説明

系統連係型発電システム

【課題】建屋の配電線の電圧が許容電圧の上限になった場合でも変圧器の変圧比を切り替えて引き続き分散型の発電装置から商用電力系統に送電することができる系統連係型発電システムを提供する。
【解決手段】配電線の電圧を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧に応じて変圧比を切り替える制御信号を変圧比切替部に出力する制御部と、を有することを特徴とする系統連係型発電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統連係型発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人住宅などの一般低圧需要家の建屋に設置された太陽電池や燃料電池などの分散型発電装置の直流電圧出力を、昇圧して配電線に接続し、変圧器を介して商用電力系統に連係する系統連係型発電システムが普及しつつある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このような系統連係型発電システムでは、発電装置で発電した電力に余剰分があるときは、変圧器を介して商用電力系統に送電すると電力会社が買い取る、いわゆる売電が行われている。売電を行う際に分散型の発電装置から商用電力系統に送電するには、商用電力の電圧の方が、分散型の発電装置の出力電圧を変換した電圧より低くなければならない。
【0004】
従来から一般低圧需要家の建屋の配電線には、商用電力系統の送電網から受電した高電圧の電力を建屋付近に設置された柱上トランス等の変圧器で所定の電圧に変圧して供給されている。変圧器から電力を供給される建屋群の電力消費が多いと、変圧器の1次側に接続された送電線の抵抗成分のため変圧器の1次側に電圧降下が発生し、変圧器の2次側に接続された建屋の配電線の電圧も低下する。
【0005】
変圧器の出力電圧は所定の許容範囲(例えば、日本の家庭用電源は101±6V)内に抑えるように法律で定められている。そのため電力会社の作業者が、電圧をチェックし、電圧が許容範囲内になるように変圧器の変圧比を設定しているが、頻繁に行われるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−197456号公報
【特許文献2】国際公開第2000/74199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の系統連係型発電システムでは、建屋の配電線の電圧が許容範囲の上限に達すると、分散型の発電装置の出力電圧から変換した電圧を配電線の電圧以上にできないため分散型の発電装置から商用電力系統に送電できなくなる問題がある。
【0008】
変圧器の変圧比は、作業員が設定を変更するまでは一定値なので、変圧器の2次側の負荷が減少すると、建屋の配電線の電圧が上限電圧に達する場合がある。そのため、建屋に設置された発電装置で発電した電力に余剰分があっても売電できない場合があり、売電による収入を得る機会を逃すことがあった。
【0009】
特許文献1には、商用電力系統からの電力の供給が停止した場合にインバータを停止し、分散型の発電装置から商用電力系統への送電を停止する方法が記載されているが、配電線の電圧が上限電圧に達した場合については全く記載されていない。
【0010】
また、特許文献2には、商用の交流電力が閾値電圧を越えると発電装置の発生する電力を変換した直流電力を商用電力の極性と同極性で商用電力系統に供給する送電装置が記載されているが、配電線の電圧が上限電圧に達した場合については全く記載されていない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、建屋の配電線の電圧が許容電圧の上限になった場合でも変圧器の変圧比を切り替えて引き続き分散型の発電装置から商用電力系統に送電することができる系統連係型発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のような特徴を有するものである。
【0013】
1.入力された制御信号に応じて商用電力系統の送電網から受電した電力を変圧する変圧比を切り替える変圧比切替部を備えた変圧器を備え、該変圧器を介して供給される商用電力の配電線に分散型の発電装置を接続する系統連係型発電システムであって、
前記配電線の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した電圧を所定の電圧と比較判定した結果に応じて前記制御信号を前記変圧比切替部に出力する制御部と、
を有することを特徴とする系統連係型発電システム。
【0014】
2.前記電圧検出部と前記制御部は、前記発電装置の直流出力を交流に変換して前記配電線に接続するDC−ACコンバータと一体に構成されていることを特徴とする前記1に記載の系統連係型発電システム。
【0015】
3.前記制御部は、前記変圧器と一体に構成されていることを特徴とする前記1に記載の系統連係型発電システム。
【0016】
4.前記制御部は、
複数の前記電圧検出部と接続され、それぞれの前記電圧検出部が検出した電圧を所定の電圧と比較判定した結果に応じて前記制御信号を前記変圧比切替部に出力することを特徴とする前記3に記載の系統連係型発電システム。
【0017】
5.前記制御部は、
コンピュータと通信する通信機能を有し、前記コンピュータからの指令により前記変圧器の変圧比を切り替えることを特徴とする前記3または4に記載の系統連係型発電システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の系統連係型発電システムは、配電線の電圧を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧を所定の電圧と比較判定した結果に応じて制御信号を出力する制御部と、を有し、制御部は、電圧検出部が検出した建屋の配電線の電圧が、許容電圧の上限になった場合は、変圧器の変圧比を切り替えて許容電圧の範囲内に制御する。
