説明

糖化液製造方法及び糖化反応装置

【課題】酵素とセルロースを含むバイオマスとを反応させて糖化液を得るにあたり、酵素の有効利用を図ること。
【解決手段】酵素7とセルロース1とを含むバイオマスとを反応させて糖化液を得るにあたって、第1反応槽21においてバイオマスと酵素7とを反応させて酵素7が分散した糖化液及び酵素7が吸着した未反応のバイオマスを含む残渣を生成させ、次いでこれらの糖化液と残渣とを分離して、当該残渣に対して第2反応槽22においてpH調整液を供給して前記糖化液よりも糖濃度の低い希薄溶液を調製し、この希薄溶液中において前記残渣とこの残渣に吸着した酵素7とを反応させて糖化液を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素とセルロースを含むバイオマスとを反応させて糖化液を得る糖化液製造方法及び糖化反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源に代わるエネルギー源として用いるために、例えば特許文献1に示すように、木質あるいは草本系の材料、例えば木くずや稲藁などのバイオマスから酵素を用いて糖液を製造し、その糖を発酵させてアルコールを製造する方法が検討されている。これらバイオマスは、芳香族系の化合物で3次元構造を有するリグニンと、単糖の重合物であるセルロースやヘミセルロースが主成分となる。このセルロースやヘミセルロースを酵素で加水分解し、アルコール発酵原料となる単糖を製造する。しかし、セルロースやヘミセルロースはリグニンで保護された構造となっているため、図25に示すように、リグニンを破壊するための前処理例えば希硫酸分解処理などを行った後、セルラーゼなどの酵素を加えて例えば数日間反応させて発酵原料である例えばグルコースなどの糖化液を得て、続いてこの糖化液に発酵菌を加えて発酵させることによって最終生成物であるアルコール例えばエタノールが得られる。このアルコールは、その後例えば必要に応じて所定の濃度に濃縮(蒸留)されることになる。
【0003】
このプロセスを行うための具体的な装置としては、例えば図26(a)に示すように、糖化液を得るための糖化反応槽101と、発酵を行う発酵反応槽102と、を用いて、酵素と前処理を行った後のバイオマスとを糖化反応槽101に投入して反応させ、次いで糖化反応槽101で得られた糖化液と発酵菌とを発酵反応槽102に供給して発酵させてエタノールを製造する装置などが用いられる。酵素は、糖化反応槽101内においてセルロースやヘミセルロースを加水分解しグルコースやキシロース等の単糖からなる糖化液を製造する。
【0004】
ところで、このようなプロセスを実際に事業として採算ベースで行うためには、コストを極めて低く抑える必要があり、そのためには以下のような課題がある。先ず、例えば糖化液を得るために用いられる酵素が非常に高価であるため、この酵素を反応の度に廃棄せずに、回収し再利用することによって効率的に利用する必要がある。例えば上記の装置においては、糖化反応槽101においてバイオマスを反応させた後、例えば膜分離を行うことによって酵素の回収が図られるが、この場合には膜が汚れて寿命が短くなるので、当該膜のコストがかさんでしまう。また、膜分離ではバイオマスの分解残渣に吸着した酵素の回収はできない。従って、このような膜などの消耗品も含めて酵素を安価に再利用できる方法を検討する必要がある。
【0005】
また、残渣として廃棄される未反応のバイオマスを少なくして原料の無駄を抑えるため、投入したバイオマスから得られる糖化液の割合(糖化率:生成した糖の重量/バイオマス中のセルロース及びヘミセルロースの重量)がなるべく高くなるようにする必要がある。この時、上記の酵素反応は、糖の存在によって酵素分解反応が阻害されるので、反応が進行して糖濃度が高くなるにつれて、反応速度が低下するという課題がある。また、バイオマスには酵素分解されやすい部位例えばセルロース中の非結晶の部位などと、分解されにくい部位例えばセルロース中の結晶化度の高い部位などと、が混在している。バイオマスの酵素反応では、分解されやすい部位から先に分解が進むと考えられ、反応が進むにつれて分解されやすい部位の量が減っていくので、反応速度が更に遅くなっていくと考えられる。
【0006】
そのため、糖化率を高めるために、糖濃度の高い条件でセルロースやヘミセルロースを完全にあるいはほとんど反応させようとすると、反応に極めて長い日数が必要になり、逆に装置のランニング時間が増えてコストが増大してしまう。また、大量の酵素を投入して糖化率を高めようとすると、酵素の回収再利用を図らない限りコストの増加につながってしまう。
【0007】
一方、例えば反応槽101内へのバイオマスの充填量を小さくして糖濃度を低く抑えることによって、反応にそれ程長い日数をかけずに残渣の量を少なくして糖化率を高めることができると考えられるが、この場合には得られる糖化液の濃度が低くなるので、発酵エタノール濃度も低くなる。そのため最終製品である濃縮エタノールを製造する時の蒸留に要するエネルギー量が増大し、かつ設備容量が大きくなる。またさらには、糖濃度が低い糖化液を製造する場合には、糖化反応槽101や酵素反応槽102を大きくする必要があるのでコストアップにつながってしまう。従って、反応にそれ程長い日数をかけずに低コストで糖化率を高めるのは、極めて困難である。
【0008】
そこで、図26(b)に示すように、酵素反応とエタノール発酵とを同じ反応槽103内にて行う方法が検討されている。この方法は、反応槽103内にバイオマス及び酵素を供給し、次いで反応槽103に発酵菌を供給することにより、バイオマスと酵素との反応により得られた糖化液を随時発酵菌により発酵してエタノール化する方法である。この方法では、糖化反応の阻害要因である糖化液の濃度が低く抑えられて糖阻害が小さくなるので、糖化率を高めることができると考えられる。しかし、酵素反応の至適反応温度は一般的には50℃〜60℃であり、一方発酵の至適反応温度は、発酵菌の耐熱性から30℃〜35℃となる。そのため、この方法においては、発酵菌を死滅させないために30℃〜35℃にて反応を行う必要があるので、酵素の反応性が低くなってしまう。従って、投入する酵素量が多くなったり、あるいはかえって反応時間が長期に亘ってしまったりすることになる。
【0009】
また、上記の酵素法によりバイオマスからエタノールを低コストで得るためには、例えばエタノールの濃縮に要するエネルギーを抑えるために、エタノールの前駆体である糖化液についてもできるだけ高濃度で製造することが望ましいが、既述のように糖阻害により、あるいは反応終期には反応性の低いバイオマスが残ることにより、高濃度の糖化液を得ることは極めて困難である。例えば酵素の供給量や反応槽101内のバイオマスの充填量を多くすることによって高濃度の糖化液が得られることは分かっているが、この方法では酵素使用量が増え、さらには未反応の残渣が多くなったりしてコストが高くなってしまう。
【0010】
特許文献2には、繊維素からエタノールへの同時に起こる糖化−発酵反応において、酵素とアルコールとを含んでいる液体部分を、同時に起こる糖化−酵素化反応に役立つ繊維素を含んでいる固体と接触させて該固体に酵素を吸着させる技術が記載されているが、高濃度糖化液の製造については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−87319
【特許文献2】特開昭55−144885(特許請求の範囲など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、酵素とセルロースを含むバイオマスとを反応させて糖化液を得るにあたり、高濃度の糖化液を低コストで得ることのできる糖化液製造方法及び糖化反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の糖化液の製造方法は、
植物の集合体またはセルロースを含む植物の加工物の集合体であるセルロース系バイオマスと、セルロース糖化能力を有する糖化酵素とを反応させて糖化液を得る方法において、
