糖調節のための方法およびシステム
対象の糖調節異常に関連する状態を治療する種々の方法と装置は、1つの実施形態では、少なくとも部分的に神経パルスをブロックするように選択された神経伝導ブロックでブロッキング部位において標的神経に神経伝導ブロックを適用することを含む。別の実施形態では、医薬を伴うまたは伴わない下方制御およびまたは上方制御の組み合わせが、糖調節異常の治療のために使用される。他の実施形態では、いろいろな神経(迷走神経とその神経枝、および内臓神経など)の上方制御または下方制御が、GLP−1とGIPの産生を修正するのに用いられ、それによってグルコースレベルを管理する。なおさらなる実施形態では、医薬を伴うまたは伴わない下方制御およびまたは上方制御の組み合わせが、GLP−1とGIPの産生を修正するために用いられ、糖調節異常を治療する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月3日に出願されたPCT国際特許出願であり、出願人は、米国を除くすべての指定国においては、EnteroMedics,Inc,USであり、米国を指定国とする場合は、Arnold W.Thronton,Dennis Dong−Won Kim,Mark B.Knudson,Katherine S.Tweden,Richard R. Wilson(すべて米国国民)である。本願は、米国仮特許出願第61/042,575号(2008年4月4日出願)に基づく優先権を主張し、この仮出願は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
アメリカ合衆国では、約1820万人(人口の6.3%)は、深刻な生涯にわたる健康状態の糖尿病に罹患している。糖尿病の主要な型は、1型と2型である。1型糖尿病は、自己免疫疾患であり、膵臓でのベータ細胞の破壊をもたらして、そのために膵臓はそれから殆どまたは全くインスリンを産生しない。1型糖尿病に罹患している人は、生きるために毎日インスリンを服用しなければならない。最も一般的な糖尿病の型は、2型糖尿病である。アメリカ合衆国では、40〜59才の人の約10%、そして60才以上の人の20%が、2型糖尿病に罹患している。この病気は第6の主要な死因であり、心臓病、脳卒中、高血圧、腎臓病、および神経損傷の発現の一因となる。いくつかの治療法が、糖尿病に対して利用できるが、患者の約15〜32%は、単独療法で血糖コントロールを維持することができない(Kahnら、NEJM 355:23(2006))。2型糖尿病は、重大な健康問題が残ったままであり、少なくとも1740億ドルの医療制度に対する経費を有する(Dallら、Diabetes Care 31:1−20(2008))。
【0003】
2型糖尿病は、高齢、肥満、糖尿病の家族歴、妊娠糖尿病の前病歴、運動不足、および民族性と関係している。2型糖尿病と診断された場合、膵臓は通常十分なインスリンを産生しているが、理由は分からないが、体は効果的にインスリンを利用することができず、インスリン抵抗性と呼ばれる状態である。数年後に、インスリン産生は減少し、そして、1型糖尿病の場合のように、グルコース恒常性を維持するためにインスリンを経口または注射により投与しなければならない。
【0004】
2型糖尿病の初期段階では、治療は、ダイエット、運動および体重減少から成り、後になって、膵臓の産生量を増加させる、またはインスリンの必要量を減少させることができる様々な薬物で遂行され、そして、最終的には、インスリンの直接的な投与から成る。糖尿病の治療のための医薬は、以下の5種類の薬物の構成から成る:スルホニル尿素類、メグリチニド類、ビグアナイド類、チアゾリジンジオン類、およびα−グルコシダーゼ阻害剤。これらの5種類の薬物は、異なる様式で作用して血糖レベルを下げる。あるものは膵臓からのインスリン産生量を増やし、あるものは肝機能に影響を及ぼすことによってグルコース産生量を減少させる。そのような治療によっても、一部の患者は、血糖コントロールが達成されない。
【0005】
エクセナチドは、2型糖尿病の治療のための、インクレチン・ミメティクスと呼ばれる新しいクラスの最初の薬物である。エクセナチドは、エキセンディン−4(アメリカドクトカゲとして知られているトカゲの唾液から最初に分離された天然に存在するホルモン)の合成バージョンである。エクセナチドは、主にインスリン分泌を増やすためにGLP−1の作用を模倣することによって血糖レベルを下げるように作用する。エクセナチドは、高い血糖レベルが存在するときだけこの効果を有するので、それ単独で低血糖症の危険を増加させる傾向はない。しかし、それがスルホニル尿素とともに服用されると、低血糖症が起こる場合がある。主な副作用は吐き気であり、そして、それは時間とともに改善される。エクセナチドを使っている患者は、通常、血糖コントロールの改善だけでなく、適度の体重減少を経験した。
【0006】
ごく最近、腸ホルモン(グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1))の分解を阻止することにより作用するDPP−4阻害剤と呼ばれる新しいクラスの薬物が開発された。GLP−1は、体の中の血糖レベルを下げるが、約2分の半減期を有し、従って、薬物自身として注射した際に十分に作用しない。GLP−1を分解するプロセスの妨害によって、DPP−4阻害剤は、それがより長く体の中で活性のままであるのを可能とし、血糖レベルが上昇した場合にのみ、それらを下げる。DPP−4阻害剤は、体重増加を生じる傾向はなく、コレステロールレベルに関しては中性または陽性の効果を及ぼす傾向がある。シタグリプチンは、現在、市販されている唯一のDPP−4阻害剤である。
【0007】
2型糖尿病に対する治療の第3のカテゴリは、この10年で誕生して、特定の患者のために普及が増加している。これは、各種タイプの胃バイパスや胃の制限的技法などの胃の処置を含む。予想外にも、これらの処置は、しばしば処置の2〜3日以内に体重減少とは関係なく2型糖尿病(患者の75〜85%)の解消を示した。ほとんどの患者が病的に肥満体(体格指数、BMI>40)であったが、しかし、進化している技術は、BMI>35の患者、および太りすぎであるか、わずかに肥満の患者にさえその処置を適用することを可能としている。しかし、これらの外科的選択肢は高くつき、手術の前と後の両方で、患者に対するリスクがある。
【0008】
神経活性を上方制御することによる糖尿病を治療する方法が記述されてきた。糖尿病を治療するためのこれらの方法のいくつかは、膵臓細胞、または直接に膵臓を神経支配する副交感神経/交感神経の組織を直接的に刺激することを含む。例えば、Wernickeへの特許文献1は、内在性インスリンの分泌を増やすために、低周波電気信号を迷走神経に適用することを開示している。Whitehurstへの特許文献2は、インスリン分泌を増やすために膵臓ベータ細胞を刺激する膵臓を神経支配する少なくとも1つの副交感神経組織に低周波信号を送達することを記述している。Whitehurstへの特許文献3は、迷走神経を刺激することによって内分泌の障害を軽減するための方法を記述している。
【0009】
他の研究では、インスリンと血糖の制御に関する迷走神経の役割が明白でないことを示している。最近の研究は、求心性肝臓迷走神経を損傷することは、デキサメタゾン処置マウスでのインスリン抵抗性の発症を妨げることができることを示唆している(Bernal−Mizrachiら、Cell Metabolism,2007,5:91)。ラットでは、いくつかの研究は、迷走神経切断がインスリン抵抗性を誘発することを示し、そして、他の研究においては、電気刺激がインスリン抵抗性を誘発する(Matsuhisaら、Metabolism 49:11−16(2000);Peitlら、Metabolism 54:579(2005))。別のマウスのモデルでは、肝臓の迷走神経切断は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体発現によるインスリン感受性の増大を抑制した(Unoら、2006,Science 312:1656)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,231,988号明細書
【特許文献2】米国特許第6,832,114号明細書
【特許文献3】米国特許第7,167,751号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多くの療法の有用性にもかかわらず、2型糖尿病は大きな健康問題のままである。治療法の多くは好ましくない副作用があって、適切な血糖コントロールを達成しないか、あるいは、適切な血糖コントロールが維持されない。このように、グルコースを制御する、および/または糖尿病を治療するためのシステムと方法を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(概要)
本開示は、対象での糖調節異常を治療するための方法とシステムを記述する。システムは、リード線と少なくとも1つの電極とを有するプログラム可能なパルス発生器(神経調節器)を含み、前記電極が標的神経または器官の上にまたは極めて接近して配置される。いくつかの実施形態では、システムは少なくとも2つのリード線を含み、治療はリード線上の各電極を介して達成される。
【0013】
本開示は、2型糖尿病などの糖調節異常、耐糖能異常、および/または空腹時血糖異常などを伴う状態を治療するための方法とシステムに向けられる。耐糖能異常および/または空腹時血糖異常を有する患者は、糖尿病前症に罹患しているとも呼ばれる。1つの実施形態では、方法は、対象の糖調節異常と関連する状態を治療することを含み、それは、断続的な神経信号をある部位で標的神経に適用することを含み、前記神経伝導信号は神経の求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御または上方制御するために選択され、前記神経活性は、前記信号の停止の際に回復する。いくつかの実施形態では、方法は、血糖コントロールを改善する有効量の薬剤から成る組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、薬剤はインスリン放出を刺激して、肝臓のグルコース産生を減少させ、および/またはインスリン感受性を増加させる。いくつかの実施形態では、2型糖尿病に罹患している患者が選択される。他の実施形態では、対象は耐糖能異常および/または空腹時血糖異常を有する患者である。場合によっては、治療の組み合わせは、2型糖尿病、あるいは、および/または糖調節異常に対して相乗効果を提供すること、および/または有効であるために求められる薬剤の量の減少を提供することが可能であり、それによって、副作用を最小にする。
【0014】
実施形態では、方法は、対象での糖調節異常と関連する状態を治療することを含み、それは、断続的な電気信号を、糖調節異常を有する対象の標的神経に適用することを含み、前記電気信号は神経の神経活性を下方制御するために、そして、前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復するために選択される。実施形態では、電気信号治療は、周波数やオンおよびオフ時間に関して選ばれる。いくつかの実施形態では、方法は、電気信号治療を1日に複数回、複数日にわたって第2の標的神経または器官に断続的に適用し、前記電気信号が、標的神経での活性を上方制御および/または下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択されることをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は血糖コントロールを改善する有効量の薬剤を含む組成物を対象に投与することをさらに含む。
【0015】
なお他の実施形態では、方法はGLP1、GIPまたは両方の量を修正することに向けられる。実施形態では、GLP1、GIPまたは両方の量を修正する方法は、第1の断続的な電気信号を標的神経に適用し、前記第1の電気信号は、神経での神経活性を下方制御し、前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復させるように選択され、そこでは、電気信号は、GLP1、GIP、または両方の量を修正するように選択されることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第2の電気信号治療を第2の標的神経または器官に断続的に適用し、前記第2の電気信号が、標的神経または器官の活性を上方制御し、ベースラインレベルに対して、第2の標的神経の神経活性を回復させるまたは標的器官の活性を回復させるように選択される周波数を有することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は血糖コントロールを改善する有効量の薬剤から成る組成物を対象に投与することをさらに含む。
【0016】
本開示の別の局面では、糖調節異常患者を治療するためのシステムが提供される。いくつかの実施形態では、システムは、埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続し、電極のうちの1つが標的神経上に配置されるように適合された、少なくとも2つの電極;パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールを含み、前記プログラム可能な治療送達モジュールが、1日に複数回、複数日にわたって標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含む少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成され、前記電気信号が、標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、埋め込み型パルス発生器;およびアンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含み、前記プログラム可能な格納および通信モジュールが、少なくとも1つの治療プログラムを格納し、少なくとも1つの治療プログラムを埋め込み型パルス発生器と通信するように構成されている外部コンポーネント;を含む。いくつかの実施形態では、プログラム可能な治療送達モジュールは、1日に複数回、複数日にわたって第2の標的神経または器官に断続的に適用される電気信号治療を含む第2の治療プログラムを送達するように構成され、前記電気信号が、標的神経の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経または器官の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、消化管(GI管+膵臓や肝臓などの非GI器官)と、迷走神経および腸管神経の無力化に対するその関係との略図である。
【図2】図2は、消化管へのブロッキング電極の適用を示す図1の概観である。
【図3】図3は、電気信号を迷走神経に適用することを含む、胃腸治療のための埋め込み型システム構成の略図である。
【図4】図4は、典型的なパルス発生器(104)と前および後迷走神経上に配置された電極212を含むリード線(106)との略図である。
【図5】図5は、電子アセンブリ510(「ハイブリッド回路」)と受信コイル516、電極リード線への結合のための標準的なコネクタ512(例えば、IS−1コネクタ)を含む埋め込み型コンポーネントを含む別の典型的な実施形態の代表的な略図を説明する。2つのリード線は、埋め込まれた回路への接続のためのIS−1コネクタに接続している。両方とも、神経に配置するための先端電極を有する。患者は、制御回路に接続しているアンテナを含む外部制御装置を受け取る。外部制御装置は、周波数選択、パルス振幅、および負荷サイクルのためのオプションを含むいろいろな信号パラメータに対してプログラムすることができる。
【図6】図6は、ブロッキング信号を適用した後の迷走神経の回復を示す。
【図7】図7は、装置埋め込みの時間からの過剰体重減少率(%EWL)に関する迷走神経ブロッキング療法(VBLOC)の効果を示す。示されるデータは、それらのパーセンタイルを越えたものに対してプロットされた個人データを有する過剰体重減少(EWL)%の変化(中央値、四分位分布、および5番目と95番目のパーセンタイル)である。2、3の個人は、少しの体重も減少しなかったのに対して、10%の患者は、6ヵ月で>30%EWLを有し、25%の患者は、>25%EWLを有した点に注目されたい。
【図8】図8は、心拍数と血圧に対するVBLOCの効果(平均±標準誤差)を示す。
【図9】図9は、カロリー摂取量と食品組成に対する迷走神経ブロッキングの効果を示す。各外来診察は、ベースライン(すべてp≦0.01)から有意な減少を示す。
【図10A】図10A、10Bは、VBLOCのベースラインからのパーセント変化として表される視覚的アナログ目盛り(VAS)を利用した飽食と満腹に対する効果を示す。全体として、結果はベースラインから有意な減少を示す。図10Aは、24時間想起に基づく食事での飽食(十分)までの時間。図10Bは、24時間想起に基づく食事(満腹)間の空腹。減少は、減少した空腹を表わす。
【図10B】図10A、10Bは、VBLOCのベースラインからのパーセント変化として表される視覚的アナログ目盛り(VAS)を利用した飽食と満腹に対する効果を示す。全体として、結果はベースラインから有意な減少を示す。図10Aは、24時間想起に基づく食事での飽食(十分)までの時間。図10Bは、24時間想起に基づく食事(満腹)間の空腹。減少は、減少した空腹を表わす。
【図11】図11は、12週での%EWLに対する膵ポリペプチド抑制の効果を示す(平均±標準誤差、p=0.02)。
【図12】図12は、典型的な負荷サイクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
以下の一般的に付与された特許と米国特許出願は、引用により本明細書に取り込まれる:2007年1月23日に発行されたKnudsonへの米国特許第7,167,750号;2005年6月16日に公開された米国特許出願2005/0131485A1、2005年2月17日に公開された米国特許出願2005/0038484A1、2004年9月2日に公開された米国特許出願2004/0172088A1、2004年9月2日に公開された米国特許出願2004/0172085A1、2004年9月9日に公開された米国特許出願2004/0176812A1および2004年9月2日に公開された米国特許出願2004/0172086A1。また、2006年3月2日に公開された国際特許出願公開番号WO2006/023498A1も参照により本明細書に取り込まれる。
【0019】
本開示は、対象の糖調節異常を治療するためのシステムと方法を含む。実施形態では、対象での糖調節異常に関連する状態を治療する方法は、断続的な電気信号を対象の標的神経に適用することを含み、前記電気信号は、神経での神経活性を下方制御し、そして前記ブロックの停止の際に神経での神経活性を回復するように選択される。いくつかの実施形態では、標的神経は、迷走神経である。いくつかの実施形態では、標的神経上の部位は、例えば、心臓の迷走神経の無力化部位より下などの心拍数に影響を及ぼすことを避けるように配置される。いくつかの実施形態では、電気信号は周波数、振幅、パルス幅およびタイミングに対して選択される。
【0020】
電気信号は、また、グルコース調節を改善するためにも選択されうる。グルコース調節の改善は、HbA1Cの%、空腹時グルコース、または耐糖能のいずれか1つの変化により測定することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、電気信号治療の適用とグルコース調節に影響を及ぼす薬剤の投与との併用をさらに含む。いくつかの実施形態では、電気信号治療の適用は、他の神経または器官への電気信号治療の適用を除外する。
【0021】
実施例1に記載されているように、患者での断続的な電気信号治療の適用は、血圧または心拍数に対する副作用なしで過剰体重減少をもたらす。そのうえ、信号の適用は、カロリー摂取量において30%の減少、飽食(満腹感)の増加、満腹感の減少(空腹)、および膵ポリペプチドの減少を提供する。本発明を限定することを意味するものではないが、炭水化物の減少を含むカロリー摂取量の減少は、グルコース消費量の減少をもたらすことになると予想される。また、膵ポリペプチドの減少は、消化に参加する膵酵素も減少し、それにより、その系で消化、吸収されるグルコースの量に影響を及ぼすことを示す。本明細書に記述される電気信号治療の胃排出遅延に関するどんな効果も、吸収されるグルコースの量と率の減少にも関与するであろう。血糖の量と率の減少は、インスリン産生および/または血糖をコントロールするために必要な投与の量と率の減少につながるであろう。
【0022】
胃排出および/または炭水化物の消化を遅らせる医薬による治療は、食後の血糖濃度を低下させることが知られている。胃排出遅延の患者は、また、より少ない食後グルコース偏位を有する。したがって、胃排出の遅れおよび/または消費された炭水化物の減少をもたらす神経活性の下方制御を含む処置は、おそらく低血糖をもたらし、そしてグルコース調節を高めるであろう。
【0023】
本明細書に記述される方法およびシステムの他の態様は、グルコース吸収、インスリン分泌、インスリン感受性、および内因性グルコース産生の1つ以上に影響を及ぼすように消化管ホルモン・バランスに影響を与えることができる。内分泌細胞由来ペプチドは、胃腸運動を調整して、満腹感を制御する信号を中枢神経系センターに伝え、そして、食物摂取を開始および停止する。消化管ペプチド(グルカゴン様ペプチドによって例示される)は、栄養の吸収と粘膜上皮の完全性を制御して、その結果、栄養の吸収を最適化する。少なくとも2つの胃腸ペプチド(グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)とグルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)は、インクレチンホルモンとして機能し、腸内栄養信号に応じてインスリン分泌を強化する。
【0024】
糖尿病にかかっていない人においては、食物が口に入ると、膵臓はインスリン分泌を開始する。食物が十二指腸に進むにつれて、食物の十二指腸壁との直接接触は、インクレチンホルモンのグルコース非依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)の分泌をもたらし、GIPは、いくつかある機能の中でも特に、膵臓からのインスリンの分泌を増加させるために作用する。GIPは、また、空腸/回腸でのGLP−1の分泌を促進し、GLP−1はまた、膵臓からのインスリンの分泌を増加させるために作用する。遠位空腸/回腸でのGLP−1分泌は、食物摂取の15〜30分後にピークを示し(GIP/神経経路介在)、そして、食物摂取の90〜120分後に第2ピークに達する(空腸/回腸との直接的な食物の接触によって媒介)。2型糖尿病においては、GIPの分泌は正常であるが、その有効性は減少し、一方、GLP−1の分泌も正常と比較して減少する。2型糖尿病に関して、GLP−1などの消化管ホルモン類の分泌を調整することは、グルコース調節を提供するための方法である。本明細書に記述される方法およびシステムにより、他のホルモン類も影響を受ける場合があり、それはペプチドYY、グレリン、インスリン、およびグルカゴンを含む。
【0025】
本開示のいくつかの態様では、方法とシステムは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、またはグルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)などのポリペプチドの量および/または分泌を、グルコース調節を容易にするために本明細書に記述されるように、神経伝導ブロックの適用により、もしくは神経刺激の適用により、または両方の組み合わせにより調節することを含む。本開示の他の態様では、本明細書に記述される方法およびシステムは、グルコース調節に影響を及ぼす薬剤(消化管ホルモンに影響を及ぼす薬剤を含む)の投与をさらに含む。薬剤のそのような投与は、神経ブロッキングおよび/または神経刺激の非存在下でまたは存在下で行うことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法とシステムは、断続的な電気信号を対象の標的神経または器官に適用することを含み、前記電気信号は神経での神経活性を下方制御するように、そして前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復するように選択され;そして、第2の断続的な電気信号を対象の第2の標的神経または器官に適用し、前記電気信号は神経での神経活性を上方制御または下方制御するように、そして前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復するように選択される。
【0027】
実施形態では、第1の標的神経は、前迷走神経、迷走神経の肝臓枝、迷走神経の腹腔枝、および後迷走神経からなる群から選択される。実施形態では、第2の標的神経は、迷走神経の腹腔枝、十二指腸、空腸、小腸、結腸および回腸の神経、ならびに胃腸管を無力化する交感神経を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の標的器官は、胃、食道、および肝臓を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の標的器官は、脾臓、十二指腸、小腸、空腸、結腸、または回腸を含むことができる。いくつかの実施形態では、膵臓での電極の設置は、除外される。
【0028】
いくつかの実施形態では、下方制御信号は、前迷走神経などの標的神経に適用することが可能であり、上方制御信号は、内臓または迷走神経の腹腔枝などの第2の標的神経に適用することが可能である。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、脾臓、十二指腸、小腸、空腸、結腸、または回腸などの器官上に位置する電極に適用されることができ、あるいは下方制御信号は、迷走神経に適用されることができる。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、十二指腸での食物の存在の検出に応じて、または血糖の増加に応じて適用され得る。
【0029】
(A.消化管の迷走神経支配の説明)
図1は、消化管(膵臓および胆嚢などのGI管+非GI器官(膵臓、肝臓、および胆嚢は、GI器官と考えられる:総称してPGと呼ぶ))とその迷走神経支配および腸管神経支配に対する関係の略図である。下部食道括約筋(LES)は、食物を胃Sに通過させ、すべての成分の適切な機能を想定して、逆流を防ぐゲートとして作用する。幽門PVは、胃Sから腸I(図には総称して示され、大腸または結腸および小腸(十二指腸、空腸および回腸を含む)を含む)への糜粥(びじゅく)の通過をコントロールする。腸Iの内容物の生化学は、十二指腸に放出する膵臓Pと胆嚢PGによって影響を受ける。この放出は、点線矢印Aで例示される。
【0030】
迷走神経VNは、信号を胃S、幽門PV、膵臓と胆嚢PGに直接伝える。脳を起源として、共通の迷走神経VNが横隔膜(図示せず)の領域に存在する。横隔膜の領域では、迷走神経VNは、前側と後側のコンポーネントに分かれ、両方ともGI管を神経支配するように作用する。図1と図2において、前迷走神経と後迷走神経は、別々に示されてはいない。その代わりに、迷走神経VNは、前迷走神経と後迷走神経を含むように図式的に示されている。迷走神経VNは、信号をその神経支配された器官へ、または神経支配された器官から遠ざかるようにそれぞれ送る求心性および遠心性の両方のコンポーネントを含む。
【0031】
迷走神経は、また、肝臓枝と腹腔神経を含む。肝臓枝は、肝臓でのグルコース産生に関して信号を提供することに関与している。腹腔神経または枝は、より大きな内臓および迷走神経(特に後側または右の迷走神経)からの寄与により形成される。
【0032】
迷走神経VNからの影響に加えて、GI管と消化管は、腸管神経系ENSによって大いに影響される。腸管神経系ENSは、GI管および膵臓と胆嚢PGの至る所に神経、受容体、およびアクチュエータの相互接続したネットワークである。腸管神経系ENSの何百万もの神経終末がGI器官の組織にある。説明の容易さのために、腸管神経系ENSは、腸管神経系ENSによって神経支配される器官を包囲する線として例示される。迷走神経VNは、少なくとも1部は、腸管神経系ENS(図式的に、消化管全体にわたる多くの迷走神経−ENS神経支配を表わす迷走神経幹VN3で例示される)を神経支配する。また、腸Iの受容体は、腸管神経系ENSに接続する。図中の矢印Bは、膵臓、肝臓および胆嚢の分泌機能へのフィードバックとしての腸管神経系ENSに対する十二指腸内容物の影響を例証する。具体的には、腸Iの受容体は、腸の内容物(それは、矢印Aの膵臓−胆汁の産生により化学的に調整される)の生化学に応答する。この生化学は、pHと浸透圧を含む。
【0033】
図1と図2において、迷走神経幹VN1、VN2、VN4およびVN6は、図式的に、LES、胃S、幽門PVおよび腸IのGI器官の直接的な迷走神経支配を説明する。迷走神経幹VN3は、迷走神経VNとENSとの間の直接的な伝達を説明する。迷走神経幹VN5は、膵臓と胆嚢の直接的な迷走神経支配を説明する。腸管神経ENS1−ENS4は、胃S、幽門PV、膵臓と胆嚢PGおよび腸Iでの多数の腸管神経を表わす。
【0034】
迷走神経VNと伝達する間、腸管神経系ENSは、迷走神経と中枢神経系とは独立して作用することができる。例えば、切断された迷走神経(迷走神経切断−潰瘍を治療するための時系列の手順)の患者において、腸管神経系は、腸を作動させることができる。大部分の腸管神経細胞は、迷走神経によって直接には神経支配されない。Gershon,“The Second Brain”,Harper Collins Publishers,Inc,New York,N.Y.p.19(1998)。
【0035】
(B.治療送達装置)
本開示は、標的神経または器官上での神経活性を調節するために信号を提供するパルス発生器を含む、糖調節異常に関連する状態を処置するためのシステムと装置を提供する。
【0036】
実施形態では、システムは、電極のうちの1つが、標的神経上に配置されるように適合している、埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続された少なくとも2つの電極;パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールを含み、前記プログラム可能な治療送達モジュールが、1日につき複数回、複数日にわたって標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含む少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成され、前記電気信号が、標的神経の活性を下方制御および/または上方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、埋め込み型パルス発生器;およびアンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含み、前記プログラム可能な格納および通信モジュールが、少なくとも1つの治療プログラムを格納し、少なくとも1つの治療プログラムを埋め込み型パルス発生器と通信するように構成されている、外部コンポーネント;を含む。
【0037】
1つの実施形態では、糖尿病または糖尿病前症などの状態を治療するためのシステム(図式的に、図3に示される)は、パルス発生器104、外部モバイル充電器101および2つの電気リード線アセンブリ106、106aを含む。パルス発生器104は、治療すべき患者の体内に埋め込まれるのに適合している。いくつかの実施形態では、パルス発生器104は、皮膚層103の直下に埋め込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、リード線アセンブリ106、106aは、伝導体114、114aによって、パルス発生器104の回路に電気的に接続している。業界標準コネクタ122、122aは、リード線アセンブリ106、106aを伝導体114、114aに接続するために提供される。その結果、リード線116、116aとパルス発生器104は、別々に埋め込まれてもよい。また、埋め込み後に、当初置かれたパルス発生器104が異なるパルス発生器で置き換えられる間、リード線116、116aは、所定位置にそのままにして置かれてもよい。
【0039】
リード線アセンブリ106、106aは、神経調節装置104によって提供される治療信号に基づいて患者の神経を上方制御および/または下方制御する。1つの実施形態では、リード線アセンブリ106、106aは、遠位電極212、212aを含み、それらは患者の1つ以上の神経または器官の上に配置される。例えば、電極212、212aは、患者の腹腔神経、迷走神経、内臓神経、またはこれらのある組み合わせにそれぞれ個別に配置されてもよい。例えば、リード線106、106aは、遠位電極212、212aを有し、それらは、患者のそれぞれ前迷走神経AVNと後迷走神経PVN上に、例えば、患者の横隔膜の直下に個別に配置される。より少ない、またはより多くの電極が、より少ない、またはより多くの神経上に、またはその近くに配置することができる。いくつかの実施形態では、電極はカフ電極である。
【0040】
外部モバイル充電器101は、埋め込み型神経調節装置(パルス発生器)104と通信するための回路を含む。いくつかの実施形態では、通信は矢印Aで示されるように、皮膚103を横断する双方向の無線周波数(RF)信号経路である。外部充電器101と神経調節装置104の間に送信される通信信号の例としては、治療指示、患者のデータ、および本明細書に記述される他の信号が挙げられる。エネルギーまたはパワーも、本明細書に記述されるように外部充電器101から神経調節装置104に送信することができる。
【0041】
示された例では、外部充電器101は、双方向性遠隔測定法(例えば、無線周波数(RF)信号経由)により埋め込み型神経調節装置104と通信できる。図3に示される外部充電器101は、コイル102を含み、それはRF信号を送受信することができる。類似のコイル105は、患者の体内に埋め込むことができ、神経調節装置104に結合することができる。1つの実施形態では、コイル105は神経調節装置104と一体化されている。コイル105は、信号を外部充電器101のコイル102から、そして、それに送受信するのに役立つ。
【0042】
例えば、外部充電器101は、RF搬送波の振幅変調または周波数変調によりビットストリームとして情報をコード化できる。コイル102、105の間に送られる信号は、望ましくは、約6.78MHzの搬送周波数を有する。例えば、情報通信段階の間、パラメータ値は、半波整流と無整流の間で整流レベルを切り換えることによって送信されることができる。しかし、他の実施形態では、より高いまたはより低い搬送波周波数が使用されてもよい。
【0043】
1つの実施形態では、神経調節装置104は、負荷シフト(例えば、外部充電器101に誘導される負荷の修正)を用いて、外部充電器101と通信する。負荷のこの変化は、電気誘導的に連結した外部充電器101で感知されることができる。しかし、他の実施形態では、神経調節装置104と外部充電器101は、他のタイプの信号を用いて通信することができる。
【0044】
1つの実施形態では、神経調節装置104は、バッテリーなどの埋め込み型電源151から治療信号を生み出す電力を受信する。好ましい実施形態では、電源151は再充電可能な電池である。いくつかの実施形態では、電源151は、外部充電器101が接続されていないとき、電力を埋め込み型神経調節装置104へ供給することができる。他の実施形態では、外部充電器101は、また、神経調節装置104の内部電源151を、周期的に再充電を提供するように構成されていることができる。しかし、他の代替的実施形態では、神経調節装置104は、外部ソースから受け取る電力に完全に依存することができる。例えば、外部充電器101は、RFリンク(例えば、コイル102、105の間で)を経由して、電力を神経調節装置104に送ることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、神経調節装置104は、リード線アセンブリ106、106aに治療信号の発生と送信を開始する。1つの実施形態では、神経調節装置104は、内部バッテリー151により電力を供給されると、治療を開始する。しかし、他の実施形態では、外部充電器101は、治療信号の発生を開始するように神経調節装置104の引き金となる。外部充電器101から初期信号を受信した後、神経調節装置104は、治療信号(例えば、ペース信号)を発生して、治療信号をリード線アセンブリ106、106aに送信する。
