説明

糞便の質および/または排便回数を改変するための方法

動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを調整することにより、動物の糞便の質および/または排便回数を改変し、したがって改善する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の引照
[0001] 本出願は、米国仮特許出願No. 60/741,632(2005年12月2日出願)に基づく優先権を主張し、その開示内容を本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
[0002] 本発明は、一般に動物の糞便の質および/または排便回数を改変するための方法、特に動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを調整することにより、動物の糞便の質および/または排便回数を改変するための方法に関する。
【0003】
先行技術の記述
[0003] 糞便の質および排便回数は、一般に5つの要因により決まる:食物成分の消化性、繊維レベル、健康状態、活動レベル、および摂水量。これらの要因のバランスがとれている場合、糞便は一般に有形で硬く、濃色であり、臭気の発生が比較的少ない。これらの特性を示す糞便は良質の糞便とみなされる。これらの要因のバランスがとれていない場合、糞便は一般に軟質でゆるく、水様で、淡色であり、比較的強い臭気を発生する。これらの特性を示す糞便、特にゆるい水様の糞便は質の劣る糞便とみなされる。
【0004】
[0004] 質の劣る糞便および不規則な糞便回数は、多様な要因で生じる可能性がある:たとえば異常な腸運動性、腸透過性の亢進、腸内に非吸収性の浸透圧活性物質が存在すること、または下痢を引き起こす薬剤。ある動物飼料、特に当技術分野でチャンク・アンド・グレービー(chunk and gravy)動物飼料として知られているものも、質の劣る糞便の原因となる可能性がある。そのような飼料を摂取している動物はしばしば、不規則な望ましくない排便を伴う。そのような排便は一般に、頻繁なゆるい水様糞便を特徴とする。場合によってはこの排便を下痢と分類することができる。
【0005】
[0005] 糞便の質および排便回数を管理するための方法は、下痢に対処する薬物の使用、および糞便の質に影響を与える組成物に注目している。たとえばUS 6280779では、正常な腸の健康状態を維持し、許容できる質の糞便の生成を促進するのに有用な、化学修飾したデンプンおよびガムを含有する食物が考察されている;WO 05063271 A1では、薬草組成物を用いて胃腸障害を治療し、糞便の質に影響を与えることが考察されている;US 5919760では、オクトレオチド(octreotide)を用いて下痢を治療することが考察されている;WO 9625940 A1には、下痢を治療するためにニンジン、コメ、バナナおよびグルコースを含む組成物を用いることが開示されている。これらの方法は有用ではあるが、糞便の質および排便回数を改変し、したがって改善するための新規な方法および組成物がなお求められている。
【0006】
発明の概要
[0006] したがって本発明の目的は、動物の糞便の質を改善するための方法を提供することである。
【0007】
[0007] 本発明の他の目的は、動物の排便回数を改変するための方法を提供することである。
[0008] 本発明の他の目的は、糞便の質および/または排便回数を改変および改善するのに適切なキットの形の製品を提供することである。
【0008】
[0009] 本発明のさらに他の目的は、本発明の方法およびキットならびに糞便の質および/または排便回数を改変および改善するためのそれらの使用に関する情報を伝達するための手段を提供することである。
【0009】
[0010] これらおよび他の目的は、動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランス(比率)を、動物の糞便の質および/または排便回数を改変し、したがって改善するのに十分な量だけ、調整することにより達成される。カチオン、アニオン、食物、配合物、指示および器具の組合わせを含む、糞便の質および/または排便回数を改変するのに有用なキットも提供される。
【0010】
[0011] 本発明のさらに他の目的、特色および利点は、本明細書を読むことにより当業者に容易に認識されるであろう。
発明の詳細な記述
[0012] 1観点において本発明は、動物の糞便の質を改善する方法を提供する。他の観点において本発明は、動物の排便回数を改変する方法を提供する。これらの方法は、動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを、糞便の質および/または排便回数を改変するのに十分な量だけ調整することを含む。
【0011】
[0013] 用語”動物”は、質の劣る糞便および/または不規則な排便回数の状態に罹患しやすいか、または罹患している、いずれかの動物を意味する。動物がある状態または疾患を発現する可能性があることの指標となる症状を示す場合、その動物はその疾患または状態”に罹患しやすい(susceptible to)”。動物がある状態または疾患を発現していることの指標となる症状を示す場合、その動物はその疾患または状態”に罹患している(suffering from)”。
【0012】
