説明

紐付き拘束網展開装置

【課題】
拘束網に取り付けた錘に引っ張り紐を取り付け、且つ引っ張り紐を拘束網噴出部に固定することにより、拘束網を発射後に装置を引っ張ることで、錘を動かし網が絡まる効果を上げ、且つ紐により網が不審者に集中し袋状にすることができ、かつ引っ張り紐を、細くて強い超高強力繊維とすることで、不審者が紐を引っ張り返す事を困難にすることを可能にした。
【解決手段】
拘束網をガス圧力で噴出する拘束網噴出部と、前記の拘束網噴出部を起動する操作部と、前記の拘束網噴出部と前記操作部とを着脱自在に連結するアダプターと、拘束網に取り付けた錘と拘束網噴出部に取り付けた引っ張り紐を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束網をガス圧力で瞬時に展開させて、犯罪行為を未然に防ぐ、あるいは逃亡時間を遅らせてターゲットを拘束・捕獲するための携行型拘束網展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧ガスを駆動源とした携行型拘束網展開装置が開示されている。特許文献1では、高圧ガスボンベを装置内に有し、起動スイッチを押すことにより、高圧ガスボンベの封板にピンを刺し、高圧ガスを一気に放出し、このガス圧で網と錘の両方を押し出し、網を展開させることができる。
【0003】
また、特許文献2には、拘束網と網を絞り込む機構を組み合わせた防犯網が開示されている。特許文献2では、建屋天井部に設置した周囲に策状体を挿通する網と、網を掛脱自在に支持する支持機構と、前記策状体を手操る絞り機構を有し、侵入者が網の直下位置に到達したときに、網を瞬時に落下させ、絞り機構により網を袋状に絞って侵入者を捕らえることができる。
【0004】
また、特許文献3には、紐もしくはゴムのような紐をとりつけ、収納された網を発射後、設置した巻取り装置にて紐を巻き取る犯人拘束装置が開示されている。特許文献3では、展開用錘を装備した捕捉網が折り畳まれた状態で捕捉網・投網器(本発明の拘束網と拘束網噴出部と同じ)に収納されていることを特徴としており、前記投網器が電磁式に口を開けられるかあるいは電気式に点火できる燃料ガス・カートリッジを有し、投網器を作動させた場合にガス圧により展開用錘が加速され、折り畳まれた捕捉網を発射することができる。前記の捕捉網は、錘の間もしくは網の縁に沿ってゴム紐を装備しており、このゴム紐は捕捉網が発射された際に伸ばされ、発射力の衰退によって再び縮む。前記ゴム紐に加えて、捕捉網に引っ張り紐を固定していることを特徴としており、この引っ張り紐は捕捉網が発射された際に網とともに広がる。また、この引っ張り紐はバッテリ駆動式小型モータタイプの巻取り機から伸びており、捕捉網の発射後、短い遅れ時間後に引っ張り紐が巻き取られることにより、捕捉網にかかった侵入者の周りに網を密に集めることができる。前記犯人拘束装置は、代表的には特に固定識別技術で監視されている重要な部屋においてドアの手前の上あるいは大形金庫室への入口範囲において予測される犯人の侵入経路あるいは逃走経路の上に定置して設けられている。また、犯人拘束装置は携帯可能であり、例えば警報装置が作動した場合に対して、犯人の居る部屋あるいは建屋の逃走ドアの上に移設することができる。この投網器の作動手段はセンサをともなった自動発射機構であり、侵入者がセンサを横切ったときに、捕捉網は侵入者に向けて展開される。
【特許文献1】米国特許第5326101号明細書
【特許文献2】実開平6−14795号公報
【特許文献3】特表2000−503142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による携行型拘束網展開装置では、錘と網の両方が高圧ガスにより押し出され、噴出の初期段階では、網がほとんど展開せず、携行型拘束網展開装置から距離を隔ててから網が徐々に展開するため、遠距離には対応できるが、近距離では錘が捕獲対象者に直撃し、安全に使用できない。また、この携行型拘束網展開装置は、金属容器(ボンベ)にガスが充填されているため、この携行型拘束網展開装置内には既に網と錘を押し出すためのエネルギが存在しており、不慮の場合、破裂等の危険が潜んでいる。また高圧ガスでは、ガス流路が長くなり、それによる作動のタイムラグやリークが懸念される。また、捕
獲対象者に網が被った時、網と錘による絡まり効果のみに依存しているため、拘束力において問題があった。つまり、絡まりがあいまいな場合、容易に抜けられる恐れがあった。