糖化酵素とセルロース系バイオマスとを水溶液中で混合し、バイオマスを糖化酵素により糖化反応させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程で得られた反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第1の分離工程と、
前記第1の分離工程で得られた残渣に添加水を加えて水溶液を調製し、この水溶液中にて当該残渣に吸着している糖化酵素によりこの残渣を糖化反応させる第2の反応工程と、
前記第1の分離工程で得られた糖化液に糖化反応前のセルロース系バイオマスを加えて、当該糖化液中の糖化酵素により新たに加えたバイオマスを糖化反応させる第3の反応工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記第1の反応工程と前記第2の反応工程と前記第3の反応工程とは、夫々互いに異なる反応槽を用いて行われることが好ましい。
前記第2の反応工程で得られた反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第2の分離工程と、
前記第3の反応工程で得られた反応液を固液分離して高濃度糖化液と残渣とを得る第3の分離工程と、
前記第2の分離工程で得られた糖化液と、前記第3の分離工程で得られた残渣と、を混合して糖化反応させる反応工程と、を含み、
この反応工程は前記第1の反応工程に相当し、前記第1の反応工程に用いたバイオマスは、前記第3の分離工程で得られた残渣であることが好ましい。
前記第2の反応工程の水溶液及び前記第2の分離工程で分離された糖化液の少なくとも1つに対して糖化酵素を補充する工程を行うことが好ましい。
前記バイオマスに含まれているリグニンの割合は、10%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の糖化反応装置は、
上記記載の糖化液の製造方法を実施するための糖化反応装置であって、
糖化酵素とセルロース系バイオマスとを水溶液中で混合し、バイオマスを糖化酵素により糖化反応させるための2つの反応槽と、
これら反応槽内にバイオマスを供給するためのバイオマス供給部と、
これら反応槽内に糖化酵素を供給するための第1酵素供給部と、
前記2つの反応槽のうちの一方の反応槽内に添加水を供給するための添加水供給部と、
前記一方の反応槽においてバイオマスと糖化酵素との反応により生成する反応液の固液分離を行って糖化液と残渣とを得るための第1分離部と、
前記第1分離部により分離した糖化液を前記2つの反応槽のうちの他方の反応槽に搬送するための第1搬送部と、
前記一方の反応槽において前記第1の反応工程を行い、次いで前記第1分離部により得られた糖化液を前記他方の反応槽に供給し、しかる後残渣が貯留された反応槽及び糖化液の貯留された反応槽に夫々添加水及び糖化反応前のセルロース系バイオマスを供給して、前記2つの反応槽において夫々前記第2の反応工程及び前記第3の反応工程を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
前記第1酵素供給部は、糖化酵素を前記2つの反応槽内に供給する代わりに前記一方の反応槽内に供給するためのものであり、
前記添加水供給部は、添加水を前記一方の反応槽内に供給する代わりに前記他方の反応槽内に供給するためのものであり、
前記第1搬送部は、前記他方の反応槽に糖化液を搬送する代わりに残渣を搬送するためのものであり、
前記制御部は、前記第1の反応工程を行った後、前記第1分離部により得られた糖化液を他方の反応槽に供給する代わりに前記第1分離部により得られた残渣を前記他方の反応槽に供給するように制御信号を出力しても良い。
前記第1分離部は、前記一方の反応槽内において沈降分離により糖化液と残渣とを分離する手段であっても良い。
【0017】
また、本発明の糖化反応装置は、
上記に記載の糖化液の製造方法を実施するための糖化反応装置であって、
糖化酵素とセルロース系バイオマスとを水溶液中で混合し、バイオマスを糖化酵素により糖化反応させるための第1反応槽、第2反応槽及び第3反応槽と、
前記第1反応槽及び前記第3反応槽の各々にバイオマスを供給するためのバイオマス供給部と、
前記第1反応槽内に糖化酵素を供給するための酵素供給部と、
前記第2反応槽内に添加水を供給するための添加水供給部と、
前記第1反応槽において糖化酵素とバイオマスとの反応により得られた反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第1分離部と、
前記第1分離部により分離された糖化液及び残渣を夫々前記第3反応槽及び前記第2反応槽に供給するための第1糖化液供給部及び第1残渣供給部と、
前記第1反応槽において前記第1の反応工程を行い、次いで前記第1反応槽で得られた反応液から前記第1分離部により残渣と糖化液とを分離して前記第2反応槽及び前記第3反応槽にこれらの残渣と糖化液とを夫々供給し、しかる後前記第2反応槽及び前記第3反応槽に夫々添加水及び糖化反応前のセルロース系バイオマスを供給して、夫々の反応槽において前記第2の反応工程及び前記第3の反応工程を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
前記第2反応槽において生成した反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第2分離部と、
前記第3反応槽において生成した反応液を固液分離して高濃度糖化液と残渣とを得る第3分離部と、
前記第2分離部において分離した糖化液を前記第1反応槽に供給する第2糖化液供給部と、
前記第3分離部において分離された残渣を前記第1反応槽に供給する第3残渣供給部と、
前記第3分離部において分離された高濃度糖化液を外部に取り出すための糖化液回収部と、を備え、
前記第2反応槽で得られた反応液から前記第2分離部を用いて糖化液と残渣とを得ると共に、前記第3反応槽で得られた反応液から前記第3分離部を用いて高濃度糖化液と残渣とを得て、前記第2分離部で分離した糖化液と前記第3分離部で分離した残渣とを前記第1反応槽において反応させる工程を行い、
この工程は前記第1の反応工程に相当し、前記第1の反応工程に用いたバイオマスは、前記第2分離部で分離した残渣であることが好ましい。
【0019】
前記第1分離部、前記第2分離部及び前記第3分離部は、夫々前記第1反応槽、前記第2反応槽及び前記第3反応槽において沈降分離により糖化液と残渣とを分離する手段であっても良い。
前記バイオマスは、適当な方法により前処理操作が施され、前記バイオマスにに含まれているリグニンの割合は、10%以下であること、あるいは前記バイオマスは、古紙、パルプ、綿、綿繊維などのセルロース含有率が高くかつリグニン含有率が低い、植物原料の加工製品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、酵素とセルロースを含むバイオマスとを反応させて高濃度糖化液を得るにあたり、バイオマスと酵素とを反応させて糖化液(I)及び酵素が吸着した未反応のバイオマスを含む残渣(I)を生成させ、次いでこの糖化液(I)と残渣(I)とを分離して、当該残渣(I)に対してpH調整液を供給してこの残渣(I)とこの残渣(I)に吸着した酵素とを反応させて糖化液(II)を生成させている。さらには、前記糖化液(I)に新しいバイオマスを供給し、このバイオマスと糖化液(I)中に残存する酵素とを反応させて糖化液(III)と残渣(III)とを生成させている。さらにこの残渣(III)及び前記糖化液(II)とこれらの残渣(III)及び前記糖化液(II)に含まれる酵素とを反応させさらに単糖を製造している。そのため、酵素を有効に利用することができるので、また廃棄される残渣の量を抑えることができるので、高濃度糖化液を低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の糖化液製造装置の一例を示す側面図である。
