説明

純水供給システム

【課題】安価な構成で純水の供給量を正確に計量することができる純水供給システムを提供する。
【解決手段】純水供給システム1は、純水を溜める貯留槽10と、この貯留槽10に溜めた純水を貯留槽10の外部に送給して貯留槽10に戻す循環路12と、貯留槽10から循環路12に純水を送給するポンプ11とを備えている。循環路12の途中部には、鉛直下方に延びて循環路12を流れる純水を反応槽3に供給する供給配管13が接続されている。前記循環路12には、前記途中部から上流側の所定範囲にかけて水平方向に延びる主管部12e1が設けられ、この主管部12e1には反応槽3に供給される純水の流量を計量する流量計8が配置されている。循環路12の前記塗中部よりも下流側には、循環路12を開閉する第1開閉弁14aが配置され、供給配管13には当該供給配管13を開閉する第2開閉弁14bが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の製造時に用いられる純水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医薬品の製造時に用いられる純水供給システムとして、貯留槽内に溜めた純水を、細菌等の微生物が繁殖するのを抑制するために循環させる循環路を備え、この循環路から分岐した供給路を通して所定の反応を行わせる反応槽に純水を供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図2は、従来の純水供給システムの構成を示す模式図である。図2において、純水供給システム101は、ポンプ111と、貯留槽110内に溜めた純水を前記ポンプ111により貯留槽110の外部に送給して貯留槽110に戻す循環路112と、この循環路112の途中から分岐して反応槽103に純水を供給する供給路113とを備えている。供給路113の途中には、開閉弁114と、反応槽103に供給される純水の供給量を計測する流量計115とが介在されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、路内を通過する液体の流量を計測するものとして、面積式、容積式、渦式等の流量計が存在するが、これらの流量計により液体の流量を正確に計測するためには、流量計の構成上、流量計内に液体が充満した状態で流れていることが必要である。しかし、従来の前記純水供給システムにあっては、流量計115が配置されている供給路113は、水溜まりが発生しないように循環路112から鉛直下方に延びて配置されているため、供給路113内を流れる純水は、流量計115内に充満されることなく重力により落下する。このため、流量計115により純水の供給量を正確に計量することができないという問題があった。
【0006】
前記問題を解決するために、反応槽103の底部にロードセルを設置し、このロードセルによって反応槽103内に供給された純水の供給量を計量することが考えられるが、この場合はロードセルを設置するための費用が増大するため、製造コストの観点から好ましくない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安価な構成で純水の供給量を正確に計量することができる純水供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の純水供給システムは、純水を溜める貯留槽と、前記貯留槽に溜めた純水を当該貯留槽の外部に送給して当該貯留槽に戻す循環路と、前記循環路の途中部から分岐して鉛直下方に延び、当該循環路を流れる純水を反応槽に供給する供給路と、前記貯留槽から前記循環路に純水を送給するポンプと、を備えた純水供給システムにおいて、前記循環路の前記途中部の下流側に介在され、当該循環路を開閉する第1開閉弁と、前記供給路を開閉する第2開閉弁と、前記循環路の一部であって、前記途中部からその上流側の所定範囲にかけて設けられた水平方向に延びる水平路と、前記水平路の途中部に介在され、当該水平路及び前記供給路を通して前記反応槽に供給される純水の流量を計量する流量計と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1開閉弁により循環路を開けるとともに第2開閉弁により供給路を閉じることで、貯留槽内の純水を循環路内において循環させることができ、純水内に微生物が繁殖するのを抑制することができる。そして、この状態から第1開閉弁により循環路を閉じるとともに、第2開閉弁により供給路を開けることで、循環路内の純水を供給路を介して反応槽に供給するとともに、反応槽に供給される純水を水平路において流量計により計測することができる。その際、流量計は水平方向に延びる水平路に配置されているため、流量計内を流れる純水を、従来のように重力により落下することなく流量計内を充満した状態で流すことができる。これにより、安価な構成で純水の供給量を正確に計測することができる。
