説明

糖ペプチド誘導体及びその製造方法

【課題】エンドグリコシダーゼを用いた、抗体を含むタンパク質医薬における糖タンパク質医薬品の糖鎖構造の糖転移反応の糖鎖供与体等として好適に利用されうる糖ペプチド誘導体を提供する。
【解決手段】下記式で表される脂溶性保護基が導入された糖ペプチド誘導体及びその製造方法。


(I)[式中、Rのうち少なくとも1つは、カルバメート系、アルキル型及びアシル系から選択される脂溶性保護基を表し、その他は水素原子を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂溶性の保護基が導入された糖ペプチド誘導体及びその製造方法等に関する
【背景技術】
【0002】
近年、生命分子として、核酸(DNA)及びタンパク質に加え、糖鎖が注目されている。膜タンパク質や細胞外などに存在する糖鎖は、細胞間の認識及び相互作用に関わる働きを有すると考えられている。そして、細胞間の認識や相互作用における変化が、癌、慢性疾患、感染症、及び老化などを引き起こす原因であると考えられている。
【0003】
また、最近、抗体を含むタンパク質医薬における糖鎖の重要性が認識されている。例えば、エリスロポエチン、抗体、サイトカインなどの糖タンパク質の場合、糖鎖構造やその配置が生物活性や血中滞留性などに大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
ところで糖タンパク質を遺伝子組み換え法により細胞を使って発現させた場合、翻訳後修飾として付加される糖鎖は、遺伝子の変異や培養条件などの変化に伴って容易に変わってしまうことが知られている。従って、構造の均一性を得るのが難しく、医薬品の基本である「有効性・安全性・品質の確保」の中で、「品質の確保」が容易ではないので、翻訳後修飾による糖鎖の付加は、医薬品には必ずしも適さないものと考えられる。
【0005】
糖タンパク質医薬品の糖鎖構造の不均一性の問題を解決するために、化学的手法を用いて均一な糖鎖構造を有する糖タンパク質を製造する試みもなされている。例えば、酵母などに生産させたタンパク質の酵母型の糖鎖を、酵素の働きでヒト型糖鎖に置換することでヒト型糖鎖構造を有する糖タンパク質を製造しようという試みがある。これはタンパク質と糖鎖供給源の存在下において、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼなどのエンドグリコシダーゼを用い、当該糖鎖供給源からタンパク質に糖鎖を転移させることで達成されることが報告されている。かかる糖鎖供与体としては、目的の糖鎖を有する糖タンパク質や糖ペプチドが挙げられる。
【0006】
また、ヒトに投与するタンパク質医薬の場合、糖鎖はヒト型糖鎖を付加することが好ましい。
鶏卵卵黄中には2本鎖のヒト型複合糖鎖が含まれることが知られており、これを糖鎖供与体として利用することができれば、エンドグリコシダーゼを用いて、均一の糖鎖を有する糖タンパク質を製造することが可能になるものと考えられる。
【0007】
これまでに、かかるヒト型複合糖鎖を糖鎖単独で、又は糖ペプチドとして単離する種々の方法が提案されている。しかし、生体内における糖鎖は多様な構造を有するだけでなく、存在量も微量であり、タンパク質などと結合して存在することも多いことから、一般にその精製は数多くの工程を経る必要があることが多く、糖鎖の抽出や精製操作は難しいことが知られている。
【0008】
特許文献1には、鶏卵由来脱脂卵黄(粉末)から11糖シアリルオリゴ糖ペプチドおよび糖鎖アスパラギンを調製することが開示されている。特許文献2には、脱脂卵黄をタンパク質分解酵素とペプチド分解酵素で順次処理した後、糖鎖アスパラギンに脂溶性保護基を導入し、クロマトグラフィーに供して各糖鎖アスパラギン誘導体を分離する方法が開示されている。特許文献3には、シアル酸類含有オリゴ糖を鳥類卵脱脂卵黄から水もしくは塩溶液で抽出することにより製造する方法が開示されている。特許文献4には、1種又は2種以上の糖鎖アスパラギンの混合物に脂溶性保護基を導入し、クロマトグラフィーに供して、各糖鎖アスパラギン誘導体を分離する方法が開示されている。
また、非特許文献1には、鶏卵の可溶画分より糖鎖ペプチド(SGP:シアリルグリコペプチド)が得られることが開示されている。このSGPは、11個の糖残基からなる複合型糖鎖の還元末端に、アミノ酸6残基からなるペプチド鎖のペプチド残基が結合した化合物である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された逆浸透膜による濃縮とイオン交換樹脂を用いて調製されるシアリルオリゴ糖ペプチドは純度が90%程度であり、純粋な糖鎖ペプチドを単離しているとはいえない。また、脱脂卵黄50kgから、モノシアリルオリゴ糖ペプチド及びジシアリルオリゴ糖ペプチドが13.8gしか得られておらず、収率が十分ではない。
特許文献2及び4の方法も、酵素により糖鎖アスパラギンを得てからクロマトグラフィーで分離するため工程が多い。
特許文献3に開示された方法は、限外ろ過を用いたシアル酸含有オリゴ糖を工業的に製造する方法であり、酵素処理によりシアル酸が1残基以上オリゴ糖に共有結合しかつアミノ酸を含まない低分子性のオリゴ糖鎖を遊離させている。
こうして得られるオリゴ糖鎖は遊離アミノ基を含有しないために、シアル酸を温存したままで蛍光標識を簡便に導入することが出来ない。
また、非特許文献1に開示された方法では、鶏卵卵黄1個から11糖シアリルオリゴ糖ペプチドを約8mg得ているが、5種類のカラムクロマトグラフィーによる精製を経るため大量処理には不向きである。
【0010】
このような事情から、エンドグリコシダーゼを用いて糖タンパク質を得る場合に必要なヒト型糖鎖を有する糖鎖供与体を、効率よく大量に得ることが困難であった。
【0011】
また、糖鎖供与体を得ることができたとしても、エンドグリコシダーゼを用いて糖鎖転移反応を行った場合、HPLC等の分析手段を用いて転移反応の進捗状況を追跡することになるが、糖鎖を失った糖鎖供与体と転移後生成物の物性が類似する事が多く、これらの区別がつかず反応追跡が困難になることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開96/2255号パンフレット
【特許文献2】国際公開04/70046号パンフレット
【特許文献3】特開平8−99988号公報
【特許文献4】特開2003−128703号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Akira Seko, Mamoru Koketsu, Masakazu Nishizono, Yuko Enoki, Hisham R. Ibrahin, Lekh Raji Juneja, Mujo Kim, Takehiko Ymamoto, Biochim. Biophys. Acta, 1997, Vol.1335, p.23-32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、エンドグリコシダーゼを用いた糖転移反応の糖鎖供与体等として好適に利用されうる糖ペプチド誘導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、鳥類卵脱脂卵黄を水又は塩溶液で抽出して糖ペプチドを含む抽出物を得る抽出工程と、当該抽出液を水溶性有機溶媒に加えて糖ペプチドを含む沈殿物を得る工程と、当該沈殿物を脱塩する脱塩工程と、を行うことによって、純度の高い糖ペプチドを得られること、さらに、脱塩工程で得られた糖ペプチドに脂溶性保護基を導入することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕下記式(I)で表される脂溶性保護基が導入された糖ペプチド誘導体;
