説明

紐端部の加工装置及び加工方法

【課題】 セルチップを用いることなく、紐部材の端部を細径化及び硬質化すると同時に、恒久的なほつれ止めを行えるようにした。
【解決手段】 開口部側が漏斗状に拡径した型孔11を有し、かつ紐部材2の融点付近に加熱される金型5を用い、該金型5の型孔11に、少なくとも外皮部を熱可塑性樹脂繊維素材から構成した紐部材2の端部を挿入し、金型5と紐部材2間の相対回転により、前記紐部材2の端部2aを前記型孔のテーパ形状に沿って細径化するとともに、溶融によって端部の繊維同士を一体に融着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器や、衣類、靴などに用いる紐、特に、紐の少なくとも外皮部分が熱可塑性合成繊維により形成された紐部材の端部加工装置及びこの装置を用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器、衣類、靴などに用いる紐の端部外周には、一般にセルチップと称する熱可塑性樹脂フィルムを巻付け、熱カシメなどにより固定している。このセルチップは装飾的なものでなく、紐端部のほつれ止めや孔通し性の確保を主目的として付加されるものであり、セルチップ内に紐端部を拘束することで、端部のほつれ止めを行うほか、この部分を拘束することにより細径化し、かつセルチップにより剛性が付与されることによって、孔通しなどの作業を簡単に行えるようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このセルチップの長さは多種あり、その巻付け作業にあたっては、可撓性のある紐部材の端部にセルチップを巻き締めなければならないため、完全自動化が難しく、このために紐のコストアップ原因となっていた。
【0004】
また、このセルチップは劣化しやすく、はがれ落ちたり一部欠落により、紐部材の端部がほつれ、これにより孔通し作業が不能となる原因となっていた。
【0005】
そこで本発明は、以上の課題を解決するものであって、その目的とするところは、セルチップを用いることなく、紐部材の端部を細径化及び硬質化すると同時に、恒久的なほつれ止めを行えるようにした、加工の容易な紐端部の加工装置及び該装置をを用いる加工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の紐端部の加工装置は、図1の実施の形態にも示すごとく、加熱手段を備えた金型105と、金型105の表面に開口される型孔111と、金型105による加熱温度を高低制御する温度制御部112と、を具備し、前記型孔111は、その開口部側が漏斗状に拡径し、型孔111内に加熱加工するべき紐部材の先端部を挿入し、紐部材の先端部と金型の前記型孔部分とを相対的に回動させるようにしたことを特徴としている。金型105を固定とし紐部材を回動させるようにしても良い。また、金型105の少なくとも型孔111形成部分(金型本体)を回動自在としても良い。紐部材は、少なくともその外皮部分が熱可塑性合成樹脂により形成されるものであれば良い。例えば、紐部材の外皮部分は熱可塑性合成樹脂繊維により形成し、内部にゴム質の芯材が挿入された構造の紐部材の加工に良好に適応される。
【0007】
前記加工装置には、前記金型105の少なくとも前記型孔111部分の温度を光学的に表示する温度表示部113を備えている。
【0008】
前記型孔111は、金型105の表面に一個又は複数開口形成させることができる。
【0009】
前記金型105には、少なくとも前記型孔111部分(金型本体)を回転させるための回転駆動手段を備えることができる。
【0010】
上記加工装置101を用いる本発明の紐端部の加工方法は、開口部側が漏斗状に拡径した型孔111を有し、かつ紐部材の少なくとも外皮部分の融点付近に加熱される金型105を用い、該金型105の型孔111に、少なくとも外皮部分が熱可塑性樹脂繊維素材から構成された前記紐部材の端部を挿入し、金型105と紐部材間の相対回転により、前記紐部材の端部を前記型孔111の開口端部のテーパ形状に沿って細径化するとともに、溶融によって端部の繊維同士を一体に融着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上の装置及び方法によれば、型孔111に紐部材の端部を挿入し、紐端部又は金型を相対的に回転させることで、加熱により、紐部材の端部は溶融しつつ型孔形状に変形し、その後引出すことで冷却固化し、紐部材外皮の熱可塑性合成樹脂繊維同士が細径化した状態で一体化する。したがってセルチップを用いることなく、紐部材の端部を短時間で細径化すると同時に、恒久的なほつれ止めを行えることになる。また挿入−引出しだけの作業であるから、熟練は不要となる。
