説明

納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法

【課題】納豆煮豆を飼料の原料とする飼料化を実現することができる、飼料の生産方法を提供する。
【解決手段】
納豆煮豆を回収して該納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法は、加熱処理された納豆煮豆を嫌気状態として回収する回収工程(STEP11,12)と、回収工程で回収された納豆煮豆を乳酸発酵させることにより飼料化する飼料化工程(STEP21)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆煮豆を回収して該納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜用の飼料としては、混合飼料に黄粉及び納豆菌を配合したものが知られている(下記特許文献1参照)。かかる家畜用の飼料によれば、黄粉が納豆菌の餌となり、家畜や家禽の体内において納豆菌が活動しやすい状態となる。
【0003】
従来の家畜用の飼料では、積極的に納豆菌を添加することにより、納豆菌の活動を促進し、その効果を期待するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−008013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、納豆の製造工程等から出た納豆煮豆には、加熱処理された煮豆に既に納豆菌が含まれた状態となっていることから、これを積極的に利用することが望まれている。
【0006】
しかしながら、納豆煮豆の場合には、水分含有量が高いため保存が難しく、納豆煮豆を納豆工場等から飼料工場に運搬し、これを飼料化できるか否かが課題となっている。
【0007】
そこで本発明は、納豆煮豆を飼料の原料とする飼料化を実現することができる、飼料の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、納豆煮豆を回収して該納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法において、
加熱処理された納豆煮豆を嫌気状態として回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された納豆煮豆を乳酸発酵させることにより飼料化する飼料化工程と
を備えることを特徴とする。
【0009】
第1発明によれば、加熱処理された納豆煮豆を回収する工程において、嫌気状態とすることで、納豆煮豆が腐敗することを抑制することができ、これを次の飼料化工程まで、保存、運搬等することができる。
【0010】
さらに、飼料化工程では、納豆煮豆を積極的に乳酸発酵させることにより、納豆煮豆をサイレージ化させて、単味飼料や発酵TMR飼料の原料とすることができる。
【0011】
このように、第1発明によれば、納豆煮豆を飼料の原料とする飼料化を実現することができる。
【0012】
第2発明は、第1発明において、
前記回収工程は、
納豆の製造工程において排出された納豆煮豆を小袋に詰める第1回収工程と、
前記第1回収工程で小袋に詰められた納豆煮豆を大袋に詰め替えて嫌気処理する第2回収工程と
を有することを特徴とする。
【0013】
第2発明によれば、回収工程は、第1回収工程において、納豆工場等で排出された納豆煮豆を、これが排出される各製造工程において小袋に詰めることで、納豆煮豆を一次的に嫌気状態とすることができる。
【0014】
さらに、第2回収工程において、小袋の納豆煮豆を大袋に詰め替えて、脱気等の嫌気処理することで、納豆煮豆を二次的に嫌気状態として、これを保存や運搬等に適した状態とすることができる。
【0015】
第3発明は、第1または第2発明において、
前記飼料化工程は、前記納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動に対して、乳酸発酵に係る乳酸菌の活動が優位となる状態で、該納豆煮豆を乳酸発酵させることを特徴とする。
【0016】
第3発明によれば、飼料化工程では、納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動に対して、乳酸発酵に係る乳酸菌の活動が優位な状態とすることで、円滑な乳酸発酵を実現することができ、納豆煮豆を飼料化することができる。
【0017】
第4発明は、第3発明において、
前記飼料化工程は、乳酸菌が活動状態となる第1温度以上であり、かつ納豆菌が活動状態となる該第1温度より高い第2温度未満で、前記納豆煮豆を乳酸発酵させることを特徴とする。
【0018】
第4発明によれば、飼料化工程において、乳酸菌の活動状態であって納豆菌が活動状態とならない温度範囲とすることで、乳酸菌の活動を優位として納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動を抑制した状態とすることができる。これにより、納豆煮豆を飼料の原料とする場合にも、円滑な乳酸発酵を実現することができる。
【0019】
第5発明は、第3発明または第4発明において、
前記飼料化工程は、前記納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動が抑制されるように酸性下で、該納豆煮豆を乳酸発酵させることを特徴とする。
【0020】
第5発明によれば、納豆菌は酸性雰囲気でその活動が低下することから、飼料化工程を酸性下とすることで、納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動を抑制した状態とすることができ、納豆菌の活動が優位となって乳酸発酵が抑制されることを回避することができる。これにより、納豆煮豆を飼料の原料とする場合にも、円滑な乳酸発酵を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】納豆煮豆を回収してこれを原料とする飼料を生産する方法の全体的構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、本実施形態の納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法は、納豆工場1と、飼料工場2との間で、納豆工場1から排出された納豆煮豆を回収して、これを飼料工場2で家畜用の飼料に加工するものであり、加工された飼料は、例えば牧場(酪農組合)3に供給され、高タンパクの飼料が必要な乳牛等に与えられる。