【化1】


(I)
[式中、Rのうち少なくとも1つは、カルバメート系、アシル系、イミド系、アルキル系、及びスルホンアミド系から選択される脂溶性保護基を表し、その他は水素原子を表す。]
〔2〕前記脂溶性保護基が、
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(Fmoc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、tert−ブトキシカルボニル(BOC)基、トリチル(Trt)基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)基、アセチル(Ac)基、フタロイル(Pht)基、p−トルエンスルホニル基、トシル(Ts又はTos)基、及び2−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)基からなる群より選択される、上記〔1〕に記載の糖ペプチド誘導体;
〔3〕すべてのRが脂溶性保護基である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の糖ペプチド誘導体;
〔4〕上記〔1〕に記載の糖ペプチド誘導体の製造方法であって、
鳥類卵脱脂卵黄を水又は塩溶液で抽出して糖ペプチドを含む抽出液を得る抽出工程、
前記抽出液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチドを含む沈殿物を得る沈澱工程、
前記沈殿物を脱塩する脱塩工程、及び
脂溶性保護基を前記糖ペプチドのペプチド中のリジン残基のアミノ基に導入して糖ペプチド誘導体を得る導入工程
を含む、方法;
〔5〕前記脂溶性保護基導入後、反応液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチド誘導体を沈殿させる工程をさらに含む上記〔4〕に記載の製造方法;
〔6〕前記水溶性有機溶媒が、炭素数1〜5のアルコール、エーテル、ニトリル、ケトン、アミド、及びスルホキシドのいずれかから選択される溶媒を少なくとも一種以上含有する上記〔4〕又は〔5〕に記載の製造方法;
〔7〕前記水溶性有機溶媒が、炭素数1〜5のアルコールである上記〔6〕に記載の製造方法;
〔8〕前記アルコールが、メタノール、エタノール、及び2−プロパノールからなる群より選択される上記〔7〕に記載の製造方法;
〔9〕前記脱塩工程が、前記沈殿物を樹脂に保持させて水で洗浄する工程を含む、上記〔4〕から〔8〕のいずれか1項に記載の製造方法;
〔10〕前記樹脂が、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂である上記〔9〕に記載の製造方法;
〔11〕前記逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂が、化学結合型シリカゲル樹脂である上記〔10〕に記載の製造方法;
〔12〕前記化学結合型シリカゲル樹脂を構成するシリカが、ジメチルオクタデシル、オクタデシル、ジメチルオクチル、オクチル、フェニル、ドコシル、トリアコンチル基からなる群から選択される基と化学結合している上記〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕前記脱塩工程が、さらに有機溶媒水溶液により糖ペプチドを溶出する工程を含む上記〔9〕から〔12〕のいずれか1項に記載の製造方法;
〔14〕前記有機溶媒が、アセトニトリル、メタノール、及びエタノールからなる群より選択される少なくとも1種である上記〔13〕に記載の製造方法;
〔15〕前記有機溶媒水溶液の濃度が0.1〜20%(v/v)である、上記〔13〕又は〔14〕に記載の製造方法;
〔16〕前記抽出工程が、鳥類卵脱脂卵黄を水で抽出する工程であり、前記沈殿工程に用いる水溶性有機溶媒がエタノールであり、前記脱塩工程が、前記沈殿物をODS樹脂に保持させて水で洗浄する工程を含む、上記〔4〕に記載の製造方法;及び
〔17〕下記式(III)で表される糖鎖が所望のペプチドに結合した糖ペプチドの製造方法であって、
【化2】


[式中、Pは所望のペプチドを示す。]
前記所望のペプチドのアスパラギン残基にN−アセチルグルコサミンが結合したものを用意する工程と、
前記所望のペプチドと、上記〔1〕から〔3〕に記載の糖鎖ペプチド誘導体と、エンドグリコシダーゼと、を含む反応溶液をインキュベートする工程と、
前記反応溶液をカラムクロマトグラフィーによって分離する工程と、を含む方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る糖ペプチド誘導体はヒト型糖鎖を有するので、糖タンパク質医薬の製造等において、エンドグリコシダーゼ反応における糖鎖供与体として好適に用いられる。また、本発明に係る糖ペプチド誘導体はペプチド鎖に脂溶性保護基が導入されているので、糖転移反応後、反応生成物と物性が大きく異なり、分離しやすい。
また、本発明に係る糖ペプチド誘導体の製造方法によれば、高純度の糖ペプチド誘導体を工業的規模で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1において製造された11糖シアリルオリゴ糖ペプチドのHPLCチャートを示す。
【図2】実施例1において製造された11糖シアリルオリゴ糖ペプチドのH−NMRチャートを示す。
【図3】実施例1において製造された11糖シアリルオリゴ糖ペプチドのHPLCチャートを示す。
【図4】実施例1において製造されたFmoc−糖ペプチド誘導体のHPLCチャートを示す。
【図5】実施例2において製造された11糖シアリルオリゴ糖ペプチドのHPLCチャートを示す。
【図6】実施例2において製造されたAc−糖ペプチド誘導体のHPLCチャートを示す。
【図7】実施例3において製造されたZ−糖ペプチド誘導体のHPLCチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
(糖ペプチド誘導体)
本実施の形態において、糖ペプチド誘導体とは、下記式(I)で表される検出可能に標識された11糖シアリルオリゴ糖ペプチドをいう。
【化3】


(I)
[式中、Rのうち少なくとも1つは、カルバメート系、アシル系、イミド系、アルキル系、及びスルホンアミド系から選択される脂溶性保護基を表し、その他は水素原子を表す。]
【0021】
式(I)に示されるとおり、本実施の形態の糖ペプチド誘導体の糖鎖は、11個の糖残基からなる2分岐複合型糖鎖であり、2ヶ所の非還元末端にシアル酸を有する。
【0022】
本実施の形態の糖ペプチド誘導体の糖鎖の還元末端には、アミノ酸6残基(Lys−Val−Ala−Asn−Lys−Thr)からなるペプチド鎖が結合している。Lys、Val、Ala、Asn、及びThrは、アミノ酸の3文字表記であり、それぞれ、リジン、バリン、アラニン、アスパラギン、及びスレオニンを意味する。
