説明

糸道ガイド装置

【課題】扁平糸のように、拡幅されて扁平な断面形状を持つテープ状繊維束をボビンに巻き取る際に、繊維束に不要な外力を加えずに、単繊維同士の絡まり、撚り、毛羽立ち等の不具合を引き起こすことなく糸道を安定化させ、かつ方向転換する糸道ガイド装置を提供する。
【解決手段】上流側に配された第1ガイドロール6と、下流側に配された第3ガイドロール7と、第1及び第3ガイドロールの間に配された第2ガイドロール2とを少なくとも備え、走行する繊維束を案内する。第2ガイドロール2は、第1及び第3ガイドロールの回転軸に直交する回動軸Aを有する支持部材3に回転自在に支持されている。第2ガイドロール2の回転軸は、支持部材の回動軸Aに直交する単一の平面上に配され、糸道の変動に対応して、回動軸Aを回動中心とする支持部材の回動視、第2ガイドロール2を糸道の糸道横断方向に傾けて、繊維束を本来の糸道へと自動的に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば扁平糸のように、拡幅されて扁平な断面形状を持つテープ状繊維束をボビンに巻き取る際に、前記繊維束に不要な外力を加えずに、単繊維同士の絡まり、撚り、毛羽立ち等の不具合を引き起こすことなく糸道を安定化させ、かつ方向転換するのに効果が発揮される糸道ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維に代表される樹脂補強に用いられる繊維(以下、補強繊維という)の多くは、それら繊維の束(以下、補強繊維束という)にマトリックス樹脂を含浸させて、いわゆるプリプレグとした後、これを所定形状にプリフォームし、加熱硬化させて繊維強化プラスチック成形体として製品化される。
【0003】
近年、この繊維強化プラスチックス成形体の軽量化志向に伴い、厚みが薄く、且つ厚さ斑が少ない高品位なプリプレグが要望されてきている。
【0004】
このようなプリプレグを製造する際には、補強繊維束を構成する1本1本の単繊維の高弾性特性をいかんなく発揮させるために、無撚り状態で、薄く広く開繊させる必要がある。
【0005】
このため、プリプレグの原材料となる補強繊維束についても、予め薄く均一に拡げた状態でボビンに巻き取る、そして、その状態を維持したままでプリプレグの製造工程に提供することが重要な課題になってきている。
【0006】
このような繊維束の扱いを実現するためには、特に、繊維束の搬送・案内の際に繊維束に不要な外力を与えないことが重要であり、例えば鍔付きロール等で糸道を規制する場合には、繊維束の擦れ・折り畳まれの原因となるので不具合を招くことがあり、必ずしも良くない。そのため、糸道の変動を見越した、すなわち、糸道の変動を許容した、幅広のガイドロールが用いられることが一般的である。
【0007】
しかしながら、一方で糸道の変動は、巻き取りパッケージの品位低下を引き起こすことになるため、糸道の安定化が重要な課題となってきている。
【0008】
また、ガイドロール上を繊維束が斜めに走る場合も、繊維束の擦れを引き起こして糸品位を悪化させるため、同様に糸道の安定化が重要な課題である。
【0009】
従来の技術として、例えば国際公開第2005/073118号パンフレット(特許文献1)には、ガイドロールとガイドロールを支持する支持部材とからなり、支持部材は、ガイドロールの回転軸に対し直角にねじれた位置に回転軸を有するもので、糸道の変動に対応して、支持部材の回転軸を回転中心とする回転により前記ガイドロールが糸道に対して傾けられることにより、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる糸道ガイドが開示されている。
【特許文献1】国際公開第2005/073118号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、上記特許文献1に開示された糸道ガイドは、ガイドロールの回転軸に対し直角にねじれた位置に有する回転軸により糸道の変動に対応するために、糸道の変動に対応する範囲が狭いばかりか、シート状の繊維束糸条群において撚れ、折り畳みを防ぎつつ方向転換させて整列させることには不向きである。
【0011】
本発明は、例えば扁平糸のように、拡幅されて扁平な断面形状を持つテープ状繊維束をボビンに巻き取る際に、前記繊維束に不要な外力を加えずに、単繊維同士の絡まり、撚り、毛羽立ち等の不具合を引き起こすことなく糸道を安定化させ、かつ方向転換することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の基本構成は、上流側に配された第1ガイドロールと、下流側に配された第3ガイドロールと、第1及び第3ガイドロールの間に配された第2ガイドロールとを少なくとも備え、走行する繊維束を案内する糸道ガイド装置であって、上面視で前記第1〜第3ガイドロールは互いに平行に配され、前記第2ガイドロールは、互いに平行な前記第1及び第3ガイドロールの回転軸に直交する回動軸Aを有する支持部材に回転自在に支持されてなり、前記第2ガイドロールの前記回転軸は、前記支持部材の前記回動軸Aに直交する平面上に配され、糸道の変動に対応して、回動軸Aを回動中心とする前記支持部材の回動により、前記第2ガイドロールが糸道の道幅方向に傾けられ、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる、ことを特徴とする糸道ガイド装置にある。