[0014] 本発明方法はヒトおよびヒト以外の多様な動物に有用であり、これには鳥類、ウシ類、イヌ類、ウマ類、ネコ類、ヤギ類、ネズミ類、ヒツジ類、およびブタ類などの動物が含まれ、特に愛玩動物、たとえばイヌ類およびネコ類に有用であり、これにはイヌおよびネコが含まれる。ある態様において、動物は食肉目(Carnivora)のメンバーである。そのようなある態様において動物はイヌ類であり、そのような他の態様において動物はネコ類である。ある態様において、動物は愛玩動物である。愛玩動物は、たとえばペットとして飼育されているいずれかの種の動物であってもよい。愛玩動物は、広く家畜化されてきた多様な種の動物、たとえばイヌ(家犬、Canis familiaris)およびネコ(家猫、Felis domesticus)であってもよく、その動物が専らペットとして飼育されているか否かに関係ない。したがって、愛玩動物には、たとえば作業犬、げっ歯類駆除のために飼育されているネコ、ならびにペットのネコおよびイヌが含まれる。
【0013】
[0015] 本発明に有用なカチオンおよびアニオンは、動物が摂取するのに適切ないかなるカチオンまたはアニオンであってもよい。1態様において、代謝性カチオンはカルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムよりなる群から選択され、代謝性アニオンはリン、塩化物および硫黄よりなる群から選択される。
【0014】
[0016] 代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスは、当業者に既知のいずれかの手段で測定できる。たとえば、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを測定するための1方法は、動物の食事カチオン-アニオンバランス(dietary cation-anion balance、DCAB)を計算することである;これは、動物が通常摂取するカルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの累積量を計算し、動物が通常摂取するリン、塩化物および硫黄の累積量を差し引くことにより判定される。Baker et al., ネコおよびイヌの栄養比較, Ann. Rev. Nutr. 11:239-63 (1991)を参照。
【0015】
[0017] 動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスの調整において、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを高めると、より硬い質の糞便になり、排便量が減少することが一般に認められた。逆に、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを低下させると、よりゆるい糞便になり、排便量が増加するであろう。
【0016】
[0018] 動物がゆるい糞便および/または頻繁な排便の状態に罹患しやすいまたは罹患しているある態様において、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを高めることにより糞便の質および排便回数を改善して、動物の糞便をより硬くし、および/または排便量を減少させることができる。そのような態様においては、動物が通常摂取するリン、塩化物および硫黄の累積量に対比して、動物が通常摂取するカルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの累積量を増加させることにより、アニオンに対するカチオンのバランスを高めることができる。たとえば、動物の食事による、過剰のカルシウム、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウムのカチオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を増加させることにより、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを高めることができる。同様に、動物の食事による、過剰の塩化物、リンまたは硫黄のアニオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を減少させることにより、バランスを高めることができる。
【0017】
[0019] 動物が便秘に罹患しやすいか、または罹患している他の態様において、動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを低下させることにより糞便の質および/または排便回数を改善して、動物の糞便をよりゆるくし、および/または排便量を増加させることができる。そのような態様において、動物が通常摂取するリン、塩化物および硫黄の累積量に対比して、動物が通常摂取するカルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの累積量を減少させることにより、アニオンに対するカチオンのバランスを低下させることができる。たとえば、動物の食事による、過剰のカルシウム、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウムのカチオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を減少させることにより、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを低下させることができる。同様に、動物の食事による、過剰のリン、塩化物または硫黄のアニオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を増加させることにより、このバランスを低下させることができる。
