第1の発明によれば,糊を塗布する対象物の温度と差が生じるように,塗布される前の糊は加熱又は冷却され,対象物に塗布された糊の温度と対象物の温度に差が生じるため,対象物に塗布された糊の温度を温度センサで計測すれば,対象物上における糊の有無を判別できる。
【0011】
また,第2の発明のように,温度センサが,ノズルの弁が開状態であることが示されている間,対象物に塗布された糊の温度を連続して計測するようにすれば,糊を間欠塗布する場合であっても,ノズルの弁が開状態のときのみ,ノズルから糊が実際に吐出されているか検査できる。更に,対象物がシートで,各シートへの糊塗布の有無がランダムな場合でも,弁の開閉信号によって弁が開状態であることが示されるときに糊の有無を判別することで,糊抜けを検知できる。
【0012】
更に,第3の発明のように,更に,糊抜けを検知したときにアラーム信号を出力するようにすれば,パトランプなどを利用して糊抜けの警報を発するようにすることができる。
【0013】
更に,第4の発明は,糊を塗布する対象物の温度と差が生じるように,塗布される前の前記糊に対して加熱又は冷却を行った後,温度センサを用いて,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測し,前記温度センサが計測した温度と事前に設定された閾値を比較することにより糊抜けを検知するようにしたことを特徴とする糊抜け検査方法である。
【0014】
更に,第5の発明は,前記糊を塗布するノズルの弁の開閉を示す開閉信号によって前記ノズルの弁が開状態であることが示されている間,前記温度センサを用いて,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測するようにしたことを特徴とする第4の発明に記載の糊抜け検査方法である。
【0015】
第4の発明及び第5の発明は方法に係わる発明で,第1の発明及び第2の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によれば,蛍光体や着色体などの添加物を糊に添加しなくとも糊抜けを検査できる装置及び方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】糊抜け検査装置を説明する図。
【図2】ノズルと非接触温度センサのセンサ部の位置関係を説明する図。
【図3】糊抜け検査装置が糊抜けを検査する内容を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここから,本願発明の実施形態について,本願発明の技術分野に係わる当業者が,本願発明の内容を理解し,本願発明を実施できる程度に説明する。
【0019】
図1は,本実施形態における糊抜け検査装置1を説明する図である。図1で図示した糊抜け検査装置1は,糊塗布装置2によって帳票4に間欠塗布される糊3の糊抜けを,帳票4の紙面温度と塗布された糊3の温度差を利用して検査する装置である。
【0020】
図1において,糊塗布装置2は,ソレノイド20a付きのノズル20と,ソレノイド20aの開閉を制御する塗布コントローラ22と,空気圧を利用してノズル20に糊を供給する糊供給タンク21とから少なくとも構成され,ノズル20には,糊3を供給するためのホース21aが糊供給タンク21から接続され,更に,ソレノイド20aの開閉信号を送信する信号線22aが塗布コントローラ22から接続され,ソレノイド20aが開状態のときにノズル20から糊3が吐出する。
【0021】
塗布コントローラ22は,ノズル20の弁となるソレノイド20aの開閉を制御する装置で,帳票4を製造する装置の機械信号が入力され該装置と連動して動作し,糊3を帳票4に間欠塗布するために,帳票4を製造する装置から所定のトリガーが入力されると,ノズル20のソレノイド20aを開状態にするON信号を所定時間の間だけ送信し,所定時間の間だけノズル20のソレノイド20aを開状態にして,ノズル20から糊3を吐出させた後,OFF信号を送信してノズル20のソレノイド20aを閉状態にする。
【0022】
帳票4の紙面温度と塗布された糊3の温度差を利用して,帳票4に間欠塗布される糊3の糊抜けを検査するためには,糊3を塗布する対象物の温度(ここでは,帳票4の紙面温度)と差が生じるように,塗布される前の糊3に対して加熱又は冷却を行うヒートポンプ手段と,対象物に塗布された糊3の温度を連続して計測するように設置される温度センサと,温度センサが計測した温度と事前に設定された閾値を比較することにより糊抜けを検知する検査手段を糊抜け検査装置1に備えさせることが必要で,本実施形態では,ヒートポンプ手段として機能する機器としてコードヒータ10及び温度調節器10aを図示し,温度センサとして機能する機器として非接触温度センサ11を図示し,本実施形態において検査手段の機能は非接触温度センサ11に備えられている。
【0023】
図1において,帳票4に塗布する糊3に対して加熱又は冷却を行うヒートポンプ手段として機能するコードヒータ10は,ノズル20に糊3を供給するホース21aの一部に巻かれており,温度調節器10aに設定された温度になるようにコードヒータ10の温度が制御されることで,ホース21aを通過する糊3を加熱する。
【0024】
帳票4に塗布された糊3の温度を計測する非接触温度センサ11は,センサ部11aと本体部11bとからなり,非接触温度センサ11のセンサ部11aの測定対象となるスポット11cは,ノズル20から塗布された直後の糊3の温度を計測できるように設定される。なお,本実施形態において,非接触温度センサ11に求められる分解能は0.5℃である。
【0025】
図2は,ノズル20と非接触温度センサ11のセンサ部11aの位置関係を説明する図である。本実施形態では,帳票4の搬送方向から見て,非接触温度センサ11のセンサ部11aはノズル20の直後に設置されている。
【0026】
また,本実施形態では,センサ部11aのスポット11cの径が数ミリ程度である非接触温度センサ11を採用し,非接触温度センサ11のスポット11cはノズル20から吐出された直後の糊3の中央になるように設定されている。
【0027】
このように,非接触温度センサ11のスポット11cをノズル20から吐出された直後の糊3の中央になるように設定することで,帳票4に蛇行が生じても,非接触温度センサ11のスポット11cが糊3から外れなくなり,帳票4に蛇行による糊抜けの誤検出を防止できる。
【0028】