【0013】
また、本発明の第2の基本構成は、上流側に配された第1ガイドロールと、下流側に配された第3ガイドロールと、第1及び第3ガイドロールの間に配された第2ガイドロールとを少なくとも備え、走行する繊維束を案内する糸道ガイド装置であって、上面視で前記第1〜第3ガイドロールは互いに平行に配され、前記第2ガイドロールは、互いに平行な前記第1及び第3ガイドロールの回転軸に直交する第1回動軸A’と、前記第1及び第3ガイドロールに平行な第2回動軸Bとを有する支持部材に回転自在に支持されてなり、前記第2ガイドロールの前記回転軸は、前記支持部材の前記回動軸A’に直交する平面上配され、糸道の変動に対応して、前記支持部材の第1及び第2の回動軸A’、Bを回動中心とする回動により、前記第2ガイドロールが糸道の道幅方向に傾けられると同時に糸道方向に移動して、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる、ことを特徴とする糸道ガイド装置にある。
【0014】
また、好ましい態様によれば、前記支持部材の回動軸Aと前記第2ガイドロールに入る糸道のなす角θ1と、前記回動軸Aと前記第2ガイドロールから出る糸道のなす角θ2とを等しくする。また、前記第2ガイドロールの回転軸と前記支持部材の回動軸Aの軸間距離を20mm以上とすることが好ましい。更に、前記第2ガイドロールの回転軸と糸道のなす角θ3が45°〜135°の範囲であることが望ましく、更には前記ガイドロールに入る糸道と、前記第2ガイドロールから出る糸道との抱き角θ4を、10°〜180°とするとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1〜第3のガイドロールのうち、第2のガイドロールが糸道の変動量に対応して支持部材を介して第1回動軸を中心に糸道の道幅方向に自動的に傾き、或いは第1回動軸を中心に糸道の道幅方向に傾くと同時に糸道方向に移動して、それらの動きに応じて、繊維束を正常な糸道位置に自動的に戻すため、例えば扁平糸のように、拡幅されて扁平な断面形状を持つテープ状繊維束をボビンに巻き取る際に、前記繊維束に不要な外力を加えずに、単繊維同士の絡まり、撚り、毛羽立ち等の不具合を引き起こすことなく糸道を安定化させ、また、糸道の変動に対応する範囲が広く、且つシート状の繊維束糸条群においても撚れ、折り畳みを防ぎつつ方向転換させて整列させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態を図面等に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る糸道ガイド装置1の全体構造を模式的に示した斜視図である。糸道ガイド装置1は、走行する繊維束Yの本来の糸道(上流及び下流における走行する繊維束の支持位置で定まる糸道を言い、装置の構成に基づき設定された繊維束Yの走行路である。この糸道は直線である必要はなく、領域・範囲を含んでいる。)に沿って上流側から下流側に向けて順次配された第1〜第3ガイドロール6,2,7を有している。これらの第1〜第3ガイドロール6,2,7は、図2に示すように、繊維幅方向に互いが平行に配され、第1及び第3ガイドロールの各回転軸は、その両端が図示せぬ固定軸受を介してそれぞれ回転自在に支承されている。一方、前記第2ガイドロールは上端に回動軸Aを有する支持部材3の軸部3aに回転自在に支持されている。
【0017】
この支持部材3の回動軸Aの軸線は、図1〜図3に示すように、前記第1及び第3ガイドロール6,7の各回転軸に直交したねじれた位置を向いている。すなわち、前記支持部材3に支承される前記第2ガイドロール2の軸線は、図2及び図3に示すように、前記回動軸Aに直交する一つの平面上に配されている。そのため、前記支持部材3は前記回動軸Aを中心として繊維束Yの走行方向と直交する方向に回動(揺動)可能とされ、図4に示すように、前記第2ガイドロール2が繊維束に対して、その幅方向に傾くように挙動する。この第2ガイドロール2の傾きにより、繊維束は本来の糸道の中心方向に自動的に案内されていく。
【0018】
次に、本発明の第2実施形態に係る糸道ガイド装置11を、図5〜図8を参照して詳細に説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る糸道ガイド装置1の全体構造を模式的に示した斜視図である。なお、本実施形態にあって、上記第1実施形態と実質的に同一の構成を備えた部材については、同一符号を付している。
【0019】
本実施形態に係る糸道ガイド装置11も、走行する繊維束Yの本来の糸道に沿って上流側から下流側に向けて順次配された第1〜第3ガイドロール6,2,7を有している。第1〜第3ガイドロール6,2,7は、図5に示すように、本来の糸道を横断する方向に軸線を向けて互いが平行に配されている。第1及び第3のガイドロール6,7の各回転軸の両端を図示せぬ固定軸受を介してそれぞれが回転自在に支承されている。一方、前記第2ガイドロール2は、図5〜図7に示すように、前記第1及び第3ガイドロール6,7の間の、第1及び第3ガイドロール6,7を含む平面よりも上方であって、第1及び第3ガイドロール6,7と同様に、その軸線は本来の糸道を横断する繊維幅方向に向けられている。この第2ガイドロール2は、支持部材3の回転軸部3aに図示せぬ軸受を介して回転自在に支承されている。