【0018】
[0020] ある態様において、動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスは、糞便の質を改変する量の1種類以上の代謝性カチオンまたは代謝性アニオンを含む組成物を動物に与えることにより調整できる。そのような組成物には、動物が摂取するのに適切な1種類以上の成分を含有する食物組成物を含めることができる。ある態様において、食物組成物は乾燥食物(すなわち、約3〜約11%の水を含有する食物)を含む。他の態様において、食物組成物は半湿潤食物(すなわち、約25〜約35%の水を含有する食物)を含む。ある態様において、食物組成物は湿潤食物(すなわち、約60%から約87%を超える水を含有する食物)を含む。ある態様において、食物組成物にはおやつ(褒美、treat)、スナック、サプリメント、または部分的もしくは完全に食べられる玩具が含まれる。
【0019】
[0021] ある態様において、動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスは、1種類以上の下痢止め薬または1種類以上の抗便秘薬の投与と併せて調整できる。用語”下痢止め薬”は、下痢を予防または治療するのに有用ないずれかの配合物、組成物または薬物を意味する。用語”抗便秘薬”は、便秘を予防または治療するのに有用ないずれかの配合物、組成物または薬物を意味する。
【0020】
[0022] ある態様において、動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスは、プロバイオティック(probiotic)およびプレバイオティック(prebiotic)よりなる群から選択される胃腸管を改善する作用物(agent)を含む1種類以上の組成物の投与と併せて調整できる。プロバイオティックは、摂取した場合に特定の病的状態の予防および治療に有益な効果をもつ生存微生物である。プロバイオティックは、定着抵抗性(colonization resistance)として知られる現象により生物学的作用を及ぼすと考えられている。プロバイオティックは、嫌気性常在細菌叢が潜在的に有害な(大部分は好気性)細菌の消化管内濃度を制限するプロセスを促進する。他の作用様式、たとえば胃腸管内での酵素の供給または酵素活性への影響も、プロバイオティックに起因するとされている他の機能のうちあるものを説明することができる。
【0021】
[0023] プレバイオティックは、結腸内の細菌の増殖および/または活性を選択的に刺激することによりホストの健康に有益な効果を与える非消化性食物成分である。プレバイオティックであるフルクトオリゴ糖(FOS)は、コムギ、タマネギ、バナナ、蜂蜜、ガーリックおよびリーキ(セイヨウニラネギ、leek)など多数の食物中に天然にみられる。FOSはチコリ(キクニガナ、chicory)根から単離することもでき、あるいはショ糖から酵素合成することもできる。FOSが結腸内で発酵すると、結腸内のビフィズス菌数の増加、カルシウム吸収の増大、糞便重量の増加、胃腸内通過時間の短縮、およびおそらく血中脂質濃度の低下を含めた、多数の生理的効果が得られる。ビフィズス菌の増加は、潜在病原体を阻害する化合物の産生、血中アンモニア濃度の低下、ならびにビタミンおよび消化酵素の産生により、ヒトの健康に有益であると推定されている。プロバイオティック細菌、たとえば乳酸杆菌属(Lactobacilli)またはビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌、Bifidobacteria)の菌は、腸管微生物バランスを改善して抗体産生および白血球の食細胞(食いつくす、または殺す)活性を高めることにより、免疫応答にプラスの影響を与えると考えられている。ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)は、高齢者において細胞性免疫のある面を増強するのに有効なプロバイオティック食事サプリメントとなる可能性がある。
【0022】
[0024] プロバイオティックは全身の細胞性免疫応答を増強し、他の点では健康な成体の自然免疫を追加免疫する食事サプリメントとして使用できる。プロバイオティックには多数のタイプの細菌が含まれるが、一般に4つの細菌属から選択される:アシドフィルス菌(好酸性乳酸杆菌、Lactobacilllus acidophilus)、ビフィドバクテリウム属、ラクトコッカス属(Lactococcus)およびペディオコッカス属(Pediococcus)。動物に投与するプロバイオティックおよびプレバイオティックの量は、プロバイオティックおよびプレバイオティックのタイプおよび性質、ならびに動物のタイプおよび性質、たとえば年齢、体重、全般的健康状態、性別、微生物枯渇の程度、有害細菌の存在、ならびに動物の食事に基づいて、当業者により決定される。一般にプロバイオティックは、腸管微生物叢を健全に維持するために一日当たり約10億〜約200億コロニー形成単位(CFU)の量、好ましくは一日当たり約50億〜約100億個の生菌数で動物に投与される。一般にプレバイオティックは、健全な腸管微生物叢にプラスの刺激を与えてこれらの”善玉”細菌を増殖させるのに十分な量で投与される。一般的な量は、1回当たり約1〜約10g、または動物について推奨される一日の食事性繊維の約5〜約40%である。