【0046】
他の実施形態では、外部充電器101は、また、それに従って治療信号が発生する(例えば、パルス幅、振幅、および他のそのようなパラメータ)指示を提供することができる。いくつかの実施形態では、外部コンポーネントは、アンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含む。1つ以上の治療プログラムのための指示は、プログラム可能な格納および通信モジュールに保存されることができる。好ましい実施形態では、外部充電器101は、メモリを含み、その中にいくつかの所定のプログラム/治療スケジュールが神経調節装置104への伝送のために格納されることができる。外部充電器101は、また、ユーザーが神経調節装置104への伝送のためのメモリに格納されることができるプログラム/治療スケジュールを選択できるようにする。別の実施形態では、外部充電器101は、各々の開始信号を有する治療指示を提供することができる。
【0047】
一般的に、外部充電器101に格納されるプログラム/治療スケジュールの各々は、医者によって患者の個々の要求を満たすように調整することができる。例えば、コンピュータ装置(例えば、ノートブックコンピュータ、パーソナルコンピュータなど)100は、外部充電器101と通信するように接続することができる。そのような接続を樹立して、医者は神経調節装置104に格納または伝送のどちらかのための外部充電器101に治療をプログラムするコンピュータ装置107を使うことができる。
【0048】
神経調節装置104は、また、治療指示および/または患者のデータを格納することができるメモリを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、神経調節装置は、パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールから成る。例えば、神経調節装置104は、1つ以上の治療プログラムをどんな治療が患者に送達されなければならないかを示すプログラム可能な治療送達モジュールに格納することができる。神経調節装置104は、また、患者がどのように治療システムを利用し、および/または送達された治療に反応したかを示す患者のデータを格納することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、外部コンポーネントおよび/または神経調節装置は、1つ以上の治療プログラムでプログラムされる。1つの治療プログラムは、1日につき複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含み、前記電気信号は、標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される。第2の治療プログラムは、1日につき複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含み、前記電気信号は、第2の標的神経または器官の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される。第1および/または第2治療プログラムは、同時に、異なる時間に、または、重なり合う時間に適用されてもよい。第1および/または第2治療プログラムは、その日の特定の時間に、およびまたはセンサーからの信号に応答して送達されうる。
【0050】
図3を参照すると、外部モバイル充電器101の回路170は、外部コイル102に接続することができる。コイル102は、患者の体内に埋め込まれ、パルス発生器104の回路150に接続している類似のコイル105と通信する。外部モバイル充電器101とパルス発生器104との間の通信は、ペーシングパラメータおよび記述される他の信号の伝送を含む。
【0051】
外部モバイル充電器101からの信号によってプログラムされて、パルス発生器104は、リード線106、106aへの上方制御信号および/または下方制御信号を発生させる。記述されるように、外部モバイル充電器101は、それがパルス発生器104内でバッテリーの周期的な再充電を提供し、記録の維持と追跡を可能としうるさらなる機能を有することが可能である。
【0052】
パルス発生器104用の埋め込み型(充電式の)電源が好まれるけれども、代替的な設計は外部電源を利用する場合があり、その電力はRFリンク(すなわち、コイル102、105の間で)を経由して埋め込み型モジュールに送られる。この代替的構成では、外部的に電力が供給されるけれども、特定のブロッキング信号源は、外部電源ユニット、または埋め込まれたモジュールのどちらかに由来してよい。
【0053】
電子エネルギー化パッケージは、必要に応じて、大部分を体外に置くことができる。RF電力装置は、必要なエネルギーレベルを提供することができる。埋め込まれたコンポーネントは、リード線/電極アセンブリ、コイルおよびDC整流器に制限され得る。そのような配置により、望ましいパラメータでプログラムされたパルスは、RF搬送波で皮膚を通って伝えられ、その後、信号は迷走神経活性を調整するために迷走神経への刺激としての適用のためのパルス信号を再生させるために整流される。これは、バッテリーを変える必要性を実質的に除くであろう。
【0054】
しかし、外部送信機は、患者本人で運ばれなければならず、それは不便である。また、検出は、単純な整流システムではより困難であり、そして、システムが全部埋め込まれる場合よりも、より大きな電力が起動のために必要とされる。いずれにしても、全埋め込み型システムは、ほとんどの処理アプリケーションに対する比較的小さい所要電力のために、潜在的に数年に達する比較的長い耐用寿命を示すと予想される。また、以前に本明細書で注目したように、比較的望ましくないけれども、埋め込み型神経電極セットに経皮的に達するリード線を有する外部パルス発生器を使用することは可能である。後者の技術で発生する大きな問題は、感染の可能性である。その利点は、短期テストがこの特定の患者の過剰体重に関連する状態が成功した治療に従うかどうかを決定するのを可能とする比較的簡単な処置を患者が受けることができることである。もし患者が受けることができるならば、より永久的な埋め込みが提供され得る。
【0055】
本発明の実施形態によると、装置は電気信号を患者の内部の解剖組織的特徴に適用するために開示される。装置は、患者の体内への埋め込みのための、そして電極への信号の適用の際に信号を特徴に適用するための解剖組織的特徴(例えば、神経)での配置のための少なくとも1つの電極を含む。埋め込み可能なコンポーネントは、皮膚層の下の患者の体内に配置され、電極に接続された埋め込み型回路を有する。埋め込み型回路は、埋め込み型通信アンテナを含む。外部コンポーネントは、皮膚より上に配置するために、そして無線周波数送信により皮膚を通って埋め込み型アンテナに電気的に結合されるように適応させるために、外部通信アンテナを備えた外部回路を有する。外部回路は、情報をユーザーに提供するための情報インターフェースとユーザーから入力を受け取るための入力インターフェースを含む複数のユーザーインターフェースを備えている。
【0056】
図4に関して、装置は、神経への信号の適用のために示される。胃Sは、迷走神経調整信号を適用することの理解を容易にする目的で図式的に示される。図4で、胃Sは、断食のためにしぼんだ虚脱胃底部Fで示される。実際には、胃底部Fは、サイズとボリューム(図4で示すように)を縮小するか拡大できる。食道Eは、開口部または裂孔Hで横隔膜Dを通過する。食道Eが横隔膜Dを通り抜ける領域では、迷走神経(前迷走神経AVNと後迷走神経PVNとして例示される)幹は、食道Eの両側に配置されている。お互いに対する、そして食道Eに対する前迷走神経AVNと後迷走神経PVNの正確な位置は、患者集団内で幅広い変化を被りやすいことが理解される。しかし、大部分の患者では、前迷走神経AVNと後迷走神経PVNは、食道Eが横隔膜Dを通過する裂孔Hでの食道Eに非常に近接している。
【0057】
前迷走神経AVNと後迷走神経PVNは、複数の幹に分かれ、それは直接にまたは腸管神経系を経由して胃を神経支配して、膵臓、胆嚢および腸などの他の器官に入ることが可能な神経部分を含みうる。一般に、前迷走神経AVNと後迷走神経PVNは、食道Eと胃Sの結合部位において食道Eと胃(そして、まだ広範囲に枝分かれしていない)にさらに非常に近接している。
【0058】
裂孔Hの領域では、食道組織から胃組織への移行がある。この領域は、Z−ライン(図の中で「Z」として標識される)と呼ばれる。Z−ラインの上部では、食道の組織は、薄くて、もろい。Z−ラインの下部では、食道Eと胃Sの組織は、実質的に厚く、より脈管的である。患者集団内で、Z−ラインは、下部食道括約筋の一般的な領域にある。この位置は 裂孔Hの位置のわずかに上に、わずかに下に、または裂孔Hの位置であり得る。
【0059】
本明細書に記述される糖調節異常に関連する状態を治療するのに有用な装置の別の実施形態は、図5に示される。図5に関して、装置は、電子アセンブリ510(「ハイブリッド回路」)と受信コイル516;電極リード線への結合のための標準的なコネクタ512(例えば、IS−1コネクタ)を含む埋め込み型コンポーネントを含む。2つのリード線は、埋め込まれた回路への接続のためのIS−1コネクタに接続している。両方とも、神経上に配置するための先端電極を有する。セットネジは、514に示され、電極の配置の調整を可能とする。いくつかの実施形態では、後方リードまたは前方リードを示すためのマーカー513が提供される。適切な部位での埋め込みをもたらすために縫合タブ511が提供される。いくつかの実施形態では、ひずみ取り515が提供される。患者は、制御回路に接続しているアンテナを含む外部制御装置を受け取る。外部制御装置は、周波数選択、パルス振幅、および負荷サイクルのための選択肢を含むいろいろな信号パラメータに対してプログラムすることができる。
【0060】
1つの実施形態では、神経AVN、PVNは、電気信号を神経包囲組織に通すことによって間接的に刺激される。いくつかの実施形態では、電極は双極対(すなわち交互の陽極と陰極電極)である。いくつかの実施形態では、複数の電極が、前迷走神経AVNと後迷走神経PVNの上に配置されてもよい。その結果、複数の電極に通電することにより、信号を前迷走神経AVNと後迷走神経PVNおよび/またはそれらの神経枝に適用することとなる。いくつかの治療的な適用では、電極のいくつかはブロッキング電気信号源(ブロッキング周波数と下記のような他のパラメータを備えた)に接続してもよく、そして他の電極は、上方制御信号を適用することが可能である。もちろん、単一のアレイの電極だけが、すべての電極がブロッキングまたは下方制御信号に接続された状態で使用され得る。いくつかの治療的な適用では、電極のいくつかは、上方制御している電気信号源(適切な周波数と下記される他のパラメータを備えた)に接続しうる。
【0061】
パルス発生器への電極の電気的接続は、埋め込み型パルス発生器(例えば、104)に電極を直接に接続しているリード線(例えば、106,106a)を備えることによる、先に説明したとおりのものであり得る。代わりに、そして、前述のとおり、電極は、電極に通電するための信号を受けるための埋め込み型アンテナに接続していてもよい。
【0062】
2つの対電極は、双極性の信号のためのパルス発生器に接続しうる。他の実施形態では、一部の迷走神経VNは、食道Eから切り離される。電極は、神経VNと食道Eとの間に配置される。もう一つの電極は、最初の電極の反対側の神経の片側で、そして、軸方向に整列して(すなわち、直接お互いの向かいに)迷走神経VN上に配置される。説明を容易にするために示されないが、電極は神経VNを囲む通常の担体(例えば、PTFEまたはシリコン・カフ)上で担持されうる。電極のその他の可能性のある配置は、参照により本明細書に取り込まれる、2005年6月16日に公開された米国特許出願2005/0131485に記述されている。
【0063】
前述の電極のどれもが平らな金属パッド(例えば、プラチナ)でありうるが、電極はいろいろな目的のために構成されていることができる。1つの実施形態では、1つの電極が1つのパッドにつながる。他の実施形態では、電極は2つの部分に分割され、両方とも共通のリード線に接続しており、そして、両方とも共通のパッチに接続している。いくつかの実施形態では、各々の電極は、リード線に接続していて、1つの電極から別の電極まで1つの治療を送達するために配置される。柔軟なパッチは、電極の部分の連結が神経VN上のストレスを軽減するのを可能とする。
【0064】
(神経調節装置(パルス発生器))
神経調節装置(パルス発生器)は、プログラムされた療法に従った電気パルスの形態で電気信号を発生させる。実施形態では、本明細書に記述されるように、ブロッキング信号が適用される。
【0065】
パルス発生器は、従来のマイクロプロセッサーと他の標準的な電気的および電子的コンポーネントとを利用して、装置の状態をコントロールするか、示すために、非同期シリアル通信によって外部プログラマーおよび/またはモニターと通信する。パスワード、ハンドシェイク、およびパリティチェックが、データ保全のために使用される。パルス発生器は、また、省エネルギーのための手段(それはどんな電池式装置においても重要であり、装置が障害の医療のために埋め込まれる場合、特に重要である)、および装置の偶然のリセットを防止するなどの様々な安全機能を提供するための手段を含む。
【0066】
特徴は、患者の安全と快適さの目的のためにパルス発生器に取り込まれてもよい。いくつかの実施形態では、患者の快適さは、最初の2秒の間に信号の適用を増加することによって強化される。装置は、また、迷走神経に送達しうる最大電圧(例えば、14ボルト)を制限するためにクランプ回路を有し、神経の損傷を防止する。さらなる安全機能は、手動式起動のために上述のそれらと類似している技術および手段によって、手動式起動解除に応じて信号の適用を止めるために装置を実装することによって提供されうる。このように、いずれにせよそれが突然耐え難くなるなら、患者は信号の適用を中断することができる。
【0067】
電気信号治療の断続的な態様は、所定の負荷サイクルによって信号を適用することにある。パルス信号は、連続または一連のあらかじめセットされたパラメータの電気パルスが、迷走神経枝に適用される所定のオン時間、続いて所定のオフ時間を有するようにプログラムされる。それでも、電気パルス信号の連続適用が、また、効果的である場合もある。いくつかの実施形態では、所定のオン時間とオフ時間は、非下方制御または非上方制御の状態まで、神経の少なくとも部分的な回復を可能にするようにプログラムされる。
【0068】
上方制御および/または下方制御の双方を提供するために1つは右の迷走神経を、そして他方は左の迷走神経を供給する複数のパルス発生器を用いてもよい。本発明の方法を実行するための埋め込み型パルス発生器の使用が好しいが、完全な入院よりはほんのいくらか拘束が少ないが、治療は、外来患者ベースで外部の設備を使用することで投与されることが想定されうる。1つ以上のパルス発生器の埋め込みは、もちろん、患者が動き回ることは可能であり、したがって、仕事の遂行を含む通常の日常活動に影響を及ぼさない。
【0069】
いくつかの実施形態では、横隔膜下の場所の近くの迷走神経の間接的な制御のために、信号は、例えば胃壁で、またはその近くなどの迷走神経と離れた神経系の一部で適用することができる。ここで、少なくとも1つのパルス発生器は、望ましい場所の近くで迷走神経の間接的なブロッキング、下方制御、または上方制御を提供するために内部的に電気信号を患者の神経系の一部に発生させて、適用するために、リード線を経由してパルス発生器にその後有効に連結される1つ以上の電極と共に埋め込まれる。あるいはまた、電気信号は横隔膜の下の場所で神経または器官への間接的な適用のために、患者の神経系の一部に非侵襲的に適用されうる。
【0070】
パルス発生器は、プログラミングの必要性と本明細書に記述された信号パラメータに従って開発された適切なプログラミングソフトウェアを用いて、プログラミングワンドとパソコンでプログラムすることができる。その意図は、もちろん、モニタリングとプログラミングの両方の機能のために、エレクトロニクスパッケージが埋め込まれた後、エレクトロニクスパッケージで非侵襲性の通信を可能とすることである。不可欠な機能を越えて、シーケンスの各々のステップで起こっているすべてについてユーザーに完全に知らせながら、プログラミングソフトウェアは、単純で迅速なプログラミングを容易にするために、直接のメニュー方式操作、HELP機能、プロンプト、およびメッセージを提供するために構築されなければならない。プログラミング能力は、エレクトロニクスパッケージの調節可能パラメータを修正する能力、装置診断法をテストする能力、遠隔測定器で伝えられたデータを格納および読み出しする能力を含まなければならない。埋め込み型ユニットが調べられるとき、プログラマーがそれから同時にそれらのパラメータのいずれかまたは全部を都合よく変更できるように、調節可能パラメータの現状がPCモニターに表示されることが望ましい;そして、特定のパラメータが変化のために選択されるならば、プログラマーがパルス発生器へのエントリーのために適切な望ましい値を選択しうるように、そのパラメータのためのすべての許容値が表示される。
【0071】
適切なソフトウェアと関連した電子機器の他の望ましい特徴は、患者のコード、装置シリアル番号、バッテリー動作時間数、出力時間数、および最後の1つ以上の起動の日付と時間を示している情報とともにスクリーン上に表示するための磁気起動数(患者の仲介を示す)を含む時系列データを格納および読み出しする能力を含む。
【0072】
診断テストは、装置の適切な活動を確かめるために、そして通信、バッテリーまたはリード線/電極インピーダンスの場合などの問題の存在を示すために実装されるべきである。例えば、低いバッテリーの読みは、バッテリーの差し迫っている寿命の末期と新しい装置の埋め込みの必要性を示す。しかし、本発明のパルス発生器の起動のためには、必要性が比較的より頻繁でないため、バッテリー寿命は他の埋め込み型医療装置(例えば、心臓ペースメーカーなど)のそれをかなり上回っているはずである。いずれにしても、神経電極は、診断テストで観察されたそれらの問題を示すことなく無期限の使用ができる。
【0073】
装置は概日リズムや同様にその他のプログラミングを利用することが可能であり、そのために、起動は、この患者のための通常の食事時に自動的に起こる。これはマニュアルの規定に加えて、食事の間で周期的であり、本明細書で上記したように感知が引き金となる起動である。
【0074】
パルス発生器は、装置の適切な実施によって、任意のいろいろな手段により患者によって手動的に起動されうる。これらの技術は、外部磁石または外部RF信号発生器の患者の使用を含むか、あるいはパルス発生器の上方に位置する表面をタップすることを含み、パルス発生器を起動し、そして、それにより電極に所望の変調信号の適用をもたらす。別の形態の処置は、パルス発生器をプログラムされた間隔で血糖コントロールを生む迷走神経活性変調を定期的に送達するようにプログラムすることによって実装される。
【0075】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上の電極への治療信号を開始するための信号を供給することができる1つ以上のセンサーを含みうる。例えば、センサーは、血液中のグルコースの量を測定し、グルコースの量が特定の閾値を上回るならば、GLP1生産を修正するために、神経または器官に上方制御信号を開始する場合がある。別の実施形態では、センサーは、十二指腸に入る食物の圧力または存在を測定して、上方制御信号を十二指腸、小腸、回腸、内臓神経、または迷走神経の腹腔枝に適用しうる。
【0076】
(C.方法)
本開示は、糖調節異常に関連する状態の患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、断続的な電気信号をある部位で標的神経に適用することを含み、前記神経信号は、神経の神経活性を下方制御および/または上方制御するように選択され、そして正常な、またはベースラインの神経活性は、前記ブロックまたは上方制御の停止の際に回復する。実施形態では、方法は、GIPおよび/またはGLP−1の分泌の増加を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、血糖コントロールを増やす有効量の薬剤を含む組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるように、電気信号は装置またはシステムを埋め込むことによって神経に適用される。
【0077】
いくつかの実施形態では、対象での糖調節異常と関連する状態を治療する方法は、断続的な神経伝導ブロックを、糖調節異常を有する対象の標的神経にブロッキング部位で適用することを含み、そして前記神経伝導ブロックは、神経の神経活性を下方制御するように、そして前記ブロックの停止の際に神経の神経活性を回復するように選択される。
【0078】
他の実施形態では、方法は、糖尿病または糖尿病前症の治療を含み、それは、そのような患者に対する糖尿病または糖尿病前症を治療するための有効投薬量が、不愉快な副作用または血糖コントロール障害を伴う患者の糖尿病またはグルコースコントロール障害を治療するための薬物を選択すること;ならびにa)1日につき複数回、複数日にわたって、神経上での求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御するために選択されるブロックの際に患者の目標神経に断続的な神経ブロックを適用し、そして、前記ブロックの停止の際に神経活性を回復すること;およびb)前記薬物を患者に投与すること、を含む同時治療により、糖尿病またはグルコースコントロール障害の患者を治療すること;を含む。
【0079】
他の実施形態では、グルコース調節を患者で達成する方法は、電極を迷走神経の上またはそれの近くに、そして陽極電極を隣接した組織と接触して配置すること;電極に結合された神経刺激装置を患者に埋め込み、振幅、パルス幅、周波数および負荷サイクルの定義された特徴を有する電気パルスを迷走神経に適用することであって、前記定義された特徴は、患者でのグルコース調節を改善するように選択される、こと;を含む
実施形態では、方法は、GLP1、GIP、または両方の量を増加または修正する方法であって、それは、断続的な電気信号を標的神経に適用し、前記電気信号は、神経での神経活性を上方制御または下方制御するように、そして前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復させるように選択され、前記電気信号は、GLP1、GIP、または両方の量を修正するように選択されることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるように、電気信号は、神経活性を下方制御するために、周波数、パルス幅、振幅、およびタイミングに対して選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるように、電気信号は、神経活性を上方制御するために、周波数、パルス幅、振幅、およびタイミングに対して選択される。いくつかの実施形態では、電気信号は、GLP1を修正するように選択される。いくつかの実施形態では、電気信号は、特に血糖が上昇しているとき、GLP1を増加させるように選択される。
【0080】
実施形態では、電気信号は、信号適用のオン時間と、それに続くその間信号が神経に適用されないオフ時間を含むサイクルで断続的に適用され、前記オン時間とオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたって適用される。いくつかの実施形態では、オン時間が、約30秒から約5分の持続時間を有するように選択される。信号が神経活性を下方制御するように選択されるとき、電気信号は、約200Hz〜5000Hzの周波数で適用される。信号が神経活性を上方制御するように選択されるとき、電気信号は、約1Hz〜200Hzの周波数で適用される。
【0081】
実施形態では、電気信号は、迷走神経上に位置する電極に適用される。時として、電気信号は、迷走神経の肝臓枝上に適用される。他の場合では、電気信号は、迷走神経の腹腔枝上に適用される。いくつかの実施形態では、電気信号は、肝臓、十二指腸、空腸、または回腸などのグルコース調節に関与する器官に適用される。
【0082】
実施形態では、下方制御信号および上方制御信号の両方が適用される。場合によっては、信号は同時に、異なる時間に、または重なり合う時間に適用される。いくつかの実施形態では、下方制御信号は、食道の近くの迷走神経に適用され、そして、上方制御信号は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝に適用される。いくつかの実施形態では、下方制御信号は、食道の近くの迷走神経に適用され、そして、上方制御信号は、十二指腸または回腸に適用される。
【0083】
実施形態では、方法は、電気信号治療を適用すべきかどうかを決定するために、GLP1またはGIPのレベルを検出することをさらに含む。GLP1および/またはGIPのレベルが、糖尿病のない対象からの対照サンプルで予想される正常レベルまたはベースラインレベルに増加するとき、GLP1および/またはGIPを増加させる治療は、適切なグルコースのコントロールを維持することを要求される予想レベル以下に落ちるまで、中止される場合がある。そのようなレベルは知られており、当業者に公知の方法を用いて決定することができる。
【0084】
実施形態では、方法は、グルコースコントロールを改善する薬剤を投与することをさらに含む。そのような薬剤は、インスリンの量を増加および/またはインスリンに対する細胞の感受性を増加させる薬剤を含む。薬剤の非限定的な例としては、インスリン、インスリン類似体、スルホニル尿素類、メグリチニド類、GLP−1類似体、DPP4阻害剤、およびPPARα、γ、またはδアゴニストが挙げられる。
【0085】
(糖調節異常と関連する状態)
糖調節異常と関連する状態は、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、妊娠糖尿病および1型糖尿病を含む。「糖調節異常」は、グルコース吸収、グルコース産生、インスリン分泌、インスリン感受性、GLP−1調節、およびグルカゴン調節の1つ以上における変化を指す。
【0086】
2型糖尿病は、肝臓、筋肉および脂肪細胞が、細胞にグルコースを輸送し、そして、エネルギーを細胞へ供給するために、適切にインスリンを使用しない病気である。細胞がエネルギーを切望し始めると、信号がインスリン生産を増やすために膵臓に送られる。場合によっては、膵臓は、結局は、高血糖の徴候を悪化させる、より少ないインスリンを産生する。2型糖尿病患者は、126mg/dl以上の空腹時血漿グルコース;200mg/dl以上の経口耐糖能;および/または6.5%以上のHbA1Cの%を有する。場合によっては、HbA1Cのパーセンテージは、6〜7%、7〜8%、8〜9%、9〜10%、および10%超である。
【0087】
2型糖尿病の治療法の存在にもかかわらず、必ずしもすべての患者が、グルコースコントロールを達成するか、あるいはグルコースコントロールを維持するわけではない。血糖コントロールを達成しなかった患者は、一般的に7%より大きいHbA1Cを有する。いくつかの実施形態では、薬物治療をしても血糖コントロールの問題を抱え続けている患者が選ばれる。
【0088】
耐糖能異常および/または空腹時血糖異常の患者は、グルコースコントロール欠如についてのいくつかの最小レベルの証拠を有するそれらの患者である。患者はどんな治療にもナイーブでありえるか、または1つ以上の医薬処置で治療された人達である。「糖尿病前症」は、米国糖尿病学会により用いられる用語であり、正常な血糖よりも高い血糖を有するが、糖尿病の基準を満たすのに十分に高血糖ではない人々である。血糖コントロールの欠如は、空腹時血漿グルコース試験(FPG)および/または経口耐糖能試験(OGTT)で測定することができる。これらの試験の後に測定される血糖レベルは、患者が通常の糖代謝であるか、耐糖能異常であるか、空腹時血糖異常であるか、または糖尿病に罹患しているかどうかを決定する。患者の血糖レベルが、FPGの後で特定範囲内において異常であるならば、それは、空腹時血糖異常(IFG)と呼ばれる;患者のグルコースレベルが、OGTTの後で特定範囲内において異常であるならば、それは耐糖能異常(IGT)と呼ばれる。患者は、100mg/dl以上から126mg/dl未満のFPGで空腹時血糖異常および/または140mg/dl以上から200mg/dl未満のOGTTで耐糖能異常を有するとして同定される。糖尿病前症の患者は、それらの範囲内でIFGおよび/またはIGTを有し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、太りすぎであるが、肥満(30未満のBMIを有する)ではなく、2型糖尿病に罹患している患者、太りすぎであるが、肥満ではなく、糖尿病前症に罹患している患者、または2型糖尿病に罹患し、太りすぎでなくて、肥満でない患者が選ばれる。いくつかの実施形態では、2型糖尿病の1つ以上の危険因子を有する患者が選ばれる。これらの危険因子は、30を超える年齢、家族歴、超過重量、心血管疾患、高血圧、高トリグリセライド、妊娠糖尿病の病歴、IFG、および/またはIGTを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、糖調節異常と胃不全麻痺を有する患者は、本明細書に記載される方法から除外されてもよい。
【0091】
(信号の適用)
本開示の1つの態様では、可逆的な断続的な変調信号は、神経上での神経活性を下方制御および/または上方制御するために、標的神経または器官に適用される。
【0092】
本明細書に記述される方法の実施形態では、神経伝導ブロックは、ある部位で標的神経に適用され、前記神経伝導ブロックは、神経の神経活性を下方制御し、そして神経活性が前記信号の停止の際に回復するように選択される。そのような信号を適用するためのシステムは、米国特許第7,167,750号;米国特許出願2005/0038484(参照により本明細書に取り込まれる)に記述されている。
【0093】
場合によっては、神経は1つ以上の消化器官を神経支配する神経であり、そして、それは、迷走神経、腹腔神経、迷走神経の肝臓枝、および内臓神経を含むが、これらに限定されるものではない。適用される信号は、1つ以上の神経の神経活性を上方制御および/または下方制御することが可能である。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記変調信号は、電気信号を適用することを含む。信号は、神経活性を下方制御および/または上方制御し、そして、信号の停止の際に神経活性の回復を可能とするように選択される。パルス発生器は、先に述べたように、信号の特徴を変えて可逆的で断続的な信号を供給するために、信号の適用を制御するために使用することができる。信号の特徴は、信号の位置、信号の周波数、信号の振幅、信号のパルス幅、および信号の管理サイクルを含む。いくつかの実施形態では、信号の特徴は、改善されたグルコース調節を提供するために選ばれる。
【0095】
いくつかの実施形態では、標的神経に適用される電極は、断続的なブロッキング信号または下方制御信号で通電される。信号は、限られた時間(例えば、5分)、適用される。神経活性回復の速度は、対象により異なる。しかし、20分は、ベースラインまで回復するために必要な合理的な例である。回復後、ブロッキング信号の適用は、信号の停止後に次に回復することができる神経活性を再び下方制御する。信号の再開された適用は、完全な回復の前に適用することができる。例えば、限られた時間(例えば、10分)の後、ブロッキングを再開することができ、ベースラインと比較して、有意に減少したレベルを超えない平均的神経活性をもたらす。いくつかの実施形態では、電気信号は、信号適用のオン時間と、それに続く信号が神経に適用されないオフ時間を含むサイクルで断続的に適用され、ここで、オン時間とオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたって適用される。実施形態では、オン時間および/またはオフ時間は、神経の少なくとも部分的な回復を可能とするように選択される。本開示を制限することを意味するものではないが、神経のための回復期間を許容することは、消化器官の適応を回避しうると考えられる。
【0096】
迷走神経活性などの神経活性の回復を認識することは、強化された管理と強化された治療選択肢を有する処置療法と装置を容認する。図6は、上記したブロッキング信号の適用に応じた経時的な迷走神経活性を例示し、ブロッキング信号の停止後の迷走神経活性の回復をさらに例示する。図6のグラフは、例示のためのみであることが理解される。患者に依り大きな変動性があると予想される。例えば、ブロッキング信号に対する一部の患者の応答は、例示されるほど劇的でない場合がある。他の患者は、例示されるよりさらに急であるかまたは浅い回復勾配を経験するかもしれない。また、いくつかの対象の迷走神経活性は、ベースライン活性の方へ増加する前に、減少したレベルで水平のままであるかもしれない。しかし、前述の動物実験に基づいて、図6はブロッキングへの生理学的応答の適正表示であると信じられている。
【0097】
図6において、迷走神経活性は、ベースライン(すなわち、本発明の処置のない迷走神経活性)のパーセントとして例示される。迷走神経活性は、多くの方法で測定することができる。例えば、単位時間につき産生される膵外分泌量は、そのような活性の間接的な測定である。また、活性は迷走神経上で、または、それの近くで電極をモニターすることで直接に測定することができる。そのような活性は、定性的に確認することもできる(例えば、腹が張った感じや消化管運動の正常な状態の患者の感覚により)。
【0098】
図6において、縦軸は、患者のベースライン活性(それは、患者により変化する)のパーセントとしての仮想患者の迷走神経活性である。横軸は時間の経過を表わし、患者が記述されたようにブロッキング信号を受信しているか、あるいはブロッキング信号がオフ(「非ブロッキング」と呼ばれる)になっているときの例示的な間隔を示す。図6で示されるように、ブロッキング信号を受ける短い期間の間に、迷走神経活性は、劇的に減少する(示される例では、ベースライン活性の約10%まで)。ブロッキング信号の停止後、迷走神経活性は、ベースラインの方へ上昇し始める(患者によって上昇の傾斜が異なる)。迷走神経活性は、ベースラインに戻ることが可能であるか、または、図6に示されるように、迷走神経活性がまだ低いときに、ブロッキング信号を再び実行することができる。図6で、迷走神経活性がベースラインの約50%まで増加するとき、ブロッキング信号が開始される。結果として、平均の迷走神経活性は、ベースライン活性の約30%に減少する。ブロッキング時間の持続時間と「非ブロッキング」時間の持続時間を変えることによって、平均の迷走神経活性を大きく変えることができることが理解されるであろう。
【0099】
信号は断続的または連続的であり得る。好ましい神経伝導ブロックは、埋め込み型パルス発生器(例えば、パルス発生器104または外部制御装置)で制御される電極による迷走神経での信号によって作製される電子ブロックである。神経伝導ブロックは、どんな可逆的なブロックであってもよい。例えば、超音波ブロック、低温学ブロック(化学的に、または、電子的に誘導された)または薬物ブロックを使用できる。電子低温ブロックは、電流に応じて冷却するPeltier固体状態装置であってよく、冷却を制御するために電気的にコントロールされうる。薬物ブロックは、ポンプで制御された皮下の薬物送達を含むことが可能である。
【0100】
そのような電極伝導ブロックで、ブロック・パラメータ(信号タイプとタイミング)は、パルス調整器によって変えることができ、上方制御信号で調整されることができる。例えば、神経伝導ブロックは、望ましくは、Solomonowら、“Control of Muscle Contractile Force through Indirect High−Frequency Stimulation”,Am.J.of Physical Medicine,Vol.62,No.2,pp.71−82(1983)に開示されたパラメータの範囲内である。いくつかの実施形態では、神経伝導ブロックは、ブロッキング信号を適用する部位で神経(例えば、求心性、遠心性の有髄および無髄(nomnyelinated)繊維の両方)の全横断面をブロックするために選択される電気信号で適用され(遠心性で求心性ではない神経繊維の選ばれたサブグループだけ、またはその逆とは対照的に)、そして、より望ましくは、Solomonowらに記載されている200Hzの閾値周波数を超えるように選択される周波数を有する。さらに、より好ましいパラメータは、500Hz(非限定的な例として、4mAの振幅、0.5msecのパルス幅、および5分のオン時間と10分のオフ時間の負荷サイクルの他のパラメータとともに)の周波数である。より完全に記述されるように、本発明は個々の患者のパラメータを刺激してブロックする際に、医者に大きな自由度を与える。
