説明

糸貯留装置

【課題】 大型化することなく、貯留できる線材の貯留量を増大させた糸貯留装置の提供を目的とする。
【解決手段】 線材Yが巻き付けられる貯留部12と、貯留部12に線材Yを巻き付ける巻付機構13と、を備え、貯留部12は、貯留部12の内外方向に層状に配置される複数の巻付部を備えることを特徴とする糸貯留装置とする。線材を各層の巻付部に巻き付けることができるため、糸貯留装置を大型化することなく、貯留できる線材Yの貯留量を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する線材を一時的に貯留する糸貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば線材の巻き返しを行ってパッケージを形成するワインダーや、繊維束を紡績糸にした上で巻き取ってパッケージを形成する紡績機、あるいは織機といった繊維機械等には、糸貯留装置が用いられている。糸貯留装置として、線材を貯留するためのドラムを有し、上流側からの線材をドラムに巻き付けながら下流側に巻き出し、走行する線材をドラム上に一時的に貯留するものが知られている(特許文献1、2参照。)。
【0003】
ところで近年、繊維機械等の高速化が進んでおり、線材が走行する速度が増大している。これに伴い、糸貯留装置の容量を増大させ、貯留できる線材の貯留量を増大することが求められている。ドラムに線材を重ねて巻くと線材の巻付け量は増加するものの、線材を巻き出せなくなるため、糸貯留装置のドラムには線材の上に線材を重ねて巻くことはできない。このため、糸貯留装置の容量を増大させるためには、ドラムの表面積を増大させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表昭59−500975号公報
【特許文献2】特開昭58−203145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドラムを単に軸方向や径方向に大型化することでドラムの表面積を大きくすると、糸貯留装置が大型化することとなり、ひいては繊維機械等が大型化することとなる。このため糸貯留装置を設置するスペースの限られる繊維機械等では、糸貯留装置の容量を増大させることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、大型化することなく、貯留できる線材の貯留量を増大させた糸貯留装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、糸貯留装置であって、
線材が巻き付けられる貯留部と、
前記貯留部に線材を巻き付ける巻付機構と、を備え、
前記貯留部は、前記貯留部の内外方向に層状に配置される複数の巻付部を備えることを特徴とする糸貯留装置である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記巻付機構は、前記各巻付部の周囲を周回して、線材を前記各巻付部に巻き付ける線材送出部を備える。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記巻付機構は、
前記線材送出部が周回する位置を切り換えて、線材が巻き付けられる前記巻付部を切り換える切換点を有し、
前記線材送出部の周回毎に、線材が巻き付けられる前記巻付部を前記切換点にて切り換える。
【0011】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記巻付機構は、
前記線材送出部を前記貯留部の内外方向に移動自在に保持するとともに、前記貯留部の周方向に回転させる第1回転部と、
前記線材送出部を前記貯留部の内外方向に案内する基部と、
を備える。
【0012】
第5の発明は、第2又は第3の発明において、前記巻付機構は、
前記貯留部の周方向に回転する第2回転部と、
前記第2回転部に設けられ、前記貯留部の周囲を周回する毎に、所定の角度だけ自転する第3回転部を備え、
前記線材送出部は、前記第3回転部の自転軸から離隔した位置に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
第1の発明によれば、貯留部は、貯留部の内外方向に層状に配置される複数の巻付部を備えるため、線材を各層の巻付部に巻き付けることができる。このため、糸貯留装置を大型化することなく、貯留できる線材の貯留量を増大させることができる。
【0015】
第2の発明によれば、巻付機構は、各巻付部の周囲を周回して、線材を各巻付部に巻き付ける線材送出部を備えるため、巻付機構により線材を各層の巻付部に巻き付けることができる。このため、糸貯留装置を大型化することなく、貯留できる線材の貯留量を増大させることができる。
【0016】
第3の発明によれば、巻付機構は、線材送出部が周回する位置を切り換えて、線材が巻き付けられる巻付部を切り換える切換点を有し、線材送出部の周回毎に、線材が巻き付けられる巻付部を切換点にて切り換えるため、巻付部を切り換える度に、線材のクロス部分が形成される。これにより、線材が重なって巻き付けられることがなく、線材を巻き出せなくなるトラブルを防止することができる。
【0017】
第4の発明によれば、巻付機構は、線材送出部を貯留部の内外方向に移動自在に保持するとともに、貯留部の周方向に回転させる第1回転部と、線材送出部を貯留部の内外方向に案内する基部と、を備えるため、線材送出部は基部で案内されて各巻付部の周囲を周回することができ、線材を各層の巻付部に巻き付けていくことができる。
【0018】
第5の発明によれば、巻付機構は、貯留部の周方向に回転する第2回転部と、第2回転部に設けられ、貯留部の周囲を周回する毎に、所定の角度だけ自転する第3回転部を備え、線材送出部は、第3回転部の自転軸から離隔した位置に設けられているため、第3回転部の周回と自転により線材送出部が各巻付部の周囲に案内され、線材を各層の巻付部に巻き付けていくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る糸貯留装置11の一部を省略した斜視図。
【図2】糸貯留装置11の平面図。