【0012】
また本発明の加工装置1では、紐部材の端部を型孔111に入れた後金型本体部の回転駆動により、自動的に形を整えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施の形態につき、添付図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る紐端部加工装置101を示す。第1の実施形態は、本発明の試験装置である。
この加工装置101は、加熱手段を備えた固定の金型105と、金型105の表面に開口される型孔111と、金型105による加熱温度を高低制御する温度制御部112と、金型105の少なくとも型孔111部分の温度(加熱温度)を光学的に表示する温度表示部113を備えている。
【0015】
型孔111は、その開口部111a側が漏斗状に拡径し、奥部111b側が小径筒状とされた略ラッパ形とされている。温度制御部112は、電圧調整器により形成され、調整ダイヤル112aの回転により、金型内の電気的加熱手段(ニクロム線)に印加される電圧を調整し、これにより金型105の少なくとも型孔111部分の温度(加熱温度)を設定する。加熱温度は、調整ダイヤル112aの周囲に沿った温度制御部112本体の上面に表示されており、その選択により、印加電圧に対応する加熱温度が設定される。115は、温度制御部112を商用電源に接続するコンセントである。温度表示部113は、金型105の型孔111部分の温度(加熱温度)を、熱電対などのセンサで測定し、その測定温度を光学的に表示する温度表示器である。
【0016】
次に、上記加工装置101の作用を説明する。まず、温度制御部112の操作により、金型105の型孔111部分の温度を所定温度に加熱設定させる。加熱温度は、温度表示部113に直接的に表示される。
【0017】
この加熱状態で、加工すべき紐部材の先端部を手又は適当なクランプに挟持させて、型孔111内に挿入させ、回転させる。紐部材は、型孔111の開口部111a側が漏斗状に拡径しているところから、その先端部が容易に小径の奥部111b側にまで挿入される。紐部材は、少なくともその外皮が熱可塑性合成樹脂繊維により形成されていることから、上記加熱と回動により、全周に亙り均等に溶融し、ほつれ止め加工がなされると同時に、硬化して先細状態に加工される。
【0018】
(第2の実施形態)
図2及び図3は、第2の実施形態を示し、これにより第2の実施形態を説明する。
第2の実施態様に係る加工装置1は、机上などに設置されるマウントベース3と、マウントベース3上に設置された軸受ハウジング4と、ハウジング4の前後を貫通してこれに回転可能に軸受された中実円筒型の金型本体5と、ハウジング4の後部におけるマウントベース3上に固定設置され、その出力軸7aを金型本体の5の後端に断熱軸継手6を介して同軸に軸結された回転駆動用のDCモータ7とを備えている。
【0019】
ハウジング4内には前記金型本体5廻りにヒータ8が配置され、このヒータ8から発生した熱は、金型本体5の周囲に配置された伝熱用の軸受スリーブ9を通じて金型本体5側に伝熱される。
【0020】
また、図において符号10は前記軸受スリーブ9の一部を貫通して、その先端を前記金型本体5の外周に摺接する温度センサーである。
【0021】
前記金型本体5の中心には表面側が拡径し、後部側に至るにつれ細径化された型孔11が形成されている。
【0022】
以上の加工装置1には、前記モータ7にスイッチSWを介して駆動電源を給電するとともに、前記温度センサー10の検知出力を受けて前記ヒータ8の温度制御を行う制御部12、温度センサー10による検出温度を表示するための温度表示部13、前記紐2の樹種毎に前記ヒータ8の温度を設定する温度設定部14などが附属しており、これらはAC電源15をAC/DCコンバータ16で直流変換した直流電源によって駆動される。
【0023】
紐部材2は、少なくとも外皮部が熱可塑性合成樹脂により形成されるものであれば良い。一例として、外皮部を熱可塑性合成樹脂繊維により形成し、内部にゴム質の伸縮性芯材が挿入される紐部材2に適応される。この場合、前記紐部材2の外皮部がポリプロピレン製のフィラメント、ファイバーあるいはストランドを多数撚り合わせた撚紐または編紐である場合、ポリプロピレンの融点は約200℃あるので、前記設定温度は200℃を僅かに上回る温度に設定される。その他の熱可塑性樹脂繊維としては、ナイロン、ビニロン、PET、その他各種の熱可塑性繊維があるが、これらの融点は既知であるため、これらに応じて設定温度を設定すればよい。
【0024】