【0101】
本明細書に記述される方法の実施形態では、信号は、ある部位で標的神経に適用され、前記信号は、神経での神経活性を上方制御するように選択され、そして、前記信号の停止の際に神経活性が回復される。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、グルコース調節を改善するために、下方制御信号と組み合わせて適用されうる。例えば、上方制御信号は、内臓神経および/または腹腔神経に適用されうる。
【0102】
信号は、神経活性を上方制御して、信号の停止の際に神経活性の回復を可能にするように選択される。パルス発生器は、上記したように、信号の特徴を変えて可逆的な断続的な信号を提供するために、使用されて信号の適用を調整する。信号の特徴は、信号周波数、信号位置、および信号投与サイクルを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、標的神経に適用される電極は、上方制御信号で通電される。信号は、限られた時間(例えば、5分)、適用される。神経活性回復の速度は、対象により異なる。しかし、20分が、ベースラインまで回復するために必要な時間の合理的な例である。回復後、上方信号の適用は、信号の停止後その次に回復することができる神経活性を再び上方制御する。信号の再開された適用は、完全な回復の前に適用することができる。例えば、限られた時間(例えば、10分)の後、上方制御信号を継続することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、上方制御信号は、グルコース調節を改善するために、摂取カロリー量または食物から吸収されるグルコース量を減少させるために、GIPおよび/またはGLP1の量および/または分泌を増加/修正するために、および/または分泌されたグレリンの量を減少させるために、下方制御信号と組み合わせて適用されうる。神経調節信号は、肝臓によって生産されるグルコースの量、食物から吸収されるグルコースの量およびGIP、GLP−1および/または分泌されるグレリンの量に影響を及ぼすことができる。神経調節は、対象によって必要とされるインスリン量の減少をもたらす。
【0105】
上方制御信号と下方制御信号は、同時に異なる神経に適用されてもよいし、異なる時間に同じ神経に適用されてもよいし、あるいは異なる時間に異なる神経に適用されてもよい。実施形態では、上方制御信号は、腹腔神経または内臓神経に適用されうる。他の実施形態では、上方制御信号または下方制御信号は、迷走神経の肝臓枝に適用されてもよいし、あるいは、信号は、特に朝早く、生産される肝臓グルコースの量を減少させるために適用されてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、下方制御信号は、異なる神経または器官に1日につき複数回、複数日にわたって断続的に適用される上方制御信号と組み合わせて、断続的に1日に複数回、複数日にわたって迷走神経枝に適用される。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、センシング事象(例えば、存在する血糖量または十二指腸への食物の進入)により適用される。他の実施形態では、内臓神経、腹腔神経、十二指腸および/または回腸に適用される上方制御信号は、患者に対する通常の食事時間後の期間に、一般的には、食事後15〜30分に、またはグルコース濃度が上昇したときに、適用することができる。
【0107】
場合によっては、信号は、特定の時間に適用される。例えば、下方制御信号は、食事の前と間に適用されてもよく、そして、食後約30〜90分に、刺激信号が続いてよい。別の例では、下方制御信号は、迷走神経に、あるいは肝臓グルコースが増加しているときは、朝早く迷走神経の肝臓枝に適用されうる。
【0108】
いくつかの実施形態では、信号パラメータは、グルコース調節の改善を得るように調整される。グルコース調節における改善は、空腹時グルコース、経口耐糖能試験、および/またはHbA1Cの測定により、または対象に必要なインスリン量の減少により決定することができる。1つの実施形態では、絶対パーセンテージでのHbA1Cの減少は、少なくとも0.4%であり、より望ましくは0.4%〜5%の範囲の任意の%である。いくつかの実施形態では、絶対パーセンテージでのHbA1Cの減少は、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%以上のいずれかである。例えば、2型糖尿病患者は、9%のHbA1Cを有する場合があり、そして、6.5%のHbA1Cへの減少は、2.5%の減少となり、グルコース調節の改善を表わすことになる。
【0109】
いくつかの実施形態では、グルコース調節の改善は、126mg/dl未満またはそれより大きい空腹時グルコースおよび/または200mg/dl未満の経口耐糖能を含む。いくつかの実施形態では、空腹時グルコースおよび/または経口耐糖能は、少なくとも5%減少し、より望ましくは、5〜50%の範囲での任意のパーセンテージの減少である。
【0110】
1つの実施形態では、グルコース調節の改善は、1つ以上の以下の特徴を含む:6.5%以下のHbA1C;100mg/dl未満の空腹時グルコース;および/または140mg/dl未満の耐糖能。
【0111】
(信号適用位置)
神経活性の調節は、1つ以上の標的神経または器官の神経活性の上方制御および/または下方制御によって達成することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、電極は標的神経の上に、または、それの近くで多くの異なる部位と場所に置くことができる。標的神経は、それぞれ患者の腹腔神経、肝臓神経、迷走神経、内臓神経、またはこれらのいくつかの組合せを含む。電極は、また、迷走神経の近くで信号を器官(例えば、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、脾臓、膵臓、食道、または胃)に適用するために配置されうる。いくつかの実施形態では、電極は対象の横隔膜の近くまたは遠位の場所で電気信号を神経に適用するように配置される。
【0113】
電極は、上方制御信号と対照的に下方制御信号を適用するために、異なる神経上に配置されうる。例えば、下方制御信号は、迷走神経上で適用されることができ、そして、上方制御信号は、内臓神経に適用されることができる。いくつかの実施形態では、信号は膵臓への迷走神経をブロックすることによって、神経的に媒介された反射的な分泌を減らして、同時にまたはその後に、内臓神経を刺激してインスリン分泌を阻害し、および/または腹腔神経を上方制御してGLP1生産を刺激するために適用されうる。
【0114】
いくつかの実施形態では、電極は、迷走神経の枝または幹に信号を適用するために配置される。他の実施形態では、電極は、迷走神経の前方の幹、後方の幹または両方に信号を適用するために配置される。いくつかの実施形態では、電極は、同じ神経でまたはその近くの2つの異なる場所に、または神経上と消化管臓器上とに配置されうる。いくつかの実施形態では、電極は、横隔膜の下の場所などの心臓の迷走神経の無力化部位より下に配置される。
【0115】
例えば、図2はブロッキング電極の設置を例示する。図2を参照して、ベースラインの迷走神経活性は、近位の迷走神経セグメントVNPの実線で例示される。迷走神経と腸神経系の残りの部分は、緊張の下方制御を説明するために低減された厚さで表示される。膵臓胆汁出力(そして、結果として生じるフィードバック)も低減されている。図2で、ブロッキング電極BEは、消化管神経支配(例えば、横隔膜のすぐ下で)と比較して、迷走神経上の高い位置に示され、唯一のブロッキング電極は、下に(例えば、膵臓/胆管神経支配VN5のすぐ近位)配置され得る。上記された全ての迷走神経のブロッキングは、血糖コントロール障害と関連する状態を治療することを含むいろいろな利益のために迷走神経を下方制御するのに用いることができる。いくつかの実施形態では、電極は迷走神経の腹腔枝上に置くことが可能であり、上方制御信号を提供しうる。
【0116】
他の実施形態では、横隔膜より上にまたはそれの下に食道Eの領域で迷走神経の上に、またはそれの近くに電極を設置する代替の設計が提供される。
【0117】
2つの対電極が、両極性の信号のパルス発生器に接続し得る。他の実施形態では、迷走神経VNの一部は、食道Eから切り離される。電極は、迷走神経VNと食道Eの間に配置される。電極は、電極の反対側の神経の片側で、そして、軸方向に整列する(すなわち、直接お互いの向かいに)電極で迷走神経VNの上に配置される。簡潔に例示するために示されないが、電極は神経VNを囲む通常の担体(例えば、PTFEまたはシリコンカフ)上で担持されうる。電極の他の可能性がある配置は、参照により本明細書に取り込まれる、2005年6月16日に公開された米国特許出願2005/0131485に記述される。
【0118】
(信号周波数とタイミング)
いくつかの実施形態では、下方制御信号は、少なくとも200Hzから最高5000Hzの周波数を有する。他の実施形態では、信号は、約500〜5000Hzの周波数で適用される。出願人は、最も好ましいブロッキング信号は、2つ以上の2極式電極で適用される3,000Hz〜5,000Hzまたはそれより大きい周波数を有すると決定した。そのような信号は、100マイクロ秒(5,000Hzの周波数を伴う)の好ましいパルス幅を有する。この周波数とパルス幅は、ブロッキングからの神経の回復を最も回避し、かつ、パルス周期での無信号の期間を避けることによって神経の再分極を回避すると考えられる。パルス周期での短いオフ時間(例えば、周期間で、または周期内で)は、それが神経再分極化を避けるのに十分短い限り、許容できるであろう。波形は、方形波もしくは正弦波または他の形であり得る。5,000Hz以上のより高い周波数は、豚の研究において、より一貫した神経伝導ブロックをもたらすことが分かった。好ましくは、信号は、神経上の2つ以上の電極に2極性、2相系で送達される。
【0119】
いくつかの実施形態では、0.5〜8mAの信号振幅は、ブロッキングに適切である。他の振幅が、十分の場合もある。他の信号特質は、神経または器官による適応の可能性を減少させるために他の信号属性を変えることができる。これらは、電力、波形またはパルス幅を変えることを含む。
【0120】
上方制御信号は、一般的に200Hz未満、より好ましくは10〜150Hz、そしてより好ましくは10〜50Hzの周波数の信号を含む。
【0121】
神経活性を上方制御および/または下方制御する、および/または神経活性の回復を可能とする信号の選択は、信号タイプと信号適用タイミングを選択することを含む。例えば、電極伝導ブロックで、ブロックパラメータ(信号タイプとタイミング)は、パルス発生器で変えることができて、刺激信号で調整することができる。ブロッキングを達成する正確な信号は、患者に依り神経部位に依り変動しうる。正確なパラメータは、ブロッキング部位での神経伝達ブロッキングを達成するために個別に調整されることができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、信号は、信号がその間、神経に適用されるON時間とそれに続く信号がその間、神経に適用されないOFF時間を含む負荷サイクルを有する。例えばオン時間とオフ時間は、特に消化器官の適応が起こる場合がある状況では、神経の部分的な回復を許容するように調整されうる。いくつかの場合では、下方制御信号および上方制御信号は、下方制御信号が適用されないとき(例えば、上方制御信号が特定の時間に、またはセンシング事象により適用されるときなど)、上方制御信号が適用されるように調整されることができる。いくつかの実施形態では、センシング事象は、例えば、特定の閾値を超えるグルコースまたは十二指腸に入る食物などのセンシング事象に関係する期間、上方制御信号が適用されて、そして、下方制御信号が適用されないことを示す。
【0123】
いくつかの実施形態では、対象は埋め込み型コンポーネント104を受ける(図3)。電極212、212aは、患者の横隔膜のすぐ下の前迷走神経AVNと後迷走神経PVN上に配置される。外部アンテナ(コイル102)は、埋め込まれた受信コイル105の上に位置する患者皮膚上に置かれる。外部制御装置101は、周波数選択、パルス振幅、および負荷サイクルのためのオプションを含むいろいろな信号パラメータのためにプログラムすることができる。信号をブロックするために、周波数のオプションは、2500Hzと5000Hz(両方とも200Hzの閾値ブロッキング周波数より十分に上)を含む。大多数の処置は、5,000Hz、交流信号、100マイクロ秒のパルス幅である。振幅オプションは、1〜8mAである。刺激信号については、周波数は200Hz未満から選ばれる。
【0124】
負荷サイクルは、また、制御されうる。代表的な負荷サイクルは、オン時間の5分と、それに続く無信号の5分である。負荷サイクルは、装置の使用の間中繰り返される。
【0125】
図12は、典型的な負荷サイクルを示す。各ON時間は、5,000Hzの信号が0アンペアから6〜8mAの目標まで強化されるランプアップを含む。各ON時間は、ON時間の終わりに、全電流からゼロ電流へのランプダウンをさらに含む。患者の約50%に対して、ランプ期間は20秒であり、そして、残りについては、ランプ期間は5秒であった。いくつかの実施形態では、オン時間は、30秒以上もしくは180秒以下または両方の持続時間を有するように選出される。
【0126】
ランプアップおよびランプダウンの使用は、全電流5,000Hzの信号の急な適用または終了に対する患者の感覚の可能性を回避するための保守的な方法である。高周波信号のためのランプアップの例は、2005年8月9日に発行されたKingへの米国特許第6,928,320号において示される。
【0127】
いくつかの実施形態では、ミニ負荷サイクルを適用することができる。1つの実施形態では、ミニ負荷サイクルは、全電流が達成されるまで(またはランプダウンの場合、次第に減少)、ミニON時間からミニON時間まで次第に増加する電流で、5,000HzのミニON時間の180ミリ秒の期間を含む。そのようなミニON時間の各々の間では、変動することができて、そして信号が適用されない持続時間で一般に約20ミリ秒であるミニOFF時間がある。したがって、各20秒ランプアップまたはランプダウンでは、約100のミニ負荷サイクルがあり、それらはそれぞれ200ミリ秒の持続時間を有し、そして、それぞれ約180ミリ秒のON時間と約20ミリ秒のOFF時間を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、上方制御信号は、GIPおよび/またはGLP1の量を増加させるだけでなく、グルコース調節を改善し、摂取カロリー量を減少させるために、下方制御信号と併用して適用されうる。例えば、下方制御信号は、食事の前と間に適用されて、続いて上方制御信号が食後約30〜90分に適用されうる。
【0129】
患者は、通常、起きている間にのみ装置を使う。治療送達の時間は、臨床医によって、装置にプログラムされることができる(例えば、自動的に午前7時00分にオンとなり、午後9時00分に自動的にオフとなる)。場合により、治療の時間は、食事前や食後30〜90分などの血糖が変動する時間に応じるように修正されるであろう。例えば、治療の時間は、朝食前の午前5時から始まって、最後の食事または軽食をした時刻に従って午後9時以降に終わるように調整されうる。パルス発生器のRFパワーバージョンにおいては、装置の使用は、患者の管理に従う必要がある。例えば、患者は、外部アンテナを身につけないことを選ぶかもしれない。受信アンテナが患者の皮膚を通しての無線周波数(RF)カップリングにより外部アンテナと結合されるときの時間を注意することによって、装置は使用の管理をする。
【0130】
場合によっては、外部制御装置101と埋め込まれたパルス発生器104との間の信号接触の損失は、コイル102、105の間の誤整列に対して主に起きる(図8を参照のこと)。コイルの誤整列は、少なくとも1部は、一日中の体表面形状の変化(例えば、座っているか、立っているか、または横たわっているかによる変化)から生じると考えられる。これらの変化は、コイル102、105間の距離、コイル102、105の横方向配列、およびコイル102、105の平行配列を変え得る。誤整列は、装置と信号が回復することを確実とするように調整されたコイルの配列によって検出することができる。誤整列があったならば、装置は患者または医者への通知を含むことが可能である。
【0131】
いくつかの実施形態では、外部コンポーネント101は、いろいろな情報のためにパルス発生器コンポーネント104に情報を送らせることができる。いくつかの実施形態では、負荷サイクルにつき30秒〜180秒の治療時間は、負荷サイクルにつき30秒未満の治療時間または負荷サイクルにつき180秒より大きい治療時間より好ましい。
【0132】
10分の負荷サイクル(すなわち、治療を意図した5分間、続いて5分のOFF時間)の間、患者は複数の治療の開始を有することができる。例えば、任意の所定の5分の意図されたON時間内で、患者が35秒のON時間と1.5分の実際のON時間(5分の意図されたON時間の残りは、信号中断による非治療期間である)を経験するならば、たとえわずか1つが意図されたとしても、患者は2つの実際の治療開始を有することができる。治療開始数は、患者によって経験されるON時間の長さによって逆に変化する。
【0133】
平均神経活性(例えば迷走神経活性)を変える柔軟性は、主治医に患者を治療することの大きな自由度を与える。例えば、糖尿病または糖尿病前症を治療する際に、ブロッキング信号は、短い「非ブロッキング」時間とともに適用することができる。患者が運動障害により不快を経験するならば、「非ブロッキング」期間の長さは、患者の快適さを改善するために増やすことができる。また、酵素産生の減少は、糞便中への脂肪の派生的な増加に伴う減少した脂肪吸収をもたらすことができる。ブロッキングと非ブロッキングの持続期間は、許容できる大便(例えば、過度の脂肪性下痢を回避する)となるように調整することができる。迷走神経活性が手術による永久的な迷走神経切断の場合のように完全に中断されていないので、本発明によって提供されるコントロールは、腸管神経系のコントロールの仮定を防止するのに使用できる。
【0134】
患者の快適さは、ブロッキングと非ブロッキングの期間の適切なパラメータを決定するためのフィードバックとして十分でありうるが、より客観的なテストを展開することができる。例えば、信号を上方制御することとの組み合わせだけでなく、ブロッキングと非ブロッキングの持続時間は、グルコース調節の望ましいレベルを達成するように調整することができる。そのようなテストは、患者ベースで測定し、適用することができるか、あるいは患者の統計サンプリングに基づいて実行し、患者の一般的母集団に適用することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、センサーを用いてもよい。検出電極SEは、神経活性と負荷サイクルをどのように調整するかを決定する方法として、神経活性をモニターするために加えることができる。検出電極は、ブロッキング電極へのさらなる電極となりうるが、1つの電極が両方の機能を実行しうることが理解される。検出電極およびブロッキング電極は、図3で示されるように、制御装置に接続することができる。そのような制御装置は、検出電極から信号を受信する付加的な機能を有する、先に記述された制御装置102と同じである。
【0136】
いくつかの実施形態では、センサーは、検出電極、グルコースセンサーまたは問題の他の生物学的分子またはホルモン類を感知するセンサーでありうる。検出電極SEが、標的とされた最大の迷走神経活性または緊張(例えば、図6で示すベースラインの50%)を表している信号を与えるとき、検出電極から信号を受け取る付加的な機能を備えた制御装置は、ブロッキング信号でブロッキング電極BEに通電する。制御装置102に関して記述されるように、検出電極から信号を受信する付加的な機能を備えた制御装置は、ブロッキング信号を開始するか、または信号を上方制御するための目標だけでなく、ブロッキング持続時間と非ブロッキング持続時間のパラメータに関して遠隔でプログラムされることができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される装置および方法は、迷走神経活性のある程度の下方制御をコントロールするために、迷走神経の回復を使用する。これは、最小限の患者の不快感で最大の治療的な効果のために患者の治療法をコントロールする強化された能力を医者に与える。迷走神経ブロッキングは、迷走神経切断をシミュレーションするが、迷走神経切断と違って、可逆性であってコントロール可能である。
【0138】
(対象の血糖コントロール障害を変える薬剤)
本開示は、神経調節を含む糖調節異常を伴う状態を治療するのみならず、対象でのグルコース調節に影響を及ぼす薬剤を含む組成物を対象に投与するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は血液中に存在するインスリンの量を増加させる。他の実施形態では、薬剤はインスリン感受性を増加させる。いくつかの実施形態では、薬剤は内因性のグルコース産生および/またはグルコース吸収を減少させる。
【0139】
いくつかの経路は、エネルギーバランスに影響を及ぼすことが知られている。経路は、消化管視床下部軸(例えば、グレリン)、消化管−後脳軸(例えば、迷走神経)、末梢組織(脂肪組織、骨格筋)−視床下部軸(例えば、レプチン)、および視床下部−後脳軸(神経突起)を含む。特に、視床下部(前脳)と延髄最後野(後脳)は、人間のエネルギー恒常性において統合する役割を果たすと考えられる中枢神経系の2つの領域である。通信および体のエネルギーバランスに関する補完的および重複的な効果を可能にするこれらの2つの領域の間での神経接続があることが立証された。多数のホルモン類、酵素、神経伝達物質、および他の調節物質は、これらの経路の異なる部分から放出されて、中枢神経系のこれらの領域に対して影響を及ぼすことができる。これらの経路と脳領域の異なる部分を含む異なった治療様式の利用は、したがって、中枢神経系と消化管、膵臓、肝臓、筋肉、および脂肪細胞の間の伝達を変えることは、非常に効果的で、強くて、持続性がある組み合わせの併用治療において重要となりうる。
【0140】
グルコースの調節障害に影響を及ぼす薬剤は、標的神経の神経活性を変えるために信号を適用する療法を補完する能力に基づいて選択することができる。本明細書に記述されるように、迷走神経などの標的神経の神経活性を調節するために、信号の適用と補完的または相乗的な効果を提供しうる薬剤とが選択される。相乗的または補完的な効果は、1つまたは両方の処置だけと比較して、患者が本明細書に記述される血糖コントロールの改善を有するかどうかを決定することによって決定されることができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、異なる部位(例えば、視床下部または下垂体)で、または、異なる経路を通って作用する薬剤が、本明細書に記述される方法で使用するために選択されうる。治療を補完する薬剤は、対象の血糖コントロールに影響を及ぼすための異なる作用メカニズムを含むものである。いくつかの実施形態では、相乗効果は、グルコース消化に影響を及ぼさない、および/または胃排出を遅らせる薬剤(例えば、インスリン分泌、インスリン感受性を増加させ、および/または内因性グルコース産生を減少させる薬剤)で観察されうる。そのような薬剤は、インスリン、アミリン類似体、インスリン分泌促進物質、スルホニル尿素類、メグリチニド類ならびにPPARα、γ、およびδアゴニストを含む。
【0142】
薬剤の使用を妨げる、または、不十分な血糖コントロールを提供する、推奨された投薬量で好ましくない副作用を有する薬剤が、また、あるいはさらに、選択される場合がある。さらに、高血圧、心臓病、肝疾患、または腎疾患に罹患している患者は、不利な副作用のため推奨投薬量での1つ以上の薬剤による治療に耐えられない場合がある。
【0143】
好ましくない副作用を有する薬剤としては、心血管状態に対する副作用を有し、体重増加をもたらすことが示されたAvandia(ロシグリタゾン;PPAR−γアゴニスト)が挙げられる。胃排出を阻害または遅延する薬物(例えば、アミリン類似体またはGLP−1類似体など)、またはGI管に対する刺激物質である薬物(例えば、メトホルミン(ビグアナイド(biguinide))は、吐き気、嘔吐、および下痢を引き起こすことがある。Precose(アカルボース;α−グルコシダーゼ阻害剤)などの、GI管における炭水化物の分解と吸収を変える薬物は、下痢と鼓腸を引き起こすことがある。血中インスリン濃度を増大する薬物(例えば、外因性インスリン投与、スルホニル尿素類、およびメグリチニド類など)は、低血糖症と体重増加を引き起こすことがある。
【0144】
好ましくない副作用を有する薬物と標的神経上での神経活性を調整する薬剤との併用投与は、低投薬量での薬物の投与を可能とし、それによって副作用を最小にすることができる。また、本明細書に記述されるように、神経の下方制御による胃排出における遅延により吸収が遅れるとき、薬物動態を変えた薬物が選択されうる。他の実施形態では、推奨投薬量は、より少ない副作用がある量まで低下さ得る。実施形態では、推奨投薬量は、少なくとも25%低下させてもよい。他の実施形態では、投薬量は推奨服用量の少なくとも25%以上の任意のパーセンテージまで下げることができる。いくつかの実施形態では、投薬量は、推奨投薬量の少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%が下げられる。
【0145】
1つの実施形態では、方法は血糖コントロール障害を伴う状態の治療を提供する。1つの方法は、2型糖尿病または糖調節異常を治療するのに有用であり、そして有効性のための推奨投薬量を有する薬物を選択することと(そこでは、患者が前記推奨投薬量で不愉快な副作用を経験する可能性がある)、患者の標的神経に断続的な神経ブロックを1日につき複数回、複数日にわたって適用することであって、そのブロックは、神経上での求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御するために選択され、前記ブロックの停止の際に神経活性を回復させる、こと、および、前記薬物を患者に前記推奨投薬量未満の投薬量で投与することを含む同時治療で患者を治療することとを含む。いくつかの実施形態では、そのような患者の血糖コントロール障害に関連する状態を治療するための有効な投薬量は、薬物治療と適合しない前記患者に与える不愉快な副作用と関係している。いくつかの実施形態では、患者は、摂食障害、高血圧、心臓病、肝臓、または腎臓障害を有する人々であり、1つ以上の薬剤での治療に耐えることができない場合がある。
【0146】
存在するインスリンの量、または分泌されるインスリンの量を増やす薬剤は、患者の血糖コントロールを改善することができる薬剤である。そのような薬剤は、スルホニル尿素類、メグリチニド類、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)阻害剤、インスリン、インスリン類似体、およびGLP−1類似体を含む。
【0147】
細胞のインスリンに対する感受性を増大する薬剤は、患者の血糖コントロールを改善することができる薬剤である。そのような薬剤は、ビグアナイド類(biguinides)(例えば、メトホルミン)およびPPARγアゴニスト(例えば、ロシグリタゾンおよびピグリタゾン)を含む。
【0148】
グルコースの生産および炭水化物の消化を阻害する薬剤は、患者の血糖コントロールを改善することができる薬剤である。そのような薬剤としては、ビグアナイド類、αグリコシダーゼ阻害剤、アミリン類似体、DPP4阻害剤、およびGLP−1類似体が挙げられる。
【0149】
グレリンの効果を減少させる薬剤は、また、糖尿病治療に有用であり得、プロテインキナーゼA阻害剤、ニューロペプチドY受容体阻害剤、および成長ホルモン分泌促進物質(secretatogue)受容体を含む。
【0150】
GIPまたはGLP−1の量を高める、またはグレリンの量を減少させる薬剤は、神経調節療法と有利に組み合わせることができる。例えば、神経の上方制御または下方制御は、GLP−1の分解を阻害するDPP4阻害剤などの薬剤と組み合わせて、GIPおよび/またはGLP−1の量を増大するために適用することができる。1つの実施形態では、迷走神経は、DDP4阻害剤(例えば、ビルダグリプチンまたはシタグリプチン)と組み合わせて、断続的な可逆的な下方制御信号を迷走神経に適用することによって下方制御されることができる。
【0151】
特に単一薬物治療だけでは、十分な血糖コントロールを提供しないとき、1つ以上のこれらの薬剤が治療のために組み合わされてもよい。糖尿病を治療するためのFDA承認薬物のどれもが、本明細書に記述される方法と組み合わされてもよい。
【0152】
対象に投与するための投薬量は、当業者により容易に決定することができる。投薬量のガイダンスは、例えば、同様の薬物群における他の薬物を参照して見つけることができる。例えば、投薬量は、承認された薬物または臨床試験の薬物のいずれに対しても確立され、そして、服用量の範囲は、薬物のタイプに依存する。例えば、プラムリンチドの投薬量は、1日当たり約240マイクログラムから最大720マイクログラムの範囲である。副作用を伴う投薬量は、典型的な研究に基づいて知られているか、あるいは容易に決定することもできる。副作用を最小にしながら、血糖コントロールの改善を達成する有効な投薬量の決定は、動物またはヒトの研究で決定することができる。
【0153】
薬剤は、良い医療実務と一致した様式で処方され、分包され、そして、投与される。この文脈で考慮される要因は、治療される特定の障害、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に知られている他の要因を含む。薬剤は、必ずしも製剤化される必要はないが、問題の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤と場合により製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する、対象の血糖コントロール値を改善する薬剤の量、障害または治療のタイプ、および上記した他の要因に依存する。これまで使用された同じ投薬量と投与方法が、またはこれまで使用された投薬量の約1〜99%が一般に使われる。
【0154】
薬剤を含む治療製剤は、所望の純度を有する薬剤を任意の生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合して(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))水溶液、凍結乾燥または他の乾燥された製剤の形態で保存するために調製される。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、そして、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジンおよび他の有機酸);アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメソニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルまたはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン);グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート試薬(例えば、EDTA);糖類(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0155】
本明細書に記載の製剤は、また、治療される特定の適応症のために、必要に応じて複数の活性化合物を含有してもよい。そのような実施形態では、化合物は互いに悪影響を与えない補完的な活性を有する。そのような分子は、意図した目的のために有効な量で組み合わされて適切に存在する。
【0156】
治療薬剤は、非経口、皮下、経口、皮内、腹腔内、およびエアゾールの手段を含む任意の適切な手段により投与される。非経口的注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。ポンプが、薬物を溶出させる装置やカプセルと同様に利用されてもよい。
【実施例】
【0157】
(実施例1)
(材料と方法/実験的設計)
非盲検の前方視的ベースライン対照3センター臨床試験が、前迷走神経幹および後迷走神経幹の断続的な電気ブロッキングを引き起こす本明細書に記述された装置の実行可能性、安全性、および有効性を評価するために行われた。参加センターは、Flinders Medical Centre,Adelaide,Australia;Instituto National de la Nutricion(INNSZ),Mexico City,Mexico;およびSt.Olavs University Hospital,Trondheim Norwayを含む。
【0158】
(患者)
25〜60才の年齢を含む男性または女性の肥満対象(BMI=31.5〜55kg/m2)は、3つのセンターで募集された。試験は、6カ月間、装置の安全性と有効性を評価した。
【0159】
すべての試験の外来診察と手順を終了する能力が適格性要件であった。関連した除外基準は以下のものを含んでいた:経口血糖降下剤で、または、胃不全麻痺を含む関連する自律神経障害で十分にコントロールされない現在の1型真性糖尿病(DM)または2型DM;先の3カ月以内の減量薬物療法または禁煙による処置または先の12カ月間の体重の10%超の減少;先の胃切除または他の大きな腹部手術(胆嚢切除と子宮摘出を除く);手術の時に食道胃接合部で外科的修復または広範囲な切開を必要とする臨床的に重要な裂孔ヘルニアまたは術中に決定された裂孔ヘルニア;および永久に埋め込まれた電気動力付きの医療機器もしくは埋め込まれた胃腸の装置または人工器官の存在。
【0160】
甲状腺の障害、てんかんまたはうつ病の3環系薬剤での同時治療は、治療計画が先の6カ月の間、安定であるならば、臨床試験への参加が許された。
【0161】
(装置の埋め込み)
装置は、2つの電極(各迷走神経幹に1つ)、皮下に配置される神経調節装置(パルス発生器)および装置をプログラムする外部制御装置を含んでいた。
【0162】
全身麻酔下、迷走神経ブロッキング・システム(図4)の2つのリード線(電極)は、腹腔鏡的に埋め込まれた。試験に参加している経験豊かな外科医による装置の埋め込みは、一般的に60〜90分を要した;5つのポートが、通常使われた。電極自体は、10mm2の活性表面積を有し、神経を部分的に取り囲むために「c」の形をしていた。
【0163】
腹腔内切開と電極配置は、以下の順序で実行された。胃肝靭帯は、切開されて食道胃接合部(EGJ)を露出し、そして、胃はEGJ上でわずかな緊張を保つために下向きに、そして、横方向に引っ込められた。後迷走神経の所在位置を見つけるために、横隔膜右脚が確認されて、その食道の結合から切り離された。前迷走神経幹は、それが横隔膜裂孔を横切るので、それを見つけることによって特定された。両方の迷走神経幹が特定されたあと、直角グラスパーは、後迷走神経幹の下で5mmのウインドウを切開するのに使用された。電極は、それから、迷走神経幹の下に作成されたウインドウで直角グラスパーの位置を定めて配置された。それから、電極の遠位の縫合タブが把持され、そして、電極は所定の位置に引っ張られ、そして、神経を電極カップ内に設置した。同じステップが、前迷走神経幹のまわりに第2の電極を置くために繰り返された。最後に、各電極は、各電極の遠位の縫合タブを通して配置されて、食道の外層に固定される単一縫合を使って所定位置に固定された。
【0164】