【0006】
また、特許文献2による拘束網展開装置では、建屋天井部に設置した周囲に策状体を挿通する網と、網を掛脱自在に支持する支持機構と、前記策状体を手操る絞り機構を有し、侵入者が網の直下位置に到達したときに、網を瞬時に落下させ、絞り機構により網を袋状に絞って侵入者を捕らえることができる。然るに、網を絞り込む手段が拘束網展開器と分離している為、装置が大型化し、屋内あるいは特定の空間だけに適用する捕獲装置である。
【0007】
また、特許文献3による拘束網展開装置では、紐もしくはゴムのような紐をとりつけ、収納された網を発射後、設置した巻取り装置にて紐を巻き取る犯人拘束装置が開示されている。特許文献3では、展開用錘を装備した捕捉網が折り畳まれた状態で捉網・投網器に収納されていることを特徴としており、前記投網器が電磁式に口を開けられるかあるいは電気式に点火できる燃料ガス・カートリッジを有し、投網器を作動させた場合にガス圧により展開用錘が加速され、折り畳まれた捕捉網を発射することができる。前記の捕捉網は、錘の間もしくは網の縁に沿ってゴム紐を装備しており、このゴム紐は捕捉網が発射された際に伸ばされ、発射力の衰退によって再び縮む。前記ゴム紐に加えて、捕捉網に引っ張り紐を固定していることを特徴としており、この引っ張り紐は捕捉網が発射された際に網とともに広がる。また、この引っ張り紐はバッテリ駆動式小型モータタイプの巻取り機から伸びており、捕捉網の発射後、短い遅れ時間後に引っ張り紐が巻き取られることにより、捕捉網にかかった侵入者の周りに網を密に集めることができる。前記犯人拘束装置は、代表的には特に固定識別技術で監視されている重要な部屋においてドアの手前の上あるいは大形金庫室への入口範囲において予測される犯人の侵入経路あるいは逃走経路の上に定置して設けられている。また、犯人拘束装置は携帯可能であり、例えば警報装置が作動した場合に対して、犯人の居る部屋あるいは建屋の逃走ドアの上に設置することができる。この投網器の作動手段はセンサをともなった自動発射機構であり、侵入者がセンサを横切ったときに、捕捉網は侵入者に向けて展開される。然るに、特許文献2と同様、網を絞り込む手段が犯人拘束装置と分離している為、装置が大型化し、屋内あるいは特定の空間だけに適用する捕獲装置である。また、捕獲装置を構成する部品の具体的な記述がなく、網、紐の強度については開示されていない。
【0008】
本発明は、斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、拘束網に取り付けた錘に引っ張り紐を取り付け、且つ引っ張り紐を拘束網噴出部に固定することにより、拘束網を発射後に装置を引っ張ることで、錘を動かし網が絡まる効果を上げ、且つ紐により網が不審者に集中し袋状にすることができ、かつ引っ張り紐を、細くて強い超高強力繊維とすることで、不審者が紐を引っ張り返す事を困難にし、安全に不審者を捕獲することができる紐付き拘束網展開装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、拘束網をガス圧力で噴出する拘束網噴出部と、前記の拘束網噴出部を起動する操作部と、前記の拘束網噴出部と前記操作部とを着脱自在に連結するアダプターと、拘束網に取り付けた錘と拘束網噴出部に取り付けた引っ張り紐を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、前記の拘束網噴出部は、拘束網と、前記拘束網の周縁上に所定間隔をもって配設される複数個の錘と、前記錘を所定角度をもって噴出する複数の噴出口を形成するとともに前記錘を収容する錘収容部と、前記拘束網を収容する拘束網収容部と、燃焼性物質の燃焼によってガス圧を発生させる火工式点火器を有し、前記錘と前記拘束網とを前記火工式点火器のガス圧力で噴