【図2】上記の糖化液製造装置にて用いられるバイオマスの一例を示す模式図である。
【図3】上記の糖化液製造装置における工程の流れを示すフロー図である。
【図4】上記の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図5】バイオマスが分解されていく様子を示す模式図である。
【図6】上記の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図7】上記の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図8】上記の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図9】上記の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図10】上記の糖化液製造装置の他の例を示す側面図である。
【図11】上記の糖化液製造装置の他の例を示す側面図である。
【図12】上記の他の例の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図13】上記の他の例の糖化液製造装置における作用の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図15】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図16】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図17】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図18】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図19】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図20】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図21】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図22】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図23】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図24】本発明の実施例において得られる特性図である。
【図25】バイオマスからエタノールを得る工程例を示す概略図である。
【図26】従来においてバイオマスからエタノールを得るために用いられている装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態の装置構成)
本発明の糖化液製造方法を行うための糖化液製造装置の第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。この糖化液製造装置(糖化反応装置)は、酵素と発酵原料であるグルコースの重合物からなるセルロースを含むバイオマスとを反応させて糖化液(単糖が溶解した液)を製造するための装置であり、例えば既述の図26に示した装置と比較して、外部に取り出される糖化液中に含まれる糖濃度が高く、且つ外部に排出される未反応のバイオマスからなる残渣の量が少なく、即ち糖化率が高く、更には糖化液や残渣と共に外部に排出される酵素の量が少なく抑えられるように構成されている。この装置が上記のように構成されている理由については後で詳述するが、先ず装置の構成について簡単に説明すると、この装置は、3つの反応槽10と、これらの反応槽10毎に設けられ、各反応槽10にて生成した糖化液と未反応のバイオマスからなる残渣とを分離するための装置、例えば沈降分離装置、加圧濾過装置、吸引濾過装置、遠心分離装置、サイクロン分離装置またはフィルタープレス装置などからなる分離部である分離装置11と、を備えている。
【0023】
各々の反応槽10には、内部の反応溶液を例えば50℃〜60℃程度の反応温度に保つためのヒーターや反応溶液の温度を計測するための熱電対等(いずれも図示せず)が設けられている。また、図にはスクリュー型撹拌機を記載したが、撹拌装置の型式を限定するものではない。便宜上、図1中中央の反応槽10を第1反応槽21、左側の反応槽10を第2反応槽22、右側の反応槽10を第3反応槽23と呼ぶこととする。また、第1反応槽21、第2反応槽22及び第3反応槽23に夫々接続された分離装置11についても、夫々第1分離装置31、第2分離装置32及び第3分離装置33と呼ぶこととする。図1中12は、反応槽10内の酵素とバイオマスとを含む反応溶液を例えば撹拌羽、撹拌ポンプあるいは空気撹拌などにより撹拌するための攪拌機であり、各々の反応槽10内に投入される固体(バイオマス及び残渣)と液体(糖化液及びpH調整液)との割合に応じて、例えば撹拌力や撹拌速度などが個別に調整されている。
【0024】
図1中41、42、43及び44は、夫々酵素供給路、バイオマス供給路、pH調整液供給路及びバイオマス追加路であり、第1反応槽21には例えばセルラーゼなどの酵素が含まれる液体(水溶液)、例えばpH5程度に調整された水(pH調整液)及びセルロースを含むバイオマスを供給し、第2反応槽22には添加水である例えばpH5程度に調整された水を供給できるように、また第3反応槽23には第1反応槽21と同様にバイオマスが供給されるように構成されている。上記の酵素供給路41、バイオマス供給路42(バイオマス追加路44)及びpH調整液供給路43は、夫々酵素供給部、バイオマス供給部及び添加水供給部をなす。これらの供給路41〜43(追加路44)には、酵素、バイオマス及びpH調整液の給断を行うための図示しないバルブが設けられている。また、上記の添加水は、後述するように低糖濃度溶液を調製するためのものであり、pH調整液以外にも、例えば緩衝液や純水などであっても良い。尚、この装置では、バイオマスといった固体を供給(搬送)するにあたって、例えばスクリューフィーダを用いており、またこのスクリューフィーダなどと共にベルトコンベアなどが組み合わされて用いられる場合もある。後述の残渣についても同様である。
【0025】
第1分離装置31には、当該分離装置31にて分離した糖化液と残渣とを夫々第3反応槽23及び第2反応槽22に供給するための第1糖化液供給路51及び第1残渣供給路52が夫々第1糖化液供給部及び第1残渣供給部として接続されている。また、第2分離装置32には、当該分離装置32で分離した糖化液を第1反応槽21に供給するための第2糖化液供給部である第2糖化液供給路53と、この第2分離装置32にて分離した残渣を系外に廃棄するための残渣排出路54と、が接続されている。この残渣排出路54から排出される残渣は、バイオマス中に含まれているリグニン3などであり、例えば燃焼させることによって熱エネルギーが回収されることになる。第3分離装置33には、分離装置33で分離した残渣を第1反応槽21に供給する第3残渣供給路55と、分離装置33で分離した糖化液を外部に取り出す糖化液回収路56と、が夫々第3残渣供給部及び糖化液回収部として接続されており、糖化液回収路56から回収された糖化液は、化学製品の原料として利用したり、図示しない発酵槽において発酵菌により発酵してアルコール例えばエタノール溶液となる。そして、このエタノール溶液は、その後濃縮(蒸留)されることによって精製される。上記の各分離装置31〜33には、図示しないバルブが設けられており、これらの分離装置31〜33から排出される残渣や糖化液の給断を行うことができるように構成されている。
【0026】
(バイオマス及び酵素について)
第1反応槽21及び第3反応槽23に各々供給されるバイオマスは、木質系あるいは草本系バイオマスに適当な前処理を施し、リグニンを破壊あるいは溶解除去したものである。この前処理方法としては、例えば希硫酸分解処理、水蒸気爆砕処理、アンモニア爆砕処理、超臨界アンモニア処理、熱水・超臨界水処理、微生物分解処理、微粉砕処理または化学薬品処理などがあてはまる。バイオマス中におけるリグニンの含有量は、例えば10%以下好ましくは5%以下となっている。また、前処理を施したバイオマス以外に、古紙、パルプ、綿、綿繊維などの植物加工品も処理対象バイオマスとなる。