それから、リード線は神経調節装置に接続され、そして、それは剣状突起のすぐ下の中央線の皮下ポケットに埋め込まれた。適切な電極配置は、それから、埋め込み時に2つの異なる方法で決定された。最初に、正しい解剖学的電極神経アライメントは、目視により確かめられた。第2に、効果的電気的接触は、手術中に、そして、その後頻繁にインピーダンス測定を使って確かめられた。手術からの回復後、充電式の電源を含んだプログラム可能な外部制御装置が、埋め込まれた神経調節装置と外部伝送コイルを経由して経皮的に通信するのに使用された。
【0165】
(電気信号の適用)
外部制御装置は、周波数、振幅、および負荷サイクルのためにプログラムされた。迷走神経幹で神経パルスをブロックするのに選ばれる治療周波数は、膵外分泌性の迷走神経阻害の動物実験に基づいて、5000Hzであった。利用される振幅は、1〜6mAの範囲であった;しかし、ほとんどすべての例において、振幅は6mAであった。装置は朝に起動し、睡眠の前に止めた。プロトコルは、1日12時間、5分のブロッキングとブロッキングのない5分と交替するアルゴリズムを指定した。効果的な電気的接触は、手術後に頻繁にインピーダンス測定を使って確認された。
【0166】
(実験的治療と追跡調査)
迷走神経ブロッキングシステムの効果に焦点を合わせるために、研究対象は、6カ月の試験期間の過程では、並行的なダイエットもしくは行動のカウンセリングまたは肥満の薬物治療を受けることを除外された。すべての試験参加者は、その装置を埋め込まれた。埋め込み2週間後、断続的な高周波電気アルゴリズムは、すべての対象で開始された。対象は4週の間毎週、それから12週までは2週ごとに、そしてそれから毎月、体重、身体検査および有害事象(AE)の問合せのための外来診察に従った。さらに、12リード心電図(ECG)と臨床化学が、中心的な研究所で分析された。
【0167】
(過剰体重減少率の計算)
理想的な体重は、各々の対象の身長を計って、それからその対象に対する25.0のBMIをもたらす体重を決定することによって計算された。すなわち、理想的な体重(kg)=25×身長2(m)。EWLは、体重減少を過剰体重[(総体重)−(理想的な体重)]で割り、そして100を掛けることによって計算された。このように、EWL%=(体重減少(kg)/過剰体重(kg))×100である。
【0168】
(カロリー摂取量、食品組成、飽食、満腹および迷走神経機能研究)
2つのサブ試験が、飽食、カロリー摂取量および迷走神経機能ならびに体重減少の程度とそれらの関係に対する治療効果を評価するために実施された。
【0169】
1つのセンター(Flinders Medical Centre,Adelaide,Australia)で実施された1つのサブ試験(サブ試験A)において、すべての対象は、カロリー摂取量、食品組成、食事での飽食、食間の満腹感(減少した空腹感)における変化を定量化するための7日間の食事記録で追跡された。これらの評価は、各対象によって完了した食事日記を介して、埋め込みの前に、そして迷走神経ブロッキングの4週、12週、および6カ月後に実行された。各々の外来診察で、総カロリー摂取量のパーセントとしての炭水化物、脂肪およびタンパク質の定量を含む各々の7日間の食事記録は、栄養学者との詳細なインタビューの過程で確かめられた。食物での栄養およびカロリー内容を決定するための検証プログラム(Food WorksTM)が使われた。そのうえ、各々の外来診察で、標準的な水平(100mm)視覚的アナログスケール(VAS)によるアンケートは、1週間想起と24時間想起を用いて飽食感と満腹感を評価するのに使用された。
【0170】
2つのセンター(Flinders Medical Centre,Adelaide AustraliaおよびInstituto National de la Nutricion Mexico City,Mexico)での、迷走神経ブロッキングの12週後に行われた第2サブ試験(サブ試験B)において、標準的な偽食事負荷プロトコルが、迷走神経の下方制御を評価するために使われた。下方制御のエンドポイントは、偽食事負荷後の血漿膵ポリペプチド(血漿PP)応答の阻害として測定された。対象は、試験の前に少なくとも8時間断食するように指示された。2つのベースライン血漿サンプルは、5分おきに採取された血液サンプルによる「咀嚼および唾液分泌」法を用いて、−5分と−1分の、続いて20分の偽食事負荷におけるPPレベルのために得られた。対象は、膵臓分泌の栄養活性化を排除するために食物または唾液を飲み込むことを避けるよう指示された。血漿は−70℃で保存されて、PPレベルが標準的な放射性免疫検定法(Mayo Medical Laboratories,Rochester,MN,USA)により測定されるようにドライアイス上に移された。これらの対象(n=10)のサブセットは、また、計画された治療後12週間の試験を実施する前に、試験手順の実施に関するセンターの一般化の一部としての埋め込み前に偽食事負荷と血漿PPレベルを有した。
【0171】
(データと統計解析)
ベースライン特性や人口統計は、記述統計を使ってまとめられた。連続変数は、平均値と平均の対応する標準誤差(SEM)によってまとめられた。カテゴリ(バイナリを含む)変数は、頻度分布によってまとめられた。
【0172】
体重減少に対する効果を評価するための主要なエンドポイントは、特定の時点(4週と12週と6カ月)での平均過剰体重減少率(EWL%)であり、5%の有意水準での両側1標本t−検定のゼロと比較された。報告されたp値は、多重比較のために未調整であった。しかし、統計的有意性は、Hochbergの多重比較手順を適用した後に変更されなかった。さらに、混合モデルの反復測定回帰分析が実施され、経時的EWL%に関する処置の効果を評価した。
【0173】
心拍数と血圧の変化は、平均と標準誤差を使い経時的にまとめられた。ECG記録は、独立した中心的な研究室(Mayo Medical Laboratories,Rochester,MN,USA)により収集され、分析された。臨床化学的性質(アミラーゼ、リパーゼ、および血糖)が、収集されて、フォローアップの間、異常所見の頻度を分類別に測定するだけでなく、ベースラインからの平均変化に従って分析された。
【0174】
有害事象(AE)は、表にされて、報告された。演繹的な仮説が特定されなかったので、有害事象の正式な統計分析は、有害事象の発生率に関して実行されなかった。
【0175】
各食品の多量栄養素(炭水化物、タンパク質および脂肪)の組成率におけるベースラインからの変化は、各フォローアップ外来診察(4週と12週と6カ月)での両側1標本t−検定での、そしてまた混合モデルの反復測定回帰分析でのゼロと比較された。
【0176】
視覚的アナログスケール(VAS)によるアンケートは、飽食と満腹(減少した空腹)を評価するための各フォローアップ外来診察での各対象により終了した。ベースラインからの応答の平均変化(±標準誤差)は、各々の外来診察で計算された。
【0177】
偽食事負荷に応じる血漿PPレベルは、埋め込み前および迷走神経ブロッキングの12週後に、試験を受ける参加者の偽食事負荷への5、10、15および20分に、平均(±標準誤差)として計算された。25pg/ml(文献での異常な迷走神経機能のためのカットオフ値)より少ないまたは多い血漿PP増加を有する対象の割合が計算され、2群に対する平均体重減少が、両側無対応t−検定を用いて比較された。
【0178】
(結果)
(参加者、人口統計および外科的手順の結果)
31人の対象(平均体格指数41.2±0.7kg/m2;範囲33〜48)が装置を受け取った。人口統計(2型真性糖尿病対象を含む)は、表Iで示される。
【0179】
【表1】
装置の埋め込みによる主要な手術中の合併症はなかった。具体的には、我々は臓器穿孔、かなりの量の出血、術後腹腔内感染症、または電極移動あるいは組織浸食に遭遇しなかった。装置は、6カ月の研究の後、所定位置にそのままにされた。それらの参加者は、そのような装置のために安全なコホートの一部として継続して追跡され、そして、さらなる研究が装置の効力を最大にするように電気パラメータを変更できるかどうか決定するために行われている。
【0180】
(体重減少)
装置埋め込み後の4週と12週と6カ月における平均過剰体重減少は、それぞれ7.5%、11.6%および14.2%であった(すべての変化は、ベースラインと比較して有意であった。p<.0001)。治療の有益な全体的な効果は、全ての3つのセンターで観察された。図7は、中央値、四分位分布、および5番目と95番目のパーセンタイルを含むEWL変化率の分布を示し、個人データはこれらのパーセンタイルを越えたものに対してプロットされた。2、3の個人は、少しの体重も減らなかったのに対し、3人の患者が6カ月で>30%のEWLを有し、そして患者の4分の1は、>25%のEWLを有したことに留意されたい。
【0181】
(有害事象)
死亡、医療装置またはVBLOC療法に関連した重篤な有害事象(SAE)および予期しない不都合な装置の影響は、試験の期間中なかった。装置または迷走神経ブロッキング療法と無関係だったSAEを有する3人の対象は、短い入院を必要とした:1人は術後下気道感染症(1日の入院)、1人は皮下埋め込み部位の漿液腫(3日の入院)、そして1人は試験期間への2週間のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)下痢の症例(5日の入院)。これら3人のSAEは、完全に可逆性であったし、そして、患者は試験を継続した。
【0182】
外部のデータ安全監視委員会によって評価されるように、臨床的に有意な変化は、6ヵ月の試験の間、臨床化学またはECG所見においてなかった(データは示されていない)。非臨床的に有意であると見做された、心拍数と収縮期および拡張期の血圧(図8)における小さな減少があった。
【0183】
(カロリー摂取量、食品組成、飽食および満腹:サブ−試験A)
カロリー摂取量、食品組成、飽食および満腹(減少した空腹)における変化は、Flinders Medical Centre,Adelaide,Australiaでの外来診察と手順をサブ−試験Aの一部として終了した全10人の対象で評価された。カロリー摂取量は、4週と12週と6カ月(p<0.01、すべての時点、図9)で>30%減少した。炭水化物、タンパク質、および脂肪摂取量の相対的な量は、安定なままであった。さらに、24時間想起に基づくVASアンケートのデータは、6カ月の期間に、対象が主な食事で早期の飽食感(十分)を報告し(図10A、p.<0.001)、そして食間での満腹感(減少した空腹感)を高めること(図10B、p=0.005)を証明した。
【0184】
(迷走神経機能:サブ−試験B)
24人の被験患者は、サブ−試験Bの一部として断続的な迷走神経ブロッキングの12週後、偽食事負荷を終了した。埋め込み前に、偽食事負荷は、正常な血漿PP応答(≧25pg/mlのベースラインより上に増加:42±19pg/ml)をもたらした。迷走神経ブロッキングの12週後、20分でのPP応答が抑制され、そのため、血漿PPの増加は平均して<25pg/ml(20±7pg/ml)であった。鈍いPP応答(<25pg/ml)を有する対象のパーセントは、5、10、15と20分で、それぞれ88、79、71と67%であった。重要なことに、12週のデータのサブセット解析は、血漿PP上昇>25pg/ml(p=0.02、図11)を有した10人の患者と比較して、絶食の間、血漿PP上昇>25pg/mlを有しなかった14人の患者では、体重減少が有意に大きかったことを示した。
【0185】
(血糖コントロールの変化)
他の臨床試験研究と同様に、上記試験からの患者のサブセットは、標準的な方法を用いて、ヘモグロビンA1cが監視された。ベースラインで、10人の患者の平均は、8.2%HbA1cであった。4週後に、平均HbA1Cは、7.1%に低下した。4週という早い時期に、そして実質的な体重減少が観察される前に、改善が注目された。
【0186】
【表2】
(考察)
断続的な迷走神経ブロッキング(VBLOC療法)を送達する埋め込みシステムのこの臨床試験において、我々はEWL%で測定される安全性と有効性に関する初期データを本明細書で報告する。さらに、実施されたサブ−試験は、体重減少が減少したカロリー摂取量、食事の時のより早い飽食感および食間での高められた満腹感(減少した空腹感)と関係していることを示した。患者のサブセットは、4週という早い時期にHbA1cの有意な減少を示した。迷走神経阻害(偽食事負荷の過程での減少した血漿PP応答(<25pg/ml)により測定された)は、埋め込み後3カ月で証明されたが、これは、VBLOC療法によって送達された電気信号が迷走神経遮断を維持して、飽食と体重減少に関して臨床効果を誘導することができることを示唆した。
【0187】
EWLの大きさは、6カ月で1.2%から36.8%にわたり変動したが、これは、応答におけるばらつきと、そのような治療アプローチから利益を最大にする余地があることを示唆する。試験の全期間の間、不従順であった1人の被験対象の体重が増加したことは留意すべきである。この対象のコンプライアンスは、治療送達が6カ月の試験期間の間に処方されるそれの25%未満であるという事実に反映されるように不適切であると見做された。迷走神経ブロックに対する応答のばらつきは、電気処置を適用することの失敗(コンプライアンス)、迷走神経機能(偽食事負荷への血漿PP応答の準最適抑制で例示されるように)の「捕獲」における個人間の違い、および装置における技術的な要因(例えば、内部の神経調節装置と比べた外部コイルの位置の変動性)を含むいくつかの可能性を反映しうる。
【0188】
この試験において観察される体重減少は、明らかな停滞状態なしで6カ月のフォローアップまで進行した。体重に対するこの効果が、どんな介入ででも減量を増大しうる食事または行動の修正のさらなる利点なしで達成された点に注目することは重要である。我々は、非盲検試験であることを考慮すると、偽薬効果を完全に除外することができないけれども、減少したカロリー摂取量、食事の飽食までの時間および食間の空腹感が、処置の開始後早期に達成され、6カ月の試験期間中、維持され、そして、有意な継続された体重減少を伴ったので、我々は、偽薬効果はありそうもないと予想している。
【0189】
本試験は、VBLOC療法と関連した体重減少のためのメカニズムに関していくらかの洞察を提供する。迷走神経は、胃の適応、収縮および排出ならびに膵外分泌を含む消化管機能の複数の態様において、重要な役割を有する。また、迷走神経は、食物摂取と食欲に急性の強い効果を及ぼすことが知られている腸由来ホルモン類の放出で重要な役割を果たすとも報告されてきた。そのような迷走神経に制御されたホルモンの適例は、グレリンであり、これは、前腸で主に産生される食欲促進のペプチドである。グレリン濃度は、短期的な食物欠乏および/または体重減少で増加し、そして、食物摂取で急激に減少する。このように、グレリンは、食物摂取の予測的な役割があると信じられている。ラットでの双方の迷走神経切断術は、食物欠乏で引き起こされるグレリンレベルの予想された増加を完全に排除すると報告された。グレリン応答のこの排除は、それにより迷走神経ブロッキングが、減少した食物摂取と増大された飽食をもたらすメカニズムとなりうる。
【0190】
本明細書に記述されるように、適用される新規装置と電気信号の安全性は、唯一の顕著な合併症が、外科的手順またはクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)下痢に関連した3つの感染症であったという事実により支持され、そして、その全てが、独立したデータ安全性監視委員会によって装置自体とは無関係であると考えられた。主要な手術中の合併症はなかった。具体的には、我々は、臓器穿孔または大きな出血に遭遇しなかった。さらにまた、我々は、術後腹腔内感染症、電極移動または組織浸食を観察しなかった。
【0191】
心拍数と血圧の適度の減少などの心血管パラメータの変化は、体重減少そのものと一致しているように見え、そして、心血管危険因子に対する有害な効果も観察されなかった。現在のサンプルサイズは小さいが、迷走神経が胸部レベルの心血管系に関する副交感神経性緊張の著名な調節因子であるから、血圧や心拍数に対する好ましくない効果の明らかな欠如は、注目すべき重要な点である。断続的な迷走神経遮断は、横隔膜下レベルで適用される。実験的な動物試験は、また、少なくとも55日間のブタでの電気アルゴリズムの適用後に、迷走神経のWallerian変性または脱髄の組織学的証拠がないことを示している(データは示されていない)。さらに、迷走神経機能の抑制のための電気信号の適用(5分間の5kHz)が、急激な可逆性であることが示された;したがって、抑制アルゴリズムの停止の5分以内で、迷走神経のAδとC繊維の両方のベースラインと比較して、>75%の複合活動電位の回復がある。
【0192】
垂直胃形成術は、47kg/m2の平均BMIを有する69人の病的に太りすぎの患者に関して、幹迷走神経切断術を有する(30人の患者)または有しない(39人の患者)どちらかで実行された(Kral JG,Gortz L,Hermansson G,Wallin GS.Gastroplasty for obesity:Long−term weight loss improved by vagotomy.World J Surg 1993;17:75−9)。1年以上追随された患者では、迷走神経切断群は、迷走神経非切断患者の34%と比較して、51%の平均過剰体重減少(EWL)を有した。しかし、21人の患者の別々の長期シリーズでは、初期体重減少が維持されなかったのが観測された(Groetz L, Kral JB.A five− to eight−year follow−up study of truncal vagotomy as a treatment for morbid obesity.Proceedings,Third Annual Meeting,American Society for Bariatric Surgery,Iowa City,Iowa,18−20 June,1986,p.145)。齧歯動物における前臨床試験での外科的迷走神経切断の効果は、胃の適応の抑制が2週間ある間、後者の機能が4週の連続的迷走神経中断の後で回復したことを示唆する(Takahashi T,Owyang C.Characterization of vagal pathways mediating gastric accommodation reflex in rats.J Physiol 1997;504:479−88)。この適応の正確なメカニズムは、不明である。
【0193】
この臨床試験からの所見に基づいて、新規なプログラム可能な医療装置を用いる断続的な腹腔内迷走神経ブロッキングは、有意な過剰体重減少と望ましい安全性プロファイルの両方と関係していると結論することができる。さらにまた、試験データは、体重減少と迷走神経抑制の間の関係だけでなく、食間の減少した空腹感および食事での早い飽食を立証することにより断続的な腹腔内迷走神経ブロッキングの治療的な理論的根拠を支持する。さらに、患者のサブセットは、処置後4週間でHbA1cの有意な減少を示し、それは、血糖コントロールの増加を示唆する。これらの陽性の臨床結果は、無作為二重盲検式の前方視的マルチセンター試験の設計と実行につながった。
【0194】
本発明の前述した詳細な説明により、本発明の目的が好ましい方法でどのように達成されたかが示された。当業者が容易に思いつくかもしれないものなどの開示された概念の修正および均等物は、本明細書に添付される特許請求の範囲に含まれることを意図する。さらに、本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の組み合わせの適用を意図する。本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の適用により、神経活性を下方制御するための治療プログラムの適用を意図する。本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の適用により、神経活性を上方制御するための治療プログラムの適用を意図する。本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の適用により、神経活性を下方制御および/または上方制御するための1つ以上の治療プログラムの適用を意図する。
【0195】
先行技術の教えに関連する本出願のセクションでは、先行技術特許からの明細書は、本発明の実施形態を容易に理解するために実質的に再生される。本出願の目的のために、それらの特許の情報の正確さは、独立した検証なしで受け入れられている。本明細書で参照されるどんな刊行物も、参照によって本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月3日に出願されたPCT国際特許出願であり、出願人は、米国を除くすべての指定国においては、EnteroMedics,Inc,USであり、米国を指定国とする場合は、Arnold W.Thronton,Dennis Dong−Won Kim,Mark B.Knudson,Katherine S.Tweden,Richard R. Wilson(すべて米国国民)である。本願は、米国仮特許出願第61/042,575号(2008年4月4日出願)に基づく優先権を主張し、この仮出願は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
アメリカ合衆国では、約1820万人(人口の6.3%)は、深刻な生涯にわたる健康状態の糖尿病に罹患している。糖尿病の主要な型は、1型と2型である。1型糖尿病は、自己免疫疾患であり、膵臓でのベータ細胞の破壊をもたらして、そのために膵臓はそれから殆どまたは全くインスリンを産生しない。1型糖尿病に罹患している人は、生きるために毎日インスリンを服用しなければならない。最も一般的な糖尿病の型は、2型糖尿病である。アメリカ合衆国では、40〜59才の人の約10%、そして60才以上の人の20%が、2型糖尿病に罹患している。この病気は第6の主要な死因であり、心臓病、脳卒中、高血圧、腎臓病、および神経損傷の発現の一因となる。いくつかの治療法が、糖尿病に対して利用できるが、患者の約15〜32%は、単独療法で血糖コントロールを維持することができない(Kahnら、NEJM 355:23(2006))。2型糖尿病は、重大な健康問題が残ったままであり、少なくとも1740億ドルの医療制度に対する経費を有する(Dallら、Diabetes Care 31:1−20(2008))。
【0003】
2型糖尿病は、高齢、肥満、糖尿病の家族歴、妊娠糖尿病の前病歴、運動不足、および民族性と関係している。2型糖尿病と診断された場合、膵臓は通常十分なインスリンを産生しているが、理由は分からないが、体は効果的にインスリンを利用することができず、インスリン抵抗性と呼ばれる状態である。数年後に、インスリン産生は減少し、そして、1型糖尿病の場合のように、グルコース恒常性を維持するためにインスリンを経口または注射により投与しなければならない。
【0004】
2型糖尿病の初期段階では、治療は、ダイエット、運動および体重減少から成り、後になって、膵臓の産生量を増加させる、またはインスリンの必要量を減少させることができる様々な薬物で遂行され、そして、最終的には、インスリンの直接的な投与から成る。糖尿病の治療のための医薬は、以下の5種類の薬物の構成から成る:スルホニル尿素類、メグリチニド類、ビグアナイド類、チアゾリジンジオン類、およびα−グルコシダーゼ阻害剤。これらの5種類の薬物は、異なる様式で作用して血糖レベルを下げる。あるものは膵臓からのインスリン産生量を増やし、あるものは肝機能に影響を及ぼすことによってグルコース産生量を減少させる。そのような治療によっても、一部の患者は、血糖コントロールが達成されない。
【0005】
エクセナチドは、2型糖尿病の治療のための、インクレチン・ミメティクスと呼ばれる新しいクラスの最初の薬物である。エクセナチドは、エキセンディン−4(アメリカドクトカゲとして知られているトカゲの唾液から最初に分離された天然に存在するホルモン)の合成バージョンである。エクセナチドは、主にインスリン分泌を増やすためにGLP−1の作用を模倣することによって血糖レベルを下げるように作用する。エクセナチドは、高い血糖レベルが存在するときだけこの効果を有するので、それ単独で低血糖症の危険を増加させる傾向はない。しかし、それがスルホニル尿素とともに服用されると、低血糖症が起こる場合がある。主な副作用は吐き気であり、そして、それは時間とともに改善される。エクセナチドを使っている患者は、通常、血糖コントロールの改善だけでなく、適度の体重減少を経験した。
【0006】
ごく最近、腸ホルモン(グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1))の分解を阻止することにより作用するDPP−4阻害剤と呼ばれる新しいクラスの薬物が開発された。GLP−1は、体の中の血糖レベルを下げるが、約2分の半減期を有し、従って、薬物自身として注射した際に十分に作用しない。GLP−1を分解するプロセスの妨害によって、DPP−4阻害剤は、それがより長く体の中で活性のままであるのを可能とし、血糖レベルが上昇した場合にのみ、それらを下げる。DPP−4阻害剤は、体重増加を生じる傾向はなく、コレステロールレベルに関しては中性または陽性の効果を及ぼす傾向がある。シタグリプチンは、現在、市販されている唯一のDPP−4阻害剤である。
【0007】
2型糖尿病に対する治療の第3のカテゴリは、この10年で誕生して、特定の患者のために普及が増加している。これは、各種タイプの胃バイパスや胃の制限的技法などの胃の処置を含む。予想外にも、これらの処置は、しばしば処置の2〜3日以内に体重減少とは関係なく2型糖尿病(患者の75〜85%)の解消を示した。ほとんどの患者が病的に肥満体(体格指数、BMI>40)であったが、しかし、進化している技術は、BMI>35の患者、および太りすぎであるか、わずかに肥満の患者にさえその処置を適用することを可能としている。しかし、これらの外科的選択肢は高くつき、手術の前と後の両方で、患者に対するリスクがある。
【0008】
神経活性を上方制御することによる糖尿病を治療する方法が記述されてきた。糖尿病を治療するためのこれらの方法のいくつかは、膵臓細胞、または直接に膵臓を神経支配する副交感神経/交感神経の組織を直接的に刺激することを含む。例えば、Wernickeへの特許文献1は、内在性インスリンの分泌を増やすために、低周波電気信号を迷走神経に適用することを開示している。Whitehurstへの特許文献2は、インスリン分泌を増やすために膵臓ベータ細胞を刺激する膵臓を神経支配する少なくとも1つの副交感神経組織に低周波信号を送達することを記述している。Whitehurstへの特許文献3は、迷走神経を刺激することによって内分泌の障害を軽減するための方法を記述している。
【0009】
他の研究では、インスリンと血糖の制御に関する迷走神経の役割が明白でないことを示している。最近の研究は、求心性肝臓迷走神経を損傷することは、デキサメタゾン処置マウスでのインスリン抵抗性の発症を妨げることができることを示唆している(Bernal−Mizrachiら、Cell Metabolism,2007,5:91)。ラットでは、いくつかの研究は、迷走神経切断がインスリン抵抗性を誘発することを示し、そして、他の研究においては、電気刺激がインスリン抵抗性を誘発する(Matsuhisaら、Metabolism 49:11−16(2000);Peitlら、Metabolism 54:579(2005))。別のマウスのモデルでは、肝臓の迷走神経切断は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体発現によるインスリン感受性の増大を抑制した(Unoら、2006,Science 312:1656)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,231,988号明細書
【特許文献2】米国特許第6,832,114号明細書
【特許文献3】米国特許第7,167,751号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多くの療法の有用性にもかかわらず、2型糖尿病は大きな健康問題のままである。治療法の多くは好ましくない副作用があって、適切な血糖コントロールを達成しないか、あるいは、適切な血糖コントロールが維持されない。このように、グルコースを制御する、および/または糖尿病を治療するためのシステムと方法を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(概要)
本開示は、対象での糖調節異常を治療するための方法とシステムを記述する。システムは、リード線と少なくとも1つの電極とを有するプログラム可能なパルス発生器(神経調節器)を含み、前記電極が標的神経または器官の上にまたは極めて接近して配置される。いくつかの実施形態では、システムは少なくとも2つのリード線を含み、治療はリード線上の各電極を介して達成される。
【0013】
本開示は、2型糖尿病などの糖調節異常、耐糖能異常、および/または空腹時血糖異常などを伴う状態を治療するための方法とシステムに向けられる。耐糖能異常および/または空腹時血糖異常を有する患者は、糖尿病前症に罹患しているとも呼ばれる。1つの実施形態では、方法は、対象の糖調節異常と関連する状態を治療することを含み、それは、断続的な神経信号をある部位で標的神経に適用することを含み、前記神経伝導信号は神経の求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御または上方制御するために選択され、前記神経活性は、前記信号の停止の際に回復する。いくつかの実施形態では、方法は、血糖コントロールを改善する有効量の薬剤から成る組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、薬剤はインスリン放出を刺激して、肝臓のグルコース産生を減少させ、および/またはインスリン感受性を増加させる。いくつかの実施形態では、2型糖尿病に罹患している患者が選択される。他の実施形態では、対象は耐糖能異常および/または空腹時血糖異常を有する患者である。場合によっては、治療の組み合わせは、2型糖尿病、あるいは、および/または糖調節異常に対して相乗効果を提供すること、および/または有効であるために求められる薬剤の量の減少を提供することが可能であり、それによって、副作用を最小にする。
【0014】
実施形態では、方法は、対象での糖調節異常と関連する状態を治療することを含み、それは、断続的な電気信号を、糖調節異常を有する対象の標的神経に適用することを含み、前記電気信号は神経の神経活性を下方制御するために、そして、前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復するために選択される。実施形態では、電気信号治療は、周波数やオンおよびオフ時間に関して選ばれる。いくつかの実施形態では、方法は、電気信号治療を1日に複数回、複数日にわたって第2の標的神経または器官に断続的に適用し、前記電気信号が、標的神経での活性を上方制御および/または下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択されることをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は血糖コントロールを改善する有効量の薬剤を含む組成物を対象に投与することをさらに含む。
【0015】
なお他の実施形態では、方法はGLP1、GIPまたは両方の量を修正することに向けられる。実施形態では、GLP1、GIPまたは両方の量を修正する方法は、第1の断続的な電気信号を標的神経に適用し、前記第1の電気信号は、神経での神経活性を下方制御し、前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復させるように選択され、そこでは、電気信号は、GLP1、GIP、または両方の量を修正するように選択されることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第2の電気信号治療を第2の標的神経または器官に断続的に適用し、前記第2の電気信号が、標的神経または器官の活性を上方制御し、ベースラインレベルに対して、第2の標的神経の神経活性を回復させるまたは標的器官の活性を回復させるように選択される周波数を有することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は血糖コントロールを改善する有効量の薬剤から成る組成物を対象に投与することをさらに含む。
【0016】
本開示の別の局面では、糖調節異常患者を治療するためのシステムが提供される。いくつかの実施形態では、システムは、埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続し、電極のうちの1つが標的神経上に配置されるように適合された、少なくとも2つの電極;パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールを含み、前記プログラム可能な治療送達モジュールが、1日に複数回、複数日にわたって標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含む少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成され、前記電気信号が、標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、埋め込み型パルス発生器;およびアンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含み、前記プログラム可能な格納および通信モジュールが、少なくとも1つの治療プログラムを格納し、少なくとも1つの治療プログラムを埋め込み型パルス発生器と通信するように構成されている外部コンポーネント;を含む。いくつかの実施形態では、プログラム可能な治療送達モジュールは、1日に複数回、複数日にわたって第2の標的神経または器官に断続的に適用される電気信号治療を含む第2の治療プログラムを送達するように構成され、前記電気信号が、標的神経の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経または器官の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、消化管(GI管+膵臓や肝臓などの非GI器官)と、迷走神経および腸管神経の無力化に対するその関係との略図である。
【図2】図2は、消化管へのブロッキング電極の適用を示す図1の概観である。
【図3】図3は、電気信号を迷走神経に適用することを含む、胃腸治療のための埋め込み型システム構成の略図である。
【図4】図4は、典型的なパルス発生器(104)と前および後迷走神経上に配置された電極212を含むリード線(106)との略図である。
【図5】図5は、電子アセンブリ510(「ハイブリッド回路」)と受信コイル516、電極リード線への結合のための標準的なコネクタ512(例えば、IS−1コネクタ)を含む埋め込み型コンポーネントを含む別の典型的な実施形態の代表的な略図を説明する。2つのリード線は、埋め込まれた回路への接続のためのIS−1コネクタに接続している。両方とも、神経に配置するための先端電極を有する。患者は、制御回路に接続しているアンテナを含む外部制御装置を受け取る。外部制御装置は、周波数選択、パルス振幅、および負荷サイクルのためのオプションを含むいろいろな信号パラメータに対してプログラムすることができる。
【図6】図6は、ブロッキング信号を適用した後の迷走神経の回復を示す。
【図7】図7は、装置埋め込みの時間からの過剰体重減少率(%EWL)に関する迷走神経ブロッキング療法(VBLOC)の効果を示す。示されるデータは、それらのパーセンタイルを越えたものに対してプロットされた個人データを有する過剰体重減少(EWL)%の変化(中央値、四分位分布、および5番目と95番目のパーセンタイル)である。2、3の個人は、少しの体重も減少しなかったのに対して、10%の患者は、6ヵ月で>30%EWLを有し、25%の患者は、>25%EWLを有した点に注目されたい。
【図8】図8は、心拍数と血圧に対するVBLOCの効果(平均±標準誤差)を示す。
【図9】図9は、カロリー摂取量と食品組成に対する迷走神経ブロッキングの効果を示す。各外来診察は、ベースライン(すべてp≦0.01)から有意な減少を示す。
【図10A】図10A、10Bは、VBLOCのベースラインからのパーセント変化として表される視覚的アナログ目盛り(VAS)を利用した飽食と満腹に対する効果を示す。全体として、結果はベースラインから有意な減少を示す。図10Aは、24時間想起に基づく食事での飽食(十分)までの時間。図10Bは、24時間想起に基づく食事(満腹)間の空腹。減少は、減少した空腹を表わす。