出する噴出手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐を取り付けた拘束網を、拘束網とともに拘束網収容部に収容することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐の他端は拘束網噴出部(内部)に固定することを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、図5に示す拘束網と引っ張り紐取り付け位置は、拘束網の頂点Oから伸びる1辺O−AおよびO−Bに対して取り付け幅15−15’の比率が0.4〜1.2にあることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、拘束網は196N以上の強度を有する繊維を使用することを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐は196N以上の強度を有する繊維を使用することを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐は線径がφ0.7mm〜φ5.0mmの細い繊維を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、引っ張り紐を操作することで、装置から発射された拘束網を、任意で絞り込むことができ、拘束網展開装置の拘束力が向上する。
また、引っ張り紐の線径が細いことにより、捕獲対象に引っ張り返される可能性が低く、非力な操作者でも安全に、捕獲対象者を捕獲することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者は、拘束網展開装置及び拘束方法について探索すると共に、その効果について鋭意研究を行っており、特開2005−180744、特開2006−084168、特開2006−118845、特開2007−107863を提供している。その結果、引っ張り紐を操作することで、拘束網噴出部から発射された拘束網を、任意で絞り込むことができ、拘束網展開装置の拘束力が向上することを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図9は、本発明の一実施形態に係る紐付き拘束網噴出部1と紐付き拘束網展開装置3を示す。
本実施形態に係る紐付き拘束網噴出部1は、第1容器10Aと第2容器10Bとをねじ結合してなる容器10と、周囲に8つの錘部11を紐部材12を介して取り付けるとともに錘部11とともに容器10内に収容される人体を拘束する拘束網13と、錘部11をガス圧で噴出させるために容器10内に収容されたガス発生器14と、拘束網噴出部から発射された拘束網13を、任意で絞り込むために、紐付き拘束網噴出部1と拘束網13の引っ張り紐取り付け位置15および15’の少なくとも2箇所の紐部材12に取り付けられた引っ張り紐16と、拘束網13を収容した容器10の蓋となる拘束網収容蓋17とで構成される。
【0017】
拘束網13に取り付けられる引っ張り紐16の位置は、拘束網13に対して上方へ飛翔する2箇所の引っ張り紐取り付け位置15および15’の紐部材12に結びつける。拘束網と引っ張り紐取り付け位置15および15’は、図5に示す拘束網と引っ張り紐取り付け位置は、拘束網の頂点Oから伸びる1辺O−AおよびO−Bに対して取り付け幅15−15’の比率が0.4〜1.2にあることが好ましい。
容器10に取り付けられる引っ張り紐16は、第1容器10A及び第2容器10Bに穿孔した孔に通し、第2容器10Bの容器と引っ張り紐取り付け位置18で、材質はステン
レス、線径φ1.2mm、外径φ12mmの金属リング19に結びつける。
【0018】
引っ張り紐16の長さは、紐付き拘束網噴出部1の有効射程距離と錘部11の飛翔距離が関係しており、本実施形態では、4.8m〜5.2mの設定とした。このときの錘部11の飛翔距離は4.0m〜4.4mである。また、紐付き拘束網噴出部1の射程距離を3.5mの設定としているが、引っ張り紐16の長さは、拘束網13の飛翔を妨げない長さであれば問題はなく、錘部11の飛翔距離に0.8m加えた長さに設定することにより、長射程距離のものにも適用可能である。また、引っ張り紐16の材質については、超高強力繊維の紐、引っ張り強度は510Nの紐を使用した。
【0019】
錘部11は、拘束網13の周囲に取り付けられた紐部材12と、この紐部材12により取り付けられた錘11aと、錘カバー11bとで構成されている。
紐部材12は、ポリエステル製で線径がφ0.7mmの紐を用いており、一側が錘11aと連結するとともに他側が拘束網13と連結している。連結された錘11aと拘束網13との間の紐部材12の長さは80mmである。そして、この紐部材12は、容器10から錘部11が飛び出すとともに容器10から拘束網13を展開するときの力にも耐える材質としている。
【0020】
錘11aは、ステンレス製で、全長23mm、外径φ11mmの円柱である。錘11aは、そのおよそ中央部に錘カバー11bを被せた後に錘11aが抜け出さないようにするために、幅2mm、深さ0.5mmの溝と、一側先端には紐部材12を通すための穴を設けている。ここでは、材質はステンレスとしているが、耐腐食性の優れた材質であれば使用することが可能である。