【0023】
[0025] 他の観点において本発明は、糞便の質を改変する量または排便回数を改変する量の少なくとも1種類の代謝性カチオンまたは代謝性アニオンを含む、糞便の質および/または排便回数を改変するのに適切なキットを提供する。ある態様において、キットはさらに、1種類以上の下痢止め薬または抗便秘薬、ならびに/あるいはプロバイオティックおよびプレバイオティックよりなる群から選択される1種類以上の胃腸管を改善する作用物を含む。ある態様において、キットはさらに、下記のうち1以上に関する指示を含む:(1)動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを調整するための組成物を動物に与えること、あるいは(2)下痢止め薬、抗便秘薬または胃腸管を改善する作用物を、動物の糞便の質または排便回数を改変するための組成物と併せて投与すること。
【0024】
[0026] ある態様においてキットは、キット構成要素に適合させて単一パッケージ内の別個の容器中または仮想パッケージ内の別個の容器中に、糞便の質を改変する量および/または排便回数を改変する量の、代謝性カチオンまたは代謝性アニオンを含む少なくとも1種類の成分、ならびに下記のうち少なくとも1つを含む:(1)各種の代謝性カチオンまたは代謝性アニオンを含む成分;(2)動物が摂取するための1種類以上の成分;(3)プロバイオティックおよびプレバイオティックよりなる群から選択される1種類以上の胃腸管を改善する作用物;(4)1種類以上の下痢止め薬;(5)1種類以上の抗便秘薬;(6)1以上の関連キット構成要素を組み合わせて糞便の質および/または排便回数を改変するのに有用な組成物を調製するための指示;ならびに(7)糞便の質および/または排便回数を改変するために1以上のキット構成要素を使用することに関する指示。
【0025】
[0027] 用語”単一パッケージ”は一般に、キットの構成要素が1以上の容器内に、または容器により、物理的にまとめられており、製造、流通、販売または使用のための単位とみなされることを意味する。容器にはバッグ、ボックス、ボトル、収縮ラップパッケージ、ホチキス留めその他の形で固定された構成要素、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。単一パッケージは、たとえば容器または個々の食物組成物が製造、流通、販売または使用のための単位とみなされる状態で物理的にまとめられたものであってもよい。用語”仮想パッケージ”は一般に、キットの構成要素が、1以上の物理的または仮想のキット構成要素に関して構成要素を入手する方法を利用者に指示する指令によりまとめられていることを意味する;たとえば下記のものを収容したバッグ:1つの構成要素、およびキットの使用方法に関する指示を得るために、ウェブサイトを訪れる、記録されたメッセージに接触する、ビジュアルメッセージを見る、または医療関係者もしくはインストラクターと連絡をとるように利用者に指令する指令。キットが仮想パッケージを含む場合、キットは1以上の物理的キット構成要素を含む仮想環境における指示に限定される。
【0026】
[0028] 他の観点において本発明は、(1)動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを糞便の質の改変および/または排便回数の改変のために使用すること、(2)代謝性カチオンおよび代謝性アニオンを本発明に述べる他の成分と混合すること、(3)代謝性カチオンおよび代謝性アニオンを、単独で、または本発明に述べる他の要素と組み合わせて、動物に投与すること、ならびに(4)本発明のキットを糞便の質の改変および/または排便回数の改変のために使用することのうち1以上に関する情報または指示を伝達するための手段であって、これらの情報または指示を収容した文書、ディジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーションまたはビジュアルディスプレーを含む手段を提供する。特定の態様において伝達手段は、これらの情報または指示を収容した文書、ディジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーションまたはビジュアルディスプレーを含む。好ましくは、伝達手段はこれらの情報または指示を収容した表示されたウェブサイト、またはパンフレット、製品ラベル、パッケージ挿入物、広告、またはビジュアルディスプレーである。有用な情報または指示には、たとえば(1)本発明に述べる組成物、方法またはキットの使用方法に関する情報および指示、ならびに(2)動物の介護者に本発明およびそれの使用に関する質問がある場合のための連絡情報が含まれる。
【0027】
[0029] さらに他の観点において本発明は、医薬を調製するための、代謝性カチオンおよび代謝性アニオンよりなる群から選択される糞便の質を調整する量の少なくとも1種類の成分を含む組成物の使用を提供する。他の観点において本発明は、糞便の質の改変または排便回数の改変に用いる医薬を調製するための、そのような組成物の使用を提供する。一般に医薬は、配合物または組成物を、動物に投与するのに適切な医薬の製造および医薬の配合に有用なことが当業者に知られている賦形剤、緩衝剤、結合剤、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤、滑沢剤、着香剤、湿潤剤、および他の成分と混合することにより製造される。