【図3】図2の3−3線で切断した端面の簡略図。
【図4】線材送出部52が第1巻付部61の周囲と第2巻付部71の周囲とを切り換えながら周回する状態を示す平面図。
【図5】糸貯留装置11に線材Yが貯留された状態を示す斜視図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る糸貯留装置11の一部を省略した斜視図。
【図7】糸貯留装置11の平面図。
【図8】図7の8−8線で切断した端面の簡略図。
【図9】線材送出部52が第11巻付部76の周囲と第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回する状態を示す平面図。
【図10】第21巻付部91、第22巻付部92、第23巻付部93の周囲を切り換えながら線材送出部52が周回する軌跡を示す平面簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施の形態に係る糸貯留装置11について図を用いて説明する。図1は糸貯留装置11の一部を省略した斜視図、図2は糸貯留装置11の平面図、図3は図2の3−3線で切断した端面の簡略図を示している。まず糸貯留装置11の構成について概略を説明すると、図1、図2に示すように、糸貯留装置11は、貯留部12と巻付機構13とを備えている。貯留部12は線材Yが巻き付けられるものであり、巻付機構13は貯留部12に線材Yを巻き付けるものである。
【0021】
図3に示すように、糸貯留装置11は、駆動源14により回転する軸15を備え、この軸15に対して貯留部12と基部21とが回転自在に支持される。基部21は糸貯留装置11を繊維機械等に取り付ける部材でもあり、軸15が回転しても静止状態を保つ。貯留部12と基部21には、互いに吸着しあう磁石対(図示せず)が設けられており、貯留部12は軸15が回転しても基部21と共に静止状態が保たれるようになっている。巻付機構13の第1回転部31は軸15に固定されており、軸15と共に回転する。移動部51は貯留部12の内外方向に移動自在となるように第1回転部31に保持されている。移動部51には線材送出部52が設けられており、線材Yは軸15の端部から通路34を介して線材送出部52まで案内されている。移動部51にはシュー55が設けられており、基部21にはシュー55を案内するカム溝22が形成されている。カム溝22は、移動部51に設けられた線材送出部52が第1巻付部61の周囲と、第2巻付部71の周囲とを切り換えながら周回するように形成されている。
【0022】
糸貯留装置11は概略このような構成であり、軸15が回転すると、第1回転部31及び移動部51が軸15回りに回転する一方、貯留部12及び基部21は静止状態を保つ。移動部51に設けられた線材送出部52は、基部21のカム溝22に案内されて第1巻付部61の周囲と、第2巻付部71の周囲とを切り換えながら周回し、上流側から走行する線材Yを第1巻付部61と第2巻付部71とに切り換えながら巻き付けていく。一方、先に貯留部12に巻き付けられた線材Yは、後から巻き付けられた線材Yに押し上げられるように貯留部12の自由端側(図3において図示上方)に移動していき、下流側に巻き出されていく。このようにして走行する線材Yが糸貯留装置11の貯留部12に一時的に貯留される。以下、糸貯留装置11の各部の構成についてより詳細に説明する。
【0023】
図1、図2に示すように、貯留部12の第1巻付部61は、複数の第1線材支持体64を備えており、第2巻付部71は、複数の第2線材支持体74及び第3線材支持体75を備えている。複数の第1線材支持体64の外側の縁部と、複数の第2線材支持体74及び第3線材支持体75の外側の縁部とが、それぞれ線材Yが巻き付けられる部分となる。従って、第1巻付部61と第2巻付部71とは、線材Yが貯留される部分が貯留部12の内外方向に重なるように、層状に配置されていることとなる。尚、層状に配置される、とは、複数の巻付部が互いに完全に内外方向に重なる状態と、複数の巻付部が互いに一部でも内外方向に重なる状態と、の両方を意味するものとする。例えば、複数の巻付部が互いに軸15方向にずれており、複数の巻付部が互いに一部のみ内外方向に重なる状態であってもよい。
【0024】
図2、図3に示すように、第1巻付部61の第1支持部62は円板状であり、軸受け63を介して軸15に回転自在に支持されている。前述のように、第1支持部62と基部21とは、互いに吸着しあう磁石対(図示せず)によって吸着されているため、第1支持部62は軸15が回転しても静止状態が保たれる。
【0025】
第1巻付部61の第1線材支持体64は、線材Yが巻き付けられる部分であり、それぞれ第1支持部62の中心に対して放射状に等間隔に配置され、固定されている。第1線材支持体64の形状は、縦長の板状体であり、第1線材支持体64の外側の縁部である第1支持縁部64aは、第1支持部62に固定された基部21側(図3において図示下方)から自由端部側(図3において図示上方)にかけて内側に傾斜している。第1支持縁部64aが内側に傾斜していることにより、第1支持縁部64aに巻き付けられた線材Yが後から基部21側(図3において図示下方)に巻き付けられた線材Yによって押し上げられて自由端部側(図3において図示上方)に移動しやすくなっている。
【0026】
また、第1線材支持体64の基部21付近の外側の縁部である第1案内縁部64bは、第1支持縁部64aよりも内側への傾斜が急になっており、線材送出部52によってこの第1案内縁部64bに線材Yが巻き付けられるようになっている。線材Yが第1案内縁部64bに巻き付けられると、線材Yには長手方向に巻付テンションが加わっているため、巻き付けられた位置から自由端部側(図3において図示上方)に滑って第1支持縁部64aに移動する。線材送出部52によって第1案内縁部64bに線材Yが巻き付けられると、線材Yが直ちに第1案内縁部64bを滑って移動することにより、同じ位置に線材Yが重ねて巻き付けられることが防止される。また、線材Yが第1案内縁部64bを滑って移動することにより、線材送出部52が第1巻付部61と第2巻付部71とを切り換えながら線材Yを巻き付けていく際に、線材送出部52が先に巻き付けた線材Yと干渉することが防止される。この点については後述する。