【0021】
錘カバー11bは、ゴム材を使用し、ガス発生器14から発生するガスによる圧力をロスなく受け止め、かつ錘部11が人体や器物へ衝突した際の安全性を確保するために錘11aに被せられる。全長27mm、外径φ14mm、内径φ11mmの略コップ状を為しており、一側は紐部材12を通すための直径φ2mmの貫通孔を有しており、他側は前述の通り、ガス発生器14から発生するガスを受けた時に開口面端部が容器の内面に向かって広がり、密着するように内外縁に半径1mmの環状部を設けている。
【0022】
錘11aと錘カバー11bとの組立は、紐部材12の一端を錘11aの先端側の穴に通し、紐部材12が穴で折り返すようにした後、紐部材12を錘カバー11bの貫通孔を通し、錘カバー11b内面の凸部と錘の溝が嵌合するまで挿入することによって行われる。そして、紐部材12は、拘束網13に結びつけられる。
【0023】
拘束網13は、強化ポリエステル等の超高強力繊維で製網されており、3m×3mおよび4m×4mの正方形、または4m×3mの長方形などで構成されている。また、目幅は全展開面積の約半分を中心部付近から20cm角で形成し、残り半分を10cm角で形成してもよい。また、目幅については全展開面積で中心部から、内側網目と外側網目とを均等に形成することでも良い。
【0024】
ガス発生器14は、イニシエータと、このイニシエータの外周に設けたねじ部にねじ部を螺合により固定するためのホルダと、イニシエータからの燃焼生成ガスを一時保持する破裂板と、この破裂板を固定および所定面積で破断させるためのスペーサと、イニシエータからの燃焼生成ガスを冷却濾過する成型フィルタと、この成型フィルタを収容してホルダの一側に設けたねじ部にねじ部を介して螺合するフィルタカップとで構成されている。
筒部20には、ガス発生器14が取り付けられ、プラグ21を筒部20の外側に挿入してカップ22によって固定されている。プラグ21は、底付きのカップで構成され、開口端に形成された外方に張り出すフランジ23と、開口端の外周に形成された外方に膨出す
る回り止め用の突起部24と、胴部の外周に胴部の軸線に対して直交する位置と両者の中間位置に形成された外方に膨出する3つのガイド用の突起部25a,25b,25cと、底部に設けた導通用の2つのピン26と、各ピン26に接続する導線27と、導線27の先端に取り付けたコネクタ28とを有する。コネクタ28は、ガス発生器14に連絡するコネクタ29と接続される。
【0025】
操作部2は、図7〜図9に示すように、アダプター2Aと、起動用押しボタン41と、起動用押しボタン41を誤って押されないように、ガードカバー42で被い、さらにガードカバー42の上に封印シールを貼り付けて、使用時以外は押せない構造としている。また、起動用押しボタン41は1.5mの高さ、あらゆる方向から落下させても耐え得る構造のロッカスイッチを使用している。
【0026】
紐付き拘束網噴出部1と操作部2の組付について説明する。
紐付き拘束網噴出部1のプラグ21を、その外周に設けた3つの突起部25a,25b,25cをアダプター2Aの第一連結部43の溝部44a,44b,44cに沿って挿入し、プラグ21を第一連結部43内に挿入する。プラグ21を所定の長さ挿入すると、プラグ21の先端部が仕切部材に当接し、弾性部材を圧縮し、移動が阻止されたところで、プラグ21を回転し、突起部25a,25b,25cを横溝部45に沿ってアダプター2Aの軸長方向と直交する方向に移動する。プラグ21が所定量回転されると、係止溝部46の壁面に当接し、移動が阻止される。その時点で、プラグ21をフリーにすると、圧縮されていた弾性部材が復元力で仕切部材を介してプラグ21を第一連結部43の挿入口方向へ押し戻し、それに伴って突起部25a,25b,25cが係止溝部46内に押し込まれる。また、紐付き拘束網噴出部1のプラグ21に設けた2つのピン26が仕切部材に設けた2つの電極48と接触した状態で保持される。
以上により本実施形態に係る紐付き拘束網展開装置3を得ることができる。
(実験)
次に本実施形態に係る紐付き拘束網展開装置3を実験例により説明する。
【0027】
(実験例1)