アミノ酸は、L−アミノ酸であっても、D−アミノ酸であってもよく、ラセミ体などを含め、L−アミノ酸とD−アミノ酸の任意の比率の混合物であってもよいが、L−アミノ酸であることが好ましい。また、各アミノ酸は、各アミノ酸と等価な誘導体であってもよい。
【0023】
本実施の形態の糖ペプチドとは、特にことわりがない限り、上記式(I)で表される糖ペプチド誘導体において、3つのRがすべて水素原子であるもの、即ち、下記式(II)で表される糖ペプチドをいう。
【化4】


(II)
【0024】
本実施の形態の「脂溶性保護基が導入された」とは、本実施の形態の糖ペプチド誘導体の糖鎖のリジン残基中の3ヶ所のアミノ基に、脂溶性保護基が結合していることを意味する。
脂溶性保護基は、3ヶ所のアミノ基の少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは3ヶ所に結合している。脂溶性保護基の結合数が多いほど、脂溶性が高くなり、脂溶性保護基を有しないペプチドとの物性の相違が大きくなる。2ヶ所以上に脂溶性保護基が結合している場合、脂溶性保護基は同一のものでも異なるものでもよい。
【0025】
本実施の形態の脂溶性保護基としては、カルバメート系、アシル系、イミド系、アルキル系、スルホンアミド系から選択される脂溶性保護基が挙げられる。カルバメート系保護基としては、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z又はCbz)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)基等が挙げられ、アシル系保護基としては、アセチル(Ac)基等が挙げられ、イミド系保護基としては、フタロイル(Pht)基等が挙げられ、アルキル系保護基としては、トリチル(Trt)基等が挙げられ、スルホンアミド系保護基としては、p−トルエンスルホニル基あるいはトシル(Ts又はTos)基、2−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)基等が挙げられる。
【0026】
(糖ペプチド誘導体の製造方法)
本実施の形態の糖ペプチド誘導体の製造方法は、鳥類卵脱脂卵黄を水又は塩溶液で抽出して糖ペプチドを含む抽出液を得る抽出工程、前記抽出液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチドを含む沈殿物を得る沈殿工程、前記沈殿物を脱塩する脱塩工程、および標識物質を糖ペプチドのペプチド中のリジン残基のアミノ基に導入する導入工程を含む。
【0027】
本実施の形態の製造方法によれば、抽出工程、沈殿工程、及び脱塩工程により、鳥類卵脱脂卵黄より工業的規模で選択的に、安価且つ簡便に糖ペプチドを精製することができるので、これに標識物質を導入して、安価且つ簡便に工業的規模で高純度の糖ペプチド誘導体を製造することができる。
【0028】
(抽出工程)
抽出工程とは、鳥類卵脱脂卵黄を、水又は塩溶液に懸濁し、糖ペプチドの混合物などを抽出して、糖ペプチドの粗精製物である抽出液を得る工程である。なお、ここでいう糖ペプチドは、本実施の形態の11糖の2分岐複合型糖鎖以外を含む糖ペプチド以外の糖ペプチドも含む。
鳥類卵脱脂卵黄としては、市販の脱脂卵黄を用いてもよく、鳥類卵から調製した鳥類卵脱脂卵黄を用いてもよい。
鳥類卵としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニワトリ、ウズラ、アヒル、カモ、ダチョウ、及びハトなどの卵が挙げられ、卵黄内に含まれる糖ペプチドの量が多いので、鶏卵などが好ましい。
鳥類卵としては、生の卵であってもよく、乾燥して得られる卵の乾燥粉末であってもよく、鶏卵卵黄又は鶏卵卵黄粉末などを用いることが好ましい。
【0029】
鳥類卵脱脂卵黄は、例えば、鳥類卵の全卵又は卵黄を、有機溶媒により脱脂処理することにより得ることができる。
脱脂処理する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、鳥類卵に有機溶媒を添加して、沈殿物と有機溶媒層を分離する方法などが挙げられる。
脱脂処理に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、及び2−プロパノールなどが挙げられ、これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
脱脂処理において、鳥類卵に添加する有機溶媒の量としては、特に限定されるものではないが、鳥類卵に対して、質量で1〜5倍の有機溶媒を用いることにより脱脂処理を行うことができる。
また、脱脂処理を行う温度としては、特に限定されるものではないが、0〜25℃で行うことができる。
【0030】
鳥類卵に有機溶媒を添加した後、有機溶媒と鳥類卵とをよく撹拌することにより、有機溶媒により鳥類卵に含まれる脂分を除去することができる。
有機溶媒と沈殿物とを分離する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離してもよい。
有機溶媒を用いた脱脂処理は、2〜6回行うことが好ましい。
【0031】
鳥類卵脱脂卵黄に水又は塩溶液を添加して、鳥類卵脱脂卵黄から糖ペプチドを含む抽出液を抽出する方法は、特に限定されるものではないが、抽出工程において用いられる塩溶液としては、塩化ナトリウム水溶液及びリン酸緩衝液などが挙げられる。これらの塩溶液は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
塩溶液の濃度は、0.0001〜2.0%(w/v)であってもよく、鳥類卵脱脂卵黄に添加する水又は塩溶液の量は、特に限定されるものではないが、鳥類卵脱脂卵黄に対して、質量で、0.1〜50倍の水又は塩溶液を用いることができる。
また、糖ペプチドの抽出を行う温度は、特に限定されるものではないが、4〜25℃で行うことができる。糖ペプチドの抽出を行うpHは、特に限定されるものではないが、pH5〜pH9で行うことができる。
【0032】
鳥類卵脱脂卵黄に水又は塩溶液を添加した後、鳥類卵脱脂卵黄と水又は塩溶液とをよく撹拌することにより、糖ペプチドを含む抽出液を抽出することができる。
水又は塩溶液で抽出した糖ペプチドを含有する抽出液と鳥類卵脱脂卵黄とを分離する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、2,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離してもよい。
水又は塩溶液を用いた抽出処理は、2〜6回行うことが好ましい。
抽出工程は、水を用いて行うことが好ましい。
【0033】
(沈殿工程)
沈殿工程とは、抽出工程で得られた、糖ペプチドを含む抽出液を水溶性有機溶媒に添加することにより、抽出液を濃縮するだけでなく精製度の向上した糖ペプチドを沈殿物として得る工程である。沈殿工程においては、抽出液に水溶性有機溶媒を添加して粗精製物として、沈殿物を沈殿させてもよい。
本実施の形態において、水溶性有機溶媒とは、水と相溶性を有する有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水と相溶性を有する炭素数1〜5の有機溶媒などが挙げられる。炭素数1〜5の有機溶媒とは、溶媒分子中の炭素数が1〜5であることを意味する。
該溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系、あるいはジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、あるいはアセトニトリル等のニトリル系、アセトン等のケトン系、ジメチルホルムアミド等のアミド系、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系からなる群から選択される溶媒が挙げられる。これら低分子量溶媒は、1種で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
水溶性有機溶媒としては、炭素数1〜5のアルコールであることが好ましく、沈殿工程において、水溶性有機溶媒がアルコールである場合、該沈殿工程は、抽出液をアルコールに添加してアルコール沈殿する工程(以下、「アルコール沈殿工程」と記載する場合がある。)であり、抽出工程で得られた、糖ペプチドを含有する抽出液をアルコールに添加することにより、抽出液を濃縮するだけでなく精製度の向上した糖ペプチドを沈殿物として得るアルコール沈殿工程である。
【0034】
以下、沈殿工程をアルコール沈殿工程として説明するが、アルコール以外の炭素数1〜5の水溶性有機溶媒を用いた沈殿工程においても同様に実施することができる。用いる水溶性有機溶媒量や沈殿させる際の溶媒温度などの条件は、溶媒ごとに適宜選択することができるが、以下に例示するアルコール沈殿工程と同様に設定することができる。
【0035】
アルコール沈殿工程に用いられるアルコールの量は、特に限定されるものではないが、抽出液に対して、質量で2〜20倍のアルコールを用いることができる。またアルコール沈殿工程に用いられるアルコールは、炭素数1〜5個のアルコールであればよく、好ましくは炭素数1〜3個のアルコールである。炭素数1〜3個のアルコールとしては具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール(イソプロパノール)を挙げることができ、中でもエタノールが好ましい。
本実施の形態において、アルコール沈殿工程において用いるアルコールは1種類であってもよいし、アルコールの混合物又は他の溶媒との混合物であってもよい。
アルコール溶媒が混合物である場合、例えば、メタノール又は2−プロパノールをエタノールに対し0.01〜50%添加した混合溶媒を用いてもよい。また、エタノールに対しアセトン、アセトニトリル又はジエチルエーテルを0.01〜50%添加した混合溶媒を用いてもよい。
【0036】
糖ペプチドを含む沈殿物を分離する温度は、特に限定されるものではないが、4〜25℃で行うことができる。
【0037】
アルコール沈殿工程で用いる、先の抽出工程により得られた抽出液は、ろ過することで、清澄な抽出液とすることもでき、また、減圧濃縮などにより濃縮した抽出液として用いてもよい。
【0038】
アルコール沈殿工程において、糖ペプチドを含む沈殿物を分離する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、2,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離してもよく、4〜25℃で静置することで分離してもよい。
得られた糖ペプチドを含む沈殿物を、水又は塩溶液に溶解し、再度アルコール沈殿工程を行うことにより、より精製された沈殿物を得ることができる。
【0039】
(脱塩工程)
脱塩工程とは、沈殿工程で得られた糖ペプチドを含有する沈殿物から塩を除去する工程である。
脱塩工程は、脱塩方法として知られた種々の公知の方法で行うことができるが、例えば、イオン交換樹脂、イオン交換膜、ゲルろ過、透析膜、限外ろ過膜又は逆浸透膜などを用いて脱塩することも可能である。脱塩工程としては、例えば、沈殿工程で得られた沈殿物を樹脂に保持させて水で洗浄することにより脱塩することもできる。
【0040】
沈殿物を樹脂に保持させる方法は、吸着、担持など公知の結合様式を利用した方法とすることができる。また、沈殿物は、水で洗浄する際に沈殿物が洗浄液と共に流出しない程度に、保持されていればよい。
また、樹脂としては、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂等が挙げられ、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂とは、シリカゲル系、ポリマー系を代表的とする樹脂を意味しポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)ポリマーゲル樹脂、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリヒドロキシメタクリレート樹脂、スチレンビニルベンゼン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、化学結合型シリカゲル樹脂などが挙げられる。
化学結合型シリカゲル樹脂とは、例えば、多孔性シリカゲルにジメチルオクタデシルクロロシランの様なシランカップリング剤を反応させて製造するODS樹脂などが挙げられ、シリカゲルに対し、同様の手法で異なるシリル化剤を用いることで、オクタデシル、ジメチルオクタデシル、メチルオクタデシル、ジメチルオクチル、オクチル、フェニル、シアノプロピル、アミノプロピル基からなる群から選択される基を化学結合させることで得られる樹脂等も挙げられる。あるいは炭素数22のドコシル基又は炭素数30のトリアコンチル基を結合して得られる樹脂であってもよい。
【0041】
脱塩工程は、脱塩した後に樹脂に保持されている上記式(II)で表される糖ペプチドを、有機溶媒水溶液により溶出する工程を含むことが好ましい。溶出工程を行うことにより糖ペプチドの純度を向上させることができる。
溶出工程では、例えば、糖ペプチドを保持させたODS樹脂などのシリカゲル樹脂に対し、質量で1〜50倍の有機溶媒水溶液を用いて樹脂から溶出させることができる。また水洗浄の工程では、糖ペプチドができるだけ、水と共に流出せず、有機溶媒水溶液による溶出工程によって溶出することが好ましい。
溶出工程に用いる有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが挙げられる。有機溶媒水溶液の濃度は0.1〜20%(v/v)であり、好ましくは0.5〜20%(v/v)であり、より好ましくは10%(v/v)以下、さらに好ましくは5%(v/v)以下である。
有機溶媒水溶液により糖ペプチドを溶出する工程においては、水から徐々に濃度を上げていき、有機溶媒水溶液である溶出液にグラジエントをかけて溶出を行ってもよい。
【0042】
脱塩工程又は溶出工程を行う温度は、特に限定されるものではないが、4〜25℃で行うことができる。
【0043】
脱塩工程は、樹脂を用いた脱塩工程以外にも、分離膜を用いることにより沈殿工程で得られた沈殿物から脱塩することが可能である。
斯かる脱塩工程としては、例えば、限外ろ過膜又は逆浸透膜を用いることで沈殿物の脱塩を行うことができる。
脱塩工程に用いる膜としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロース、ポリビニルアルコールを構成基材とする平膜又は中空糸膜、スパイラル膜又はチューブラー膜であってもよい。さらにはイオン交換樹脂、イオン交換膜、ゲルろ過、透析膜、限外ろ過膜あるいは逆浸透膜で脱塩することも可能である。