【0027】
図2、図3に示すように、第2巻付部71の第2支持部72は、一部に開放部73を備えた円環状であり、第1巻付部61の第1支持部62に対してローラ33を介して支持されている。ローラ33は第1回転部31に設けられており、軸15が回転すると、ローラ33は第1回転部31と共に軸15回りに回転するが、前述のように、第2支持部72と基部21とは、互いに吸着しあう磁石対(図示せず)によって吸着されているため、第2支持部72は軸15が回転しても第1支持部62と同様に静止状態が保たれる。第2支持部72の開放部73は、線材送出部52が第1巻付部61と第2巻付部71とを切り換えながら線材Yを巻き付けていく際に、線材送出部52が第2巻付部71を横切る部分であり、線材送出部52が周回する位置を切り換える切換点Cを構成する。
【0028】
第2巻付部71の第2線材支持体74及び第3線材支持体75は、線材Yが巻き付けられる部分である。第3線材支持体75は、第2支持部72の開放部73の両側に配置され、第2線材支持体74は、第2支持部72の開放部73を除いて、それぞれ第2支持部72の中心に対して放射状に等間隔に配置され、固定されている。第2線材支持体74と第3線材支持体75の形状は、それぞれ第1巻付部61の第1線材支持体64と略同一であり、第2線材支持体74の外側の縁部である第2支持縁部74aは、第2支持部72に固定された基部21側(図3において図示下方)から自由端部側(図3において図示上方)にかけて内側に傾斜している。第2線材支持体74の基部21付近の外側の縁部である第2案内縁部74bは、第2支持縁部74aよりも内側への傾斜が急になっており、線材送出部52によってこの第2案内縁部74bに線材Yが巻き付けられるようになっている。
【0029】
また、第3線材支持体75の外側の縁部である第3支持縁部75aは、第2支持部72に固定された基部21側(図3において図示下方)から自由端部側(図3において図示上方)にかけて内側に傾斜している。第3線材支持体75の基部21付近の外側の縁部である第3案内縁部75bは、第3支持縁部75aよりも内側への傾斜が急になっており、線材送出部52によってこの第3案内縁部75bに線材Yが巻き付けられるようになっている。第2線材支持体74及び第3線材支持体75のその他の構成については、第1巻付部61の第1線材支持体64と略同一であるため説明を省略する。
【0030】
図2、図3に示すように、第1回転部31は、線材送出部52を貯留部12の内外方向に移動自在に保持するとともに、貯留部12の周方向に回転させるものである。第1回転部31は、円板状であり、軸15に固定されている。図2に示すように、第1回転部31の縁部の一部から径方向に向けてスリット32が形成されている。スリット32は、移動部51を第1回転部31の径方向に移動自在となるように保持するものである。第1回転部31の面上には、第1回転部31の中心に対して放射状にローラ33が設けられている。ローラ33は前述のように、第1支持部62に対して間隔を確保して第2支持部72を支持するものである。また、第1回転部31の面上には、軸15から移動部51まで線材Yを案内する通路34が配置されている。第1回転部31と通路34は軸15に固定されているため、軸15が回転すると第1回転部31と通路34は共に軸15回りに回転する。
【0031】
図2、図3に示すように、移動部51は、線材送出部52が第1巻付部61の周囲と第2巻付部71の周囲とを切り換えながら周回するように線材送出部52を案内するとともに、通路34からの線材Yを線材送出部52に案内するものである。移動部51の両側部には案内溝53が形成されており、第1回転部31のスリット32に摺動自在に取り付けられて、第1回転部31に対して径方向、すなわち貯留部12の内外方向に移動自在に保持されている。移動部51の内部には、線材Yを通路34から線材送出部52に案内する連結路54が形成されており、連結路54の内部には、通路34の先端部が進退自在に挿通されている。移動部51には、基部21のカム溝22に案内されるシュー55が設けられている。シュー55が基部21のカム溝22に案内されることにより、移動部51は、第1回転部31に対して径方向、すなわち、貯留部12の内外方向に案内される。
【0032】
図2、図3に示すように、線材送出部52は、第1巻付部61の周囲と、第2巻付部71の周囲とを切り換えられながら周回して、線材Yを第1巻付部61と第2巻付部71とに巻き付けるものである。線材送出部52は第1巻付部61の周囲を周回できるよう、第1支持部62と第2支持部72との間を通過しうる形状である。また、線材送出部52は、線材Yを第1巻付部61と第2巻付部71とに送出して巻き付ける線材送出口56が形成されており、線材送出口56は、線材Yを第1巻付部61の第1案内縁部64b、第2巻付部71の第2案内縁部74b、及び、第3巻付部の第3案内縁部75bに巻き付けることのできる位置に形成される。
【0033】
図2、図3に示すように、基部21は、線材送出部52を貯留部12の内外方向に案内するものである。基部21は軸受け21aを介して軸15に回転自在に支持されている。基部21は糸貯留装置11を繊維機械等に取り付ける部材でもあり、軸15が回転しても静止状態を保つものである。基部21の面上には、移動部51のシュー55を案内するカム溝22が形成されている。カム溝22は、移動部51に設けられた線材送出部52が第1巻付部61の周囲と、第2巻付部71の周囲とを切り換えながら周回するように形成されている。
【0034】
カム溝22について、具体的に説明すると、カム溝22は、内側カム溝23と外側カム溝24、及び、内側カム溝23と外側カム溝24が交差する交差カム溝25を備えている。カム溝22が形成される基部21と、第1巻付部61及び第2巻付部71とは、相対的に静止しており、これに対して、第1回転部31、移動部51、線材送出部52は、軸15の回転に伴なって軸15回りに回転する。内側カム溝23は、このように基部21に対して相対的に移動する移動部51を案内して、移動部51に設けられた線材送出部52が第1巻付部61の周囲を略1周できるように形成されている。外側カム溝24は、基部21に対して相対的に移動する移動部51を案内して、移動部51に設けられた線材送出部52が第2巻付部71の周囲を略1周できるように形成されている。