本実施形態に係る紐付き拘束網展開装置3を用い、引っ張り紐16を拘束網13に取り付ける有効な位置と、引っ張り紐16の本数を確認した。表1の通り、拘束網と引っ張り紐取り付け位置15および15’と引っ張り紐16の本数を変えた紐付き拘束網展開装置3を作製する。図10に示す通り、紐付き拘束網展開装置3を発射する位置から、3m〜4mのところに身長175cmの捕獲対象者をおき、紐付き拘束網展開装置3から拘束網13を発射し、拘束網13を捕獲対象に被せ引っ張り紐16を引っ張り、状況を確認した。
【0028】
【表1】

【0029】
この結果、比較例における引っ張り紐16の本数1本は、拘束網13を引っ張ることで、引っ張り紐16がついていないものより拘束効果は向上するが、バランスが悪く、拘束網13を確実に引っ張ることはできなかった。また、上下左右の引っ張り紐16の本数4
については、紐のついた左右の錘が、捕獲対象者の背後に回り込まないため、引っ張り紐16の効果がなく、上述した引っ張り紐16の本数1本と同等の効果しか得られなかった

拘束効果が著しく上がることが確認されたのは拘束網13と引っ張り紐取り付け位置15および15’が辺のパターンA(引っ張り紐16の本数2本)、パターンB(引っ張り紐16の本数4本)、パターンC(引っ張り紐16の本数8本)であり、いずれの仕様についても、引っ張り紐16を引っ張ることで、捕獲対象者足元付近の拘束網13を絞り込み、拘束網13を袋状にすることができた。従って、拘束網13を袋状にするには、拘束網と引っ張り紐取り付け位置15および15’は、拘束網13の辺で、引っ張り紐16の本数は、2本、4本、8本が効果的であるが、加工上のコストを考慮した場合、拘束網13の中心から左右に、左右それぞれ1本ずつとなる計2本が好ましい。
【0030】
(実験例2)
本実施形態に係る紐付き拘束網展開装置3を用い、引っ張り紐16を取り付ける拘束網13と引っ張り紐取り付け位置15および15’について、拘束効果が有効に発揮できる取り付け範囲を確認した。拘束網13と引っ張り紐取り付け位置15および15’を変えた紐付き拘束網展開装置3を作製する。図10に示す通り、紐付き拘束網展開装置3を発射する位置から、3m〜4mのところに身長175cmの捕獲対象者をおき、紐付き拘束網展開装置3から拘束網13を発射し、拘束網13を捕獲対象者に被せ引っ張り紐16を引っ張り、状況を確認した。この結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
拘束網13の上方へ飛翔する2辺のそれぞれ1本での中心位置(錘部固定位置)に引っ張り紐16を取り付けた場合には、その間隔は2.1mである。引っ張り紐16の取り付
け間隔を1.1mとしたものについては、引っ張り紐16が捕獲対象者の上半身を引っ張る位置で網がかかる。この場合、引っ張り紐16を引っ張っても拘束網13を袋状にすることができなかった。また、取り付け間隔を0.6mとしたものは、2本の引っ張り紐16が重なってしまい効果が得られなかった。取り付け位置1.6m〜3.6mについては、引っ張り紐16を引っ張ることで、捕獲対象者足元付近の拘束網13を絞り込み、拘束網13を袋状にすることができた。従って、2本の引っ張り紐16と、拘束網13との引っ張り紐取り付け位置15および15’は、拘束網13の中心を挟んで、1.6m〜3.6mの範囲が効果的であることがわかった。
例えば、図5において、拘束網13の頂点をOとし、そこから伸びるそれぞれの1辺の終点をA、Bとする。前記の2本の引っ張り紐16と、拘束網13との引っ張り紐取り付
け位置15および15’が、拘束網13の中心を挟んで1.6m〜3.6mの範囲を、拘束網13の頂点Oから伸びる1辺O−AおよびO−Bに対する2本の引っ張り紐16と拘束網13との引っ張り紐取り付け位置15および15’の幅15−15’の比率を求めると
3m×3mの正方形の場合、1.6m/3m=0.5、3.6m/3m=1.2
4m×4mの正方形の場合、1.6m/4m=0.4、3.6m/4m=0.9
となり、拘束網13と引っ張り紐取り付け位置15および15’の位置は、拘束網13の頂点Oから伸びる1辺O−AおよびO−Bに対して15−15’の幅の比率0.4〜1.2の範囲に取り付けることが効果的であることが確認できた。
【0033】
実験例1及び実験例2の結果を反映した例を図5に示す。他に同じ効果を得る方法として、図11のように装置に固定する引っ張り紐16を1本として、途中から2本に枝分かれする方式、図12のように2箇所の取り付け位置に引っ張り紐16を固定せず、網目等に通して1本の引っ張り紐16で構成する方式、図13のように、装置に固定する引っ張り紐16を1本として、2箇所の取り付け位置に引っ張り紐16を固定せずに輪状の引っ張り紐16で構成する方式も可能である。