【0027】
第1反応槽21に供給される酵素は、セルロース分解酵素やヘミセルロース分解酵素であり、例えば数十Å程度の大きさの粒子(固体)である。また、この酵素は、図2(b)に示すように、セルロース1やヘミセルロース2の表面に吸着して、これらのセルロース1やヘミセルロース2を単糖へと分解し、セルロース1やヘミセルロース2へ吸着する前あるいは分解した後には反応溶液に分散して当該反応溶液と共に液体のように通流する性質を持っている。この酵素7は極めて高価な物質である。
【0028】
(実施例における実験の結果及び考察)
次に、上記の装置において、既述の図26に示した装置と比較して、外部に取り出される糖化液中に含まれる糖濃度が高く、且つ外部に排出される残渣の量が少なく、更には糖化液や残渣と共に外部に排出される酵素の量が少なく抑えられている理由について、以下の実施例における図14〜図24に示す実験結果及び考察に基づいて詳述する。尚、これらの図14〜図24について、詳細な実験条件や結果については後述の実施例にて説明する。
【0029】
図14は、バイオマスと酵素とを反応溶液(pH調整液)中において反応させた時に、当該反応溶液中の糖濃度がどのように増えていくか確認するために行った実験の結果であり、時間の経過と共に糖濃度の上昇速度(バイオマスの分解速度)が低下していくことが分かる。このように分解速度が低下する原因は、酵素反応が糖の存在により阻害され、またバイオマスが分解されやすい部位から分解されていくので、時間の経過(反応の進行)と共に反応溶液中の糖濃度及び分解しにくいバイオマスの割合が増加していくためだと考えられる。ここで、生成した糖の重量/バイオマス中のセルロース1及びヘミセルロース2の重量を糖化率と呼ぶこととすると、図15(a)に示すように、従来では上記のように反応に長時間費やしても、75%程度の糖化率(バイオマス投入量:10g)しか得られておらず、残りの25%程度のバイオマスは、例えば残渣として廃棄されることになってしまう。また、糖濃度を増やすために充填するバイオマスの量を増やすと、図15(b)に示すように、得られる糖濃度が上昇するが、一方図15(a)のように糖化率が更に低下して無駄に廃棄されるバイオマスの量が増加していくことになる。従って、1つの反応器で酵素反応を進行させる方法で残渣の量を増やさずに高濃度の糖化液を得るのは困難だということが分かる。尚、後述の実施例にて説明するように、この実験ではバイオマスとしてろ紙を用いている。以下の実験についても同様である。そのため、上記の残渣としては、反応しにくい部位のセルロースが残っており、酵素により分解できないリグニンなどは含まれていないと考えられる。
【0030】
図16は、緩衝液にバイオマスを投入した時に、緩衝液中の酵素濃度が時間の経過と共にどのように変化するか測定した結果である。この図16から、緩衝液にバイオマスを投入すると、緩衝液中の酵素濃度が低下しており、つまり緩衝液中の酵素がバイオマスに吸着していくことを示している。更に長い時間をかけてこの様子を確認して見ると、図17に示すように、一度バイオマスに吸着した酵素は、その後時間の経過と共に再度緩衝液中に戻ってくることが分かる。つまり、バイオマスが分解して糖化(液化)することによって、酵素がバイオマスに吸着していられなくなると、酵素が緩衝液中に戻ることになると考えられる。このことから、緩衝液などの液体中に存在する酵素を回収するためにはバイオマスを投入してバイオマスに吸着させれば良いということが分かり、一方バイオマスに吸着した酵素を回収するためには当該バイオマスを分解させれば良いことが分かる。尚、この実験では、緩衝液中のタンパク質を酵素としてとらえている。
【0031】
また、上記図17の結果から、酵素反応によりバイオマスが分解するとバイオマスに吸着した酵素が溶液中に戻っていくことが分かるが、全量は戻らない。つまり、図14の反応終期における未反応の分解しにくいバイオマス(残渣)には酵素が吸着していることが分かる。しかし、このように酵素が吸着していても、残渣として残ったバイオマスについては分解が速やかに進行しない。残渣について反応が速やかに進行しない原因については、前述したように残渣は分解されにくい部分の割合が多くなっていることの他に、残渣の周囲に満たされた糖化液により酵素反応が阻害され、残渣のように分解しにくいバイオマスに対してはよりいっそう分解反応が進行しにくいのではないかと考えられる。そこで、糖阻害の影響が小さい溶液中に残渣を置くことにより、つまりある程度酵素反応が進行して反応が進みにくくなった時の残渣を糖化液から分離して、当該残渣について糖阻害の影響が少ない状態とする(分離した残渣を糖を含まない緩衝液と混合させる)ことで反応が進行するかどうか検証した。
【0032】
図18及び図19は、反応を開始してから夫々168時間及び144時間経過した時の残渣を糖化液から分離して、当該残渣に緩衝液を添加して溶液中の糖濃度を測定した結果である。この結果から、分離前の糖化液中では反応が進みにくかった残渣であっても、糖阻害の影響が小さい溶液(低糖濃度溶液)中では反応が速やかに進行することが分かった。この時、既述の図16及び図17の結果から、残渣には既に酵素が吸着していると考えられたため、緩衝液に酵素を追加しなかったところ、それでも酵素反応が進行したことから、糖阻害により反応が進みにくかった酵素であっても、低糖濃度溶液中では反応に十分寄与できることが分かった。
【0033】
従って、以上の図14〜図19の結果をまとめると、酵素とバイオマスとを反応させた後、未反応のバイオマス(残渣)を糖化液から分離して糖濃度の希薄な溶液中において反応させるといったいわば2段階の反応過程を経ることにより、バイオマスの残渣量が少なくなることが分かった。しかしながら、この残渣を酵素分解して得られた糖化液の糖濃度は低いため、この糖化液と新品のバイオマスあるいは残渣(前記の残渣よりも分解されやすい部位を多く含む残渣)とをさらに反応させて糖化液糖濃度を高くする必要がある。
【0034】
次に、既述のように、バイオマスの分解により得られた糖化液は、その後発酵によりエタノール化された後、例えば蒸留を行うことにより濃縮されることになる。そのため、最終製品であるエタノールを安価に製造するためには、当該濃縮に要するエネルギーを抑える必要がある。従って、糖化液中に含まれる糖濃度をできるだけ高めることが望ましい。長い反応時間を費やさずに糖化液の糖濃度を高くするためには、添加する酵素量を増やすことが必要となる。しかし、酵素添加量を増加させると、従来の酵素糖化手法では、高価な酵素が使い捨てになるため製造コストが増大する。その対策として分離膜を使用した酵素回収方法が提案されているが、この方法は分離膜設備費用がかさむことになる。そこで本発明では、高濃度の糖化液を得るために酵素添加量を増大させても、簡便な方法で効率的に添加した酵素を回収再利用し、さらにはその操作が糖化液の高濃度化にも貢献し、かつ廃棄する残渣量を抑制できる対策を構築するために、以下の実験及び考察を行った。
【0035】
図20は、図14において反応開始から6日経過した時の上澄み液(糖化液)を残渣から遠心分離して、当該上澄み液に対してバイオマスを追加すると共に、上澄み液中のタンパク質(酵素)濃度を測定した結果である。この結果から、実験開始前には糖化液中に酵素が多く存在しているが、バイオマスを追加した後、時間の経過と共に糖化液中の酵素量が減少していることが分かる。即ち、糖化液中の酵素がバイオマスに吸着していると言える。そこで、図21及び図22に示すように、反応開始から1日後及び6日後の上澄み液にバイオマスを追加して糖濃度を測定すると、いずれの実験においても糖濃度が速やかに増加していた。しかし、これまでの実験から、この上澄み液には酵素が存在しているが、糖阻害が起こるので、分解されにくい結晶構造を持つ部位の割合が多くなる残渣は酵素分解が進みにくくなることが分かっている。そのため、この糖化液にて分解したセルロースは、新たに追加したバイオマスに含まれている分解されやすい部位だと考えられる。そして、この反応が速やかに起こっていたことから、上記の2段階の反応過程を経ることにより、つまり1度バイオマスの分解反応を行ってある程度糖濃度の高くなった糖化液に対して、更に新たなバイオマスを追加して当該バイオマス中の分解しやすい部位の分解反応を行わせることにより、長い反応時間を費やさなくても高濃度の糖化液を得ることができると言える。