【0035】
交差カム溝25は、基部21に対して相対的に移動する移動部51を第1回転部31に対して径方向、すなわち、貯留部12の内外方向に案内して、移動部51に設けられた線材送出部52を第1巻付部61の周囲から第2巻付部71の周囲へ移行させ、また、第2巻付部71の周囲から第1巻付部61の周囲へ移行させるように形成されている。つまり、交差カム溝25は、線材送出部52が周回する位置を切り換える切換点Cを構成する。線材送出部52が周回する位置を切り換えるには、第2巻付部71を横切らなければならないため、線材送出部52が周回する位置を切り換えるのは、第2支持部72の開放部73において行うこととしている。このため、基部21と第2支持部72とを相対的に静止させて、基部21に形成される交差カム溝25の位置と、第2支持部72の開放部73の位置とを相対的に一致させており、第2支持部72の開放部73において線材送出部52が周回する位置を切り換えるようにしている。
【0036】
糸貯留装置11の構成については以上の通りであり、次に、糸貯留装置11の動作について説明する。図4は、線材送出部52が第1巻付部61の周囲と第2巻付部71の周囲とを切り換えながら周回する状態を示す平面図、図5は、糸貯留装置11に線材Yが貯留された状態を示す斜視図である。図4において、軸15は図示左回り(反時計回り)に回転するものとし、第1回転部31、移動部51、及び、線材送出部52も第1巻付部61及び第2巻付部71に対して図示左回り(反時計回り)に回転するものとする。線材送出部52の周回は、図4Aから図4Fの順番で進行する。線材Yは上流から軸15を通って線材送出部52に案内され、下流に向けて走行している。
【0037】
図4Aに示す状態では、移動部51のシュー55は、外側カム溝24に案内されており、線材送出部52は、第2巻付部71の周囲を移動する状態である。線材送出部52は第2巻付部71の周囲を移動しながら、第2巻付部71の第2線材支持体74に線材Yを巻き付けていく。尚、線材Yが巻き付けられる位置は、第2線材支持体74の第2案内縁部74bであり、線材Yは巻き付けられると直ちに第2支持縁部74a側へ滑って移動する(図3参照。)。このため、線材送出部52が次に同じ第2線材支持体74に線材Yを巻き付ける際に、線材Yが重ねて巻き付けられることが防止されている。
【0038】
図4Bに示す状態では、移動部51のシュー55は、交差カム溝25に案内されており、線材送出部52を第2巻付部71の周囲から第1巻付部61の周囲へ移行させる状態である。つまり、線材送出部52は、切換点Cにて周回する位置を第2巻付部71の周囲から第1巻付部61の周囲へ切り換えている。切換点Cには第2巻付部71の開放部73が位置しており、線材送出部52が第2巻付部71を横切ることが可能である。図5に示すように、切換点Cでは線材送出部52は、第2巻付部71の第3線材支持体75から第1巻付部61の第1線材支持体64に跨るように線材Yを巻き付けていく。図4Bに示す状態においても、線材Yが巻き付けられる位置は、第2線材支持体74の第2案内縁部74b、及び、第1線材支持体64の第1案内縁部64bであり(図3参照。)、線材Yは巻き付けられると直ちに第2支持縁部74a側及び、第1支持縁部64a側へ滑って移動する。
【0039】
図4C、図4Dに示す状態では、移動部51のシュー55は、内側カム溝23に案内されており、線材送出部52は、第1巻付部61の周囲を移動する状態である。線材送出部52は第1巻付部61の周囲を移動しながら、第1巻付部61の第1線材支持体64に線材Yを巻き付けていく。図4C、図4Dに示す状態においても、線材Yが巻き付けられる位置は、第1線材支持体64の第1案内縁部64bであり(図3参照。)、線材Yは巻き付けられると直ちに第1支持縁部64a側へ滑って移動する。
【0040】
図4Eに示す状態では、移動部51のシュー55は、交差カム溝25に案内されており、線材送出部52を第1巻付部61の周囲から第2巻付部71の周囲へ移行させる状態である。つまり、線材送出部52は、切換点Cにて周回する位置を第1巻付部61の周囲から第2巻付部71の周囲へ切り換えている。切換点Cには第2巻付部71の開放部73が位置しており、線材送出部52が第2巻付部71を横切ることが可能である。図5に示すように、切換点Cでは線材送出部52は、第1巻付部61の第1線材支持体64から第2巻付部71の第3線材支持体75に跨るように線材Yを巻き付けていく。図4Eに示す状態においても、線材Yが巻き付けられる位置は、第1線材支持体64の第1案内縁部64b、及び、第2線材支持体74の第2案内縁部74bであり(図3参照。)、線材Yは巻き付けられると直ちに第1支持縁部64a側及び、第2支持縁部74a側へ滑って移動する。
【0041】
尚、図4Eに示す状態において、線材送出部52が第1巻付部61の周囲から第2巻付部71の周囲へ移行する際には、線材送出部52は、図4Bに示す状態において先に巻き付けた線材Yの下をくぐりながら線材Yを巻き付けることとなる。つまり、図4Bに示す状態において、線材Yは巻き付けられると直ちに第2支持縁部74a側及び、第1支持縁部64a側へ滑って移動しているため、図4Eに示す状態においては、線材送出部52は、図4Bに示す状態において先に巻き付けた線材Yの下をくぐりながら線材Yを巻き付けることとなるのである。これにより、線材送出部52が先に巻き付けた線材Yと干渉することが防止される。
【0042】
また、図4Eの状態においては、線材送出部52は、図4Bの状態において、第2巻付部71の第1線材支持体64から第1巻付部61の第1線材支持体64に跨るように巻き付けた線材Yの下にクロスするように、第1巻付部61の第1線材支持体64から第2巻付部71の第3線材支持体75に跨るように線材Yを巻き付けていくこととなり、線材Yのクロス部分が形成される(図5参照。)。このように、線材送出部52の周回毎に、第1巻付部61と第2巻付部71とを切り換えて線材Yの巻き付けを行うため、第1巻付部61と第2巻付部71との切り換えの度に、線材Yのクロス部分が形成される。これにより、線材Yが重なって巻き付けられることがなく、線材Yを巻き出せなくなるトラブルを防止することができる。