【0028】
実施例
[0030] 以下の実施例により本発明をさらに説明することができるが、これらの例は説明のために含まれるにすぎず、別途明示しない限り、本発明の範囲を限定するためのものではないことは理解されるであろう。
【0029】
実施例1
[0031] 70匹のイヌを、各グループ10匹を含む7グループの1つにランダムに配属した。各グループに、代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスが異なるものを含有するように配合した7種類の飼料のうちの1つを与えた。代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの累積量から塩化物、硫黄およびリンの累積量を差し引いたものを含む前記のDCABとして計算された。イヌにこれらの飼料を7日間与え、その間にイヌの糞便を採集し、採点した。各糞便試料を1〜5の尺度で採点した;1は水様のゆるいもの、5は理想的なものである。
【0030】
[0032] 各飼料の栄養素分析、各飼料の平均糞便評点、および各飼料について採点した糞便数を示す結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
乾燥物質基準
DCAB = (ナトリウム+カリウム+カルシウム+マグネシウム)-(塩化物+硫黄+リン)
糞便評点を1から5までランク付けした;1は水様のゆるいもの、5は理想的なものである
7日間にわたって採点した糞便数。
【0033】
[0033] これらの結果は、飼料中の代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスがイヌの糞便の質および排便回数に直接に関連していたことを示す。代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランス、すなわちDCABが高い飼料を与えたイヌほど、糞便の質の改善の指標となる高い糞便評点、および糞便回数の減少の指標となる少ない糞便数を示した。
【0034】
[0034] 本明細書には、本発明の代表的な好ましい態様を開示し、特定の用語を用いたが、それらは一般的な説明の意味で用いたにすぎず、限定のためのものではない。明らかに、以上の教示からみて本発明の多数の改変および変更が可能である。したがって、特許請求の範囲の記載の範囲内で、具体的に記載した以外の形で本発明を実施できることを理解すべきである。
【0035】
[0035] 本明細書および特許請求の範囲で用いる単数形には、そうではないことが状況から明示されない限り、複数表示が含まれる。用語”含む(comprise、comprises、comprising)”は除外ではなく包括と解釈すべきである。
【0036】
[0036] 別途定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語および科学用語および頭字語は、本発明の分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味をもつ。本明細書に記載したものと類似または均等な組成物、方法、キットおよび情報伝達手段をいずれも本発明の実施に使用できるが、好ましい組成物、方法、キットおよび情報伝達手段を本明細書に記載する。
【0037】
[0037] 前記に引用したすべての参考文献を、法律が許す範囲で本明細書に援用する。これらの参考文献の考察はそれらの著者による主張をまとめるためのものにすぎない。いずれかの参考文献(またはいずれかの参考文献の一部)が関連の先行技術であると認めてはいない。本発明者らは引用したいずれの参考文献の正確さおよび妥当性に対しても反論する権利を保有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを、糞便の質を改善するのに十分な量で調整することを含む、糞便の質を改善する方法。
【請求項2】
代謝性カチオンが、カルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムよりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
代謝性アニオンが、リン、塩化物および硫黄よりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを高めることにより糞便の質を改善する、請求項1の方法。
【請求項5】
動物が通常摂取するリン、塩化物および硫黄の累積量に対比して、動物が通常摂取するカルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの累積量を増加させることにより、バランスを高める、請求項4の方法。
【請求項6】
動物の食事による、過剰のカルシウム、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウムのカチオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を増加させることにより、バランスを高める、請求項4の方法。
【請求項7】
動物の食事による、過剰のリン、塩化物または硫黄のアニオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を減少させることにより、バランスを高める、請求項4の方法。