【0020】
本実施形態にあって、上記第1実施形態と異なるところは、前記支持部材3が上記第1実施形態と同様の構造をもつ第1回動軸A’に加えて新たな第2の回動軸Bを有していることにある。
すなわち、前記支持部材3は、その上端に上記第1実施形態と同様に、第1回動軸A’を有しており、第1回動軸A’の軸線の向きは、図5〜図7に示すように、前記第1及び第3ガイドロール6,7の各回転軸に直交して交差する90°ねじれた方向である。また前記支持部材3は、その上端に配された前記第1回動軸A’の外に、その第1回動軸A’と支持部材下端に配された第2ガイドロール2の回転軸部3aとの間に、第2回動軸Bを有している。この第2回動軸Bの軸線の向きは、図6及び図7に示すように、第1回動軸A’の軸線に対して90°捻じれた方向に向けられており、上記第2ガイドロール2の軸線と平行とされている。
【0021】
そのため、前記支持部材3は、糸道の変動に対応して、上記第1回動軸A’を中心に糸道を横断する繊維束Yの幅方向の回動(揺動)が可能とされると同時に、図6に示すとおり、第2回動軸Bを中心に繊維束Yの走行方向に揺動する。その結果、前記第2ガイドロール2が、繊維束Yに対して、その幅方向に傾くように挙動すると同時に、繊維束Yの走行方向に向けて揺動する。この第2ガイドロール2の自動的な動きにより、繊維束Yは本来の糸道の中心方向に自動的に案内されるようになる。この支持部材3の第1回動軸A’を回転中心とする回動及び第2回動軸Bを回転中心とする回動して、第2ガイドロール2が糸道の道幅方向及び糸道方向に傾く複合動作をとることになり、繊維束Yのしごき作用を回避しつつ、繊維束Yを本来の糸道の中心方向へと自動的に案内されていくようになる。上述べたことから、上記第1及び第2の実施形態にあっては、第2ガイドロール2は糸の走行速度に追従して従属回転できる自由回転ロールであるように構成されているのが好ましい。その方が糸に与えるしごき作用などがより少なくなり、糸質に悪影響を与えることが少ない。また、第2ガイドロール2の形状は円柱状であることが望ましい。円柱状であれば、円錐状や鼓状ロールを用いた場合のようなロール表面での周速差が生じず、糸質に悪影響を与えることが少ない。
【0022】
次に、支持部材3の回動軸A及び第1回動軸A’と前記第2ガイドロール2に入る糸道のなす角θ1と、回動軸A及び第1回動軸A’と前記第2ガイドロール2から出る糸道のなす角θ2とは実質的に等しいことが好ましい。ここで、角θ1とθ2とが実質的に等しいとは、完全に等しいことを要求するものではなく、±5°の範囲であればよい。このような構成をとることにより、効果的で且つ適切に繊維束Yを本来の糸道の方向に案内することができる。特に、上記第2実施形態における支持部材3が、前記第1回動軸A’に加えて第2回動軸Bを有している場合には、第1回動軸A’の回動に第2回動軸Bの回動が加わることになり、糸道が本来の糸道を外れて、角θ1と角θ2との間に許容範囲を越えて大きく変動したときも、第2ガイドロール2には、第1回動軸A’の回動動作に加えて第2回動動作が加わり、前記ガイドロール2に入る糸道のなす角θ1と、回動軸Aと前記ガイドロール2から出る糸道のなす角θ2とを、自動的に等しくするように、繊維束Yの姿勢を素早く且つ的確に矯正することができるようになる。
【0023】
また、前記第2ガイドロール2の回転軸と、前記支持部材3の回動軸A及び第1回動軸A’との間の距離Lは20mm以上であることが好ましい。20mm以上にすることにより糸道変動に対する領域・範囲が広くなるため好ましい。より好ましくは30mm以上、更に好ましくは50mm以上である。前記第2ガイドロール2の回転軸と、前記支持部材3の回動軸A及び第1回動軸A’との間の距離Lは長いほど、糸道変動に対する領域・範囲が広くなるため、第2ガイドロール2を含めて前記支持部材3を設置する場所等を適宜決定する。
【0024】
更に前記第2ガイドロール2の回転軸と糸道とがなす角θ3は45°〜135°の範囲であることが好ましい。前記数値範囲にすることによりロール面と糸間での擦れが生じ難く、張力変動等により繊維束Yが転がるといった問題が生じ難くガイドロール面で繊維束が転がると隣り合う繊維束が重なり、毛羽等が発生し繊維束の走行位置が安定しない。より好ましくは55°〜125°、更に好ましくは60°〜120°である。
【0025】
また、前記第2ガイドロール2に入る糸道と、前記ガイドロールから出る糸道の抱き角θ4は、10°〜180°であることが好ましい。この範囲にすることにより、第2ガイドロール2が傾いた場合に、第2ガイドロール2への入りの糸道と第2ガイドロール2の稜線とのなす角の変化が大きくなり、効果的に繊維束を本来の糸道方向に案内することが可能となる。より好ましくは20°〜180°、更に好ましくは30°〜180°である。
【実施例】
【0026】
次に本発明の実施例をより具体的に説明する。