次に以上の加工装置1を用いた紐部材2の端部加工方法について、図3を用いて説明すると、まず(a)に示すように、紐部材2の端部を指先でつまみ、回転している金型5の型孔11に押込む。押込み操作により、型孔11内で紐部材2はその先端外周から順次溶融され、型孔11の奥部にまで挿入される。このとき、紐部材2の挿入中心が型孔11の中心軸線からずれていても、金型本体5の回転に伴いその挿入中心が回転中心に収束して一致するため、型孔形状に沿って精度良く端部形状が形成されるものとなる。
【0025】
外側が十分に加熱され、その繊維同士が溶融により一体化した頃合を見計らって(b)に示すように、紐部材2を型孔11内から抜出すと、溶融先端は外気に触れ急速に冷却固化し、その端部2aは型孔11の形状に沿って先細り状に固化し、先端部を硬質に変化せしめると同時に恒久的なほつれ止めがなされる。そして、一端の加工が終了後は他端側においても同様な加工を行えば、両端硬質かつ、細径化した紐部材2を得ることができるのである。
【0026】
前記紐部材2の型孔11に対する挿入速度及び力、引きだし時のタイミングなどは、装置1の加熱容量と紐部材2の太さや、比熱などによって変化するが、ある程度の経験で最適な状態での操作が可能となるため、作業の熟練は不要である。
【0027】
なお以上説明した実施形態では、人手により紐部材2の挿入−引きだし作業を行ったが、例えば先端部のチャック手段、溶融速度などに同期した往復移動手段などを付加することにより、さらなる自動化を行うことができる。また、型孔11内での溶融樹脂の付着を防止する手段として、耐熱性のテフロン(登録商標)樹脂などを予め型孔11の内面にコーティングまたはライニングしておくこともできることは勿論である。
【0028】
金型本体5及び型孔11は、1個でも良く、複数個並設された構成でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る紐の端部加工装置の第1の実施形態を示す平面図(A)及び要部断面図(B)である。
【図2】同第2の実施形態を示す一部模式化した説明用断面図である。
【図3】(a),(b)は同装置を用いた加工方法を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0030】
101 加工装置
105 金型
111 型孔,111a 開口部,111b 奥部
112 温度制御部
113 温度表示部
115 コンセント

1 加工装置
2 紐部材
2a 端部
5 金型本体
7 モータ(回転駆動手段)
8 ヒータ(加熱手段)
11 型孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を備えた金型と、金型の表面に開口される型孔と、金型による加熱温度を高低制御する温度制御部と、を具備し、前記型孔は、その開口部側が漏斗状に拡径し、型孔内に加熱加工するべき紐部材の先端部を挿入し、紐部材の先端部と金型の前記型孔部分とを相対的に回動させるようにしたことを特徴とする紐端部の加工装置。
【請求項2】
加熱手段を備えた金型と、金型の表面に開口される型孔と、金型による加熱温度を高低制御する温度制御部と、金型の少なくとも前記型孔部分の温度を光学的に表示する温度表示部と、を具備し、前記型孔は、その開口部側が漏斗状に拡径し、型孔内に加熱加工するべき紐部材の先端部を挿入し、紐部材の先端部と金型の前記型孔部分とを相対的に回動させるようにしたことを特徴とする紐端部の加工装置。
【請求項3】
前記型孔が、金型の表面に1個乃至複数個開口形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の紐端部の加工装置。
【請求項4】
前記金型には、少なくとも前記型孔部分を回転させるための回転駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の少なくとも1項記載の紐端部の加工装置。
【請求項5】
開口部側が漏斗状に拡径した型孔を有し、かつ紐部材の少なくとも外皮部分の融点付近に加熱される金型を用い、該金型の型孔に、少なくとも外皮部分が熱可塑性樹脂素材から構成された前記紐部材の端部を挿入し、金型と紐部材間の相対回転により、前記紐部材の端部を前記型孔のテーパ形状に沿って細径化するとともに、溶融によって端部の少なくとも外皮部分が一体に融着することを特徴とする紐端部の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−265796(P2006−265796A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89170(P2005−89170)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】