【0019】
したがって、建屋の配電線の電圧が許容電圧の上限になった場合でも変圧器の変圧比を切り替えて引き続き分散型の発電装置から商用電力系統に送電することができる系統連係型発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】商用電力系統の構成を説明する説明図である。
【図2】本発明に係る系統連係型発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る変圧器の構成の一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る系統連係型発電システムの制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る系統連係型発電システムの構成の別例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0022】
図1は、商用電力系統の構成を説明する説明図、図2は、本発明に係る系統連係型発電システムの構成の一例を示すブロック図、図3は、本発明に係る変圧器の構成の一例を示す説明図である。
【0023】
最初に図1、図2に示す商用電力系統の構成を説明する。
【0024】
発電所20の系統電源12で発電された電力は、超高圧送電線22で各地の変電所21に送電される。変電所21の主変圧器11で高圧交流に変換し、高圧送電線23を介して各地の柱上トランスなどの変圧器1に送電される。変圧器1では高圧交流を低圧交流に変換し、需要家の配電線24を介して各建屋30に低圧交流を供給する。
【0025】
本実施形態では、分散型の発電装置として太陽電池6を用いる例を説明するが、燃料電池などを用いても良い。太陽電池6は、建屋30の屋上などに設置され、太陽光の照射を受けて直流電力を発生する。太陽電池6は、PCU(Power Control Unit)7に接続されており、太陽電池6の直流電力出力は、DC−ACコンバータ5により交流電力に変換される。DC−ACコンバータ5の出力する交流電圧は、日本の場合は家庭用電源の許容範囲の上限が107Vなので、若干余裕を持たせて例えば106.5Vにする必要がある。
【0026】
DC−ACコンバータ5の交流電力出力は配電線24に接続されており、DC−ACコンバータ5が変換した交流電圧の方が、配電線24の電圧より高い場合は太陽電池6の発電した電力を変圧器1を介して商用電力系統に送電する。
【0027】
本実施形態の変圧器1は、入力された制御信号に応じて変圧比を切り替える変圧比切替部2を有している。変圧比切替部2は、リレーなどの電磁スイッチであり制御信号に応じて接片19を接点17または接点18に切り替えて接続する。
【0028】
図3に示すように、変圧器1の2次側巻線16には、変圧比切替部2の接点18と、接点18より巻線の少ない中間のタップに接点17が接続されている。制御信号により接片19を接点17または接点18に切り替えて接続すると、変圧器1の変圧比を切り替えることができる。
【0029】
変圧器1の1次側巻線15の側は高圧送電線23に接続され、接片19と2次側巻線16の一方は配電線24に接続される。したがって、接片19を接点17に接続させると変圧比は小さくなるので2次側の配電線24の電圧は低くなり、接片19を接点18に接続させると変圧比は大きくなるので2次側の配電線24の電圧は高くなる。
【0030】
電圧検出部3は、例えば通信機能を備えた電圧計であり、配電線24に接続された負荷10の変動や、太陽電池6からの送電によって変化する配電線24の電圧を検出し、デジタル値に変換して制御部4に送信する。
【0031】
制御部4は、例えばCPU(中央処理装置)と記憶部等から構成され、記憶部に記憶されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に読み出し、当該プログラムに従って各部を制御する。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成される。
【0032】
制御部4は、電圧検出部3が検出した配電線24の電圧に応じて、変圧器1の変圧比を切り替える制御信号を変圧器1の変圧比切替部2に出力する。
【0033】
本実施形態では、電圧検出部3と制御部4は、PCU7の筐体内にDC−ACコンバータ5と一体に構成されている。このようにすると、電圧検出部3と制御部4の建屋30への設置や配線を容易に行うことができる。
【0034】
図4は、本発明に係る系統連係型発電システムの制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0035】
以下、図4のフローチャートを順に説明する。
【0036】
S10:配電線24の電圧を検出するステップである。
【0037】
電圧検出部3は、所定の周期で配電線24の電圧を検出する。
【0038】
S11:配電線24の電圧がV以上か否かを判定するステップである。
【0039】
制御部4は、配電線24の電圧が所定の上限電圧V以上か否かを判定する。上限電圧Vの値は、予め制御部4の記憶部に記憶されており、制御部4はこの値を読み出して電圧検出部3の検出した配電線24の電圧と比較して判定する。
【0040】
上限電圧Vの値は、日本の家庭用電源の許容範囲は101±6Vと定められているので、余裕を持った値、例えば106.5Vに予め設定しておく。
【0041】
配電線24の電圧がV以上の場合、(ステップS11;Yes)、ステップS12に進む。
【0042】
S12:変圧比を下げるステップである。
【0043】