【図10B】図10A、10Bは、VBLOCのベースラインからのパーセント変化として表される視覚的アナログ目盛り(VAS)を利用した飽食と満腹に対する効果を示す。全体として、結果はベースラインから有意な減少を示す。図10Aは、24時間想起に基づく食事での飽食(十分)までの時間。図10Bは、24時間想起に基づく食事(満腹)間の空腹。減少は、減少した空腹を表わす。
【図11】図11は、12週での%EWLに対する膵ポリペプチド抑制の効果を示す(平均±標準誤差、p=0.02)。
【図12】図12は、典型的な負荷サイクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
以下の一般的に付与された特許と米国特許出願は、引用により本明細書に取り込まれる:2007年1月23日に発行されたKnudsonへの米国特許第7,167,750号;2005年6月16日に公開された米国特許出願2005/0131485A1、2005年2月17日に公開された米国特許出願2005/0038484A1、2004年9月2日に公開された米国特許出願2004/0172088A1、2004年9月2日に公開された米国特許出願2004/0172085A1、2004年9月9日に公開された米国特許出願2004/0176812A1および2004年9月2日に公開された米国特許出願2004/0172086A1。また、2006年3月2日に公開された国際特許出願公開番号WO2006/023498A1も参照により本明細書に取り込まれる。
【0019】
本開示は、対象の糖調節異常を治療するためのシステムと方法を含む。実施形態では、対象での糖調節異常に関連する状態を治療する方法は、断続的な電気信号を対象の標的神経に適用することを含み、前記電気信号は、神経での神経活性を下方制御し、そして前記ブロックの停止の際に神経での神経活性を回復するように選択される。いくつかの実施形態では、標的神経は、迷走神経である。いくつかの実施形態では、標的神経上の部位は、例えば、心臓の迷走神経の無力化部位より下などの心拍数に影響を及ぼすことを避けるように配置される。いくつかの実施形態では、電気信号は周波数、振幅、パルス幅およびタイミングに対して選択される。
【0020】
電気信号は、また、グルコース調節を改善するためにも選択されうる。グルコース調節の改善は、HbA1Cの%、空腹時グルコース、または耐糖能のいずれか1つの変化により測定することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、電気信号治療の適用とグルコース調節に影響を及ぼす薬剤の投与との併用をさらに含む。いくつかの実施形態では、電気信号治療の適用は、他の神経または器官への電気信号治療の適用を除外する。
【0021】
実施例1に記載されているように、患者での断続的な電気信号治療の適用は、血圧または心拍数に対する副作用なしで過剰体重減少をもたらす。そのうえ、信号の適用は、カロリー摂取量において30%の減少、飽食(満腹感)の増加、満腹感の減少(空腹)、および膵ポリペプチドの減少を提供する。本発明を限定することを意味するものではないが、炭水化物の減少を含むカロリー摂取量の減少は、グルコース消費量の減少をもたらすことになると予想される。また、膵ポリペプチドの減少は、消化に参加する膵酵素も減少し、それにより、その系で消化、吸収されるグルコースの量に影響を及ぼすことを示す。本明細書に記述される電気信号治療の胃排出遅延に関するどんな効果も、吸収されるグルコースの量と率の減少にも関与するであろう。血糖の量と率の減少は、インスリン産生および/または血糖をコントロールするために必要な投与の量と率の減少につながるであろう。
【0022】
胃排出および/または炭水化物の消化を遅らせる医薬による治療は、食後の血糖濃度を低下させることが知られている。胃排出遅延の患者は、また、より少ない食後グルコース偏位を有する。したがって、胃排出の遅れおよび/または消費された炭水化物の減少をもたらす神経活性の下方制御を含む処置は、おそらく低血糖をもたらし、そしてグルコース調節を高めるであろう。
【0023】
本明細書に記述される方法およびシステムの他の態様は、グルコース吸収、インスリン分泌、インスリン感受性、および内因性グルコース産生の1つ以上に影響を及ぼすように消化管ホルモン・バランスに影響を与えることができる。内分泌細胞由来ペプチドは、胃腸運動を調整して、満腹感を制御する信号を中枢神経系センターに伝え、そして、食物摂取を開始および停止する。消化管ペプチド(グルカゴン様ペプチドによって例示される)は、栄養の吸収と粘膜上皮の完全性を制御して、その結果、栄養の吸収を最適化する。少なくとも2つの胃腸ペプチド(グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)とグルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)は、インクレチンホルモンとして機能し、腸内栄養信号に応じてインスリン分泌を強化する。
【0024】
糖尿病にかかっていない人においては、食物が口に入ると、膵臓はインスリン分泌を開始する。食物が十二指腸に進むにつれて、食物の十二指腸壁との直接接触は、インクレチンホルモンのグルコース非依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)の分泌をもたらし、GIPは、いくつかある機能の中でも特に、膵臓からのインスリンの分泌を増加させるために作用する。GIPは、また、空腸/回腸でのGLP−1の分泌を促進し、GLP−1はまた、膵臓からのインスリンの分泌を増加させるために作用する。遠位空腸/回腸でのGLP−1分泌は、食物摂取の15〜30分後にピークを示し(GIP/神経経路介在)、そして、食物摂取の90〜120分後に第2ピークに達する(空腸/回腸との直接的な食物の接触によって媒介)。2型糖尿病においては、GIPの分泌は正常であるが、その有効性は減少し、一方、GLP−1の分泌も正常と比較して減少する。2型糖尿病に関して、GLP−1などの消化管ホルモン類の分泌を調整することは、グルコース調節を提供するための方法である。本明細書に記述される方法およびシステムにより、他のホルモン類も影響を受ける場合があり、それはペプチドYY、グレリン、インスリン、およびグルカゴンを含む。
【0025】
本開示のいくつかの態様では、方法とシステムは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、またはグルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)などのポリペプチドの量および/または分泌を、グルコース調節を容易にするために本明細書に記述されるように、神経伝導ブロックの適用により、もしくは神経刺激の適用により、または両方の組み合わせにより調節することを含む。本開示の他の態様では、本明細書に記述される方法およびシステムは、グルコース調節に影響を及ぼす薬剤(消化管ホルモンに影響を及ぼす薬剤を含む)の投与をさらに含む。薬剤のそのような投与は、神経ブロッキングおよび/または神経刺激の非存在下でまたは存在下で行うことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法とシステムは、断続的な電気信号を対象の標的神経または器官に適用することを含み、前記電気信号は神経での神経活性を下方制御するように、そして前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復するように選択され;そして、第2の断続的な電気信号を対象の第2の標的神経または器官に適用し、前記電気信号は神経での神経活性を上方制御または下方制御するように、そして前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復するように選択される。
【0027】
実施形態では、第1の標的神経は、前迷走神経、迷走神経の肝臓枝、迷走神経の腹腔枝、および後迷走神経からなる群から選択される。実施形態では、第2の標的神経は、迷走神経の腹腔枝、十二指腸、空腸、小腸、結腸および回腸の神経、ならびに胃腸管を無力化する交感神経を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の標的器官は、胃、食道、および肝臓を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の標的器官は、脾臓、十二指腸、小腸、空腸、結腸、または回腸を含むことができる。いくつかの実施形態では、膵臓での電極の設置は、除外される。
【0028】
いくつかの実施形態では、下方制御信号は、前迷走神経などの標的神経に適用することが可能であり、上方制御信号は、内臓または迷走神経の腹腔枝などの第2の標的神経に適用することが可能である。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、脾臓、十二指腸、小腸、空腸、結腸、または回腸などの器官上に位置する電極に適用されることができ、あるいは下方制御信号は、迷走神経に適用されることができる。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、十二指腸での食物の存在の検出に応じて、または血糖の増加に応じて適用され得る。
【0029】
(A.消化管の迷走神経支配の説明)
図1は、消化管(膵臓および胆嚢などのGI管+非GI器官(膵臓、肝臓、および胆嚢は、GI器官と考えられる:総称してPGと呼ぶ))とその迷走神経支配および腸管神経支配に対する関係の略図である。下部食道括約筋(LES)は、食物を胃Sに通過させ、すべての成分の適切な機能を想定して、逆流を防ぐゲートとして作用する。幽門PVは、胃Sから腸I(図には総称して示され、大腸または結腸および小腸(十二指腸、空腸および回腸を含む)を含む)への糜粥(びじゅく)の通過をコントロールする。腸Iの内容物の生化学は、十二指腸に放出する膵臓Pと胆嚢PGによって影響を受ける。この放出は、点線矢印Aで例示される。
【0030】
迷走神経VNは、信号を胃S、幽門PV、膵臓と胆嚢PGに直接伝える。脳を起源として、共通の迷走神経VNが横隔膜(図示せず)の領域に存在する。横隔膜の領域では、迷走神経VNは、前側と後側のコンポーネントに分かれ、両方ともGI管を神経支配するように作用する。図1と図2において、前迷走神経と後迷走神経は、別々に示されてはいない。その代わりに、迷走神経VNは、前迷走神経と後迷走神経を含むように図式的に示されている。迷走神経VNは、信号をその神経支配された器官へ、または神経支配された器官から遠ざかるようにそれぞれ送る求心性および遠心性の両方のコンポーネントを含む。
【0031】
迷走神経は、また、肝臓枝と腹腔神経を含む。肝臓枝は、肝臓でのグルコース産生に関して信号を提供することに関与している。腹腔神経または枝は、より大きな内臓および迷走神経(特に後側または右の迷走神経)からの寄与により形成される。
【0032】
迷走神経VNからの影響に加えて、GI管と消化管は、腸管神経系ENSによって大いに影響される。腸管神経系ENSは、GI管および膵臓と胆嚢PGの至る所に神経、受容体、およびアクチュエータの相互接続したネットワークである。腸管神経系ENSの何百万もの神経終末がGI器官の組織にある。説明の容易さのために、腸管神経系ENSは、腸管神経系ENSによって神経支配される器官を包囲する線として例示される。迷走神経VNは、少なくとも1部は、腸管神経系ENS(図式的に、消化管全体にわたる多くの迷走神経−ENS神経支配を表わす迷走神経幹VN3で例示される)を神経支配する。また、腸Iの受容体は、腸管神経系ENSに接続する。図中の矢印Bは、膵臓、肝臓および胆嚢の分泌機能へのフィードバックとしての腸管神経系ENSに対する十二指腸内容物の影響を例証する。具体的には、腸Iの受容体は、腸の内容物(それは、矢印Aの膵臓−胆汁の産生により化学的に調整される)の生化学に応答する。この生化学は、pHと浸透圧を含む。
【0033】
図1と図2において、迷走神経幹VN1、VN2、VN4およびVN6は、図式的に、LES、胃S、幽門PVおよび腸IのGI器官の直接的な迷走神経支配を説明する。迷走神経幹VN3は、迷走神経VNとENSとの間の直接的な伝達を説明する。迷走神経幹VN5は、膵臓と胆嚢の直接的な迷走神経支配を説明する。腸管神経ENS1−ENS4は、胃S、幽門PV、膵臓と胆嚢PGおよび腸Iでの多数の腸管神経を表わす。
【0034】
迷走神経VNと伝達する間、腸管神経系ENSは、迷走神経と中枢神経系とは独立して作用することができる。例えば、切断された迷走神経(迷走神経切断−潰瘍を治療するための時系列の手順)の患者において、腸管神経系は、腸を作動させることができる。大部分の腸管神経細胞は、迷走神経によって直接には神経支配されない。Gershon,“The Second Brain”,Harper Collins Publishers,Inc,New York,N.Y.p.19(1998)。
【0035】
(B.治療送達装置)
本開示は、標的神経または器官上での神経活性を調節するために信号を提供するパルス発生器を含む、糖調節異常に関連する状態を処置するためのシステムと装置を提供する。
【0036】
実施形態では、システムは、電極のうちの1つが、標的神経上に配置されるように適合している、埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続された少なくとも2つの電極;パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールを含み、前記プログラム可能な治療送達モジュールが、1日につき複数回、複数日にわたって標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含む少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成され、前記電気信号が、標的神経の活性を下方制御および/または上方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、埋め込み型パルス発生器;およびアンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含み、前記プログラム可能な格納および通信モジュールが、少なくとも1つの治療プログラムを格納し、少なくとも1つの治療プログラムを埋め込み型パルス発生器と通信するように構成されている、外部コンポーネント;を含む。
【0037】
1つの実施形態では、糖尿病または糖尿病前症などの状態を治療するためのシステム(図式的に、図3に示される)は、パルス発生器104、外部モバイル充電器101および2つの電気リード線アセンブリ106、106aを含む。パルス発生器104は、治療すべき患者の体内に埋め込まれるのに適合している。いくつかの実施形態では、パルス発生器104は、皮膚層103の直下に埋め込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、リード線アセンブリ106、106aは、伝導体114、114aによって、パルス発生器104の回路に電気的に接続している。業界標準コネクタ122、122aは、リード線アセンブリ106、106aを伝導体114、114aに接続するために提供される。その結果、リード線116、116aとパルス発生器104は、別々に埋め込まれてもよい。また、埋め込み後に、当初置かれたパルス発生器104が異なるパルス発生器で置き換えられる間、リード線116、116aは、所定位置にそのままにして置かれてもよい。
【0039】
リード線アセンブリ106、106aは、神経調節装置104によって提供される治療信号に基づいて患者の神経を上方制御および/または下方制御する。1つの実施形態では、リード線アセンブリ106、106aは、遠位電極212、212aを含み、それらは患者の1つ以上の神経または器官の上に配置される。例えば、電極212、212aは、患者の腹腔神経、迷走神経、内臓神経、またはこれらのある組み合わせにそれぞれ個別に配置されてもよい。例えば、リード線106、106aは、遠位電極212、212aを有し、それらは、患者のそれぞれ前迷走神経AVNと後迷走神経PVN上に、例えば、患者の横隔膜の直下に個別に配置される。より少ない、またはより多くの電極が、より少ない、またはより多くの神経上に、またはその近くに配置することができる。いくつかの実施形態では、電極はカフ電極である。
【0040】
外部モバイル充電器101は、埋め込み型神経調節装置(パルス発生器)104と通信するための回路を含む。いくつかの実施形態では、通信は矢印Aで示されるように、皮膚103を横断する双方向の無線周波数(RF)信号経路である。外部充電器101と神経調節装置104の間に送信される通信信号の例としては、治療指示、患者のデータ、および本明細書に記述される他の信号が挙げられる。エネルギーまたはパワーも、本明細書に記述されるように外部充電器101から神経調節装置104に送信することができる。
【0041】
示された例では、外部充電器101は、双方向性遠隔測定法(例えば、無線周波数(RF)信号経由)により埋め込み型神経調節装置104と通信できる。図3に示される外部充電器101は、コイル102を含み、それはRF信号を送受信することができる。類似のコイル105は、患者の体内に埋め込むことができ、神経調節装置104に結合することができる。1つの実施形態では、コイル105は神経調節装置104と一体化されている。コイル105は、信号を外部充電器101のコイル102から、そして、それに送受信するのに役立つ。
【0042】
例えば、外部充電器101は、RF搬送波の振幅変調または周波数変調によりビットストリームとして情報をコード化できる。コイル102、105の間に送られる信号は、望ましくは、約6.78MHzの搬送周波数を有する。例えば、情報通信段階の間、パラメータ値は、半波整流と無整流の間で整流レベルを切り換えることによって送信されることができる。しかし、他の実施形態では、より高いまたはより低い搬送波周波数が使用されてもよい。
【0043】
1つの実施形態では、神経調節装置104は、負荷シフト(例えば、外部充電器101に誘導される負荷の修正)を用いて、外部充電器101と通信する。負荷のこの変化は、電気誘導的に連結した外部充電器101で感知されることができる。しかし、他の実施形態では、神経調節装置104と外部充電器101は、他のタイプの信号を用いて通信することができる。
【0044】
1つの実施形態では、神経調節装置104は、バッテリーなどの埋め込み型電源151から治療信号を生み出す電力を受信する。好ましい実施形態では、電源151は再充電可能な電池である。いくつかの実施形態では、電源151は、外部充電器101が接続されていないとき、電力を埋め込み型神経調節装置104へ供給することができる。他の実施形態では、外部充電器101は、また、神経調節装置104の内部電源151を、周期的に再充電を提供するように構成されていることができる。しかし、他の代替的実施形態では、神経調節装置104は、外部ソースから受け取る電力に完全に依存することができる。例えば、外部充電器101は、RFリンク(例えば、コイル102、105の間で)を経由して、電力を神経調節装置104に送ることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、神経調節装置104は、リード線アセンブリ106、106aに治療信号の発生と送信を開始する。1つの実施形態では、神経調節装置104は、内部バッテリー151により電力を供給されると、治療を開始する。しかし、他の実施形態では、外部充電器101は、治療信号の発生を開始するように神経調節装置104の引き金となる。外部充電器101から初期信号を受信した後、神経調節装置104は、治療信号(例えば、ペース信号)を発生して、治療信号をリード線アセンブリ106、106aに送信する。
【0046】
他の実施形態では、外部充電器101は、また、それに従って治療信号が発生する(例えば、パルス幅、振幅、および他のそのようなパラメータ)指示を提供することができる。いくつかの実施形態では、外部コンポーネントは、アンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含む。1つ以上の治療プログラムのための指示は、プログラム可能な格納および通信モジュールに保存されることができる。好ましい実施形態では、外部充電器101は、メモリを含み、その中にいくつかの所定のプログラム/治療スケジュールが神経調節装置104への伝送のために格納されることができる。外部充電器101は、また、ユーザーが神経調節装置104への伝送のためのメモリに格納されることができるプログラム/治療スケジュールを選択できるようにする。別の実施形態では、外部充電器101は、各々の開始信号を有する治療指示を提供することができる。
【0047】
一般的に、外部充電器101に格納されるプログラム/治療スケジュールの各々は、医者によって患者の個々の要求を満たすように調整することができる。例えば、コンピュータ装置(例えば、ノートブックコンピュータ、パーソナルコンピュータなど)100は、外部充電器101と通信するように接続することができる。そのような接続を樹立して、医者は神経調節装置104に格納または伝送のどちらかのための外部充電器101に治療をプログラムするコンピュータ装置107を使うことができる。
【0048】
神経調節装置104は、また、治療指示および/または患者のデータを格納することができるメモリを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、神経調節装置は、パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールから成る。例えば、神経調節装置104は、1つ以上の治療プログラムをどんな治療が患者に送達されなければならないかを示すプログラム可能な治療送達モジュールに格納することができる。神経調節装置104は、また、患者がどのように治療システムを利用し、および/または送達された治療に反応したかを示す患者のデータを格納することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、外部コンポーネントおよび/または神経調節装置は、1つ以上の治療プログラムでプログラムされる。1つの治療プログラムは、1日につき複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含み、前記電気信号は、標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される。第2の治療プログラムは、1日につき複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含み、前記電気信号は、第2の標的神経または器官の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、そしてオン時間とオフ時間を有し、前記オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される。第1および/または第2治療プログラムは、同時に、異なる時間に、または、重なり合う時間に適用されてもよい。第1および/または第2治療プログラムは、その日の特定の時間に、およびまたはセンサーからの信号に応答して送達されうる。
【0050】
図3を参照すると、外部モバイル充電器101の回路170は、外部コイル102に接続することができる。コイル102は、患者の体内に埋め込まれ、パルス発生器104の回路150に接続している類似のコイル105と通信する。外部モバイル充電器101とパルス発生器104との間の通信は、ペーシングパラメータおよび記述される他の信号の伝送を含む。
【0051】
外部モバイル充電器101からの信号によってプログラムされて、パルス発生器104は、リード線106、106aへの上方制御信号および/または下方制御信号を発生させる。記述されるように、外部モバイル充電器101は、それがパルス発生器104内でバッテリーの周期的な再充電を提供し、記録の維持と追跡を可能としうるさらなる機能を有することが可能である。
【0052】
パルス発生器104用の埋め込み型(充電式の)電源が好まれるけれども、代替的な設計は外部電源を利用する場合があり、その電力はRFリンク(すなわち、コイル102、105の間で)を経由して埋め込み型モジュールに送られる。この代替的構成では、外部的に電力が供給されるけれども、特定のブロッキング信号源は、外部電源ユニット、または埋め込まれたモジュールのどちらかに由来してよい。
【0053】
電子エネルギー化パッケージは、必要に応じて、大部分を体外に置くことができる。RF電力装置は、必要なエネルギーレベルを提供することができる。埋め込まれたコンポーネントは、リード線/電極アセンブリ、コイルおよびDC整流器に制限され得る。そのような配置により、望ましいパラメータでプログラムされたパルスは、RF搬送波で皮膚を通って伝えられ、その後、信号は迷走神経活性を調整するために迷走神経への刺激としての適用のためのパルス信号を再生させるために整流される。これは、バッテリーを変える必要性を実質的に除くであろう。
【0054】
しかし、外部送信機は、患者本人で運ばれなければならず、それは不便である。また、検出は、単純な整流システムではより困難であり、そして、システムが全部埋め込まれる場合よりも、より大きな電力が起動のために必要とされる。いずれにしても、全埋め込み型システムは、ほとんどの処理アプリケーションに対する比較的小さい所要電力のために、潜在的に数年に達する比較的長い耐用寿命を示すと予想される。また、以前に本明細書で注目したように、比較的望ましくないけれども、埋め込み型神経電極セットに経皮的に達するリード線を有する外部パルス発生器を使用することは可能である。後者の技術で発生する大きな問題は、感染の可能性である。その利点は、短期テストがこの特定の患者の過剰体重に関連する状態が成功した治療に従うかどうかを決定するのを可能とする比較的簡単な処置を患者が受けることができることである。もし患者が受けることができるならば、より永久的な埋め込みが提供され得る。
【0055】
本発明の実施形態によると、装置は電気信号を患者の内部の解剖組織的特徴に適用するために開示される。装置は、患者の体内への埋め込みのための、そして電極への信号の適用の際に信号を特徴に適用するための解剖組織的特徴(例えば、神経)での配置のための少なくとも1つの電極を含む。埋め込み可能なコンポーネントは、皮膚層の下の患者の体内に配置され、電極に接続された埋め込み型回路を有する。埋め込み型回路は、埋め込み型通信アンテナを含む。外部コンポーネントは、皮膚より上に配置するために、そして無線周波数送信により皮膚を通って埋め込み型アンテナに電気的に結合されるように適応させるために、外部通信アンテナを備えた外部回路を有する。外部回路は、情報をユーザーに提供するための情報インターフェースとユーザーから入力を受け取るための入力インターフェースを含む複数のユーザーインターフェースを備えている。
【0056】
図4に関して、装置は、神経への信号の適用のために示される。胃Sは、迷走神経調整信号を適用することの理解を容易にする目的で図式的に示される。図4で、胃Sは、断食のためにしぼんだ虚脱胃底部Fで示される。実際には、胃底部Fは、サイズとボリューム(図4で示すように)を縮小するか拡大できる。食道Eは、開口部または裂孔Hで横隔膜Dを通過する。食道Eが横隔膜Dを通り抜ける領域では、迷走神経(前迷走神経AVNと後迷走神経PVNとして例示される)幹は、食道Eの両側に配置されている。お互いに対する、そして食道Eに対する前迷走神経AVNと後迷走神経PVNの正確な位置は、患者集団内で幅広い変化を被りやすいことが理解される。しかし、大部分の患者では、前迷走神経AVNと後迷走神経PVNは、食道Eが横隔膜Dを通過する裂孔Hでの食道Eに非常に近接している。
【0057】
前迷走神経AVNと後迷走神経PVNは、複数の幹に分かれ、それは直接にまたは腸管神経系を経由して胃を神経支配して、膵臓、胆嚢および腸などの他の器官に入ることが可能な神経部分を含みうる。一般に、前迷走神経AVNと後迷走神経PVNは、食道Eと胃Sの結合部位において食道Eと胃(そして、まだ広範囲に枝分かれしていない)にさらに非常に近接している。
【0058】
裂孔Hの領域では、食道組織から胃組織への移行がある。この領域は、Z−ライン(図の中で「Z」として標識される)と呼ばれる。Z−ラインの上部では、食道の組織は、薄くて、もろい。Z−ラインの下部では、食道Eと胃Sの組織は、実質的に厚く、より脈管的である。患者集団内で、Z−ラインは、下部食道括約筋の一般的な領域にある。この位置は 裂孔Hの位置のわずかに上に、わずかに下に、または裂孔Hの位置であり得る。
【0059】
本明細書に記述される糖調節異常に関連する状態を治療するのに有用な装置の別の実施形態は、図5に示される。図5に関して、装置は、電子アセンブリ510(「ハイブリッド回路」)と受信コイル516;電極リード線への結合のための標準的なコネクタ512(例えば、IS−1コネクタ)を含む埋め込み型コンポーネントを含む。2つのリード線は、埋め込まれた回路への接続のためのIS−1コネクタに接続している。両方とも、神経上に配置するための先端電極を有する。セットネジは、514に示され、電極の配置の調整を可能とする。いくつかの実施形態では、後方リードまたは前方リードを示すためのマーカー513が提供される。適切な部位での埋め込みをもたらすために縫合タブ511が提供される。いくつかの実施形態では、ひずみ取り515が提供される。患者は、制御回路に接続しているアンテナを含む外部制御装置を受け取る。外部制御装置は、周波数選択、パルス振幅、および負荷サイクルのための選択肢を含むいろいろな信号パラメータに対してプログラムすることができる。
【0060】
1つの実施形態では、神経AVN、PVNは、電気信号を神経包囲組織に通すことによって間接的に刺激される。いくつかの実施形態では、電極は双極対(すなわち交互の陽極と陰極電極)である。いくつかの実施形態では、複数の電極が、前迷走神経AVNと後迷走神経PVNの上に配置されてもよい。その結果、複数の電極に通電することにより、信号を前迷走神経AVNと後迷走神経PVNおよび/またはそれらの神経枝に適用することとなる。いくつかの治療的な適用では、電極のいくつかはブロッキング電気信号源(ブロッキング周波数と下記のような他のパラメータを備えた)に接続してもよく、そして他の電極は、上方制御信号を適用することが可能である。もちろん、単一のアレイの電極だけが、すべての電極がブロッキングまたは下方制御信号に接続された状態で使用され得る。いくつかの治療的な適用では、電極のいくつかは、上方制御している電気信号源(適切な周波数と下記される他のパラメータを備えた)に接続しうる。
【0061】
パルス発生器への電極の電気的接続は、埋め込み型パルス発生器(例えば、104)に電極を直接に接続しているリード線(例えば、106,106a)を備えることによる、先に説明したとおりのものであり得る。代わりに、そして、前述のとおり、電極は、電極に通電するための信号を受けるための埋め込み型アンテナに接続していてもよい。
【0062】
2つの対電極は、双極性の信号のためのパルス発生器に接続しうる。他の実施形態では、一部の迷走神経VNは、食道Eから切り離される。電極は、神経VNと食道Eとの間に配置される。もう一つの電極は、最初の電極の反対側の神経の片側で、そして、軸方向に整列して(すなわち、直接お互いの向かいに)迷走神経VN上に配置される。説明を容易にするために示されないが、電極は神経VNを囲む通常の担体(例えば、PTFEまたはシリコン・カフ)上で担持されうる。電極のその他の可能性のある配置は、参照により本明細書に取り込まれる、2005年6月16日に公開された米国特許出願2005/0131485に記述されている。
【0063】
前述の電極のどれもが平らな金属パッド(例えば、プラチナ)でありうるが、電極はいろいろな目的のために構成されていることができる。1つの実施形態では、1つの電極が1つのパッドにつながる。他の実施形態では、電極は2つの部分に分割され、両方とも共通のリード線に接続しており、そして、両方とも共通のパッチに接続している。いくつかの実施形態では、各々の電極は、リード線に接続していて、1つの電極から別の電極まで1つの治療を送達するために配置される。柔軟なパッチは、電極の部分の連結が神経VN上のストレスを軽減するのを可能とする。
【0064】
(神経調節装置(パルス発生器))
神経調節装置(パルス発生器)は、プログラムされた療法に従った電気パルスの形態で電気信号を発生させる。実施形態では、本明細書に記述されるように、ブロッキング信号が適用される。
【0065】
パルス発生器は、従来のマイクロプロセッサーと他の標準的な電気的および電子的コンポーネントとを利用して、装置の状態をコントロールするか、示すために、非同期シリアル通信によって外部プログラマーおよび/またはモニターと通信する。パスワード、ハンドシェイク、およびパリティチェックが、データ保全のために使用される。パルス発生器は、また、省エネルギーのための手段(それはどんな電池式装置においても重要であり、装置が障害の医療のために埋め込まれる場合、特に重要である)、および装置の偶然のリセットを防止するなどの様々な安全機能を提供するための手段を含む。
【0066】
特徴は、患者の安全と快適さの目的のためにパルス発生器に取り込まれてもよい。いくつかの実施形態では、患者の快適さは、最初の2秒の間に信号の適用を増加することによって強化される。装置は、また、迷走神経に送達しうる最大電圧(例えば、14ボルト)を制限するためにクランプ回路を有し、神経の損傷を防止する。さらなる安全機能は、手動式起動のために上述のそれらと類似している技術および手段によって、手動式起動解除に応じて信号の適用を止めるために装置を実装することによって提供されうる。このように、いずれにせよそれが突然耐え難くなるなら、患者は信号の適用を中断することができる。
【0067】
電気信号治療の断続的な態様は、所定の負荷サイクルによって信号を適用することにある。パルス信号は、連続または一連のあらかじめセットされたパラメータの電気パルスが、迷走神経枝に適用される所定のオン時間、続いて所定のオフ時間を有するようにプログラムされる。それでも、電気パルス信号の連続適用が、また、効果的である場合もある。いくつかの実施形態では、所定のオン時間とオフ時間は、非下方制御または非上方制御の状態まで、神経の少なくとも部分的な回復を可能にするようにプログラムされる。
【0068】
上方制御および/または下方制御の双方を提供するために1つは右の迷走神経を、そして他方は左の迷走神経を供給する複数のパルス発生器を用いてもよい。本発明の方法を実行するための埋め込み型パルス発生器の使用が好しいが、完全な入院よりはほんのいくらか拘束が少ないが、治療は、外来患者ベースで外部の設備を使用することで投与されることが想定されうる。1つ以上のパルス発生器の埋め込みは、もちろん、患者が動き回ることは可能であり、したがって、仕事の遂行を含む通常の日常活動に影響を及ぼさない。
【0069】
いくつかの実施形態では、横隔膜下の場所の近くの迷走神経の間接的な制御のために、信号は、例えば胃壁で、またはその近くなどの迷走神経と離れた神経系の一部で適用することができる。ここで、少なくとも1つのパルス発生器は、望ましい場所の近くで迷走神経の間接的なブロッキング、下方制御、または上方制御を提供するために内部的に電気信号を患者の神経系の一部に発生させて、適用するために、リード線を経由してパルス発生器にその後有効に連結される1つ以上の電極と共に埋め込まれる。あるいはまた、電気信号は横隔膜の下の場所で神経または器官への間接的な適用のために、患者の神経系の一部に非侵襲的に適用されうる。
【0070】
パルス発生器は、プログラミングの必要性と本明細書に記述された信号パラメータに従って開発された適切なプログラミングソフトウェアを用いて、プログラミングワンドとパソコンでプログラムすることができる。その意図は、もちろん、モニタリングとプログラミングの両方の機能のために、エレクトロニクスパッケージが埋め込まれた後、エレクトロニクスパッケージで非侵襲性の通信を可能とすることである。不可欠な機能を越えて、シーケンスの各々のステップで起こっているすべてについてユーザーに完全に知らせながら、プログラミングソフトウェアは、単純で迅速なプログラミングを容易にするために、直接のメニュー方式操作、HELP機能、プロンプト、およびメッセージを提供するために構築されなければならない。プログラミング能力は、エレクトロニクスパッケージの調節可能パラメータを修正する能力、装置診断法をテストする能力、遠隔測定器で伝えられたデータを格納および読み出しする能力を含まなければならない。埋め込み型ユニットが調べられるとき、プログラマーがそれから同時にそれらのパラメータのいずれかまたは全部を都合よく変更できるように、調節可能パラメータの現状がPCモニターに表示されることが望ましい;そして、特定のパラメータが変化のために選択されるならば、プログラマーがパルス発生器へのエントリーのために適切な望ましい値を選択しうるように、そのパラメータのためのすべての許容値が表示される。