【0036】
ここで、新たなバイオマスを追加する場合、残渣と糖化液を分離して、その糖化液に新たなバイオマスを追加するのではなく、残渣と糖化液を分離しないでそこに新たなバイオマスを追加する方法も考えられる。反応開始から50時間経過した時に、糖化液を残渣から分離せずに新たにバイオマスを追加して糖濃度及び糖化率を測定した実験について図23及び図24を参照して説明する。図23に示すように、バイオマスの追加前には反応速度(糖濃度の増加速度)が反応初期と比べて遅くなっているが、バイオマスの追加により急激に短時間で糖濃度が増加しており、糖化液と残渣とを分離しなくとも図21及び図22の実験結果と同様の効果が認められた。しかし、新たに追加したバイオマスについては、図24から分かるように、糖阻害を強く受けるので、初めから投入されていたバイオマスよりも糖化率が低くなっている。そのため、既述の図15に示した方法(バイオマスの充填量を増やすことによって糖化率を高める方法)よりもコストを抑えて高濃度の糖化液を得るためには、この反応において生成した残渣についても分解させる必要のあることがわかる。その場合には、既述のように希薄糖濃度溶液中に残渣を投入する手法を採ることができると考えられる。
【0037】
しかし、残渣と糖化液とを分離せずにこれらの図23及び図24に示すように新たにバイオマスを追加すると、分解率が高い残渣(始めに分解したバイオマス原料の残渣)と分解率が低い残渣(後から追加して分解したバイオマス原料の残渣)同士が互いに混じり合うことになる。そのため、この反応により生成した残渣を希薄糖濃度溶液において反応させようとすると、新たに追加したバイオマスから生成した残渣には比較的反応しやすい部位が含まれているので、当該残渣が始めに分解し、始めに投入していたバイオマスから生成した残渣については余り分解が進行しないことになってしまう。つまり、既述のように残渣を希薄糖濃度溶液において反応させるためには、残渣の分解率が揃っている必要がある。そこで、本発明では、このように糖濃度の高い溶液を得るにあたって、予め残渣を分離することとした。
【0038】
(第1の実施の形態の作用)
以上の実験結果により得られた知見に基づいてバイオマスの分解を行う本発明の糖化液製造方法において、既述のように、図26に示す装置と比べて、外部に取り出される糖化液中の糖濃度が高く、且つ外部に廃棄される残渣の量が少なく、更には糖化液や残渣と共に外部に排出される酵素の量が少なく抑えられながらバイオマスが分解されていく様子について、図3に示す反応全体のフローに基づいて以下に説明する。
【0039】
先ず、図4(a)に示すように、第1の反応工程として、第1反応槽21に酵素(酵素液)と前処理後のバイオマスとを投入する(ステップS1)。この第1反応槽21の反応溶液中において、図5に示すように、バイオマス(セルロース1やヘミセルロース2)に酵素7が吸着して分解反応が進行する。溶液中の酵素は全てがバイオマスに吸着するわけではなく、その一部は溶液中に存在する。添加する酵素量を増大させると、バイオマスに吸着する酵素量が増大して反応速度を大きくできるが、同時に溶液中の酵素濃度も増加する。反応が進行して糖濃度が高くなるにつれて、糖阻害の影響や、残渣中に分解しにくい部分の割合が大きくなってくるため、反応速度が次第に遅くなっていく。次いで、図4(b)に示すように、第1の分離工程として、第1反応槽21にて生成した糖化液と残渣とを第1分離装置31で分離して、糖化液を第3反応槽23に供給すると共に、残渣を第2反応槽22に供給する(ステップS2)。図5に示したように、第1分離装置31で分離した糖化液及び残渣には、既述のように夫々酵素が含まれることになる。
【0040】
また、図4(b)に示すように、第2の反応工程として第1反応槽21から残渣が供給された第2反応槽22にpH調整液を供給し(ステップS31)、第3の反応工程として第1反応槽21から糖化液が供給された第3反応槽23にバイオマスを供給する(ステップS32)。すると、同図(c)に示すように、第2反応槽22では糖濃度が第1反応槽21よりも低い希薄溶液が調整されるので、糖阻害が小さくなり、従って残渣に吸着していた酵素により残渣が速やかに分解されていく。そのため、第2反応槽22では、第1反応槽21から供給された残渣中のセルロース1やヘミセルロース2のほとんど大部分が分解されて、これらのセルロース1やヘミセルロース2に吸着していた酵素7が反応溶液中に拡散していき、当該残渣に含まれていたリグニン3などが僅かに残渣として残ることになる。この時、第2反応槽22で得られた糖化液の糖濃度は、第1反応槽21で得られた糖化液の糖濃度よりも低くなる。
【0041】
一方、第3反応槽23では、第1反応槽21で生成した糖化液に含まれていた酵素が追加されたバイオマスに吸着して、反応溶液中の酵素濃度が速やかに低下していく。そして、この第3反応槽23では第1反応槽21から供給された糖化液により糖阻害が強く働くことになるが、既述のように新たに追加したバイオマス中の反応しやすい部位が糖化液中の酵素により速やかに分解して高濃度の糖化液が生成する。続いて、図6(a)に示すように、第2の分離工程として、第2反応槽22で生成した糖化液と残渣とを第2分離装置32にて分離して、糖化液を第1反応槽21に供給すると共に、残渣を系外に廃棄する(ステップS41)。この時、残渣に吸着していた酵素がこの残渣と共に廃棄されることになるが、上記のように希薄糖濃度溶液中での反応により残渣の量が極めて少なくなっているので、大部分の酵素が糖化液と共に第1反応槽21に供給され、廃棄される酵素は極めて少なく抑えられることになる。
【0042】
一方、第3反応槽23においては、第3の分離工程として、得られた高濃度糖化液と残渣とを第3分離装置33にて分離して、高濃度糖化液を系外に排出すると共に、残渣を第1反応槽21に供給する(ステップS42)。高濃度糖化液は、当該高濃度糖化液に含まれる酵素と共に系外に排出されることになるが、第3反応槽23内の酵素の大部分(既述の図20の結果から約60%程度)は当該第3反応槽23に追加された未反応のバイオマスに吸着しているので、排出される酵素の量は少なく抑えられることになる。この高濃度糖化液は、例えば図示しない発酵槽に送られて、アルコール例えばエタノールなどに発酵され、その後蒸留などが行われて濃縮されることになる。
【0043】
続いて、第1反応槽21においては、第2反応槽22から供給された糖化液と第3反応槽23から供給された残渣とによって、図6(b)に示すように、第3反応槽23にて得られた高濃度糖化液よりも糖濃度の低い反応溶液が調製されることになるので、第3反応槽23において糖阻害により分解できなかった残渣は、糖阻害の影響が小さくなるので分解が進行していく(ステップS5)。即ち、この反応工程は既述のステップS1の反応工程に相当することになる。
【0044】
その後、この第1反応槽21において得られた糖化液と残渣とを夫々第3反応槽23及び第2反応槽22に供給し、既述のステップS2〜ステップS5を繰り返すことになる。即ち、図7に示すように、第1反応槽21で得られた糖化液及び残渣に対して、夫々第3反応槽23及び第2反応槽22においてバイオマス及びpH調整液を供給する工程と、第2反応槽22及び第3反応槽23にて夫々得られた糖化液及び残渣を第1反応槽21に再び戻す工程と、を交互に繰り返すことにより、連続的に高濃度糖化液が得られることになる。従ってこの装置では、第3反応槽23及び第2反応槽22には、バイオマスとpH調整液とがいわば間欠的に投入されることになる。