制御部4は、変圧比切替部2に制御信号を出力し、接片19を接点17に切り替えて変圧比を下げる。配電線24の電圧が106.5Vの場合、DC−ACコンバータ5の出力する交流電圧が106.5Vだとすると、太陽電池6が発電した電力を商用電力系統に送電することができない。本ステップで変圧比を下げると配電線24の電圧は例えば101Vに低下し、DC−ACコンバータ5が変換する交流電圧より低くすることができるので、太陽電池6が発電した電力を商用電力系統に送電することができる。
【0044】
配電線24の電圧がV以上ではない場合、(ステップS11;No)、ステップS13に進む。
【0045】
S13:配電線24の電圧がV以下か否かを判定するステップである。
【0046】
制御部4は、配電線24の電圧が所定の下限電圧V以下か否かを判定する。下限電圧Vの値は、予め制御部4の記憶部に記憶されており、制御部4はこの値を読み出して電圧検出部3の検出した配電線24の電圧と比較して判定する。
【0047】
下限電圧Vの値は、日本の家庭用電源の許容範囲は101±6Vと定められているので、余裕を持った値、例えば95.5Vに予め設定しておく。
【0048】
配電線24の電圧がV以下の場合、(ステップS13;Yes)、ステップS14に進む。
【0049】
S14:変圧比を上げるステップである。
【0050】
制御部4は、変圧比切替部2に接片19を接点18に切り替える制御信号を出力する。
【0051】
変圧比を下げたために配電線24の電圧が下限電圧Vより下がっている場合は、変圧比を上げて配電線24の電圧を上げる。なお、ステップS13で接片19が接点18に接続されていた場合は、変圧比は変わらない。
【0052】
配電線24の電圧がV以下ではない場合、(ステップS13;No)、ステップS10に戻る。
【0053】
制御部4は、配電線24の電圧がV以下ではない場合は何も制御を行わずステップS10に戻る。
【0054】
フローチャートの説明は以上である。
【0055】
図5は、本発明に係る系統連係型発電システムの構成の別例を示すブロック図である。
【0056】
図2のブロック図との違いは、図2ではPCU7に設けられていた制御部4が、図5の例では変圧器1に設けられている点である。その他の機能要素は図2と同じであり、説明を省略する。
【0057】
図5では、一つの電圧検出部3と制御部4を接続した例を示しているが、複数の入力端子を備えた制御部4を用いて、複数の電圧検出部3を制御部4と接続するようにすることもできる。
【0058】
複数の電圧検出部3と接続する場合、制御部4は、それぞれの電圧検出部3が検出した電圧を所定の電圧と比較判定した結果に応じて制御信号を変圧比切替部2に出力する。このようにすると、複数の建屋30に設けられた電圧検出部3からそれぞれの建屋30内の配電線24の電圧値が得られるので、全ての建屋30内の配電線24の電圧が許容範囲内になるように制御することができる。
【0059】
また、制御部4に通信機能を持たせ、図示せぬ電力会社のコンピュータと通信できるように構成すれば、電力会社のコンピュータが各建屋30内の配電線24の電圧データを収集し、例えば日時や季節毎に最適な変圧比を遠隔操作で設定するようにすることもできる。また、その際は変圧比切替部2によって3つ以上の変圧比を切り替えるように構成すれば、より最適な制御を行うことができる。
【0060】
以上このように、本発明によれば、建屋の配電線の電圧が許容電圧の上限になった場合でも変圧器の変圧比を切り替えて引き続き分散型の発電装置から商用電力系統に送電することができる系統連係型発電システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 変圧器
2 変圧比切替部
3 電圧検出部
4 制御部
5 コンバータ
6 太陽電池
10 負荷
11 主変圧器
12 系統電源
15 1次側巻線
16 2次側巻線
17 接点
18 接点
19 接片
20 発電所
21 変電所
22 超高圧送電線
23 高圧送電線
24 配電線
30 建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された制御信号に応じて商用電力系統の送電網から受電した電力を変圧する変圧比を切り替える変圧比切替部を備えた変圧器を備え、該変圧器を介して供給される商用電力の配電線に分散型の発電装置を接続する系統連係型発電システムであって、
前記配電線の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した電圧を所定の電圧と比較判定した結果に応じて前記制御信号を前記変圧比切替部に出力する制御部と、
を有することを特徴とする系統連係型発電システム。
【請求項2】
前記電圧検出部と前記制御部は、前記発電装置の直流出力を交流に変換して前記配電線に接続するDC−ACコンバータと一体に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の系統連係型発電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記変圧器と一体に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の系統連係型発電システム。
【請求項4】
前記制御部は、
複数の前記電圧検出部と接続され、それぞれの前記電圧検出部が検出した電圧を所定の電圧と比較判定した結果に応じて前記制御信号を前記変圧比切替部に出力することを特徴とする請求項3に記載の系統連係型発電システム。
【請求項5】
前記制御部は、
コンピュータと通信する通信機能を有し、前記コンピュータからの指令により前記変圧器の変圧比を切り替えることを特徴とする請求項3または4に記載の系統連係型発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−114930(P2011−114930A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268567(P2009−268567)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】