【0043】
また、第1線材支持体64の第1支持縁部64aと第3線材支持体75の第3支持縁部75aは、内側に傾斜しており、線材Yのクロス部分が少しずつ内側に形成される。これにより、クロス部分が重なることがなく、線材Yが隙間なく巻き付けられる。このため、貯留できる線材Yの貯留量を増大させることができる。尚、クロス部分が重ならないようにするため、切換点Cに近い第1線材支持体64と第3線材支持体75を貯留部12の内外方向、あるいは、貯留部12の周方向にやや傾けるようにしてもよい。これにより、クロス部分が少しずつ貯留部12の内外方向、あるいは、貯留部12の周方向に位置を変えて形成されることとなる。これにより、クロス部分が重なることが確実に防止され、線材Yが隙間なく巻き付けられる。
【0044】
図4Fに示す状態では、移動部51のシュー55は、外側カム溝24に案内されており、線材送出部52は、第2巻付部71の周囲を移動する状態である。線材送出部52は第2巻付部71の周囲を移動しながら、第2巻付部71の第2線材支持体74に線材Yを巻き付けていく。図4Fに示す状態においても、線材Yが巻き付けられる位置は、第2線材支持体74の第2案内縁部74bであり(図3参照。)、線材Yは巻き付けられると直ちに第2支持縁部74a側へ滑って移動する。この後、糸貯留装置11は図4Aの状態に戻り、図4Aから図4Fまでの状態が繰り返され、図5に示すように、線材送出部52の周回毎に、第1巻付部61と第2巻付部71とを切り換えて線材Yの巻き付けが行われる。
【0045】
図3、図5に示すように、先に第1巻付部61又は第2巻付部71に巻き付けられた線材Yは、後から巻き付けられた線材Yに押し上げられるように第1巻付部61又は第2巻付部71の自由端側(図5において図示上方)に移動していき、下流側に巻き出されていく。このようにして走行する線材Yが糸貯留装置11の貯留部12に一時的に貯留される。
【0046】
以上説明した第1の実施の形態に係る糸貯留装置11によれば、次のような効果を有する。
【0047】
貯留部12は、貯留部12の内外方向に層状に配置される第1巻付部61と第2巻付部71とを備え、巻付機構13は、第1巻付部61と第2巻付部71の周囲を周回して、線材Yを第1巻付部61と第2巻付部71に巻き付ける線材送出部52を備えるため、巻付機構13により線材Yを第1巻付部61と第2巻付部71に巻き付けることができる。このため、糸貯留装置11を大型化することなく、貯留できる線材Yの貯留量を増大させることができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る糸貯留装置11を図面に沿って説明する。図6は糸貯留装置11の一部を省略した斜視図、図7は糸貯留装置11の平面図、図8は図7の8−8線で切断した端面の簡略図、図9は、線材送出部52が第11巻付部76の周囲と第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回する状態を示す平面図である。本実施の形態に係る糸貯留装置11は、第3回転部42の周回と自転により、線材送出部52が第11巻付部76の周囲と第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回する点が第1の実施の形態に係る流量調整機構と大きく異なっている。
【0049】
まず糸貯留装置11の構成について概略を説明すると、図6、図7に示すように、糸貯留装置11は、貯留部12と巻付機構13とを備えている。図8に示すように、糸貯留装置11は、駆動源14により回転する軸15を備え、この軸15に対して基部21が回転自在に支持されている。基部21は糸貯留装置11を繊維機械等に取り付ける部材でもあり、軸15が回転しても静止状態を保つ。基部21の中心付近には、第1プーリ26が設けられている。
【0050】
第4回転部81は軸15に固定されており、貯留部12を構成する第11巻付部76と第12巻付部77は、第4回転部81に回転自在に支持されている。基部21と第11巻付部76、及び基部21と第12巻付部77の間には、互いに吸着しあう磁石対(図示せず)が設けられており、第11巻付部76と第12巻付部77は軸15が回転しても基部21と共に静止状態が保たれるようになっている。巻付機構13の第2回転部41は軸15に固定されており、軸15と共に回転する。第2回転部41には第3回転部42が回動自在に設けられており、第3回転部42には、第2プーリ45が設けられている。第3回転部42の軸15から離隔した位置には線材送出部52が設けられており、線材Yは軸15の端部から通路34を介して線材送出部52まで案内されている。
【0051】
第1プーリ26と第2プーリ45の間にはタイミングベルト46が掛け回されており、第1プーリ26と第2プーリ45の半径の比率により、第3回転部42が貯留部12の周囲を周回する毎に、第3回転部42が所定の角度だけ自転し、線材送出部52が第11巻付部76の周囲と、第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回するように形成されている。
【0052】
糸貯留装置11は概略このような構成であり、軸15が回転すると、第2回転部41が軸15回りに回転するとともに、第2回転部41上の第3回転部42が自転する。一方、貯留部12及び基部21は静止状態を保つ。第3回転部42に設けられた線材送出部52は、第3回転部42の周回と自転により、第11巻付部76の周囲と、第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回し、上流側から走行する線材Yを第11巻付部76と第12巻付部77とに切り換えながら巻き付けていく。一方、先に貯留部12に巻き付けられた線材Yは、後から巻き付けられた線材Yに押し上げられるように貯留部12の自由端側(図8において図示上方)に移動していき、下流側に巻き出されていく。このようにして走行する線材Yが糸貯留装置11の貯留部12に一時的に貯留される。以下、糸貯留装置11の各部の構成についてより詳細に説明する。