【0023】
より具体的に、納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法は、納豆工場1から飼料工場2に納豆煮豆を回収する回収工程と、飼料工場2において、納豆煮豆を飼料化する飼料化工程とを備える。
【0024】
まず、納豆煮豆を回収する工程は、第1回収処理(図1/STEP11、本発明の第1回収工程に相当する)と、第2回収処理(図1/STEP12、本発明の第2回収処理工程に相当する)とを備える。
【0025】
第1回収処理(図1/STEP11)では、納豆の製造工程において、排出された納豆煮豆の残渣を集めて小袋に詰める処理を行う。
【0026】
この処理工程は、納豆の製造工程において主に規格外と判断された納豆煮豆を、その発生から短時間で小袋に袋詰めすることにより、納豆煮豆を一次的に嫌気状態とするものである。
【0027】
そして、小袋に詰められた納豆煮豆は、製造ラインの近く(発生場所の近く)のコンテナに一時的に蓄積され、コンテナは、一定の周期(例えば、3時間毎)で、第2回収処理(図1/STEP12)を行う集荷場所に移される。
【0028】
このようにして、コンテナ単位で移された小袋詰めの納豆煮豆は、集荷場所において、大袋(例えば、内袋が付いたフレコンバック)にあけて、その大袋を吸引装置を用いて脱気処理することにより、納豆煮豆を二次的に嫌気状態とする。これにより、(小袋での袋詰めの場合と異なり)より長期保存や運搬等に適した状態とすることができる。
【0029】
さらに、大袋を吸引装置で脱気処理する際には不要な水分もこれを袋内から吸引することができるため、トラック等で大袋の納豆煮豆を運搬する際にも、その重量を小さくすることができる。
【0030】
次に、大袋の形態で納豆工場1から飼料工場2に運搬された納豆煮豆は、飼料工場2において、サイレージ化される(図1/STEP21、本発明の飼料化工程に相当する)。
【0031】
具体的に、サイレージ化は、嫌気状態にすることにより、酸素を好む雑菌等の活動が抑制され、これに代わって乳酸菌の活動が活発になる。この乳酸菌の活動(乳酸発酵)により乳酸が生産されてPHが低下する。このPHの低下により更に乳酸菌の活動が活発になる。PHが4.2程度まで低下すると乳酸発酵は安定状態になり、サイレージ化は完了する。
【0032】
なお、本実施形態において、このサイレージ化の過程では、乳酸菌の添加、糖の添加さらに水分の調整は行わない。
【0033】
この処理工程では、特に、サイレージ化の際に重要な役割を果たす乳酸菌の活動が、納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動に対して優位となることが好ましい。そのため、積極的に納豆菌の活動を抑制してもよい。
【0034】
例えば、乳酸菌が活動状態となる第1温度(例えば10℃)以上であり、かつ納豆菌が活動状態となる該第1温度より高い第2温度(例えば50℃)未満で、納豆煮豆を乳酸発酵させることができる。特に、外気温が30℃前後となる夏場には、サイレージ化の際の温度管理を行うことで、円滑な乳酸発酵を実現することができる。
【0035】
また、簡易的には、酸性下で納豆煮豆を乳酸発酵させることで、納豆菌の活動を抑制して、円滑な乳酸発酵を実現するようにしてもよい。なお、通常、乳酸発酵が進むことでPHが下がり、結果として納豆菌の活動を抑制することができる。
【0036】
本実施形態では、温度を前記第1温度以上であって第2温度未満としてサイレージ化を行った。その結果得られた飼料は、PHが4.1で、発酵品質の評価値であるVスコアも98.7と高い評価値となった。
【0037】
さらに、サイレージ化された飼料を単味飼料および発酵TMR原料として、牧場3に供給し、乳牛に給与した。その結果、乳牛の嗜好性、乳量および乳成分ともに、加熱圧ペン大豆等の場合と変わらないことも確認された。
【0038】
以上、詳しく説明したように、本実施形態の飼料の生産方法によれば、納豆煮豆を飼料の原料とする飼料化を実現することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…納豆工場、2…飼料工場、3…牧場。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆煮豆を回収して該納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法において、
加熱処理された納豆煮豆を嫌気状態として回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された納豆煮豆を乳酸発酵させることにより飼料化する飼料化工程と
を備えることを特徴とする、納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法。
【請求項2】
請求項1記載の納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法において、
前記回収工程は、
納豆の製造工程において排出された納豆煮豆を小袋に詰める第1回収工程と、
前記第1回収工程で小袋に詰められた納豆煮豆を大袋に詰め替えて嫌気処理する第2回収工程と
を有することを特徴とする、納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法において、
前記飼料化工程は、前記納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動に対して、乳酸発酵に係る乳酸菌の活動が優位となる状態で、該納豆煮豆を乳酸発酵させることを特徴とする、納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法。
【請求項4】
請求項3記載の納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法において、
前記飼料化工程は、乳酸菌が活動状態となる第1温度以上であり、かつ納豆菌が活動状態となる該第1温度より高い第2温度未満で、前記納豆煮豆を乳酸発酵させることを特徴とする、納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法において、
前記飼料化工程は、前記納豆煮豆に含まれる納豆菌の活動が抑制されるように酸性下で、該納豆煮豆を乳酸発酵させることを特徴とする、納豆煮豆を原料とする飼料を生産する方法。

【図1】
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