【0034】
(実験例3)
本実施形態に係る紐付き拘束網展開装置3を用い、引っ張り紐16を装置操作者が引っ
張る際に拘束効果を発揮する引っ張り紐16の線径を確認した。
方法は、図14に示す。異なる線径の引っ張り紐16を選定し、紐付き拘束網展開装置3に取り付け引っ張ることのできる力と、人間が素手または手袋着用時に引っ張り紐16を直接引っ張ることのできる力をデジタルプッシュプルゲージで測定した。試験者は、日本人の成人男性の平均(身長171.5cm、体重68kg)である試験者を採用した。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3に示す通り、紐付き拘束網展開装置3で引っ張り紐16を引っ張った力は、素手で343N、手袋着用で363Nであるのに対して、引っ張り紐16を直接、人間が引っ張った力は、引っ張り紐16の線径が細くなるほど小さくなっていく。これは、人間が引っ張り紐16を引っ張る際に、細い紐が手に食い込み、痛みから力をいれにくいためである。従って、捕獲対象者に引っ張り返される可能性を低くするには、紐付き拘束網展開装置3で引っ張る力より、人間が素手または手袋着用で引っ張る力を小さくする必要があり、引っ張り紐16の線径は、φ0.7mm〜φ5.0mmが適当であり、より引っ張り返される可能性を低くするため、紐付き拘束網展開装置3で引っ張り紐16で引っ張った力に対して1/2にするには、φ0.7mm〜φ2.1mmの引っ張り紐16の線径が好ましい。
【0037】
(実験例4)
実験例1〜実験例3の結果をふまえ、引っ張り紐16は超高強力繊維(超高強力ポリエチレン、φ1.4mm)を使用し、拘束網13との引っ張り紐取り付け位置15および15’は、拘束網13の中心を挟んで、2.1mの位置とし、紐付き拘束網噴出部1に取り付け、紐付き拘束網展開装置3を作製した。また、比較例として、紐なしの拘束網展開装置を作製した。
前記で作製した紐付き拘束網展開装置3と紐なし拘束網展開装置から拘束網13を発射し、捕獲対象者に被せ、捕獲対象者が拘束網13から脱出するまでの時間を確認した。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
紐なし拘束網展開装置の拘束時間については、捕獲対象者における差異はあるものの、時間をかければ脱出することが可能である。これに対し、紐付き拘束網展開装置3については、装置操作者が引っ張り続けることで、常に捕獲対象者を拘束することができるため、脱出することができない結果となった。また、捕獲対象者が引っ張り紐16を引っ張ろうと試みた場合、引っ張り16が細くて引っ張ることが困難であり、操作者は常に安全に捕獲対象者を拘束することができた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本質的には防犯のため、侵入者が犯罪行為を実行し逃亡を図った際、捕獲して逃亡を遅延させること、また、犯罪行為を未然に防止するため、その犯罪行為の遅延や行為を諦めさせることに使用できる。また暴漢の鎮圧のためにも使用ができる。また、護身具としても使用が可能である。
また、市街地へ誤って飛び出した動物などの捕獲を容易にするほか、畑や田んぼ、果樹園などを荒らす駆除動物の捕獲にも効果的に使用可能である。
また、本発明は3m×3mおよび4m×4mの正方形の拘束網で実験を行ったが、同効果を得るため、3m×3mおよび4m×4mの八角形の拘束網も使用可能である。
また、本発明の実施例では、紐付き拘束網噴出部を着脱自在に連結可能なアダプターを取り付けた操作部に取り付けた紐付き拘束網展開装置で説明しているが、紐付き拘束網噴出部と操作部が一体のものでも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】紐付き拘束網噴出部の外観図である。
【図2】紐付き拘束網噴出部の錘部を中心とした断面図である。
【図3】紐付き拘束網噴出部の引っ張り紐取り付け部を中心とした断面図である。
【図4】引っ張り紐拘束網噴出部の構成図である。
【図5】拘束網と引っ張り紐取り付け位置、紐付き拘束網展開装置と引っ張り紐取り付け位置を示す図面である。
【図6】紐付き拘束網噴出部の構成図である。
【図7】紐付き拘束網噴出部と操作部を示す図面である。
【図8】紐付き拘束網展開装置の外観図である。