【0009】
また、前記循環路は、前記流量計よりも上流側と、前記第1開閉弁よりも下流側とを連通接続するバイパス路を有していることが好ましい。この場合は、純水を反応槽に供給する際に、第1開閉弁により循環路を閉じていても、純水がバイパス路を流れることにより、純水の循環流れが阻害されることはない。したがって、循環路の閉鎖に起因するウォーターハンマー現象(水流の慣性により路内に衝撃や振動圧が発生する現象)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の純水供給システムによれば、安価な構成で純水の供給量を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る純水供給システムの構成を示す模式図である。
【図2】従来の純水供給システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る純水供給システムの構成を示す模式図である。純水供給システム1は、例えば医薬品の製造時に用いられる純水を供給するものである。この純水供給システム1は、純水を溜める貯留槽10と、この貯留槽10に溜めた純水を貯留槽10の外部に送給して貯留槽10に戻す循環路12と、この循環路12の途中部から分岐して循環路12を流れる純水を反応槽3に供給する供給配管(供給路)13と、貯留槽10から循環路12に純水を送給するポンプ11とを備えている。反応槽3の内底部は、排出管4を介して排水槽5に接続されている。
【0013】
循環路12は、貯留槽10の下部とポンプ11とを接続する第1配管12aと、ポンプ11から上方に延びる第2配管12bと、この第2配管12bの下流側端部から水平方向に延びる第3配管12cと、この第3配管12cの下流側端部から上方に延びる第4配管12dと、この第4配管12dの下流側端部に接続された第5配管12eと、この第5配管12eと貯留槽10の上部とを接続する第6配管12fとによって構成されている。
【0014】
第1配管12a及び第2配管12bには、当該第1及び第2配管12a,12b内をそれぞれ開閉する第4開閉弁14d及び第5開閉弁14eが配置されている。第4及び第5開閉弁14d,14eは、通常時は第1及び第2配管12a,12bを開けており、メンテナンス時や緊急時等に第1及び第2配管12a,12bを閉じるようになっている。
【0015】
第2配管12b及び第3配管12cは、それぞれ第1分岐管6a及び第2分岐管6bを介して、殺菌用のUVランプ装置7に接続されている。第1及び第2分岐管6a,6bには、それぞれ第6開閉弁14f及び第7開閉弁14gが配置されており、第6及び第7開閉弁14f,14gは、通常時は第1及び第2分岐管6a,6bを開けており、循環している純水をUVランプ装置7により常に殺菌するようになっている。
【0016】
第5配管12eは、全長に亘って水平方向に延びる主管部(水平路)12e1と、この主管部12e1に両端部が接続されたバイパス管部(バイパス路)12e2とを備えている。主管部12e1の管径は、例えば40mmに設定されており、その途中部には、前記供給配管13の上流側端部が接続されている。また、主管部12e1の前記途中部の上流側には流量計8が配置されており、前記途中部の下流側には主管部12e1を開閉する第1開閉弁14aが配置されている。
【0017】
流量計8は、例えば渦式の計測方式によって、主管部12e1及び供給配管13を通して前記反応槽3に供給される純水の流量を計量するものである。
第1開閉弁14aは、純水を循環路12によって循環させるときは主管部12e1を開け、純水を反応槽3に供給するときは主管部12e1を閉じるようになっている。
【0018】
バイパス管部12e2の上流側端部は、主管部12e1の流量計8よりも上流側に接続されており、バイパス管部12e2の下流側端部は、主管部12e1の第1開閉弁14aよりも下流側に接続されている。また、バイパス管部12e2には、当該バイパス管部12e2を開閉する第3開閉弁14cが配置されている。この第3開閉弁14cは、常に開いている。これにより、第1開閉弁14aが主管部12e1を閉じているときに、第4配管12dから主管部12e1に流れる純水の一部を、バイパス管部12e2を介して第6配管12fに流すことができる。
【0019】
バイパス管部12e2の管径は、例えば25mmに設定されており、主管部12e1の管径よりも小径に形成されている。したがって、第5配管12eに流れる純水の大部分は、主管部12e1を流れるようになっている。
【0020】