非接触温度センサ11の本体部11bには,糊3を間欠塗布する場合であっても,糊抜けを検査できるようにするために,ノズル20のソレノイド20aが開状態のときにON信号となるソレノイド20の開閉信号が信号線22bによって糊供給タンク21の塗布コントローラ22から入力され,非接触温度センサ11の本体部11aは,ソレノイド20aの開閉信号がON信号である間,スポット11cが設定された箇所の温度を連続して計測する。
【0029】
また,本実施形態では,温度センサが計測した温度と事前に設定された閾値を比較することにより糊抜けを検知する検査手段として機能させるために,アラーム信号を出力する閾値として少なくとも下限値を本体部11bに設定可能な非接触温度センサ11を採用し,非接触温度センサ11の本体部11bは,センサ部11aの信号を解析することで計測した温度が下限値を下回ると,パトランプ11dを点灯させるアラーム信号を出力する。
【0030】
図3は,糊抜け検査装置1が糊抜けを検査する内容を説明する図である。図3(a)は,非接触温度センサ11の本体部11bに入力されるソレノイド20aの開閉信号を説明する図で,本実施形態では糊3を間欠塗布するため,ON信号とOFF信号が交互に繰り返されるソレノイド20aの開閉信号が,糊供給タンク21の塗布コントローラ22から非接触温度センサ11の本体部11bに信号線22bによって入力される。
【0031】
図3(b)は,糊抜けが発生したときの状態を説明する図である。上述したように,非接触温度センサ11の本体部11bは,ソレノイド20aの開閉信号がON信号である間,スポット11cが設定された箇所の温度を連続して計測するため,糊抜けが発生していない場合,非接触温度センサ11の本体部11bが計測する温度は,ノズル20から吐出された直後の糊3の温度になる。また,ソレノイド20aが開状態であるにも係わらず,ノズル20から糊3が吐出されない糊抜けが発生すると,非接触温度センサ11の本体部11bが計測する温度は,ノズル20から吐出された直後の糊3の温度ではなく,帳票4の紙面温度になる。
【0032】
本実施形態において,ノズル20から吐出される糊3は,コードヒータ10によって帳票4の紙面温度と温度差が生じる程度に加熱されているため,ノズル20から吐出される糊3の温度は帳票4の紙面温度よりも高くなる。
【0033】
よって,非接触温度センサ11が,糊抜けが発生したと判断する,アラーム信号を出力するときの温度である下限値を,ノズル20から吐出された直後の糊3の温度よりも低い温度にしておけば,非接触温度センサ11が計測した温度が下限値を下回る場合,スポット11cには糊3が存在しないことになるため,糊抜けを検査することができる。
【0034】
なお,これまで説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
【0035】
これまで説明した実施形態では,帳票4に塗布する糊3に対して加熱又は冷却を行うヒートポンプ手段としてコードヒータ10を用いていたが,コードヒータ10以外の器具をヒートポンプ手段として利用することができる。例えば,帳票4に塗布する糊3に対して加熱を行うヒートポンプ手段として,熱風を吹き付けるドライヤを利用することもできる。
【0036】
また,帳票4に塗布する糊3に対して加熱ではなく冷却を行うヒートポンプ手段として,温度調節機能付きのアプリケータをヒートポンプ手段として利用し,帳票4に塗布されるときの糊3の温度が帳票4の紙面温度よりも低くなるように塗布する前の糊3を冷却するようにしてもよい。帳票4に塗布する糊3に対して冷却を行う場合,アラーム出力をする上限値を設定できる温度センサを用い,計測した温度が上限値を超えたときに糊抜けが発生したと判断される。
【0037】
更に,本実施形態では,糊抜けを検知する機能を非接触温度センサ11に備えさせていたが,非接触温度センサ11が計測した温度から糊抜けを検出する装置(例えば,コンピュータ)を,非接触温度センサ11とは別に設けてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 糊抜け検査装置
10 コードヒータ
10a 温度調節器
11 非接触温度センサ
11a センサ部
11b 本体部
11c センサ部のスポット
2 糊塗布装置
20 ノズル
20a ソレノイド
21 糊供給タンク
22 塗布コントローラ
3 糊
4 帳票


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊を塗布する対象物の温度と差が生じるように,塗布される前の前記糊に対して加熱又は吸熱を行うヒートポンプ手段と,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測するように設置される温度センサと,前記温度センサが計測した温度と事前に設定された閾値を比較することにより糊抜けを検知する検査手段を備えたことを特徴とする糊抜け検査装置。
【請求項2】
前記温度センサは,前記糊を塗布するノズルの弁の開閉を示す開閉信号によって前記ノズルの弁が開状態であることが示されている間,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測することを特徴とする,請求項1に記載の糊抜け検査装置。
【請求項3】
前記検査手段は,糊抜けを検知したときにアラーム信号を出力するようにしたことを特徴とする,請求項1又は請求項2に記載の糊抜け検査装置。
【請求項4】
糊を塗布する対象物の温度と差が生じるように,塗布される前の前記糊に対して加熱又は吸熱を行った後,温度センサを用いて,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測し,前記温度センサが計測した温度と事前に設定された閾値を比較することにより糊抜けを検知するようにしたことを特徴とする糊抜け検査方法。
【請求項5】
前記糊を塗布するノズルの弁の開閉を示す開閉信号によって前記ノズルの弁が開状態であることが示されている間,前記温度センサを用いて,対象物に塗布された前記糊の温度を連続して計測するようにしたことを特徴とする,請求項4に記載の糊抜け検査方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−149772(P2011−149772A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10284(P2010−10284)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】