【0053】
図7、図8に示すように、第4回転部81は一部が切り欠かれた円板状であり、軸15に固定されている。第4回転部81の面上には、第11巻付部76と第12巻付部77を回動自在に支持するローラ82が、第4回転部81の中心に対して放射状に設けられている。切欠部には、第2回転部41に設けられた第3回転部42が位置する。
【0054】
第11巻付部76は、線材Yが巻き付けられる部分であり、第11巻付部76はローラ82により回動自在に支持されている。前述のように、第11巻付部76と基部21とは、互いに吸着しあう磁石対(図示せず)によって吸着されているため、第11巻付部76は軸15が回転しても静止状態が保たれる。
【0055】
第11巻付部76の形状は自由端側が先細りした円筒状である。外側の面である第11支持縁部76aは、基部21側(図8において図示下方)から自由端部側(図8において図示上方)にかけて内側に傾斜している。基部21付近の外側の面である第11案内縁部76bは、第11支持縁部76aよりも内側への傾斜が急になっており、線材送出部52によってこの第11案内縁部76bに線材Yが巻き付けられるようになっている。
【0056】
図7、図8に示すように、第12巻付部77は、線材Yが巻き付けられる部分であり、第12巻付部77は第4回転部81のローラ82により回動自在に支持されている。前述のように、第12巻付部77と基部21とは、互いに吸着しあう磁石対(図示せず)によって吸着されているため、第12巻付部77は軸15が回転しても静止状態が保たれる。
【0057】
第12巻付部77の形状は、自由端側が先細りした円筒状であり、側面に開口部78が形成されている。外側の面である第12支持縁部77aは、基部21側(図8において図示下方)から自由端部側(図8において図示上方)にかけて内側に傾斜している。基部21付近の外側の面である第12案内縁部77bは、第12支持縁部77aよりも内側への傾斜が急になっており、線材送出部52によってこの第12案内縁部77bに線材Yが巻き付けられるようになっている。開口部78は、線材送出部52が第11巻付部76と第12巻付部77とを切り換えながら線材Yを巻き付けていく際に、線材送出部52が第12巻付部77を横切る部分であり、線材送出部52が周回する位置を切り換える切換点Cを構成する。
【0058】
図7、図8に示すように、第2回転部41は、貯留部12の周方向に回転して、第3回転部42を貯留部12の周囲で周回させるものである。第2回転部41は、円板状であり、軸15に固定されている。第2回転部41の縁部付近に第3回転部42を回転自在に保持している。また、第2回転部41には、軸15から移動部51まで線材Yを案内する通路34が配置されている。第2回転部41と通路34は軸15に固定されているため、軸15が回転すると第2回転部41と通路34は共に軸15回りに回転する。
【0059】
図7、図8に示すように、第3回転部42は、線材送出部52が第11巻付部76の周囲と第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回するように線材送出部52を案内するとともに、通路34からの線材Yを線材送出部52に案内するものである。第3回転部42は、本体43と支持軸44を備えており、支持軸44が軸受け44aを介して第2回転部41に回動自在に支持されている。第3回転部42の内部には、線材Yを通路34から線材送出部52に案内する連結路54が形成されており、連結路54は、支持軸44から本体43の内部を通って線材送出部52に連通している。支持軸44には、第2プーリ45が固定されている。
【0060】
第3回転部42の本体43の面上には、第3回転部42の回転軸15から離隔した位置に線材送出部52が設けられている。線材送出部52が設けられる位置は、第3回転部42が回転して、線材送出部52が第2回転部41の回転中心(軸15)から離れた位置にあるときは、線材送出部52が第12巻付部77の周囲に位置し、第3回転部42が更に回転して、線材送出部52が第2回転部41の回転中心(軸15)に近づいた位置にあるときは、線材送出部52が第11巻付部76の周囲(第11巻付部76と第12巻付部77との間)に位置するように位置決めされる。尚、線材送出部52は、第11巻付部76の周囲を周回できるよう、第11支持部と第12支持部との間を通過しうる形状とする。また、線材Yを送出して巻き付ける線材送出口56は、回転している状態で線材Yを第11巻付部76の第11案内縁部76b、及び第12巻付部77の第12案内縁部77bに巻き付けることができるように、図示上方に向けられている。
【0061】
つまり、第3回転部42は、周回と自転により線材送出部52の回転半径を変えながら、線材送出部52を第11巻付部76と第12巻付部77の周囲を周回させており、回転半径が短い状態において第11巻付部76の周囲を周回させ、回転半径が長い状態において第12巻付部77の周囲を周回させるようにしている。また、第12巻付部77の開口部78が切換点Cを構成しており、線材送出部52が開口部78を横切ることで、線材送出部52が周回する位置を第11巻付部76と第12巻付部77とで切り換えるようにしている。
【0062】
図7、図8に示すように、基部21は、軸受け21aを介して軸15に回転自在に支持されている。基部21は糸貯留装置11を繊維機械等に取り付ける部材でもあり、軸15が回転しても静止状態を保つものである。基部21の中心付近には、第1プーリ26が設けられている。第1プーリ26と第2プーリ45の間には、タイミングベルト46が掛け回されている。軸15が回転すると、基部21は静止状態を保つため、第1プーリ26も静止状態を保つ。一方、第2回転部41は軸15と共に回転するため、第2回転部41に設けられた第3回転部42の第2プーリ45も軸15と共に回転する。第1プーリ26と第2プーリ45の間には、タイミングベルト46が掛け回されているため、軸15が回転すると、第3回転部42は、第2回転部41とともに軸15回りに周回すると共に、第2回転部41とは反対の方向に自転する。