なお、糸道変動の測定は、繊維束幅の両端位置を測定し、その中心値を繊維束の中心として、糸道変動長は第1ガイドロール6の中心値及び第3ガイドロールの中心値との間の距離をいい。繊維束の中心値のロール軸方向のずれを糸道の変動量とした。
【0027】
(実施例1)
図1に示したようなガイドロール群を用い、フィラメント数12,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱処理する耐炎化工程によって耐炎化繊維束にし、引き続き、300〜700℃の温度分布を有する窒素雰囲気からなる前炭素化炉を通過させ、続いて1,000〜1,350℃の温度分布を有する窒素雰囲気からなる炭素化炉を通過させ、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を付与した炭素繊維束10本のテープ状炭素繊維束の搬送・案内を行った。
【0028】
炭素繊維束は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側の搬送ロールへ搬送される。ここで、第2ガイドロール2を挟んで上流側の第1ガイドロール6、下流側の第3ガイドロール7は、それぞれ外径50mm、ロール幅100mmのフリー回転ロールとし、それらの軸端を固設ブラケットに固定した。
【0029】
また、第2ガイドロール2は本発明にかかる糸道ガイド装置1の最も重要な構成部材であり、外径50mm、ロール幅100mmのフリー回転ロールとし、その支持部材は上端に(第1)回動軸Aを有している。前記第2ガイドロール2の回転軸は、前記回動軸Aに垂直な直交する単一平面に含まれるものであり、軸受を介して支持部材3をブラケット下端の軸部3aに回転自在に支持されている。
【0030】
回動軸Aと前記第2ガイドロール2に入る糸道のなす角(θ1)と、回動軸Aと前記ガイドロールから出る糸道のなす角(θ2)をそれぞれ45°、前記ガイドロールの回転軸と回動軸Aの距離を100mm、前記ガイドロールの回転軸と糸道のなす角(θ3)を65°、前記ガイドロールに入る糸道と、前記ガイドロールから出る糸道の抱き角(θ4)を90°とした。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
(実施例2〜14)
図1に示した糸道ガイド装置を使って、表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0033】
(実施例15)
次の事項を除いて、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
炭素繊維束Yを1本のテープ状炭素繊維束とし、第2ガイドロール2は外径30mm、ロール幅60mmのフリー回転ロールとし、前記第2ガイドロール2の回転軸と支持部材3の回動軸Aとの距離Lを50mmにした。結果を表2に示す。
【0034】
(実施例16)
次の事項を除いて、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
炭素繊維束Yを30本のテープ状炭素繊維束とし、第2ガイドロール2は外径50mm、ロール幅120mmのフリー回転ロールとし、前記第2ガイドロール2の回転軸と支持部材3の回動軸Aとの距離Lを300mmにした。その結果を表2に示す。
【0035】
(実施例17)
次の事項を除いて、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数60,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を使用して炭素繊維束にし、10本のテープ状炭素繊維束にし、第2ガイドロール2は外径50mm、ロール幅180mmのフリー回転ロールとした。その結果を表2に示す。
【0036】
(実施例18)
次の事項を除いて、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数12,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を使用して耐炎繊維束にし、10本のテープ状耐炎繊維束にした。
耐炎繊維は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側の搬送ロールへ搬送される。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
(実施例19)
この実施例19は図5〜図8に示した本発明の第2実施形態の具体例であり、次の事項を除いて、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
第2ガイドロール2は実施例において最も重要な構成部材であり、外径50mm、ロール幅100mmのフリー回転ロールとした。支持部材3は、図5に示した装置1であり、第1及び第2の回動軸A’、Bを有している。前記第2ガイドロール2の回転軸は、支持部材3の第1回動軸A’に直交する単一平面に含まれており、且つ第2回動軸Bは第1回動軸A’に対して90°ねじれた位置にあり、第1及び第2回動軸A’,Bは軸受を介してそれぞれ支持部材13のブラケットに固定した。その結果を表3に示す。
【0039】
(実施例20〜30)