【0044】
樹脂を用いた脱塩方法以外で(例えば分離膜による方法で)脱塩工程を行った後の処理液中に含まれる糖ペプチドを精製する方法としては、公知のペプチド、糖質、糖ペプチド等の精製方法を用いることができるが、例えば、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーなどが挙げられる。逆相クロマトグラフィーに用いられる担体としては、例えば、シリカを基材としてオクタデシル、ジメチルオクタデシル、メチルオクタデシル、ジメチルオクチル、オクチル、フェニル、シアノプロピル、アミノプロピル、ドコシル、トリアコンチル基などを充填剤表面に固定化したものが用いられるが、その中でODS樹脂などが挙げられる。
【0045】
ODS樹脂などのシリカゲル樹脂充填剤を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製方法においては、沈殿により得られた糖ペプチド中に含まれる塩を脱塩する工程を含んでいてもよく、有機溶媒水溶液により糖ペプチドを溶出する工程を含んでいてもよい。
糖ペプチドを添加して保持させたシリカゲル樹脂に対し、質量で、1〜50倍の水を用いて樹脂を洗浄することにより糖ペプチドの脱塩を行うことができる。
以上のとおり、本発明においては、(1)鳥類卵脱脂卵黄を、水又は塩溶液に懸濁し、糖ペプチドの混合物などを抽出して、糖ペプチドの粗精製物である抽出液を得る抽出工程、(2)抽出工程で得られた糖ペプチドを含む抽出液を水溶性有機溶媒に添加することにより、抽出液を濃縮するだけでなく精製度の向上した糖ペプチドを沈殿物として得る沈殿工程、及び(3)沈殿工程で得られた糖ペプチドを含有する沈殿物から塩を除去する脱塩工程を含み、この脱塩工程において化学結合型シリカゲル樹脂を用いた場合は糖ペプチドが樹脂に保持されるために有機溶媒水溶液により溶出する溶出工程を含むことがある。
ここで(3)の脱塩工程においては、樹脂を用いた脱塩以外の方法、例えば膜を用いて脱塩した場合、公知の糖ペプチドの精製方法を用いて更に糖ペプチドを精製することができる。この際には当然の事ながら、化学結合型シリカゲル樹脂を用いて精製しても良い。
【0046】
溶出された糖ペプチドは、有機溶媒水溶液の減圧濃縮及び乾燥などにより粉末状の糖ペプチドとして得ることができる。
本実施の形態において、得られた糖ペプチドは、再度アルコール沈殿工程あるいは脱塩工程を行ってさらに精製してもよい。
【0047】
(導入工程)
導入工程とは、脂溶性保護基を糖ペプチドのペプチド部分に存在する3個のアミノ基に導入する工程をいう。用いる脂溶性保護試薬の量、反応液のpH、反応時間、反応温度などの反応条件を選択することにより、3個のアミノ基に対し脂溶性保護基を1〜3ヶ所に導入することができる。脂溶性保護基の増加による脂溶性向上のために、脂溶性保護基は3ヶ所全てのアミノ基に導入することが好ましい。
脂溶性保護基は、上述した本実施の形態の糖ペプチド誘導体について挙げたものを使用することができる。
【0048】
脂溶性保護基をペプチドのアミノ基に導入する方法は、特に限定されないが、通常のペプチド合成に用いる縮合方法を用いればよい。例えばN−ヒドロキシコハク酸イミド、ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノールなどの活性エステルによりカルボキシル基が活性化されたアミノ基保護試薬を、必要に応じて、試薬を溶解できるアセトン、アセトニトニトリル、DMF、DMSO等の有機溶媒と水との混合溶媒中で、有機アミンなどの有機塩基、炭酸水素ナトリウム、リン酸緩衝液あるいは炭酸緩衝液などの無機塩基の存在下、氷冷下もしくは室温下で15分〜180分反応させても良い。
この際、添加するアミノ基保護試薬を糖ペプチドのアミノ基(ペプチド1モルあたり3モルのアミノ基を有する)に対して過剰量、例えば総アミノ基のモル数に対して1.1倍から5倍のモル数のアミノ基保護試薬を添加することで、糖ペプチドの全アミノ基に脂溶性保護基を導入することができる。
【0049】
この糖ペプチド誘導体を精製するためには、必要に応じてアセトン、アセトニトリル又はジエチルエーテル等を添加したアルコール沈殿工程および必要に応じて脱塩工程を組み合わせることで達成される。脱塩を行った後に、有機溶媒水溶液により溶出することにより糖ペプチド誘導体を得ることができる。すなわち糖ペプチド誘導体を添加して、糖ペプチド誘導体を保持させたODS樹脂などのシリカゲル樹脂に対し、質量で、1〜50倍の有機溶媒水溶液を用いて樹脂から溶出させることにより高純度の糖ペプチド誘導体を得ることができる。
【0050】
有機溶媒水溶液としては、例えば、アセトニトリル、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒の水溶液などが挙げられ、有機溶媒水溶液の濃度は0.1〜70%(v/v)であり、好ましくは1〜50%(v/v)である。有機溶媒水溶液により糖ペプチド誘導体を溶出する工程においては、水から徐々に濃度を上げていき、有機溶媒水溶液である溶出液にグラジエントをかけて溶出を行ってもよい。
【0051】
溶出された糖ペプチド誘導体は、有機溶媒水溶液の減圧濃縮及び乾燥などにより粉末状の糖ペプチド誘導体として得ることができる。本実施の形態において、得られた糖ペプチド誘導体は、再度アルコール沈殿工程あるいは脱塩工程を行ってさらに精製してもよい。
【0052】
本実施の形態の糖ペプチド誘導体は、例えば、エンドグリコシダーゼを利用する糖転移反応のための糖鎖供与体として有用である。
エンドグリコシダーゼは、糖鎖の非還元末端から単糖を加水分解して遊離するエキソグリコシダーゼと異なり、糖鎖の構造を認識して糖鎖ごと遊離することができる酵素である。エンドグリコシダーゼは、認識する糖鎖の構造によって様々な種類に分類されるが、本実施の形態の糖鎖ペプチドが有するヒト型の2分岐型11糖シアリルオリゴ糖、即ち下記式(II)で表される糖ペプチドの糖鎖部分を認識するものとして、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼに分類されるFlavobacterium meningosepticum由来のEndo−F2、Endo−F3、Mucor hiemalis由来のEndo−M等が挙げられる。
【化5】


(II)
【0053】
これらのエンドグリコシダーゼは、N−グリコシド結合糖鎖に作用し、糖鎖の還元末端のジアセチルキトビオース(GlcNAc−GlcNAc)部分を切断して糖鎖を遊離し、タンパク質側にN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を一残基残す。
エンドグリコシダーゼは加水分解反応によって糖鎖を遊離するのみならず、遊離した糖鎖を、水酸基を有する化合物に転移する。特にEndo−Mは、GlcNAcあるいは、GlcNAcを含む受容体が存在すると、遊離した糖鎖を当該GlcNAc部分に転移付加する。
【0054】
従って、本実施の形態の糖ペプチド誘導体を、エンドグリコシダーゼの存在下で、アスパラギン残基にGlcNAcを有する目的ペプチド又はタンパク質と反応させることにより、当該糖ペプチドが有する糖鎖を目的ペプチド又はタンパク質のGlcNAcに結合させることができる。