【0045】
そして、各反応槽10では既述のように夫々糖濃度の異なる反応溶液が調製され、つまり図8(a)に示すように、3つの反応槽10において左側の第2反応槽22から右側の第3反応槽23に向かって順番に糖濃度が高くなることになる。そのため、糖阻害の程度が左側の第2反応槽22から右側の第3反応槽23に向かって順番に強くなり、従って同図(b)に示すように、右側の第3反応槽23に追加されたバイオマスは、左側の第2反応槽22に向かって反応性の高い部位(糖阻害の影響を受けにくい部位)から順に分解して行くことになる。また、左側の第2反応槽22に供給されたpH調整液は、右側の第3反応槽23に向かうにつれて次第に糖濃度が高くなり、第3分離装置33にて高濃度糖化液として系外に取り出されることになる。
【0046】
一方、第1反応槽21に供給された酵素は、第2反応槽22から残渣に吸着して系外に排出されたり、あるいは第3反応槽23から高濃度糖化液と共に系外に排出されたりするものもあるが、第2反応槽22では生成する残渣量が少なくなるように、また第3反応槽23では残渣に吸着して第1反応槽21に戻される酵素の量が多くなるように各反応槽10内の操作条件を調整することで、図9(a)に示すように、いわば3つの反応槽10間を循環することになる。つまり、酵素がバイオマス(残渣)に吸着し、またバイオマスの分解により酵素が反応溶液中に戻るという性質を利用するために、同図(b)に示すように、3つの反応槽10における残渣量を調整していると言える。具体的には、左側の第2反応槽22から右側の第3反応槽23に向かって順に残渣量が多くなるようにしている。従って、第2反応槽22が残渣からの酵素回収機能を持っており、第3反応槽23が反応溶液からの酵素回収機能を持っていると言える。
【0047】
この時、僅かながらも酵素が系外に排出されているので、またバイオマスの分解反応により酵素が失活する場合もあるので、同図(c)に示すように、その場合には第1反応槽21に酵素が補充されることになる(ステップS6)。
ここで、上記の各ステップを自動で行う場合には、この糖化反応装置には図示しない制御部が設けられ、この制御部は上記の各ステップを行うように既述の図示しないバルブの給断、各反応槽21〜23内の反応液の撹拌及び加熱などを行うように糖化反応装置に制御信号を出力することとなる。
【0048】
上述の実施の形態によれば、酵素とセルロースを含むバイオマスとを反応させて糖化液を得るにあたって、第1反応槽21においてバイオマスと酵素とを反応させて酵素が分散した糖化液及び酵素が吸着した未反応のバイオマスを含む残渣を生成させ、次いでこれらの糖化液と残渣とを分離して、当該残渣に対して第2反応槽22においてpH調整液を供給して前記糖化液よりも糖濃度の低い希薄溶液を調製し、この希薄溶液中において前記残渣とこの残渣に吸着した酵素とを反応させて糖化液を得ている。そのため、酵素を有効に利用ならびに回収することができ、かつ廃棄される残渣の量を抑える(高い糖化率を得る)ことができるので、糖化液を低コストで得ることができる。また、酵素の回収再利用を図ることができるので、例えば酵素の投入量を増やすことができ、その場合には糖化液を短時間で得ることができる。
【0049】
また、第3反応槽23において前記残渣を分離した後の糖化液に更にバイオマスを追加することによって、糖化液中に分散した酵素と新たに追加したバイオマス中の反応しやすい部位とを反応させることができるので、酵素の有効利用を図ると共に糖化液中の糖濃度を速やかに高めることができる。さらには、糖化液中に分散した酵素を新たに追加したバイオマスの残渣に吸着させて回収することができる。糖濃度の高い糖化液の製造と排出する酵素量の削減が可能になれば、各反応槽10の大きさを抑えて設備の費用を抑えることができるし、その後の蒸留に要するエネルギーを削減でき、さらには酵素費用も削減できるので、低コストで糖化液及びエタノールを得ることができる。この時、第3反応槽23にバイオマスを追加するにあたって、第1反応槽21にて生成した残渣を予め分離しているので、当該第3反応槽23にて生成した残渣の分解率を揃えることができ、従ってその後残渣が順次供給される第1反応槽21及び第2反応槽22では効率的に残渣を分解できる。
【0050】
そして、第2反応槽22及び第3反応槽23にて夫々生成した糖化液及び残渣を第1反応槽21に再び戻しているので、これらの糖化液及び残渣を有効に活用して連続的に高濃度糖化液を得ると共に、廃棄される残渣量及び酵素量を少なくすることができる。また、3つの反応槽10を用いて上記の処理を行っているので、効率的に処理を行うことができる。また、3つの反応槽10において酵素を循環させる(再利用する)にあたって、例えば膜などの消耗品を用いていないので、低コストで高濃度糖化液を得ることができる。
また、第2反応槽22において、残渣と共に酵素が系外に排出されることになるが、この残渣が主にリグニンであることから、投入するバイオマス中のリグニンの含有量を既述のように予め少なくしておくことによって、残渣と共に排出される酵素の量を抑えることができる。
【0051】
上記のステップS6において酵素を補充するにあたって、第1反応槽21に供給したが、第2反応槽22に供給しても良い。
また、上記の例では3つの反応槽10を設けたが、例えば図10に示すように、3つ以上例えば5つ設けても良い。その場合には、第2反応槽22に供給されたpH調整液は、右側の第3反応槽23に向かうにつれて次第に糖濃度が高くなっていく。そのため、糖濃度の極めて高い第3反応槽23に供給されたバイオマスは、糖阻害を強く受けるため、バイオマス中において反応性の極めて高い部位が反応し、当該第3反応槽23の酵素の大部分が第3反応槽23から残渣と共に回収されることになる。また、右側の第3反応槽23から左側の第2反応槽22に向かうにつれて糖濃度が低くなっていくので、第2反応槽22には反応性の極めて低いバイオマスが残渣として供給され、当該第2反応槽22にて分解されることになる。そのため、第2反応槽22から系外に排出される残渣の量が微量になり、そのため残渣と共に排出される酵素の量も少なくなる。従って、反応槽10の数量を増やすほど、上記の例よりも更に高濃度の糖化液が得られ、また廃棄される残渣の量及び酵素の量が一層少なくなることになる。
【0052】
また、各々の反応槽10毎に分離装置11を設けたが、同じ分離装置11を各反応槽で共同利用することもできる。さらには、例えば各々の反応槽10内において残渣の沈降やろ過を行うようにして、例えば上澄み液を吸引し、堆積物やろ過物(残渣)を取り出す、あるいは反応槽に残すようにしても良い。その場合には、各々の反応槽10が分離手段を兼用することになる。
【0053】
(第2の実施の形態)
また、反応槽10の数量としては2つであっても良い。このような糖化液製造装置について、上記のように残渣を沈降させることにより2つの第1反応槽21及び第2反応槽22が夫々第1分離装置31及び第2分離装置32を兼用する場合を例に挙げて図11を参照して説明する。尚、既述の実施の形態と同じ部位については同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
2つの反応槽21、22について、便宜上左側を第1反応槽21、右側を第2反応槽22とすると、各々の反応槽21、22には、夫々酵素供給路41、バイオマス供給路42(バイオマス追加路44)、pH調整液供給路43、残渣排出路54及び糖化液回収路56が接続されており、以後の説明では、第1反応槽21及び第2反応槽22に夫々接続された各供給路や回収路(酵素供給路41、バイオマス供給路42(バイオマス追加路44)、pH調整液供給路43、残渣排出路54及び糖化液回収路56)について、夫々「第1」及び「第2」を付して説明する。また、これらの反応槽21、22には、当該反応槽21、22内の上澄み液である糖化液を吸引して他方の反応槽22、21に供給するための第1供給路(第1搬送部)61及び第2供給路62が夫々接続されている。