表1に示す条件に変更した以外は、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。その結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
(実施例31)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
炭素繊維束を1本のテープ状炭素繊維束とし、第2ガイドロール2は外径30mm、ロール幅60mmのフリー回転ロールとし、前記第2ガイドロール2の回転軸と第1回動軸A’との間の距離Lを50mmにした。その結果を表4に示す。
【0042】
(実施例32)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
炭素繊維束を30本のテープ状炭素繊維束とし、第2ガイドロール2は外径50mm、ロール幅120mmのフリー回転ロールとし、前記第2ガイドロール2の回転軸と第1回動軸A’との間の距離Lを300mmにした。その結果を表4に示す。
【0043】
(実施例33)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数60,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を使用して炭素繊維束にし、10本のテープ状炭素繊維束にし、第2ガイドロール2は外径50mm、ロール幅180mmのフリー回転ロールとした。その結果を表4に示す。
【0044】
(実施例34)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数12,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を使用して耐炎繊維束にし、10本のテープ状耐炎繊維束にした。
耐炎繊維は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側の搬送ロールへ搬送される。その結果を表4に示す。
【0045】
(実施例35)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数12,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱処理する耐炎化工程によって耐炎化繊維束にし、引き続き、300〜700℃の温度分布を有する窒素雰囲気からなる前炭素化炉を通過させ、続いて1,000〜1,350℃の温度分布を有する窒素雰囲気からなる炭素化炉を通過させエポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を付与した炭素繊維束を巻き取り、10本のテープ状炭素繊維束を、DW法プリプレグ製造装置へ搬送・案内を行った。
炭素繊維束は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側の搬送ロールへ搬送される。結果を表4に示す。
【0046】
(実施例36)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数60,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱処理する耐炎化工程によって耐炎化繊維束にし、引き続き、300〜700℃の温度分布を有する窒素雰囲気からなる前炭素化炉を通過させ、続いて1,000〜1,350℃の温度分布を有する窒素雰囲気からなる炭素化炉を通過させエポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を付与した炭素繊維束を巻き取り、10本のテープ状炭素繊維束を、DW法プリプレグ製造装置へ搬送・案内を行った。
炭素繊維束は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側の搬送ロールへ搬送される。その結果を表4に示す。
【0047】
(実施例37)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
フィラメント数60,000本のアクリロニトリル系前駆体繊維束で10本のテープ状アクリロニトリル系前駆体繊維束を使用した。
アクリロニトリル系前駆体繊維束は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側の搬送ロールへ搬送される。その結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
(比較例1)
次の事項を除いて、実施例1と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
第2ガイドロール2の回転軸を、軸受を介すことなく支持部材3のブラケットに直接固定した。その結果を表5に示す。
【0050】
(比較例2)
次の事項を除いて、実施例19と同様にして繊維束の搬送・案内を行った。
第2ガイドロール2の回転軸を、軸受を介すことなく支持部材3のブラケットに直接固定した。結果を表5に示す。