これにより、目的ペプチド又はタンパク質にヒト型糖鎖を転移付加することができる。また、糖鎖を失った糖ペプチド誘導体は脂溶性保護基を有しているので、付加反応後、糖鎖を失った糖ペプチド誘導体と、得られた糖鎖付加ペプチド又はタンパク質とを、クロマトグラフィーなどにより容易に分離することができる。
【0055】
また、上述のGlcNAcを含む受容体として、非ヒト型糖鎖が付加されたタンパク質を用いれば、いわゆる糖タンパク質における糖鎖のリモデリングを行うことができる。
例えば、遺伝子組み換え技術により、酵母を宿主として糖タンパク質を発現させると、酵母特有の高マンノース型糖鎖を有する糖タンパク質が得られる。この糖タンパク質を受容体とし、本実施の形態に係る糖ペプチド誘導体を糖鎖供与体として、エンドグリコシダーゼを用いて糖転移反応を行えば、ヒト型糖鎖を有する糖タンパク質を得ることが可能である。かかる方法によれば、従来動物細胞を宿主として生産していたために大量生産が困難であった糖タンパク質医薬を、酵母を宿主として生産し、糖鎖をリモデリングすることにより、均一なヒト型糖鎖を有する高品質な糖タンパク質を多量に得ることが可能となる。
【0056】
目的ペプチド又はタンパク質にヒト型糖鎖を付加することにより、生体内における分解酵素からの防御や、生体内での安定化、生理活性の付与などが可能になる。
【0057】
(糖ペプチドの製造方法)
本実施の形態に係る糖ペプチドの製造方法は、下記式(III)で表される糖鎖が所望のペプチドに結合した糖ペプチドの製造方法であって、所望のペプチドのアスパラギン残基にN−アセチルグルコサミンが結合したものを用意する工程と、当該所望のペプチドと、本実施の形態の糖鎖ペプチド誘導体と、エンドグリコシダーゼと、を含む反応溶液をインキュベートする工程と、反応溶液をカラムクロマトグラフィーによって分離する工程と、を含む。

【化6】


[式中、Pは所望のペプチド又はタンパク質を示す。]
【0058】
本実施の形態において、所望の糖ペプチドとは、上記式(III)に示されるとおり、所望のペプチド又はタンパク質に、ヒト型の11糖シアリルオリゴ糖がN−グリコシド結合により結合しているものをいう。
所望のペプチド又はタンパク質は、特に限定されないが、例えば、タンパク質医薬とすることができる。
【0059】
所望のペプチドのアスパラギン残基にN−アセチルグルコサミンが結合したものを用意する工程は、例えば、上記式(III)に示される糖鎖以外の糖鎖がN−グリコシド結合により結合している糖タンパク質から、当該糖鎖をエンドグリコシダーゼによって切断することによって得ることができる。また、GlcNAcのアジドと、Fmoc−アスパラギンのt−ブチルエステル(Fmoc−Asn−OtBu)からFmoc−Asn−GlcNAcを合成し、これを用いてペプチド固相合成を行うことにより、GlcNAcがアスパラギンに結合した所望のペプチド又はタンパク質を得ることもできる。
【0060】
GlcNAcがアスパラギンに結合した所望のペプチドと、本実施の形態の糖鎖ペプチド誘導体と、エンドグリコシダーゼと、を含む反応溶液をインキュベートする工程は、エンドグリコシダーゼを用いる糖転移反応の通常の反応条件、又はそれに準ずる条件で当業者が適宜行うことができる。エンドグリコシダーゼとしては、例えば、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを用いることができ、中でも、Endo−F2、Endo−F3、Endo−Mが好ましい。
【0061】
反応溶液をカラムクロマトグラフィーによって分離する工程も、当業者が適宜行うことができる。カラムクロマトグラフィーは、転移反応による生成物(所望のペプチドに糖鎖が結合したもの)と、糖鎖供与体(糖鎖を失った本実施の形態の糖ペプチド誘導体)とを分離できる限り特に限定されないが、例えば、逆相クロマトグラフィーや、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いることができる。中でもODSカラムを用いる逆相クロマトグラフィーが好ましい。
【0062】
本方法によれば、上記式(III)で表される糖ペプチドの糖鎖部分であるヒト型糖鎖が結合した所望の糖ペプチド(糖タンパク質)を大量に、且つ高品質に得ることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる測定方法は以下のとおりである。
【0064】
[HPLC分析]
1)11糖シアリルオリゴ糖ペプチドの分析例
カラム(Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)を備えたGLサイエンス製HPLC GL−7400システムを用いて、以下の測定条件によりHPLC分析を行った。
測定条件:
グラジエント;2%→17%(15min)、CHCN in 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
【0065】
2)Fmoc−糖ペプチド誘導体の分析例
測定条件:
グラジエント;50%→80%(15min)、CHCN in 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
3)Ac−糖ペプチド誘導体の分析例
測定条件:
グラジエント;8%→45%(15min)、CHCN in 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
4)Z−糖ペプチド誘導体の分析例
測定条件:
グラジエント;35%→85%(15min)、CHCN in 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
H−NMR測定]
11糖シアリルオリゴ糖ペプチドの分析例
O 0.4mLに試料 2mgを溶解して、JEOL製JNM−600(600MHz)でH−NMRを測定した。
【0066】
[LC/MS測定]
以下の測定条件でLC/MS測定を行った。用いたLC及びMSのシステムは以下のとおりである。
1)Fmoc−11糖シアリルオリゴ糖ペプチドの分析例
LC:アジレント製1100シリーズ
カラム:Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)
カラム温度:40℃
流速;0.2mL/min
UV:262nm
グラジエント;40%→100%(30min)、CHCN in 0.05%Formic acid solution
MS:サーモエレクトロン製LCQ
イオン化:ESI
モード:Positive
2)Ac−11糖シアリルオリゴ糖ペプチドの分析例
LC:アジレント製1100シリーズ
カラム:Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)
カラム温度:40℃
流速;0.2mL/min
UV:214nm
グラジエント;2%→30%(20min)、CHCN in 0.05%Formic acid solution
MS:サーモエレクトロン製LCQ
イオン化:ESI
モード:Positive、Negative
3)Z−11糖シアリルオリゴ糖ペプチドの分析例
LC:アジレント製1100シリーズ
カラム:Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)