【0071】
適切なソフトウェアと関連した電子機器の他の望ましい特徴は、患者のコード、装置シリアル番号、バッテリー動作時間数、出力時間数、および最後の1つ以上の起動の日付と時間を示している情報とともにスクリーン上に表示するための磁気起動数(患者の仲介を示す)を含む時系列データを格納および読み出しする能力を含む。
【0072】
診断テストは、装置の適切な活動を確かめるために、そして通信、バッテリーまたはリード線/電極インピーダンスの場合などの問題の存在を示すために実装されるべきである。例えば、低いバッテリーの読みは、バッテリーの差し迫っている寿命の末期と新しい装置の埋め込みの必要性を示す。しかし、本発明のパルス発生器の起動のためには、必要性が比較的より頻繁でないため、バッテリー寿命は他の埋め込み型医療装置(例えば、心臓ペースメーカーなど)のそれをかなり上回っているはずである。いずれにしても、神経電極は、診断テストで観察されたそれらの問題を示すことなく無期限の使用ができる。
【0073】
装置は概日リズムや同様にその他のプログラミングを利用することが可能であり、そのために、起動は、この患者のための通常の食事時に自動的に起こる。これはマニュアルの規定に加えて、食事の間で周期的であり、本明細書で上記したように感知が引き金となる起動である。
【0074】
パルス発生器は、装置の適切な実施によって、任意のいろいろな手段により患者によって手動的に起動されうる。これらの技術は、外部磁石または外部RF信号発生器の患者の使用を含むか、あるいはパルス発生器の上方に位置する表面をタップすることを含み、パルス発生器を起動し、そして、それにより電極に所望の変調信号の適用をもたらす。別の形態の処置は、パルス発生器をプログラムされた間隔で血糖コントロールを生む迷走神経活性変調を定期的に送達するようにプログラムすることによって実装される。
【0075】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上の電極への治療信号を開始するための信号を供給することができる1つ以上のセンサーを含みうる。例えば、センサーは、血液中のグルコースの量を測定し、グルコースの量が特定の閾値を上回るならば、GLP1生産を修正するために、神経または器官に上方制御信号を開始する場合がある。別の実施形態では、センサーは、十二指腸に入る食物の圧力または存在を測定して、上方制御信号を十二指腸、小腸、回腸、内臓神経、または迷走神経の腹腔枝に適用しうる。
【0076】
(C.方法)
本開示は、糖調節異常に関連する状態の患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、断続的な電気信号をある部位で標的神経に適用することを含み、前記神経信号は、神経の神経活性を下方制御および/または上方制御するように選択され、そして正常な、またはベースラインの神経活性は、前記ブロックまたは上方制御の停止の際に回復する。実施形態では、方法は、GIPおよび/またはGLP−1の分泌の増加を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、血糖コントロールを増やす有効量の薬剤を含む組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるように、電気信号は装置またはシステムを埋め込むことによって神経に適用される。
【0077】
いくつかの実施形態では、対象での糖調節異常と関連する状態を治療する方法は、断続的な神経伝導ブロックを、糖調節異常を有する対象の標的神経にブロッキング部位で適用することを含み、そして前記神経伝導ブロックは、神経の神経活性を下方制御するように、そして前記ブロックの停止の際に神経の神経活性を回復するように選択される。
【0078】
他の実施形態では、方法は、糖尿病または糖尿病前症の治療を含み、それは、そのような患者に対する糖尿病または糖尿病前症を治療するための有効投薬量が、不愉快な副作用または血糖コントロール障害を伴う患者の糖尿病またはグルコースコントロール障害を治療するための薬物を選択すること;ならびにa)1日につき複数回、複数日にわたって、神経上での求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御するために選択されるブロックの際に患者の目標神経に断続的な神経ブロックを適用し、そして、前記ブロックの停止の際に神経活性を回復すること;およびb)前記薬物を患者に投与すること、を含む同時治療により、糖尿病またはグルコースコントロール障害の患者を治療すること;を含む。
【0079】
他の実施形態では、グルコース調節を患者で達成する方法は、電極を迷走神経の上またはそれの近くに、そして陽極電極を隣接した組織と接触して配置すること;電極に結合された神経刺激装置を患者に埋め込み、振幅、パルス幅、周波数および負荷サイクルの定義された特徴を有する電気パルスを迷走神経に適用することであって、前記定義された特徴は、患者でのグルコース調節を改善するように選択される、こと;を含む
実施形態では、方法は、GLP1、GIP、または両方の量を増加または修正する方法であって、それは、断続的な電気信号を標的神経に適用し、前記電気信号は、神経での神経活性を上方制御または下方制御するように、そして前記信号の停止の際に神経での神経活性を回復させるように選択され、前記電気信号は、GLP1、GIP、または両方の量を修正するように選択されることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるように、電気信号は、神経活性を下方制御するために、周波数、パルス幅、振幅、およびタイミングに対して選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるように、電気信号は、神経活性を上方制御するために、周波数、パルス幅、振幅、およびタイミングに対して選択される。いくつかの実施形態では、電気信号は、GLP1を修正するように選択される。いくつかの実施形態では、電気信号は、特に血糖が上昇しているとき、GLP1を増加させるように選択される。
【0080】
実施形態では、電気信号は、信号適用のオン時間と、それに続くその間信号が神経に適用されないオフ時間を含むサイクルで断続的に適用され、前記オン時間とオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたって適用される。いくつかの実施形態では、オン時間が、約30秒から約5分の持続時間を有するように選択される。信号が神経活性を下方制御するように選択されるとき、電気信号は、約200Hz〜5000Hzの周波数で適用される。信号が神経活性を上方制御するように選択されるとき、電気信号は、約1Hz〜200Hzの周波数で適用される。
【0081】
実施形態では、電気信号は、迷走神経上に位置する電極に適用される。時として、電気信号は、迷走神経の肝臓枝上に適用される。他の場合では、電気信号は、迷走神経の腹腔枝上に適用される。いくつかの実施形態では、電気信号は、肝臓、十二指腸、空腸、または回腸などのグルコース調節に関与する器官に適用される。
【0082】
実施形態では、下方制御信号および上方制御信号の両方が適用される。場合によっては、信号は同時に、異なる時間に、または重なり合う時間に適用される。いくつかの実施形態では、下方制御信号は、食道の近くの迷走神経に適用され、そして、上方制御信号は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝に適用される。いくつかの実施形態では、下方制御信号は、食道の近くの迷走神経に適用され、そして、上方制御信号は、十二指腸または回腸に適用される。
【0083】
実施形態では、方法は、電気信号治療を適用すべきかどうかを決定するために、GLP1またはGIPのレベルを検出することをさらに含む。GLP1および/またはGIPのレベルが、糖尿病のない対象からの対照サンプルで予想される正常レベルまたはベースラインレベルに増加するとき、GLP1および/またはGIPを増加させる治療は、適切なグルコースのコントロールを維持することを要求される予想レベル以下に落ちるまで、中止される場合がある。そのようなレベルは知られており、当業者に公知の方法を用いて決定することができる。
【0084】
実施形態では、方法は、グルコースコントロールを改善する薬剤を投与することをさらに含む。そのような薬剤は、インスリンの量を増加および/またはインスリンに対する細胞の感受性を増加させる薬剤を含む。薬剤の非限定的な例としては、インスリン、インスリン類似体、スルホニル尿素類、メグリチニド類、GLP−1類似体、DPP4阻害剤、およびPPARα、γ、またはδアゴニストが挙げられる。
【0085】
(糖調節異常と関連する状態)
糖調節異常と関連する状態は、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、妊娠糖尿病および1型糖尿病を含む。「糖調節異常」は、グルコース吸収、グルコース産生、インスリン分泌、インスリン感受性、GLP−1調節、およびグルカゴン調節の1つ以上における変化を指す。
【0086】
2型糖尿病は、肝臓、筋肉および脂肪細胞が、細胞にグルコースを輸送し、そして、エネルギーを細胞へ供給するために、適切にインスリンを使用しない病気である。細胞がエネルギーを切望し始めると、信号がインスリン生産を増やすために膵臓に送られる。場合によっては、膵臓は、結局は、高血糖の徴候を悪化させる、より少ないインスリンを産生する。2型糖尿病患者は、126mg/dl以上の空腹時血漿グルコース;200mg/dl以上の経口耐糖能;および/または6.5%以上のHbA1Cの%を有する。場合によっては、HbA1Cのパーセンテージは、6〜7%、7〜8%、8〜9%、9〜10%、および10%超である。
【0087】
2型糖尿病の治療法の存在にもかかわらず、必ずしもすべての患者が、グルコースコントロールを達成するか、あるいはグルコースコントロールを維持するわけではない。血糖コントロールを達成しなかった患者は、一般的に7%より大きいHbA1Cを有する。いくつかの実施形態では、薬物治療をしても血糖コントロールの問題を抱え続けている患者が選ばれる。
【0088】
耐糖能異常および/または空腹時血糖異常の患者は、グルコースコントロール欠如についてのいくつかの最小レベルの証拠を有するそれらの患者である。患者はどんな治療にもナイーブでありえるか、または1つ以上の医薬処置で治療された人達である。「糖尿病前症」は、米国糖尿病学会により用いられる用語であり、正常な血糖よりも高い血糖を有するが、糖尿病の基準を満たすのに十分に高血糖ではない人々である。血糖コントロールの欠如は、空腹時血漿グルコース試験(FPG)および/または経口耐糖能試験(OGTT)で測定することができる。これらの試験の後に測定される血糖レベルは、患者が通常の糖代謝であるか、耐糖能異常であるか、空腹時血糖異常であるか、または糖尿病に罹患しているかどうかを決定する。患者の血糖レベルが、FPGの後で特定範囲内において異常であるならば、それは、空腹時血糖異常(IFG)と呼ばれる;患者のグルコースレベルが、OGTTの後で特定範囲内において異常であるならば、それは耐糖能異常(IGT)と呼ばれる。患者は、100mg/dl以上から126mg/dl未満のFPGで空腹時血糖異常および/または140mg/dl以上から200mg/dl未満のOGTTで耐糖能異常を有するとして同定される。糖尿病前症の患者は、それらの範囲内でIFGおよび/またはIGTを有し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、太りすぎであるが、肥満(30未満のBMIを有する)ではなく、2型糖尿病に罹患している患者、太りすぎであるが、肥満ではなく、糖尿病前症に罹患している患者、または2型糖尿病に罹患し、太りすぎでなくて、肥満でない患者が選ばれる。いくつかの実施形態では、2型糖尿病の1つ以上の危険因子を有する患者が選ばれる。これらの危険因子は、30を超える年齢、家族歴、超過重量、心血管疾患、高血圧、高トリグリセライド、妊娠糖尿病の病歴、IFG、および/またはIGTを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、糖調節異常と胃不全麻痺を有する患者は、本明細書に記載される方法から除外されてもよい。
【0091】
(信号の適用)
本開示の1つの態様では、可逆的な断続的な変調信号は、神経上での神経活性を下方制御および/または上方制御するために、標的神経または器官に適用される。
【0092】
本明細書に記述される方法の実施形態では、神経伝導ブロックは、ある部位で標的神経に適用され、前記神経伝導ブロックは、神経の神経活性を下方制御し、そして神経活性が前記信号の停止の際に回復するように選択される。そのような信号を適用するためのシステムは、米国特許第7,167,750号;米国特許出願2005/0038484(参照により本明細書に取り込まれる)に記述されている。
【0093】
場合によっては、神経は1つ以上の消化器官を神経支配する神経であり、そして、それは、迷走神経、腹腔神経、迷走神経の肝臓枝、および内臓神経を含むが、これらに限定されるものではない。適用される信号は、1つ以上の神経の神経活性を上方制御および/または下方制御することが可能である。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記変調信号は、電気信号を適用することを含む。信号は、神経活性を下方制御および/または上方制御し、そして、信号の停止の際に神経活性の回復を可能とするように選択される。パルス発生器は、先に述べたように、信号の特徴を変えて可逆的で断続的な信号を供給するために、信号の適用を制御するために使用することができる。信号の特徴は、信号の位置、信号の周波数、信号の振幅、信号のパルス幅、および信号の管理サイクルを含む。いくつかの実施形態では、信号の特徴は、改善されたグルコース調節を提供するために選ばれる。
【0095】
いくつかの実施形態では、標的神経に適用される電極は、断続的なブロッキング信号または下方制御信号で通電される。信号は、限られた時間(例えば、5分)、適用される。神経活性回復の速度は、対象により異なる。しかし、20分は、ベースラインまで回復するために必要な合理的な例である。回復後、ブロッキング信号の適用は、信号の停止後に次に回復することができる神経活性を再び下方制御する。信号の再開された適用は、完全な回復の前に適用することができる。例えば、限られた時間(例えば、10分)の後、ブロッキングを再開することができ、ベースラインと比較して、有意に減少したレベルを超えない平均的神経活性をもたらす。いくつかの実施形態では、電気信号は、信号適用のオン時間と、それに続く信号が神経に適用されないオフ時間を含むサイクルで断続的に適用され、ここで、オン時間とオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたって適用される。実施形態では、オン時間および/またはオフ時間は、神経の少なくとも部分的な回復を可能とするように選択される。本開示を制限することを意味するものではないが、神経のための回復期間を許容することは、消化器官の適応を回避しうると考えられる。
【0096】
迷走神経活性などの神経活性の回復を認識することは、強化された管理と強化された治療選択肢を有する処置療法と装置を容認する。図6は、上記したブロッキング信号の適用に応じた経時的な迷走神経活性を例示し、ブロッキング信号の停止後の迷走神経活性の回復をさらに例示する。図6のグラフは、例示のためのみであることが理解される。患者に依り大きな変動性があると予想される。例えば、ブロッキング信号に対する一部の患者の応答は、例示されるほど劇的でない場合がある。他の患者は、例示されるよりさらに急であるかまたは浅い回復勾配を経験するかもしれない。また、いくつかの対象の迷走神経活性は、ベースライン活性の方へ増加する前に、減少したレベルで水平のままであるかもしれない。しかし、前述の動物実験に基づいて、図6はブロッキングへの生理学的応答の適正表示であると信じられている。
【0097】
図6において、迷走神経活性は、ベースライン(すなわち、本発明の処置のない迷走神経活性)のパーセントとして例示される。迷走神経活性は、多くの方法で測定することができる。例えば、単位時間につき産生される膵外分泌量は、そのような活性の間接的な測定である。また、活性は迷走神経上で、または、それの近くで電極をモニターすることで直接に測定することができる。そのような活性は、定性的に確認することもできる(例えば、腹が張った感じや消化管運動の正常な状態の患者の感覚により)。
【0098】
図6において、縦軸は、患者のベースライン活性(それは、患者により変化する)のパーセントとしての仮想患者の迷走神経活性である。横軸は時間の経過を表わし、患者が記述されたようにブロッキング信号を受信しているか、あるいはブロッキング信号がオフ(「非ブロッキング」と呼ばれる)になっているときの例示的な間隔を示す。図6で示されるように、ブロッキング信号を受ける短い期間の間に、迷走神経活性は、劇的に減少する(示される例では、ベースライン活性の約10%まで)。ブロッキング信号の停止後、迷走神経活性は、ベースラインの方へ上昇し始める(患者によって上昇の傾斜が異なる)。迷走神経活性は、ベースラインに戻ることが可能であるか、または、図6に示されるように、迷走神経活性がまだ低いときに、ブロッキング信号を再び実行することができる。図6で、迷走神経活性がベースラインの約50%まで増加するとき、ブロッキング信号が開始される。結果として、平均の迷走神経活性は、ベースライン活性の約30%に減少する。ブロッキング時間の持続時間と「非ブロッキング」時間の持続時間を変えることによって、平均の迷走神経活性を大きく変えることができることが理解されるであろう。
【0099】
信号は断続的または連続的であり得る。好ましい神経伝導ブロックは、埋め込み型パルス発生器(例えば、パルス発生器104または外部制御装置)で制御される電極による迷走神経での信号によって作製される電子ブロックである。神経伝導ブロックは、どんな可逆的なブロックであってもよい。例えば、超音波ブロック、低温学ブロック(化学的に、または、電子的に誘導された)または薬物ブロックを使用できる。電子低温ブロックは、電流に応じて冷却するPeltier固体状態装置であってよく、冷却を制御するために電気的にコントロールされうる。薬物ブロックは、ポンプで制御された皮下の薬物送達を含むことが可能である。
【0100】
そのような電極伝導ブロックで、ブロック・パラメータ(信号タイプとタイミング)は、パルス調整器によって変えることができ、上方制御信号で調整されることができる。例えば、神経伝導ブロックは、望ましくは、Solomonowら、“Control of Muscle Contractile Force through Indirect High−Frequency Stimulation”,Am.J.of Physical Medicine,Vol.62,No.2,pp.71−82(1983)に開示されたパラメータの範囲内である。いくつかの実施形態では、神経伝導ブロックは、ブロッキング信号を適用する部位で神経(例えば、求心性、遠心性の有髄および無髄(nomnyelinated)繊維の両方)の全横断面をブロックするために選択される電気信号で適用され(遠心性で求心性ではない神経繊維の選ばれたサブグループだけ、またはその逆とは対照的に)、そして、より望ましくは、Solomonowらに記載されている200Hzの閾値周波数を超えるように選択される周波数を有する。さらに、より好ましいパラメータは、500Hz(非限定的な例として、4mAの振幅、0.5msecのパルス幅、および5分のオン時間と10分のオフ時間の負荷サイクルの他のパラメータとともに)の周波数である。より完全に記述されるように、本発明は個々の患者のパラメータを刺激してブロックする際に、医者に大きな自由度を与える。
【0101】
本明細書に記述される方法の実施形態では、信号は、ある部位で標的神経に適用され、前記信号は、神経での神経活性を上方制御するように選択され、そして、前記信号の停止の際に神経活性が回復される。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、グルコース調節を改善するために、下方制御信号と組み合わせて適用されうる。例えば、上方制御信号は、内臓神経および/または腹腔神経に適用されうる。
【0102】
信号は、神経活性を上方制御して、信号の停止の際に神経活性の回復を可能にするように選択される。パルス発生器は、上記したように、信号の特徴を変えて可逆的な断続的な信号を提供するために、使用されて信号の適用を調整する。信号の特徴は、信号周波数、信号位置、および信号投与サイクルを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、標的神経に適用される電極は、上方制御信号で通電される。信号は、限られた時間(例えば、5分)、適用される。神経活性回復の速度は、対象により異なる。しかし、20分が、ベースラインまで回復するために必要な時間の合理的な例である。回復後、上方信号の適用は、信号の停止後その次に回復することができる神経活性を再び上方制御する。信号の再開された適用は、完全な回復の前に適用することができる。例えば、限られた時間(例えば、10分)の後、上方制御信号を継続することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、上方制御信号は、グルコース調節を改善するために、摂取カロリー量または食物から吸収されるグルコース量を減少させるために、GIPおよび/またはGLP1の量および/または分泌を増加/修正するために、および/または分泌されたグレリンの量を減少させるために、下方制御信号と組み合わせて適用されうる。神経調節信号は、肝臓によって生産されるグルコースの量、食物から吸収されるグルコースの量およびGIP、GLP−1および/または分泌されるグレリンの量に影響を及ぼすことができる。神経調節は、対象によって必要とされるインスリン量の減少をもたらす。
【0105】
上方制御信号と下方制御信号は、同時に異なる神経に適用されてもよいし、異なる時間に同じ神経に適用されてもよいし、あるいは異なる時間に異なる神経に適用されてもよい。実施形態では、上方制御信号は、腹腔神経または内臓神経に適用されうる。他の実施形態では、上方制御信号または下方制御信号は、迷走神経の肝臓枝に適用されてもよいし、あるいは、信号は、特に朝早く、生産される肝臓グルコースの量を減少させるために適用されてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、下方制御信号は、異なる神経または器官に1日につき複数回、複数日にわたって断続的に適用される上方制御信号と組み合わせて、断続的に1日に複数回、複数日にわたって迷走神経枝に適用される。いくつかの実施形態では、上方制御信号は、センシング事象(例えば、存在する血糖量または十二指腸への食物の進入)により適用される。他の実施形態では、内臓神経、腹腔神経、十二指腸および/または回腸に適用される上方制御信号は、患者に対する通常の食事時間後の期間に、一般的には、食事後15〜30分に、またはグルコース濃度が上昇したときに、適用することができる。
【0107】
場合によっては、信号は、特定の時間に適用される。例えば、下方制御信号は、食事の前と間に適用されてもよく、そして、食後約30〜90分に、刺激信号が続いてよい。別の例では、下方制御信号は、迷走神経に、あるいは肝臓グルコースが増加しているときは、朝早く迷走神経の肝臓枝に適用されうる。
【0108】
いくつかの実施形態では、信号パラメータは、グルコース調節の改善を得るように調整される。グルコース調節における改善は、空腹時グルコース、経口耐糖能試験、および/またはHbA1Cの測定により、または対象に必要なインスリン量の減少により決定することができる。1つの実施形態では、絶対パーセンテージでのHbA1Cの減少は、少なくとも0.4%であり、より望ましくは0.4%〜5%の範囲の任意の%である。いくつかの実施形態では、絶対パーセンテージでのHbA1Cの減少は、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%以上のいずれかである。例えば、2型糖尿病患者は、9%のHbA1Cを有する場合があり、そして、6.5%のHbA1Cへの減少は、2.5%の減少となり、グルコース調節の改善を表わすことになる。
【0109】
いくつかの実施形態では、グルコース調節の改善は、126mg/dl未満またはそれより大きい空腹時グルコースおよび/または200mg/dl未満の経口耐糖能を含む。いくつかの実施形態では、空腹時グルコースおよび/または経口耐糖能は、少なくとも5%減少し、より望ましくは、5〜50%の範囲での任意のパーセンテージの減少である。
【0110】
1つの実施形態では、グルコース調節の改善は、1つ以上の以下の特徴を含む:6.5%以下のHbA1C;100mg/dl未満の空腹時グルコース;および/または140mg/dl未満の耐糖能。
【0111】
(信号適用位置)
神経活性の調節は、1つ以上の標的神経または器官の神経活性の上方制御および/または下方制御によって達成することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、電極は標的神経の上に、または、それの近くで多くの異なる部位と場所に置くことができる。標的神経は、それぞれ患者の腹腔神経、肝臓神経、迷走神経、内臓神経、またはこれらのいくつかの組合せを含む。電極は、また、迷走神経の近くで信号を器官(例えば、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、脾臓、膵臓、食道、または胃)に適用するために配置されうる。いくつかの実施形態では、電極は対象の横隔膜の近くまたは遠位の場所で電気信号を神経に適用するように配置される。
【0113】
電極は、上方制御信号と対照的に下方制御信号を適用するために、異なる神経上に配置されうる。例えば、下方制御信号は、迷走神経上で適用されることができ、そして、上方制御信号は、内臓神経に適用されることができる。いくつかの実施形態では、信号は膵臓への迷走神経をブロックすることによって、神経的に媒介された反射的な分泌を減らして、同時にまたはその後に、内臓神経を刺激してインスリン分泌を阻害し、および/または腹腔神経を上方制御してGLP1生産を刺激するために適用されうる。
【0114】
いくつかの実施形態では、電極は、迷走神経の枝または幹に信号を適用するために配置される。他の実施形態では、電極は、迷走神経の前方の幹、後方の幹または両方に信号を適用するために配置される。いくつかの実施形態では、電極は、同じ神経でまたはその近くの2つの異なる場所に、または神経上と消化管臓器上とに配置されうる。いくつかの実施形態では、電極は、横隔膜の下の場所などの心臓の迷走神経の無力化部位より下に配置される。
【0115】
例えば、図2はブロッキング電極の設置を例示する。図2を参照して、ベースラインの迷走神経活性は、近位の迷走神経セグメントVNPの実線で例示される。迷走神経と腸神経系の残りの部分は、緊張の下方制御を説明するために低減された厚さで表示される。膵臓胆汁出力(そして、結果として生じるフィードバック)も低減されている。図2で、ブロッキング電極BEは、消化管神経支配(例えば、横隔膜のすぐ下で)と比較して、迷走神経上の高い位置に示され、唯一のブロッキング電極は、下に(例えば、膵臓/胆管神経支配VN5のすぐ近位)配置され得る。上記された全ての迷走神経のブロッキングは、血糖コントロール障害と関連する状態を治療することを含むいろいろな利益のために迷走神経を下方制御するのに用いることができる。いくつかの実施形態では、電極は迷走神経の腹腔枝上に置くことが可能であり、上方制御信号を提供しうる。
【0116】
他の実施形態では、横隔膜より上にまたはそれの下に食道Eの領域で迷走神経の上に、またはそれの近くに電極を設置する代替の設計が提供される。
【0117】
2つの対電極が、両極性の信号のパルス発生器に接続し得る。他の実施形態では、迷走神経VNの一部は、食道Eから切り離される。電極は、迷走神経VNと食道Eの間に配置される。電極は、電極の反対側の神経の片側で、そして、軸方向に整列する(すなわち、直接お互いの向かいに)電極で迷走神経VNの上に配置される。簡潔に例示するために示されないが、電極は神経VNを囲む通常の担体(例えば、PTFEまたはシリコンカフ)上で担持されうる。電極の他の可能性がある配置は、参照により本明細書に取り込まれる、2005年6月16日に公開された米国特許出願2005/0131485に記述される。
【0118】
(信号周波数とタイミング)
いくつかの実施形態では、下方制御信号は、少なくとも200Hzから最高5000Hzの周波数を有する。他の実施形態では、信号は、約500〜5000Hzの周波数で適用される。出願人は、最も好ましいブロッキング信号は、2つ以上の2極式電極で適用される3,000Hz〜5,000Hzまたはそれより大きい周波数を有すると決定した。そのような信号は、100マイクロ秒(5,000Hzの周波数を伴う)の好ましいパルス幅を有する。この周波数とパルス幅は、ブロッキングからの神経の回復を最も回避し、かつ、パルス周期での無信号の期間を避けることによって神経の再分極を回避すると考えられる。パルス周期での短いオフ時間(例えば、周期間で、または周期内で)は、それが神経再分極化を避けるのに十分短い限り、許容できるであろう。波形は、方形波もしくは正弦波または他の形であり得る。5,000Hz以上のより高い周波数は、豚の研究において、より一貫した神経伝導ブロックをもたらすことが分かった。好ましくは、信号は、神経上の2つ以上の電極に2極性、2相系で送達される。
【0119】
いくつかの実施形態では、0.5〜8mAの信号振幅は、ブロッキングに適切である。他の振幅が、十分の場合もある。他の信号特質は、神経または器官による適応の可能性を減少させるために他の信号属性を変えることができる。これらは、電力、波形またはパルス幅を変えることを含む。
【0120】
上方制御信号は、一般的に200Hz未満、より好ましくは10〜150Hz、そしてより好ましくは10〜50Hzの周波数の信号を含む。
【0121】
神経活性を上方制御および/または下方制御する、および/または神経活性の回復を可能とする信号の選択は、信号タイプと信号適用タイミングを選択することを含む。例えば、電極伝導ブロックで、ブロックパラメータ(信号タイプとタイミング)は、パルス発生器で変えることができて、刺激信号で調整することができる。ブロッキングを達成する正確な信号は、患者に依り神経部位に依り変動しうる。正確なパラメータは、ブロッキング部位での神経伝達ブロッキングを達成するために個別に調整されることができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、信号は、信号がその間、神経に適用されるON時間とそれに続く信号がその間、神経に適用されないOFF時間を含む負荷サイクルを有する。例えばオン時間とオフ時間は、特に消化器官の適応が起こる場合がある状況では、神経の部分的な回復を許容するように調整されうる。いくつかの場合では、下方制御信号および上方制御信号は、下方制御信号が適用されないとき(例えば、上方制御信号が特定の時間に、またはセンシング事象により適用されるときなど)、上方制御信号が適用されるように調整されることができる。いくつかの実施形態では、センシング事象は、例えば、特定の閾値を超えるグルコースまたは十二指腸に入る食物などのセンシング事象に関係する期間、上方制御信号が適用されて、そして、下方制御信号が適用されないことを示す。
【0123】
いくつかの実施形態では、対象は埋め込み型コンポーネント104を受ける(図3)。電極212、212aは、患者の横隔膜のすぐ下の前迷走神経AVNと後迷走神経PVN上に配置される。外部アンテナ(コイル102)は、埋め込まれた受信コイル105の上に位置する患者皮膚上に置かれる。外部制御装置101は、周波数選択、パルス振幅、および負荷サイクルのためのオプションを含むいろいろな信号パラメータのためにプログラムすることができる。信号をブロックするために、周波数のオプションは、2500Hzと5000Hz(両方とも200Hzの閾値ブロッキング周波数より十分に上)を含む。大多数の処置は、5,000Hz、交流信号、100マイクロ秒のパルス幅である。振幅オプションは、1〜8mAである。刺激信号については、周波数は200Hz未満から選ばれる。
【0124】
負荷サイクルは、また、制御されうる。代表的な負荷サイクルは、オン時間の5分と、それに続く無信号の5分である。負荷サイクルは、装置の使用の間中繰り返される。
【0125】
図12は、典型的な負荷サイクルを示す。各ON時間は、5,000Hzの信号が0アンペアから6〜8mAの目標まで強化されるランプアップを含む。各ON時間は、ON時間の終わりに、全電流からゼロ電流へのランプダウンをさらに含む。患者の約50%に対して、ランプ期間は20秒であり、そして、残りについては、ランプ期間は5秒であった。いくつかの実施形態では、オン時間は、30秒以上もしくは180秒以下または両方の持続時間を有するように選出される。
【0126】
ランプアップおよびランプダウンの使用は、全電流5,000Hzの信号の急な適用または終了に対する患者の感覚の可能性を回避するための保守的な方法である。高周波信号のためのランプアップの例は、2005年8月9日に発行されたKingへの米国特許第6,928,320号において示される。
【0127】
いくつかの実施形態では、ミニ負荷サイクルを適用することができる。1つの実施形態では、ミニ負荷サイクルは、全電流が達成されるまで(またはランプダウンの場合、次第に減少)、ミニON時間からミニON時間まで次第に増加する電流で、5,000HzのミニON時間の180ミリ秒の期間を含む。そのようなミニON時間の各々の間では、変動することができて、そして信号が適用されない持続時間で一般に約20ミリ秒であるミニOFF時間がある。したがって、各20秒ランプアップまたはランプダウンでは、約100のミニ負荷サイクルがあり、それらはそれぞれ200ミリ秒の持続時間を有し、そして、それぞれ約180ミリ秒のON時間と約20ミリ秒のOFF時間を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、上方制御信号は、GIPおよび/またはGLP1の量を増加させるだけでなく、グルコース調節を改善し、摂取カロリー量を減少させるために、下方制御信号と併用して適用されうる。例えば、下方制御信号は、食事の前と間に適用されて、続いて上方制御信号が食後約30〜90分に適用されうる。
【0129】
患者は、通常、起きている間にのみ装置を使う。治療送達の時間は、臨床医によって、装置にプログラムされることができる(例えば、自動的に午前7時00分にオンとなり、午後9時00分に自動的にオフとなる)。場合により、治療の時間は、食事前や食後30〜90分などの血糖が変動する時間に応じるように修正されるであろう。例えば、治療の時間は、朝食前の午前5時から始まって、最後の食事または軽食をした時刻に従って午後9時以降に終わるように調整されうる。パルス発生器のRFパワーバージョンにおいては、装置の使用は、患者の管理に従う必要がある。例えば、患者は、外部アンテナを身につけないことを選ぶかもしれない。受信アンテナが患者の皮膚を通しての無線周波数(RF)カップリングにより外部アンテナと結合されるときの時間を注意することによって、装置は使用の管理をする。
【0130】
場合によっては、外部制御装置101と埋め込まれたパルス発生器104との間の信号接触の損失は、コイル102、105の間の誤整列に対して主に起きる(図8を参照のこと)。コイルの誤整列は、少なくとも1部は、一日中の体表面形状の変化(例えば、座っているか、立っているか、または横たわっているかによる変化)から生じると考えられる。これらの変化は、コイル102、105間の距離、コイル102、105の横方向配列、およびコイル102、105の平行配列を変え得る。誤整列は、装置と信号が回復することを確実とするように調整されたコイルの配列によって検出することができる。誤整列があったならば、装置は患者または医者への通知を含むことが可能である。
【0131】
いくつかの実施形態では、外部コンポーネント101は、いろいろな情報のためにパルス発生器コンポーネント104に情報を送らせることができる。いくつかの実施形態では、負荷サイクルにつき30秒〜180秒の治療時間は、負荷サイクルにつき30秒未満の治療時間または負荷サイクルにつき180秒より大きい治療時間より好ましい。