【図9】紐付き拘束網展開装置の断面図である。
【図10】実験例1及び実験例2の実施方法を示す図面である。
【図11】拘束網と引っ張り紐取り付け位置の一例を示す図面である。
【図12】拘束網と引っ張り紐取り付け位置の一例を示す図面である。
【図13】拘束網と引っ張り紐取り付け位置の一例を示す図面である。
【図14】実験例3の実施方法を示す図面である。
【符号の説明】
【0042】
1 紐付き拘束網噴出部
2 操作部
2A アダプター
3 紐付き拘束網展開装置
10 容器
10A 第1容器
10B 第2容器
11 錘部
11a 錘
11b 錘カバー
12 紐部材
13 拘束網
14 ガス発生器
15 拘束網の頂点0とAの辺における引っ張り紐取り付け位置
15’拘束網の頂点0とBの辺における引っ張り紐取り付け位置
16 引っ張り紐
17 拘束網収容蓋
18 容器と引っ張り紐取り付け位置
19 金属リング
20 筒部
21 プラグ
22 カップ
23 フランジ
24 回り止め用の突起部
25a、25b、25c 突起部
26 ピン
27 導線
28 コネクタ
29 コネクタ
41 起動用押しボタン
42 ガードカバー
43 第1連結部
44a、44b、44c 溝部
45 横溝部
46 係止溝部
48 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束網をガス圧力で噴出する拘束網噴出部と、前記の拘束網噴出部を起動する操作部と、前記の拘束網噴出部と前記操作部とを着脱自在に連結するアダプターと、拘束網に取り付けた錘と拘束網噴出部に取り付けた引っ張り紐を備えたことを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項2】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、前記の拘束網噴出部は、拘束網と、前記拘束網の周縁上に所定間隔をもって配設される複数個の錘と、前記錘を所定角度をもって噴出する複数の噴出口を形成するとともに前記錘を収容する錘収容部と、前記拘束網を収容する拘束網収容部と、燃焼性物質の燃焼によってガス圧を発生させる火工式点火器を有し、前記錘と前記拘束網とを前記火工式点火器のガス圧力で噴出する噴出手段とを備えたことを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項3】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐を取り付けた拘束網を、拘束網とともに拘束網収容部に収容することを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項4】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐の他端は拘束網噴出部(内部)に固定することを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項5】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、図5に示す拘束網と引っ張り紐取り付け位置は、拘束網の頂点Oから伸びる1辺O−AおよびO−Bに対して取り付け幅15−15’の比率が0.4〜1.2にあることを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項6】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、拘束網は196N以上の強度を有する繊維を使用することを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項7】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐は196N以上の強度を有する繊維を使用することを特徴とする紐付き拘束網展開装置。
【請求項8】
請求項1記載の紐付き拘束網展開装置において、引っ張り紐は線径がφ0.7mm〜φ5.0mmの細い繊維を使用することを特徴とする紐付き拘束網展開装置。

【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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