カラム温度:40℃
流速;0.2mL/min
UV:214nm
グラジエント;30%→60%(30min)、CHCN in 0.05%Formic acid solution
MS:サーモエレクトロン製LCQ
イオン化:ESI
モード:Positive、Negative
【0067】
[実施例1]Fmoc−糖ペプチド誘導体の製造
(1)糖ペプチドの精製
鶏卵卵黄10個にエタノール350mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿物を得た。得られた沈殿物にエタノール300mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を除去する操作を3回繰り返して、沈殿物として脱脂卵黄150gを得た。
得られた上記脱脂卵黄150gに水200mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を得た。デカンテーションにより得られた沈殿物に水100mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を回収する操作を3回繰り返した。回収した上清をグラスフィルターにて濾過後、100mLまで減圧濃縮した。その後、得られた濃縮溶液をエタノール700mLに注加し、生じた沈殿物を、8,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、再度エタノールに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド1.58gを得た。
ODS樹脂としてシリカゲル樹脂Wakogel(100C18)25gをガラスカラムに充填し、該樹脂をメタノールで洗浄後、水で置換した。粗精製糖ペプチド1.5gを水5mLに溶解し水で置換後の樹脂に添加した。粗精製糖ペプチドを添加した樹脂を水100mLで洗浄後、2%アセトニトリル溶液で糖ペプチドを溶出した。溶出液を凍結乾燥することで117mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドのHPLC及びH−NMRによる測定結果をそれぞれ図1及び2に示す。HPLCによる純度では95%であった。得られた糖ペプチドは標品(東京化成製)との比較により上記式(II)で表される構造であることが分かった。
ODS樹脂としてシリカゲル樹脂Wakogel(100C18)25gをガラスカラムに充填し、該樹脂をメタノールで洗浄後、水で置換した。上記実施例1で得られた糖ペプチド50mgを水1mLに溶解し水で置換後の樹脂に添加した。粗精製糖ペプチドを添加した樹脂を水100mLで洗浄後、2%アセトニトリル溶液で糖ペプチドを溶出した。溶出液を凍結乾燥することで30mgの糖ペプチドを得た。得られた糖ペプチドのHPLCによる測定結果を図3に示す。HPLCによる純度では99%であった。
【0068】
(2)Fmoc基導入工程
(1)で得られた糖ペプチド10mgを水−ジメチルホルムアミド(2/1:体積比)1.5mLに加え、さらに0.1mLの1M重曹水を加えた。その後11mgのFmoc-OSu(N-(9-Fluorenylmethoxycarbonyloxy) succinimide(ペプチド研究所製)を加え1時間反応を行い、エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLを加え粗精製Fmoc−糖ペプチド誘導体を沈殿させた。8,000rpmで5分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿を回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、再度エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド誘導体10mgを得た。
得られたFmoc−糖ペプチド誘導体のHPLCによる測定結果を図4に示す。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、6.4分に検出されるピークは検出イオンが1766.3 ([M+2H]2+)推定分子量3530.6であり、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のFmoc基が導入された化合物であることが推定された。
【0069】
[実施例2]Ac−糖ペプチド誘導体の製造
(1)糖ペプチドの精製
鶏卵卵黄50個にアセトン1.1Lを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで15分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿物を得た。得られた沈殿物にエタノール700mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を除去する操作を2回繰り返して、沈殿物として脱脂卵黄500gを得た。
得られた上記脱脂卵黄500gに水600mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで15分遠心分離し、デカンテーションにより上清を得た。デカンテーションにより得られた沈殿物に水400mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を回収する操作を3回繰り返した。回収した上清をグラスフィルターにて濾過後、400mLまで減圧濃縮した。その後、得られた濃縮溶液をエタノール2Lに注加し、生じた沈殿物を、8,000rpmで15分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、エタノールに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド9.0gを得た。
ODS樹脂としてシリカゲル樹脂Wakogel(100C18)50gをガラスカラムに充填し、該樹脂をメタノールで洗浄後、水で置換した。粗精製糖ペプチド9.0gを水80mLに溶解し水で置換後の樹脂に添加した。粗精製糖ペプチドを添加した樹脂を水200mLで洗浄後、2%アセトニトリル溶液で糖ペプチドを溶出した。溶出液を凍結乾燥することで389mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドのHPLCによる測定結果を図5に示す。HPLCによる純度では96%であった。得られた糖ペプチドは標品(東京化成製)との比較により上記式(II)で表される構造であることが分かった。
【0070】
(2)Ac基導入工程
(1)で得られた糖ペプチド10mgを水−アセトン(2/1:体積比)1.5mLに加え、さらに0.1mLの1M重曹水を加えた。その後47mgのAc-OSu(N-Acetoxysuccinimide(和光純薬工業製))を加え30分間反応を行い、エタノール10mLを加え粗精製Ac−糖ペプチド誘導体を沈殿させた。8,000rpmで5分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿を回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド誘導体10mgを得た。