【0132】
10分の負荷サイクル(すなわち、治療を意図した5分間、続いて5分のOFF時間)の間、患者は複数の治療の開始を有することができる。例えば、任意の所定の5分の意図されたON時間内で、患者が35秒のON時間と1.5分の実際のON時間(5分の意図されたON時間の残りは、信号中断による非治療期間である)を経験するならば、たとえわずか1つが意図されたとしても、患者は2つの実際の治療開始を有することができる。治療開始数は、患者によって経験されるON時間の長さによって逆に変化する。
【0133】
平均神経活性(例えば迷走神経活性)を変える柔軟性は、主治医に患者を治療することの大きな自由度を与える。例えば、糖尿病または糖尿病前症を治療する際に、ブロッキング信号は、短い「非ブロッキング」時間とともに適用することができる。患者が運動障害により不快を経験するならば、「非ブロッキング」期間の長さは、患者の快適さを改善するために増やすことができる。また、酵素産生の減少は、糞便中への脂肪の派生的な増加に伴う減少した脂肪吸収をもたらすことができる。ブロッキングと非ブロッキングの持続期間は、許容できる大便(例えば、過度の脂肪性下痢を回避する)となるように調整することができる。迷走神経活性が手術による永久的な迷走神経切断の場合のように完全に中断されていないので、本発明によって提供されるコントロールは、腸管神経系のコントロールの仮定を防止するのに使用できる。
【0134】
患者の快適さは、ブロッキングと非ブロッキングの期間の適切なパラメータを決定するためのフィードバックとして十分でありうるが、より客観的なテストを展開することができる。例えば、信号を上方制御することとの組み合わせだけでなく、ブロッキングと非ブロッキングの持続時間は、グルコース調節の望ましいレベルを達成するように調整することができる。そのようなテストは、患者ベースで測定し、適用することができるか、あるいは患者の統計サンプリングに基づいて実行し、患者の一般的母集団に適用することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、センサーを用いてもよい。検出電極SEは、神経活性と負荷サイクルをどのように調整するかを決定する方法として、神経活性をモニターするために加えることができる。検出電極は、ブロッキング電極へのさらなる電極となりうるが、1つの電極が両方の機能を実行しうることが理解される。検出電極およびブロッキング電極は、図3で示されるように、制御装置に接続することができる。そのような制御装置は、検出電極から信号を受信する付加的な機能を有する、先に記述された制御装置102と同じである。
【0136】
いくつかの実施形態では、センサーは、検出電極、グルコースセンサーまたは問題の他の生物学的分子またはホルモン類を感知するセンサーでありうる。検出電極SEが、標的とされた最大の迷走神経活性または緊張(例えば、図6で示すベースラインの50%)を表している信号を与えるとき、検出電極から信号を受け取る付加的な機能を備えた制御装置は、ブロッキング信号でブロッキング電極BEに通電する。制御装置102に関して記述されるように、検出電極から信号を受信する付加的な機能を備えた制御装置は、ブロッキング信号を開始するか、または信号を上方制御するための目標だけでなく、ブロッキング持続時間と非ブロッキング持続時間のパラメータに関して遠隔でプログラムされることができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される装置および方法は、迷走神経活性のある程度の下方制御をコントロールするために、迷走神経の回復を使用する。これは、最小限の患者の不快感で最大の治療的な効果のために患者の治療法をコントロールする強化された能力を医者に与える。迷走神経ブロッキングは、迷走神経切断をシミュレーションするが、迷走神経切断と違って、可逆性であってコントロール可能である。
【0138】
(対象の血糖コントロール障害を変える薬剤)
本開示は、神経調節を含む糖調節異常を伴う状態を治療するのみならず、対象でのグルコース調節に影響を及ぼす薬剤を含む組成物を対象に投与するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は血液中に存在するインスリンの量を増加させる。他の実施形態では、薬剤はインスリン感受性を増加させる。いくつかの実施形態では、薬剤は内因性のグルコース産生および/またはグルコース吸収を減少させる。
【0139】
いくつかの経路は、エネルギーバランスに影響を及ぼすことが知られている。経路は、消化管視床下部軸(例えば、グレリン)、消化管−後脳軸(例えば、迷走神経)、末梢組織(脂肪組織、骨格筋)−視床下部軸(例えば、レプチン)、および視床下部−後脳軸(神経突起)を含む。特に、視床下部(前脳)と延髄最後野(後脳)は、人間のエネルギー恒常性において統合する役割を果たすと考えられる中枢神経系の2つの領域である。通信および体のエネルギーバランスに関する補完的および重複的な効果を可能にするこれらの2つの領域の間での神経接続があることが立証された。多数のホルモン類、酵素、神経伝達物質、および他の調節物質は、これらの経路の異なる部分から放出されて、中枢神経系のこれらの領域に対して影響を及ぼすことができる。これらの経路と脳領域の異なる部分を含む異なった治療様式の利用は、したがって、中枢神経系と消化管、膵臓、肝臓、筋肉、および脂肪細胞の間の伝達を変えることは、非常に効果的で、強くて、持続性がある組み合わせの併用治療において重要となりうる。
【0140】
グルコースの調節障害に影響を及ぼす薬剤は、標的神経の神経活性を変えるために信号を適用する療法を補完する能力に基づいて選択することができる。本明細書に記述されるように、迷走神経などの標的神経の神経活性を調節するために、信号の適用と補完的または相乗的な効果を提供しうる薬剤とが選択される。相乗的または補完的な効果は、1つまたは両方の処置だけと比較して、患者が本明細書に記述される血糖コントロールの改善を有するかどうかを決定することによって決定されることができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、異なる部位(例えば、視床下部または下垂体)で、または、異なる経路を通って作用する薬剤が、本明細書に記述される方法で使用するために選択されうる。治療を補完する薬剤は、対象の血糖コントロールに影響を及ぼすための異なる作用メカニズムを含むものである。いくつかの実施形態では、相乗効果は、グルコース消化に影響を及ぼさない、および/または胃排出を遅らせる薬剤(例えば、インスリン分泌、インスリン感受性を増加させ、および/または内因性グルコース産生を減少させる薬剤)で観察されうる。そのような薬剤は、インスリン、アミリン類似体、インスリン分泌促進物質、スルホニル尿素類、メグリチニド類ならびにPPARα、γ、およびδアゴニストを含む。
【0142】
薬剤の使用を妨げる、または、不十分な血糖コントロールを提供する、推奨された投薬量で好ましくない副作用を有する薬剤が、また、あるいはさらに、選択される場合がある。さらに、高血圧、心臓病、肝疾患、または腎疾患に罹患している患者は、不利な副作用のため推奨投薬量での1つ以上の薬剤による治療に耐えられない場合がある。
【0143】
好ましくない副作用を有する薬剤としては、心血管状態に対する副作用を有し、体重増加をもたらすことが示されたAvandia(ロシグリタゾン;PPAR−γアゴニスト)が挙げられる。胃排出を阻害または遅延する薬物(例えば、アミリン類似体またはGLP−1類似体など)、またはGI管に対する刺激物質である薬物(例えば、メトホルミン(ビグアナイド(biguinide))は、吐き気、嘔吐、および下痢を引き起こすことがある。Precose(アカルボース;α−グルコシダーゼ阻害剤)などの、GI管における炭水化物の分解と吸収を変える薬物は、下痢と鼓腸を引き起こすことがある。血中インスリン濃度を増大する薬物(例えば、外因性インスリン投与、スルホニル尿素類、およびメグリチニド類など)は、低血糖症と体重増加を引き起こすことがある。
【0144】
好ましくない副作用を有する薬物と標的神経上での神経活性を調整する薬剤との併用投与は、低投薬量での薬物の投与を可能とし、それによって副作用を最小にすることができる。また、本明細書に記述されるように、神経の下方制御による胃排出における遅延により吸収が遅れるとき、薬物動態を変えた薬物が選択されうる。他の実施形態では、推奨投薬量は、より少ない副作用がある量まで低下さ得る。実施形態では、推奨投薬量は、少なくとも25%低下させてもよい。他の実施形態では、投薬量は推奨服用量の少なくとも25%以上の任意のパーセンテージまで下げることができる。いくつかの実施形態では、投薬量は、推奨投薬量の少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%が下げられる。
【0145】
1つの実施形態では、方法は血糖コントロール障害を伴う状態の治療を提供する。1つの方法は、2型糖尿病または糖調節異常を治療するのに有用であり、そして有効性のための推奨投薬量を有する薬物を選択することと(そこでは、患者が前記推奨投薬量で不愉快な副作用を経験する可能性がある)、患者の標的神経に断続的な神経ブロックを1日につき複数回、複数日にわたって適用することであって、そのブロックは、神経上での求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御するために選択され、前記ブロックの停止の際に神経活性を回復させる、こと、および、前記薬物を患者に前記推奨投薬量未満の投薬量で投与することを含む同時治療で患者を治療することとを含む。いくつかの実施形態では、そのような患者の血糖コントロール障害に関連する状態を治療するための有効な投薬量は、薬物治療と適合しない前記患者に与える不愉快な副作用と関係している。いくつかの実施形態では、患者は、摂食障害、高血圧、心臓病、肝臓、または腎臓障害を有する人々であり、1つ以上の薬剤での治療に耐えることができない場合がある。
【0146】
存在するインスリンの量、または分泌されるインスリンの量を増やす薬剤は、患者の血糖コントロールを改善することができる薬剤である。そのような薬剤は、スルホニル尿素類、メグリチニド類、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)阻害剤、インスリン、インスリン類似体、およびGLP−1類似体を含む。
【0147】
細胞のインスリンに対する感受性を増大する薬剤は、患者の血糖コントロールを改善することができる薬剤である。そのような薬剤は、ビグアナイド類(biguinides)(例えば、メトホルミン)およびPPARγアゴニスト(例えば、ロシグリタゾンおよびピグリタゾン)を含む。
【0148】
グルコースの生産および炭水化物の消化を阻害する薬剤は、患者の血糖コントロールを改善することができる薬剤である。そのような薬剤としては、ビグアナイド類、αグリコシダーゼ阻害剤、アミリン類似体、DPP4阻害剤、およびGLP−1類似体が挙げられる。
【0149】
グレリンの効果を減少させる薬剤は、また、糖尿病治療に有用であり得、プロテインキナーゼA阻害剤、ニューロペプチドY受容体阻害剤、および成長ホルモン分泌促進物質(secretatogue)受容体を含む。
【0150】
GIPまたはGLP−1の量を高める、またはグレリンの量を減少させる薬剤は、神経調節療法と有利に組み合わせることができる。例えば、神経の上方制御または下方制御は、GLP−1の分解を阻害するDPP4阻害剤などの薬剤と組み合わせて、GIPおよび/またはGLP−1の量を増大するために適用することができる。1つの実施形態では、迷走神経は、DDP4阻害剤(例えば、ビルダグリプチンまたはシタグリプチン)と組み合わせて、断続的な可逆的な下方制御信号を迷走神経に適用することによって下方制御されることができる。
【0151】
特に単一薬物治療だけでは、十分な血糖コントロールを提供しないとき、1つ以上のこれらの薬剤が治療のために組み合わされてもよい。糖尿病を治療するためのFDA承認薬物のどれもが、本明細書に記述される方法と組み合わされてもよい。
【0152】
対象に投与するための投薬量は、当業者により容易に決定することができる。投薬量のガイダンスは、例えば、同様の薬物群における他の薬物を参照して見つけることができる。例えば、投薬量は、承認された薬物または臨床試験の薬物のいずれに対しても確立され、そして、服用量の範囲は、薬物のタイプに依存する。例えば、プラムリンチドの投薬量は、1日当たり約240マイクログラムから最大720マイクログラムの範囲である。副作用を伴う投薬量は、典型的な研究に基づいて知られているか、あるいは容易に決定することもできる。副作用を最小にしながら、血糖コントロールの改善を達成する有効な投薬量の決定は、動物またはヒトの研究で決定することができる。
【0153】
薬剤は、良い医療実務と一致した様式で処方され、分包され、そして、投与される。この文脈で考慮される要因は、治療される特定の障害、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に知られている他の要因を含む。薬剤は、必ずしも製剤化される必要はないが、問題の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤と場合により製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する、対象の血糖コントロール値を改善する薬剤の量、障害または治療のタイプ、および上記した他の要因に依存する。これまで使用された同じ投薬量と投与方法が、またはこれまで使用された投薬量の約1〜99%が一般に使われる。
【0154】
薬剤を含む治療製剤は、所望の純度を有する薬剤を任意の生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合して(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))水溶液、凍結乾燥または他の乾燥された製剤の形態で保存するために調製される。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、そして、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジンおよび他の有機酸);アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメソニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルまたはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン);グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート試薬(例えば、EDTA);糖類(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0155】
本明細書に記載の製剤は、また、治療される特定の適応症のために、必要に応じて複数の活性化合物を含有してもよい。そのような実施形態では、化合物は互いに悪影響を与えない補完的な活性を有する。そのような分子は、意図した目的のために有効な量で組み合わされて適切に存在する。
【0156】
治療薬剤は、非経口、皮下、経口、皮内、腹腔内、およびエアゾールの手段を含む任意の適切な手段により投与される。非経口的注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。ポンプが、薬物を溶出させる装置やカプセルと同様に利用されてもよい。
【実施例】
【0157】
(実施例1)
(材料と方法/実験的設計)
非盲検の前方視的ベースライン対照3センター臨床試験が、前迷走神経幹および後迷走神経幹の断続的な電気ブロッキングを引き起こす本明細書に記述された装置の実行可能性、安全性、および有効性を評価するために行われた。参加センターは、Flinders Medical Centre,Adelaide,Australia;Instituto National de la Nutricion(INNSZ),Mexico City,Mexico;およびSt.Olavs University Hospital,Trondheim Norwayを含む。
【0158】
(患者)
25〜60才の年齢を含む男性または女性の肥満対象(BMI=31.5〜55kg/m2)は、3つのセンターで募集された。試験は、6カ月間、装置の安全性と有効性を評価した。
【0159】
すべての試験の外来診察と手順を終了する能力が適格性要件であった。関連した除外基準は以下のものを含んでいた:経口血糖降下剤で、または、胃不全麻痺を含む関連する自律神経障害で十分にコントロールされない現在の1型真性糖尿病(DM)または2型DM;先の3カ月以内の減量薬物療法または禁煙による処置または先の12カ月間の体重の10%超の減少;先の胃切除または他の大きな腹部手術(胆嚢切除と子宮摘出を除く);手術の時に食道胃接合部で外科的修復または広範囲な切開を必要とする臨床的に重要な裂孔ヘルニアまたは術中に決定された裂孔ヘルニア;および永久に埋め込まれた電気動力付きの医療機器もしくは埋め込まれた胃腸の装置または人工器官の存在。
【0160】
甲状腺の障害、てんかんまたはうつ病の3環系薬剤での同時治療は、治療計画が先の6カ月の間、安定であるならば、臨床試験への参加が許された。
【0161】
(装置の埋め込み)
装置は、2つの電極(各迷走神経幹に1つ)、皮下に配置される神経調節装置(パルス発生器)および装置をプログラムする外部制御装置を含んでいた。
【0162】
全身麻酔下、迷走神経ブロッキング・システム(図4)の2つのリード線(電極)は、腹腔鏡的に埋め込まれた。試験に参加している経験豊かな外科医による装置の埋め込みは、一般的に60〜90分を要した;5つのポートが、通常使われた。電極自体は、10mm2の活性表面積を有し、神経を部分的に取り囲むために「c」の形をしていた。
【0163】
腹腔内切開と電極配置は、以下の順序で実行された。胃肝靭帯は、切開されて食道胃接合部(EGJ)を露出し、そして、胃はEGJ上でわずかな緊張を保つために下向きに、そして、横方向に引っ込められた。後迷走神経の所在位置を見つけるために、横隔膜右脚が確認されて、その食道の結合から切り離された。前迷走神経幹は、それが横隔膜裂孔を横切るので、それを見つけることによって特定された。両方の迷走神経幹が特定されたあと、直角グラスパーは、後迷走神経幹の下で5mmのウインドウを切開するのに使用された。電極は、それから、迷走神経幹の下に作成されたウインドウで直角グラスパーの位置を定めて配置された。それから、電極の遠位の縫合タブが把持され、そして、電極は所定の位置に引っ張られ、そして、神経を電極カップ内に設置した。同じステップが、前迷走神経幹のまわりに第2の電極を置くために繰り返された。最後に、各電極は、各電極の遠位の縫合タブを通して配置されて、食道の外層に固定される単一縫合を使って所定位置に固定された。
【0164】
それから、リード線は神経調節装置に接続され、そして、それは剣状突起のすぐ下の中央線の皮下ポケットに埋め込まれた。適切な電極配置は、それから、埋め込み時に2つの異なる方法で決定された。最初に、正しい解剖学的電極神経アライメントは、目視により確かめられた。第2に、効果的電気的接触は、手術中に、そして、その後頻繁にインピーダンス測定を使って確かめられた。手術からの回復後、充電式の電源を含んだプログラム可能な外部制御装置が、埋め込まれた神経調節装置と外部伝送コイルを経由して経皮的に通信するのに使用された。
【0165】
(電気信号の適用)
外部制御装置は、周波数、振幅、および負荷サイクルのためにプログラムされた。迷走神経幹で神経パルスをブロックするのに選ばれる治療周波数は、膵外分泌性の迷走神経阻害の動物実験に基づいて、5000Hzであった。利用される振幅は、1〜6mAの範囲であった;しかし、ほとんどすべての例において、振幅は6mAであった。装置は朝に起動し、睡眠の前に止めた。プロトコルは、1日12時間、5分のブロッキングとブロッキングのない5分と交替するアルゴリズムを指定した。効果的な電気的接触は、手術後に頻繁にインピーダンス測定を使って確認された。
【0166】
(実験的治療と追跡調査)
迷走神経ブロッキングシステムの効果に焦点を合わせるために、研究対象は、6カ月の試験期間の過程では、並行的なダイエットもしくは行動のカウンセリングまたは肥満の薬物治療を受けることを除外された。すべての試験参加者は、その装置を埋め込まれた。埋め込み2週間後、断続的な高周波電気アルゴリズムは、すべての対象で開始された。対象は4週の間毎週、それから12週までは2週ごとに、そしてそれから毎月、体重、身体検査および有害事象(AE)の問合せのための外来診察に従った。さらに、12リード心電図(ECG)と臨床化学が、中心的な研究所で分析された。
【0167】
(過剰体重減少率の計算)
理想的な体重は、各々の対象の身長を計って、それからその対象に対する25.0のBMIをもたらす体重を決定することによって計算された。すなわち、理想的な体重(kg)=25×身長2(m)。EWLは、体重減少を過剰体重[(総体重)−(理想的な体重)]で割り、そして100を掛けることによって計算された。このように、EWL%=(体重減少(kg)/過剰体重(kg))×100である。
【0168】
(カロリー摂取量、食品組成、飽食、満腹および迷走神経機能研究)
2つのサブ試験が、飽食、カロリー摂取量および迷走神経機能ならびに体重減少の程度とそれらの関係に対する治療効果を評価するために実施された。
【0169】
1つのセンター(Flinders Medical Centre,Adelaide,Australia)で実施された1つのサブ試験(サブ試験A)において、すべての対象は、カロリー摂取量、食品組成、食事での飽食、食間の満腹感(減少した空腹感)における変化を定量化するための7日間の食事記録で追跡された。これらの評価は、各対象によって完了した食事日記を介して、埋め込みの前に、そして迷走神経ブロッキングの4週、12週、および6カ月後に実行された。各々の外来診察で、総カロリー摂取量のパーセントとしての炭水化物、脂肪およびタンパク質の定量を含む各々の7日間の食事記録は、栄養学者との詳細なインタビューの過程で確かめられた。食物での栄養およびカロリー内容を決定するための検証プログラム(Food WorksTM)が使われた。そのうえ、各々の外来診察で、標準的な水平(100mm)視覚的アナログスケール(VAS)によるアンケートは、1週間想起と24時間想起を用いて飽食感と満腹感を評価するのに使用された。
【0170】
2つのセンター(Flinders Medical Centre,Adelaide AustraliaおよびInstituto National de la Nutricion Mexico City,Mexico)での、迷走神経ブロッキングの12週後に行われた第2サブ試験(サブ試験B)において、標準的な偽食事負荷プロトコルが、迷走神経の下方制御を評価するために使われた。下方制御のエンドポイントは、偽食事負荷後の血漿膵ポリペプチド(血漿PP)応答の阻害として測定された。対象は、試験の前に少なくとも8時間断食するように指示された。2つのベースライン血漿サンプルは、5分おきに採取された血液サンプルによる「咀嚼および唾液分泌」法を用いて、−5分と−1分の、続いて20分の偽食事負荷におけるPPレベルのために得られた。対象は、膵臓分泌の栄養活性化を排除するために食物または唾液を飲み込むことを避けるよう指示された。血漿は−70℃で保存されて、PPレベルが標準的な放射性免疫検定法(Mayo Medical Laboratories,Rochester,MN,USA)により測定されるようにドライアイス上に移された。これらの対象(n=10)のサブセットは、また、計画された治療後12週間の試験を実施する前に、試験手順の実施に関するセンターの一般化の一部としての埋め込み前に偽食事負荷と血漿PPレベルを有した。
【0171】
(データと統計解析)
ベースライン特性や人口統計は、記述統計を使ってまとめられた。連続変数は、平均値と平均の対応する標準誤差(SEM)によってまとめられた。カテゴリ(バイナリを含む)変数は、頻度分布によってまとめられた。
【0172】
体重減少に対する効果を評価するための主要なエンドポイントは、特定の時点(4週と12週と6カ月)での平均過剰体重減少率(EWL%)であり、5%の有意水準での両側1標本t−検定のゼロと比較された。報告されたp値は、多重比較のために未調整であった。しかし、統計的有意性は、Hochbergの多重比較手順を適用した後に変更されなかった。さらに、混合モデルの反復測定回帰分析が実施され、経時的EWL%に関する処置の効果を評価した。
【0173】
心拍数と血圧の変化は、平均と標準誤差を使い経時的にまとめられた。ECG記録は、独立した中心的な研究室(Mayo Medical Laboratories,Rochester,MN,USA)により収集され、分析された。臨床化学的性質(アミラーゼ、リパーゼ、および血糖)が、収集されて、フォローアップの間、異常所見の頻度を分類別に測定するだけでなく、ベースラインからの平均変化に従って分析された。
【0174】
有害事象(AE)は、表にされて、報告された。演繹的な仮説が特定されなかったので、有害事象の正式な統計分析は、有害事象の発生率に関して実行されなかった。
【0175】
各食品の多量栄養素(炭水化物、タンパク質および脂肪)の組成率におけるベースラインからの変化は、各フォローアップ外来診察(4週と12週と6カ月)での両側1標本t−検定での、そしてまた混合モデルの反復測定回帰分析でのゼロと比較された。
【0176】
視覚的アナログスケール(VAS)によるアンケートは、飽食と満腹(減少した空腹)を評価するための各フォローアップ外来診察での各対象により終了した。ベースラインからの応答の平均変化(±標準誤差)は、各々の外来診察で計算された。
【0177】
偽食事負荷に応じる血漿PPレベルは、埋め込み前および迷走神経ブロッキングの12週後に、試験を受ける参加者の偽食事負荷への5、10、15および20分に、平均(±標準誤差)として計算された。25pg/ml(文献での異常な迷走神経機能のためのカットオフ値)より少ないまたは多い血漿PP増加を有する対象の割合が計算され、2群に対する平均体重減少が、両側無対応t−検定を用いて比較された。
【0178】
(結果)
(参加者、人口統計および外科的手順の結果)
31人の対象(平均体格指数41.2±0.7kg/m2;範囲33〜48)が装置を受け取った。人口統計(2型真性糖尿病対象を含む)は、表Iで示される。
【0179】
【表1】
装置の埋め込みによる主要な手術中の合併症はなかった。具体的には、我々は臓器穿孔、かなりの量の出血、術後腹腔内感染症、または電極移動あるいは組織浸食に遭遇しなかった。装置は、6カ月の研究の後、所定位置にそのままにされた。それらの参加者は、そのような装置のために安全なコホートの一部として継続して追跡され、そして、さらなる研究が装置の効力を最大にするように電気パラメータを変更できるかどうか決定するために行われている。
【0180】
(体重減少)
装置埋め込み後の4週と12週と6カ月における平均過剰体重減少は、それぞれ7.5%、11.6%および14.2%であった(すべての変化は、ベースラインと比較して有意であった。p<.0001)。治療の有益な全体的な効果は、全ての3つのセンターで観察された。図7は、中央値、四分位分布、および5番目と95番目のパーセンタイルを含むEWL変化率の分布を示し、個人データはこれらのパーセンタイルを越えたものに対してプロットされた。2、3の個人は、少しの体重も減らなかったのに対し、3人の患者が6カ月で>30%のEWLを有し、そして患者の4分の1は、>25%のEWLを有したことに留意されたい。
【0181】
(有害事象)
死亡、医療装置またはVBLOC療法に関連した重篤な有害事象(SAE)および予期しない不都合な装置の影響は、試験の期間中なかった。装置または迷走神経ブロッキング療法と無関係だったSAEを有する3人の対象は、短い入院を必要とした:1人は術後下気道感染症(1日の入院)、1人は皮下埋め込み部位の漿液腫(3日の入院)、そして1人は試験期間への2週間のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)下痢の症例(5日の入院)。これら3人のSAEは、完全に可逆性であったし、そして、患者は試験を継続した。
【0182】
外部のデータ安全監視委員会によって評価されるように、臨床的に有意な変化は、6ヵ月の試験の間、臨床化学またはECG所見においてなかった(データは示されていない)。非臨床的に有意であると見做された、心拍数と収縮期および拡張期の血圧(図8)における小さな減少があった。
【0183】
(カロリー摂取量、食品組成、飽食および満腹:サブ−試験A)
カロリー摂取量、食品組成、飽食および満腹(減少した空腹)における変化は、Flinders Medical Centre,Adelaide,Australiaでの外来診察と手順をサブ−試験Aの一部として終了した全10人の対象で評価された。カロリー摂取量は、4週と12週と6カ月(p<0.01、すべての時点、図9)で>30%減少した。炭水化物、タンパク質、および脂肪摂取量の相対的な量は、安定なままであった。さらに、24時間想起に基づくVASアンケートのデータは、6カ月の期間に、対象が主な食事で早期の飽食感(十分)を報告し(図10A、p.<0.001)、そして食間での満腹感(減少した空腹感)を高めること(図10B、p=0.005)を証明した。
【0184】
(迷走神経機能:サブ−試験B)
24人の被験患者は、サブ−試験Bの一部として断続的な迷走神経ブロッキングの12週後、偽食事負荷を終了した。埋め込み前に、偽食事負荷は、正常な血漿PP応答(≧25pg/mlのベースラインより上に増加:42±19pg/ml)をもたらした。迷走神経ブロッキングの12週後、20分でのPP応答が抑制され、そのため、血漿PPの増加は平均して<25pg/ml(20±7pg/ml)であった。鈍いPP応答(<25pg/ml)を有する対象のパーセントは、5、10、15と20分で、それぞれ88、79、71と67%であった。重要なことに、12週のデータのサブセット解析は、血漿PP上昇>25pg/ml(p=0.02、図11)を有した10人の患者と比較して、絶食の間、血漿PP上昇>25pg/mlを有しなかった14人の患者では、体重減少が有意に大きかったことを示した。
【0185】
(血糖コントロールの変化)
他の臨床試験研究と同様に、上記試験からの患者のサブセットは、標準的な方法を用いて、ヘモグロビンA1cが監視された。ベースラインで、10人の患者の平均は、8.2%HbA1cであった。4週後に、平均HbA1Cは、7.1%に低下した。4週という早い時期に、そして実質的な体重減少が観察される前に、改善が注目された。
【0186】
【表2】
(考察)
断続的な迷走神経ブロッキング(VBLOC療法)を送達する埋め込みシステムのこの臨床試験において、我々はEWL%で測定される安全性と有効性に関する初期データを本明細書で報告する。さらに、実施されたサブ−試験は、体重減少が減少したカロリー摂取量、食事の時のより早い飽食感および食間での高められた満腹感(減少した空腹感)と関係していることを示した。患者のサブセットは、4週という早い時期にHbA1cの有意な減少を示した。迷走神経阻害(偽食事負荷の過程での減少した血漿PP応答(<25pg/ml)により測定された)は、埋め込み後3カ月で証明されたが、これは、VBLOC療法によって送達された電気信号が迷走神経遮断を維持して、飽食と体重減少に関して臨床効果を誘導することができることを示唆した。
【0187】
EWLの大きさは、6カ月で1.2%から36.8%にわたり変動したが、これは、応答におけるばらつきと、そのような治療アプローチから利益を最大にする余地があることを示唆する。試験の全期間の間、不従順であった1人の被験対象の体重が増加したことは留意すべきである。この対象のコンプライアンスは、治療送達が6カ月の試験期間の間に処方されるそれの25%未満であるという事実に反映されるように不適切であると見做された。迷走神経ブロックに対する応答のばらつきは、電気処置を適用することの失敗(コンプライアンス)、迷走神経機能(偽食事負荷への血漿PP応答の準最適抑制で例示されるように)の「捕獲」における個人間の違い、および装置における技術的な要因(例えば、内部の神経調節装置と比べた外部コイルの位置の変動性)を含むいくつかの可能性を反映しうる。
【0188】
この試験において観察される体重減少は、明らかな停滞状態なしで6カ月のフォローアップまで進行した。体重に対するこの効果が、どんな介入ででも減量を増大しうる食事または行動の修正のさらなる利点なしで達成された点に注目することは重要である。我々は、非盲検試験であることを考慮すると、偽薬効果を完全に除外することができないけれども、減少したカロリー摂取量、食事の飽食までの時間および食間の空腹感が、処置の開始後早期に達成され、6カ月の試験期間中、維持され、そして、有意な継続された体重減少を伴ったので、我々は、偽薬効果はありそうもないと予想している。
【0189】
本試験は、VBLOC療法と関連した体重減少のためのメカニズムに関していくらかの洞察を提供する。迷走神経は、胃の適応、収縮および排出ならびに膵外分泌を含む消化管機能の複数の態様において、重要な役割を有する。また、迷走神経は、食物摂取と食欲に急性の強い効果を及ぼすことが知られている腸由来ホルモン類の放出で重要な役割を果たすとも報告されてきた。そのような迷走神経に制御されたホルモンの適例は、グレリンであり、これは、前腸で主に産生される食欲促進のペプチドである。グレリン濃度は、短期的な食物欠乏および/または体重減少で増加し、そして、食物摂取で急激に減少する。このように、グレリンは、食物摂取の予測的な役割があると信じられている。ラットでの双方の迷走神経切断術は、食物欠乏で引き起こされるグレリンレベルの予想された増加を完全に排除すると報告された。グレリン応答のこの排除は、それにより迷走神経ブロッキングが、減少した食物摂取と増大された飽食をもたらすメカニズムとなりうる。
【0190】
本明細書に記述されるように、適用される新規装置と電気信号の安全性は、唯一の顕著な合併症が、外科的手順またはクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)下痢に関連した3つの感染症であったという事実により支持され、そして、その全てが、独立したデータ安全性監視委員会によって装置自体とは無関係であると考えられた。主要な手術中の合併症はなかった。具体的には、我々は、臓器穿孔または大きな出血に遭遇しなかった。さらにまた、我々は、術後腹腔内感染症、電極移動または組織浸食を観察しなかった。
【0191】
心拍数と血圧の適度の減少などの心血管パラメータの変化は、体重減少そのものと一致しているように見え、そして、心血管危険因子に対する有害な効果も観察されなかった。現在のサンプルサイズは小さいが、迷走神経が胸部レベルの心血管系に関する副交感神経性緊張の著名な調節因子であるから、血圧や心拍数に対する好ましくない効果の明らかな欠如は、注目すべき重要な点である。断続的な迷走神経遮断は、横隔膜下レベルで適用される。実験的な動物試験は、また、少なくとも55日間のブタでの電気アルゴリズムの適用後に、迷走神経のWallerian変性または脱髄の組織学的証拠がないことを示している(データは示されていない)。さらに、迷走神経機能の抑制のための電気信号の適用(5分間の5kHz)が、急激な可逆性であることが示された;したがって、抑制アルゴリズムの停止の5分以内で、迷走神経のAδとC繊維の両方のベースラインと比較して、>75%の複合活動電位の回復がある。
【0192】