【請求項8】
さらに、1種類以上の胃腸管を改善する作用物および1種類以上の下痢止め薬よりなる群から選択される少なくとも1種類の配合物を動物に投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを低下させることにより糞便の質を改善する、請求項1の方法。
【請求項10】
動物が通常摂取するリン、塩化物および硫黄の累積量に対比して、動物が通常摂取するカルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの累積量を減少させることにより、バランスを低下させる、請求項9の方法。
【請求項11】
動物の食事による、過剰のカルシウム、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウムのカチオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を減少させることにより、バランスを低下させる、請求項9の方法。
【請求項12】
動物の食事による、過剰のリン、塩化物または硫黄のアニオンを含む少なくとも1種類の組成物の摂取を増加させることにより、バランスを低下させる、請求項9の方法。
【請求項13】
さらに、1種類以上の胃腸管を改善する作用物および1種類以上の抗便秘薬よりなる群から選択される少なくとも1種類の配合物を動物に投与することを含む、請求項9の方法。
【請求項14】
動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを、排便回数を改善するのに十分な量だけ調整することを含む、排便回数を改変する方法。
【請求項15】
代謝性カチオンが、カルシウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムよりなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
代謝性アニオンが、リン、塩化物および硫黄よりなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項17】
代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを高めることにより排便回数を減少させる、請求項14の方法。
【請求項18】
代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを低下させることにより排便回数を増加させる、請求項14の方法。
【請求項19】
さらに、胃腸管を改善する作用物、下痢止め薬および抗便秘薬よりなる群から選択される少なくとも1種類の配合物を動物に投与することを含む、請求項14の方法。
【請求項20】
キット構成要素に適合させて単一パッケージ内の別個の容器中または仮想パッケージ内の別個の容器中に、糞便の質を改変する量および/または排便回数を改変する量の少なくとも1種類の代謝性カチオンまたは代謝性アニオン、ならびに(1)各種の代謝性カチオンまたは代謝性アニオンを含む成分;(2)動物が摂取するための1種類以上の成分;(3)プロバイオティックおよびプレバイオティックよりなる群から選択される1種類以上の胃腸管を改善する作用物;(4)1種類以上の下痢止め薬;(5)1種類以上の抗便秘薬;(6)1以上の関連キット構成要素を組み合わせて糞便の質および/または排便回数を改変するのに有用な組成物を調製するための指示;ならびに(7)糞便の質および/または排便回数を改変するために1以上の関連キット構成要素を使用することに関する指示のうち少なくとも1つを含む、糞便の質および/または排便回数を改変するのに適切なキット。
【請求項21】
(1)動物が摂取する代謝性アニオンに対する代謝性カチオンのバランスを糞便の質の改変および/または排便回数の改変のために使用すること、(2)代謝性カチオンおよび代謝性アニオンを本発明の他の成分と混合すること、(3)代謝性カチオンおよび代謝性アニオンを、単独で、または本発明の他の要素と組み合わせて、動物に投与すること、ならびに(4)本発明のキットを糞便の質の改変および/または排便回数の改変のために使用することのうち1以上に関する情報または指示を伝達するための手段であって、これらの情報または指示を収容した文書、ディジタル記憶媒体、オーディオプレゼンテーションまたはビジュアルディスプレーを含む手段。
【請求項22】
表示されたウェブサイト、パンフレット、製品ラベル、パッケージ挿入物、広告、表示されたウェブサイト、およびビジュアルディスプレーよりなる群から選択される、請求項21の手段。
【請求項23】
糞便の質の改変または排便回数の改変に用いる医薬を調製するための、代謝性カチオンおよび代謝性アニオンよりなる群から選択される糞便の質または排便回数を改変する量の少なくとも1種類の成分を含む組成物の使用。

【公表番号】特表2009−518015(P2009−518015A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543597(P2008−543597)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/061571
【国際公開番号】WO2007/065172
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】