得られたAc−糖ペプチド誘導体のHPLCによる測定結果を図6に示す。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、5.6分に検出されるピークは検出イオンが1496.3 ([M+2H]2+)推定分子量2990.6であり、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のAc基が導入された化合物であることが推定された。
【0071】
[実施例3]Z−糖ペプチド誘導体の製造
実施例2の(1)で得られた糖ペプチド10mgを水−ジメチルホルムアミド(2/1:体積比)1.5mLに加え、さらに0.1mLの1M重曹水を加えた。その後9mgのZ-OSu (N-(Benzyloxycarbonyloxy)succinimide(ペプチド研究所製))を加え2時間反応を行い、エーテル−アセトン(1/1:体積比)10mLを加え粗精製Z−糖ペプチド誘導体を沈殿させた。8,000rpmで5分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿を回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド誘導体11mgを得た。
得られたZ−糖ペプチド誘導体のHPLCによる測定結果を図7に示す。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、6.2分に検出されるピークは検出イオンが1656.3 ([M+2Na]2+)推定分子量3266.6であり、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のZ基が導入された化合物であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される脂溶性保護基が導入された糖ペプチド誘導体。
【化1】


(I)
[式中、Rのうち少なくとも1つは、カルバメート系、アシル系、イミド系、アルキル系、及びスルホンアミド系から選択される脂溶性保護基を表し、その他は水素原子を表す。]
【請求項2】
前記脂溶性保護基が、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、tert−ブトキシカルボニル(BOC)基、トリチル(Trt)基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)基、アセチル(Ac)基、フタロイル(Pht)基、p−トルエンスルホニル基、トシル(Ts又はTos)基、及び2−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)基からなる群より選択される、請求項1に記載の糖ペプチド誘導体。
【請求項3】
すべてのRが脂溶性保護基である、請求項1又は2に記載の糖ペプチド誘導体。
【請求項4】
請求項1に記載の糖ペプチド誘導体の製造方法であって、
鳥類卵脱脂卵黄を水又は塩溶液で抽出して糖ペプチドを含む抽出液を得る抽出工程、
前記抽出液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチドを含む沈殿物を得る沈澱工程、
前記沈殿物を脱塩する脱塩工程、及び
脂溶性保護基を前記糖ペプチドのペプチド中のリジン残基のアミノ基に導入して糖ペプチド誘導体を得る導入工程
を含む、方法。
【請求項5】
前記脂溶性保護基導入後、反応液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチド誘導体を沈殿させる工程をさらに含む請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性有機溶媒が、炭素数1〜5のアルコール、エーテル、ニトリル、ケトン、アミド、及びスルホキシドのいずれかから選択される溶媒を少なくとも一種以上含有する請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記水溶性有機溶媒が、炭素数1〜5のアルコールである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、及び2−プロパノールからなる群より選択される請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記脱塩工程が、前記沈殿物を樹脂に保持させて水で洗浄する工程を含む、請求項4から8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂が、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂である請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂が、化学結合型シリカゲル樹脂である請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記化学結合型シリカゲル樹脂を構成するシリカが、ジメチルオクタデシル、オクタデシル、ジメチルオクチル、オクチル、フェニル、ドコシル、トリアコンチル基からなる群から選択される基と化学結合している請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記脱塩工程が、さらに有機溶媒水溶液により糖ペプチドを溶出する工程を含む請求項9から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が、アセトニトリル、メタノール、及びエタノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記有機溶媒水溶液の濃度が0.1〜20%(v/v)である、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記抽出工程が、鳥類卵脱脂卵黄を水で抽出する工程であり、前記沈殿工程に用いる水溶性有機溶媒がエタノールであり、前記脱塩工程が、前記沈殿物をODS樹脂に保持させて水で洗浄する工程を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項17】
下記式(III)で表される糖鎖が所望のペプチドに結合した糖ペプチドの製造方法であって、
【化2】


[式中、Pは所望のペプチドを示す。]
前記所望のペプチドのアスパラギン残基にN−アセチルグルコサミンが結合したものを用意する工程と、
前記所望のペプチドと、請求項1から3に記載の糖鎖ペプチド誘導体と、エンドグリコシダーゼと、を含む反応溶液をインキュベートする工程と、
前記反応溶液をカラムクロマトグラフィーによって分離する工程と、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231084(P2011−231084A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105507(P2010−105507)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(000173924)公益財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】