垂直胃形成術は、47kg/m2の平均BMIを有する69人の病的に太りすぎの患者に関して、幹迷走神経切断術を有する(30人の患者)または有しない(39人の患者)どちらかで実行された(Kral JG,Gortz L,Hermansson G,Wallin GS.Gastroplasty for obesity:Long−term weight loss improved by vagotomy.World J Surg 1993;17:75−9)。1年以上追随された患者では、迷走神経切断群は、迷走神経非切断患者の34%と比較して、51%の平均過剰体重減少(EWL)を有した。しかし、21人の患者の別々の長期シリーズでは、初期体重減少が維持されなかったのが観測された(Groetz L, Kral JB.A five− to eight−year follow−up study of truncal vagotomy as a treatment for morbid obesity.Proceedings,Third Annual Meeting,American Society for Bariatric Surgery,Iowa City,Iowa,18−20 June,1986,p.145)。齧歯動物における前臨床試験での外科的迷走神経切断の効果は、胃の適応の抑制が2週間ある間、後者の機能が4週の連続的迷走神経中断の後で回復したことを示唆する(Takahashi T,Owyang C.Characterization of vagal pathways mediating gastric accommodation reflex in rats.J Physiol 1997;504:479−88)。この適応の正確なメカニズムは、不明である。
【0193】
この臨床試験からの所見に基づいて、新規なプログラム可能な医療装置を用いる断続的な腹腔内迷走神経ブロッキングは、有意な過剰体重減少と望ましい安全性プロファイルの両方と関係していると結論することができる。さらにまた、試験データは、体重減少と迷走神経抑制の間の関係だけでなく、食間の減少した空腹感および食事での早い飽食を立証することにより断続的な腹腔内迷走神経ブロッキングの治療的な理論的根拠を支持する。さらに、患者のサブセットは、処置後4週間でHbA1cの有意な減少を示し、それは、血糖コントロールの増加を示唆する。これらの陽性の臨床結果は、無作為二重盲検式の前方視的マルチセンター試験の設計と実行につながった。
【0194】
本発明の前述した詳細な説明により、本発明の目的が好ましい方法でどのように達成されたかが示された。当業者が容易に思いつくかもしれないものなどの開示された概念の修正および均等物は、本明細書に添付される特許請求の範囲に含まれることを意図する。さらに、本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の組み合わせの適用を意図する。本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の適用により、神経活性を下方制御するための治療プログラムの適用を意図する。本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の適用により、神経活性を上方制御するための治療プログラムの適用を意図する。本開示は、1つ以上の神経、1つ以上の器官、およびその組み合わせでの電極の設置による電気信号治療の適用により、神経活性を下方制御および/または上方制御するための1つ以上の治療プログラムの適用を意図する。
【0195】
先行技術の教えに関連する本出願のセクションでは、先行技術特許からの明細書は、本発明の実施形態を容易に理解するために実質的に再生される。本出願の目的のために、それらの特許の情報の正確さは、独立した検証なしで受け入れられている。本明細書で参照されるどんな刊行物も、参照によって本明細書に取り込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖調節異常患者を治療するためのシステムであって、
埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続する少なくとも2つの電極であって、該電極のうちの1つは標的神経上に配置されるように適合されている、少なくとも2つの電極と、
パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールとを含む埋め込み型パルス発生器であって、該プログラム可能な治療送達モジュールは、1日に複数回、複数日にわたって該標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含む少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成され、該電気信号は、標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、該標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、埋め込み型パルス発生器と、
アンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含む外部コンポーネントであって、該プログラム可能な格納および通信モジュールは、少なくとも1つの治療プログラムを格納し、該少なくとも1つの治療プログラムを該埋め込み型パルス発生器に通信するように構成されている、外部コンポーネントと
を含むシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電極は、脾臓、胃、十二指腸、膵臓および回腸から選択される器官に配置されるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電極は、迷走神経、内臓神経、迷走神経の肝臓枝、迷走神経の腹腔枝およびその組み合わせから選択される標的神経に配置されるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、少なくとも200Hzの周波数を有する電気信号を送達するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、約30秒から5分のオン時間を有する電気信号を送達するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、約5分から30分のオフ時間を有する電気信号を送達するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プログラム可能な格納および通信モジュールは、前記埋め込み型パルス発生器に治療プログラムを送達するように構成され、該プログラムは、1日に複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含み、該電気信号は、前記標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、該標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プログラム可能な格納および通信モジュールは、1つより多くの治療プログラムを格納し、通信するように構成され、各治療プログラムは、互いに異なり、通信のために選択されるように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、第2の標的神経または器官に1日に複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含む第2の治療プログラムを送達するように構成され、該電気信号は、該第2の標的神経または器官の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、該第2の標的神経または器官の活性のベースラインレベルに対する少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の標的神経は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の標的器官は、十二指腸または回腸である、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続されているセンサーをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサーは、血糖の閾値レベルからの増加または減少を検出する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、センサーからの信号に応答して第2の治療プログラムを送達するように構成されている、請求項12〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記上方制御信号は、200Hz未満の周波数を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記オン時間は、約30秒〜15分である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記オフ時間は、約5〜45分である、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
対象の糖調節異常に関連する状態を治療する方法であって、
請求項1に記載のシステムを用いて、糖調節異常を有する対象の標的神経に断続的な電気信号を適用することを含み、
該電気信号は、神経の神経活性を下方制御し、該号の停止の際に神経の神経活性を回復するように選択される、方法。
【請求項19】
前記状態は、2型糖尿病である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電気信号は、グルコース調節を改善するために選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記電気信号は、信号を適用するオン時間と、それに続く、該信号が神経に適用されない間のオフ時間とを含むサイクルで断続的に適用され、該オンおよびオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたり適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記オン時間は、約30秒〜最大約5分の持続時間を有するように選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電気信号は、約200Hz〜5000Hzの周波数で適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記電気信号は、迷走神経に位置する電極に適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記電気信号は、迷走神経の肝臓枝に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記電気信号は、迷走神経の腹腔枝に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記電気信号は、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、またはその組み合わせに適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
上方制御の信号を第2の標的神経または器官に適用することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記下方制御および上方制御の信号は、同時にまたは異なる時間に適用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の標的神経は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の標的器官は、十二指腸または回腸である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
グルコースコントロールを改善する薬剤を投与することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤は、インスリンの量を増加させ、および/またはインスリンに対する細胞の感受性を増加させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記インスリンの量を増加させる薬剤が、インスリン、インスリン類似体、スルホニル尿素類、メグリチニド類、GLP−1類似体、およびDPP4阻害剤からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記インスリンに対する細胞の感受性を増加させる薬剤は、PPARα、γ、またはδアゴニストである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
糖尿病または糖尿病前症の治療法であって、
i)患者のために糖尿病またはグルコースコントロール障害を治療するための薬物を選択することであって、該患者に対する糖尿病または糖尿病前症を治療するための有効投薬量は、不愉快な副作用または血糖コントロール障害を伴う、ことと、
ii)糖尿病またはグルコースコントロール障害の該患者を同時治療により治療することと
を含み、
該同時治療は、
a)請求項1に記載のシステムを用いて、1日につき複数回、複数日にわたって該患者の標的神経に断続的な神経ブロックを適用することであって、該ブロックは、神経の求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御するように選択され、該神経活性は、該ブロックの停止の際に回復する、ことと、
b)該薬物を患者に投与することと
を含む、
治療法。
【請求項37】
GLP1、GIP、または両方の量を修正する方法であって、
請求項1に記載のシステムを用いて第1の断続的な電気信号を標的神経に適用することを含み、
該電気信号は、神経の神経活性を上方制御または下方制御し、該信号の停止の際に神経の神経活性を回復させるように選択され、該電気信号は、GLP1、GIP、または両方の量を修正するように選択される、方法。
【請求項38】
前記電気信号は、GLP1を増加させるために選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の電気信号は、信号を適用するオン時間と、それに続く、信号が神経に適用されない間のオフ時間とを含むサイクルで断続的に適用され、該オンおよびオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたり適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記オン時間は、約30秒〜約5分の持続時間を有するように選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記電気信号は、約1Hz〜5000Hzの周波数で適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記電気信号は、迷走神経に位置する電極に適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記電気信号は、迷走神経の肝臓枝に適用される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記電気信号は、迷走神経の腹腔枝に適用される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記電気信号は、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、またはその組み合わせに適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
第2の電気信号を第2の標的神経または器官に適用することをさらに含み、
該第2の電気信号は、神経活性を上方制御または下方制御するために、周波数、パルス幅、振幅およびタイミングについて選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記下方制御および上方制御の信号は、同時にまたは異なる時間に適用される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の標的神経は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の標的器官は、十二指腸または回腸である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
電気信号治療を適用すべきかどうかを決定するためにGLP1またはGIPのレベルを検出することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
グルコースコントロールを改善する薬剤を投与することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項52】
前記薬剤は、インスリンの量を増加させ、および/またはインスリンに対する細胞の感受性を増加させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記インスリンの量を増加させる薬剤は、インスリン、インスリン類似体、スルホニル尿素類、メグリチニド類、GLP−1類似体、およびDPP4阻害剤からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記インスリンに対する細胞の感受性を増加させる薬剤が、PPARα、γ、またはδアゴニストである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
糖調節異常患者を治療するためのシステムを作る方法であって、
少なくとも2つの電極を埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続することであって、該電極のうちの1つは標的神経に配置されるように適合されている、ことと、
埋め込み型パルス発生器のプログラム可能な治療送達モジュールを少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成することであって、該少なくとも1つの治療プログラムは、1日に複数回、複数日にわたって標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含み、該電気信号は、該標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、ことと、
該少なくとも1つの治療プログラムを格納し、該少なくとも1つの治療プログラムを該埋め込み型パルス発生器に通信するために、外部コンポーネントのプログラム可能な格納および通信モジュールを構成することと
を含む方法。
【請求項56】
前記埋め込み型パルス発生器のプログラム可能な治療送達モジュールを第2の治療プログラムを送達するように構成することをさらに含み、
該第2の治療プログラムは、1日に複数回、複数日にわたって、第2の標的神経または器官に断続的に適用される電気信号治療を含み、該電気信号は、該第2の標的神経または器官の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、ベースラインレベルに対する該第2の標的神経または器官の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
センサーを前記埋め込み型パルス発生器に接続することをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記センサーからの信号に基づいて、前記埋め込み型パルス発生器のプログラム可能な治療送達モジュールを前記第2の治療プログラムを送達するように構成することをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項1】
糖調節異常患者を治療するためのシステムであって、
埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続する少なくとも2つの電極であって、該電極のうちの1つは標的神経上に配置されるように適合されている、少なくとも2つの電極と、
パワーモジュールとプログラム可能な治療送達モジュールとを含む埋め込み型パルス発生器であって、該プログラム可能な治療送達モジュールは、1日に複数回、複数日にわたって該標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含む少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成され、該電気信号は、標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、該標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、埋め込み型パルス発生器と、
アンテナとプログラム可能な格納および通信モジュールを含む外部コンポーネントであって、該プログラム可能な格納および通信モジュールは、少なくとも1つの治療プログラムを格納し、該少なくとも1つの治療プログラムを該埋め込み型パルス発生器に通信するように構成されている、外部コンポーネントと
を含むシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電極は、脾臓、胃、十二指腸、膵臓および回腸から選択される器官に配置されるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電極は、迷走神経、内臓神経、迷走神経の肝臓枝、迷走神経の腹腔枝およびその組み合わせから選択される標的神経に配置されるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、少なくとも200Hzの周波数を有する電気信号を送達するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、約30秒から5分のオン時間を有する電気信号を送達するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、約5分から30分のオフ時間を有する電気信号を送達するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プログラム可能な格納および通信モジュールは、前記埋め込み型パルス発生器に治療プログラムを送達するように構成され、該プログラムは、1日に複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含み、該電気信号は、前記標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、該標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プログラム可能な格納および通信モジュールは、1つより多くの治療プログラムを格納し、通信するように構成され、各治療プログラムは、互いに異なり、通信のために選択されるように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、第2の標的神経または器官に1日に複数回、複数日にわたって断続的に適用される電気信号治療を含む第2の治療プログラムを送達するように構成され、該電気信号は、該第2の標的神経または器官の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、該第2の標的神経または器官の活性のベースラインレベルに対する少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の標的神経は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の標的器官は、十二指腸または回腸である、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続されているセンサーをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサーは、血糖の閾値レベルからの増加または減少を検出する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プログラム可能な治療送達モジュールは、センサーからの信号に応答して第2の治療プログラムを送達するように構成されている、請求項12〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記上方制御信号は、200Hz未満の周波数を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記オン時間は、約30秒〜15分である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記オフ時間は、約5〜45分である、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
対象の糖調節異常に関連する状態を治療する方法であって、
請求項1に記載のシステムを用いて、糖調節異常を有する対象の標的神経に断続的な電気信号を適用することを含み、
該電気信号は、神経の神経活性を下方制御し、該号の停止の際に神経の神経活性を回復するように選択される、方法。
【請求項19】
前記状態は、2型糖尿病である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電気信号は、グルコース調節を改善するために選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記電気信号は、信号を適用するオン時間と、それに続く、該信号が神経に適用されない間のオフ時間とを含むサイクルで断続的に適用され、該オンおよびオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたり適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記オン時間は、約30秒〜最大約5分の持続時間を有するように選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電気信号は、約200Hz〜5000Hzの周波数で適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記電気信号は、迷走神経に位置する電極に適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記電気信号は、迷走神経の肝臓枝に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記電気信号は、迷走神経の腹腔枝に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記電気信号は、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、またはその組み合わせに適用される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
上方制御の信号を第2の標的神経または器官に適用することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記下方制御および上方制御の信号は、同時にまたは異なる時間に適用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の標的神経は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の標的器官は、十二指腸または回腸である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
グルコースコントロールを改善する薬剤を投与することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤は、インスリンの量を増加させ、および/またはインスリンに対する細胞の感受性を増加させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記インスリンの量を増加させる薬剤が、インスリン、インスリン類似体、スルホニル尿素類、メグリチニド類、GLP−1類似体、およびDPP4阻害剤からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記インスリンに対する細胞の感受性を増加させる薬剤は、PPARα、γ、またはδアゴニストである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
糖尿病または糖尿病前症の治療法であって、
i)患者のために糖尿病またはグルコースコントロール障害を治療するための薬物を選択することであって、該患者に対する糖尿病または糖尿病前症を治療するための有効投薬量は、不愉快な副作用または血糖コントロール障害を伴う、ことと、
ii)糖尿病またはグルコースコントロール障害の該患者を同時治療により治療することと
を含み、
該同時治療は、
a)請求項1に記載のシステムを用いて、1日につき複数回、複数日にわたって該患者の標的神経に断続的な神経ブロックを適用することであって、該ブロックは、神経の求心性および/または遠心性の神経活性を下方制御するように選択され、該神経活性は、該ブロックの停止の際に回復する、ことと、
b)該薬物を患者に投与することと
を含む、
治療法。
【請求項37】
GLP1、GIP、または両方の量を修正する方法であって、
請求項1に記載のシステムを用いて第1の断続的な電気信号を標的神経に適用することを含み、
該電気信号は、神経の神経活性を上方制御または下方制御し、該信号の停止の際に神経の神経活性を回復させるように選択され、該電気信号は、GLP1、GIP、または両方の量を修正するように選択される、方法。
【請求項38】
前記電気信号は、GLP1を増加させるために選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の電気信号は、信号を適用するオン時間と、それに続く、信号が神経に適用されない間のオフ時間とを含むサイクルで断続的に適用され、該オンおよびオフ時間は、1日につき複数回、複数日にわたり適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記オン時間は、約30秒〜約5分の持続時間を有するように選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記電気信号は、約1Hz〜5000Hzの周波数で適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記電気信号は、迷走神経に位置する電極に適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記電気信号は、迷走神経の肝臓枝に適用される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記電気信号は、迷走神経の腹腔枝に適用される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記電気信号は、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、またはその組み合わせに適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
第2の電気信号を第2の標的神経または器官に適用することをさらに含み、
該第2の電気信号は、神経活性を上方制御または下方制御するために、周波数、パルス幅、振幅およびタイミングについて選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記下方制御および上方制御の信号は、同時にまたは異なる時間に適用される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の標的神経は、内臓神経または迷走神経の腹腔枝である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の標的器官は、十二指腸または回腸である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
電気信号治療を適用すべきかどうかを決定するためにGLP1またはGIPのレベルを検出することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
グルコースコントロールを改善する薬剤を投与することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項52】
前記薬剤は、インスリンの量を増加させ、および/またはインスリンに対する細胞の感受性を増加させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記インスリンの量を増加させる薬剤は、インスリン、インスリン類似体、スルホニル尿素類、メグリチニド類、GLP−1類似体、およびDPP4阻害剤からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記インスリンに対する細胞の感受性を増加させる薬剤が、PPARα、γ、またはδアゴニストである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
糖調節異常患者を治療するためのシステムを作る方法であって、
少なくとも2つの電極を埋め込み型パルス発生器に動作可能に接続することであって、該電極のうちの1つは標的神経に配置されるように適合されている、ことと、
埋め込み型パルス発生器のプログラム可能な治療送達モジュールを少なくとも1つの治療プログラムを送達するように構成することであって、該少なくとも1つの治療プログラムは、1日に複数回、複数日にわたって標的神経に断続的に適用される電気信号治療を含み、該電気信号は、該標的神経の活性を下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、標的神経の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、ことと、
該少なくとも1つの治療プログラムを格納し、該少なくとも1つの治療プログラムを該埋め込み型パルス発生器に通信するために、外部コンポーネントのプログラム可能な格納および通信モジュールを構成することと
を含む方法。
【請求項56】
前記埋め込み型パルス発生器のプログラム可能な治療送達モジュールを第2の治療プログラムを送達するように構成することをさらに含み、
該第2の治療プログラムは、1日に複数回、複数日にわたって、第2の標的神経または器官に断続的に適用される電気信号治療を含み、該電気信号は、該第2の標的神経または器官の活性を上方制御または下方制御するように選択された周波数を有し、該電気信号は、オン時間とオフ時間を有し、該オフ時間は、ベースラインレベルに対する該第2の標的神経または器官の活性の少なくとも部分的回復を可能とするように選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
センサーを前記埋め込み型パルス発生器に接続することをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記センサーからの信号に基づいて、前記埋め込み型パルス発生器のプログラム可能な治療送達モジュールを前記第2の治療プログラムを送達するように構成することをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−516177(P2011−516177A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503199(P2011−503199)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039420
【国際公開番号】WO2009/124233
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510261924)エンテロメディクス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039420
【国際公開番号】WO2009/124233
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510261924)エンテロメディクス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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