【0051】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る糸道ガイド装置の全体構造を示した概略斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る糸道ガイド装置を糸道横断方向に見た正面図である。
【図3】同糸道ガイド装置を糸道方向下流側から見た正面図である。
【図4】糸道が変動したときの第2ガイドロールと第3ガイドロールとの相対的位置関係を誇張して示す糸道変動説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る糸道ガイド装置の全体構造を示した概略斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る糸道ガイド装置を糸道横断方向に見た正面図である。
【図7】同糸道ガイド装置を糸道方向下流側から見た正面図である。
【図8】糸道が変動したときの第2ガイドロールと第3ガイドロールとの相対的位置関係を誇張して示す糸道変動説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1,11 糸道ガイド
2 第2ガイドロール
3 支持部材
3a 軸部
6 上流側の第1ガイドロール
7 下流側の第3ガイドロール
A 支持部材の回動軸
A’ 支持部材の第1回動軸
B 支持部材の第2回動軸
θ1 第1ガイドロールから第2ガイドロールに入る糸道のなす角
θ2 第2ガイドロールから第3ガイドロールに出る糸道のなす角
θ3 ガイドロールの回転軸と糸道のなす角
θ4 第1ガイドロールから第2ガイドロールに入る糸道と、第3ガイドロール から出る糸道との第2ガイドロールに対する抱き角
L 第2ガイドロールの回転軸と回動軸A(第1回動軸)との間の距離
Y 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側に配された第1ガイドロールと、下流側に配された第3ガイドロールと、第1及び第3ガイドロールの間に配された第2ガイドロールとを少なくとも備え、走行する繊維束を案内する糸道ガイド装置であって、
上面視で前記第1〜第3ガイドロールは互いに平行に配され、
前記第2ガイドロールは、互いに平行な前記第1及び第3ガイドロールの回転軸に直交する回動軸Aを有する支持部材に回転自在に支持されてなり、
前記第2ガイドロールの前記回転軸は、前記支持部材の前記回動軸Aに直交する平面上に配され、
糸道の変動に対応して、回動軸Aを回動中心とする前記支持部材の回動により、前記第2ガイドロールが糸道の道幅方向に傾けられ、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる、
ことを特徴とする糸道ガイド装置。
【請求項2】
上流側に配された第1ガイドロールと、下流側に配された第3ガイドロールと、第1及び第3ガイドロールの間に配された第2ガイドロールとを少なくとも備え、走行する繊維束を案内する糸道ガイド装置であって、
上面視で前記第1〜第3ガイドロールは互いに平行に配され、
前記第2ガイドロールは、互いに平行な前記第1及び第3ガイドロールの回転軸に直交する第1回動軸A’と、前記第1及び第3ガイドロールに平行な第2回動軸Bとを有する支持部材に回転自在に支持されてなり、
前記第2ガイドロールの前記回転軸は、前記支持部材の前記回動軸A’に直交する平面上に配され、
糸道の変動に対応して、前記支持部材の第1及び第2の回動軸A’、Bを回動中心とする回動により、前記第2ガイドロールが糸道の道幅方向に傾けられると同時に糸道方向に移動して、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる、
ことを特徴とする糸道ガイド装置。
【請求項3】
前記支持部材の回動軸Aと前記第2ガイドロールに入る糸道のなす角θ1と、前記回動軸Aと前記第2ガイドロールから出る糸道のなす角θ2とが等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の糸道ガイド装置。
【請求項4】
前記第2ガイドロールの回転軸と前記支持部材の回動軸Aの軸間距離が20mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の糸道ガイド装置。
【請求項5】
前記第2ガイドロールの回転軸と糸道のなす角θ3が45°〜135°の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の糸道ガイド装置。
【請求項6】
前記第2ガイドロールに入る糸道と、前記第2ガイドロールから出る糸道の抱き角θ4が、10°〜180°であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の糸道ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−89954(P2010−89954A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264518(P2008−264518)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】