【0055】
この糖化液製造装置では、先ず図12(a)に示すように、第1反応槽21に酵素とpH調整液及びバイオマスとを供給すると、糖化液と残渣とが生成する(ステップS1)。この第1反応槽21において例えば沈降分離により糖化液と残渣とを分離して、同図(b)に示すように、糖化液を第2反応槽22に供給する(ステップS2)。そして、同図(c)に示すように、残渣が残された第1反応槽21にpH調整液を供給する(ステップS31)と共に、第2反応槽22にバイオマスを供給する(ステップS32)。次いで、各々の反応槽21、22において生成した糖化液と残渣とを夫々沈降分離して、図13(a)に示すように、第2反応槽22で生成した高濃度糖化液を系外に取り出す(ステップS42)。そして、同図(b)に示すように、第1反応槽21で生成した糖化液を第2反応槽22に供給して、第2反応槽22に残った残渣と混合すると共に、第1反応槽21に残った残渣を系外に廃棄する(ステップS41)。第2反応槽22では、残渣と糖化液とが反応する(ステップS5)ので、これらの糖化液と残渣とに対して夫々上記のステップS2(図13(c))〜ステップS5の工程を行う。この例では、高濃度糖化液と希薄溶液とが、第1反応槽21と第2反応槽22とで交互に調製されることになる。また、酵素が不足した場合には、いずれかの反応槽21、22に対して酵素を補充する。
この実施の形態においても、前記の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0056】
上記の場合には、各反応槽21、22間において残渣を残し、糖化液を移動させたが、例えば沈降分離した後の残渣を下方側から吸引して移動させるようにしても良い。その場合においても、同様の作用効果が得られる。
また、上記の各例にて糖化液の原料として用いられるバイオマスとしては、木質系や草本系原料の他、古紙、パルプ、綿繊維などの植物原料の加工製品で、セルロース1を含んでいれば良いし、またこれらのセルロース1を含む原料の複数種類から構成されていても良い。酵素としては、セルロース分解酵素あるいはセルロース分解酵素とヘミセルロース分解酵素の組み合わせなどが良い。また、上記のように糖化液を製造するにあたって、予め初期段階においては系外でバイオマスと酵素とを反応させて糖化液と残渣とを生成させ、連続運転時においてはこれらの糖化液と残渣とを夫々別の反応槽10に供給して上記の処理を行う方法も本発明に含まれる。
【実施例】
【0057】
次に、既に詳述した各実験結果について、実験条件や簡単な結果などについて以下に説明する。
・図14:反応時間と糖濃度との相関関係評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
酵素:5ml
緩衝液:95ml
(実験結果)
時間の経過と共に分解速度(糖濃度の増加速度)が減少していた。
【0058】
・図15:反応槽への原料の充填量と糖化率(糖収率)との相関関係評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙
基質充填量:10g、25g、30g、35g、40g
酵素:5ml
緩衝液:95ml
反応温度:50℃
(実験結果)
原料の充填量を多くすると、糖化率は減少していた。
【0059】
・図16:酵素液にバイオマスを投入した時の酵素濃度の経時変化評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
酵素:5ml
緩衝液:95ml
(実験結果)
酵素液にバイオマスを投入すると、溶液中の酵素(タンパク質)濃度が減少していた。
【0060】
・図17:酵素液にバイオマスを投入した時の酵素濃度の経時変化評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
酵素:5ml
pH調整液:95ml
(実験結果)
酵素液にバイオマスを投入すると、バイオマスに酵素が吸着して溶液中の酵素量が減少したが、その後しばらく経過すると、バイオマスに吸着した酵素がバイオマスの分解により再度溶液中に戻ってきていた。
【0061】
・図18:残渣を緩衝液(希薄糖濃度溶液)中に投入して糖濃度の変化を確認する実験
(実験条件)
基質(バイオマス):以下の残渣生成条件で生成した残渣を遠心分離したもの 16g(ウェット状態)
反応液:上記の残渣+緩衝液 50ml
(残渣生成条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
酵素:5ml
緩衝液:95ml
糖化時間:168h
(実験結果)
分解反応が進みにくくなっていた残渣であっても、糖濃度の高くなった糖化液から分離して希薄糖濃度溶液中に投入すると、速やかに分解反応が進行していた。
【0062】
・図19:残渣を緩衝液(希薄糖濃度溶液)中に投入して糖濃度の変化を確認する実験
(実験条件)
基質(バイオマス):図14の実験において反応開始から6日経過した反応溶液を遠心分離して得られた残渣 10g
反応液:上記の残渣+緩衝液 100ml
(実験結果)
同様に分解反応が進みにくくなっていた残渣であっても、希薄糖濃度溶液中において速やかに分解反応が進行していた。
【0063】
・図20:糖化液にバイオマスを投入して糖化液中の酵素濃度の変化を確認する実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
反応液:図14と同条件の実験において実験開始から6日経過した反応溶液を遠心分離して得られた糖化液 100ml
(実験結果)
糖阻害が起こって分解反応が進みにくくなる程度の糖化液にバイオマスを投入すると、糖化液中の酵素(タンパク質)濃度が減少していた。
【0064】
・図21:糖化液にバイオマスを投入した時の糖濃度の変化評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
反応液:図14と同条件の実験において実験開始から1日経過した反応溶液を遠心分離して得られた糖化液 100ml
(実験結果)
糖阻害が起こって分解反応が進みにくくなる程度に糖濃度が高くなった糖化液であっても、新たにバイオマスを投入すると、バイオマスが速やかに分解されて糖濃度が上昇していた。
【0065】
・図22:糖化液にバイオマスを投入した時の糖濃度の変化評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙 10g
反応液:図14と同条件の実験において実験開始から6日経過した反応溶液を遠心分離して得られた糖化液 100ml
(実験結果)
上記の実験と同様に、糖濃度が高くなった糖化液であっても、新たにバイオマスを投入することによってバイオマスが速やかに分解されて糖濃度が上昇していた。
【0066】
・図23:反応途中においてバイオマスを追加した時の糖濃度の変化評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙
基質濃度:10重量/体積%
酵素:5体積%
pH調整液:50mM酢酸緩衝液 pH5
反応温度:50℃
(実験結果)
実験開始から50h経過した時に、新たに10重量/体積%のろ紙を追加すると、追加前には上昇速度が遅くなっていた糖濃度が速やかに上昇した。
【0067】
・図24:反応途中においてバイオマスを追加した時の糖化率の変化評価実験
(実験条件)
基質(バイオマス):ろ紙
基質濃度:10重量/体積%
酵素:5体積%
pH調整液:50mM酢酸緩衝液 pH5
反応温度:50℃
(実験結果)
実験開始から50h経過した時に、新たに10重量/体積%のろ紙を追加すると、追加前よりも追加後のバイオマスの糖化率が低くなっていた。
【符号の説明】
【0068】
1 セルロース
2 ヘミセルロース
7 酵素
21 第1反応槽
22 第2反応槽
23 第3反応槽
31〜33 分離装置
41 酵素供給路
42 バイオマス供給路
43 pH調整液供給路