供給配管13は、管内に水溜まりが発生しないように、前記主管部12e1の途中部から分岐して鉛直下方に延びており、その下流側端部は前記反応槽3に接続されている。供給配管13には、当該供給配管13を開閉する第2開閉弁14bが配置されている。この第2開閉弁14bは、純水を循環路12によって循環させるときは供給配管13を閉じ、純水を反応槽3に供給するときは供給配管13を開ける。
【0021】
その際、第1開閉弁14aを閉じてから所定時間経過後(例えば20秒後)に、第2開閉弁14bが自動で開くようになっている。前記所定時間は、主管部12e1の流量計8と第1開閉弁14aとの間、及び供給配管13の上流側端部と第2開閉弁14bとの間に、純水が充満するまでの時間に設定されている。これにより、第1開閉弁14aを閉じてから第2開閉弁14bが開くまでの間に、流量計8内を純水が通過することがないため、反応槽3に供給される純水をより正確に計測することができる。本実施形態では、流量計8により100kgの純水を計測したときの計測誤差を±3%以内に抑えることができる。
【0022】
以上、本発明の純水供給システム1によれば、第1開閉弁14aにより主管部12e1を開けるとともに第2開閉弁14bにより供給配管13を閉じることで、貯留槽10内の純水を循環路12内において循環させることができ、純水内に微生物が繁殖するのを抑制することができる。そして、この状態から第1開閉弁14aにより主管部12e1を閉じるとともに、第2開閉弁14bにより供給配管13を開けることで、循環路12内の純水を供給配管13を介して反応槽3に供給するとともに、反応槽3に供給される純水を主管部12e1において流量計8により計測することができる。その際、流量計8は水平方向に延びる主管部12e1に配置されているため、流量計8内を流れる純水を、従来のように重力により落下することなく流量計8内を充満した状態で流すことができる。これにより、安価な構成で純水の供給量を正確に計測することができる。
【0023】
また、循環路12を構成する第5配管12eには、流量計8よりも上流側と、第1開閉弁14aよりも下流側とを連通接続するバイパス管部12e2を備えているため、純水を反応槽3に供給する際に、第1開閉弁14aにより第5配管12eの主管部12e1を閉じていても、純水がバイパス管部12e2を流れることにより、純水の循環流れが阻害されることはない。これにより、主管部12e1の閉鎖に起因するウォーターハンマー現象(水流の慣性により路内に衝撃や振動圧が発生する現象)を抑制することができる。
【0024】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、本実施形態では、循環路から単一の反応槽に純水を供給する場合について説明したが、循環路から複数の反応槽に純水を供給する場合にも適用することができる。
【0025】
また、本発明の主管部は、全長に亘って水平方向に延びているが、少なくとも供給管が接続される途中部からその上流側の所定範囲にかけて水平方向に延びていればよい。この所定範囲は、流量計が前記途中部から遠く離れることによって、計量精度が低下するのを防止できる範囲である。
さらに、第2開閉弁は、自動で閉じるようになっているが、手動で閉じるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 純水供給システム
3 反応槽
8 流量計
10 貯留槽
11 ポンプ
12 循環路
13 供給配管(供給路)
12e1 主管部(水平路)
12e2 バイパス管部(バイパス路)
14a 第1開閉弁
14b 第2開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を溜める貯留槽と、
前記貯留槽に溜めた純水を当該貯留槽の外部に送給して当該貯留槽に戻す循環路と、
前記循環路の途中部から分岐して鉛直下方に延び、当該循環路を流れる純水を反応槽に供給する供給路と、
前記貯留槽から前記循環路に純水を送給するポンプと、を備えた純水供給システムにおいて、
前記循環路の前記途中部の下流側に介在され、当該循環路を開閉する第1開閉弁と、
前記供給路を開閉する第2開閉弁と、
前記循環路の一部であって、前記途中部からその上流側の所定範囲にかけて設けられた水平方向に延びる水平路と、
前記水平路の途中部に介在され、当該水平路及び前記供給路を通して前記反応槽に供給される純水の流量を計量する流量計と、
を備えていることを特徴とする純水供給システム。
【請求項2】
前記循環路は、前記流量計よりも上流側と、前記第1開閉弁よりも下流側とを連通接続するバイパス路を有している請求項1に記載の純水供給システム。

【図1】
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【図2】
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