【0063】
第1プーリ26と第2プーリ45の半径については、第1プーリ26と第2プーリ45の半径の比率により、第3回転部42が貯留部12の周囲を周回する毎に、第3回転部42が所定の角度だけ自転し、線材送出部52が第11巻付部76の周囲と、第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回するように設定される。本実施の形態では、第1プーリ26と第2プーリ45の半径の比率は約1:2に設定されている。
【0064】
糸貯留装置11の構成については以上の通りであり、次に、糸貯留装置11の動作について説明する。図9は、線材送出部52が第11巻付部76の周囲と第12巻付部77の周囲とを切り換えながら周回する状態を示す平面図である。図9において、軸15は図示左回り(反時計回り)に回転するものとし、第2回転部41、第3回転部42、第4回転部81、及び、線材送出部52も第11巻付部76及び第12巻付部77に対して図示左回り(反時計回り)に回転するものとする。線材送出部52の周回は、図9Aから図9Fの順番で進行する。線材Yは上流から軸15を通って線材送出部52に案内され、下流に向けて走行している。
【0065】
図9Aに示す状態では、線材送出部52は軸15から最も離れた位置で第12巻付部77の周囲を移動する状態にある。線材送出部52は第12巻付部77の周囲を移動しながら、第12巻付部77に線材Yを巻き付けていく。尚、線材Yが巻き付けられる位置は、第12線材支持体の第12案内縁部77bであり、線材Yは巻き付けられると直ちに第12支持縁部77a側へ滑って移動する。このため、線材送出部52が次に同じ第12線材支持体に線材Yを巻き付ける際に、線材Yが重ねて巻き付けられることが防止されている。
【0066】
図9Bに示す状態では、第3回転部42は、図9Aに示す状態から約180度周回するとともに約90度自転しており、線材送出部52を第12巻付部77の周囲から第11巻付部76の周囲へ移行させる状態である。つまり、線材送出部52は、線材送出部52は軸15に接近してきており、切換点Cにて周回する位置を第12巻付部77の周囲から第11巻付部76の周囲へ切り換えている。切換点Cには第12巻付部77の開口部78が位置しており、線材送出部52が第12巻付部77を横切ることが可能である。切換点Cでは線材送出部52は、第12巻付部77から第11巻付部76に跨るように線材Yを巻き付けていく。
【0067】
図9Cに示す状態では、第3回転部42は、図9Aに示す状態から約270度周回するとともに約135度自転し、図9Dに示す状態では、第3回転部42は、図9Aに示す状態から約390度周回するとともに約195度自転しており、線材送出部52は、第11巻付部76の周囲を移動する状態である。線材送出部52は、線材送出部52は軸15に最も接近している状態であり、線材送出部52は第11巻付部76の周囲を移動しながら、第11巻付部76に線材Yを巻き付けていく。
【0068】
図9Eに示す状態では、第3回転部42は、図9Aに示す状態から約550度周回するとともに約275度自転しており、線材送出部52を第11巻付部76の周囲から第12巻付部77の周囲へ移行させる状態である。つまり、線材送出部52は、切換点Cにて周回する位置を第11巻付部76の周囲から第12巻付部77の周囲へ切り換えている。切換点Cには第2巻付部71の開口部78が位置しており、線材送出部52が第2巻付部71を横切ることが可能である。切換点Cでは線材送出部52は、第11巻付部76から第12巻付部77に跨るように線材Yを巻き付けていく。
【0069】
尚、図9Eに示す状態において、線材送出部52が第11巻付部76の周囲から第12巻付部77の周囲へ移行する際には、線材送出部52は、図9Bに示す状態において先に巻き付けた線材Yの下をくぐりながら線材Yを巻き付けることとなる。つまり、図9Bに示す状態において、線材Yは巻き付けられると直ちに第12支持縁部77a側及び、第11支持縁部76a側へ滑って移動しているため、図9Eに示す状態においては、線材送出部52は、図9Bに示す状態において先に巻き付けた線材Yの下をくぐりながら線材Yを巻き付けることとなるのである。これにより、線材送出部52が先に巻き付けた線材Yと干渉することが防止される。
【0070】
また、図9Eの状態においては、線材送出部52は、図9Bの状態において、第12巻付部77から第11巻付部76に跨るように巻き付けた線材Yの下にクロスするように、第11巻付部76から第12巻付部77に跨るように線材Yを巻き付けていくこととなり、線材Yのクロス部分が形成される。このように、線材送出部52の周回毎に、第11巻付部76と第12巻付部77とを切り換えて線材Yの巻き付けを行うため、第11巻付部76と第12巻付部77との切り換えの度に、線材Yのクロス部分が形成される。これにより、線材Yが重なって巻き付けられることがなく、線材Yを巻き出せなくなるトラブルを防止することができる。
【0071】
また、第11巻付部76の第11支持縁部76aと第12巻付部77の第12支持縁部77aは、内側に傾斜しており、線材Yのクロス部分が少しずつ内側に形成される。これにより、クロス部分が重なることがなく、線材Yが隙間なく巻き付けられる。このため、貯留できる線材Yの貯留量を増大させることができる。尚、クロス部分が重ならないようにするため、開口部78の端面を第12支持縁部77aの母線に対して傾けるようにしてもよい。これにより、クロス部分が少しずつ貯留部12の内外方向、あるいは、貯留部12の周方向に位置を変えて形成されることとなる。これにより、クロス部分が重なることが確実に防止され、線材Yが隙間なく巻き付けられる。
【0072】
図9Fに示す状態では、第3回転部42は、図9Aに示す状態から約670度周回するとともに約335度自転しており、線材送出部52は、第12巻付部77の周囲を移動する状態である。線材送出部52は第12巻付部77の周囲を移動しながら、第2巻付部71に線材Yを巻き付けていく。この後、糸貯留装置11は図9Aの状態に戻り、図9Aから図9Fまでの状態が繰り返され、線材送出部52の周回毎に、第11巻付部76と第12巻付部77とを切り換えて線材Yの巻き付けが行われる。