44 バイオマス追加路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の集合体またはセルロースを含む植物の加工物の集合体であるセルロース系バイオマスと、セルロース糖化能力を有する糖化酵素とを反応させて糖化液を得る方法において、
糖化酵素とセルロース系バイオマスとを水溶液中で混合し、バイオマスを糖化酵素により糖化反応させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程で得られた反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第1の分離工程と、
前記第1の分離工程で得られた残渣に添加水を加えて水溶液を調製し、この水溶液中にて当該残渣に吸着している糖化酵素によりこの残渣を糖化反応させる第2の反応工程と、
前記第1の分離工程で得られた糖化液に糖化反応前のセルロース系バイオマスを加えて、当該糖化液中の糖化酵素により新たに加えたバイオマスを糖化反応させる第3の反応工程と、を含むことを特徴とする糖化液の製造方法。
【請求項2】
前記第1の反応工程と前記第2の反応工程と前記第3の反応工程とは、夫々互いに異なる反応槽を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の糖化液の製造方法。
【請求項3】
前記第2の反応工程で得られた反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第2の分離工程と、
前記第3の反応工程で得られた反応液を固液分離して高濃度糖化液と残渣とを得る第3の分離工程と、
前記第2の分離工程で得られた糖化液と、前記第3の分離工程で得られた残渣と、を混合して糖化反応させる反応工程と、を含み、
この反応工程は前記第1の反応工程に相当し、前記第1の反応工程に用いたバイオマスは、前記第3の分離工程で得られた残渣であることを特徴とする請求項1または2に記載の糖化液の製造方法。
【請求項4】
前記第2の反応工程の水溶液及び前記第2の分離工程で分離された糖化液の少なくとも1つに対して糖化酵素を補充する工程を行うことを特徴とする請求項3に記載の糖化液の製造方法。
【請求項5】
前記バイオマスに含まれているリグニンの割合は、10%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の糖化液の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の糖化液の製造方法を実施するための糖化反応装置であって、
糖化酵素とセルロース系バイオマスとを水溶液中で混合し、バイオマスを糖化酵素により糖化反応させるための2つの反応槽と、
これら反応槽内にバイオマスを供給するためのバイオマス供給部と、
これら反応槽内に糖化酵素を供給するための第1酵素供給部と、
前記2つの反応槽のうちの一方の反応槽内に添加水を供給するための添加水供給部と、
前記一方の反応槽においてバイオマスと糖化酵素との反応により生成する反応液の固液分離を行って糖化液と残渣とを得るための第1分離部と、
前記第1分離部により分離した糖化液を前記2つの反応槽のうちの他方の反応槽に搬送するための第1搬送部と、
前記一方の反応槽において前記第1の反応工程を行い、次いで前記第1分離部により得られた糖化液を前記他方の反応槽に供給し、しかる後残渣が貯留された反応槽及び糖化液の貯留された反応槽に夫々添加水及び糖化反応前のセルロース系バイオマスを供給して、前記2つの反応槽において夫々前記第2の反応工程及び前記第3の反応工程を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする糖化反応装置。
【請求項7】
前記第1酵素供給部は、糖化酵素を前記2つの反応槽内に供給する代わりに前記一方の反応槽内に供給するためのものであり、
前記添加水供給部は、添加水を前記一方の反応槽内に供給する代わりに前記他方の反応槽内に供給するためのものであり、
前記第1搬送部は、前記他方の反応槽に糖化液を搬送する代わりに残渣を搬送するためのものであり、
前記制御部は、前記第1の反応工程を行った後、前記第1分離部により得られた糖化液を他方の反応槽に供給する代わりに前記第1分離部により得られた残渣を前記他方の反応槽に供給するように制御信号を出力することを特徴とする請求項7に記載の糖化反応装置。
【請求項8】
前記第1分離部は、前記一方の反応槽内において沈降分離により糖化液と残渣とを分離する手段であることを特徴とする請求項7に記載の糖化反応装置。
【請求項9】
請求項1に記載の糖化液の製造方法を実施するための糖化反応装置であって、
糖化酵素とセルロース系バイオマスとを水溶液中で混合し、バイオマスを糖化酵素により糖化反応させるための第1反応槽、第2反応槽及び第3反応槽と、
前記第1反応槽及び前記第3反応槽の各々にバイオマスを供給するためのバイオマス供給部と、
前記第1反応槽内に糖化酵素を供給するための酵素供給部と、
前記第2反応槽内に添加水を供給するための添加水供給部と、
前記第1反応槽において糖化酵素とバイオマスとの反応により得られた反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第1分離部と、
前記第1分離部により分離された糖化液及び残渣を夫々前記第3反応槽及び前記第2反応槽に供給するための第1糖化液供給部及び第1残渣供給部と、
前記第1反応槽において前記第1の反応工程を行い、次いで前記第1反応槽で得られた反応液から前記第1分離部により残渣と糖化液とを分離して前記第2反応槽及び前記第3反応槽にこれらの残渣と糖化液とを夫々供給し、しかる後前記第2反応槽及び前記第3反応槽に夫々添加水及び糖化反応前のセルロース系バイオマスを供給して、夫々の反応槽において前記第2の反応工程及び前記第3の反応工程を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする糖化反応装置。
【請求項10】
前記第2反応槽において生成した反応液を固液分離して糖化液と残渣とを得る第2分離部と、
前記第3反応槽において生成した反応液を固液分離して高濃度糖化液と残渣とを得る第3分離部と、
前記第2分離部において分離した糖化液を前記第1反応槽に供給する第2糖化液供給部と、
前記第3分離部において分離された残渣を前記第1反応槽に供給する第3残渣供給部と、
前記第3分離部において分離された高濃度糖化液を外部に取り出すための糖化液回収部と、を備え、
前記第2反応槽で得られた反応液から前記第2分離部を用いて糖化液と残渣とを得ると共に、前記第3反応槽で得られた反応液から前記第3分離部を用いて高濃度糖化液と残渣とを得て、前記第2分離部で分離した糖化液と前記第3分離部で分離した残渣とを前記第1反応槽において反応させる工程を行い、
この工程は前記第1の反応工程に相当し、前記第1の反応工程に用いたバイオマスは、前記第2分離部で分離した残渣であることを特徴とする請求項9に記載の糖化反応装置。
【請求項11】
前記第1分離部、前記第2分離部及び前記第3分離部は、夫々前記第1反応槽、前記第2反応槽及び前記第3反応槽において沈降分離により糖化液と残渣とを分離する手段であることを特徴とする請求項10に記載の糖化反応装置。
【請求項12】
前記バイオマスに含まれているリグニンの割合は、10%以下であることを特徴とする請求項6ないし11のいずれか一つに記載の糖化反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−19483(P2011−19483A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169527(P2009−169527)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(先導技術開発)/酵素糖化・効率的発酵に資する基盤研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】