【0073】
そして先に第11巻付部76又は第12巻付部77に巻き付けられた線材Yは、後から巻き付けられた線材Yに押し上げられるように第11巻付部76又は第12巻付部77の自由端側(図6において図示上方)に移動していき、下流側に巻き出されていく。このようにして走行する線材Yが糸貯留装置11の貯留部12に一時的に貯留される。
【0074】
以上説明した第2の実施の形態に係る糸継装置によれば、次のような効果を有する。
【0075】
巻付機構13は、貯留部12の周方向に回転する第2回転部41と、第2回転部41に設けられ、貯留部12の周囲を周回する毎に、所定の角度だけ自転する第3回転部42を備え、線材送出部52は、第3回転部42の自転軸から離隔した位置に設けられているため、第3回転部42の周回と自転により線材送出部52が各巻付部の周囲に案内され、線材Yを各層の巻付部に巻き付けていくことができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、本実施の形態に係る糸貯留装置11では、貯留部12の巻付部を2層に配置したが、3層以上にしてもよい。図10は、貯留部12を第21巻付部91、第22巻付部92、第23巻付部93の3層とし、これらの周囲を切り換えながら線材送出部52が周回する軌跡の例を示す簡略図である。
【0077】
貯留部12の巻付部を3層以上にした場合でも、線材送出部52が各巻付部の周囲を切り換えながら周回させる手段として、第1の実施形態のように、移動部51とカム溝22を用いることができ、また、第2の実施形態のように、第3回転部42の周回と自転により、線材送出部52の位置を切り換えることもできる。例えば、図10に示した第21巻付部91、第22巻付部92、第23巻付部93は、第22巻付部92の開口部94と、第23巻付部93の開口部95が180度位相をずらせた状態で配置されている。そして、第3回転部42が3回周回する間に1回自転するようにすれば、図10に示したような軌跡で、周回毎に線材Yを巻き付ける巻付部を切り換えながら、第21巻付部91、第22巻付部92、第23巻付部93に線材Yを巻き付けていくことができる。このように、貯留部12の巻付部を3層以上にした場合は、線材Yをより多くの層の巻付部に巻き付けることができ、糸貯留装置11を大型化することなく、貯留できる線材Yの貯留量を増大させることができる。
【0078】
以上説明した本発明の技術的範囲は、上記の実施例に限定されるものではなく、上記実施例の形状に限定されない。本発明の技術的範囲は、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【符号の説明】
【0079】
11 糸貯留装置
12 貯留部
13 巻付機構
14 駆動源
15 軸
21 基部
21a 軸受け
22 カム溝
23 内側カム溝
24 外側カム溝
25 交差カム溝
26 第1プーリ
31 第1回転部
32 スリット
33 ローラ
34 通路
41 第2回転部
42 第3回転部
43 本体
44 支持軸
44a 軸受け
45 第2プーリ
46 タイミングベルト
51 移動部
52 線材送出部
53 案内溝
54 連結路
55 シュー
56 線材送出口
61 第1巻付部
62 第1支持部
63 軸受け
64 第1線材支持体
64a 第1支持縁部
64b 第1案内縁部
71 第2巻付部
72 第2支持部
73 開放部
74 第2線材支持体
74a 第2支持縁部
74b 第2案内縁部
75 第3線材支持体
75a 第3支持縁部
75b 第3案内縁部
76 第11巻付部
76a 第11支持縁部
76b 第11案内縁部
77 第12巻付部
77a 第12支持縁部
77b 第12案内縁部
78 開口部
81 第4回転部
82 ローラ
91 第21巻付部
92 第22巻付部
93 第23巻付部
94 開口部
95 開口部
Y 線材
C 切換点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸貯留装置であって、
線材が巻き付けられる貯留部と、
前記貯留部に線材を巻き付ける巻付機構と、を備え、
前記貯留部は、前記貯留部の内外方向に層状に配置される複数の巻付部を備えることを特徴とする糸貯留装置。
【請求項2】
前記巻付機構は、
前記各巻付部の周囲を周回して、線材を前記各巻付部に巻き付ける線材送出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の糸貯留装置。
【請求項3】
前記巻付機構は、
前記線材送出部が周回する位置を切り換えて、線材が巻き付けられる前記巻付部を切り換える切換点を有し、
前記線材送出部の周回毎に、線材が巻き付けられる前記巻付部を前記切換点にて切り換えることを特徴とする請求項2に記載の糸貯留装置。
【請求項4】
前記巻付機構は、
前記線材送出部を前記貯留部の内外方向に移動自在に保持するとともに、前記貯留部の周方向に回転させる第1回転部と、
前記線材送出部を前記貯留部の内外方向に案内する基部と、
を備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の糸貯留装置。
【請求項5】
前記巻付機構は、
前記貯留部の周方向に回転する第2回転部と、
前記第2回転部に設けられ、前記貯留部の周囲を周回する毎に、所定の角度だけ自転する第3回転部を備え、
前記線材送出部は、前記第3回転部の自転軸から離隔した位置に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の糸貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73868(P2011−73868A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229958(P2009−229958)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】